特許第6057352号(P6057352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057352
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】医療搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 1/00 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
   A61G1/00 704
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-513508(P2014-513508)
(86)(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公表番号】特表2014-518735(P2014-518735A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】US2012033365
(87)【国際公開番号】WO2012166252
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】13/118,966
(32)【優先日】2011年5月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513299269
【氏名又は名称】ローレンス アール.コー アンド ニーナ メレル−コー,トラスティーズ
【氏名又は名称原語表記】LAWRENCE R.KOH AND NINA MERRELL−KOH,TRUSTEES
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】コー,ローレンス,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ハギンズ,ジェームス,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ブレア,チャールズ
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00843991(EP,A1)
【文献】 特開2005−102789(JP,A)
【文献】 特開2003−010247(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3116760(JP,U)
【文献】 米国特許第07047578(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側パネル近位端と上側パネル遠位端を有する上側パネルアッセンブリと;
下側パネル近位端と下側パネル遠位端を有し、一またはそれ以上のラッチアッセンブリと一またはそれ以上のヒンジアッセンブリによって前記上側パネルアッセンブリに取り外し可能に連結されている下側パネルアッセンブリであって、前記上側パネルアッセンブリの長さより短い長さを有しており、これにより、下側パネルアッセンブリが、前記ラッチアッセンブリが稼働位置にあるときに前記ラッチアッセンブリによってラッチされ、前記ラッチアッセンブリが非稼働位置にあるときにラッチが解放されて前記上側パネルアッセンブリが前記下側パネルアッセンブリから上側に持ち上げられる下側パネルアッセンブリと;
前記上側パネルアッセンブリの周囲に巻いた上側可動ベルトであって、前記上側パネル近位端に固定された上側駆動アッセンブリによって駆動される上側可動ベルトと;
前記下側パネルアッセンブリの周囲に巻いた下側可動ベルトであって、前記下側パネル近位端に固定された下側駆動アッセンブリによって駆動される下側可動ベルトと;
を具え、前記上側可動ベルトと前記下側可動ベルトが互いに対して逆方向に回動することを特徴とする、搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、前記上側パネルアッセンブリが更に、上側シートと下側シートと、これらのシートに挟んだコアを有する上側パネルを具えることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送装置において、前記上側パネルが矩形形状を規定しており、前記上側及び下側シートの長さと幅が、前記コアの長さと幅を超えていることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項2に記載の搬送装置が更に、前記上側パネルの両側前記上側パネル長さ方向に沿って連結された二つの周辺持ち手を具えることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送装置において、各周辺持ち手、複数の均等にスペースを空けて前記周辺持ち手の長さ方向に沿って持ち手が形成されており、各持ち手が開口を規定しており、各開口が筒状強化部材を受けるように構成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1に記載の搬送装置において、前記上側駆動アッセンブリが、第1のモータで駆動する駆動ローラと、前記第1のモータで駆動する駆動ローラと平行にかつこのローラからスペースを空けて配置した上側アイドラローラを具えることを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
請求項1に記載の搬送装置において、前記下側パネルアッセンブリが更に、下側パネルを具え、当該下側パネルが上側シートと、下側シートと、これらのシートの間に挟んだコアを具えることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
請求項1に記載の搬送装置において、前記下側駆動アッセンブリが、前記第1のモータとは別の第2のモータで駆動する駆動ローラと、当該第2のモータで駆動する駆動ローラと平行にかつこのローラからスペースを空けて配置した下側アイドラローラと、を具えることを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
上側パネルと、当該上側パネルの近位端に固定された上側駆動アッセンブリとを具える、上側パネルアッセンブリと;
前記上側パネルアッセンブリに一またはそれ以上のラッチアッセンブリと一またはそれ以上のヒンジアッセンブリによって取り外し可能に連結されており、前記上側パネルアッセンブリの長さより短い長さを有しており、これにより、下側パネルアッセンブリが、前記ラッチアッセンブリが稼働位置にあるときに前記ラッチアッセンブリによってラッチされ、前記ラッチアッセンブリが非稼働位置にあるときにラッチが解放されて前記上側パネルアッセンブリが前記下側パネルアッセンブリから上側に持ち上げられる下側パネルと、当該下側パネルの近位端に固定された下側駆動アッセンブリとを具える下側パネルアッセンブリと;
前記上側パネルと前記上側駆動アッセンブリとの周りに巻かれており、前記上側駆動アッセンブリで駆動される上側可動ベルトと;
前記下側パネルと前記下側駆動アッセンブリとの周りに巻かれており、前記下側駆動アッセンブリで駆動される下側可動ベルトと;
を具え、前記上側可動ベルトと下側可動ベルトが互いに対して逆方向に回動することを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
請求項9に記載の搬送装置において、前記上側パネルが、上側シートと下側シートの間に挟まれた上側コアを具え、前記上側パネルが矩形形状を規定しており、前記上側及び下側シートの長さと幅が、前記上側コアの長さと幅を超えていることを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
請求項9に記載の搬送装置において、前記下側パネルが上側シートと下側シートの間に挟まれた下側コアを具え、前記下側パネルが矩形形状を規定しており、前記上側及び下側シートの長さと幅が、前記下側コアの長さと幅を超えていることを特徴とする搬送装置。
【請求項12】
請求項9に記載の搬送装置において、前記上側駆動アッセンブリが、第1のモータで駆動する駆動ローラと、当該第1のモータで駆動する駆動ローラと平行にかつこれらのローラからスペースを空けて配置した上側アイドラローラを具えることを特徴とする搬送装置。
【請求項13】
請求項9に記載の搬送装置において、前記下側駆動アッセンブリが、前記第1のモータとは別の第2のモータで駆動する駆動ローラと、当該第2のモータで駆動する駆動ローラと平行にかつこれらのローラからスペースを空けて配置した下側アイドラローラを具えることを特徴とする搬送装置。
【請求項14】
請求項9に記載の搬送装置が更に、前記上側パネルアッセンブリの上側パネルに、各々の長さに沿って連結された二つの周辺持ち手を具え、各周辺持ち手が複数の均等にスペースを空けて配置した持ち手を具え、各持ち手が開口を規定しており、各開口が筒状強化部材を受けるように構成されていることを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な特徴が医療搬送装置、特にスパインボードの改良に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
スピナルボードは、ロングスパインボード、ロングボード、スパインボード、又はバックボードとも呼ばれる、主に入院前の外傷治療に用いられる患者搬送装置であり、脊髄又は大腿の損傷が疑われる患者を移動する間の固定支柱を提供するように設計されている。スピナルボードは、後頭部パッド付頸椎カラー、頭側サポート(例えば、頭部の横方向の回転を防止するのに使用される毛布を巻いたものあるいは頭部ブロック)、患者をロングスパインボードに固定するストラップ、及び/又は、患者の頭部を固定するテープなどの一またはそれ以上の固定化アクセサリと共に使用される。
【0003】
従来のスパインボードは、通常プラスチックまたはキャンバス地でできており、平均的な人間の身体よりやや幅広で長く設計されており、固定用ストラップを提供するようにしている。また、従来のスパインボードはハンドルを具え、持ち上げるのに必要な力を分散させ、患者の搬送をより容易にしている。ほとんどのスパインボードが完全なX線透過性であり、患者をボードにストラップで固定したままで、検査を妨害しないようになっている。スパインボードは、通常、救急サービスに使用され、救急医療技術者や救急救命士などのスタッフが使用するが、ライフガードなどの救急スペシャリストも使用することができる。
【0004】
従来のスパインボードには、限定するものではないが、搬送のために救急隊員が負傷者をスパインボードへ大幅に動かす必要があるといったことを含む、様々な制限がある。脊椎損傷のある負傷者の移動が、麻痺などの更なる損傷やダメージが生じることがある。従って、救急隊員による負傷者の動きが少なくてすむスパインボードが求められている。
【発明の概要】
【0005】
以下に、実施例について基本的に理解してもらうために、一またはそれ以上の実施例の簡単な概要を示す。この概要は、意図したすべての実施例についての広い概念ではなく、すべての実施例のキー要素又は決定的要素を認識しようとするものでも、いずれかのあるいはすべての実施例の範囲を説明しようとするものではない。そのひとつの目的は、後述するより詳細な説明の前章として、一またはそれ以上の実施例のいくつかのコンセプトを簡単に提示することである。
【0006】
一特徴によれば、医療搬送装置、特に、スパインボードが提供されている。このスパインボードは:上側パネルと、この上側パネルの近位端に固定された上側駆動アッセンブリと、を具える上側パネルアッセンブリと;一またはそれ以上のラッチアッセンブリと一またはそれ以上のヒンジアッセンブリによって前記上側パネルアッセンブリに取り外し可能に連結された下側パネルアッセンブリと;を具え、下側パネルアッセンブリは:上側パネルアッセンブリより長さが短い下側パネルと;下側パネルの近位端に固定された下側駆動アッセンブリと;下側パネルアッセンブリの周りに巻かれて下側駆動アッセンブリによって駆動される上側可動ベルトと;下側パネルアッセンブリの周りに巻かれて下側駆動アッセンブリによって駆動される下側可動ベルトと;を具え、上側可動ベルトと下側可動ベルトが、互いに対して逆方向に回動する。
【0007】
一の態様では、上側パネルが、上側シートと下側シートの間に挟まれたコアを具える。上側パネルは、矩形構造を規定しており、上側及び下側シートの長さと幅は、コアの長さと幅を超えている。周辺フレームが上側パネルを囲んで枠を形成している。
【0008】
更なる態様では、コアを、アルミニウム、ステンレススチール、アラミド(Aramid 商標)、ポリカーボネート、及びポリプロピレンからなる群から選択されたハニカム状材料で構成してもよい。
【0009】
更なる態様では、上側駆動アッセンブリが、上側パネルの近位端の外側エッジに固定されている。下側パネルの近位端の外側エッジに固定した下側パネルアッセンブリが、下側駆動アッセンブリを具える。第1のモータが上側駆動アッセンブリに設けられており、第2のモータが下側駆動アッセンブリに設けられている。
【0010】
更なる態様では、上側パネルアッセンブリが更に、その遠位端に取り付けたノーズアッセンブリを具えている。このノーズアッセンブリは、中央部と対向する側部を具える。中央部は、ノーズアッセンブリの約1/3を占めており、テーパが付いていないのに対して、対向する側部は1/16インチ乃至12インチのテーパが付いている。ノーズアッセンブリのテーパによって。上側可動ベルトを外側パネルの中央に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の態様の特徴、本質、利点は、図面を参照して以下の詳細な説明からより明らかになる。ここでは、参照符号は全体を通じて同じものが使用されている。
図1図1は、本発明の一実施例によるスパインボードの斜視図である。
図2図2Aは、図1に示すスパインボードの上側パネルアッセンブリの斜視図である。図2Bは,図2Aに示す上側パネルアッセンブリの分解図である。
図3図3Aは、本発明の一実施例によるスパインボードの上側パネルの斜視図である。図3Bは、本発明の一実施によるスパインボードの上側パネルのフレームの斜視図である。図3Cは、本発明の一実施によるスパインボードの支持部材と上側パネルの分解図である。
図4図4は、本発明の一実施によるスパインボードの上側パネルに連結する周辺持ち手の斜視図である。
図5図5A−5Dは、本発明の一実施によるスパインボードの上側パネルに連結する周辺持ち手の断面図である。
図6図6は、本発明の一実施による周辺握りに連結する上側パネルの斜視図である。
図7図7Aは、図1に示すスパインボードの下側パネルアッセンブリの斜視図である。図7Bは、図7Aの下側パネルアッセンブリの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は、本発明を実施する現在のベストモードである。この説明は、限定の意味ではなく、単に、本発明の一般原理を説明するためのものである。
【0013】
本発明の実施例は、医療搬送デバイス、特に、スパインボードに関する。一の実施例では、スパインボードは、一またはそれ以上のラッチアッセンブリと、一又はそれ以上のヒンジアッセンブリによって下側パネルアッセンブリに連結した上側パネルアッセンブリを具える。上側可動ベルトは上側パネルアッセンブリの周囲に巻かれており、モータで駆動する駆動ローラによって駆動することができる。一方、下側可動ベルトは下側パネルアッセンブリの周囲に巻かれており、これは別のモータで駆動する駆動ローラによって駆動する。いくつかの実施例では、上側可動ベルトと下側可動ベルトが互いに逆方向に回動する。上側可動ベルトは、負傷者をスパインボードに乗せたりスパインボードから降ろすのに使用され、下側可動ベルトは、スパインボードを負傷者に向けて近づけたり、負傷者から離したりするのに使用する。一の実施例では、上側パネルアッセンブリが上側パネルアッセンブリを枠組みする一またはそれ以上の支持部材、及び又は、上側パネルアッセンブリを二つに分ける少なくとも一の交差ブレースを具える。
【0014】
図1は、本発明の一実施例によるスパインボードの斜視図である。一の実施例において、スパインボード100は、スパインボード100の近位端に配置した対向するラッチアッセンブリ106と、スパインボード100の遠位端に配置した対向するヒンジアッセンブリ108と、によって下側パネルアッセンブリ104に取り外し可能に連結した上側駆動アッセンブリ102を具える。ラッチアッセンブリ106は、2段階ロータリ型ラッチを具えており、上側ラッチサポート部材107を介して上側パネルアッセンブリ102に、ラッチバー111と解放可能に係合するように固定されており、下側パネルアッセンブリラッチ支持部材109を介して下側パネルアッセンブリ104に固定されている。ラッチバー111は、ほぼU字型形状を有し、下側ラッチ支持部材109から上側に向けて延在している。この2段階ロータリ型ラッチは、各々、ラッチバー111からラッチを開放する稼働位置と非稼働位置の間で操作可能なレバー113と、レバー113を稼働位置から非稼働位置に戻すばね(図示せず)を具え、ラッチの解放を補助している。対向するヒンジアッセンブリ108は、上側パネルアッセンブリ102に固定した上側ヒンジ支持部材101と、下側パネルアッセンブリ104に固定したピン115を具える。上側ヒンジ支持部材101は、ピン115を解放可能に受けるスロットを具え、上側パネルアッセンブリ102と下側パネルアッセンブリ104が迅速かつ容易に整列し互いにラッチするようにしている。
【0015】
ラッチアッセンブリ106は、更に、上側パネルアッセンブリ102と下側パネルアッセンブリ104に解放可能に固定されたデルリンブロック103を具える。デルリンブロック103は、電気接点をスパインボード上あるいはその他の場所にあるコンタクト金属から隔離するのに用いることができる。一の実施例によれば、以下に詳細に説明するように、電気接点は、上側パネルアッセンブリ102に設けたバッテリを、下側パネルアッセンブリ104に設けたモータで駆動する駆動ローラに電気的に接続するのに用いられる。
【0016】
下側パネルアッセンブリ104を上側パネルアッセンブリ102から取り外すためには、ラッチが開放され、非稼働位置に回転するまで、レバー113を引っ張る。非稼働位置になると、上側パネルアッセンブリ102が下側パネルアッセンブリ104から上側に持ち上げられ、二段階ロータリ型ラッチを下側パネルアッセンブリ104から分離して遠ざけることができる。一の実施例では、上側パネルアッセンブリ102が下側パネルアッセンブリ104から約0.72インチ持ち上げられ、ラッチアッセンブリ106を下側パネルアッセンブリ104から分離して遠ざける。上側パネルアッセンブリ102は、次いで、横方向に約0.5インチ移動し、ピン115から外れる。
【0017】
一の実施例では、上側パネルサポート部材117が上側パネルアッセンブリ102(一部が示されている)の上側パネル112の近位端112a(遠位端112bに対向している)の外側エッジに固定されている。上側駆動アッセンブリ110が、上側パネルサポート部材117の間に、部材117に解放可能にかつ回転可能に延在している。上側駆動アッセンブリ110は、モータで駆動する駆動ローラ110aと、モータで駆動する駆動ローラ110aと平行にこのローラ110aからスペースを空けて位置する上側アイドラローラ110bを具える。(図2B参照)。モータで駆動する駆動ローラ110aと上側アイドラローラ110bは、丸筒状の軽量材料でできており、モータで駆動する駆動ローラ110aと上側アイドラローラ110bをシャフトを中心に自在に回転させるシャフトとベアリングを具える。エンドレスな上側可動ベルト114が上側パネル112とモータで駆動する駆動ローラ110aと上側アイドラローラ110bの周りに巻かれている。モータで駆動する駆動ローラ110a(又はモータ)は、上側パネルアッセンブリ102に配置したバッテリによって給電され、モータで駆動する駆動ローラ110aの回転運動が、エンドレス上側可動ベルト114を並進運動させ、それに伴って結果的に上側アイドラローラ110bが回転運動する。上側駆動アッセンブリ110を上側パネルサポート部材117の内側に解放可能に固定することによって、上側駆動アッセンブリ110が容易かつ迅速に取り外されて、上側可動ベルト114を迅速に外して置き換えることができる。アイドラローラ110bは、上側パネルサポート部材117の内側に調節可能なスクリューロッド119によって固定されており、上側駆動アッセンブリ110は、張力のみならず、上側可動ベルト114との整列も調整することができる。上側駆動アッセンブリ110は、上側可動ベルト114を駆動ローラの周りに更に巻くと共に、経路を延ばすことによってベルトに張力を与える手段を提供する。
【0018】
同様に、下側パネルサポート部材131(図7A参照)は、下側パネルアッセンブリ104(部分的に示す)の下側パネル118の近位端118a(遠位端118bと対向している)の外側エッジに固定されている。下側駆動アッセンブリ116は、下側パネルサポート部材131の間に延在し、この部材に解放可能に及び回転可能に固定されている。下側駆動アッセンブリ116は、モータで駆動する駆動ローラ116aと、モータで駆動する駆動ローラ116aと平常にこのローラからスペースを空けて配置した下側アイドラローラ116bを具える。(図7B参照)。モータで駆動する駆動ローラ116aと下側アイドラローラ116bは、円筒状で、軽量の材料でできており、シャフトと、モータで駆動する駆動ローラ116aと下側アイドラローラ116bがシャフトの周りを自在に回転できるようにするベアリングとを具える。エンドレス下側可動ベルト120が、下側パネル118と、モータで駆動する駆動アッセンブリ116aと、下側アイドラローラ116bの周りに巻かれている。上述したように、モータで駆動する駆動ローラ116a(又はモータ)は、上側パネルアッセンブリ102内のバッテリに、デルリンブロック103に配置した電気接点を介して電気的に接続することができる。モータで駆動する駆動ローラ116aの回転運動によって、エンドレス下側可動ベルト120を並進運動させ、それに伴って結果的に下側アイドラローラ116bが回転運動する。下側駆動アッセンブリ116を下側パネルサポート部材131の内側に解放可能に固定することによって、下側駆動アッセンブリ116が容易かつ迅速に取り外され、下側可動ベルト120を迅速に取り外して置き換えることができる。下側アイドラローラ116bは、調整可能なスクリューロッド133によって下側パネルサポート部材131の内側に固定して、下側駆動アッセンブリ116を張力のみならず、下側可動ベルト120との整合も調整することができる。下側駆動アッセンブリ116は、駆動ローラの周りに更なる巻きつけと、下側可動ベルト120の経路を延ばすことによってベルトに張力をかける手段を提供する。
【0019】
モータで駆動する駆動ローラ110a、116aは、たとえばDCギアモータであってもよい。このモータで駆動する駆動ローラ110a、116aは、単一速度で作動するか、あるいは変速コントロールを行ってもよい。上述した通り、モータで駆動する駆動ローラ110a、116aは両方とも、上側パネルアッセンブリ102に配置したバッテリによって給電される。
【0020】
いくつかの実施例では、上側可動ベルト114と下側可動ベルト120が、互いに対して逆回転する。上側可動ベルト114と下側可動ベルト120は、摩擦によって適所に保持することができ、ベルト114、120が上側駆動アッセンブリ110と下側駆動アッセンブリ116から容易に取り外すことができる。ベルト114と120の適切なアラインメントとトラッキングは、適切なアイドラローラの調整によって、テーパのついたローラノーズアッセンブリ124を用いて行うことができる。ノーズアッセンブリ124は、上側パネルアッセンブリ102の遠位端に一体的に連結されており、中央部と対向する側部を有する。中央部は、ノーズアッセンブリ124のほぼ1/3を占めており、テーパは付いていないが、対向する側部はテーパが付いており、各側部の厚さが、上側パネルアッセンブリの遠位端から外側に向けて徐々に先細になっている。一の実施例では、各側部が1/16インチ乃至12インチのテーパが付いている。ノーズアッセンブリ124のテーパによって、上側可動ベルト114が上側パネル112の中央に残る。一の実施例では、テーパが約0.3度である。
【0021】
ハンドル123は、ハンドルサポート部材125を介して上側パネルサポート部材117の外側エッジに固定されている。ハンドル123は、スパインボード100を、患者を乗せるあるいはおろす位置に移動させる手段、並びに、患者がスパインボード100に配置されたときに患者を移動させる手段を提供する。
【0022】
図2Aは、図1に示すスパインボード100の上側パネルアッセンブリ102の斜視図である。この図において、上側パネルアッセンブリ102は、上側パネル112の近位端112aの外側エッジに固定された上側駆動アッセンブリ110と共に示されている。上側可動ベルト114も、上側パネル112と上側駆動アッセンブリ110に巻きつけた状態で示されている。いくつかの実施例では、上側可動ベルト114は、Nylon(登録商標)、ウレタン又はゴムといった、柔軟なポリマ材料でできている。対向するラッチアッセンブリ106の一方と対向するヒンジアッセンブリ108の一方の構成要素も示されている。ノーズアッセンブリ124も、上側パネル112の遠位端112bにおいて上側パネルに一体的に連結された状態で示されている。ノーズアッセンブリ124は、狭くなっている断面を提供しており、スパインボードを人の下に容易に移動させることができる。小ローラ127(図2B参照)は、スパインボードのノーズアッセンブリ124の端部に位置しており、上側可動ベルト114が最小摩擦で方向転換できるようにしている。ロッカースイッチなどのスイッチ129を上側パネル112の上の、例えばヒンジアッセンブリ108近傍に配置して、ベルトの方向を制御し変更するのに使用してもよい。断面が狭くなっている結果、ノーズ部分もスパインボードに横方向及び縦方向の両方向に強度を提供している。更に、狭くなった断面が、ベルトを地面より若干高い位置に保持しているため、上側可動ベルト114が地面にこすれない。
【0023】
図2Bは、図2Aに示す上側パネルアッセンブリ102の分解図である。この図において、上側パネルアッセンブリ102を構成する一またはそれ以上の部品が、互いに対して示されている。特に、ノーズアッセンブリ124、上側駆動アッセンブリ110、ラッチアッセンブリ106及びヒンジアッセンブリ108の、上側パネル112に対する方向が、より明確に示されている。上側可動ベルト114も、全体が示されている。作動時に、上側可動ベルト114は上側パネル112と駆動アッセンブリ110の周りに巻かれる(図2A参照)。
【0024】
図3Aは、本発明の一実施例にかかるスパインボードの上側パネルの斜視図である。一の実施例では、上側パネル312が、少なくとも二枚のシート326で挟まれて、一またはそれ以上の支持部材(図示せず、図3B参照)で支持されたコア328を具える。いくつかの実施例では、シート326が、金属、合金、あるいはポリマベースの材料といった軽量材料で構成されている。シート326を構成する材料の例には、限定するものではないが、アルミニウム、ステンレススチール、Aramid(登録商標)、グラファイト、ファイバーガラス、ポリカーボネート、及びポロプロピレンがある。特別な実施例では、上側シート326aが厚さ約0.030インチであり、下側シート326bが厚さ約0.020インチである。一般的に、上側パネル312の長さと幅は、平均的な人間を収納するサイズである。特別な実施例では、上側パネル312が約70インチ乃至約78インチの長さと、約18インチ乃至30インチの幅を有する。いくつかの実施例では、コア328が軽量のハニカム材料でできている。この材料には、限定するものではないが、金属、合金又はポリマベースの材料がある。特に、コア328を構成する材料には、限定するものではないが、アルミニウム、ステンレススチール、Aramid(商標)、ポリカーボネート、ポリエチレン及びポリプロピレンがある。当業者には知られているように、ハニカム材料は、少なくとも以下の有利な特徴がある。軽量、高密度、高剛性、高耐腐食性、及び安定した性能である。
【0025】
図3Bは、本発明の一実施例にかかるスパインボードの上側パネルのフレームを示す斜視図である。いくつかの実施例において、シート326(図示せず、図3A参照)の長さと幅が、コア328の長さと幅を超えており、周辺支持部材330を収容できる。たとえば、一の実施例では、シート326(図示せず、図3A参照)の長さと幅は、約67.5インチ乃至約30インチであり、コア328(図示せず、図3A参照)は約66インチ乃至約28.5インチであり、全側部において、コア328より約0.75インチ大きい。
【0026】
いくつかの実施例では、支持部材330が金属、合金又はポリマベースの管で構成されている。支持部材330を構成する材料に例には、限定するものではないが、アルミニウム、ステンレススチールがある。一の実施例では、支持部材330が、コア(図示せず、図3C参照)を貫通する一またはそれ以上のクロスブレース334付周辺フレーム332を具えている。有利なことに、クロスブレース334は、組み立てたパネル312に更なる強度とアラインメントを提供する(図3B参照)。特別な実施例では、指示部材330が3/4インチのアルミニウム管である。一の実施例では、パネル312のアッセンブリを、周辺フレーム332を構築することで組み立てることができる。このフレームはコア318の一またはそれ以上の片が支持部材330と一又はそれ以上のクロスブレース334に一致するサイズである。
【0027】
図3Cは、本発明の一実施例にかかる支持部材330とスパインボードの上側パネルの分解図である。一の組み立て方法では、上側パネル312を具える構成要素を以下のように組み立てることができる。周辺フレームとして組み立てた支持部材330を互いに溶接する。一またはそれ以上のクロスブレース334を周辺フレーム332の内側に横方向に配置し、次いで、コア328を具える構成要素を支持部材330と一またはそれ以上のクロスブレース334内の開スペース中の位置に置く。最後に、シート326をコア328を有する周辺フレーム338を挟むように配置して、このアッセンブリを人間プレスして、アッセンブリ全体を加圧して、構成要素を互いに接続する。
【0028】
図4は、本発明の一実施例に係るスパインボードの上側パネルに連結する周辺持ち手の斜視図である。いくつかの実施例では、周辺持ち手436が上側パネルに固定されている。周辺持ち手436は一方のエッジに沿って複数の持ち手438を具え、反対側のエッジがフランジ形状440である細長部材であり、上側パネル(図示せず、図6参照)に連結するように構成されている。いくつかの実施例では、持ち手438が周辺持ち手436の長さに沿って均等にスペースを空けて配置されている。持ち手438は、それぞれ開口442を規定しており、この開口と共に筒状強化部材(図6参照)を受けて、患者を乗せた時にデバイスに更なる安定性と支持を提供している。周辺持ち手436を構成する材料の例には、金属、合金あるいはポリマーベースの材料がある。
【0029】
図5A−5Dは、本発明の実施例にかかるスパインボードの上側パネルに連結する周辺持ち手を示す断面図である。各実施例において、周辺持ち手536は、開口542を規定する持ち手部分538と、上側パネル(図示せず、図6を参照)に連結するのに適したフランジ540を具える。周辺持ち手536の各実施例は、図に示すように持ち手部分538とフランジ540との間の部分の構成が異なっている。
【0030】
図6は、本発明の一実施例にかかる周辺持ち手に連結した上側パネルの斜視図である。この図において、フランジ640を介した周辺持ち手636の上側パネル612への連結が記載されている。筒状強化部材644が示されており、これを持ち手638によって規定されている開口を介して周辺持ち手636の長さ方向に挿入される。
【0031】
図7Aは、図1に示すスパインボードの下側パネルアッセンブリの斜視図である。この図において、下側パネルアッセンブリ104が、下側パネル118の近位端118a(遠位端118bに対向して)の外側エッジに固定されている下側駆動アッセンブリ116と共に示されている。下側可動ベルト120も、下側パネル118と下側駆動アッセンブリ116の周りに巻かれて示されている。いくつかの実施例では、下側可動ベルト120が、Nylon(登録商標)やゴムといった、柔軟なポリマ材料で構成されている。対向する近位側に位置したラッチアッセンブリ106も示されている。
【0032】
図7Bは、図7Aに示す下側パネルアッセンブリの分解図である。この図においては、下側パネルアッセンブリ104を具える一またはそれ以上の構成要素が示されている。特に、下側駆動アッセンブリ116、ラッチアッセンブリ106の下側パネル118に対する、並びに互いに対する方向がより明確に記載されている。下側可動ベルト120も、全体が示されている。作動時には、下側可動ベルト120が下側パネル118と下側駆動アッセンブリ116の周りに巻かれる(図7A参照)。
【0033】
本発明の実施例によれば、救急救命士によってスパインボードを野外で用いて患者を仰向けにしてボードに乗せて搬送することができる。重症度がはっきりしない脊椎又は大腿の損傷が疑われる患者にとっては、損傷場所から医療施設へ患者を乗せたり、搬送したり、降ろしたりする間に、患者を仰向けにしたまま、安定させておくことが非常に重要である。
【0034】
作動時には、本発明の実施例によるスパインボードは以下のように使用される。スパインボードの上側パネルアッセンブリの遠位端を患者の足に位置させる。モータで駆動する駆動ローラが動くと、上側及び下側ベルトが互いに逆方向に回動する。特に、下側ベルトは、地面または患者が寝ている面から引っ張られるときに患者の方向に移動し、一方、上側可動ベルトは、患者から離れる方向に動いて患者をその上に乗せる(例えば、コンベヤで)。いくつかの実施例では、ベルトの速度が、約0.10人間/秒乃至0.12人間/秒である。患者が上側パネルアッセンブリの上に乗ったら、下側駆動アッセンブリを上側パネルアッセンブリから取り外すことができる。この結果、患者は、持ち上げたり操作することなく、そっと載せたり降ろしたりすることができる。
【0035】
このように、本発明によるスパインボードには、少なくとも以下の利点がある。(1)従来のスパインボードに比較して、スパインボードの上に移動する際の患者の動きが少なくなる。(2)患者を乗せた後、下側パネルを上側パネルから容易に取り外すことができ、患者をおろすときに上側パネルの底面を地面につけることがない。(3)ベルトの交換といったメンテナンスが容易である。
【0036】
例示的な実施例について説明し、図面に示したが、これらの実施例は単に説明のためのものであり、広い適用を制限するものではないと解するべきである。また、様々なその他の変形例が当業者に自明であるため、本出願は、図に示して説明した特定の構造や構成に制限されない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B