(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057319
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】コンデンサマイクロホン
(51)【国際特許分類】
H04R 19/04 20060101AFI20161226BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20161226BHJP
H04R 1/04 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
H04R19/04
H04R1/02 106
H04R1/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-148150(P2012-148150)
(22)【出願日】2012年7月2日
(65)【公開番号】特開2014-11703(P2014-11703A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年4月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】
渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭51−084537(JP,U)
【文献】
実公昭42−006962(JP,Y1)
【文献】
特開2011−009807(JP,A)
【文献】
特開昭55−086299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00− 1/08
H04R 1/12− 1/14
H04R 1/42− 1/46
H04R 11/00−11/06
H04R 11/14
H04R 13/00−15/02
H04R 19/00−19/04
H04R 21/00−21/02
H04R 23/00−23/02
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサマイクロホンユニットと、
上記コンデンサマイクロホンユニットを収納し、上記コンデンサマイクロホンユニットの後部音響端子に連なる空間を有するとともに周壁に形成されていて上記空間に連なる開口を有するマイクロホンケースと、
上記マイクロホンケースの上記空間内に配置されて上記空間の容積を減ずる容積制限部材と、
上記マイクロホンケースの上記空間内に配置された回路基板と、
上記回路基板に搭載されコンデンサマイクロホンユニットの出力信号をマイクロホン出力信号として出力するために処理する電子回路部と、を有してなり、
上記容積制限部材は、上記回路基板に搭載されている上記電子回路部に対する逃げとなる凹陥部を有するとともに、二分されていて上記回路基板を両面から挟み込んで上記電子回路部を包囲して上記回路基板に接着され、
上記容積制限部材はまた、上記容積制限部材内の空間に上記回路基板が配置されて、上記マイクロホンケースの上記開口から上記空間に進入する音波が上記電子回路部に到達することを遮蔽する遮蔽部材を兼ねるとともに、上記回路基板の音波による振動を防止する制振部材を兼ねているコンデンサマイクロホン。
【請求項2】
上記容積制限部材と上記回路基板の接着面には、隙間を密閉するシーラントが介在している請求項1記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項3】
上記コンデンサマイクロホンユニットは単一指向性マイクロホンユニットである請求項1または2記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項4】
上記容積制限部材は、ポリカーボネイト素材からなる請求項1乃至3のいずれかに記載のコンデンサマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大音圧の下で使用されても電子回路部の振動を抑制して、良好な周波数応答と、附帯音の無い高音質の音声信号を得ることができるコンデンサマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
楽器の演奏音を収音するために楽器の近傍の強大な音圧の下で使用されるマイクロホンがある。楽器の近傍で用いられるマイクロホンは、演奏者の動作の妨げや視界の妨げにならないように、ダイナミックマイクロホンよりも小型化が容易なコンデンサマイクロホンが多く用いられている。マイクロホンで収音した楽器の演奏音は演奏会場などにおいて拡声する(「PA」といわれる場合もある)のに用いられることが多く、指向性は単一指向性であることが多い。単一指向性コンデンサマイクロホンは、マイクロホンケースの側部に開口が設けられ、コンデンサマイクロホンユニットの後部音響端子と上記開口が連通している。上記開口は、コンデンサマイクロホンユニットの後部音響端子に音波を取り込む役目を持っている。
【0003】
コンデンサマイクロホンは、マイクロホンユニットの出力インピーダンスを低くするためのインピーダンス変換器などの電子回路を必要とする。この点、ボイスコイルの両端から信号を出力するダイナミックマイクロホンと異なる。コンデンサマイクロホンは、上記のように電子回路を必要とする一方、なるべく小型にする必要があることから、マイクロホンユニットの後部音響端子付近に、電子回路部が搭載された回路基板が組み込まれる。
【0004】
このような構成のコンデンサマイクロホンを楽器の近傍などで使用すると、マイクロホンケースから取り込まれる大きな音圧の音波が回路基板を振動させ、回路基板に搭載されている電子回路部が振動することによって、マイクロホンユニットによって電気音響変換される目的音以外の附帯音を発生させる。この附帯音は音質の劣化をもたらすので、電子回路部が音波によって振動しないようにすることが望まれる。
【0005】
マイクロホンケース内には、マイクロホンユニットの後部音響端子の後方に、マイクロホンケースの開口に通じる空間があり、この空間に上記電子回路部を搭載した回路基板を収納している。上記空間は音響容量として動作するため、この空間の音響質量と上記マイクロホンケースの開口とで共振が発生し、この共振はマイクロホンの周波数応答を劣化させる。上記空間の容積が大きければ電子回路部品およびこれを搭載した回路基板の収納は容易であるが、音響容量のインピーダンスが低くなり、主要な収音周波数帯域で共振しやすくなる。
【0006】
したがって、上記音響容量のインピーダンスを高めるために、上記空間の容積を減じる必要がある。上記空間の容積を減じることによって上記音響容量のインピーダンスが高くなり、上記空間の共振周波数が高くなる。このようにして上記空間の共振周波数を主要収音周波数帯域の上限よりも高くすると、共振周波数以下の周波数帯域においては、指向周波数応答は劣化しない。
【0007】
コンデンサマイクロホンユニットの後部音響端子後方に形成されているマイクロホンケースの空間の共振を防止するために、上記空間に音響抵抗として機能する充填部材を配置したコンデンサマイクロホンが知られている(特許文献1参照)。特許文献1記載のコンデンサマイクロホンにおける充填部材は、無数の連続気孔を有するプラスチックの焼結体で、マイクロホンケースの上記空間に配置されている。上記充填部材は、マイクロホンケースの側面の開口から上記空間に進入する音波に対し音響抵抗として機能し、上記空間の共振を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−9807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1記載の発明によれば、マイクロホンケースの内部空間の共振防止効果が認められる。しかし、特許文献1記載の発明は、マイクロホンケースの小さな容積の内部空間に電子回路部を配置するものではなく、マイクロホンケース内に進入する音波によって電子回路部が振動することを防止する構成としたものでもない。
【0010】
本発明は、電子回路部を収納するマイクロホンケースの空間の容積を減じて上記空間が共振しにくいようにするとともに、上記電子回路部が音波を受けて振動することを防止することができるコンデンサマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るマイクロホンは、
コンデンサマイクロホンユニットと、
上記コンデンサマイクロホンユニットを収納し、上記コンデンサマイクロホンユニットの後部音響端子に連なる空間を有するとともに周壁に形成されていて上記空間に連なる開口を有するマイクロホンケースと、
上記マイクロホンケースの上記空間内に配置されて上記空間の容積を減ずる容積制限部材と、
上記マイクロホンケースの上記空間内に配置された回路基板と、
上記回路基板に搭載され
コンデンサマイクロホンユニットの出力信号をマイクロホン出力信号として出力するために処理する電子回路部と、を有してなり、
上記容積制限部材は、上記回路基板に搭載されている上記電子回路部
に対する逃げとなる凹陥部を有するとともに、二分されていて上記回路基板を両面から挟み込んで上記電子回路部を包囲し
て上記回路基板に接着され、
上記容積制限部材はまた、上記容積制限部材内の空間に上記回路基板が配置されていて、上記マイクロホンケースの上記開口から上記空間に進入する音波が上記電子回路部に到達することを遮蔽する遮蔽部材を兼ね
るとともに、上記回路基板の音波による振動を防止する制振部材を兼ねていることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
コンデンサマイクロホンユニットの後部音響端子に連なりかつマイクロホンケースの開口に連なるマイクロホンケースの空間の容積は、容積制限部材によって小さくなるため、上記空間は共振しにくくなり、良好な周波数応答特性を得ることができる。大きな音圧の音波がマイクロホンケース内に進入しても、容積制限部材が電子回路部まで到達することを遮蔽するから、電子回路部品の振動による附帯音の発生がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るコンデンサマイクロホンの実施例を示す縦断面図である。
【
図2】上記実施例を、縦断方向を90度変えて示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るコンデンサマイクロホンの実施例について
図1、
図2を参照しながら説明する。
【実施例】
【0015】
図1、
図2において、符号1はマイクロホンケースを示している。マイクロホンケース1は、その主要部分である外周壁を構成する円筒ケース11と、円筒ケース11の先端開口部に被せられているヘッドケース15と、円筒ケース11の後端開口部に結合されているコネクタケース14を有してなる。円筒ケース11の内部は空間12になっている。円筒ケース11の先端部内周にはコンデンサマイクロホンユニット2が収納されている。コンデンサマイクロホンユニット2の指向性は単一指向性である。円筒ケース11には適宜数の開口13が形成されていて、円筒ケース11の内部の空間12は上記開口13に連通し、上記空間12は開口13からマイクロホン外に開放している。
【0016】
コンデンサマイクロホンユニット2は、周知のとおり、音波を受けて振動する振動板と、この振動板に微小な間隔をおいて対向させて固定した対向電極20を有している。上記振動板と対向電極20はコンデンサを構成していて、振動板が振動すると上記コンデンサの容量が変化することにより電気音響変換される。ヘッドケース15にはマイクロホンユニット2に音波を導入する開口16が形成され、開口16は前部音響端子となっている。対向電極20には、この対向電極を厚さ方向に貫通して上記振動板の背面側空間をマイクロホンユニット2の外部に連通させる適宜数の孔が形成され、これらの孔は後部音響端子21を構成している。円筒ケース11の内部の空間12は後部音響端子21に連通し、また、前述のとおり開口13に連通している。
【0017】
円筒ケース11の内部の空間12内には、空間12の容積を減ずる容積制限部材31,32が配置されている。すなわち、容積制限部材は二分された二つの容積制限部材31,32で構成されている。容積制限部材31,32は空間12の多くの容積を占有することができるだけの体積を有するとともに、円筒ケース11の開口13を遮蔽することのないような形と大きさになっている。
【0018】
円筒ケース11の内部の空間12内にはまた、電子回路部を搭載した回路基板4が配置されている。回路基板4の一端部(図において下端部)は、円筒ケース11の基端部内周側に嵌められて固定されているベース部材18によって保持されている。回路基板4の他端部(図において上端部)は、導電性の保持部材41で挟み込まれ、対向電極20の中心部に埋め込まれている電極部材22に上記保持部材41が押圧されることにより保持されている。回路基板4は、両端部が上記保持構造によって保持されることにより、円筒ケース11内の中央部に円筒ケース11の中心軸線と平行に配置されている。
【0019】
回路基板4に搭載されている電子回路部5(
図2参照)は、コンデンサマイクロホンユニット2の出力信号をマイクロホン出力信号として出力するために処理する回路部である。より具体的には、電子回路部5はコンデンサマイクロホンユニット2の出力インピーダンスを変換するためのFET51を含み、必要に応じてバッファアンプ、平衡出力するための信号処理回路などを含む。対向電極20はマイクロホンユニットの信号を出力する一方の電極を構成していて、上記電極部材22、保持部材41を通じて回路基板4に形成されている所定の回路パターンに電気的に接続されている。前記振動板はマイクロホンユニットの信号を出力する他方の電極を構成していて、上記振動板は、マイクロホンユニットケース、マイクロホンケース1などを通じて回路基板4に形成されている所定の回路パターンに電気的に接続されている。
【0020】
容積制限部材31,32は、回路基板4を両面側からサンドイッチ状に挟み込んでいる。容積制限部材31,32は、互いに対向する面に凹陥部が形成されている。電子回路部5は、FET51、抵抗素子、コンデンサ、トランスなど、立体的な回路部品を有している。容積制限部材31,32の凹陥部は、回路基板4に搭載されている回路部品のうち少なくともFET51に対する逃げとなっている。
【0021】
容積制限部材31,32は、その基部が前記ベース部材18に固着されるとともに、その上端側の回路基板4との対向面が回路基板4との接着面8となっていて、マイクロホンケース1内に強固に固定されている。容積制限部材31,32は、前記空間の容積を減ずるばかりでなく、音波を遮蔽する遮蔽部材を兼ねていて、前記開口13から上記空間12に進入する音波が電子回路部5に到達することを遮蔽する働きもしている。本実施例では、容積制限部材31,32の素材としてポリカーボネイト(PC)を用いたが、他の同等の素材を用いてもよい。容積制限部材31,32は、音波の遮蔽部材として機能させるために、厚みの厚い固体状の部材に上記凹陥部を形成した形になっている。
【0022】
容積制限部材31,32は、回路基板4との対向面が接着面8となっていることによってマイクロホン外からの音波が電子回路部5に至る前に遮蔽される構造になっている。しかし、接着面8には隙間が生じることがあり、隙間が生じると音波の遮蔽効果が低下するので、接着面8には、隙間を密閉するシーラントを介在させるものとする。接着面8に隙間が生じているか否かに関わらずシーラントを介在させることにより、音波の遮蔽効果をより高めることができる。
【0023】
容積制限部材31,32は、上記のように電子回路部を搭載した回路基板4をその両面側から挟み込み、回路基板4に接着されているため、マイクロホン内に進入する音波によって回路基板4が振動することを防止する役目を果たしている。すなわち、容積制限部材31,32は回路基板4の制振部材を兼ねている。
【0024】
マイクロホンケース1を構成する円筒ケース11に結合されているコネクタケース14内にはコネクタ7が組み込まれている。コネクタ7にはマイクロホンケーブルの一端に設けられているケーブルコネクタが結合され、マイクロホンの出力信号がマイクロホンケーブルを通じて外部回路に向け伝送されるようになっている。
【0025】
以上説明したコンデンサマイクロホンの実施例によれば、コンデンサマイクロホンユニット2の後部音響端子21が連通するマイクロホンケース1の内部の空間12の多くの容積が容積制限部材31,32によって占有されている。これにより上記空間12の容積が小さくなり、空間12の共振が起こりにくく、仮に共振が起こったとしても共振周波数が高くなる。したがって、通常一般的な音声の周波数帯域において良好な周波数応答性を得ることができる。
【0026】
また、容積制限部材31,32は、マイクロホンケース1の開口13から上記空間12に進入する音波が電子回路部5に到達することを遮蔽する遮蔽部材を兼ねているため、上記空間12に大音圧の音波が進入したとしても、電子回路部5まで大音圧の音波が進入することを遮蔽することができる。したがって、大音圧の音波による電子回路部5の振動を防止することができ、電子回路部5が振動することによる附帯音の発生がなく、高音質のコンデンサマイクロホンを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係るコンデンサマイクロホンは、大音圧の音波が進入しても高音質の音声信号を得ることができるため、特に、大音響を発する楽器の近傍で使用するマイクロホンとして好適である。しかし、大音響の下で使用することに限られるものではなく、あらゆる条件のもとで使用することができ、たまたま大音響の音波が進入したとしても音質が損なわれないという利点がある。
【符号の説明】
【0028】
1 マイクロホンケース
2 コンデンサマイクロホンユニット
5 電子回路部
8 接着面
7 コネクタ
11 円筒ケース
12 空間
13 開口
14 コネクタケース
20 対向電極
21 後部音響端子
31 容積制限部材
32 容積制限部材