(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の弾丸では、銃腔内に水や埃等の異物が入り込んだ場合に、その異物が弾丸の前進の妨げとなって、薬莢の内圧の異常上昇を招くという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、薬莢の内圧の異常上昇を抑えることが可能な弾丸及びそれを備えた弾薬の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る弾丸は、薬莢のうち先端寄り位置に形成された絞り部より先の先端筒部に嵌合されて、薬莢とで弾薬を構成する弾丸において、先端筒部に嵌合されて薬莢を密閉する第1嵌合部と、薬莢のうち先端筒部より基端側に収容され、先端筒部を通過するときに先端筒部に嵌合されて薬莢を密閉する第2嵌合部と、第1嵌合部と第2嵌合部とを連絡すると共に、第1嵌合部の外周面から延長されて第2嵌合部の外周面に連絡する環状連絡面との間に先端筒部の軸長より長い隙間を有する連絡軸部と、を備え
、第1嵌合部と第2嵌合部との間の距離は、弾丸が銃腔内のライフリングと係合するより前に、第1嵌合部が先端筒部より前側に配置されかつ第2嵌合部が先端筒部より後側に配置される長さに設定されたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の弾丸において、隙間は、環状であるところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の弾丸において、連絡軸部は、第1嵌合部側へ向かって縮径されかつ後端部が第2嵌合部と同径のテーパ状に形成されたところに特徴を有する。
【0010】
請求項
4の発明は、請求項
1乃至3のうち何れか1の請求項に記載の弾丸において、第1嵌合部と第2嵌合部との間の距離は、弾丸がライフリングと係合するときに第2嵌合部が先端筒部に嵌合される長さに設定されたところに特徴を有する。
【0011】
請求項
5の発明に係る弾薬は、請求項1乃至
4のうち何れか1の請求項に記載の弾丸と薬莢とからなるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1,
5の発明]
本発明では、第1嵌合部が先端筒部に嵌合された状態で薬莢の内圧が上昇すると、弾丸が前進し、第2嵌合部が先端筒部に嵌合されて、薬莢内が再び密閉される。そして、この状態で薬莢の内圧がさらに上昇すると、弾丸が発射される。ここで、第1嵌合部と第2嵌合部とを連絡する連絡軸部は、第1嵌合部の外周面から延長されて第2嵌合部の外周面に連絡する環状連絡面との間に、先端筒部の軸長より長い隙間を有しているので、第2嵌合部が先端筒部に嵌合されるまでの間に、薬莢内と銃腔内とを連通して薬莢の内圧により銃腔内の異物を薬莢から遠ざけることが可能となる。これにより、薬莢の近くで異物が弾丸の前進を妨げることを防いで、薬莢の内圧の異常上昇を抑えることができる。
また、弾丸が銃腔内のライフリングと係合するより前に、薬莢内と銃腔内とが連通されるので、薬莢内のガスを銃腔の先端側まで移動させることができる。これにより、銃腔内のうち薬莢から遠く離れた異物についても薬莢から遠ざけることが可能となる。
【0013】
[請求項2の発明]
請求項2の発明では、連絡軸部が環状連絡面との間に有する隙間が環状になっているので、周方向の任意の位置で薬莢内のガスを銃腔側へ移動させることが可能となる。
【0014】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、連絡軸部は、第1嵌合部側へ向かって縮径されたテーパー状に形成されているので、連絡軸部と環状連絡面との間の隙間に入り込んだガスを第1嵌合部側、即ち、弾丸の前側へとスムーズに移動させることが可能となる。しかも、連絡軸部の後端部は、第2嵌合部と同径になっているので、薬莢内のガスを連絡軸部と先端筒部との間の隙間に入り込ませ易くすることが可能となる。
【0016】
[請求項
4の発明]
請求項
4の発明では、第2嵌合部が先端筒部に嵌合された状態で薬莢の内圧が上昇すると、その内圧によって弾丸が銃腔内へと発射される。ここで、本発明では、弾丸がライフリングと係合するときに、第2嵌合部が先端筒部に嵌合されるので、弾丸を安定させた状態でライフリングへ押し付けることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を
図1〜
図8に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る弾薬50は、弾丸10と薬莢20とからなる。薬莢20は、所謂、ボトルネックタイプの薬莢であって、先端寄り位置に、先端側が小径となる絞り部22を備えている。そして、薬莢20のうち絞り部22よりも先端側部分が先端筒部21、絞り部22よりも基端側部分が大径部23となっている。
【0019】
薬莢20の内部には、図示しない発射薬が充填されている。そして、薬莢20の先端筒部21に弾丸10が嵌合されることで、薬莢20内が密閉されている。なお、詳細には、大径部23の基端側の底部には、底孔23Aが形成され、薬莢20には、発射薬に着火させるため雷管(図示せず)が底孔23Aを塞ぐように設けられている。
【0020】
弾丸10は、
図2(A)に示すように、胴部12の先に先細り形状のヘッド部11を備えた構造になっている。詳細には、ヘッド部11の外周面は、先端側に向かうに従って弾丸10の中心軸へ向かうように湾曲している。
【0021】
胴部12は、第1嵌合部13と、第1嵌合部13より後側に配置された第2嵌合部14と、第1嵌合部13と第2嵌合部14とを連絡する連絡軸部15とで構成されている。第1嵌合部13は、
図1に示すように、弾丸10が薬莢20に組み付けられたときに、先端筒部21に嵌合されて薬莢20内を密閉する。このとき、第2嵌合部14は、薬莢20のうち先端筒部21よりも基端側に収容される。なお、
図1の例では、第1嵌合部13は、先端筒部21の先端寄り位置に配置され、第2嵌合部14は、大径部23内に収容されている。
【0022】
また、第2嵌合部14は、第1嵌合部13と略同径となっていて、
図1から
図4への変化に示すように、弾丸10が前進して先端筒部21を通過するときに、先端筒部21に嵌合されて薬莢20内を密閉する。
【0023】
連絡軸部15は、前側、即ち、第1嵌合部13側が小径となるテーパー状に形成されている。そして、連絡軸部15は、第1嵌合部13の外周面13Mから後側に延長されて第2嵌合面14の外周面14Mと連絡する環状連絡面16(
図2(A)には、2点鎖線で示されている。)との間に、環状の隙間17を有している(
図2(B)参照)。なお、本実施形態では、連絡軸部15の後端部は、第2嵌合部14と同径になっている。
【0024】
ここで、本実施形態では、
図3及び
図6に示すように、連絡軸部15の軸長が先端筒部21の軸長より長くなっていて、弾丸10の前後方向における隙間17の長さも先端筒部21の軸長より長くなっている。
【0025】
弾薬50及び弾丸10の構成についての説明は以上である。次に、弾丸10の発射について説明する。
【0026】
図5には、弾薬50が銃身30にセットされたときの弾丸10周辺の様子が示されている。同図に示されるように、銃身30には、弾丸10が通過する銃腔31が形成されていて、その銃腔31の後側に弾薬50がセットされる。なお、弾薬50がセットされた状態では、弾丸10のヘッド部11が銃腔31内に露出している。
【0027】
詳細には、銃腔31の後端部は、前側に向かうに従って小径となるテーパ部31Aになっていて、このテーパ部31Aの先が直線状のストレート部31Bになっている。また、銃腔31の内面には、テーパ部31Aとストレート部31Bとの両方に亘って、螺旋溝により構成されるライフリング32が設けられている。ここで、弾丸10のヘッド部11の最大径は、テーパ部31Aの最大径よりも若干小さく、ストレート部31Bの内径より若干大きくなっている。
【0028】
さて、雷管によって薬莢20内の発射薬に着火されると、発射薬の燃焼ガスで薬莢20の内圧が上昇し、弾丸10が前側に押される。そして、薬莢20の内圧に押された弾丸10が前進すると、
図5から
図8への変化に示すように、弾丸10のヘッド部11の外周部が、テーパ部31Aの内周面と当接し、ライフリング32の螺旋溝と係合する。そして、薬莢20の内圧上昇により弾丸10がさらに押圧されると、弾丸10が銃腔31内を移動する。このとき、弾丸10には、ライフリング32の螺旋溝によって回転が付与される。なお、本実施形態では、
図8に示すように、ヘッド部11がライフリング32と係合するときに、第2嵌合部14が先端筒部21に嵌合されるので、弾丸10を安定させた状態でライフリング32へ押し付けることが可能となる。
【0029】
ところで、
図13に示した従来の弾丸1では、銃腔31(
図5参照)内に、水や埃等の異物が存在すると、その異物が弾丸1の前進の妨げとなって、薬莢5の内圧の異常上昇を招くことがある。この内圧の異常上昇が起こると、例えば、薬莢5の大径部7の底孔7Aからガスが漏れたり、雷管が後側に吹き飛ぶ等の危険が生じる。しかしながら、本実施形態の弾丸10及び弾薬50では、以下に説明するように、薬莢20の内圧の異常上昇の抑制が図られている。
【0030】
即ち、
図5から
図6への変化に示すように、弾丸10が前進して第1嵌合部13と先端筒部21との嵌合が外れると、第1嵌合部13が先端筒部21の前側に配置される。ここで、上述したように、連絡軸部15の軸長は先端筒部21の軸長よりも長くなっているので、
図6に示すように、第2嵌合部14は、先端筒部21より基端側に配置される。そして、連絡軸部15が環状連絡面16との間に有する隙間17の前後方向の長さも先端筒部21の軸長より長くなっているので、
図7に拡大して示すように、薬莢20の内部と銃腔31の内部とが、隙間17を介して連通される。従って、
図7に矢印で示したように、薬莢20内のガスを銃腔31内へと移動させることができ、このガスの噴出によって銃腔31内の異物を薬莢20から遠ざけることが可能となる。
【0031】
なお、薬莢20内のガスが銃腔31内へ移動すると薬莢20の内圧が下がることになるが、第1嵌合部13が先端筒部21から外れてから第2嵌合部14が先端筒部21に嵌合されるまでの時間は非常に短いので、薬莢20の内圧が下がり過ぎて弾丸10を発射できなくなることはない。
【0032】
また、
図7に示す状態で、弾丸10のヘッド部11は、銃腔31のテーパ部31Aの内面との間に隙間を有している。言い換えれば、本実施形態では、連絡軸部15の長さが、弾丸10がライフリング32と係合するよりも前に、第1嵌合部13が先端筒部21より前側に配置され、第2嵌合部14が先端筒部21より後側に配置される長さに設定されている。従って、銃腔31のうち薬莢20から遠く離れたストレート部31Bに異物が存在する場合であっても、薬莢20内のガスを銃腔31の先端側まで移動させて、その異物を薬莢20から遠ざけることが可能となる。
【0033】
このように、本実施形態の弾丸10及び弾薬50では、第1嵌合部13と第2嵌合部14とを連絡する連絡軸部15が、第1嵌合部13の外周面13Mから延長されて第2嵌合部14の外周面14Mに連絡する環状連絡面16との間に、先端筒部21の軸長より長い隙間17を有した構成になっているので、第2嵌合部14が先端筒部21に嵌合されるまでの間に、薬莢20内と銃腔31内とを連通して薬莢20の内圧により銃腔31内の異物を薬莢20から遠ざけることが可能となる。これにより、薬莢20の近くで異物が弾丸10の前進を妨げることを防いで、薬莢20の内圧の異常上昇を抑えることができる。
【0034】
また、連絡軸部15が環状連絡面16との間に有する隙間17は、環状になっているので、周方向の任意の位置で薬莢20内のガスを銃腔31側へ移動させることが可能となる。
【0035】
さらに、連絡軸部15は、第1嵌合部13側へ向かって縮径されたテーパー状に形成されているので、連絡軸部15と先端筒部21との間(隙間17)に入り込んだガスを第1嵌合部13側へとスムーズに移動させることが可能となる。しかも、連絡軸部15の後端部は、第2嵌合部14と同径になっているので、薬莢20内のガスを連絡軸部15と先端筒部21との間(隙間17)に入り込ませ易くすることが可能となる。
【0036】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を、
図9に基づいて説明する。本実施形態に係る弾丸10Vは、上記第1実施形態の弾丸10を変形したものであり、主として、連絡軸部15の構成が異なっている。具体的には、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、本実施形態の弾丸10Vでは、連絡軸部15は、第1嵌合部13及び第2嵌合部14より小径な円柱状をなしている。即ち、本実施形態では、連絡軸部15の外径の大きさが前後方向の任意の位置で一定となっている。
【0037】
なお、連絡軸部15の前後方向の長さが、薬莢20の先端筒部21(上記第1実施形態の
図1を参照)の軸長より長くなっている点、連絡軸部15が環状連絡面16との間に有する環状の隙間17も先端筒部21の軸長より長くなっている点は、上記第1実施形態と同様である。また、言うまでもなく、弾丸10Vは、薬莢20の先端筒部21に嵌合されて弾薬を構成する。
【0038】
弾丸10Vのその他の構成は、上記第1実施形態の弾丸10と同様になっているので、同一符号を付すことで説明を省略する。本実施形態の弾丸10Vによれば、上記第1実施形態の弾丸10と同様の効果を奏することができる。
【0039】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0040】
(1)上記第2実施形態の弾丸10Vでは、連絡軸部15が円柱状に形成されていたが、
図10に示す弾丸10Wのように、連絡軸部15を、前側が小径となるテーパ状に形成してもよい。
【0041】
(2)上記実施形態では、連絡軸部15が環状連絡面16との間に有する隙間17が環状であったが、周方向の一部に形成されてもよい。具体的には、
図11(A)及び
図11(B)に示す弾丸10Xのように、連絡軸部15を第1嵌合部13及び第2嵌合部14と略同径の円柱状にすると共に、その外周面に溝15Mを形成することで、隙間17が形成されてもよい。なお、
図11(A)及び
図11(B)では、溝15Mが複数設けられているが、1つであってもよい。また、
図11(A)では、溝15Mは、第1嵌合部13側に向かうに従って深くなっているが、第2嵌合部14側に向かうに従って深くなってもよいし、前後方向の中央に向かうに従って深くなってもよいし、前後方向の任意の位置で溝深さが同じであってもよい。
【0042】
(3)
図12(A)及び
図12(B)に示すように、上記第2実施形態において、連絡軸部15の外周面に、第1嵌合部13と第2嵌合部14を連絡する突条15Tを突出形成した構成であってもよい。
【0043】
(4)上記第1実施形態及び上記(1)の構成では、連絡軸部15は、第1嵌合部13側に向かうに従って小径となるテーパ状であったが、第2嵌合部14側に向かうに従って小径となる逆テーパ状であってもよい。