【文献】
RICE, William G. et al.,Evaluation of Selected Chemotypes in Coupled Cellular and Molecular Target-Based Screens Indentifies Novel HIV-1 Zinc Finger Inhibitors,Journal of Medicinal Chemistry,1996年,Vol.39, No.19,p.3606-3616
【文献】
Topol IA et al.,Experimental determination and calculations of redox potential descriptors of compounds directed aga,Protein Sci.,2001年 7月,Vol.10 No.7,pp.1434-1445
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、γインターフェロン誘導リソソームチオール還元酵素発現ベクターを含む、ウイルス感染症の予防又は治療剤を提供する。
【0016】
γインターフェロン誘導リソソームチオール還元酵素(以下、GILTとも言う)は、蛋白質のジスルフィド結合を還元する酵素(EC.1.8.)であり、その活性は低pH(例えば、pH6.5以下)条件下で特に高い。GILTは、樹状細胞、マクロファージおよびB細胞などの抗原提示細胞において恒常的に発現しており、ジスルフィド結合を酵素的に減少させることにより、MHCクラスIIコンパートメント(MIIC)におけるエンドサイトーシス抗原のアンフォールディングを促進する(Phan, U.T. et al., J. Biol. Chem. 275: 25907-25914 (2000))。またマウスにおいては、GILTは、ウイルス抗原のクロスプレゼンテーションに必須であることが知られている(Singh, R. and Cresswell, P., Science, 328(5984): 1394-1398 (2010))。GILTの例としては、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するヒトGILT(NCBIアクセッション番号:NP_006323.2(2011年4月11日更新))又はそのオルソログ、或いはそれらの変異体(SNP、ハプロタイプを含む)が挙げられる。GILTは、温血動物の細胞・組織に由来するものであれば、その由来は特に制限されない。温血動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットなどのげっ歯類及びウサギなどの実験動物、イヌ及びネコなどのペット、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ、ヒツジ及びニワトリなどの家畜、サル、オランウータン及びチンパンジーなどの霊長類並びにヒトなどが挙げられ、特にヒトが好ましい。
【0017】
GILTは、例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質であり得る。配列番号2に示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号2に示されるアミノ酸配列と約90%以上、好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約97%以上、特に好ましくは約98%以上の同一性を有するアミノ酸配列であって、該アミノ酸配列を含む蛋白質が配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質と実質的に同等の活性を有するような配列をいう。本明細書におけるアミノ酸配列の同一性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST (National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool) を用い、以下の条件 (期待値=10; ギャップを許す; マトリクス=BLOSUM62; フィルタリング=OFF) にて計算することができる。
【0018】
GILTの活性としては、蛋白質のジスルフィド結合還元活性が挙げられ、前記「実質的に同等の活性」としては、例えば、約0.1〜約10倍、好ましくは約0.5〜約2倍の活性が挙げられる。このようなジスルフィド結合還元活性は自体公知の方法により測定することができる。例えば、ジスルフィド結合を含有する蛋白質(例、ウイルスエンベロープ蛋白質)に対象蛋白質を作用させた後、還元により生じたチオール基を定量することにより、ジスルフィド結合還元活性を測定することができる。チオール基の定量は、市販の試薬(例、SBD−F、DTNB、2−PDS、4−PDSなど)を使用してチオール基を標識することにより行なうことができる。
【0019】
本発明の剤は、GILTをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを有効成分とする。GILTをコードするポリヌクレオチドはDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。好ましくはDNAが挙げられる。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0020】
GILTをコードするDNAとしては、ゲノムDNA、あるいはGILTを産生するヒトもしくは他の温血動物の細胞またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織もしくは器官由来のcDNA(cRNA)、合成DNA(RNA)などが挙げられる。GILTをコードするゲノムDNAおよびcDNAは、上記した細胞・組織より調製したゲノムDNA画分および全RNAもしくはmRNA画分をそれぞれ鋳型として用い、Polymerase Chain Reaction(PCR)法およびReverse Transcriptase-PCR(RT−PCR)法によって直接増幅することもできる。あるいは、GILTをコードするゲノムDNAおよびcDNAは、上記した細胞・組織より調製したゲノムDNAおよび全RNAもしくはmRNAの断片を適当なベクター中に挿入して調製されるゲノムDNAライブラリーおよびcDNAライブラリーから、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション法またはPCR法などにより、それぞれクローニングすることもできる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。
【0021】
GILTをコードするポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号1で示されるヒトGILTをコードするヌクレオチド配列(NCBIアクセッション番号:NM_006332.3(2011年4月10日更新))を含有する核酸、または配列番号1で示されるヌクレオチド配列の相補鎖配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を含有し、前記した配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む蛋白質と実質的に同等の活性を有する蛋白質をコードする核酸などが挙げられる。
【0022】
配列番号1で示されるヌクレオチド配列の相補鎖配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る核酸としては、例えば、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と約85%以上、好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上、特に好ましくは約97%以上の同一性を有する塩基配列を含有する核酸などが用いられる。本明細書における塩基配列の同一性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10; ギャップを許す; フィルタリング=ON; マッチスコア=1; ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。
【0023】
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning, 2nd ed. (J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989) に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。ハイストリンジェントな条件としては、(1)洗浄に低イオン強度及び高温、例えば、50℃で0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%硫酸ドデシルナトリウムを使用し、(2)ホルムアミドのような変性剤、例えば、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)とともに、50%(v/v)ホルムアミドを42℃で使用することを特徴とする反応条件が例示される。あるいは、ストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド、5xSSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロ燐酸ナトリウム、5xデンハート溶液、超音波処理鮭精子DNA(50μg/ml)、0.1% SDS、及び10%硫酸デキストランを42℃で使用し、0.2xSSC及び50%ホルムアルデヒドで55℃で洗浄し、続いて55℃でEDTAを含有する0.1xSSCからなる高ストリンジェント洗浄を行うものであってもよい。当業者は、ヌクレオチド配列の長さなどのファクターに応じて、ハイブリダイゼーション反応及び/又は洗浄時の温度、緩衝液のイオン強度等を適宜調節することにより、容易に所望のストリンジェンシーを実現することができる。
【0024】
本発明に用いられるGILTをコードするポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号1に示されるGILTをコードするヌクレオチド配列を含有する核酸、他の温血動物におけるそのオルソログ、ヒトGILTにおける天然のアレル変異体若しくは多型バリアント、あるいはそれらのスプライスバリアントである。
【0025】
DNAの塩基配列は、公知のキット、例えば、Mutan(登録商標)-super Express Km(宝酒造(株))、Mutan(登録商標)-K(宝酒造(株))などを用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って変換することができる。
【0026】
クローン化されたDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該DNAは、必要に応じてその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
【0027】
GILT発現ベクターは、上記GILTをコードするポリヌクレオチドが、投与対象である温血動物の細胞内でプロモーター活性を発揮し得るプロモーターに機能的に連結されていなければならない。使用されるプロモーターは、投与対象である温血動物で機能し得るものであれば特に制限されず、例えば、SV40由来初期プロモーター、サイトメガロウイルスLTR(プロモーター)、ラウス肉腫ウイルスLTR、MoMuLV由来LTR、アデノウイルス由来初期プロモーター等のウイルスプロモーター、並びにβ−アクチン遺伝子プロモーター、PGK遺伝子プロモーター、トランスフェリン遺伝子プロモーターなどの温血動物の構成蛋白質遺伝子プロモーターなどが挙げられる。また、配列番号3で示されるGILTをコードする遺伝子(NCBIアクセッション番号:NC_000019.9(18284579..18288927))のプロモーターを使用してもよい。GILTを発現させるためのプロモーターとしては、サイトメガロウイルスLTR(プロモーター)が好ましい。
【0028】
発現ベクターは、好ましくはGILTをコードするポリヌクレオチドの下流に転写終結シグナル、すなわちターミネーター領域を含む。形質転換細胞選択のための選択マーカー遺伝子(テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ホスフィノスリシン等の薬剤に対する抵抗性を付与する遺伝子、栄養要求性変異を相補する遺伝子等)をさらに含むこともできる。さらに、発現ベクターは、GILTのプロセシング、分泌、細胞内局在などのために適切な配列(例、分泌シグナル、局在化シグナル)をさらに含み得る。
【0029】
発現ベクターとして使用される基本骨格のベクターは、プラスミド又はウイルスベクターであり得る。ヒトなどの温血動物への投与に好適なベクターとしては、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、センダイウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス等のウイルスベクターが挙げられる。外因的に導入されたGILTの構成的な発現は、GILT導入の対象となる細胞によっては、その細胞本来の性質を損なうことも考えられる。このような場合には、染色体への組込みが稀で、GILTの一過性の発現が可能な発現ベクターを使用することが好ましく、pCEP4ベクター、pcDNA3ベクター、pTargeTベクター及びアデノウイルスベクターなどの公知の発現ベクターを使用することができる。
【0030】
本発明はまた、GILTの模倣体を含む、ウイルス感染症の予防又は治療剤を提供する。
【0031】
本発明において、「GILTの模倣体」とは、式(I):
【0033】
(式中、R
1及びR
2は同一又は異なって、置換基を有してもよい含窒素複素環基、置換基を有してもよいC
3−6シクロアルキル基、1個の置換基を有してもよいC
6−10アリール基、置換基を有してもよいベンジル基、置換基を有してもよいフルフリル基、置換基を有してもよいチオカルバモイル基、又は置換基を有してもよいアミジノ基である。)で表される化合物若しくはその塩を指す。
【0034】
いかなる理論にも拘束されないが、式(I)で表される化合物は、R
1及びR
2が同一又は異なって(好ましくは同一で)、環状構造又は分岐構造を有する基であることによって、強いウイルス感染抑制効果を示し、かつ顕著な細胞毒性を示さないと考えられる。環状構造又は分岐構造を有する基の例として、上記列挙した基が挙げられる。
【0035】
本明細書中、「置換基を有してもよい」とは、特に規定する場合を除き、1個以上の置換基を有していてもよいことを意味する。置換基としては、C
1−6アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル)、C
6−14アリール基(例えば、フェニル、ナフチル)、C
1−6アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ)、アミノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)などが例示される。置換基の位置及び数は特に限定されず、置換可能な位置に、1個〜置換可能な最大数の置換基を有していても良い。置換基が2つ以上存在する場合には、それらは同一であっても異なっていても良い。また置換基が2つ以上存在する場合には、それらから選ばれる2つの置換基が結合して環を形成していてもよい。
【0036】
式(I)において、含窒素複素環基は、飽和であっても不飽和であってもよいが、細胞膜透過性や酸性条件下でのチオール基との反応性の観点から、不飽和の含窒素複素環基であることが好ましい。
【0037】
不飽和の含窒素複素環基としては、例えば環内に窒素原子を1〜3個(好ましくは1又は2個)含有する5員環又は6員環の複素環基が挙げられるが、好ましくは6員環の複素環基である。不飽和の含窒素複素環基には、酸素原子および硫黄原子から選ばれたヘテロ原子をさらに1〜3個(好ましくは1個)含んでいてもよい。
【0038】
不飽和の含窒素複素環基の具体例としては、ピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基、ピリジン−4−イル基、ピリダジン−3−イル基、ピリダジン−4−イル基、ピリミジン−2−イル基、ピリミジン−4−イル基、ピリミジン−5−イル基、ピラジン−2−イル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基、1,2,3−トリアジン−4−イル基、1,2,3−トリアジン−5−イル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,2,4−トリアジン−5−イル基、1,2,4−トリアジン−6−イル基、1,3−チアゾール基又は1,2−チアゾール基が挙げられる。酸性条件下での反応性の観点から、これらのうちピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基、ピリジン−4−イル基、ピリミジン−4−イル基又は1,3−チアゾール基が好ましい。
【0039】
前記含窒素複素環基は、置換後の化合物が細胞膜透過性であり、酸性条件下でのチオール基との反応性を保持している限り、任意の位置に置換基を有してもよい。そのような置換基としては、前記「置換基」が挙げられ、好ましくはC
1−6アルキル基及び/又はアミノ基である。含窒素複素環基は、置換基と一緒になって縮合環を形成していてもよい。例えば、含窒素複素環基がチアゾール基(好ましくは、1,3−チアゾール基)である場合、置換基と一緒になってベンゾチアゾール基(好ましくは、1,3−ベンゾチアゾール基)等を形成していてもよい。
【0040】
本明細書中、「C
3−6シクロアルキル基」とは、炭素数3〜6の環状のアルキル基を意味し、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。式(I)において、「C
3−6シクロアルキル基」は、好ましくはシクロヘキシル基である。また「置換基を有してもよいC
3−6シクロアルキル基」の置換基としては、前記「置換基」が挙げられる。式(I)において、「置換基を有してもよいC
3−6シクロアルキル基」は、好ましくは無置換のシクロヘキシル基である。
【0041】
本明細書中、「C
6−10アリール基」とは、炭素数6〜10のアリール基を意味し、具体的には、フェニル、ナフチル等が挙げられる。式(I)において、「C
6−10アリール基」は、好ましくはフェニル基である。また「1個の置換基を有してもよいC
6−10アリール基」の置換基としては、前記「置換基」が挙げられ、好ましくは、C
1−6アルコキシ基(例えば、メトキシ基)又はアミノ基である。式(I)において、「1個の置換基を有してもよいC
6−10アリール基」は、好ましくは無置換のC
6−10アリール基、1個のメトキシ基で置換されたC
6−10アリール基又は1個のアミノ基で置換されたC
6−10アリール基である。
【0042】
式(I)において、「置換基を有してもよいベンジル基」の置換基としては、前記「置換基」が挙げられる。式(I)において、「置換基を有してもよいベンジル基」は、好ましくは無置換のベンジル基である。
【0043】
式(I)において、「置換基を有してもよいフルフリル基」の置換基としては、前記「置換基」が挙げられる。式(I)において、「置換基を有してもよいフルフリル基」は、好ましくは無置換のフルフリル基である。
【0044】
式(I)において、「置換基を有してもよいチオカルバモイル基」の置換基としては、前記「置換基」が挙げられ、好ましくは、C
1−6アルキル基(例えば、メチル基)である。
【0045】
式(I)において、「置換基を有してもよいアミジノ基」の置換基としては、前記「置換基」が挙げられる。式(I)において、「置換基を有してもよいアミジノ基」は、好ましくは無置換のアミジノ基である。
【0046】
本発明の好ましい一態様において、式(I)で表される化合物は、ジチオピリジンである。ジチオピリジンとしては、R
1がピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基又はピリジン−4−イル基であり、R
2がピリジン−2−イル基、ピリジン−3−イル基又はピリジン−4−イル基である化合物(例えば、4−PDS(4,4'-dithiodipyridine)、2−PDS(2,2'-dithiodipyridine)など)が挙げられるが、好ましくは4−PDSである。
【0047】
また本発明の別の好ましい一態様において、式(I)で表される化合物は、2,2’−ジチオビス(ベンゾチアゾール)(2,2’−ジベンゾチアゾリルジスルフィドなどとも称する)、ジフェニルジスルフィド、4,4’−ビス(2−アミノ−6−メチルピリミジル)ジスルフィド、2,2’−ジチオジアニリン、4,4’−ジチオジアニリン、ジベンジルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ビス(4−メトキシフェニル)ジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ホルムアミジンジスルフィド又はジフルフリルジスルフィドである。
【0048】
上記の式(I)で表される化合物の塩としては、薬学的に許容される塩であればよく、例えば、式(I)で表される化合物と、無機酸との塩、有機酸との塩、酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などとの塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などとの塩が挙げられる。酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸などとの塩が挙げられる。
【0049】
本発明の好ましい態様において、「GILTの模倣体」は、細胞膜透過性であり、酸性条件(例えばpH6.5以下)においてチオール基と反応する活性を有する低分子化合物である。かかる低分子化合物としては、例えば、上記の式(I)で表される化合物のうちの4−PDSなどが挙げられる。
【0050】
GILTの模倣体の細胞膜透過性は、通常医薬品に求められる程度の範囲であればよい。例えば、人工膜を用いたParallel Artificial Membrane Permeability Assay(PAMPA)、Caco−2、MDCKなどの培養細胞を用いた透過性評価などの当該分野において公知の方法により評価することができる。また、疎水性パラメーターlogP(例えばCorwin/Leo’s program(CLOGP,Daylight Chemical Information System Co.,Ltd)を使用して計算できる)を計算することにより膜透過性を評価することもできる。
【0051】
酸性条件においてチオール基と反応する活性は、自体公知の方法で評価することができる。例えば、チオール基を有する蛋白質(例えば、ウイルスエンベロープ蛋白質)と被験物質とを酸性条件下(例えばpH6.5以下)で混合し、反応前後の被験物質の量を通常用いられる方法(例えば、質量分析、比色分析など)で定量することにより評価することができる。
【0052】
いかなる理論にも拘束されないが、本発明の好ましい態様において、GILTの模倣体(例えば、4−PDS)は、細胞膜透過性であり、かつ酸性条件でチオール基と反応するため、細胞内のリソソームに到達し、ウイルスエンベロープ蛋白質のジスルフィド結合形成を抑制することにより、GILTと同様の効果を奏すると考えられる。そのためGILTの模倣体は、GILTと同様に、ウイルスの感染及びウイルス産生を抑制することができる。
【0053】
またいかなる理論にも拘束されないが、本発明の好ましい態様において、GILTの模倣体(例えば、4−PDS)は、中性〜アルカリ性条件(pH7.0以上)では、酸性条件と比較して、ジスルフィド結合形成を抑制する活性が低いため、予防又は治療剤の有効成分として投与されても顕著な細胞毒性を示さないと考えられる。
【0054】
本発明のGILTの模倣体は、自体公知の化学的技術により合成してもよいし、市販されているものであってもよい。
【0055】
本発明の剤は、ウイルス感染阻害作用及び/又はウイルス増殖阻害作用を有しているため、ウイルス感染症の治療及び/又は治療に有用である。
ウイルス感染阻害作用は、ウイルス粒子の産生、ウイルス蛋白質の産生などを、当該分野で公知の方法を使用して測定することにより、直接または間接的に評価することができる。インビトロアッセイとしては、ウイルスプラーク形成の阻害、ウイルス細胞変性効果(CPE)の阻害、ウイルス血球凝集素もしくは他の蛋白質の産生又はウイルス産生の阻害を測定する方法が挙げられる。或いは、マーカー遺伝子(例、LacZ)を持つウイルスベクターを使用して当該マーカー遺伝子を利用してウイルス感染を定量し、これを感染価としてウイルス感染阻害作用を評価することもできる(下記実施例1及び国際公開番号WO2008/059662を参照のこと)。本発明の剤が投与された細胞(即ち、GILT発現ベクターが導入された細胞)(試験細胞)を、投与されていない細胞(即ち、GILT発現ベクターが導入されていない細胞)(コントロール細胞)と比較してもよい。例えば、同一の材料を使用して、3回以上測定を行った結果、試験細胞における感染レベルが、コントロール細胞の感染レベルよりも統計学的に有意に低下した場合、本発明の剤をウイルス感染阻害作用を有すると評価することができる。統計学的解析は、当該分野において公知の方法を使用して行なうことができる。例えば、Studen’s t−testにより解析し、p<0.05を統計学的に有意な差として判定することができる。
【0056】
ウイルス増殖阻害作用は、ウイルス粒子の産生、ウイルス蛋白質の産生などを、当該分野で周知の方法を使用して測定することにより、直接または間接的に評価することができる。インビトロアッセイとしては、ウイルス感染細胞を使用してウイルス産生の阻害を測定する方法が挙げられる。マーカー遺伝子(例、LacZ)を持つウイルスベクターを使用してウイルス感染細胞を作成し、当該マーカー遺伝子を利用してウイルス粒子の産生を定量し、これを指標としてウイルス増殖阻害作用を評価することもできる(下記実施例2を参照のこと)。本発明の剤が投与された細胞(即ち、GILT発現ベクターが導入された細胞)(試験細胞)を、投与されていない細胞(即ち、GILT発現ベクターが導入されていない細胞)(コントロール細胞)と比較してもよい。例えば、同一の材料を使用して、3回以上測定を行った結果、試験細胞におけるウイルス増殖レベルが、コントロール細胞のウイルス増殖レベルよりも統計学的に有意に低下した場合、本発明の剤をウイルス増殖阻害作用を有すると評価することができる。統計学的解析は、当該分野において公知の方法を使用して行なうことができる。例えば、Studen’s t−testにより解析し、p<0.05を統計学的に有意な差として判定することができる。
【0057】
本発明の剤により予防及び/又は治療されるウイルス感染症は、GILTの作用により感染及び/又は増殖が阻害される限り、任意のウイルスによるものであってよい。GILTは、ウイルスのエンベロープ蛋白質のジスルフィド結合を切断することによりウイルスの感染及び/又は増殖を阻害すると考えられることから、好ましくは、ウイルス感染症はエンベロープウイルスによる感染症である。エンベロープウイルスとしては、ヘルペスウイルス科のエンベロープウイルス、ポックスウイルス科のエンベロープウイルス、コロナウイルス科のエンベロープウイルス、トガウイルス科のエンベロープウイルス、フラビウイルス科のエンベロープウイルス、パラミクソウイルス科のエンベロープウイルス、ラブドウイルス科のエンベロープウイルス、オルトミクソウイルス科のエンベロープウイルス、アレナウイルス科のエンベロープウイルス、ブニヤウイルス科のエンベロープウイルス、レトロウイルス科のエンベロープウイルス、ヘパドナウイルス科のエンベロープウイルスなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
ヘルペスウイルス科のエンベロープウイルスとしては、例えば、アルファヘルペスウイルス亜科、ベータヘルペスウイルス亜科、ガンマヘルペスウイルス亜科のウイルスが挙げられる。アルファヘルペスウイルス亜科のウイルスとしては、単純ウイルス属のウイルス(例、単純ヘルペスウイルス)、水痘ウイルス属のウイルス(例、水痘帯状疱疹ウイルス)などが挙げられる。ベータヘルペスウイルス亜科のウイルスとしては、サイトメガロウイルス属のウイルス(例、ヒトサイトメガロウイルス)などが挙げられる。ガンマヘルペスウイルス亜科のウイルスとしては、リンホクリプトウイルス属のウイルス(例、EBウイルス(Epstein-Barr virus))、ラジノウイルス属のウイルス(例、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)などが挙げられる。
ポックスウイルス科のエンベロープウイルスとしては、例えば、痘瘡ウイルス、ワクチニアウイルス、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、ラクダ痘ウイルス、エクトロメリアウイルス、オルフウイルス、ウシ丘疹性口炎ウイルス、鶏痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、ヒツジ痘ウイルス、ヤギ痘ウイルス、塊皮病(ランピースキン病)ウイルス、粘液腫ウイルス、ウサギ線維腫ウイルス、豚痘ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルス、タナポックスウイルスなどが挙げられる。
コロナウイルス科のエンベロープウイルスとしては、例えば、コロナウイルス属のウイルス(例、イヌコロナウイルス、ネココロナウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、鶏伝染性気管支炎ウイルス、マウス肝炎ウイルス)、トロウイルス属のウイルス(例、ウシトロウイルス、ウマトロウイルス)などが挙げられる。
トガウイルス科のエンベロープウイルスとしては、例えば、アルファウイルス属のウイルス(例、シンドビスウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、チクングニアウイルス、オニョンニョンウイルス、セムリキ森林ウイルス、バルマ森林ウイルス、マヤロウイルス、ロスリバーウイルス)、ルビウイルス属のウイルス(例、風疹ウイルス)、アルテリウイルス属のウイルス(例、ウマ動脈炎ウイルス、サル出血熱ウイルス)などが挙げられる。
フラビウイルス科のエンベロープウイルスとしては、例えば、フラビウイルス属のウイルス(例、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、クンジンウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレーバレー脳炎ウイルス、ロシア春夏脳炎ウイルス、中央ヨーロッパダニ媒介性脳炎ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ロシオ脳炎ウイルス、イレウス脳炎ウイルス、跳躍病ウイルス、ポワッサンウイルス)、ペスチウイルス属のウイルス(例、牛ウイルス性下痢ウイルス1型及び2型、豚コレラウイルス、ボーダー病ウイルス)、へパシウイルス属のウイルス(例、C型肝炎ウイルス)、G型肝炎ウイルスなどが挙げられる。
パラミクソウイルス科のエンベロープウイルスとしては、例えば、パラミクソウイルス亜科のウイルス、ニューモウイルス亜科のウイルスが挙げられる。パラミクソウイルス亜科のウイルスとしては、レスピロウイルス属のウイルス(例、ヒトパラインフルエンザウイルス1型及び3型、センダイウイルス)、ルブラウイルス属のウイルス(例、ヒトパラインフルエンザウイルス2型及び4型、ムンプスウイルス)、モルビリウイルス属のウイルス(例、麻疹ウイルス、イヌジステンパーウイルス、牛疫ウイルス、小反芻獣疫ウイルス)、アビュラウイルス属のウイルス(例、ニューカッスル病ウイルス)、ヘニパウイルス属のウイルス(例、ヘンドラウイルス、ニパウイルス)などが挙げられる。ニューモウイルス亜科のウイルスとしては、ニューモウイルス属のウイルス(例、RSウイルス(Respiratory syncytial virus))、メタニューモウイルス属のウイルス(例、ヒト・メタニューモウイルス)などが挙げられる。
ラブドウイルス科のエンベロープウイルスとしては、例えば、リッサウイルス属のウイルス(例、狂犬病ウイルス)、ベシクロウイルス属のウイルス(例、水疱性口内炎ウイルス(VSV))などが挙げられる。
オルトミクソウイルス科のエンベロープウイルスとしては、例えば、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルスなどのインフルエンザウイルスが挙げられる。
アレナウイルス科のエンベロープウイルスとしては、例えば、アレナウイルス属のウイルス(例、ラッサウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、ブラジル出血熱ウイルス(=サビアウイルス)、アルゼンチン出血熱ウイルス(=フニンウイルス)、ベネズエラ出血熱ウイルス(=グアナリトウイルス)、ボリビア出血熱ウイルス(=マチュポウイルス))、デルタウイルス属のウイルス(例、D型肝炎ウイルス)などが挙げられる。
ブニヤウイルス科のエンベロープウイルスとしては、例えば、オルソブニヤウイルス属のウイルス(例、オロプーシェウイルス、ブニヤムウェラウイルス、ブワンバウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、タヒナウイルス、ラ・クロスウイルス、カンジキウサギウイルス)、フレボウイルス属のウイルス(例、リフトバレー熱ウイルス、トスカーナウイルス、サシチョウバエ熱(ナポリ型)ウイルス、サシチョウバエ熱(シチリア型)ウイルス)、ハンタウイルス属のウイルス(例、ハンターンウイルス、シンノンブレウイルス)、ナイロウイルス属のウイルス(例、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス)などが挙げられる。
レトロウイルス科のエンベロープウイルスとしては、例えば、オンコウイルス亜科、スプーマウイルス亜科、レンチウイルス亜科及びオルソレトロウイルス亜科のウイルスが挙げられる。オンコウイルス亜科のウイルスとしては、ヒトTリンパ球向性ウイルス1及び2型(HTLV−1及びHTLV−2)などが挙げられる。レンチウイルス亜科のウイルスとしては、ヒト免疫不全ウイルス1及び2型(HIV−1及びHIV−2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、猫免疫不全ウイルス(FIV)、馬伝染性貧血ウイルス(EIA)などが挙げられる。オルソレトロウイルス亜科のウイルスとしては、マウス白血病ウイルス(MLV)(例、同種指向性MLV(ecotropic MLV)、両指向性MLV(amphotropic MLV))、猫白血病ウイルス(FLV)、細網内皮症ウイルス、異種指向性マウス白血病ウイルス類似ウイルス(XMRV)などが挙げられる。
ヘパドナウイルス科のエンベロープウイルスとしては、例えば、B型肝炎ウイルスなどが挙げられる。
【0059】
後述の実施例に示すように、本発明の剤の予防及び/又は治療効果が特に顕著であることから、好ましくは、エンベロープウイルスは、HIV、同種指向性MLV、両指向性MLV又はVSVである。
【0060】
本発明の剤は、任意の担体、例えば医薬上許容され得る担体を含むことができる。医薬上許容され得る担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸、イプシロンアミノカプロン酸等の緩衝液、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ブドウ糖、プロピレングリコール等の等張化剤、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等のpH調整剤、グリセリン、プロピレングリコール、マクロゴール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の可溶(化)剤、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性セルロース誘導体、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等の増粘剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等の安定(化)剤、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル類、デヒドロ酢酸ナトリウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール、クレゾール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の防腐剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水、オレンジジュース等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0061】
本発明の剤は、GILT発現ベクターの細胞への導入を容易にするために、担体としてリポソーム、金属粒子、正電荷ポリマー、リン酸カルシウム、DEAEデキストランなどを使用して製剤化することもできる。リポソームとしては、カチオニックリポソーム、HVJ(センダイウイルス)−リポソーム、改良型HVJ−リポソーム(HVJ−AVEリポソーム)などが挙げられる。
【0062】
本発明の剤の剤形としては、例えば注射剤 (例、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤など)、点滴剤、経鼻投与剤等の非経口剤及び経口剤が挙げられる。非経口的な投与(例、静脈内注射、皮下注射、筋肉注射、経鼻投与、経肺投与、経皮投与、経膣投与、局所注入など)に好適な製剤としては、水性および非水性の等張な無菌の注射液剤があり、これには安定化剤、緩衝液、防腐剤、等張化剤等が含まれていてもよい。また、水性および非水性の無菌の懸濁液剤が挙げられ、これには懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、防腐剤等が含まれていてもよい。当該製剤は、アンプルやバイアルのように単位投与量あるいは複数回投与量ずつ容器に封入することができる。また、有効成分および医薬上許容され得る担体を凍結乾燥し、使用直前に適当な無菌のビヒクルに溶解または懸濁すればよい状態で保存することもできる。
【0063】
経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水のような希釈液に有効量の物質を溶解させた液剤、有効量の物質を固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、サッシェ剤または錠剤、適当な分散媒中に有効量の物質を懸濁させた懸濁液剤、有効量の物質を溶解させた溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤、あるいは散剤、顆粒剤等である。
【0064】
これらの剤は、製剤技術分野において慣用の方法、例えば日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。医薬組成物中の有効成分の含量は、剤形、有効成分の投与量などにより異なるが、例えば約0.1ないし100重量%である。
【0065】
本発明の剤の投与量は、有効成分の活性や種類、投与様式(例、経口、非経口)、病気の重篤度、投与対象となる動物種、投与対象の薬物受容性、体重、年齢等によって異なり一概に言えないが、通常、成人1日あたり約0.0001mg〜約5.0g/kgである。
【0066】
本発明の剤の適用が有効な対象としては、例えば、上記ウイルスによる感染症(例、後天性免疫不全症候群(Acquired Immunodeficiency Syndrome(AIDS))、インフルエンザ、ネコ白血病、ウシ口内炎など)の患者、及びこれらの感染症に罹患するおそれのある個体が挙げられる。本発明の剤を投与する対象としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットなどのげっ歯類及びウサギなどの実験動物、イヌ、ネコ及びカナリアなどのペット、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ラクダ及びニワトリなどの家畜及び家禽、サル、オランウータン及びチンパンジーなどの霊長類並びにヒトなどが挙げられ、特にヒトが好ましい。
【0067】
本発明の剤は、ウイルス感染症を予防及び/又は治療し得る。既に開発されているウイルス感染抑制剤や、インターフェロンによって活性化されるGILT以外の宿主抗ウイルス因子は、多段階からなるウイルス複製サイクルの内の一つの過程のみを標的とするものである。例えば、宿主抗ウイルス因子であるtetherinは感染後期過程のみ、TRIM5αは初期過程のみを抑制する。また既に臨床で使われているエイズ治療薬は、それぞれHIV複製サイクルの逆転写、インテグレーション、粒子成熟などの1つの過程にのみ作用する。それに対し、GILTは感染初期過程及び後期過程のいずれにも影響するので、本発明の剤は、他の抗ウイルス因子や治療薬を用いた場合よりも強力にウイルス感染を抑制し、またウイルスの増殖を抑制することが期待できる。
【0068】
本発明の剤は、本発明の剤以外の予防剤又は治療剤と併用してもよい。特に、HIV患者を対象とする場合、本発明の剤は、既存のHIV治療剤(例、ジドブジン(zidovudine)、ジダノシン(didanosine)、ザルシタビン(zalcitabine)、ラミブジン(lamivudine)、スタブジン(stavudine)、アバカビル(abacavir)、アデフォビル(adefovir)、アデフォビル ジピボキシル(adefovir dipivoxil)、フォジブジン チドキシル(fozivudine tidoxil)などの核酸系逆転写酵素阻害剤;ネビラピン(nevirapine)、デラビルジン(delavirdine)、エファビレンツ(efavirenz)、ロビリド(loviride)、イムノカル(immunocal)、オルチプラズ(oltipraz)などの非核酸系逆転写酵素阻害剤(イムノカル(immunocal)、オルチプラズ(oltipraz)などのように抗酸化作用を有する薬剤も含む);サキナビル(saquinavir)、リトナビル(ritonavir)、インジナビル(indinavir)、ネルフィナビル(nelfinavir)、アムプレナビル(amprenavir)、パリナビル(palinavir)、ラシナビル(lasinavir)などのプロテアーゼ阻害剤など)とは作用機序が異なるため、本発明の剤を投与することで、より高い治療効果が期待できる。また、インフルエンザなどのワクチンが知られている感染症を対象とする場合には、それらのワクチンを本発明の剤と併用してもよい。
【0069】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0070】
実施例1
ウイルス感染に対する標的細胞へのGILT導入の影響
標的細胞へのGILT導入によるウイルス感染の阻害効果を調べるために、GILT発現ベクターを導入した細胞株を作製した。
GILT発現ベクター(Origene)を、FuGENE(Roche Applied Science)を使用して、製造者の使用説明書に従ってHeLa細胞に導入することにより、GILT発現ベクターを導入した細胞株を作製した。同様に、pUC18をHeLa細胞に導入することにより、pUC18を導入した細胞株を作製した。
HIVベクターは、Invitrogenから購入したプラスミドDNAのセット(lentivirus expression kit)を用いて作製した。VSV−G発現プラスミドは、Invitrogenから購入した(lentivirus expression kitに含まれている)。HIV Env発現プラスミドは、横幕博士(名古屋医療センター)から提供を受けた。MLV Env発現プラスミドは、ウイルスから作製した。pLP1、pLP2、pLenti6/V5−GW/lacZとEnv発現プラスミドをパッケージング細胞(COS7細胞)にトランスフェクションし、同種指向性MLV(ecotropic MLV)、両指向性MLV(amphotropic MLV)、VSV−HIV及びHXB2−HIVを産生させた。これらのウイルスを以下の実験に用いた。組換えHIVベクターを用いた実験は、長崎大学の規則に従って行なった。
GILT発現ベクター又はpUC18を導入した細胞株に、同種指向性MLV(ecotropic MLV)、両指向性MLV(amphotropic MLV)、VSV又はHIVを感染させ、感染価を測定した。HIVベクターは、マーカー遺伝子としてLacZを持っており、X−Gal染色を行なうことで感染した細胞が青く染まる。青く染色された細胞の数を数え、感染価とした。各ウイルスについて、pUC18を導入した細胞株における感染価を1として、GILT発現ベクターを導入した細胞株における相対感染価を求めた。
結果を
図1に示す。GILT発現ベクターをHeLa細胞に導入することにより、ウイルス感染が強力に抑制された。この結果から、GILTはウイルスの感染初期過程を抑制することが示された。
【0071】
実施例2
ウイルスベクター産生細胞における、ウイルスベクター産生に対するGILT導入の影響
ウイルスに既に感染した細胞からのウイルス産生に対するGILT導入の影響を調べるために、様々なウイルスベクター産生細胞にGILT発現ベクターを導入し、ウイルスベクター産生を評価した。
COS7細胞に、実施例1と同様に調製した発現プラスミドをトランスフェクションすることにより、ウイルスベクター産生細胞を作製した。これらの細胞に、実施例1と同様にGILT発現ベクター又はpUC18を導入した。ウイルスベクター産生の評価は、ウイルスベクター産生細胞の培養上清をHeLa細胞に接種し、感染価を測定し、培養上清に放出されたウイルス量を測定することにより行なった。各ウイルスについて、pUC18を導入した細胞株における力価を1として、GILT発現ベクターを導入した細胞株における相対力価を求めた。
結果を
図2に示す。COS7細胞において、GILTは、様々なウイルスエンベロープ蛋白質を持つHIV−1ベクターの産生を強力に抑制した。この結果から、GILTがウイルスの感染後期過程を抑制することが示された。
【0072】
実施例3
GILTのウイルス感染阻害作用及びウイルス産生抑制作用においてジスルフィド結合切断活性は必須である
本実施例では、ジスルフィド結合切断活性を有さないGILTの変異体(GILT DCS)を作製し、そのウイルス感染阻害作用及びウイルス産生抑制作用を調べた。
GILT DCS発現ベクターは、MUTAN-K(タカラバイオ株式会社)を使用して、実施例1で使用したGILT発現ベクター中のGILTをコードする配列の46番目及び49番目のシステインをセリンに置換することにより作製した。
HXB2−HIVベクターは、実施例1と同様に作製した。
ウイルス感染阻害作用の評価は、ヒト由来細胞(293T細胞、TE671細胞及びHeLa細胞)とHXB2−HIVベクターとを使用して、実施例1と同様に行なった。なお、コントロールとして、pUC18の代わりにGFP発現ベクターpTracer(Invitrogenから購入)を使用した。
GILT発現ベクターを導入した場合、TE671細胞及びHeLa細胞においてウイルス感染は強力に阻害されたが、GILT DCS発現ベクターを導入した場合には、全く阻害されなかった(
図3)。一方、293T細胞では、いずれのベクターを導入してもウイルス感染は阻害されなかった。従って、GILTがウイルス感染阻害作用を発揮する場合、そのジスルフィド結合切断活性が必須であることが明らかとなった。
更に実施例2と同様に、COS7細胞におけるウイルス産生を評価した(
図4)。その結果、GILT発現ベクターを導入した場合(GILT Wt)にはVSV−HIVベクターの産生が強力に抑制されたが、GILT DCS発現ベクターを導入した場合(GILT DCS)には、コントロール(GFP)の70%以上のウイルスベクター産生能が残存した。従って、GILTのウイルス産生抑制作用においてジスルフィド結合切断活性が必須であることが明らかとなった。
なお、上記のCOS7細胞をベースにして作製したGILT発現細胞及びGFP発現細胞について、細胞内のHIV−1 gag蛋白質(p24)レベルを調べたところ、GILT発現細胞ではp24の存在量が顕著に減少していることが確認された(データは示さない)。
【0073】
実施例4
4−PDSのウイルス感染阻害作用及びウイルス産生抑制作用
細胞膜透過性であり、酸性条件においてチオール基と反応する活性を有する低分子化合物は、上記のGILTの作用を模倣できることが期待される。そこでそのような特性を有する低分子化合物の1つである4−PDSを使用して、そのウイルス感染阻害作用及びウイルス産生抑制作用を調べた。
4−PDS(同仁化学)は、エタノールに溶解して試験に供した(濃度:30μM)。またコントロールとして、酸性条件においてチオール基との反応性が低いDTNB(5,5'-dithiobis(2-nitrobenzoic acid))を、エタノールに溶解して試験に供した(濃度:30μM)。
また試験にはTE671細胞を使用し、ウイルスベクターとして実施例1と同様に調製した両指向性MLVを使用した。
ウイルス感染阻害試験は以下の方法により行なった:4−PDS又はDTNBの存在下でウイルスベクターを接種し、24時間後、これらの化合物を含まない新鮮培地に培地交換し、さらに24時間後にX−Gal染色により感染価を測定した。
ウイルス産生抑制試験は以下の方法により行なった:ウイルス産生細胞を化合物存在下で24時間培養した後、細胞をPBSで洗い、新鮮培地で5時間培養し、その培養上清をHeLa細胞に接種し感染価を測定した。
ウイルス感染阻害試験の結果を
図5に示す。4−PDSは、コントロール(0μM)と比較して、終濃度10μMでは20%程度、終濃度30μMでは5%程度にまでウイルス感染を阻害した。一方、DTNBは、終濃度30μMでもコントロール(0μM)の60%程度にまでしかウイルス感染を阻害しなかった。
ウイルス産生抑制試験の結果を
図6に示す。4−PDSは、コントロール(ethanol)の20%以下にまでウイルス産生を抑制したのに対し、DTNBは全く抑制しなかった。なお、細胞内のp24レベルを調べたところ、実施例2においてGILT発現ベクターを導入した場合と同様、4−PDSで処理した細胞ではp24の存在量が顕著に減少していることが確認された(データは示さない)。
以上の結果から、4−PDSが、GILTと同様のウイルス感染阻害作用及びウイルス産生抑制作用を有することが示された。
【0074】
実施例5
4−PDS【0075】
【化3】
【0076】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
ウイルス感染抑制効果は以下の方法により評価した:4−PDS(終濃度10μM、30μM、60μM又は90μM)又はエタノール(1.99μL)の存在下で、TE671/mCAT1細胞に、LacZ遺伝子を持つマウス白血病ウイルスベクターを接種し、24時間後、これらの化合物を含まない新鮮培地に培地交換し、さらに24時間後にHigh sensitive beta-galactosidase assay kit (Stratagene)を用いて細胞のLacZ活性を測定した。測定された吸光度の実測値を感染価とした。また顕微鏡で観察して生細胞が認められなかった場合を「death」と表記した。
細胞毒性はMTTアッセイにより定法に従って評価した。
結果を
図7に示す。4−PDSは、濃度依存的な感染抑制効果を示し、60μMでコントロールの40%以下にまでウイルス感染を抑制した。また60μMまで強い細胞毒性は認められなかった。
【0077】
実施例6
2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)【0078】
【化4】
【0079】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、DMSO(40μL)をコントロールとし、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM、30μM又は60μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、DMSO(6μL)をコントロールとし、2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)を終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図8に示す。2,2’-ジチオビス(ベンゾチアゾール)は、濃度依存的な感染抑制効果を示し、60μMでコントロールの10%以下にまでウイルス感染を抑制した。また90μMまで強い細胞毒性は認められなかった。
【0080】
比較例1
N−エチルマレイミド【0081】
【化5】
【0082】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、N−エチルマレイミドのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、エタノール(6μL)をコントロールとし、N−エチルマレイミド(東京化成工業)を終濃度10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図9に示す。N−エチルマレイミドは、使用した濃度範囲において細胞毒性が強く、30μM以上の濃度については感染価を測定することができなかった。
【0083】
実施例7
ジフェニルジスルフィド【0084】
【化6】
【0085】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、ジフェニルジスルフィドのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、DMSO(2μL)をコントロールとし、ジフェニルジスルフィド(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM、20μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、DMSO(0.6μL)をコントロールとし、ジフェニルジスルフィドを終濃度3μM、10μM、30μM又は60μMで使用した。
結果を
図10に示す。ジフェニルジスルフィドは、濃度依存的な感染抑制効果を示し、30μMでコントロールの10%以下にまでウイルス感染を抑制した。また60μMまで強い細胞毒性は認められなかった。
【0086】
実施例8
4,4’−ビス(2−アミノ−6−メチルピリミジル)ジスルフィド【0087】
【化7】
【0088】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、4,4’−ビス(2−アミノ−6−メチルピリミジル)ジスルフィドのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、未処理をコントロールとし、4,4’−ビス(2−アミノ−6−メチルピリミジル)ジスルフィド(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、未処理をコントロールとし、4,4’−ビス(2−アミノ−6−メチルピリミジル)ジスルフィドを終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図11に示す。4,4’−ビス(2−アミノ−6−メチルピリミジル)ジスルフィドは、濃度依存的な強い感染抑制効果を示した。また90μMまで強い細胞毒性は認められなかった。
【0089】
実施例9
2,2’−ジチオジアニリン【0090】
【化8】
【0091】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、2,2’−ジチオジアニリンのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、未処理をコントロールとし、2,2’−ジチオジアニリン(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、未処理をコントロールとし、2,2’−ジチオジアニリンを終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図12に示す。2,2’−ジチオジアニリンは、濃度依存的な強い感染抑制効果を示した。細胞毒性については、30μM以上では強くなる傾向がみられたものの、10μMまでは強い細胞毒性は認められなかった。
【0092】
実施例10
4,4’−ジチオジアニリン【0093】
【化9】
【0094】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、4,4’−ジチオジアニリンのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、未処理をコントロールとし、4,4’−ジチオジアニリン(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、未処理をコントロールとし、2,2’−ジチオジアニリンを終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図13に示す。4,4’−ジチオジアニリンは、濃度依存的な強い感染抑制効果を示した。細胞毒性については、60μM以上では強くなる傾向がみられたものの、30μMまでは強い細胞毒性は認められなかった。
【0095】
実施例11
ジベンジルジスルフィド【0096】
【化10】
【0097】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、ジベンジルジスルフィドのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、未処理をコントロールとし、ジベンジルジスルフィド(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、未処理をコントロールとし、ジベンジルジスルフィドを終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図14に示す。ジベンジルジスルフィドは、濃度依存的な強い感染抑制効果を示した。また90μMまで強い細胞毒性は認められなかった。
【0098】
実施例12
ジシクロヘキシルジスルフィド【0099】
【化11】
【0100】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、ジシクロヘキシルジスルフィドのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、未処理をコントロールとし、ジシクロヘキシルジスルフィド(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、未処理をコントロールとし、ジシクロヘキシルジスルフィドを終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図15に示す。ジシクロヘキシルジスルフィドは、濃度依存的な強い感染抑制効果を示した。また90μMまで強い細胞毒性は認められなかった。
【0101】
実施例13
ビス(4−メトキシフェニル)ジスルフィド【0102】
【化12】
【0103】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、ビス(4−メトキシフェニル)ジスルフィドのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、未処理をコントロールとし、ビス(4−メトキシフェニル)ジスルフィド(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、未処理をコントロールとし、ビス(4−メトキシフェニル)ジスルフィドを終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図16に示す。ビス(4−メトキシフェニル)ジスルフィドは、濃度依存的な強い感染抑制効果を示した。細胞毒性については、30μM以上では強くなる傾向がみられた。
【0104】
比較例2
ジアミルジスルフィド【0105】
【化13】
【0106】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、ジアミルジスルフィドのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、未処理をコントロールとし、ジアミルジスルフィド(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、未処理をコントロールとし、ジアミルジスルフィドを終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図17に示す。ジアミルジスルフィドは、使用した濃度範囲では強い感染抑制効果を示さなかった。また使用した濃度範囲では強い細胞毒性も認められなかった。
【0107】
実施例14
テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)【0108】
【化14】
【0109】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、TMTDのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、未処理をコントロールとし、TMTD(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM又は30μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、未処理をコントロールとし、TMTDを終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図18に示す。TMTDは、濃度依存的な強い感染抑制効果を示した。また90μMまで強い細胞毒性は認められなかった。
【0110】
比較例3
シスタミン【0111】
【化15】
【0112】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、シスタミンのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、未処理をコントロールとし、シスタミン硫酸塩(Cystamine sulfate)(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、未処理をコントロールとし、シスタミン硫酸塩を終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図19に示す。シスタミンは、使用した濃度範囲では強い感染抑制効果を示さなかった。また使用した濃度範囲では強い細胞毒性も認められなかった。
【0113】
実施例15
ホルムアミジンジスルフィド【0114】
【化16】
【0115】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、ホルムアミジンジスルフィドのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、未処理をコントロールとし、ホルムアミジンジスルフィド(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、未処理をコントロールとし、ホルムアミジンジスルフィドを終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図20に示す。ホルムアミジンジスルフィドは、濃度依存的な強い感染抑制効果を示した。また90μMまで強い細胞毒性は認められなかった。
【0116】
実施例16
ジフルフリルジスルフィド【0117】
【化17】
【0118】
のウイルス感染抑制効果及び細胞毒性
実施例5と同様に、ジフルフリルジスルフィドのウイルス感染抑制効果及び細胞毒性を評価した。但し、ウイルス感染抑制効果の評価においては、未処理をコントロールとし、ジフルフリルジスルフィド(東京化成工業)を終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。また細胞毒性の評価においては、未処理をコントロールとし、ジフルフリルジスルフィドを終濃度3μM、10μM、30μM、60μM又は90μMで使用した。
結果を
図21に示す。ジフルフリルジスルフィドは、濃度依存的な強い感染抑制効果を示した。また90μMまで強い細胞毒性は認められなかった。
【0119】
以上のように、GILT発現ベクターの導入又はGILTの模倣体による処理により、ウイルス感染症の予防及び/又は治療が可能であることが示された。