(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板の周縁部を収容する収容溝がそれぞれに設けられており、前記収容溝の内面を前記基板の周縁部に押し付けることにより、把持位置において前記基板を水平な姿勢で把持する複数のチャックピンと、
前記複数のチャックピンに把持されている基板に向けて処理液を吐出するノズルと、
前記複数のチャックピンの上方にそれぞれ配置されており、前記基板から排出される処理液を前記基板の周囲に案内する複数のガイド部材と、
前記複数のガイド部材と共に、前記基板を通る鉛直な基板回転軸線まわりに前記複数のチャックピンを回転させるスピンモータと、
前記基板回転軸線まわりに前記複数のチャックピンおよびガイド部材を取り囲んでおり、前記複数のチャックピンに把持されている基板から外方に排出された処理液を受け止める筒状のカップとを含み、
前記複数のガイド部材のそれぞれは、前記収容溝よりも内方でかつ前記収容溝よりも上方の位置に配置されたガイド内縁と、前記ガイド内縁と等しいまたは前記ガイド内縁よりも下方の高さで、かつ前記チャックピンよりも外方の位置に配置されたガイド外縁とを含む、基板処理装置。
前記ガイド部材は、前記基板回転軸線に直交する方向である径方向における前記チャックピンと前記ガイド外縁との間に少なくとも一部が配置されており、上端が下端よりも内方に位置するように傾斜した下向きの下傾斜面をさらに含む、請求項1または2に記載の基板処理装置。
前記ガイド部材は、前記ガイド内縁から斜め下に外方に延びており、前記収容溝よりも上方に配置された内向き面をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
前記ピン上面から前記ガイド内縁までの高さは、前記把持位置に位置する基板の上面からまで前記ピン上面の高さよりも大きい、請求項6または7に記載の基板処理装置。
前記基板回転軸線に直交する方向である径方向における前記ガイド内縁から前記ピン上面の内縁までの距離は、前記把持位置に位置する基板の上面から前記ピン上面までの高さよりも大きい、請求項6〜8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転状態の基板に供給された処理液は、基板に沿って外方に広がり、基板の周縁部に移動する。複数のチャックピンは、周方向に間隔を空けて配置されている。チャックピンが存在しない位置では、大部分の処理液が、基板の周縁部から概ね水平方向に排出される。これに対して、チャックピンが存在する位置では、チャックピンの近傍に達した処理液が、基板の上面から上方に突出するチャックピンの上部に衝突して、液滴またはミストに変化する場合がある。そのため、基板の周囲に排出されるべき処理液が、液滴またはミストの形態で基板に再付着する場合がある。また、チャックピンの近傍に達した処理液が、チャックピンの上部を乗り越えて、斜め上に外方に飛散する場合もある。
【0006】
基板の周囲に飛散した処理液は、カップの内面に衝突して、基板側に跳ね返る。カップと処理液との衝突によって発生した処理液の液滴やミストは、内方に移動しながら、ダウンフロー(下降流)に乗って下方に移動する。そのため、基板の周縁部からの処理液の飛散方向が概ね水平である場合には、処理液の液滴やミストが基板よりも下方に移動する。これに対して、基板の周縁部からの処理液の飛散方向が斜め上方向である場合には、処理液の液滴やミストが、基板の上面に向かって斜め下に内方に移動するので、処理液が基板に再付着してしまう場合がある。そのため、基板とカップとの径方向の間隔を広げるために、カップを径方向に大型化するなどの再付着防止の対策を講じる必要がある。
【0007】
特許文献1の基板処理装置では、遮断板の下面が基板の上面に近接している状態で処理液が基板に供給されるので、処理液が、基板の周縁部から斜め上に外方に飛散したとしても、処理液が基板に再付着し難い。しかしながら、この基板処理装置では、基板の上面全域が遮断板によって覆われているので、基板の上面に対する処理液の着液位置を中央部と周縁部との間で移動させることができない。また、遮断板を基板の上方で上下方向に移動させるスペースが必要となるので、遮断板が設けられていない構成に比べて基板処理装置が上下方向に大型化してしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、汚染や品質低下の原因となる基板に対する処理液の再付着を低減できる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基板の周縁部を収容する収容溝がそれぞれに設けられており、前記収容溝の内面を前記基板の周縁部に押し付けることにより、把持位置において前記基板を水平な姿勢で把持する複数のチャックピンと、前記複数のチャックピンに把持されている基板に向けて処理液を吐出するノズルと、前記複数のチャックピンの上方にそれぞれ配置されており、前記基板から排出される処理液を前記基板の周囲に案内する複数のガイド部材と、前記複数のガイド部材と共に、前記基板を通る鉛直な基板回転軸線まわりに前記複数のチャックピンを回転させるスピンモータと、前記基板回転軸線まわりに前記複数のチャックピンおよびガイド部材を取り囲んでおり、前記複数のチャックピンに把持されている基板から外方に排出された処理液を受け止める筒状のカップとを含み、前記複数のガイド部材のそれぞれは、前記収容溝よりも内方でかつ前記収容溝よりも上方の位置に配置されたガイド内縁と、前記ガイド内縁と等しいまたは前記ガイド内縁よりも下方の高さで、かつ前記チャックピンよりも外方の位置に配置されたガイド外縁とを含む、基板処理装置である。基板の周縁部は、基板の表面の平坦部および基板の裏面の平坦部よりも外方の環状の部分を意味する。したがって、基板の周縁部は、基板の表面周縁部に位置する傾斜部と、基板の裏面周縁部に位置する傾斜部と、基板の周端面とを含む。
【0010】
この構成によれば、基板の周縁部が、複数のチャックピンの収容溝内に収容される。そして、各収容溝の内面が、基板の周縁部に押し付けられる。これにより、基板が、把持位置において水平な姿勢で把持される。複数のガイド部材は、複数のチャックピンの上方にそれぞれ配置されている。スピンモータは、複数のガイド部材と共に複数のチャックピンを基板回転軸線まわりに回転させる。ノズルから吐出された処理液は、複数のチャックピンに把持されている回転状態の基板に供給される。したがって、基板に供給された処理液は、基板に沿って外方に広がり、基板の周縁部から外方に振り切られる。カップは、基板回転軸線まわりに複数のチャックピンおよびガイド部材を取り囲んでいる。したがって、基板から排出された処理液は、カップによって受け止められる。
【0011】
各ガイド部材のガイド内縁は、チャックピンの収容溝よりも内方でかつ収容溝よりも上方の位置に配置されている。前述のように、基板の周縁部は、収容溝内に収容される。したがって、ガイド内縁は、基板の上面よりも上方で、かつ基板の周端面よりも内方の位置に配置される。そのため、内向き(基板回転軸線側)に開いた縦断面(鉛直面で切断した断面)を有する捕集溝が、基板、チャックピン、およびガイド部材によって形成される。回転状態の基板に供給された処理液は、遠心力を受けて外方に広がる。チャックピンの近傍に達した処理液は、この捕集溝内に入り込む。
【0012】
チャックピンの近傍に達した処理液が、基板、チャックピン、およびガイド部材によって形成された捕集溝内に入り込むので、処理液とチャックピンとの衝突によって液滴やミストが発生したとしても、液滴やミストの拡散が捕集溝の内面によって抑えられる。これにより、基板に対する処理液の再付着が低減される。さらに、チャックピンを乗り越えようとする処理液が捕集溝内に捕集されるので、基板の周縁部から斜め上に飛散する処理液の量を低減できる。したがって、カップと処理液との衝突によって発生した処理液の液滴やミストが、基板に付着することを低減できる。
【0013】
また、捕集溝に入り込んだ処理液は、ガイド部材の下側の面に沿ってガイド外縁の方に案内される。各ガイド外縁が、ガイド内縁と等しいまたはガイド内縁よりも下方の高さに配置されているので、外方に流れる処理液は、ガイド部材によって水平方向または斜め下方向に案内される。さらに、ガイド外縁が、チャックピンよりも外方に配置されているので、処理液は、ガイド部材によってチャックピンよりも外方の位置まで確実に案内される。したがって、処理液が、チャックピンから斜め上に外方に飛散することを抑制できる。これにより、汚染や品質低下の原因となる処理液の再付着を低減できる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記ガイド外縁は、前記収容溝よりも下方に配置されている、請求項1に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板の周縁部を収容するチャックピンの収容溝よりも下方にガイド外縁が配置されているので、基板は、ガイド外縁よりも上方に配置される。言い換えると、ガイド外縁は、把持位置で把持されている基板の下面よりも下方に配置されている。したがって、処理液は、ガイド部材によって基板よりも下方まで案内され、基板よりも下方の位置からカップに向かって外方に飛散する。そのため、基板よりも上方の高さで発生する液滴およびミストの量を低減できる。これにより、処理液の再付着をさらに低減できる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記ガイド部材は、前記基板回転軸線に直交する方向である径方向における前記チャックピンと前記ガイド外縁との間に少なくとも一部が配置されており、上端が下端よりも内方に位置するように傾斜した下向きの下傾斜面をさらに含む、請求項1または2に記載の基板処理装置である。前記下傾斜面は、水平面に対して傾いた平面であってもよいし、斜め上外方に膨らんだ曲面であってもよい。
【0016】
この構成によれば、上端が下端よりも内方に位置するように傾斜した下向きの下傾斜面が、ガイド部材に設けられている。下傾斜面が水平面に対して傾斜しているので、処理液は、下傾斜面によって斜め下に外方に案内される。さらに、下傾斜面の少なくとも一部が、径方向におけるチャックピンとガイド外縁との間に配置されているので、処理液は、チャックピンよりも外方の位置で斜め下に案内される。そのため、基板の周縁部から斜め上に飛散する処理液の量を低減できる。これにより、処理液の再付着をさらに低減できる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、前記ガイド部材は、前記ガイド内縁から斜め下に外方に延びており、前記収容溝よりも上方に配置された内向き面をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、基板回転軸線に径方向に対向するように水平面に対して傾斜した内向き面が、ガイド部材に設けられている。内向き面は、ガイド内縁から斜め下に外方に延びており、収容溝よりも上方に配置されている。したがって、チャックピンの近傍に達した処理液は、基板、チャックピン、およびガイド部材によって形成された捕集溝内に入り込むと共に、内向き面によって斜め下に外方に案内される。そのため、斜め上に外方に飛散する処理液の量がさらに低減される。これにより、処理液の再付着をさらに低減できる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記ガイド部材は、前記ガイド外縁から斜め上に内方に延びる外向き面をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、上端が下端よりも内方に位置するように傾斜した外向きの外向き面が、ガイド部材に設けられている。外向き面は、ガイド外縁から斜め上に内方に延びている。上端が下端よりも外方に位置するように外向き面が傾斜している場合、処理液は、外向き面によって斜め上に外方に案内される。したがって、斜め上に外方に飛散する処理液の量が増加する。そのため、上端が下端よりも内方に位置するように外向き面を傾けることにより、斜め上に外方に飛散する処理液の量をさらに低減できる。これにより、処理液の再付着をさらに低減できる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、前記チャックピンは、前記収容溝の上方に配置されたピン上面を含み、前記ガイド部材は、前記チャックピンとは別の部材であり、前記ピン上面の上に配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、チャックピンおよびガイド部材が別々の部材なので、チャックピンの形状の複雑化を抑制できる。同様に、ガイド部材の形状の複雑化を抑制できる。さらに、ガイド部材がピン上面の上に配置されているので、ガイド部材は、ピン上面を乗り越えて外方に飛散しようとする処理液を水平方向または斜め下方向に確実に案内できる。そのため、斜め上に外方に飛散する処理液の量をさらに低減できる。これにより、処理液の再付着をさらに低減できる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記ガイド部材は、平面視で前記ピン上面の全域に重なっている、請求項6に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、ガイド部材がピン上面の上方に配置されており、ガイド部材とピン上面とが平面視で重なっている。平面視におけるガイド部材の面積は、平面視におけるピン上面の面積よりも大きく、ピン上面の全域が、ガイド部材によってその上方から覆われている。したがって、ピン上面がガイド部材によって部分的に覆われている場合よりも、斜め上に外方に飛散する処理液の量を低減できる。これにより、処理液の再付着をさらに低減できる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、前記ピン上面から前記ガイド内縁までの高さは、前記把持位置に位置する基板の上面からまで前記ピン上面の高さよりも大きい、請求項6または7に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、ピン上面からガイド内縁までの高さが、把持位置に位置する基板の上面からピン上面までの高さよりも大きい。言い換えると、基板の上面からピン上面までの上下方向長さが小さい。したがって、基板の上面からガイド内縁までの上下方向長さが短縮され、ガイド内縁が基板の上面に近接する。そのため、基板、チャックピン、およびガイド部材によって形成された捕集溝の上下方向長さが短縮され、捕集溝の体積が減少する。これにより、基板とガイド部材との間の上下方向の隙間が処理液で満たされ易くなる。捕集溝が処理液で満たされている場合、後続の処理液は、捕集溝の内面に直接衝突しない。したがって、衝突により発生する処理液の液滴やミストの量が低減される。これにより、処理液の再付着を低減できる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、前記基板回転軸線に直交する方向である径方向における前記ガイド内縁から前記ピン上面の内縁までの距離は、前記把持位置に位置する基板の上面から前記ピン上面までの高さよりも大きい、請求項6〜8のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、ガイド内縁からピン上面の内縁までの径方向の距離が、把持位置に位置する基板の上面からピン上面までの高さよりも大きい。言い換えると、ピン上面の内縁から内方へのガイド部材の突出量が大きく、ガイド内縁から基板の周端面までの径方向の距離が大きい。したがって、捕集溝の深さ(捕集溝の開口部から捕集溝の底までの水平方向の長さ)が十分に確保される。そのため、ガイド部材は、チャックピンを乗り越えようとする処理液を確実に捕獲して、水平方向または斜め下方向に案内できる。これにより、処理液の再付着を低減できる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、前記複数のガイド部材は、前記基板回転軸線まわりの方向である周方向に沿って環状に配置されており、前記周方向への前記ガイド部材の長さは、前記周方向に隣接する2つの前記ガイド部材の間隔(周方向の間隔)よりも大きい、請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、ガイド部材が、周方向に隣接する2つのガイド部材の間隔よりも大きい周方向長さを有しており、周方向に長い。したがって、ガイド部材によって処理液の飛散方向が制御される範囲が周方向に長い。そのため、複数のガイド部材は、斜め上に外方に飛散する処理液の量をさらに低減できる。これにより、処理液の再付着が低減される。しかも、基板上の処理液は、周方向に長い複数のガイド部材によって複数のガイド部材の内方に溜められるので、基板の上面全域を覆う液膜を形成する際に必要な処理液の量を低減できる。これにより、基板処理装置のランニングコストを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1に備えられたチャンバー4内の構成を示す模式図である。
図2は、スピンチャック5の模式的な平面図である。
図3は、チャックピン12およびガイド部材16の模式的な平面図である。
図4Aおよび
図4Bは、チャックピン12が閉位置に位置している状態と開位置に位置している状態とを示す模式的な平面図である。
図5は、チャックピン12およびガイド部材16の模式的な縦断面図である。
図4Aおよび
図4Bに示すように、チャックピン12は、閉位置(
図4Aの位置)と開位置(
図4Bの位置)との間で移動可能である。以下では、特に断りがない限り、チャックピン12が閉位置に位置している状態について説明する。
【0026】
図1に示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wに処理液を供給する複数の処理ユニット2と、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉を制御する制御装置3とを含む。
図1に示すように、各処理ユニット2は、基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式のユニットである。各処理ユニット2は、内部空間を有する箱形のチャンバー4と、チャンバー4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な基板回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、スピンチャック5に保持されている基板Wに処理液を供給する処理液供給装置6と、基板回転軸線A1まわりにスピンチャック5を取り囲む筒状のカップ7とを含む。
【0027】
図1に示すように、チャンバー4は、スピンチャック5等を収容する箱形の隔壁8と、隔壁8の上部から隔壁8内にクリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送る送風ユニットとしてのFFU9(ファン・フィルター・ユニット9)と、カップ7の下部からチャンバー4内の気体を排出する排気ダクト10とを含む。FFU9は、隔壁8の上方に配置されている。FFU9は、隔壁8の天井からチャンバー4内に下向きにクリーンエアーを送る。排気ダクト10は、カップ7の底部に接続されており、基板処理装置1が設置される工場に設けられた排気設備に向けてチャンバー4内の気体を案内する。したがって、チャンバー4内を下方に流れるダウンフロー(下降流)が、FFU9および排気ダクト10によって形成される。基板Wの処理は、チャンバー4内にダウンフローが形成されている状態で行われる。
【0028】
図1に示すように、スピンチャック5は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース11と、スピンベース11の上面外周部から上方に突出する複数のチャックピン12と、複数のチャックピン12を開閉させるチャック開閉機構13とを含む。スピンチャック5は、さらに、スピンベース11の中央部から下方に延びるスピン軸14と、スピン軸14を回転させることによりスピンベース11およびチャックピン12を基板回転軸線A1まわりに回転させるスピンモータ15と、遠心力によって基板Wから排出される処理液を基板Wの周囲に案内する複数のガイド部材16とを含む。
【0029】
図1に示すように、スピンベース11の外径は、基板Wの直径よりも大きい。スピンベース11の中心線は、基板回転軸線A1上に配置されている。複数のチャックピン12は、スピンベース11の外周部でスピンベース11に保持されている。複数のチャックピン12は、周方向X1(基板回転軸線A1まわりの方向)に間隔を空けて配置されている。各チャックピン12は、基板Wの周縁部に押し付けられる。これにより、基板Wの下面とスピンベース11の上面とが上下方向に離れた状態で、基板Wが水平に保持される。そして、複数のチャックピン12によって基板Wが挟まれた状態で、スピンモータ15がスピン軸14を回転させると、基板Wは、スピンベース11およびチャックピン12と共に基板回転軸線A1まわりに回転する。
【0030】
図5に示すように、チャックピン12は、基板Wの周端面に押し付けられる把持部17と、基板Wの下面周縁部を支持する支持部18とを含む。
図3に示すように、チャックピン12は、さらに、把持部17および支持部18と共に、基板回転軸線A1と平行なピン回転軸線A2まわりに回転する土台部19を含む。
図5に示すように、把持部17、支持部18、および土台部19は、一体である。把持部17および支持部18は、土台部19に支持されている。土台部19は、チャック開閉機構13によってピン回転軸線A2まわりに駆動される。把持部17および支持部18は、スピンベース11の上方に配置されている。把持部17および支持部18は、スピンベース11の外周面よりも内方(基板回転軸線A1側。
図5では左側)に配置されている。把持部17は、支持部18よりも上方に配置されている。
図3に示すように、把持部17および支持部18は、ピン回転軸線A2の周囲に配置されており、ピン回転軸線A2に交差していない。
【0031】
図5に示すように、把持部17は、基板回転軸線A1側に開いたV字状の縦断面(鉛直面で切断した断面)を有する収容溝20を形成する2つの溝内面21、22を含む。2つの溝内面21、22は、収容溝20の底から斜め上に内方に延びる上側溝内面21と、収容溝20の底から斜め下に内方に延びる下側溝内面22と含む。支持部18は、2つの溝内面21、22の下端(下側溝内面22の内端)から基板回転軸線A1側に斜め下に延びる支持面23を含む。
【0032】
図5に示すように、支持面23は、収容溝20よりも下方に配置されている。支持面23は、下側溝内面22の内方に配置されており、下側溝内面22に連続している。上側溝内面21および下側溝内面22は、互いに等しい大きさで、かつ互いに反対の方向に水平面に対して傾いている。支持面23は、水平面に対する下側溝内面22の傾斜角度よりも小さい角度で水平面に対して傾いている。
図3に示すように、支持面23の周方向長さ(基板回転軸線A1まわりの方向への長さ)は、把持部17の上面に相当するピン上面12aの周方向長さよりも短い。収容溝20は、基板Wの周端面に沿って延びている。
【0033】
図4Aおよび
図4Bに示すように、各チャックピン12は、把持部17が基板Wの周端面に押し付けられる閉位置と、把持部17が基板Wの周端面から離れる開位置との間で、スピンベース11に対してピン回転軸線A2まわりに回転可能である。チャック開閉機構13は、閉位置と開位置との間で各チャックピン12をピン回転軸線A2まわりに回転させる。閉位置は、基板Wが複数のチャックピン12によって把持される位置であり、開位置は、複数のチャックピン12による基板Wの把持が解除される位置である。制御装置3は、チャック開閉機構13を制御することにより、複数のチャックピン12が基板Wを把持する閉状態と、複数のチャックピン12による基板Wの把持が解除される開状態との間で、複数のチャックピン12の状態を切り替える。
【0034】
基板Wがスピンチャック5に搬送されるときには、制御装置3は、各チャックピン12を開位置に退避させる。制御装置3は、この状態で、搬送ロボットに基板Wを複数のチャックピン12に載置させる。これにより、
図5において二点鎖線で示すように、各支持部18の支持面23が基板Wの下面周縁部に接触し、基板Wが、スピンベース11の上面よりも上方の支持位置で水平な姿勢で支持される。制御装置3は、その後、各チャックピン12を開位置から閉位置に移動させる。支持面23が収容溝20に向かって斜め上に延びているので、各チャックピン12が閉位置に向かって移動する過程で、基板Wが複数の支持面23によって徐々に持ち上げられる。さらに、各チャックピン12が閉位置に向かって移動する過程で、把持部17が基板Wの周端面に近づき、基板Wの周縁部が収容溝20内に入り込む。これにより、
図5において実線で示すように、上側溝内面21および下側溝内面22が基板Wの周縁部に押し付けられ、基板Wが、支持位置よりも上方の把持位置で水平な姿勢で把持される。
【0035】
図5に示すように、複数のガイド部材16は、複数のチャックピン12の上方に配置されている。
図5は、厚みが一定のプレートによってガイド部材16が構成されている例を示している。チャックピン12およびガイド部材16は、別々の部材であり、互いに連結されている。ガイド部材16は、対応するチャックピン12をチャックピン12の上方から覆っている。ガイド部材16は、把持部17上に配置されている。ガイド部材16は、ピン上面12aから内方に突出していると共に、ピン上面12aから外方(基板回転軸線A1から離れる方向。
図5では右側)に突出している。ガイド部材16は、把持位置に位置する基板Wの上方および周囲に配置されている。
【0036】
図2に示すように、複数のガイド部材16は、周方向X1に間隔を空けて配置されている。ガイド部材16の周方向長さ(具体的には、後述する上水平面28の周方向長さ)は、周方向X1に隣接する2つのガイド部材16の間隔よりも小さい。
図3に示すように、平面視におけるガイド部材16の面積は、平面視におけるピン上面12aの面積よりも大きい。ガイド部材16は、平面視でピン上面12aの全域に重なっている。したがって、ピン上面12aの全域が、ガイド部材16に覆われている。ガイド部材16は、ピン上面12aから基板Wの回転方向Drにおける上流側に延びている。さらに、ガイド部材16は、ピン回転軸線A2よりも基板Wの回転方向Drにおける上流側に配置されている。ガイド部材16は、ピン回転軸線A2よりも外方に配置されている。
【0037】
複数のガイド部材16は、それぞれ、複数のチャックピン12に固定されている。したがって、各ガイド部材16は、対応するチャックピン12と共にピン回転軸線A2まわりに回動すると共に、スピンベース11およびチャックピン12と共に基板回転軸線A1まわりに回転する。
図4Aおよび
図4Bに示すように、チャックピン12が開位置に配置されている状態では、ガイド部材16は、平面視で基板Wに重なっておらず、チャックピン12が閉位置側に移動すると、ガイド部材16は、基板Wに向かって内方に移動する。
【0038】
図5に示すように、ガイド部材16は、収容溝20よりも内方でかつ収容溝20よりも上方の位置に配置されたガイド内縁24と、ガイド内縁24よりも下方の高さでかつチャックピン12よりも外方の位置に配置されたガイド外縁25と、ガイド部材16の上側部分に沿ってガイド内縁24からガイド外縁25まで延びる上ガイド面26と、ガイド部材16の下側部分に沿ってガイド内縁24からガイド外縁25まで延びる下ガイド面27とを含む。
【0039】
図3に示すように、ガイド内縁24は、周方向X1に延びている。同様に、ガイド外縁25は、周方向X1に延びている。ガイド内縁24は、
図5に示すような水平に延びる曲線であってもよいし、鉛直な曲面であってもよい。ガイド外縁25についても同様である。ガイド内縁24は、ガイド外縁25よりも内方に配置されている。ガイド内縁24は、ピン上面12aよりも内方に配置されており、ガイド外縁25は、ピン上面12aよりも外方に配置されている。
図3に示すように、ガイド内縁24およびガイド外縁25のそれぞれの周方向長さは、ピン上面12aの周方向長さよりも大きい。ガイド内縁24は、把持位置に位置する基板Wの周端面よりも内方に配置されており、平面視で基板Wに重なっている。これに対して、ガイド外縁25は、把持位置に位置する基板Wの周端面よりも外方に配置されており、平面視で基板Wに重なっていない。
【0040】
図5に示すように、ガイド内縁24は、2つの溝内面21、22よりも内方に配置されている。ガイド内縁24は、把持位置に位置する基板Wの上面よりも上方に配置されている。把持位置に位置する基板Wの上面からピン上面12aまでの高さH1は、ピン上面12aからガイド内縁24までの高さH2よりも小さい。したがって、基板Wの上面からガイド部材16までの高さが小さく、ガイド部材16が基板Wの上面に近接している。さらに、高さH1は、ガイド内縁24からピン上面12aの内縁までの径方向Y1(基板回転軸線A1に直交する方向)の距離D1よりも小さい。ガイド外縁25は、収容溝20よりも下方に配置されている。ガイド外縁25は、把持位置に位置する基板Wの下面よりも下方に配置されている。ガイド外縁25は、スピンベース11の外周面よりも外方に配置されている。
【0041】
図5に示すように、上ガイド面26は、下ガイド面27の上方に配置されている。上ガイド面26は、ガイド部材16を上方から見たときに見える上向きの面であり、下ガイド面27は、ガイド部材16を上方から見たときに見えない下向きの面である。上ガイド面26および下ガイド面27のそれぞれは、一つ以上の平面によって構成されている。
図5に示すように、上ガイド面26は、ガイド内縁24から水平に外方に延びる上水平面28と、上水平面28の外縁から斜め下に外方に延びる上傾斜面としての外向き面29とを含む。
【0042】
図3に示すように、上ガイド面26の上水平面28は、周方向X1に延びる内縁および外縁と、内縁および外縁の一方から他方に延びる2つの側縁28u、28dとを含む。制御装置3は、スピンモータ15を制御することにより、一定の回転方向Drに基板Wを回転させる。基板Wの回転方向Drにおける下流側の側縁28dは、側縁28dの内端が側縁28dの外端よりも回転方向Drにおける下流側に位置するように、平面視で、径方向Y1に対して傾いている。
【0043】
図5に示すように、下ガイド面27は、ガイド内縁24から斜め下に外方に延びる内向き面30と、下縁に相当する内向き面30の外縁から水平に外方に延びる下水平面31と、下水平面31の外縁から斜め下に外方に延びる下傾斜面32と、下縁に相当する下傾斜面32の外縁から水平に外方に延びる下向き面33とを含む。
図5に示すように、下ガイド面27の内向き面30は、ピン上面12aよりも内方に配置されている。下ガイド面27の内向き面30および下水平面31は、上ガイド面26の上水平面28の下方に配置されている。ピン上面12aは、上水平面28、内向き面30、および下水平面31よりも下方に配置されている。下ガイド面27の下傾斜面32は、上ガイド面26の外向き面29の下方に配置されている。外向き面29および下傾斜面32は、互いに平行であり、上下方向に重なっている。
【0044】
図1に示すように、処理液供給装置6は、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する上面ノズルとしての薬液ノズル34と、薬液ノズル34に接続された上薬液配管35と、上薬液配管35に介装された上薬液バルブ36とを含む。上薬液バルブ36が開かれると、上薬液配管35から薬液ノズル34に供給された薬液が、薬液ノズル34から下方に吐出され、上薬液バルブ36が閉じられると、薬液ノズル34からの薬液の吐出が停止される。薬液ノズル34に供給される薬液の一例は、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤のうちの少なくとも一つを含む液体である。
【0045】
薬液ノズル34は、基板Wの上面に対する処理液の着液位置が中央部と周縁部との間で移動するように移動しながら処理液を吐出するスキャンノズルである。
図1に示すように、処理ユニット2は、薬液ノズル34を移動させることにより、薬液の着液位置を基板Wの上面内で移動させる薬液ノズル移動装置37を含む。薬液ノズル移動装置37は、薬液ノズル34を移動させることにより、薬液の着液位置を基板Wの上面内で移動させる。さらに、薬液ノズル移動装置37は、薬液ノズル34から吐出された薬液が基板Wの上面に着液する処理位置と、薬液ノズル34がスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間で薬液ノズル34を移動させる。
【0046】
図1に示すように、処理液供給装置6は、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出する上面ノズルとしてのリンス液ノズル38と、リンス液ノズル38に接続された上リンス液配管39と、上リンス液配管39に介装された上リンス液バルブ40とを含む。上リンス液バルブ40が開かれると、上リンス液配管39からリンス液ノズル38に供給されたリンス液が、リンス液ノズル38から下方に吐出され、上リンス液バルブ40が閉じられると、リンス液ノズル38からのリンス液の吐出が停止される。リンス液ノズル38に供給されるリンス液は、純水(脱イオン水:Deionzied ater)である。リンス液ノズル38に供給されるリンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、IPA(イソプロピルアルコール、)および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0047】
リンス液ノズル38は、スキャンノズルである。
図1に示すように、処理ユニット2は、リンス液ノズル38を移動させることにより、リンス液の着液位置を基板Wの上面内で移動させるリンス液ノズル移動装置41を含む。リンス液ノズル移動装置41は、リンス液ノズル38を移動させることにより、リンス液の着液位置を基板Wの上面内で移動させる。さらに、リンス液ノズル移動装置41は、リンス液ノズル38から吐出されたリンス液が基板Wの上面に着液する処理位置と、リンス液ノズル38がスピンチャック5の周囲に退避した退避位置との間でリンス液ノズル38を移動させる。
【0048】
図1に示すように、処理液供給装置6は、基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する下面ノズル42と、下面ノズル42に接続された下薬液配管43と、下薬液配管43に介装された下薬液バルブ44と、下面ノズル42に接続された下リンス液配管45と、下リンス液配管45に介装された下リンス液バルブ46とを含む。下面ノズル42は、スピンベース11の上面中央部から上方に突出している。基板Wが支持位置または把持位置でスピンチャック5に保持されている状態では、下面ノズル42の吐出口が、スピンベース11の上面の基板Wの下面との間に位置し、基板Wの下面中央部に上下方向に対向する。したがって、この状態で下薬液バルブ44または下リンス液バルブ46が開かれると、下面ノズル42から上方に吐出された薬液またはリンス液が、基板Wの下面中央部に供給される。
【0049】
図1に示すように、カップ7は、スピンチャック5に保持されている基板Wよりも外方(基板回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。カップ7は、スピンチャック5を取り囲む筒状の外壁47と、スピンチャック5と外壁47との間に配置された複数の処理液カップ(第1処理液カップ48、第2処理液カップ49、第3処理液カップ50)と、基板Wの周囲に飛散した処理液を受け止める複数のガード(第1ガード51、第2ガード52、第3ガード53、第4ガード54)と、複数のガードのそれぞれを独立して昇降させるガード昇降装置55とを含む。
【0050】
図1に示すように、各処理液カップ48〜50は、スピンチャック5と外壁47との間でスピンチャック5を取り囲んでいる。内側から二番目の第2処理液カップ49は、第1処理液カップ48よりも外方に配置されており、第3処理液カップ50は、第2処理液カップ49よりも外方に配置されている。第3処理液カップ50は第2ガード52と一体であり、第2ガード52と共に昇降する。各処理液カップ48〜50は、上向きに開いた環状の溝を形成している。各ガード51〜54のそれぞれは、基板Wに供給される処理液の種類等に応じてガード昇降装置55の制御により任意に昇降駆動され、使用された処理液をその種類等に応じた任意の処理液カップ48〜50に導くことができる。各処理液カップ48〜50に導かれた処理液は、この溝を通じて図示しない回収装置または廃液装置に送られる。
【0051】
図1に示すように、各ガード51〜54は、スピンチャック5と外壁47との間でスピンチャック5を取り囲んでいる。内側の3つのガード51〜53は、外側の3つのガード52〜54のうちの少なくとも一つによって取り囲まれた内ガードであり、外側の3つのガード52〜54は、内側の3つのガード51〜53のうちの少なくとも一つを取り囲む外ガードである。
【0052】
図1に示すように、各ガード51〜54は、斜め上に内方に延びる円筒状の傾斜部56と、傾斜部56の下端から下方に延びる円筒状の案内部57とを含む。各傾斜部56の上端部は、ガード51〜54の上端部を構成しており、基板Wおよびスピンベース11よりも大きな直径を有している。4つの傾斜部56は、上下に重ねられており、4つの案内部57は、同軸的に配置されている。最も外側の案内部57を除く3つの案内部57は、それぞれ、複数の処理液カップ48〜50内に出入り可能である。すなわち、カップ7は、折り畳み可能であり、ガード昇降装置55が4つのガード51〜54の少なくとも一つを昇降させることにより、カップ7の展開および折り畳みが行われる。
【0053】
図1に示すように、ガード昇降装置55は、ガードの上端が基板Wより上方に位置する上位置と、ガードの上端が基板Wより下方に位置する下位置との間で、各ガード51〜54を昇降させる。ガード昇降装置55は、上位置と下位置との間の任意の位置で各ガード51〜54を保持可能である。基板Wへの処理液の供給や基板Wの乾燥は、いずれかのガード51〜54が、基板Wの周端面に対向している状態で行われる。たとえば内側から三番目の第3ガード53を基板Wの周端面に対向させる場合には、第1ガード51および第2ガード52が下位置に配置され、第3ガード53および第4ガード54が上位置に配置される。また、最も外側の第4ガード54を基板Wの周端面に対向させる場合には、第4ガード54が上位置に配置され、他の3つのガード51〜53が下位置に配置される。
【0054】
図6は、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例を示す工程図である。以下では、
図1を参照する。
図6については適宜参照する。
基板Wが処理されるときには、チャンバー4内に基板Wを搬入する搬入工程(
図6のステップS1)が行われる。具体的には、制御装置3は、全てのノズルがスピンチャック5の上方から退避しており、全てのガードが下位置に位置している状態で、搬送ロボットに基板Wをチャンバー4内に搬入させる。そして、制御装置3は、搬送ロボットに基板Wを複数のチャックピン12上に載置させる。その後、制御装置3は、搬送ロボットをチャンバー4内から退避させる。さらに、制御装置3は、チャック開閉機構13を制御することにより、複数のチャックピン12に基板Wを把持させる。その後、制御装置3は、スピンモータ15を制御することにより、スピンベース11、チャックピン12、およびガイド部材16を基板回転軸線A1まわりに回転させる。これにより、基板Wの回転が開始される。
【0055】
次に、薬液を基板Wに供給する薬液供給工程(
図6のステップS2)が行われる。具体的には、制御装置3は、薬液ノズル移動装置37を制御することにより、薬液ノズル34を退避位置から処理位置に移動させる。制御装置3は、さらに、外側の2つのガード(第3ガード53および第4ガード54)を上位置に位置させ、内側の2つのガード(第1ガード51および第2ガード52)を下位置に位置させる。これにより、第3ガード53と第2ガード52との間が開き、第3ガード53の内周面が基板Wの周端面に対向する。
【0056】
制御装置3は、この状態で、上薬液バルブ36および下薬液バルブ44を開いて、回転状態の基板Wの上面に向けて薬液ノズル34に薬液を吐出させると共に、回転状態の基板Wの下面中央部に向けて下面ノズル42に薬液を吐出させる。制御装置3は、さらに、薬液ノズル移動装置37を制御することにより、基板Wの上面に対する薬液の着液位置を中央部と周縁部との間で移動させる。そして、上薬液バルブ36および下薬液バルブ44が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、上薬液バルブ36および下薬液バルブ44を閉じて、薬液ノズル34および下面ノズル42からの薬液の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、薬液ノズル移動装置37を制御することにより、薬液ノズル34をスピンチャック5の上方から退避させる。
【0057】
薬液ノズル34から吐出された薬液は、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。同様に、下面ノズル42から吐出された薬液は、基板Wの下面中央部に着液した後、遠心力によって基板Wの下面に沿って外方に流れる。これにより、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜が形成され、基板Wの上面全域に薬液が供給される。そのため、基板Wの上面全域が薬液によって処理される。同様に、下面ノズル42から吐出された薬液が、基板Wの下面全域に供給され、基板Wの下面全域が薬液によって処理される。
【0058】
さらに、制御装置3は、基板Wが回転している状態で、基板Wの上面に対する薬液の着液位置を中央部と周縁部との間で移動させるので、薬液の着液位置が、基板Wの上面全域を通過し、基板Wの上面全域が走査(スキャン)される。そのため、薬液ノズル34から吐出された薬液が、基板Wの上面全域に直接吹き付けられ、基板Wの上面全域が均一に処理される。また、基板Wの上面および下面の周縁部に達した薬液は、遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。そのため、基板Wから排出された薬液が、第3ガード53と第2ガード52との間を通じてカップ7の内部に導かれ、第1処理液カップ48に収集される。
【0059】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wに供給するリンス液供給工程(
図6のステップS3)が行われる。具体的には、制御装置3は、リンス液ノズル移動装置41を制御することにより、リンス液ノズル38を退避位置から処理位置に移動させる。そして、制御装置3は、第3ガード53の内周面が基板Wの周端面に対向している状態で、上リンス液バルブ40および下リンス液バルブ46を開いて、回転状態の基板Wの上面に向けてリンス液ノズル38に純水を吐出させると共に、回転状態の基板Wの下面中央部に向けて下面ノズル42に純水を吐出させる。制御装置3は、さらに、リンス液ノズル移動装置41を制御することにより、基板Wの上面に対する純水の着液位置を中央部と周縁部との間で移動させる。そして、上リンス液バルブ40および下リンス液バルブ46が開かれてから所定時間が経過すると、制御装置3は、上リンス液バルブ40および下リンス液バルブ46を閉じて、リンス液ノズル38および下面ノズル42からのリンス液の吐出を停止させる。その後、制御装置3は、リンス液ノズル移動装置41を制御することにより、リンス液ノズル38をスピンチャック5の上方から退避させる。
【0060】
リンス液ノズル38から吐出された純水は、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。同様に、下面ノズル42から吐出された純水は、基板Wの下面中央部に着液した後、遠心力によって基板Wの下面に沿って外方に流れる。そのため、基板W上の薬液は、純水によって外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。これにより、基板W上の薬液が、純水によって洗い流され、基板W上の薬液の液膜が、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜に置換される。同様に、下面ノズル42から吐出された純水が、基板Wの下面全域に供給され、基板Wの下面に付着している薬液が純水によって洗い流される。
【0061】
さらに、制御装置3は、基板Wが回転している状態で、基板Wの上面に対する純水の着液位置を中央部と周縁部との間で移動させるので、純水の着液位置が、基板Wの上面全域を通過し、基板Wの上面全域が走査(スキャン)される。そのため、純水ノズルから吐出された純水が、基板Wの上面全域に直接吹き付けられ、基板Wの上面全域が均一に処理される。また、基板Wの上面および下面の周縁部に達した純水は、遠心力によって基板Wの周囲に振り切られる。そのため、基板Wから排出された純水が、第3ガード53と第2ガード52との間を通じてカップ7の内部に導かれ、第1処理液カップ48に収集される。
【0062】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥工程(
図6のステップS4)が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンモータ15を制御することにより、基板Wの回転を高回転速度(たとえば数千rpm)まで加速させる。これにより、基板W上の液体が、基板Wの周囲に振り切られ、第2ガード52と第3ガード53との間を通じて、カップ7の内部に導かれ、第1処理液カップ48によって収集される。このようにして、水分が基板Wから除去され、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、スピンチャック5を制御することにより、基板Wの回転を停止させる。その後、制御装置3は、全てのガードを下位置に移動させる。この状態で、制御装置3は、搬送ロボットをチャンバー4内に進入させて、搬送ロボットに基板Wを搬出させる(搬出工程。
図6のステップS5)。
【0063】
図7は、基板Wからその周囲に飛散する処理液の移動経路について説明するための模式図である。
図7に示すように、各ガイド部材16のガイド内縁24は、チャックピン12の収容溝20よりも内方でかつ収容溝20よりも上方の位置に配置されている。基板Wの周縁部は、収容溝20内に収容される。したがって、ガイド内縁24は、基板Wの上面よりも上方で、かつ基板Wの周端面よりも内方の位置に配置される。そのため、内向き(基板回転軸線A1側)に開いた縦断面を有する捕集溝58が、基板W、チャックピン12、およびガイド部材16によって形成される。回転状態の基板Wに供給された処理液は、遠心力を受けて外方に広がる。チャックピン12の近傍に達した処理液は、この捕集溝58内に入り込む。
【0064】
図7に示すように、チャックピン12の近傍に達した処理液が、基板W、チャックピン12、およびガイド部材16によって形成された捕集溝58内に入り込むので、処理液とチャックピン12との衝突によって液滴やミストが発生したとしても、液滴やミストの拡散が捕集溝58の内面によって抑えられる。これにより、基板Wに対する処理液の再付着が低減される。さらに、チャックピン12を乗り越えようとする処理液が捕集溝58内に捕集されるので、基板Wの周縁部から斜め上に飛散する処理液の量を低減できる。したがって、カップ7と処理液との衝突によって発生した処理液の液滴やミストが、基板Wに付着することを低減できる。
【0065】
また、
図7に示すように、捕集溝58に入り込んだ処理液は、下ガイド面27に沿ってガイド外縁25の方に案内される。各ガイド外縁25が、ガイド内縁24よりも下方の高さに配置されているので、外方に流れる処理液は、ガイド部材16によって水平方向または斜め下方向に案内される。さらに、ガイド外縁25が、チャックピン12よりも外方に配置されているので、処理液は、ガイド部材16によってチャックピン12よりも外方の位置まで確実に案内される。したがって、処理液が、チャックピン12から斜め上に外方に飛散することを抑制できる。これにより、汚染や品質低下の原因となる処理液の再付着を低減できる。
【0066】
以上のように本実施形態では、基板Wからの処理液の飛散方向が、ガイド部材16によって制御され、基板Wよりも上方への処理液の飛散範囲が狭められる。カップ7と処理液との衝突によって発生した処理液の液滴やミストは、内方に移動しながら、ダウンフローに乗って下方に移動する。したがって、基板Wよりも上方への処理液の飛散範囲を狭めることにより、基板Wに対する処理液の再付着を低減できる。さらに、処理液の飛散範囲を狭めることができるので、基板Wとカップ7との径方向Y1の間隔を広げるために、カップ7を径方向Y1に大型化しなくてもよい。すなわち、カップ7の奥行(内径)を従来よりも減少させることができる。これにより、基板Wとカップ7との間に設けられた環状の気体流路の流路面積を減少させることができる。したがって、気流の速度(ダウンフローの速度)を維持しながら、排気設備の吸引力(排気圧)を弱めることができる。
【0067】
また本実施形態では、基板Wの周縁部を収容するチャックピン12の収容溝20よりも下方にガイド外縁25が配置されているので、基板Wは、ガイド外縁25よりも上方に配置される。言い換えると、ガイド外縁25は、把持位置で把持されている基板Wの下面よりも下方に配置されている。したがって、処理液は、ガイド部材16によって基板Wよりも下方まで案内され、基板Wよりも下方の位置からカップ7に向かって外方に飛散する。そのため、基板Wよりも上方の高さで発生する液滴およびミストの量を低減できる。これにより、処理液の再付着をさらに低減できる。
【0068】
また本実施形態では、上端が下端よりも内方に位置するように傾斜した下向きの下傾斜面32が、ガイド部材16に設けられている。下傾斜面32が水平面に対して傾斜しているので、処理液は、下傾斜面32によって斜め下に外方に案内される。さらに、下傾斜面32の少なくとも一部が、径方向Y1におけるチャックピン12とガイド外縁25との間に配置されているので、処理液は、チャックピン12よりも外方の位置で斜め下に案内される。そのため、基板Wの周縁部から斜め上に飛散する処理液の量を低減できる。これにより、処理液の再付着をさらに低減できる。
【0069】
また本実施形態では、基板回転軸線A1に径方向Y1に対向するように水平面に対して傾斜した内向き面30が、ガイド部材16に設けられている。内向き面30は、ガイド内縁24から斜め下に外方に延びており、収容溝20よりも上方に配置されている。したがって、チャックピン12の近傍に達した処理液は、基板W、チャックピン12、およびガイド部材16によって形成された捕集溝58内に入り込むと共に、内向き面30によって斜め下に外方に案内される。そのため、斜め上に外方に飛散する処理液の量がさらに低減される。これにより、処理液の再付着をさらに低減できる。
【0070】
また本実施形態では、チャックピン12およびガイド部材16が別々の部材なので、チャックピン12の形状の複雑化を抑制できる。同様に、ガイド部材16の形状の複雑化を抑制できる。さらに、ガイド部材16がピン上面12aの上に配置されているので、ガイド部材16は、ピン上面12aを乗り越えて外方に飛散しようとする処理液を水平方向または斜め下方向に確実に案内できる。そのため、斜め上に外方に飛散する処理液の量をさらに低減できる。これにより、処理液の再付着をさらに低減できる。
【0071】
また本実施形態では、ガイド部材16がピン上面12aの上方に配置されており、ガイド部材16とピン上面12aとが平面視で重なっている。平面視におけるガイド部材16の面積は、平面視におけるピン上面12aの面積よりも大きく、ピン上面12aの全域が、ガイド部材16によってその上方から覆われている。したがって、ピン上面12aがガイド部材16によって部分的に覆われている場合よりも、斜め上に外方に飛散する処理液の量を低減できる。これにより、処理液の再付着をさらに低減できる。
【0072】
また本実施形態では、ピン上面12aからガイド内縁24までの高さが、把持位置に位置する基板Wの上面からピン上面12aまでの高さよりも大きい。言い換えると、基板Wの上面からピン上面12aまでの上下方向長さが小さい。したがって、基板Wの上面からガイド内縁24までの上下方向長さが短縮され、ガイド内縁24が基板Wの上面に近接する。そのため、捕集溝58の上下方向長さが短縮され、捕集溝58の体積が減少する。これにより、基板Wとガイド部材16との間の上下方向の隙間(捕集溝58の内部)が処理液で満たされ易くなる。捕集溝58が処理液で満たされている場合、後続の処理液は、捕集溝58の内面に直接衝突しない。したがって、衝突により発生する処理液の液滴やミストの量が低減される。これにより、処理液の再付着を低減できる。
【0073】
また本実施形態では、ガイド内縁24からピン上面12aの内縁までの径方向Y1の距離が、把持位置に位置する基板Wの上面からピン上面12aまでの高さよりも大きい。言い換えると、ガイド内縁24からピン上面12aの内縁までの径方向Y1の距離が大きく、ガイド内縁24から基板Wの周端面までの径方向Y1の距離が大きい。したがって、捕集溝58の深さ(捕集溝58の開口部から捕集溝58の底までの水平方向の長さ)が十分に確保される。そのため、ガイド部材16は、チャックピン12を乗り越えようとする処理液を確実に捕獲して、水平方向または斜め下方向に案内できる。これにより、処理液の再付着を低減できる。
【0074】
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の実施形態では、ガイド外縁25がガイド内縁24よりも下方の高さに配置されている場合について説明したが、ガイド内縁24およびガイド外縁25が互いに等しい高さに配置されていてもよい。
【0075】
また、前述の実施形態では、上ガイド面26および下ガイド面27が、水平面に対して傾斜した平面である場合について説明した。しかし、
図8に示すように、上ガイド面26および下ガイド面27は、斜め上外方に膨らんだ曲面を含んでいてもよい。また、上ガイド面26および下ガイド面27の一方が、水平面に対して傾斜した平面を含んでおり、上ガイド面26および下ガイド面27の他方が、斜め上外方に膨らんだ曲面を含んでいてもよい。
【0076】
また、前述の実施形態では、ガイド部材16が屈曲している場合について説明したが、
図9に示すように、ガイド部材16は、水平面に沿って延びていてもよい。
図9に示すガイド部材16は、上端が下端よりも内方に位置するように傾斜した外向き面29を含む。外向き面29は、ガイド外縁25から斜め上に内方に延びている。上端が下端よりも外方に位置するように外向き面29が傾斜している場合、処理液は、外向き面29によって斜め上に外方に案内される。したがって、斜め上に外方に飛散する処理液の量が増加する。そのため、上端が下端よりも内方に位置するように外向き面29を傾けることにより、斜め上に外方に飛散する処理液の量をさらに低減できる。これにより、処理液の再付着をさらに低減できる。
【0077】
また、前述の実施形態では、周方向X1へのガイド部材16の長さが、周方向X1に隣接する2つのガイド部材16の間隔よりも小さい場合について説明した。しかし、
図10に示すように、ガイド部材16は、周方向X1に隣接する2つのガイド部材16の間隔よりも大きい周方向長さを有していてもよい。
この構成によれば、ガイド部材16が周方向X1に長いので、ガイド部材16によって処理液の飛散方向が制御される範囲が周方向X1に長い。そのため、複数のガイド部材16は、斜め上に外方に飛散する処理液の量をさらに低減できる。これにより、処理液の再付着が低減される。しかも、基板W上の処理液は、周方向X1に長い複数のガイド部材16によって複数のガイド部材16の内方に溜められるので、基板Wの上面全域を覆う液膜を形成する際に必要な処理液の量を低減できる。これにより、基板処理装置1のランニングコストを低減できる。さらに、周方向X1に隣接する2つのガイド部材16の周方向X1の間隔が小さいので、複数のガイド部材16が基板回転軸線A1まわりに回転しているときに、気流の乱れが発生し難い。したがって、液滴やミストが乱流によって巻き上げられて、基板Wに付着することを低減できる。
【0078】
また、前述の実施形態では、ガイド部材16が、チャックピン12に取り付けられた、チャックピン12とは別の部材である場合について説明したが、ガイド部材16は、チャックピン12と一体であってもよい。
また、前述の実施形態では、ガイド部材16が、平面視でピン上面12aの全域に重なっており、ピン上面12aの全域が、ガイド部材16に覆われている場合について説明したが、ピン上面12aがガイド部材16に部分的に覆われており、ピン上面12aの一部が平面視でガイド部材16から露出していてもよい。
【0079】
また、前述の実施形態では、ガイド内縁24およびガイド外縁25のそれぞれの周方向長さが、ピン上面12aの周方向長さよりも大きい場合について説明したが、ガイド内縁24の周方向長さは、ピン上面12aの周方向長さと等しくてもよいし、ピン上面12aの周方向長さよりも小さくてもよい。ガイド外縁25の周方向長さについても同様である。
【0080】
また、前述の実施形態では、ガイド部材16が板状である場合について説明したが、ガイド部材16の形状は、板状でなくてもよい。すなわち、ガイド部材16の上側の面と、ガイド部材16の下側の面とは、互いに平行でなくてもよい。
また、前述の実施形態では、薬液ノズル34およびリンス液ノズル38の両方がスキャンノズルである場合について説明したが、薬液ノズル34およびリンス液ノズル38の一方または両方は、吐出口が静止された状態で基板Wの上面中央部に向けて処理液を吐出する固定ノズルであってもよい。
【0081】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。