特許第6057354号(P6057354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6057354RFエネルギーを使用して加熱するためのデバイスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057354
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】RFエネルギーを使用して加熱するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/70 20060101AFI20161226BHJP
   H05B 6/64 20060101ALI20161226BHJP
   A23L 3/365 20060101ALN20161226BHJP
【FI】
   H05B6/70 F
   H05B6/64 D
   !A23L3/365 Z
【請求項の数】17
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2015-43080(P2015-43080)
(22)【出願日】2015年3月5日
(62)【分割の表示】特願2012-537480(P2012-537480)の分割
【原出願日】2010年5月12日
(65)【公開番号】特開2015-135823(P2015-135823A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】PCT/IL2009/001058
(32)【優先日】2009年11月10日
(33)【優先権主張国】IL
(31)【優先権主張番号】61/282,980
(32)【優先日】2010年5月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/282,981
(32)【優先日】2010年5月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/282,983
(32)【優先日】2010年5月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508253694
【氏名又は名称】ゴジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ビルチンスキー,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ベン−シュメール,エラン
(72)【発明者】
【氏名】アツモニ,ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】アインツィガー,ピンカス
(72)【発明者】
【氏名】ラペル,アミト
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−527883(JP,A)
【文献】 特開2008−034244(JP,A)
【文献】 特開2008−066292(JP,A)
【文献】 特表2009−529646(JP,A)
【文献】 特許第4177963(JP,B2)
【文献】 特開平11−002409(JP,A)
【文献】 実開昭55−151096(JP,U)
【文献】 米国特許第04196332(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0039949(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/46−80
H05B 11/00
A23L 3/36−54
F24C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFを使用して負荷を加熱する方法において、前記負荷は過熱温度点を有しており、
(a)過熱を防止するように、前記負荷に散逸すべき最大のパワーを選択するステップと、
(b)複数の異なる変調空間要素でRFパワーを前記負荷に印加するステップであって、前記パワーが、異なる変調空間要素では異なり、且つすべての変調空間要素で前記最大パワー未満であるステップと、
(c)低いしきい値レベル未満の散逸比を有する変調空間要素でのパワーの印加を回避するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記RFパワーを印加するステップが、前記負荷の相変化をもたらすステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2の方法において、前記相変化は解凍を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2の方法において、前記相変化は蒸発を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの方法において、異なる部分を加熱するのに異なるRFパワーを印加するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかの方法において、前記パワーは、前記印加中に前記負荷内の熱暴走を防止するように選択されて印加されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかの方法において、最大パワーを選択するステップが、前記負荷の平均散逸の関数として最大パワーを選択するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかの方法において、最大パワーを選択するステップが、前記負荷のスペクトル情報の関数として最大パワーを選択するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかの方法において、前記RFパワーを複数の異なる最終温度に達するように印加するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかの方法において、パワーが印加される変調空間要素に印加できる最小パワーを選択するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかの方法において、前記複数の変調空間要素のそれぞれに関してパワーを選択するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11の方法において、パワーを選択するステップは、前記RFパワーを印加するために使用されるシステムのより広い帯域幅内で、パワーに関する1つまたは複数の周波数サブバンドを選択するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかの方法において、前記負荷のスペクトル情報を取得し、この情報を使用して、前記選択するステップおよび前記印加するステップの少なくとも一方を進めるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13の方法において、前記スペクトル情報の取得は繰り返し実施されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかの方法において、低いしきい値レベル未満の散逸比を有する変調空間要素でのパワーの印加を回避するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかの方法において、パワーを印加するステップが、所与の期間に異なる合計量のパワーを印加することを含み、それにより、特定の変調空間要素に関する実際のパワーは一定であるが、期間内でのパワーの印加の長さが変調空間要素毎に変えられ、異なる変調空間要素に関する異なる実効合計パワーを生み出すことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれかの方法において、パワーを印加するステップは、複数の前記変調空間要素を複数のセットにグループ化し、セット当たりの印加パワーに基づいて、印加されるパワーの量を変えるステップを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1)2009年11月10日出願の「Device and Method for Heating using RF Energy」という名称の国際出願PCT/IL2009/001058号;2)2010年5月3日出願の「Modal Analysis」という名称の米国仮特許出願;3)2010年5月3日出願の「Loss Profile Analysis」という名称の米国仮特許出願;および4)2010年5月3日出願の「Spatially Controlled Energy Delivery」という名称の米国仮特許出願の利益を主張するものである。これらの列挙したすべての出願の全体を、参照により本明細書に完全に組み込む。
【0002】
本出願は、2010年5月3日出願の1)Modal Energy Application;2)Degenerate Modal Cavity;3)Partitioned Cavity;および4)Antenna Placement in an Electromagnetic Energy Transfer Systemという名称の他の4つの米国仮特許出願に関係する。これらの列挙したすべての出願の全体を、参照により本明細書に完全に組み込む。
【0003】
本出願は、そのいくつかの実施形態において、一般に、負荷内への電磁(EM)エネルギーの散逸、具体的には、解凍、加熱、および/または調理のためのEMエネルギーの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
電子レンジは、現代社会で広く普及している機器である。しかし、その限界はよく知られている。これらの限界には、例えば、特に解凍(または解氷)に関する一様でない加熱および遅い熱の吸収が含まれる。実際、解凍さらには加熱のために使用されるとき、通常の電子レンジでは、食品の一部がほぼ温まった時点で、またはさらには部分的に調理された、もしくは過剰に調理された時点で、別の部分がまだ解氷されていないことがある。典型的には、従来の電子レンジを使用する物体の解凍および加温は、負荷内でのエネルギーの散逸が一様でなく、典型的には制御されないという問題がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、解凍中の負荷内での均一なエネルギー散逸が、時として負荷の不均一な温度プロファイルをもたらすことがあり、場合によっては熱暴走現象をもたらす(負荷の一部の温度が他の部分よりもはるかに速く上昇する)ことがあるという発明者の理解に基づいている。特に、より高温の部分の温度がある点を超えて変化すると、その部分の温度変化率が増加し、それにより温度差が継続的に増加するという状況が、熱暴走により生じることがある。
【0006】
本発明の1つの例示的実施形態では、エネルギー散逸は、以下の3つの様式の1つまたは複数で制御される。(a)最大散逸エネルギーを減少させる(例えば、伝送周波数またはMSE(変調空間要素。後でより詳細に説明する)のすべてまたは一部で);(b)散逸率が低い周波数またはMSEで、散逸が高い周波数よりも効率的な負荷内へのエネルギー散逸を引き起こす;および/または(c)監視作業間の過熱を防止するのに十分に頻繁に負荷を監視する。任意選択で、特に熱暴走がより大きな危険となる負荷の部分、例えば液体の水の部分では、違う条件で、より少ないパワーが散逸される。
【0007】
本発明の1つの例示的実施形態では、散逸率を使用/測定するのではなく、散逸比(例えば入力と散逸の比)またはさらには正規化された散逸比が測定される。正規化された散逸比は、例えば0〜1の範囲に正規化されるか、または平均散逸比に対して正規化される。
【0008】
本発明の1つの例示的実施形態では、散逸パワーと散逸比のグラフは、本質的に逆相関ではなく、準ガウス曲線である。低い散逸比ではより大きいパワーを散逸することが望ましいことがあるが、そのような散逸は、利用可能な最大のパワー設定が使用される場合でさえ、低い散逸比により制限される。最も高い散逸比では、全く伝送しない(または非常にわずかしか伝送しない)ことが望ましいことがある。中間レベルは、どちらの傾向によっても影響を及ぼされ、したがって準ガウス形状である。
【0009】
本発明の1つの例示的実施形態では、各周波数またはMSEが、1つまたは複数の負荷部分を表すと仮定する。負荷の同じ部分が複数の周波数またはMSEで吸収することがある。本発明の1つの例示的実施形態では、ある周波数またはMSEでの散逸が、それらの部分での散逸に対応すると仮定する。
【0010】
本発明の1つの例示的実施形態では、最大印加エネルギー(hpl)が、負荷のスペクトル情報に基づいて計算される。任意選択で、または別法として、周波数またはMSE毎のパワーレベルの選択は、そのような特性に従って選択される。任意選択で、または別法として、周波数またはMSE毎のパワーの選択は、より大きなパワーを負荷内に散逸させる周波数またはMSEのサブセットの選択に基づく。任意選択で、または別法として、各周波数またはMSEに関する、周波数またはMSE毎のパワーの選択は、その帯域のすべての周波数またはMSEで獲得されたスペクトル情報の分析に基づき、または、負荷に結合されているとみなされるすべての周波数またはMSE(例えば、例えば0.25%、または0.5%、または1%を超える高いQ値を有する帯域は含まない)で獲得されるスペクトル情報に基づく。
【0011】
本発明の1つの例示的実施形態では、解凍されている部分と解凍されていない部分を区別するためにスペクトル情報が分析される。任意選択で、そのような区別は、周波数毎またはMSE毎の分析ではなく、スペクトル情報の全般的な特性に基づき、例えば、氷と水の間でのスペクトル散逸画像の二峰性分布によって、予想される二峰性分布との合致に従って全体的に氷と水を分けることができると仮定する。時として、2つのモードの重なりがあり、そこでは、周波数またはMSEは、負荷の水部分と氷部分の両方である程度散逸する。
【0012】
本発明の1つの例示的実施形態では、解凍プロトコルパラメータは、負荷サイズおよび/または体積に応じて決まり、例えば、解けた水/氷の含有量を推定する方法を補正する。この方法は、大きな標的のより大きな絶対氷含有量によって歪むことがあり、および/またはその初期温度が解凍温度に近い場合に歪むことがある。
【0013】
本発明の1つの例示的実施形態では、含水量/高散逸周波数またはMSEの識別は、氷が水よりも低い散逸を有するという仮定に基づいている。任意選択で、そのような周波数またはMSEを検出するために、(相対または絶対)しきい値が使用される。任意選択で、しきい値は、比較的純粋な氷に関して提供され、それよりも上では、素材は、氷と水の混合物であると仮定される。任意選択で、システム全体は、負荷でない部分が非常に低い散逸を有するように、またはそこで散逸すると予想される周波数またはMSEにはエネルギーが全くまたはほとんど伝送されないように設計される。任意選択で、高いしきい値が提供され、それよりも上では、吸収材料が水であり、したがって低いパワーを伝送すべきであるか、またはパワーを伝送しないべきであり、負荷内へのパワー散逸を低くするか、またはなくす。任意選択で、中間散逸比の周波数またはMSEは、それらが水と氷の混合部分を反映するという仮定に基づいて追跡される。そのような部分は、完全に解凍されていることがあり、および/または水分が熱暴走事象を生じる中程度の危険がある。任意選択で、そのような中間周波数またはMSEは、中間パワーレベルを受け取る。
【0014】
本発明の1つの例示的実施形態では、スペクトル情報に基づいて大きな氷が存在することを検出し、小さな氷の区域の示唆がスペクトル情報に現れ始めるまで、より大きなエネルギーをそれらの周波数またはMSEで提供することによって、大きな氷の区域(すべての周波数またはMSEで低い散逸を有する)が過補償されることはない(例えば、水であると仮定されて、したがって低いパワーを受け取ることはない)。例えば、中間散逸比を有する周波数またはMSEでのエネルギー伝送は、そのような周波数またはMSEが大きな氷を表す場合、高散逸比を有する周波数またはMSEのエネルギー伝送と同程度には減少されない。
【0015】
本発明の1つの例示的実施形態では、これらおよび/または他のパラメータ、例えばしきい値、パワー/周波数の比、および時間は、負荷特性および/または所望の加熱効果に応じて決まる。任意選択で、様々なオプションを含むテーブルがメモリに記憶され、ユーザが選択することができる。任意選択で、または別法として、一連の関数が提供され、ユーザ選択または自動選択に従って適用される。
【0016】
任意選択で、または別法として、最大パワーレベルが、試行錯誤法を使用して、および/または負荷内の平均散逸の関数として計算される。
【0017】
本発明の1つの例示的実施形態では、最大印加パワーレベルおよび/または周波数もしくはMSE依存パワーレベルが、解凍または他の加熱またはエネルギー印加プロセス中に更新される。任意選択で、この更新は、解凍プロセス中に複数回(例えば、実質上連続的に、例えば1000回/秒、または2回/秒、さらには5秒毎に1回、またはそれよりも長い間隔で)行われる。
【0018】
本発明の1つの例示的実施形態では、走査の間の時間および/または走査の間の散逸は、過熱および/または熱暴走の危険を減少させるように選択される。任意選択で、使用されるパワーレベル、しきい値、走査レート、および/または他のパラメータは、回避すべきシナリオに応じて決まる。一例では、走査設定および/またはhplは、少量の水が誤って大量の氷とみなされた(したがって高パワーを照射された)場合に、次の走査が(氷と間違われていない場合の水の量の増加によって引き起こされる)そのような影響を検出するように選択される。
【0019】
任意選択で、スペクトル情報を改良するため、例えば水を氷から区別するのを補助するために、負荷および/または空洞を操作する。これは、伝送に関するより高いパワーレベル(例えば平均)、および/またはより高い散逸比(例えば平均または最小)の計算を可能にすることがあり、したがって、十分な品質でより速い解凍を可能にする。例えば、空洞内での負荷の位置を変えることができ(例えば負荷が置かれたプレートを回転または振動させることによって)、スペクトル情報が複数の位置の間で比較される。任意選択で、獲得されるスペクトル情報が氷/水の区別に関して最も有用となる(例えば計算される最大のhplを有する)ように負荷が位置決めされた状態で、エネルギー伝送が行われる。
【0020】
本発明の1つの例示的実施形態では、パワーが以前に印加された周波数またはMSEでは最小の低パワーレベルが散逸されて、そのような解凍済みの部分の冷却および/または再凍結を防止する。任意選択で、または別法として、スペクトル情報の第1の獲得と第2の獲得の間に所与の周波数またはMSEで負荷内に散逸させることができる最大パワーは、スペクトル情報の変化に基づいてパワーが停止される前に、解凍される部分が解凍段階をはるかに超えて加熱されることがないようなものである。
【0021】
本発明の1つの例示的実施形態では、正確な量のパワーを印加するのではなく、頻繁なフィードバックが使用される。任意選択で、または別法として、パワーを印加する方法は、使用されるパワー増幅器の特性を考慮する。
【0022】
本発明者らは、以下に詳述する可能性の1つまたは複数によって不均一な温度プロファイルが引き起こされる、または強調されることがあると仮説する。しかし、本明細書で述べる方法はまた、そのような仮説とは無関係に適用されることもあることに留意すべきである。さらに、本発明のいくつかの実施形態によれば、一様でない温度自体ではなく、負荷の有意な部分(例えば用途や使用者の望みに応じて、例えば0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、または中間のパーセンテージ)の過熱または過熱の危険が防止されることに留意されたい。
【0023】
(a)不均一な組成。現実の負荷は、通常は異なる素材(例えば、ある鶏肉部位での脂肪、骨、皮膚、および筋肉、またはひき肉内部の空気ポケット、またはエビのパック内のエビの間の氷柱)を含み、これらは、異なる比熱(C)および/または異なる潜熱(L)を有する。そのような場合には、(RF加熱は通常、物体内部での伝導による熱移動よりも速いので)一様な散逸エネルギーは、不均一な温度をもたらすことがある。本発明のいくつかの実施形態によれば、そのような異なる素材に関連付けられる負荷部分に関するパワーレベルを決定するときに、(例えば予め設定されたテーブルを使用して)これが考慮に入れられる。
【0024】
(b)不均一な熱的状態および熱移動の挙動。負荷は、(最初に、または解凍中に)異なる部位で異なる温度を有することがある。これは、例えば以下のことに起因することがある。解凍開始前の非平衡な冷却(例えば、冷凍が不完全である場合には内側が外側よりも温かい。逆に、冷凍されている物体がそれ自体よりも高い温度に短時間さらされた場合には外側が内側よりも温かい);加熱前または加熱中の、異なる環境への負荷の表面の露出(場合によっては加熱中の、温かい空気、内部および外部の対流電流、冷たいプレートへの露出);上述したような異質の組成;負荷の不定形状(ある部分が他の部分よりも薄い);例えば異なる部分が異なる表面/体積比を有することがある負荷の不定形状;あるいは前述したことの2つ以上の組合せ。これにより、(負荷が100%均質であり、すべての部分へのエネルギー散逸が同一である場合でさえ)より低温の部分が相変化を始めるかなり前に、比較的温かい部分が相変化の過程を経ることがある。本発明の1つの例示的実施形態では、加熱プロトコルは、加熱中に、そのような一様でない温度および/または熱の散逸を考慮に入れる。任意選択で、そのような考慮は、氷部分に最大のパワーを向けることによって自動的に行われる。
【0025】
(c)温度依存加熱。多くのタイプの素材に関して、相変化を発生させるのに必要なエネルギーの量が相変化後の物質に印加される場合、かなりの温度上昇(例えば20、40、さらには80℃)を引き起こす。その結果、冷凍されている素材内でのエネルギーの均一な散逸は、より低温の部分で相変化が完了する前に、より高温の部分の過熱をもたらすことがある。本発明の1つの例示的実施形態では、そのような過熱は、過熱の影響を受けやすい領域、および/またはパワー/熱の比がより速い素材の加熱を示唆するような領域へのパワーを減少させることによって防止される。
【0026】
上記のことは、時として、相変化がある(例えば沸騰する)か、相変化がない(例えば負荷の温度が上昇する、および/または所望のレベルで温度が維持される)かに関わらず、解凍を伴わない負荷の加熱にも当てはまることがあることに留意されたい。
【0027】
電磁エネルギーが印加される「物体」(「負荷」または「加熱対象の物体」とも呼ぶ)への言及は特定の形態に限定されないことに留意すべきである。「物体」または「負荷」は、本発明が利用される特定のプロセスに応じて、液体、固体、または気体を含むことがある。また、物体は、異なる相の物質からなる組成物または混合物を含むこともある。したがって、非限定的な例として、用語「物体」は、例えば以下のような物質を包含する。解氷または調理する食品;乾燥させる衣類または他の濡れた素材;解凍する凍結臓器;反応させる化学物質;燃焼させる燃料または他の可燃性材料;脱水する水和物;膨張させるガス;加熱、沸騰、または気化させる液体;またはわずかにでさえ電磁エネルギーを印加することが望まれる任意の他の素材。
【0028】
本発明の1つの例示的実施形態によれば、既に相変化した区域よりも相変化していない区域にかなり大きなRFエネルギーが散逸される場合に、一様でない加熱または少なくとも熱暴走が、少なくともある程度防止される。1つの特定の例は、解凍しない部分、脂肪、および/または他の凍結していない素材よりも、解凍される部分に大きなパワーを散逸することである。
【0029】
用語「RFまたは電磁エネルギー」は、本明細書で使用するとき、限定はせずに無線周波数(RF)、赤外線(IR)、近赤外線、可視光、紫外線などを含めた電磁スペクトルの任意の部分またはすべての部分を含むことに留意すべきである。1つの特定の例では、印加される電磁エネルギーは、100km〜1mmの自由空間内での波長(それぞれ3KHz〜300GHzの周波数)を有するRFエネルギーを含むことがある。いくつかの他の例では、周波数帯域は、500MHz〜1500MHzの間、または700MHz〜1200MHzの間、または800MHz〜1GHzの間でよい。例えば、マイクロ波エネルギーと超高周波数(UHF)エネルギーは、どちらもRF範囲内にある。本明細書では、本発明の例をRFエネルギーの印加に関連付けて説明するが、これらの説明は、本発明のいくつかの例示的な原理を示すために提示するものであり、電磁スペクトルの任意の特定の部分に本発明を限定することは意図されていない。
【0030】
本発明の1つの例示的実施形態では、エネルギー散逸のそのような不均一な分布は、比較的低い散逸比を有する周波数またはMSE、すなわち主に氷中で散逸する周波数またはMSEで高いパワーを伝送し、比較的高い散逸比を有する周波数またはMSE、すなわち主に水中で散逸する周波数またはMSEで低いパワーを伝送する(さらにはパワーを伝送しない)ことによって実現される。
【0031】
本発明の例示的実施形態によれば、異なる負荷部分(例えば水および氷中、または例えば極性、脂質含量、および含水量を含めた任意の他の理由で異なる散逸比を有する負荷部分)での所与の周波数またはMSEの散逸は、多くの因子に依存し、それらの因子には、空洞内部の負荷組成、サイズ、形状、位置、および向き、ならびに異なる負荷部分での正確な温度および相が含まれることに留意されたい。異なる条件下では、所与の周波数またはMSEは、主に水中、主に氷中、またはその両方で散逸することがある。しかし、本発明者らは、空洞からスペクトル情報を取得すれば、取得した情報の分析を使用して有用な解凍プロトコルを導き出すことができること、および/またはそのような分析が、生じ得る水中および/または氷中での散逸のパターンを反映することができることを発見した。
【0032】
本出願の文脈では、用語「スペクトル情報」は、異なる周波数またはMSEでの、および/またはチャンバ内の負荷との、チャンバ内におけるRFの相互作用データを意味し、例えば、一度に1つまたは複数の空洞内供給機構を使用して、一定のパワーまたは変化するパワーで周波数またはMSEをスイープし、前記1つまたは複数の空洞内供給機構によって受信される反射パワーを測定し、任意選択で、各周波数またはMSEで空洞内に実際に伝送されたパワーを考慮する。時として、1つの供給機構が伝送し、1つまたは複数の他の供給機構(またはすべての他の供給機構)が、反射されたパワーを測定する。時として、このプロセスは、複数の供給機構の1つまたは複数に関して繰り返される。非限定的な例は、国際公開第07/096878号パンフレットに記載されるようなスペクトル画像の取得である。
【0033】
本発明の1つの例示的実施形態では、制約関数を使用して、比較的高い散逸比を有する部分にはより少量のエネルギーが散逸し(またはエネルギーが全く散逸せず)、一方、比較的低い散逸比を有する部分にはより多量のエネルギーが散逸するように空洞内に伝送するためにRFパワーを計算する。本発明の1つの例示的実施形態では、高い散逸比を有する部分では、低い散逸比または中間の散逸比を有する部分よりも単位体積当たりに散逸されるエネルギー(または単位質量当たりの散逸)が小さくなるように関数が選択される。本発明の1つの例示的実施形態では、制約関数を使用して、比較的高い散逸比を有する周波数またはMSEによってより少量のエネルギーが負荷内に散逸し(またはエネルギーが全く散逸せず)、一方、比較的低い散逸比を有する周波数またはMSEによってより多量のエネルギーが負荷内に散逸するように、空洞内に伝送するためにRFパワーを計算する。本発明の1つの例示的実施形態では、解凍(または部分解凍)され(または負荷内への周波数またはMSEの散逸比が増加し)、その後、「高散逸部分(または周波数もしくはMSE)」(または「中間散逸部分(または周波数もしくはMSE)」)として分類し直される負荷の部分に関して、加熱が自動的におよび/または本来的に調節される。例えば、加熱セッション後に周波数またはMSE走査またはスイープを行うことによって、使用される周波数またはMSEの少なくともいくつかの散逸比の変化が見られるようになることがあり、この変化は、少なくとも一部には、負荷のそれぞれの部分の相変化と相関する。新たに獲得されたスペクトル情報に基づいて伝送プロトコルを再計算することによって、デバイスは、解凍の進行(および/または動作中に負荷が移動する場合には負荷の位置の変化)に関して自己調節することができる。
【0034】
本発明の1つの例示的実施形態では、各周波数またはMSEでの伝送エネルギーは、高い散逸比(例えば70%以上または80%以上)を有する周波数またはMSEで負荷内に散逸するエネルギーの量を、比較的低い散逸比(例えば40%以下または30%以下)を有する周波数またはMSEで負荷内に散逸されるエネルギーの50%以下にすることができるように選択される。時として、これは、低い散逸比を有する周波数またはMSEで散逸されるエネルギーの20%以下、5%以下、0.1%以下、さらには0%となる。
【0035】
上述したことは解凍に焦点を当てているが、他の相変化にも適用することができ、あるいは、パワー散逸と加熱率の関係が突然変化する状況、および/または熱暴走を防止することが望まれる状況(例えば、それぞれ高い比熱と低い比熱および/または高い潜熱と低い潜熱に対応する、低い散逸比の区域と高い散逸比の区域の両方を含む物体を均一に加熱することを試みるとき)にも適用することができる。さらに、異なる条件で加熱される複数の(例えば3つ、4つ、5つ、またはそれよりも多い)部分が提供されることもある。時として、加熱に使用される作業帯域の複数の部分は、エネルギーが伝送されない周波数またはMSE(または一部)を含まない。任意選択で、異なる周波数またはMSEが、散逸比に基づいてそのような複数の部分に割り当てられる。しかし、温度変化に必要なエネルギーに比べて相変化に必要なエネルギー量が大きいことに起因して、また、食品がしばしば冷凍保存されており、解凍して提供または用意されることを考慮して、解凍が特に興味深い要点となることに留意されたい。同様に、追加として、または別法として、過熱によって損傷を受けることがある部分および/または十分に加熱されていない場合には容認できない部分が対象となることがある。時として、任意の他の理由から、異なる部分を異なる条件で加熱することが望ましいことがある(例えば、1つの部分を加熱(例えば調理)するが別の部分は調理しない、または異なる最終温度に達する)。
【0036】
また、いくつかの実施形態において根底にあるストラテジは、標的となる負荷部分に対するそのようなパワーの効果に従って単位体積当たりのパワーを調整することであるが、いくつかの実施形態によれば、これは、特定の周波数またはMSEに狙いを定め、それらの周波数またはMSEの散逸に従ってパワーを調整することによって直接実現され、単位体積当たりでの特定のパワーレベルを直接は保証しないことにも留意されたい。
【0037】
本発明の1つの例示的実施形態によれば、RFを使用して負荷を加熱する方法において、
(a)過熱温度点を有する負荷を提供するステップと、
(b)過熱を防止するように、負荷に散逸すべき最大のパワーを選択するステップと、
(c)複数の異なる周波数またはMSEでRFパワーを前記負荷に印加するステップであって、前記パワーが、異なる周波数またはMSEでは異なり、すべての周波数またはMSEで前記最大パワー未満であるステップと
を含む方法が提供される。
【0038】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記選択するステップは、加熱の均一性と加熱の速度との折り合い点を見出すステップを含む。時として、選択される最大パワーは、任意の所与の周波数またはMSEでデバイスによって利用可能な最大パワーに、その周波数またはMSEでの散逸比を乗算したものでよい。任意選択で、または別法として、RFパワーを印加するステップが、前記負荷の相変化をもたらすステップを含む。任意選択で、前記相変化は解凍を含む。別法として、前記相変化は蒸発を含む。
【0039】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記相変化は、負荷の1単位部分の相変化を引き起こすためのパワーの効果と、相変化が完了している負荷の1単位部分の温度を1℃だけ上昇させるためのパワーの効果との比が少なくとも1:20である。
【0040】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記パワーは、前記印加中に前記負荷内の熱暴走を防止するように選択されて印加される。
【0041】
本発明の1つの例示的実施形態では、最大パワーを選択するステップが、負荷の平均散逸の関数として最大パワーを選択するステップを含む。
【0042】
本発明の1つの例示的実施形態では、最大パワーを選択するステップが、負荷のスペクトル情報の関数として最大パワーを選択するステップを含む。
【0043】
本発明の1つの例示的実施形態では、方法は、パワーが印加される周波数またはMSEで印加できる最小パワーを選択するステップを含む。
【0044】
本発明の1つの例示的実施形態では、方法は、前記複数の周波数またはMSEそれぞれに関してパワーを選択するステップを含む。任意選択で、パワーを選択するステップは、前記RFパワーを印加するために使用されるシステムのより広い帯域幅内で、パワーに関する1つまたは複数の周波数サブバンドを選択するステップを含む。
【0045】
本発明の1つの例示的実施形態では、方法は、前記負荷のスペクトル情報を繰り返し検索し、前記情報を使用して、前記選択するステップおよび前記印加するステップの少なくとも一方を進めるステップを含む。
【0046】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記RFパワーを印加するステップが、ある周波数での散逸比に対して逆比となるパワーを前記周波数で印加するステップを含む。
【0047】
本発明の1つの例示的実施形態では、方法は、低いしきい値レベル未満の散逸比を有する周波数でのパワーの印加を回避するステップを含む。
【0048】
本発明の1つの例示的実施形態では、方法は、高いしきい値レベルを超える散逸比を有する周波数でのパワーの印加を回避するステップを含む。
【0049】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記印加するステップは、前記負荷内の氷を識別するステップに応答し、前記識別するステップは、低い散逸を有する周波数に従って識別するステップを含む。任意選択で、識別するステップは、負荷の質量に関して補償される。任意選択で、または別法として、識別するステップは、負荷タイプに応じて決まるしきい値に従う。
【0050】
本発明による1つの例示的実施形態によれば、先行する請求項の任意のものの選択ステップおよび印加ステップを実施するように構成された装置が提供される。
【0051】
本発明の1つの例示的実施形態によれば、RFを使用して負荷を加熱する方法において、
(a)異なる部分で異なる散逸比を有する負荷を提供するステップと、
(b)負荷の加熱時に、第1の散逸比で散逸する周波数では、第2の散逸比で散逸する周波数よりも小さいエネルギー(またはパワー)が伝送されるように、周波数/エネルギー対を設定するステップであって、前記第2の散逸比が、所与の伝送サイクルで前記第1の散逸比よりも高いステップと、
(c)前記負荷を加熱するために前記周波数/パワー対を適用するステップと
を含む方法が提供される。
【0052】
本発明の1つの例示的実施形態によれば、RFを使用して負荷を加熱する方法において、
(a)異なる部分で、印加される伝送エネルギー(h/te)当たり異なる加熱率を有する負荷を提供するステップと、
(b)負荷の加熱時に、高いh/te率を有する部分に対応する周波数で、低いh/teを有する部分に対応する周波数よりも、部分の単位体積当たりに小さいエネルギーが伝送されるように、周波数/エネルギー対を設定するステップと、
(c)前記負荷を加熱するために前記周波数/パワー対を適用するステップと
を含む方法が提供される。
【0053】
本発明の1つの例示的実施形態によれば、RFを使用して負荷を加熱する方法において、
(a)異なる部分で異なる散逸比を有する負荷を提供するステップと、
(b)負荷の加熱時に、第1の散逸比で散逸する周波数と第2の散逸比で散逸する周波数で異なるパワー印加プロトコルが適用されるように、周波数/パワー対を設定するステップと、
(c)前記負荷を加熱するために前記周波数/パワー対を適用するステップと
を含む方法が提供される。
【0054】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記印加するステップは、より低い散逸比を有する部分に関してより大きなパワーを印加するステップを含む。任意選択で、または別法として、2つ以上のパワー印加プロトコルの相違は、それぞれの負荷部分で散逸すべき負荷量当たりのエネルギーの総量を含む。任意選択で、または別法として、2つ以上のパワー印加プロトコルの相違は、加熱速度と均質性との折り合い点を含む。
【0055】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記設定するステップは、散逸比に関連付けられるセットに周波数を関連付けるステップを含み、前記設定するステップは、前記セットに従って周波数/パワー対を選択するステップを含む。任意選択で、前記設定するステップは、セット当たりのパワーレベルを選択するステップを含む。任意選択で、または別法として、前記関連付けるステップは、前記散逸比に加えて情報に基づいて関連付けるステップを含む。任意選択で、または別法として、少なくとも1つのセットは、複数の不連続な周波数範囲を含み、前記範囲の間で少なくとも1つの周波数が別のセットに属する。任意選択で、または別法として、少なくとも1つのセットは、冷凍されている素材に対応する。任意選択で、または別法として、関連付けるステップは、少なくとも3つのセットに関連付けるステップを含む。任意選択で、または別法として、前記周波数またはMSEをセットに関連付けるステップは、所定の数のセットに関連付けることによって行われる。任意選択で、前記所定の数のセットは、2〜10セットである。
【0056】
本発明の1つの例示的実施形態では、関連付けるステップは、複数の周波数またはMSEに割り当てられた有意な量の散逸エネルギーまたはパワーをそれぞれ有する少なくとも2つのセットに関連付けるステップを含み、前記有意な量は、セットに割り当てられる加熱サイクル中の総散逸パワーの少なくとも7%である。任意選択で、または別法として、前記セットの少なくとも2つは、非ゼロ伝送パワーを有し、1つのセットの平均散逸パワーは、別のセットの少なくとも2倍である。任意選択で、または別法として、前記セットの少なくとも2つは、非ゼロ伝送パワーを有し、1つのセットの平均散逸パワーは、別のセットの少なくとも5倍である。任意選択で、または別法として、前記セットの少なくとも2つは、非ゼロ伝送パワーを有し、1つのセットの平均散逸パワーは、別のセットの少なくとも10倍である。任意選択で、または別法として、パワーが伝送されるセットは、作業周波数またはMSEの少なくとも5%をカバーする。任意選択で、または別法として、パワーが伝送されるセットは、作業周波数またはMSEの少なくとも20%をカバーする。任意選択で、または別法として、前記セットの少なくとも2つは、それぞれ、散逸比の値範囲の少なくとも10%に対応する。
【0057】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記負荷が食品を含む。任意選択で、または別法として、前記負荷は、少なくとも2つの食品部分の組合せを含む。任意選択で、または別法として、前記印加するステップは、前記負荷の相変化を引き起こす。任意選択で、または別法として、前記印加するステップは、前記負荷の少なくとも一部の解凍を引き起こす。
【0058】
本発明の1つの例示的実施形態では、方法は、加熱プロセスの一部として、ステップ(b)および(c)を少なくとも2回繰り返すステップを含む。
【0059】
また、本発明の1つの例示的実施形態によれば、RFを使用して負荷を加熱する方法において、
(a)異なる部分で、印加されるパワー当たりの異なる加熱率(h/p)を有する負荷を提供するステップと、
(b)負荷の加熱時に、高いh/p率を有する部分に対応する周波数で、低いh/pを有する部分に対応する周波数よりも、部分の単位体積当たりに小さいエネルギーが伝送されるように、周波数/パワー対を設定するステップと、
(c)前記負荷を加熱するために前記周波数/パワー対を適用するステップと
を含む方法が提供される。
【0060】
また、本発明による1つの例示的実施形態によれば、先行する請求項の任意のものの選択ステップおよび印加ステップを実施するように構成された装置が提供される。任意選択で、装置は、複数のパワー印加プロトコルを記憶し、異なる周波数セットに異なるプロトコルを適用するように構成されたメモリを備える。
【0061】
また、本発明の1つの例示的実施形態によれば、RFを使用して負荷を加熱する方法において、
(a)過熱温度点を有する負荷を提供するステップと、
(b)過熱を防止するように、負荷に散逸すべき最大のパワーを選択するステップと、
(c)複数の異なる周波数でRFパワーを前記負荷に印加するステップであって、前記パワーが、異なる周波数では異なり、すべての周波数で前記最大パワー未満であるステップと
を含む方法が提供される。任意選択で、RWパワーを印加するステップが、前記負荷の相変化をもたらすステップを含む。任意選択で、前記相変化は解凍を含む。任意選択で、または別法として、前記相変化は蒸発を含む。
【0062】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記相変化は、負荷部分1単位当たりの相変化を引き起こすためのパワーの効果と、相変化が完了している負荷部分1単位当たりの温度を1℃だけ上昇させるためのパワーの効果との比が少なくとも1:20である。
【0063】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記パワーは、前記印加中に前記負荷内の熱暴走を防止するように選択されて印加される。任意選択で、または別法として、最大パワーを選択するステップが、負荷の平均散逸の関数として最大パワーを選択するステップを含む。任意選択で、または別法として、最大パワーを選択するステップが、負荷のスペクトル情報の関数として最大パワーを選択するステップを含む。任意選択で、または別法として、最大パワーを選択するステップが、任意の所与の周波数で空洞内にデバイスによって伝送させることができる最大パワーの関数として最大パワーを選択するステップを含む。
【0064】
本発明の1つの例示的実施形態では、方法は、パワーが印加される周波数またはMSEで印加できる最小パワーを選択するステップを含む。任意選択で、または別法として、方法は、前記複数の周波数またはMSEそれぞれに関してパワーを選択するステップを含む。任意選択で、パワーを選択するステップは、前記RFパワーを印加するために使用されるシステムのより広い帯域幅内で、パワーに関する1つまたは複数の周波数またはMSEサブバンドを選択するステップを含む。
【0065】
本発明の1つの例示的実施形態では、方法は、前記負荷のスペクトル情報を検索し、前記情報を使用して、前記選択するステップおよび前記印加するステップの少なくとも一方を進めるステップを含む。任意選択で、スペクトル情報の前記検索が繰り返し行われる。
【0066】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記RFパワーを印加するステップが、ある周波数またはMSEでの散逸に対して逆相関するパワーを前記周波数またはMSEで印加するステップを含む。
【0067】
本発明の1つの例示的実施形態では、方法は、低いしきい値レベル未満の散逸比を有する周波数またはMSEでのパワーの印加を回避するステップを含む。
【0068】
本発明の1つの例示的実施形態では、方法は、高いしきい値レベルよりも上の散逸比を有する周波数またはMSEでのパワーの印加を回避するステップを含む。
【0069】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記印加するステップは、前記負荷内の氷を識別するステップに応答し、前記識別するステップは、低い散逸を有する周波数またはMSEに従って識別するステップを含む。任意選択で、識別するステップは、負荷の質量に関して補償される。任意選択で、または別法として、識別するステップは、負荷タイプに応じて決まるしきい値に従う。
【0070】
本発明の1つの例示的実施形態では、前記印加するステップが、散逸比の値の正規化を含む。
【0071】
本発明の1つの例示的実施形態では、パワーを印加するステップが、所与の期間に異なる合計量のパワーを印加することを含み、それにより、特定の周波数またはMSEに関する実際のパワーは一定であるが、期間内でのパワーの印加の時間間隔が周波数またはMSE毎に変えられ、異なる周波数またはMSEに関する異なる実効合計パワーを生み出す。
【0072】
本発明の1つの例示的実施形態では、パワーを印加するステップは、複数の前記周波数またはMSEを複数のセットにグループ化し、セット当たりの印加パワーに基づいて、印加されるパワーの量を変えるステップを含む。
【0073】
本開示では、概念の多くを、周波数および/または変調空間要素に関連付けて説明してきた。いくつかの実施形態では、周波数が、変調空間要素を定義または操作するために使用される1つまたは複数のパラメータの中に含まれることがある。したがって、一般に、周波数に関して説明する本明細書で開示する実施形態に関係する概念はまた、より一般的に、変調空間要素の使用を含む実施形態に拡張することができる。
【0074】
いくつかの例示的実施形態は、EMエネルギーを負荷に印加するための装置を含むことがある。装置は、少なくとも1つの処理装置を含むことができ、処理装置が、複数の変調空間要素それぞれに関する散逸エネルギーを示唆する情報を受信し、散逸エネルギーを示唆する受信された情報に基づいて、いくつかの複数の変調空間要素を少なくとも2つのサブセットにグループ化するように構成される。また、処理装置は、パワー送達プロトコルを少なくとも2つのサブセットそれぞれに関連付け、その際、パワー送達プロトコルがサブセット間で異なり、さらに、各パワー送達プロトコルに従って負荷に印加されるエネルギーを調整するように構成することができる。
【0075】
他の例示的実施形態は、EMエネルギーを負荷に印加するための方法を含むことがある。この方法は、複数の変調空間要素それぞれに関して、散逸エネルギーを示唆する情報を受信するステップと、散逸エネルギーを示唆する受信された情報に基づいて、いくつかの複数の変調空間要素を、少なくとも2つのサブセットにグループ化するステップと、パワー送達プロトコルを少なくとも2つのサブセットそれぞれに関連付けるステップであって、パワー送達プロトコルがサブセット毎に異なるステップと、各パワー送達プロトコルに従って負荷に印加されるエネルギーを調整するステップとを含むことができる。
【0076】
別の例示的実施形態は、複数の下位成分を有する負荷にエネルギーを印加するための装置を含むことがある。装置は、少なくとも1つの処理装置を含むことができ、処理装置は、各下位成分に関連付けられたエネルギー散逸特性の値を決定し、エネルギー散逸特性の値に基づいて、第1のタイプの下位成分が第2のタイプの下位成分よりも大きいエネルギーを吸収するようにされるように、素材へのエネルギー移動を調整するように構成される。下位成分は、例えば、物質の相が互いに異なることがある(例えば冷凍と解凍)。
【0077】
別の例示的実施形態は、第1の物質相と第2の物質相を有する素材にエネルギーを印加するための装置を含むことがある。装置は、少なくとも1つの処理装置を含むことができ、処理装置は、EMエネルギーの印加を調整して、第1の物質相を有する第1の素材部分にエネルギーを選択的に印加し、第2の物質相を有する第2の素材部分に印加されるエネルギーを選択的に制限するように構成される。
【0078】
本発明の非限定的な例示的実施形態を、添付図面を参照して以下に説明する。図面は例示であり、一般に正確な縮尺ではない。異なる図面での同一または同様の要素には、同じ参照番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1図1は、本発明の1つの例示的実施形態によるデバイスの概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による解凍デバイスの動作の方法の簡略流れ図である。
図3図3は、1つの例示的な決定関数に関する、相対補償と正規化された散逸比との関係のグラフを示す図である。
図4図4は、本発明の別の実施形態によるデバイスの動作の方法の簡略流れ図である。
図5図5は、平均散逸の関数としてhplパラメータ値を選択する方法を示すグラフである。
図6図6は、同じ質量を有する牛肉とマグロに関する測定された散逸比を、平均および様々な周波数で示すグラフである。
図7図7は、大きい鶏肉と小さい鶏肉に関する測定された散逸比を、平均および様々な周波数で示すグラフである。
図8図8は、本発明の1つの例示的実施形態による、様々な散逸比を有する素材を違う条件で加熱する方法の流れ図である。
図9図9は、図3の例に対する例示的代替形態を示す図である。
図10図10は、ライスと鶏肉の混合に関する異なる散逸比を示す図である。
図11図11は、本発明の1つの例示的実施形態による、電磁エネルギーを物体に印加するための装置を示す図である。
図12図12は、本発明の一実施形態による、散逸比スペクトル(破線)および入力エネルギースペクトル(実線)を示す図である。
図13図13は、本発明の一実施形態による散逸比スペクトルを示す図である。
図14図14は、本発明の1つの例示的実施形態によるデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
概説
本出願は、とりわけRF加熱(例えばマイクロ波またはUHF)加熱の分野でのいくつかの進歩を記載する。便宜上、これらの進歩を、様々な装置および方法の文脈でまとめて説明するが、各進歩は、一般には独立しており、(適用可能であれば)従来技術の装置および方法と共に、または本明細書で述べる他の進歩の最適ではない形態と共に実施することができる。さらに、本発明の一実施形態の文脈で説明する進歩を他の実施形態において利用することもでき、可能な限り、他の実施形態の説明に任意選択の特徴として組み込まれるものとみなすべきである。実施形態は、特定の進歩性のある要素を強調するために、いくぶん簡略化した形で示す。さらに、本発明のいくつかまたはすべての実施形態に共通のいくつかの特徴は、「発明の概要」の項に記載されていることがあり、それもまた様々な実施形態の詳細な説明の一部とみなすべきであることに留意されたい。
【0081】
一般的な不定形の負荷内でエネルギーのほぼ一様な散逸をもたらすための1つの方法およびデバイスは、参照により本明細書に援用するBen−ShmuelおよびBilchinskyの国際公開第07/096878号パンフレット(‘878号)に従うものである。1つの例示的実施形態では、‘878号によるデバイスは、複数のRF周波数(ある周波数帯域内のすべて)を空洞内に伝送することによって得られる情報を使用して、その帯域内での空洞の全Sパラメータを取得し、それにより、周波数に応じて空洞のスペクトル情報(例えば空洞内へのエネルギーの散逸)を求めることができる。この情報は、空洞内で所望の散逸パターンを得るために、(もしあれば)各スイープ周波数をデバイス内に伝送すべきパワーを導き出すために使用される。
【0082】
1つのオプションでは、パワーは、(表面電流でもアンテナ間でもなく)負荷内で主に散逸する帯域内でのみ伝送される。これは、例えば、効率ηと供給されるパワーとの積がすべての伝送される周波数またはMSEに関して実質的に一定になるように行うことができ、負荷の組成に関係なく、(周波数またはMSEに応じて)負荷または空洞内でのエネルギーのほぼ一様な散逸を可能にする。
【0083】
物体の解凍中、物体内の氷が溶解して水になる。氷と水は、RFエネルギーに関して異なる吸収率を有し、その結果、周波数に応じて異なる反射減衰量および結合をもたらす。これは、マッチングを変えることがあり、マッチング要素の調節によってマッチングし直した後、吸収効率ピークの周波数が変わることがある。任意選択で、(獲得された情報に基づいて)投入するために選択される周波数、特にその変化率を監視することによって、すべての氷が溶解して水になる点を求めることができ、(解凍のみが望まれている場合には)加熱を終了することができる。
【0084】
より一般には、異なる素材(または異なる特性を有する素材)は、(例えば複数の素材から成るので、または異なる相を有する1つの素材から成るので)典型的には不定の吸収特性を有する。さらに、吸収特性は、物体内の素材の温度および/または相に応じたものであることも多い。したがって、物体の温度および/または相が変わると、物体の吸収特性が変わることがあり、この変化率および大きさは、物体内の素材の特性に応じて決まることがある。さらに、物体の形状が、特定の周波数でのその吸収特性に寄与することもある。例えば、不定形状の物体は、不定形の電磁エネルギー吸収を示すことがある。これらの因子はすべて、物体内での電磁エネルギーの吸収の制御を難しくすることがある。
【0085】
例示的なシステム
図1に、本発明の一実施形態によるデバイス10を概略的に示す。本発明の1つの例示的実施形態では、デバイスは、国際公開第07/096878号パンフレットに記載されているように構成されて操作され、1つまたは複数の変更点を以下に詳述する。特に、本発明の1つの例示的実施形態では、制御装置は、(例えば、解凍済みの部分、またはより低い脂肪含量またはより高い水分もしくは塩分含有量を有するより極性の高い部分に対応する)高吸収部分へのパワー伝送が回避されるように構成され、それにより過熱の危険が低減される。追加として、または別法として、例えばかなり低いパワーが、解氷されている部分に提供される。これは、解凍されていない領域の温度変化および解凍に必要なパワーが、流体部分の加熱に必要とされるよりもはるかに高く、したがって、同様のパワーレベルを提供すると、解凍されている部分が暴走加熱し、解凍されていない部分は少ししか加熱/解凍されないからである。
【0086】
図示されるデバイス10は、空洞11を備える。図示される空洞11は、導体、例えばアルミニウムなどの金属からなる円筒形の空洞である。しかし、本発明の全般的な方法は、任意の特定の共振器空洞形状に限定されないことを理解すべきである。空洞11、または導体からなる任意の他の空洞は、カットオフ周波数(例えば500MHz)を超える周波数を有する電磁波に関する共振器として働き、このカットオフ周波数は、とりわけ空洞の幾何形状に応じて決まることがある。例えば800〜1000MHzなど広帯域のRF周波数を使用することができる。幾何形状に基づいてカットオフ周波数を決定する方法は当技術分野でよく知られており、それらを使用することができる。負荷12は、空洞内部に、任意選択で支持部材13(例えば従来の電子レンジのプレート)の上に配置される。本発明の1つの例示的実施形態では、空洞11は、1つまたは複数の供給機構14(例えばアンテナまたは放射要素)を備え、供給機構14は、RFエネルギーを空洞内に伝送するために使用することができる。エネルギーは、例えばソリッドステート増幅器の使用を含めた、当技術分野で知られている任意の方法および手段を使用して伝送される。また、供給機構14の1つまたは複数、時としてすべてを、加熱プロセス中に1回または複数回使用して、所与のRF周波数帯域内で空洞のスペクトル情報を取得し、作業帯域内の周波数に応じて空洞のスペクトル情報(例えば、空洞内へのエネルギーの散逸)を求めることができる。以下に詳述するように、この情報は、制御装置17によって収集および処理される。
【0087】
制御装置17は、本明細書で開示する実施形態に関連付けられる命令を実行するように構成された少なくとも1つの処理装置を含むことができる。本明細書で使用するとき、用語「処理装置」は、入力に対して論理演算を行う電気回路を含むことがある。例えば、そのような処理装置は、1つまたは複数の集積回路、マイクロチップ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、中央処理装置(CPU)の全体または一部、グラフィックス処理装置(GPU)、デジタル信号処理装置(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または命令の実行もしくは論理演算の実施に適した他の回路を含むことがある。
【0088】
空洞11は、エネルギー印加区域を含む、またはいくつかの場合にはエネルギー印加区域を画定することがある。そのようなエネルギー印加区域は、電磁エネルギーを印加することができる任意の空所、位置、領域、または範囲でよい。このエネルギー印加区域は、中空部を含むことがあり、または液体、固体、気体、もしくはそれらの組合せで充填もしくは一部充填されることがある。単に一例として、エネルギー印加区域は、電磁波の存在、伝播、および/または共振を可能にする包囲体の内部、部分包囲体の内部、開いた空間、固体、または部分固体を含むことがある。本開示では、すべてのそのようなエネルギー印加区域を空洞と呼ぶことがある。物体(負荷とも呼ぶ)は、物体の少なくとも一部が区域内に位置される場合、または物体のある部分が送達された電磁放射を受け取る場合に、エネルギー印加区域の「内部」にあるとみなされる。
【0089】
本明細書で使用するとき、用語「放射要素」および「アンテナ」は、電磁エネルギーがそこから放射することがある、および/またはそこに受け取られることがある任意の構造を広範に表すことがあり、構造が本来、エネルギーを放射するために設計されているか、それともエネルギーを受け取るために設計されているかは関係なく、また構造が任意の追加の役割を果たすかどうかも関係ない。例えば、放射要素またはアンテナは、アパーチャ/スロットアンテナを含むことがあり、あるいは、同時に、または制御された動的位相差で一斉にエネルギー伝送する複数の端子を含むアンテナ(例えばフェーズドアレイアンテナ)を含むことがある。いくつかの例示的実施形態に合致するように、供給機構14は、エネルギーを電磁エネルギー印加区域に供給する電磁エネルギー送信機(本明細書では「送信アンテナ」と呼ぶ)、区域からエネルギーを受け取る電磁エネルギー受信機(本明細書では「受信アンテナ」と呼ぶ)、または送信機と受信機の両方の組合せを含むことがある。
【0090】
送信アンテナに供給されるエネルギーは、送信アンテナによって放出されるエネルギー(本明細書では「入射エネルギー」と呼ぶ)をもたらすことがある。入射エネルギーは、エネルギー印加区域に送達されることがあり、エネルギー源によってアンテナに供給されたエネルギーと等しい量であることがある。入射エネルギーのうち、一部は、物体によって散逸されることがある(本明細書では「散逸エネルギー」と呼ぶ)。別の部分は、送信アンテナに反射されることがある(本明細書では「反射エネルギー」と呼ぶ)。反射エネルギーは、例えば、物体および/またはエネルギー印加区域によって生じる不一致により送信アンテナに反射されて戻されるエネルギーを含むことがある。また、反射エネルギーは、送信アンテナのポートによって保持されるエネルギー(すなわち、アンテナによって放出されるが区域内には流れないエネルギー)を含むこともある。反射エネルギーおよび散逸エネルギー以外の入射エネルギーの残りは、送信アンテナ以外の1つまたは複数の受信アンテナに伝送されることがある(本明細書では「伝送エネルギー」と呼ぶ)。したがって、送信アンテナに供給される入射エネルギー(「I」)は、散逸エネルギー(「D」)、反射エネルギー(「R」)、および伝送エネルギー(「T」)のすべてを含むことがあり、それらの関係は、数学的には、I=D+R+ΣTと表すことができる。
【0091】
本発明のいくつかの態様によれば、1つまたは複数の送信アンテナが、電磁エネルギーをエネルギー印加区域に送達することがある。送信アンテナによって区域内に送達されるエネルギー(本明細書では「送達エネルギー」または「d」と呼ぶ)は、アンテナによって放出された入射エネルギーから、同じアンテナへの反射エネルギーを引いたエネルギーとなることがある。すなわち、送達エネルギーは、送信アンテナから区域に流れる正味のエネルギーとなることがあり、すなわちd=I−Dである。あるいは、送達エネルギーは、散逸エネルギーと伝送エネルギーの和と表すこともでき、すなわちd=R+Tである。
【0092】
本発明の1つの例示的実施形態では、空洞11はまた、1つまたは複数のセンサ15を含むこともある。これらのセンサは、例えば(例えば1つまたは複数のIRセンサ、光ファイバ、または電気センサによる)温度、湿度、重量などを含めた追加の情報を制御装置17に提供することができる。別のオプションは、負荷内に埋め込まれる、または負荷に取り付けられる1つまたは複数の内部センサ(例えば、光ファイバまたは国際公開第07/096878号パンフレットに開示されるようなTTT)の使用である。
【0093】
別法として、または追加として、空洞11は、1つまたは複数の電磁界調整要素(FAE)16を備えることがある。FAEは、空洞のスペクトル情報または空洞から導出可能なスペクトル情報に影響を及ぼすことがある空洞内部の任意の要素である。したがって、FAE16は、例えば、空洞11内部の金属構成要素、供給機構14、支持部材13、さらには負荷12のうちの1つまたは複数を含めた、空洞内部の任意の物体でよい。任意選択で、FAE16の位置、向き、形状、および/または温度が制御装置17によって制御される。本発明のいくつかの実施形態では、制御装置17は、数回の連続するスイープを実施するように構成される。各スイープは、異なるスペクトル情報を導き出すことができるように、異なるFAE特性で(例えば1つまたは複数のFAEの位置または向きを変えて)行われる。次いで、制御装置17は、取得されたスペクトル情報に基づいて、FAE特性を選択することができる。そのようなスイープは、空洞内へのRFエネルギーの伝送前に行うことができ、スイープは、デバイス10の動作中に複数回行うことができ、伝送されるパワーおよび周波数(さらにまた時としてFAE特性)を、動作中に空洞内で生じる変化に合うように調節する。
【0094】
本発明の1つの例示的実施形態では、FAEが制御され、および/または負荷が回転または移動され、それにより、例えば以下に説明するように、選択的な照射に関して、および/またはhplなど放射パラメータの設定に関して最も有用なスペクトル情報が獲得される。任意選択で、または別法として、負荷および/またはFAEは、定期的に操作され、および/または獲得されたスペクトル情報の品質もしくは他の特性に基づく。任意選択で、最大のhplを選択できるようにする設定が選択される。
【0095】
制御装置への例示的な情報伝達は、点線で示されている。実線は、制御装置17によって及ぼされる制御(例えば、供給機構14によって伝送すべきパワーおよび周波数、および/またはFAE16の特性の指示)を示す。情報/制御は、有線通信および無線通信を含めた、当技術分野で知られている任意の手段によって伝送することができる。
【0096】
例示的な解凍
図2を参照する。図2は、本発明の1つの例示的実施形態に従って、冷凍されている負荷(例えば食品)を解凍するようにデバイス10を動作させることができる方法を示す流れ図20を示す。
【0097】
負荷12が空洞11内に置かれた後、スイープ21が行われる。スイープ21は、1回または複数回のスイープを含むことができ、複数回のスイープの平均を取得して、より正確な結果を得ることができるようにする。追加として、または別法として、スイープ21は、異なるFAE特性または異なる負荷/プレート位置で繰り返すことができ(任意選択で、スイープが各設定で複数回行われる)、および/または送信/感知のための異なるアンテナを使用して繰り返すことができる。
【0098】
スイープ結果の分析の精度を改良するために、1つの例示的実施形態では、空洞内で散逸される伝送エネルギーのパーセントを導出するために、(例えば、異なる周波数で伝送されるパワーが同一でない場合には)各周波数で実際に伝送されるパワーの量が計算に含まれる。周波数間のパワー伝送のそのような相違は、例えば、デバイスおよび/または増幅器などデバイス構成要素の固有の特徴であることがある。
【0099】
1つまたは複数のスイープ結果が得られると、分析22が行われる。分析22では、解凍アルゴリズムを使用して、(任意選択で機械可読タグ、センサ読取値、および/またはユーザインターフェースなど他の入力方法に関連付けて)スイープ21で取得されたスペクトル情報に基づいて、各周波数で伝送すべき伝送周波数およびエネルギーの量を定義する。したがって、任意選択で分析22によって命令されるように、エネルギーが空洞内に伝送される(23)。任意選択で、所望の散逸パワーは、予想されるパワーよりも低く、これは、最大パワーに散逸比を乗算した値よりも低い。
【0100】
本発明の1つの例示的実施形態では、負荷は、毎分120回走査される。より高いレート(例えば200回/分、300回/分)またはより低い(例えば100回/分、20回/分、2回/分、10回/解凍時間、3回/解凍時間)レートを使用することもでき、また一様でないサンプリングレートを使用することもできる。時として、走査シーケンス(例えば1回または複数回の走査)を、0.5秒毎に1回、または5秒毎に1回、または任意の他のレートで、例えばより高いレート、より低いレート、または中間レートで行うことができる。さらに、走査の間隔は、空洞内に伝送すべきエネルギーの量、および/または負荷内に散逸すべきエネルギーの量によって定義することができる。例えば、所与の量のエネルギーの後に(例えば、10kJ以下、または1kJ以下、または数百ジュール、またはさらには100J以下が、負荷内、または負荷の所与の部分(例えば、重量で100gなど、またはパーセンテージで負荷の50%など)に伝送または散逸された後に)、新たな走査が行われる。いくつかの場合には、(例えば以前の走査情報または解凍プリセットを含む)RF/バーコード可読タグなど他の手段を使用して、または温度センサを使用して情報が提供される。
【0101】
本発明の1つの例示的実施形態では、スイープ速度は、スイープ間のスペクトル情報の変化率に依存し、例えば、散逸および/または周波数の変化のしきい値(例えば和の積分(sum integral)の10%の変化)を提供することができ、または例えばテーブルを使用して異なる変化率を異なるスイープ速度に関連付けることができる。別の例では、決定されるのは、スイープ間の変化率(例えばスイープ間の平均変化が最近2回のスイープ間の変化未満であるかどうか)である。そのような変化を使用して、加熱中に1回または複数回、走査の間隔を調節することができる。任意選択で、または別法として、システムの変化(例えばプレートの移動)が、スイープ速度に影響を及ぼすことがある(典型的には、大きな変化が速度を増加させ、小さな変化または無変化が速度を減少させる)。
【0102】
任意選択で、このプロセスは、所定の期間にわたって、またはユーザが終了するまで繰り返される。別法として、解凍プロセスを自動的に終了させることもできる(24)。各スイープの後、各エネルギー伝送の前、および/またはプロセスの任意の他の段階で行うことができるステップ24で、スイープ結果および/またはセンサ読取値を使用して、解凍を停止することができるかどうか、または停止すべきであるかどうか決定する。例えば、相変化の完了が検出された場合、または物体の温度が所与の温度を超えていることが測定された場合(例えば外面温度5℃以上)、解凍を終了することができる。別の例では、負荷内に散逸される合計のエネルギーが、(例えば負荷の初期温度および組成を考慮して)所望の最終温度での解凍に必要な所定のエネルギー量に達した場合に、解凍を停止することができる。例えば加熱(温度上昇を伴う、または伴わない)および乾燥を含めた任意の他の加熱プロセスに関して、流れ図の修正版を使用することができる。そのような場合、終了点は、測定される温度、負荷内での散逸エネルギーの所望の総量、湿度のレベル、温度変化率など、他のパラメータによって定義されることもある。
【0103】
任意選択で、解凍に関する(周波数/エネルギー)または(周波数/パワー)の対は、負荷内で低い散逸比を有する周波数(例えば主に固体または氷の部分)でのエネルギー散逸を増加させ(さらには最大にし)、比較的高い散逸比を有する周波数(例えば主に液体や水など解凍されている部分)でのエネルギー散逸を減少させる(または最小限にする)ように選択される。例えば、デバイスは、低い散逸比では、(例えば可能な最大の散逸の一要因として)効率的なパワー散逸を生み出すように設定され、高い散逸比では、散逸することができるよりもはるかに少ないエネルギーを散逸するように設定される。時として、例えば各周波数を伝送するための時間が固定されているとき、(周波数/エネルギー)の対は、(周波数/実際のパワー)の対であることがある。本明細書で使用するとき、パワーは、必ずしも時間の直接の関数ではなく、時間の間接的な関数でもよい。例えば、1分間など所与の期間内では一定のパワーが使用され、しかしパワーの印加の持続期間が変えられる(例えば1〜2秒)場合、正味の結果は、特定の単位時間当たりに印加されるエネルギーの差であり、これがパワーである。したがって、周波数/パワー対は、印加プロトコルと共に周波数/エネルギー対を含むことがある。また、1組のdr値に関してプロトコルが決定された後、これは、同じ周波数に関して時間と共に変えることができる周波数/パワー設定を提供することによって実施することができることにも留意すべきである。さらに、以下に述べるように、周波数/パワー対は、1組の周波数と直接関連付けられることがあり、アプリケーションプロトコルの一部として決定される周波数に対するパワーの実際の割当てを伴う。
【0104】
例示的な解凍アルゴリズムは、選択された作業周波数範囲[f1,f2]内での最大散逸比に対して所定のしきい値(例えば、以下に説明するように70%の散逸または70%の正規化された散逸)を超える散逸比を有する周波数では、パワー(またはエネルギー)を伝送せず、その範囲の他の周波数では、非ゼロパワーを伝送する。いくつかの場合には、パワーは、2値形式で選択される。すなわち、最大または最小である。いくつかの場合には、1サイクル中に異なる周波数に関して異なる伝送時間を可能にすることによって、(他の周波数に対して、または絶対で)異なる量のパワーが伝送される。別法として、例えば中間散逸レベルを有する部分に関して中間パワーレベル(またはエネルギー量)が提供される。
【0105】
本発明の1つの例示的実施形態では、周波数または周波数セットにパワーが提供されるとき、このパワーレベルは、有意になるように選択される。例えば、そのような有意性は、走査/伝送サイクル中に提供される総パワーの関数として測定することができる(例えば5%、10%、20%、またはより小さい値、もしくはより大きい値、もしくは中間の値)。任意選択で、または別法として、この有意性は、1サイクルでの、負荷の少なくとも5%の部分の温度に対する効果として測定することができ、例えば少なくとも0.1℃、0.2℃、0.5℃、またはより小さい温度変化、もしくは中間の温度変化、もしくはより高い温度変化である。任意選択で、または別法として、有意性は、散逸されたパワーによって引き起こされる相変化の量に基づいて測定することができ、これは例えば、1サイクル中、または30秒などの期間にわたって、少なくとも1%、3%、5%、10%、またはより小さい量、もしくは中間の量、もしくはより高い量だけスペクトル画像(RMSE)を変えるのに十分なものである。
【0106】
本発明の1つの例示的実施形態では、デバイスは、複数のしきい値、hpl値、散逸/パワー比、散逸/エネルギー比、および/または様々な負荷特性に関するパラメータを記憶するメモリを含む。任意選択で、デバイスおよび/またはユーザは、解凍のための初期設定または最終設定として、そのような記憶されたオプションの中から選択する。例えば、(各周波数での増幅器の最大パワーの)80%の固定hplを、ある重量の冷凍されている牛肉に使用することができる。
【0107】
例示的な解凍アルゴリズム
例示的な解凍アルゴリズムは以下のようなものである。選択された作業範囲[f1,f2]内で、上限パワーおよび下限パワー(hpl、lpl)が選択され、任意の印加パワーがこれらの限度の間に保たれる。
【0108】
下限パワーレベル(lpl)は、負荷内での散逸が十分に高くて有用となる最小のパワーレベルである。例えば、最小の有用な散逸として15%が選択される場合、lplは、各周波数に関して、伝送することができる最大パワーの15%になるように設定される。別法として、これは、すべての周波数(例えば60ワット以下)または周波数の任意の組合せに関して、予め選択された低いパワーに設定することができる。所与の周波数での負荷内での散逸がlpl未満である場合、その周波数での伝送パワーはゼロに設定される。
【0109】
上限パワーレベル(hpl)は、許容される最大散逸パワーを決定する。これは、出力される最大パワーが、望ましくない熱的効果を回避するように制約されることを意味する。さらに、所与の周波数で出力される実際のパワーは、スペクトル情報に従って、特に解凍されていない領域を選択的に標的とするように選択することができる。任意選択で、パワーレベルは、一般に、散逸とは反比例する。特筆することができるように、一般に、最大オーブンパワーが減少すると、解凍時間が長くなる。いくつかの場合には、印加されるパワーレベルは2値基準を満たす。すなわち、低い散逸の部分に関してはhpl、高い散逸の領域に関しては何らかの他の値(例えばゼロ)である。
【0110】
過剰に高いhplの使用は、負荷内で、受け入れることができないほど不均一な温度分布をもたらすことがあり、熱暴走をもたらすことがある。(例えば特定の作業帯域で)伝送されるパワーに対する負荷の感受性が高ければ高いほど、許容できるhplのパワーは低くなる。任意選択で、どの作業帯域が水を氷とより良く区別するかに応じて作業帯域が選択される。
【0111】
一般に、低いhplは高い感受性の負荷に関して設定されるが、そのようなhplはまた、解凍時間が長くなるという犠牲を払うものの、より低い感受性の負荷に関しても使用することができる。それにも関わらず、時として、各負荷に関して、負荷内で許容できる解凍後の温度分布(例えば±15℃、±10℃、±5℃、±2℃、またはより均一)を提供する最大のhplを設定することが好ましいことがある。許容できる解凍後の温度分布は、例えば、負荷の組成と、過熱に対する負荷の感受性(例えば損傷が引き起こされるかどうか;損傷の大きさおよび可逆性;および素材に対する損傷の広がり具合)と、負荷が意図される目的とのうちの1つまたは複数に応じて決まることがある。時として、解凍の速度が品質よりも優先されることがあり、その場合、より高いhplを使用することができ、解凍後の品質は次善のものであることに留意されたい。任意選択で、解凍の均一性、最高温度、および/または速度の間のユーザ選択可能な折り合い点(例えばノブまたはデータ入力部)がデバイスに設けられる。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ホットスポットの防止が、解凍の均一性、加熱、および/またはエネルギー散逸よりも強く優先されることに留意されたい。
【0113】
任意選択で、解凍される区域が、そのそれぞれの周波数での加熱が停止または減少される前に過熱されないように、hplは十分に低く設定される。
【0114】
hpl(高いパワーレベル)を決定する例示的な方法
hplは、様々な方法で、例えば試行錯誤法によって決定することができる。本発明の1つの例示的実施形態では、複数のhpl設定を試行して、解凍後に負荷内で許容できる温度分布を提供する最大のhplを決定する。そのような試行は、解凍中に継続することができ、例えば走査の度、毎秒、または毎分、または中間時間スケールで行われる。本発明の1つの例示的実施形態では、hplは、低い値から始められて、徐々に高められる。任意選択で、hplは、品目のタイプ毎に設定される。
【0115】
本発明の1つの例示的実施形態では、形状、重量、温度、所望の効果、および/または素材タイプのうちの1つまたは2つ以上など負荷特性の様々な組合せに関して、予め設定されたhpl値が提供される。任意選択で、ユーザは、そのような特性を選択することができ、デバイスは、それに従ってhplを提案および/または使用する。
【0116】
任意選択で、hplは、解凍中に定期的に更新される。
【0117】
本発明の1つの例示的実施形態では、より有用なスペクトル情報が獲得されるように、hplは、負荷および/または空洞を変えるといった補助を行いながら(始めに、または進行中に)推定される。一般に、獲得されるスペクトル情報がより良い場合、氷と水の間のより良いカットオフを識別することができ、より高いhplを氷区域のために使用することができるようになり、同じ品質(例えば一様性)でより速い加熱、および/または同じ速度でより高い品質の加熱を可能にする。
【0118】
別法として、理論に拘束されることを望まないが、負荷の感受性を、負荷の解凍済みの部分と冷凍されている部分でのエネルギーの相対散逸に基づいて決定できるようにすることが提案される。冷凍されている部分と解凍済みの部分での散逸が(例えば低い含水量により)比較的同様であるとき(例えば40%〜50%の間の散逸比で、10〜15%の散逸の差など)、試料は、高感受性である(例えば氷と水を区別するのに、より繊細な決定を必要とする)と考えられる。解凍済みの部分と冷凍されている部分での散逸の差が大きければ大きいほど、負荷の感受性は低くなる。したがって、hplは、負荷のスペクトル情報を取得して、作業周波数帯域内で最大散逸(dmax)と最小散逸(dmin)を比較することによって決定することができる。dminとdmaxの差が大きければ大きいほど、負荷の感受性は低くなり、任意選択で使用すべきhplは高くなる。
【0119】
中間散逸周波数に対するパワーのより良い選択が提供される場合、hplをより高くすることが可能になることがあることに留意されたい。
【0120】
また、別法として、理論に拘束されることを望まないが、hplを、各周波数で負荷内で散逸させることができる最大パワー(ep(f))とldlとに基づいて決定できるようにすることが提案される。hplは、周波数の一部分が使用されるように、例えば、負荷内に散逸すると考えられ、lpl<ep(f)<hplが予め設定されたしきい値未満であるような作業帯域(例えば800〜1000MHzにわたる帯域)内のすべての周波数が使用されるように設定することができる。例えば、このしきい値は、10%、または20%、または30%、またはその間の任意の値になるように選択することができる。任意選択で、この方法は、デバイスが典型的には最大パワーで制限されるという理解に基づく(および/またはそのような場合に関する)ものであり、実用的には、hplが最大パワーに近ければ近いほど、近接する異なる周波数で異なるパワーレベルを提供することが簡単でなくなる。任意選択で、パーセンテージは、品質と速度との所望の折り合い点に応じて決まる。
【0121】
したがって、解凍プロトコルは、単一のhpl値を使用することができる(例えば同様の感受性を有する負荷に専用の場合;または、想定されるほとんどの負荷に適した低いhpl)。別法として、プロトコルは、複数の可能なhpl値の中からの選択を使用することができる(例えば、所与の負荷および/または許容できる解凍後の温度分布に対応するように、複数の予め設定された値の中から選択するか、または任意選択で値を手動または自動で設定する)。最後に、プロトコルは、デバイスのパワー性能範囲の(例えば自動的に計算された、または手動で選択された)任意の値を使用することができる。比較的高いhplの一例は、300ワット、またはその周波数での増幅器からの最大パワーの80%でよい。比較的低いhplの一例は、120ワット、またはその周波数での増幅器からの最大パワーの30%でよい。中間の値も取り得る。
【0122】
散逸関数dr(f)の例示的な決定
dr(f)は、周波数の関数としての散逸比、すなわち、負荷内で散逸される、各供給機構(例えば供給機構j)を介した伝送パワーのパーセンテージを表す。この関数は、0と1の間の取り得る値を有し、任意選択で、測定されるパワーに基づいて、かつ測定されるスペクトル情報を使用して、式1に示されるように計算される。しかし、本明細書で述べるように、2値関数または非線形および/または非単調関数を使用することもできる(例えば工場で、または較正中に決定することができる)。
【0123】
dr(f)の正規化
冷凍されている部分(例えば氷)の散逸比は、解凍済みの部分(例えば液体/水)の散逸比よりも比較的低いが、大量の氷は、かなりの散逸を示すことがある。相対質量の影響を減少させながら、低い散逸比を有する周波数(例えば氷)での散逸を高い散逸比を有する周波数(例えば液体の水)での散逸から区別するために、dr(f)関数は、任意選択で0と1の間の全範囲に正規化される。この正規化は、理由(例えば低い含水量)に関わらず、冷凍されている部分と解凍済みの部分の散逸の差が比較的小さい他の場合にも有用であることがある。正規化された関数dr’(f)を使用して、以下に示すように、補償因子を計算することができる。
【0124】
いくつかの負荷の場合には、任意選択でdr’(f)の使用は回避され、元のdr(f)が代わりに使用される。任意選択で、デバイスは、どちらかを選んで使用できるように両方のプロトコルを有するように構成される。プロトコルの選択は、ユーザ入力(例えばユーザインターフェースまたは機械可読タグ)またはデバイス内部(例えば重量センサ)でのセンサ読取値に基づくことがある。別法として、すべての負荷にdr’(f)を使用することができる。
【0125】
任意選択で、Pmaximum,j,wattを、各周波数で増幅器から利用可能な最大パワーであるとして、各周波数で負荷内で散逸させることができる最大パワー(ep(f)と表す)は以下のように計算される。
【0126】
上記の式を使用して、任意選択で補償関数(coeff(f))が計算される。この関数は、任意選択で、例えば式4Aで示されるように、dr’(f)の関数として、各周波数で負荷内で散逸すべき相対エネルギー量を決定するために使用される。
【0127】
本発明の1つの例示的実施形態では、周波数は、それらの散逸比に応じて「氷」、「水」、および/または「氷/水の混合」に分類することができる。任意選択で、氷および氷/水の混合にはより高いパワーが提供され、単なる水にはより低いパワーが提供されるか、またはパワーが提供されない。
【0128】
任意選択で、散逸しきい値が提供され、その散逸しきい値未満では、負荷部分が氷ではないとみなされたときにパワーが伝送されないほど負荷内への散逸が低い。本発明の1つの例示的実施形態では、デバイスは、任意の周波数で非常に低い固有散逸を有するように、またはいくつかの周波数のみで既知の散逸を有するように設計される(次いでしきい値が上げられることがある)。
【0129】
大きな氷片は、比較的高い散逸を有することがあることに留意されたい。任意選択で、低い散逸の周波数がなく(またはほとんどなく、例えばしきい値未満であり)、負荷が冷凍されていることが分かっている場合、最小散逸周波数は氷であると仮定され、より小さい氷結領域の形成を示すより低い散逸の周波数が現れるまで、(通常レベルまたはいくぶん低いレベルでの)パワーがそのような最小散逸周波数で提供される。
【0130】
例示的なdr(f)
式(4)による関数に関する一例を図3に示す。見て分かるように、2つの限度が設定される。負荷内に散逸する周波数が予め設定されたしきい値(例えば、図3の例ではdr’(f)<0.3)未満であるときには、許容される最大パワーが伝送され、これは、ep(f)/dr(f)とhpl(f)/dr(f)の小さい方である。負荷内に散逸する周波数が予め設定された値(例えば、図3の例ではdr’(f)>0.8)よりも大きいときには、エネルギーが伝送されない。すべての他の周波数(図3の例では0.3<dr’(f)>0.8)では、パワー伝送は、選択された関数を使用して計算される。図3の場合、これは概して線形の関数であったが、dr’(f)とcoeff(f)の逆相関を当てる他の関数、任意選択で非線形の関数(例えば、指数関数、階段関数、部分的に線形の関数、多項式、および/または一般的なルックアップテーブル。任意選択で補間を伴う)を使用することもできる。任意選択で、関数は、低散逸領域に対して、単純な逆関数よりも大きいパワーを印加する傾向を持つ。任意選択で、関数は、認識される負荷に対する損傷の危険に基づいて選択される。
【0131】
例示的な実際のパワー計算
gl(f)は、加熱対象の物体内で散逸すべきパワーであり、以下のように、各周波数で負荷内で散逸させることができる最大パワー(ep(f))およびhpl(f)と、補償関数(coeff(f))とを考慮に入れる。
【0132】
gl(f)を使用すると、各周波数で、負荷内での所望の散逸を引き起こすために増幅器から伝送すべきパワー(nopw(f))が、任意選択で以下のように計算される。
【0133】
nopw(f)は、各周波数で増幅器から抽出可能な最大パワーであるPmaximum,j,watt(f)よりも常に低い。これは、以下の理由による。
【0134】
平均散逸を使用したhplの計算
図5は、作業帯域内または選択された周波数内で平均散逸比の関数として計算されるhplを示す。任意選択で、これは、低い平均散逸が高い感受性を意味し、逆に高い平均散逸が低い感受性をを意味するという仮定に基づいている。他の関数、例えばhplを平均散逸にマッチングするテーブルを使用することもできる。
【0135】
このグラフで見られるように、低い平均散逸比は、負荷の高い感受性を示し、したがって低いhplを示す。任意選択で、hplの低い値は、(最小の作業範囲を提供するために)lplよりもわずかに上になるように選択される。例えば、最小hpl値を70〜120ワット(例えば80ワット)の間にすることができる。hplの最大レベルは、可能な最大の増幅器パワーと同じ高さ、またはそれよりもわずかに低くなるように選択することができる。図5で見られるように、平均散逸比が予め設定された下限未満であるときには、hplは、許容される最小hplとなるように選択され、平均散逸比が予め設定された上限よりも上にあるときには、hplは、許容される最大hplとなるように選択される。平均散逸比に関する下限は、例えば0.1〜0.3の間(例えば0.2)でよく、一方、上限は、例えば0.5〜0.9の間(例えば0.6)でよい。
【0136】
平均散逸の中間値は、任意選択で、中間のhpl値を示す。図5は、中間の平均散逸比の値に関して概して線形の相関を示すが、平均散逸比とhplの間で正の相関を与える他の関数、任意選択で非線形の関数(例えば、指数関数、階段関数、多項式、階段状の線形関数)を使用することができることを理解すべきである。
【0137】
いくつかの場合には、周波数分布はいくつかの周波数帯域内にあり、それにより、1つの帯域を、氷(例えば低い散逸)に合致するものと認識することができ、別の帯域を水(例えば高い散逸)に合致するものと認識することができる。任意選択で、hplの計算の代わりに、またはそれに加えて、水に関連付けられる帯域に関しては、gl(f)がゼロまたはlpl(または任意の他の予め設定された低い値)に設定され、氷に関連付けられる帯域に関しては、任意の予め設定された高い値(例えばhplまたは利用可能な最大パワーまたは他の設定)に設定される。任意選択で、水/氷としての帯域の分類は、定期的に獲得されるスペクトル情報に基づいて、任意選択で定期的に更新される。
【0138】
hplおよびgl(f)を計算する特定の方法を上述したが、それらの方法は、例えば算術的または論理的に組み合わせることができ、例えば複数の方法の平均値を使用する、または最小値もしくは最大値を使用する、または複合方法を使用することができる。例えば、gl(f)を計算するためにdr(f)(またはdr’(f))のガウス関数を使用することができる。
【0139】
例示的な動作
次に図4を参照する。図4は、本発明の1つの例示的実施形態に従ってデバイス10を動作させることができる方法を示す流れ図40を示す。
【0140】
スイープ41は、図2のスイープ21と本質的に同じである。1つまたは複数の結果が得られると、決定42が行われる。決定42において、決定が成される。すなわち、2つ以上のエネルギー伝送プロトコルと(任意選択で)動作シーケンス終了の中から選択が行われる。この決定は、以下の決定選択肢の1つまたは複数を備えることができる。
【0141】
解凍プロトコル−解凍モードが起動されるとき、決定42は、任意選択で、(例えば上述したように)水よりも氷中でエネルギーを多く散逸すると予想される周波数/パワー対または周波数/エネルギー対の選択を含む。本発明の1つの例示的実施形態では、解凍は、スペクトル画像の変化率(例えば相が変化したときに変化がより速くなる)、温度変化率(例えば相が変化したときに温度変化がより速くなる)、および/または温度(例えばセンサを用いる)の1つまたは複数を追跡することによって検出される。
【0142】
加熱プロトコルA−このモードが起動されるとき、決定42は、任意選択で、所与の絶対または相対dr(またはdr’)値範囲によって特徴付けられる周波数の1グループによって、少なくとも1つの他のグループとは異なるエネルギーパターンを散逸すると予想される周波数/パワー対または周波数/エネルギー対の選択を含む。本発明の1つの例示的実施形態では、どちらのグループでも非ゼロ量のパワーおよびエネルギーが散逸されるが、周波数の1グループ(例えばより低いdrまたはdr’を有するグループよりも比較的高いdrまたはdr’を有するグループ)によって、加熱サイクル当たりに高いパワーまたはより大量のエネルギーが散逸される。
【0143】
加熱プロトコルB−1つの例示的実施形態では、決定42は、(例えば表面電流やアンテナマッチングなど)他の場所よりも負荷内に多くのエネルギーを散逸することが予想される周波数/パワー対の選択を含む。そのようなプロトコルに関する非限定的な例は、国際公開第07/096878号パンフレットおよび第08/007368号パンフレットに開示されている。
【0144】
保温プロトコル−1つの例示的実施形態では、決定42は、1サイクル中に負荷のすべての部分において本質的に等しい量のエネルギーを散逸すると予想される周波数/パワー対または周波数/エネルギー対の選択を含む。任意選択で、この加熱は、物体の温度が、予め設定された温度から大幅にずれないように制御される(例えば35℃±2℃または45℃±2℃)。例えば、これは、温度センサからのフィードバックを使用して、または任意の所与の時点で散逸することができるエネルギーを制限することによって行うことができる。水の加熱は、水を沸騰させ、それにより散逸パワーを蒸発に利用することがあり、一方、他の部分は蒸発を伴わないことがあり、加熱を引き起こすことに留意すべきである。
【0145】
プロトコル選択−1つの例示的実施形態では、プロトコルは、動作モードを自動的に変更することができる(例えば、相変化が完了すると解凍を終了する、および/またはその時点で加熱を開始する、あるいは解凍決定形式を選択する)。これは、センサからの入力および/または周波数スイープで取得された情報からの入力に依存することがあり、および/または命令(例えば所与のステップで負荷内で散逸するエネルギーの量)に基づくことがある。決定は、動作を終了すること、または1つのプロトコル(例えば解凍)から別のプロトコル(例えば加温)に変更することでよい。
【0146】
センサ入力に関する一例は、温度の感知を含む。センサの1つまたは複数によって感知された温度(または計算された温度、例えば平均)、またはすべてのセンサでの温度が予め定義された温度に達すると、デバイスは、加熱プロトコルを変更する決定を行うことがある。例えば、感知された温度が、解凍が完了したことを示唆する場合、デバイスは、プロトコルを変更して、加熱を停止する、または調理を開始する、または(例えば負荷の一部が依然として冷凍されている場合には完全な解凍を保証する、および/または再結晶化を防止するために、あるいは食卓に出す準備ができた温度で負荷を維持するために)感知された温度を維持することができる。
【0147】
時として、解凍の完了を示唆する所定の温度は、氷点(例えば2〜15℃)よりもわずかに高い。(例えばIRセンサの使用によって)感知された温度が負荷の外面温度であるとき、所定の温度は、時として、内部センサを使用するときよりもわずかに高く(例えば8〜10℃に)なるように選択することができる。なぜなら、時として、(特にデバイスが温かい庫内を提供する場合には)解凍の終了時の内部温度が外面温度よりも低いからである。別の代替形態では、デバイス内部の温度が低い場合、内部温度は、外部の温度よりも高いと予想されることがあり、この場合、解凍の終了を示唆するためのセンサ読取値はより低く(例えば4〜8℃に)することができる。時として(例えば複数の内部センサが使用されるとき)、より小さい温度範囲(例えば4℃〜6℃)が好ましいことがある。
【0148】
また、決定42は、動作前または動作中に提供されることがある何らかの形のユーザ入力に基づくこともある。入力は、ユーザインターフェース、およびバーコードやRFIDなど機械可読タグの使用の1つまたは複数によって提供されることがある。ユーザ入力は、散逸するエネルギーの量、相変化、温度変化、および/または温度変化率の1つまたは複数など、一連の決定および/またはそれに対するトリガに関する情報を含むことがある。
【0149】
決定42が下されると、選択された周波数/パワー対または周波数/エネルギー対でのエネルギー伝送ステップ43を伝送することができる。任意選択で、決定は、動作を終了させることであり、この場合、デバイスは、負荷にエネルギーを伝送せず、(例えば音、光、または任意の形の通信によって)ユーザに通知を送ることができる。そのような時に、デバイスは、動作を自動的に終了することがある。これは、(例えば光、音、またはメッセージ表示による、あるいはセル電話やコンピュータなどの遠隔デバイスに電子メッセージを送信することによる)ユーザへの通知を伴うことがある。
【0150】
エネルギー伝送43は、(予め定義された、またはセンサフィードバックに基づいた)ある期間にわたって継続し、自動的に終了することがある。任意選択で、または別法として、伝送43に続いて、再びスイープ41が行われ、これは、デバイスの動作を、加熱中に生じた変化(例えば相変化または新規のスペクトル情報)に合うように調節できるようにする。任意選択で、または別法として、各段階でのデバイスの動作を使用者が手動で終了させることができる。
【0151】
さらなる例示的な動作
上述したように、素材は2つ以上(例えば3つ以上)の部分を含むことがあり、それらの部分は、単位質量(または体積)当たり異なる量のエネルギーによって加熱する、および/または異なる均一性/効率の比で加熱することが望ましいことがあり、および/またはそれらの部分において異なる散逸比が観察される。任意選択で、または別法として、これらの部分のほとんどまたはすべてが、冷凍されている素材または加熱中に相変化する素材ではない可能性がある。例えば、比較的高脂肪の素材部分が、比較的低脂肪の素材部分および/または比較的高い含水量の素材部分、またはそれらの混合と共に加熱されることがある。
【0152】
本発明の1つの例示的実施形態では、パワーが物体に印加されるとき、物体の各部分がそれらの散逸比に従って分類され、これは、そのような分類された部分それぞれに対して使用されるパワー(エネルギー)印加プロトコルを作動させる。各部分は物理的に別々でも、混ざり合っていてもよいことに留意すべきである。本発明の1つの例示的実施形態では、パワーが負荷に印加されるとき、伝送される周波数が、負荷内でのそれらの散逸比に従って分類され、これは、そのような分類された周波数グループそれぞれに対して使用されるパワー(またはエネルギー)印加プロトコルを作動させる。時として、少なくとも2つのグループのすべての周波数によってかなりの量のエネルギーが散逸されるように、少なくとも2つの異なる周波数グループが異なる条件で伝送されることに留意すべきである。
【0153】
図8は、本発明の1つの例示的実施形態による、負荷内で異なる散逸比を有する周波数によって、素材を違う条件で加熱する方法の流れ図である。
【0154】
ステップ802で、任意選択で、スペクトル情報が獲得される。任意選択で、または別法として、加熱対象の物体のいくつかの部分の電磁特性を、例えば手入力で、カメラを使用して、または物体に関連付けられる情報保持タグを使用して入力することができる。別法として、例えば解凍などいくつかのプロトコルに関して、水と氷の周波数を事前に提供することができる。
【0155】
ステップ804で、任意選択で、それらのプロトコルに関して、所期の加熱のために有用な様々な「作業」周波数が識別される。任意選択で、または別法として、システムでどの周波数を使用するかは、例えば増幅器の性能および/または他の考慮事項に基づいて決定され、そのような考慮事項は、例えば、高いQ値では動作しない、または非常に低い散逸比(例えば10%以下)では動作しないといったことである。
【0156】
ステップ806で、任意選択で、例えば観察される最大の散逸が100%の値を与えられ、観察される最小の散逸比が0%の値を与えられるように、散逸比の値が正規化される。任意選択で、正規化は、例えば上記の解凍の例で説明したように線形である。
【0157】
ステップ808では、作業周波数が、それらの散逸比(dr)、または正規化された散逸比(dr’)、および/または加熱率に従ってグループ化される。任意選択で、周波数は、しきい値に従ってクラスタ化される。任意選択で、そのようなしきい値は、情報入力に関して上述したように提供される。任意選択で、または別法として、周波数は、それらの散逸比に従ってクラスタ化される。任意選択で、散逸比の分布を使用して、物体を識別し、および/またはその組成および/または素材相の示唆を提供する。任意選択で、カメラまたは重量計、および/または湿度/温度センサ、および/または手入力で、もしくは機械可読タグ(例えばRFID)によって提供された情報など、追加の入力が使用される。例えば、周波数を関連付けるために識別される2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ以上の異なる散逸比セットが存在することがある。任意選択で、1つのセットでのパワーは、非ゼロ伝送での第2のセットの少なくとも2倍、3倍、4倍、7倍、10倍、20倍、またはよりも小さい倍数、もしくは中間の倍数である。本発明の1つの例示的実施形態では、少なくとも1つのセット、または任意選択ですべてのセットが、作業バンド幅全体の少なくとも5%、10%、20%の帯域幅、またはより小さいパーセンテージ、もしくは中間のパーセンテージの帯域幅を有する。本発明の1つの例示的実施形態では、少なくとも1つのセット、および任意選択ですべてのセットが、散逸比の値の少なくとも5%、10%、20%にわたるスパン、またはより小さいスパン、もしくは中間のスパンの散逸比に対応し、例えば45%〜55%の間の散逸比範囲に対応するセットである。
【0158】
いくつかの場合には、異なる部分のタイプまたは位置に関連付けられる散逸比の範囲どうしの重なりが存在する。時として、所与の周波数または周波数グループは、高い散逸比の負荷部分においても、低い散逸比の負荷部分においても散逸し、それによりその周波数は中間の全体的な散逸比を示す。いくつかの実施形態では、そのような重畳部分内の周波数は単純に使用されない。任意選択で、または別法として、そのような周波数は、個々のカテゴリーに割り当てられる。本発明のいくつかの実施形態では、対象は、場合によっては均質性を減少させながら、特定の部分に送達されるパワーの量(または加熱)を高めること、および/または使用される周波数の数を減少させることであることに留意すべきである。これは、異なる部分にパワーまたは熱を異なる条件で印加するという主要な目的の妨げとはならない。これはまた、異なるセットに適用されるプロトコルに影響を及ぼすこともある。例えば、あるセットに関して提供されるパワーの量についてプロトコルを定義することができ、このパワーレベルは、例えば周波数変更の容易性や特定の部分での対象周波数の識別の信頼性に基づいて、より多数またはより少数の周波数に分布させることができる。任意選択で、または別法として、1つの部分の1つの周波数セットを、異なるプロトコルを割り当てる目的で複数のセットに分割する(および/または別のセットと組み合わせる)ことができる。これは、所望の均質性レベルおよび/または加熱速度を提供するのに有用であることがある。任意選択で、または別法として、2つのセットを組み合わせることができる。任意選択で、セット、およびセットへの周波数の関連付けは、加熱中に変化することがある。任意選択で、物体の加熱プロトコルは、セットへの周波数の関連付けを再考察する時点を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、周波数セットのグループの数が予め固定され、例えば2〜10グループまたは2〜4グループの周波数であり、各グループを使用して、異なる加熱プロトコルでエネルギーを負荷に伝送する。
【0160】
ステップ810で、異なるパワー印加プロトコルが各セットに関連付けられる。パワー印加プロトコルは、例えば、以下の項目の1つまたは複数を含むことができる。最大パワー、最小パワー、他のセットと比べたパワーもしくは1セット内の他の周波数と比べたパワー、最大加熱率、最小加熱率、相対加熱率(例えばセット間、またはセット内の周波数間)、セット当たりのパワー、セット内の各周波数当たりのパワー、所与のセットまたは1セット内の周波数によって負荷内で散逸すべきパワー、パワー印加の時間プロファイル、パワー印加の期間、最大でないパワーの実現の方法(例えば、増幅因子、各周波数での期間、1セット内での反復回数、および/またはそれらの組合せ)、加熱均質性と速度との折り合い点、パワー印加の合間の休止の時間プロファイル、および/または周波数間のパワー印加のサイクル。デバイスは、複数のそのようなプロトコルを記憶しているメモリを含むことがある。プロトコルは顕著に異なることがあり、例えば、食品の一部が解凍されることがある一方で、別の部分は調理されるまたは焼かれることに留意すべきである。
【0161】
一例では、より高い散逸比ではパワー(またはエネルギー)伝送がほとんどまたは全くなく、任意選択で、より低い散逸比では均質な伝送である。任意選択で、中間散逸比に関しては、例えば解凍の用途に関して上述したように、離散減少関数(任意選択で30%または50%の散逸比での階段関数)が存在する。
【0162】
別の例では、1つの食品部分(例えば過熱の影響をあまり受けない食品)は、最大のパワーを用いて速く加熱され、場合によってはより不均質になり、その一方で、他の散逸特性を有する別の食品部分は、よりゆっくりと、および/またはより低い温度で、任意選択でより均一に加熱される。
【0163】
ステップ812で、パワー印加プロトコルが適用される。次いで、プロセスを繰り返すことができる。いくつかの実施形態では、あらゆる伝送スイープで、および/または同じ周波数で、スペクトル情報の獲得および/またはプロファイルの割当てを適用する必要はない。加熱セッション間のスイープ速度は一定であることがあり、または、例えば例示的な解凍プロセスに関連付けて上述したように加熱中に変わることがある。
【0164】
上記の説明では、セットに周波数を関連付けることに言及したが、必ずしも実際にこれを行う必要はないことに留意すべきである。異なるパワー印加プロトコルに関するしきい値の設定が、そのようなセットを本来的に表し、パワー印加プロトコルの決定を周波数毎に適用することができるようにする。また、いくつかの場合には、個々の周波数ではなくセットについて、どれほどのパワーが印加されるか、およびどのプロトコルが指令されるか決定が下され、周波数/パワー対に関する決定は、セットへのパワーの割当て後に決定されることにも留意すべきである。
【0165】
本明細書で述べるように、パワーが周波数に関連付けられるとき、これは、その周波数でエネルギーが伝送される際のパワーを変えなければならないことは必ずしも意味しない。パワーは、総計のパワーであり、例えばより長い伝送時間によって影響を及ぼされることがある。任意選択で、実際の伝送パワーは、システムの増幅器の性能に従って選択され、例えば、増幅器の高い効率点に従って、または増幅を変えるのにかかる時間に従って選択される。実際のパワーは、任意の周波数での最大パワーに依存する可能性がある。任意選択で、または別法として、使用する周波数の選択は、利用可能な増幅に依存して行われ、任意選択で、低い増幅の周波数は回避される。
【0166】
上で導入した概念のいくつかに戻ると、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの処理装置は、複数の変調空間要素それぞれに関して、散逸エネルギーを示唆する情報を受信または決定するように構成することができることに留意すべきである。これは、処理装置、または処理装置に関連付けられるメモリを予めプログラムすることによって、および/または物体の吸収可能エネルギー特性を決定するためにエネルギー印加区域内の物体を試験することによって、1つまたは複数のルックアップテーブルを使用して行うことができる。そのような試験を行うための1つの例示的な方法は、スイープによるものである。
【0167】
本明細書で使用するとき、用語「スイープ」は、例えば、時間にわたる複数の周波数の伝送を含むことがある。例えば、スイープは、1つの連続する周波数帯域内の複数の周波数の順次伝送、複数の不連続な周波数帯域内の複数の周波数の順次伝送、個々の不連続な周波数の順次伝送、および/または所望の周波数/パワースペクトル内容を有する合成パルスの伝送(すなわち時間的に合成されたパルス)を含むことがある。したがって、図11に示されるように、周波数スイーププロセス中、少なくとも1つの処理装置は、少なくとも1つのアンテナに供給されるエネルギーを調整することができ、エネルギー印加区域90に様々な周波数で電磁エネルギーを順次に送達し、物体または負荷110によって吸収可能なエネルギーの指標となるフィードバックを受信する。本発明は、物体のエネルギー吸収を示唆する任意の特定のフィードバック手段には限定されないが、様々な例示的な指標値を以下に論じる。
【0168】
図11に示されるように、スイーププロセス中、電磁エネルギー印加サブシステム96は、アンテナ102(例えば供給機構またはアンテナ14を含む)に反射および/または結合された電磁エネルギーを受信するように、および測定されたエネルギー情報をインターフェース130を介してサブシステム92に通信して戻すように調整することができる。次いで、1つまたは複数の処理装置を含むことがあるサブシステム92は、受信された情報に基づいて、複数の周波数それぞれについて、物体110によって吸収可能なエネルギーを示唆する値を決定することができる。本発明で開示する実施形態に合致するように、単に一例として、吸収可能エネルギーを示唆する値は、複数の周波数それぞれに関連付けられる散逸比(本明細書では「DR」と呼ぶ)でよい。本明細書で言及するとき、「散逸比」(「吸収効率」または「パワー効率」とも呼ぶ)は、物体110によって吸収される電磁エネルギーと、電磁エネルギー印加区域90内に供給される電磁エネルギーとの比と定義することができる。吸収可能エネルギーを示唆する値は、直接、間接、またはさらには逆相関もしくは概して逆相関で吸収可能エネルギーに対応する任意の尺度または指標となることがある。例えば、この値は、物体によって反射されるエネルギー、または物体が位置されるエネルギー印加区域から反射されるエネルギーの尺度または指標となることがある。あるいは、この値は、物体に、または物体が位置されるエネルギー印加区域にエネルギーが印加されるときに損失されるエネルギーの尺度となることがある。さらに、この値は、吸収可能エネルギーを導出することができる任意の他の指標となることがある。これらの概念は、後の節でさらに説明する。
【0169】
物体が散逸または吸収することができるエネルギーを、本明細書では「吸収可能エネルギー」と呼ぶ。吸収可能エネルギーは、エネルギーを吸収することができる物体の能力、または所与の物体内でエネルギーを散逸させることができる装置の性能の指標となることがある。本明細書で開示する実施形態では、吸収可能エネルギーは、少なくとも1つのアンテナに供給される最大入射エネルギーと散逸比との積として計算されることがある。反射エネルギー(すなわち吸収または伝送されないエネルギー)は、例えば、物体または他の負荷によって吸収されるエネルギーを示唆する値となることがある。別の例として、処理装置は、入射エネルギーの反射された部分と伝送された部分とに基づいて、吸収可能エネルギーを計算または推定することができる。その推定値または計算値が、吸収されるエネルギーを示唆する値となることがある。
【0170】
周波数スイープ(または後述するようにMSEのスイープ)中、例えば、少なくとも1つの処理装置は、一連の周波数またはMSEでエネルギーが物体に順次に供給されるように電磁エネルギー源を制御するように構成することができる。次いで、少なくとも1つの処理装置は、各周波数またはMSEで反射されたエネルギーを示唆する信号、さらにまた任意選択で、他のアンテナに伝送されたエネルギーを示唆する信号を受信することができる。アンテナに供給される既知の量の入射エネルギーと、反射および/または伝送される既知の量のエネルギーとを使用して(すなわち、それにより、各周波数またはMSEで吸収された量を示唆して)、吸収可能エネルギーの指標を計算または推定することができる。あるいは、処理装置は、吸収可能エネルギーを示唆する値として、単に反射の指標に依拠することがある。
【0171】
また、吸収可能エネルギーは、物体が位置されたエネルギー印加区域の構造によって散逸されることがあるエネルギーも含むことがある。金属材料または導電材料(例えば空洞壁または空洞内部の要素)での吸収は、大きな品質係数(「Q値」とも呼ぶ)によって特徴付けられるので、そのような周波数またはMSEは、導電材料に結合されるものと識別することができ、時として、そのようなサブバンド内ではエネルギーを伝送しないという選択が成されることがある。その場合、空洞壁で吸収される電磁エネルギーの量をかなり小さくすることができ、したがって、物体で吸収される電磁エネルギーの量が、吸収可能エネルギーの量に実質的に等しくなる。
【0172】
本明細書で開示する実施形態では、散逸比は、以下の式を使用して計算することができる。
DR=(Pin−Prf−Pcp)/Pin
ここで、Pinは、アンテナ102によって区域90内に供給される電磁エネルギーを表し、Prfは、送信機として働くアンテナに反射された/戻された電磁エネルギーを表し、Pcpは、受信機として働くアンテナに結合された電磁エネルギーを表す。DRは0〜1の値でよく、本明細書で開示される実施形態では、パーセンテージ値によって表すことができる。
【0173】
例えば、アンテナ1、2、および3を含む3アンテナシステムにおいて、サブシステム92は、スイープ中の測定されたパワー情報に基づいて、入力反射係数S11、S22、およびS33、ならびに伝送係数S12=S21、S13=S31、S23=S32を決定するように構成することができる。したがって、これらの係数に基づいて、アンテナ1に対応する散逸比DRは、以下の式に従って決定することができる。
DR=1−(IS11+IS12+IS13
【0174】
特定の物体110に関して、散逸比は、供給される電磁エネルギーの周波数またはMSEの関数として変化することがある。したがって、それぞれの周波数またはMSEに対して、各周波数またはMSEに関連付けられる散逸比をプロットすることによって、散逸比スペクトルを生成することができる。例示的な散逸比(効率)スペクトル210および250が、それぞれ図12および図13に示される。高い散逸比と低い散逸比の両方に対応する周波数を図12に示し、MSEを図13に示す。どちらの散逸比も、他よりも広い散逸比ピークを示す。
【0175】
図13は、ある範囲の変調空間要素(MSE)にわたる散逸比スペクトル250を示す。スペクトル250は、特定の範囲のMSEに対して散逸比(DR)をプロットする。スペクトル250は、周囲の領域よりも高い局所ピーク254など、特定の領域を含むことがある。局所ピーク254は、対応するMSEまたはMSE範囲で、より高いパーセンテージのパワーが散逸されることを示唆することがある。曲線225は、複数のMSEにわたる所望のエネルギー散逸レベルを表すことがある。散逸比スペクトル250に含まれる情報に基づいて、所望のエネルギー散逸レベル225を実質的に実現するように、様々なMSEでエネルギーが印加されるパワーおよび/またはエネルギーが印加される期間を決定することができる。
【0176】
図12に戻ると、曲線210は、ある範囲の周波数にわたる散逸比の値のスペクトルを表す。この情報を使用して、所望のエネルギー印加プロファイルを実現するように、この範囲内の複数の周波数それぞれで所望のパワーレベルを提供することができる。曲線220は、周波数帯域にわたって印加されたパワーレベルを表す。パワーレベルは、散逸比曲線210に実質的に反比例することが分かる。図12に示される例では、400Wが、伝送に利用可能な最大パワーである。
【0177】
別の例示的実施形態によれば、少なくとも1つの処理装置は、第1の周波数またはMSEでの、送信アンテナにおける第1の量の入射エネルギーを測定し、第1の量の入射エネルギーの結果として送信アンテナに反射された第2の量のエネルギーを測定し、第1の量の入射エネルギーの結果として受信アンテナに伝送された第3の量のエネルギーを測定し、第1の量、第2の量、および第3の量に基づいて散逸比を決定するように、サブシステム96(図11)を調整するように構成することができる。例えば、少なくとも1つの処理装置は、第1の周波数またはMSEでの、送信機として働く第1のアンテナ102における第1の量の入射エネルギーを測定し、第1の量の入射エネルギーの結果として第1のアンテナ102に反射された第2の量のエネルギーを測定し、第1の量の入射エネルギーの結果として、受信機として働く少なくとも1つの第2のアンテナ102に伝送された第3の量のエネルギーを測定し、第1の量、第2の量、および第3の量に基づいて散逸比を決定するように構成することができる。
【0178】
さらに、吸収可能エネルギーを示唆する値は、所与の周波数またはMSEでの、サブシステム96に関連付けられたパワー増幅器に関連付けられた最大入射エネルギーに関するものであることがある。本明細書で言及するとき、「最大入射エネルギー」は、所与の期間にわたって所与の周波数またはMSEでアンテナに提供することができる最大パワーと定義することができる。したがって、吸収可能エネルギーを示唆する1つの代替の値は、最大入射エネルギーと散逸比との積であることがある。これらは、吸収可能エネルギーを示唆することがある値の2例にすぎず、処理装置を使用して実施される制御方式の一部として、単独でまたは一緒に使用することができる。採用される構造および用途に応じて、吸収可能エネルギーの代替指標を使用することもできる。
【0179】
いくつかの実施形態では、処理装置はまた、複数の周波数またはMSEの少なくとも1つのサブセット内で少なくとも1つの放射要素にエネルギーが供給されるように構成されることもあり、周波数またはMSEのサブセットそれぞれで区域に伝送されるエネルギーは、各周波数またはMSEでの吸収可能エネルギー値の関数となることがある。例えば、周波数またはMSEのサブセットそれぞれで少なくとも1つのアンテナ102に供給されるエネルギーは、各周波数またはMSEでの吸収可能エネルギー値の関数として(例えば、散逸比、最大入射エネルギー、散逸比と最大入射エネルギーの組合せ、または何らかの他の指標の関数として)決定することができる。本明細書で開示する実施形態のいくつかにおいて、これは、周波数スイープまたはMSEスイープ中に得られる吸収可能エネルギーフィードバックの結果として行われることがある。すなわち、この吸収可能エネルギー情報を使用して、少なくとも1つの処理装置は、特定の周波数またはMSEでのエネルギーが何らかの形でその周波数またはMSEでの吸収可能エネルギーの指標の関数となるように、各周波数またはMSEで供給されるエネルギーを調節することができる。関数的相関は、用途に応じて変わることがある。吸収可能エネルギーが比較的高いいくつかの用途では、放出される周波数またはMSEそれぞれでのエネルギーの供給を比較的低くする関数を少なくとも1つの処理装置に実施させることが望ましいことがある。これは、例えば物体110にわたってより均一なエネルギー分布プロファイルが望まれるときに望ましいことがある。
【0180】
他の用途では、比較的高いエネルギー供給をもたらす関数を処理装置に実施させることが望ましいことがある。これは、より高い吸収可能エネルギーのプロファイルを有する物体の特定の領域を標的とするために望ましいことがある。さらに他の用途では、物体110の既知のエネルギー吸収プロファイルまたは推測されるエネルギー吸収プロファイルに合わせて、供給されるエネルギーの量をカスタマイズすることが望ましいことがある。さらに他の用途では、少なくとも吸収可能エネルギーの関数として、さらにおそらくは1つまたは複数の他の変数または特性の関数として印加されるエネルギーを変えるために、動的アルゴリズムまたはルックアップテーブルを適用することができる。これらは、周波数またはMSEのサブセットそれぞれで区域内に伝送されるエネルギーを、各周波数またはMSEでの吸収可能エネルギー値の関数とすることができる方法のいくつかの例にすぎない。本発明は、任意の特定の方式に限定されず、吸収可能エネルギーの指標を考慮することによって供給されるエネルギーを制御するための任意の技法を包含することができる。
【0181】
いくつかの実施形態では、周波数またはMSEのサブセットそれぞれで少なくとも1つの放射要素に供給されるエネルギーは、エネルギーが供給される周波数またはMSE以外の複数の周波数またはMSEでの吸収可能エネルギー値の関数でよい。例えば、本明細書で開示する実施形態では、対象の周波数またはMSE付近のある範囲の「隣接」周波数またはMSEでの散逸比を、適用すべきエネルギーの量を決定するために使用することができる。本明細書で開示する実施形態では、非常に低い散逸比に関連付けられる(例えば金属材料に関連付けられることがある)いくつかの周波数またはMSEを除いた作業帯域全体を、決定のために使用することができる。
【0182】
いくつかの実施形態では、処理装置は、複数の周波数の少なくとも1つのサブセット内で少なくとも1つの放射要素にエネルギーが供給されるように構成されることがあり、周波数またはMSEのサブセットそれぞれで区域に伝送されるエネルギーは、各周波数またはMSEでの吸収可能エネルギー値に逆相関することがある。そのような反比例関係は、一般的な傾向を伴うことがある。すなわち、特定の周波数またはMSEサブセット(すなわち1つまたは複数の周波数またはMSE)での吸収可能エネルギーの指標が比較的高い傾向があるとき、その周波数またはMSEサブセットでの実際の入射エネルギーは比較的低いことがある。さらに、特定の周波数またはMSEサブセットでの吸収可能エネルギーの指標が比較的低い傾向があるとき、入射エネルギーは比較的高いことがある。反比例関係は、さらに密接に相関されることもある。例えば、本明細書で開示する実施形態では、伝送エネルギーは、伝送エネルギーと吸収可能エネルギー(すなわち物体110による吸収可能エネルギー)の値との積が、印加される周波数またはMSEにわたって実質的に一定になるように設定することができる。いずれにせよ、伝送エネルギーのプロットは、一般に、吸収を示唆する値(例えば、散逸比、または散逸比と各伝送周波数またはMSEで利用可能な最大入射パワーとの積)の逆像として現れることがある。例えば、図12は、本明細書で開示する実施形態に従って構成および動作されるデバイスの動作中に取られた散逸比スペクトル210(破線)と対応する入射パワースペクトル220(実線)のプロットの一例を提供する。図12に示されるプロットは、100グラムの牛ひき肉が置かれた、約400ワットの最大入射パワーを有するオーブンで得られたものである。800MHz〜1GHzの周波数範囲をスイープし、スイープに基づいて、エネルギーのほぼ均一な散逸が牛肉の塊に及ぼされるようにエネルギーを供給した。
【0183】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの処理装置は、ある範囲の周波数またはMSEにわたって、供給されるエネルギーが吸収可能エネルギー値に対してプロットされるときに2つのプロットが互いに鏡映となる傾向があるように、供給されるエネルギーを調節するように構成することができる。本明細書で開示する実施形態では、2つのプロットが互いに鏡映でよい。本明細書で開示する実施形態では、プロットは互いに正確には鏡映でなく、ほぼ逆向きの傾斜方向を有することがあり、すなわち、1つのプロットでの特定の周波数またはMSEに対応する値が比較的高いとき、他方のプロットでの特定の周波数に対応する値は比較的低いことがある。例えば、図12に示されるように、伝送エネルギーのプロット(例えば入射パワースペクトル220)と、吸収可能エネルギー値のプロット(例えば散逸比スペクトル210)との関係は、曲線の少なくとも一区域にわたって伝送エネルギー曲線が増加しているときに、吸収可能エネルギー曲線が同じ区域にわたって減少しているように比較することができる。さらに、曲線の少なくとも一区域にわたって吸収可能エネルギー曲線が増加しているとき、伝送エネルギー曲線は、同じ区域にわたって減少している。例えば、図12で、入射パワースペクトル220は、900Hz〜920Hzの周波数範囲にわたって増加し、一方、散逸比スペクトル210は、その周波数範囲にわたって減少する。時として、伝送エネルギーの曲線は、それよりも高くは増加されない最大値に達することがあり、その場合、その区域内の吸収可能エネルギー曲線とは無関係に、伝送曲線で平坦部分(またはほぼ平坦の部分)が観察されることがある。例えば、図12で、入射パワーが400Wの最大値に達するとき、入射パワーは、散逸比の変動とは関係なく実質的に一定である。
【0184】
いくつかの例示的な方式は、物体110内でのエネルギー吸収をより空間的に均一にすることができる。本明細書で使用するとき、「空間的に均一」とは、エネルギー印加の標的とされる物体または物体の一部分(例えば選択された部分)にわたるエネルギー吸収(すなわち散逸エネルギー)が実質的に一定である状態を表す。エネルギー吸収は、物体の異なる位置での散逸エネルギーのばらつきがしきい値よりも低い場合に「実質的に一定」とみなされる。例えば、散逸エネルギーの分布に基づいて偏差が計算されることがあり、吸収可能エネルギーは、偏差が50%未満である場合に「実質的に一定」とみなされる。多くの場合に、空間的に均一なエネルギー吸収は、空間的に均一な温度上昇をもたらすことがあるので、本明細書で開示する実施形態に合致するように、「空間均一性」は、エネルギー印加の標的とされる物体または物体の一部分にわたる温度上昇が実質的に一定である状態も表すことがある。温度上昇は、区域90内の温度センサなど、感知デバイスによって測定することができる。
【0185】
物体または物体の一部分でほぼ一定のエネルギー吸収を実現または近似するために、制御装置101は、各周波数またはMSEで供給されるパワーの量を吸収可能エネルギー値の関数として変える一方で、各周波数またはMSEでエネルギーがアンテナ102に供給される時間量を実質的に一定に保つように構成することができる。
【0186】
特定の周波数またはMSEに関して吸収可能エネルギー値が所定のしきい値未満であるいくつかの状況では、各周波数またはMSEでの吸収の均一性を実現することができないことがある。そのような場合には、本明細書で開示する実施形態に合致するように、制御装置101は、その特定の周波数またはMSEに関して、デバイスの最大パワーレベルに実質的に等しいパワーレベルでアンテナにエネルギーが供給されるように構成することができる。別法として、いくつかの他の実施形態に合致するように、制御装置101は、これら特定の周波数またはMSEすべてで増幅器がエネルギーを供給しないように構成することができる。時として、増幅器が、均一な伝送エネルギーレベルに対して少なくともしきい値パーセンテージ(例えば50%以上、さらには80%以上)のエネルギーを物体に供給することができる場合にのみ、増幅器の最大パワーレベルに実質的に等しいパワーレベルでエネルギーを供給するという決定を下すことができる。時として、例えば装置が過剰なパワーを吸収するのを防ぐために、反射エネルギーが所定のしきい値未満である場合にのみ、増幅器の最大パワーレベルに実質的に等しいパワーレベルでエネルギーを供給するという決定を下すことができる。例えば、反射エネルギーが投入されるダミー負荷の温度に基づいて、またはダミー負荷と環境との温度差に基づいて決定が下されることがある。したがって、少なくとも1つの処理装置は、ダミー負荷によって反射エネルギーまたは吸収エネルギーを制御するように構成することができる。同様に、吸収可能エネルギー値が所定のしきい値を超える場合、制御装置101は、アンテナの最大パワーレベル未満のパワーレベルでアンテナがエネルギーを供給するように構成することができる。
【0187】
代替方式では、均一な吸収は、実質的に一定のレベルで印加されるパワーを保ちながら、エネルギー送達の期間を変えることによって実現することができる。すなわち、より低い吸収可能エネルギー値を示す周波数またはMSEに関しては、より高い吸収値を示す周波数またはMSEよりもエネルギー印加の期間を長くすることができる。このようにすると、複数の周波数またはMSEで供給されるパワーの量を実質的に一定にすることができ、その一方で、特定の周波数またはMSEでの吸収可能エネルギー値に応じて、エネルギーが供給される時間量が異なる。
【0188】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのアンテナが複数のアンテナを含むことがあり、少なくとも1つの処理装置は、異なる位相を有する波を使用して複数のアンテナにエネルギーが供給されるように構成することができる。例えば、アンテナ102は、アレイを形成する複数のアンテナを含むフェーズドアレイアンテナでよい。エネルギーは、異なる位相での電磁波によって各アンテナに供給することができる。位相は、フェーズドアレイの幾何学的構造に合致するように調整することができる。本明細書で開示する実施形態では、少なくとも1つの処理装置は、各アンテナの位相を動的に、かつ別個に制御するように構成されることがある。フェーズドアレイアンテナが使用されるとき、アンテナに供給されるエネルギーは、アレイ内の各アンテナに供給されるエネルギーの和であることがある。
【0189】
吸収可能エネルギーは、用途に応じて、物体温度を含めた多数の因子に基づいて変化することがあるので、吸収可能エネルギー値を定期的に更新し、その後、更新された吸収値に基づいてエネルギー印加を調節することが有益であることがある。これらの更新は、用途に応じて、毎秒複数回行うことができ、あるいは数秒毎、またはより長い間隔で行うこともできる。一般的な原則として、更新の頻度をより多くすれば、エネルギー吸収の均一性を高めることができる。
【0190】
本明細書で開示する実施形態によれば、制御装置は、エネルギーが供給される周波数またはMSEの関数として、アンテナから供給されるエネルギーを調節するように構成することができる。例えば、スイープが採用されるか、それとも何らかの他の能動的なエネルギー吸収指標が採用されるかに関係なく、特定の周波数またはMSEが、エネルギー印加に関して対象とされる、または回避されることがある。すなわち、吸収レベルが所定のしきい値未満に下がった場合などに、制御装置101が一括して回避する周波数またはMSEが存在することがある。例えば、金属は、電磁エネルギーの優れた吸収体ではない傾向があり、したがって、金属に関連付けられる特定の周波数またはMSEは、低い吸収指標値を示す。そのような場合、金属は既知のプロファイルに適合することがあり、関連の周波数またはMSEを回避することができる。あるいは、吸収指標値は動的に決定されることがあり、それが所定のしきい値未満であるとき、制御装置101は、その後そのような周波数での電磁エネルギーをアンテナ102が供給するのを妨げることができる。別法として、物体のいくつかの部分のみにエネルギーを印加することが望ましい場合、関連の周波数しきい値が既知であるときまたは動的に決定されるときには、それらの部分にエネルギーを指向することができる。本発明の別の態様によれば、少なくとも1つの処理装置は、複数の周波数またはMSEそれぞれでの所望のエネルギー吸収レベルを決定するように、かつ各周波数またはMSEでアンテナから供給されるエネルギーを調節するように構成することができ、各周波数またはMSEで所望のエネルギー吸収レベルに狙いを定める。例えば前述したように、制御装置101は、ある範囲の周波数またはMSEにわたって実質的に均一なエネルギー吸収を実現または近似するという試みにおいて、各周波数またはMSEで所望のエネルギー吸収レベルに狙いを定めるように構成することができる。別法として、制御装置101は、物体110にわたるエネルギー吸収プロファイルに狙いを定めるように構成することができ、このエネルギー吸収プロファイルは、均一なエネルギー吸収を避けるように、または物体110の一部のみで実質的に均一な吸収を実現するように計算される。
【0191】
変調空間(MS)および変調空間要素(MSE)
上述したように、本明細書で開示する実施形態は、負荷内で所望のエネルギー印加パターン(例えば加熱パターン)を実現するように構成することができ、負荷は、複数の物体を含む負荷や、複数の散逸比、1つまたは複数の異なる素材相、および/または異なる素材組成を含む負荷でもよい。例えば、ある範囲の周波数にわたって負荷を走査することによって、各周波数に関して散逸比を決定することができる。制御装置101は、散逸比情報を使用して、各周波数で所望のエネルギー吸収レベルに狙いを定めるように構成することができる。1つの例示的実施形態では、高い散逸比を示す周波数ではより低いパワーレベルが供給され、低い散逸比を示す周波数ではより高いパワーレベルを供給することができるように、各周波数で供給されるパワーのレベルを制御することができる。その結果、上述したように、そのような実施形態は、ある範囲の周波数にわたって実質的に均一なエネルギー吸収を実現または近似することができ、負荷を均一に加熱することができる。
【0192】
しかし、本明細書で開示する実施形態は、周波数スイープ、およびスイープ中にいくつかの周波数で様々なレベルのパワーを適用するという概念に限定されない。本明細書で開示する実施形態に合致するエネルギー送達は、負荷または負荷の一部分へのエネルギー送達に影響を及ぼすことができる可能性がある任意のパラメータを制御することによって、より広範に達成することができる。周波数は、負荷または負荷の一部分によるエネルギー吸収に影響を及ぼすために使用することができるパラメータの一例にすぎない。
【0193】
エネルギー印加区域内の電磁波は、何らかの電磁界パターンを示すことがある。「電磁界パターン」とは、例えばエネルギー印加区域内の電界強度分布の振幅によって特徴付けられる電磁界構成を表すことがある。一般に、電磁界強度は、時間変動し、かつ空間依存することがある。すなわち、異なる空間位置で電磁界強度が異なることがあるだけでなく、所与の空間位置に関して、電磁界強度は、時間と共に変化することがあり、またはしばしば正弦波の形で振動することがある。したがって、異なる空間位置で、電磁界強度は、それらの最大強度(すなわちそれらの最大振幅値)に同時には達しないことがある。所与の位置での電磁界強度振幅は、電磁パワー密度やエネルギー移動能力など電磁界に関する情報を表すことができるので、本明細書で言及する電磁界パターンは、1つまたは複数の空間位置での電磁界強度の振幅を表すプロファイルを含むことがある。そのような電磁界強度振幅プロファイルは、区域内における所与の時点での瞬時電磁界強度分布のスナップショットと同じになることも、または異なることもある。本明細書で使用するとき、用語「振幅」は、「大きさ」と交換可能である。
【0194】
電磁界パターンは、エネルギー印加区域に電磁エネルギーを印加することによって励起することができる。本明細書で使用するとき、用語「励起」は「発生」、「生成」、および「印加」と交換可能である。一般に、エネルギー印加区域内の電磁界パターンは一様でない(すなわち不均一である)ことがある。すなわち、電磁界パターンは、比較的高い電磁界強度振幅を有する領域と、比較的低い電磁界強度振幅を有する他の領域とを含むことがある。エネルギー移動の速度は、電磁界強度の振幅に依存することがある。例えば、エネルギー移動は、より低い電磁界強度振幅を有する領域よりも、より高い電磁界強度振幅を有する領域で速く行われることがある。本明細書で使用するとき、用語「エネルギー移動」は、「エネルギー送達」と交換可能である。
【0195】
図1の装置は、エネルギー印加区域内で、高い振幅の電磁界(最大および最小)および低い振幅の電磁界の分布および強度を制御するように構成することができ、したがって、印加区域内の任意の2つ(以上)の所与の領域に異なる目標量のエネルギーを送達する。エネルギー印加は、モード空洞でよい。本明細書で使用するとき、「モード空洞」とは、「モード条件」を満足する空洞を表す。モード条件とは、エネルギー印加区域によってサポートされる最大共振波長と、エネルギー源によって供給される送達電磁エネルギーの波長との関係を表す。エネルギー源によって供給される送達電磁エネルギーの波長が、エネルギー印加区域によってサポートされる最大共振波長の約4分の1よりも大きいとき、モード条件が満たされる。エネルギー印加区域内の電磁界の分布および強度の制御は、「MSE」(後述する)の選択によって行うことができる。MSE選択の各選択肢は、エネルギー印加区域の領域内でのエネルギーの分布の仕方に影響を及ぼすことがある。モード条件が満たされないとき、MSEの制御によって所望のエネルギー印加分布を実現することはより難しいことがある。
【0196】
用語「変調空間」または「MS」は、エネルギー印加区域内での電磁界パターンに影響を及ぼすことがあるすべてのパラメータ、およびそれらのすべての組合せを総称して表すために使用する。いくつかの実施形態では、「MS」は、使用することができるすべての可能な構成要素、およびそれらの可能な(絶対的な、または他のものに対して相対的な)設定、および構成要素に関連付けられる調節可能なパラメータを含むことがある。例えば、「MS」は、複数の可変パラメータ、アンテナの数、それらの位置決めおよび/または向き(変更可能な場合)、使用可能な帯域幅、すべての有用な周波数のセット、およびそれらの任意の組合せ、パワー設定(例えば、2つ以上の照射供給機構に同時に送達される相対パワー)、時間設定、位相などを含むことがある。
【0197】
変調空間のエネルギー印加区域に関連する側面の例には、エネルギー印加区域の寸法および形状、ならびにエネルギー印加区域が構成される素材が含まれることがある。変調空間のエネルギー源に関連する側面の例には、エネルギー送達の振幅、周波数、および位相が含まれることがある。変調空間の放射要素に関連する側面の例には、アンテナ状構造のタイプ、数、サイズ、形状、構成、向き、および配置が含まれることがある。
【0198】
MSに関連付けられる各可変パラメータをMS次元と呼ぶ。例として、図15は、3次元の変調空間1500を示し、3次元は、周波数(F)、位相(φ)、および振幅(A)(例えば、所与のMSEによって電磁界を励起する2つ以上の供給機構間の振幅)と表される。すなわち、MS1500において、電磁波の周波数、位相、および振幅がエネルギー送達中に変調され、一方、他のパラメータはすべて予め決定して、エネルギー送達中に一定にすることができる。MSは1次元でもよく、その場合、ただ1つのパラメータがエネルギー送達中に変えられる。MSはより高次でもよく、それにより複数のパラメータが変えられる。
【0199】
用語「変調空間要素」または「MSE」は、MSでの可変パラメータの値の特定のセットを表すことがある。したがって、MSは、すべての可能なMSEの集合とみなすこともできる。例えば、2つのMSEは、複数の放射要素に供給されるエネルギーの相対振幅が互いに異なることがある。例えば、図15は、3次元MS1500でのMSE1501を示す。MSE1501は、固有周波数F(i)、固有位相φ(i)、および固有振幅A(i)を有することがある。これらのMSE変数のうちの1つでも変わる場合、新規のセットが別のMSEを定義する。例えば、(3GHz,30°,12V)と(3GHz,60°,12V)は、位相成分のみが変化しているが、2つの異なるMSEである。いくつかの実施形態では、順次にスイープされるMSEは、必ずしも互いに関係付けられないことがある。それらのMSE変数は、MSE毎に大きく異なることがある(または論理的に関係付けられることがある)。いくつかの実施形態では、MSE変数はMSE毎に大きく異なり、場合によってはそれらの間に論理的な関係はないが、総体として、1グループの作業MSEが所望のエネルギー印加目標を実現することができる。
【0200】
これらのMSパラメータの異なる組合せは、エネルギー印加区域にわたる異なる電磁界パターン、さらには物体内での異なるエネルギー分布パターンをもたらすことがある。エネルギー印加区域内で特定の電磁界パターンを励起するために順次にまたは同時に実行することができる複数のMSEを、総称して「エネルギー送達方式」と呼ぶことがある。例えば、エネルギー送達方式は、3つのMSE(F(1),φ(1),A(1))、(F(2),φ(2),A(2))、(F(3),φ(3),A(3))からなることがある。エネルギー送達方式は、各MSEが印加される時間や各MSEに送達されるパワーなど、MSEではない追加のパラメータを含むこともある。実質的に無限数のMSEが存在するので、実質的に無限数の異なるエネルギー送達方式が存在し、したがって、任意の所与のエネルギー印加区域内で実質的に無限数の異なる電磁界パターンが生じる(しかし、異なるMSEが、時として、非常に類似した、さらには同一の電磁界パターンをもたらすこともある)。当然、異なるエネルギー送達方式の数は、1つには、利用可能なMSEの数の関数であることがある。本発明は、その最も広範な意味合いにおいて、MSEまたはMSE組合せの任意の特定の数に限定されない。採用することができるオプションの数は、意図される用途、望まれる制御のレベル、ハードウェアまたはソフトウェア分解能およびコストなどの因子に応じて、2つだけでもよく、または設計者が望む数でよい。
【0201】
変調空間は、線形空間または非線形空間を含むことがある。変調空間が線形であるとき、2つのMSE(MSEおよびMSE)を適用することによってもたらされる合成の電磁界パターンは、MSEとMSEの組合せであるMSEを適用することによってもたらされる電磁界パターンと同じである。一例として、図15に示されるような線形変調空間1500内でのMSE=(F(1),φ(1),A(1))およびMSE=(F(2),φ(2),A(2))に関して、I(MSE)+I(MSE)=I(MSE+MSE)である。本明細書で開示する実施形態に合致するように、変調空間は、いくつかのMSEがエネルギー印加区域内でいくつかのモードを励起するときに線形であることがある。他の場合には、変調空間は非線形でよく、例えばI(MSE)+I(MSE)≠I(MSE+MSE)である。
【0202】
上述したように、本発明の装置または方法は、命令を実行するためまたは論理演算を行うために処理装置を使用することを含むことがある。処理装置によって実行される命令は、例えば、処理装置に予めロードされていることがあり、あるいは、RAM、ROM、ハードディスク、光ディスク、磁気媒体、フラッシュメモリ、他の永久、固定、もしくは揮発性メモリ、または処理装置に命令を提供することができる任意の他の機構など、別個のメモリユニットに記憶することができる。処理装置は、特定の用途に合わせてカスタマイズすることができ、または、別のソフトウェアを実行することによって異なる機能を行うことができるように汎用のものとなるように構成することもできる。
【0203】
複数の処理装置が採用される場合、すべてを同様の構成にすることができ、または、互いに電気的に接続もしくは切断された異なる構成にすることもできる。それらは、別個の回路でも、単一の回路に集積されていてもよい。複数の処理装置が使用されるとき、それらは、個別にまたは協働して動作するように構成することができる。処理装置は、電気的に、磁気的に、光学的に、音響的に、機械的に、無線で、またはそれらの間で少なくとも1つの信号を通信できるようにする任意の他の形で結合させることができる。
【0204】
1つまたは複数の処理装置は、エネルギー源を調整する目的のみで提供されることもある。別法として、他の機能の提供に加えて、エネルギー源を調整する機能を1つまたは複数の処理装置に設けることができる。例えば、エネルギー源を調整するために使用される同じ処理装置を、エネルギー源以外の構成要素に対する追加の制御機能を提供する制御回路内に集積することもできる。
【0205】
本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの処理装置は、エネルギー印加区域内の第1の所定の領域に第1の所定量のエネルギーを送達し、かつ第2の所定の領域に第2の所定量のエネルギーを送達するためにエネルギー源を調整するように構成することができ、ここで、第1の所定量のエネルギーは第2の所定量のエネルギーとは異なる。例えば、高い振幅の電磁界強度(ホットスポット)を有する既知の領域を有する電磁界パターンを選択することができる。したがって、ホットスポットをエネルギー印加区域内の領域と位置合わせすることによって、第1の所定の領域に第1の所定量のエネルギーを送達するように所定の電磁界パターンを選択することができる。異なるホットスポットを有する別の電磁界パターンが選択されるとき、その第2の電磁界パターンが、第2の所定の領域への第2の所定量のエネルギーの送達を行うことがある。また、後述するように、異なる所定の領域に異なる所定量のエネルギーを送達するために、異なるMSEおよび/またはMSE組合せを選択することができる。いずれにせよ、印加されるエネルギーの量の制御は、処理装置による特定の電磁界パターンまたはMSEの選択、および/または例えばパワーレベル(例えば所与のMSEに関して提供される総パワー)の制御、特定の条件中にパワーが印加される期間、または上記のことの組合せによって実現することができる。処理装置は、所望のエネルギー印加プロファイルを実現するためにそのような選択を行うことができる。
【0206】
用語「領域」は、エネルギー印加区域の任意の部分を含むことがあり、例えばエネルギー印加区域のセル、部分体積、細区分、離散部分空間、または任意のサブセットであり、サブセットが離散化される方法には関係ない。1つの特定の例では、エネルギー印加区域は2つの領域を含むことがある。別の例では、エネルギー印加区域は3つ以上の領域を含むことがある。領域は、互いに重なり合うことも重なり合わないこともあり、各領域のサイズは同じであることも同じでないこともある。
【0207】
また、少なくとも1つの処理装置は、第1の領域および第2の領域の位置を予め決定するように構成することもできる。これは、例えば、区域内の物体の位置に関する情報を提供するエネルギー印加区域からの反射フィードバックによって行うことができる。他の実施形態では、これは、撮像によって実現されることがある。いくつかの実施形態では、領域は、物体の異なる部分に対応することがあり、異なる目標量の電磁エネルギーが、物体のこれらの異なる部分に送達されることがある。各領域内で実際に散逸されるエネルギーの量は、その領域での電磁界強度、およびその特定の領域での物体の対応する部分の吸収特性に依存することがある。さらに他の実施形態では、所定の位置は、エネルギー印加区域内の物体に関係なく、電磁界パターンの既知の幾何形状に応じたものであることがある。いくつかの実施形態では、第1の領域および第2の領域の位置は、ユーザまたは少なくとも1つの処理装置以外のデバイスが予め決定することもできる。
【0208】
2つの領域は、エネルギー印加区域内で互いに隣接して位置されることがある。例えば、エネルギー印加区域は、物体または物体の一部によって占有される領域と、物体の領域とは異なる領域を画定する別の領域とを含むことがある。この場合、これら2つの領域は、互いに隣接し、境界によって分けられることがある。例えば、第1の領域は、加熱するスープのカップ内部でよく、第2の領域は、スープのカップの外部でよい。別の例では、エネルギー印加区域は、物体内部の異なるエネルギー吸収特性を有する2つの領域を含むことがある。例えば、第1の領域は、大抵は、スープの上層の水分を含むことがあり、第2の領域は、大抵は、スープの下層に沈むジャガイモおよび/または肉を含むことがある。別の例では、第1の領域は、特定の相(例えば液体の水)の素材を含むことがあり、第2の領域は、同じ素材であるが異なる相(例えば固体の氷)を含むことがある。それらの異なるエネルギー吸収特性により、これら2つの領域で異なる電界強度を有する電磁界パターンを励起することが有益であることがある。2つの領域の局所電磁界強度およびエネルギー吸収特性の差に基づいて、各領域内での散逸エネルギーを予め決定することができる。したがって、エネルギーを送達するために適切なエネルギー送達方式を構成するためのMSEを選択および制御することによって、散逸エネルギーは、望みに応じて、物体内の異なる領域にわたって実質的に等しくすることも異ならせることもできる。
【0209】
MSE選択は、エネルギー印加区域の領域内でのエネルギーの分布の仕方に影響を及ぼすことがある。エネルギー印加区域内の異なる所定の領域に異なる目標量の電磁エネルギーを送達するために、処理装置は、エネルギー印加区域内の特定の所定の領域にエネルギーを指向する電磁界パターンを実現するように、1つまたは複数のMSEを制御することができる。定常波をもたらすMSEの選択が、追加の制御尺度となることがある。なぜなら、定常波は、前述したように、予測可能であり明確に定義される「高強度領域」(ホットスポット)と「低強度領域」(コールドスポット)とを示す傾向があるからであり、ここで、高強度領域は、低強度領域と容易に区別可能なエネルギー濃度を示すことがある。用語「コールドスポット」は、印加されるエネルギーが全くないことを必ずしも必要としないことを理解すべきである。そうではなく、コールドスポットは、ホットスポットに比べて低い強度の領域を表すこともある。すなわち、高強度領域では、電磁界強度の振幅が、低強度領域での電磁界強度の振幅よりも高い。したがって、高強度領域でのパワー密度は、低強度領域でのパワー密度よりも高い。ある空間位置のパワー密度および電磁界強度は、その位置に置かれた物体に電磁エネルギーを送達することができる能力に関係付けられる。したがって、エネルギー送達または移動の速度は、低強度領域よりも高強度領域で高い。すなわち、エネルギー送達または移動は、高強度領域の方が効果的であることがある。したがって、処理装置は、エネルギー印加区域内で高強度領域および/または低強度領域を制御することによって、特定の空間位置へのエネルギー送達を制御することができる。高強度領域および低強度領域のそのような制御は、MSEの制御によって実現することができる。
【0210】
制御可能なMSE変数は、伝送される電磁波の振幅、位相、および周波数、各放射要素の位置、向き、および構成、またはこれらのパラメータの任意のものの組合せ、または電磁界パターンに影響を及ぼすことがある他のパラメータのうちの1つまたは複数を含むことがある。例えば、図14に示されるように、例示的な処理装置1401は、電源1402、変調器1404、増幅器1406、および放射要素1408など、エネルギー源の様々な構成要素に電気的に結合させることができる。処理装置1401は、これらの構成要素の1つまたは複数を調整する命令を実行するように構成することができる。例えば、処理装置1401は、電源1402によって供給される電力レベルを調整することができる。また、処理装置1401は、例えば増幅器内のトランジスタを切り替えることによって、増幅器1406の増幅比を調整することもできる。別法として、または追加として、処理装置1401は、増幅器1406が所望の波形を出力するように、増幅器1406のパルス幅変調制御を行うことができる。処理装置1401は、変調器1404によって行われる変調を調整することができ、別法として、または追加として、例えば電気機械デバイスによって、各放射要素1408の位置、向き、および構成の少なくとも1つを調整することができる。そのような電気機械デバイスは、放射要素1408の1つまたは複数の向きまたは位置を回転、枢動、シフト、摺動、または他の様式で変更するためのモータまたは他の可動構造を含むことがある。処理装置1401は、さらに、区域内の電磁界パターンを変えるために、エネルギー印加区域内に位置された任意の電磁界調整要素を調整するように構成することができる。例えば、電磁界調整要素は、放射要素からの電磁エネルギーを選択的に指向するように、または同時に、受信機として働く1つまたは複数の他の放射要素への結合を減少させるように、送信機として働く放射要素をマッチングするように構成することができる。
【0211】
別の例では、位相変調器が使用されるとき、位相変調器は、AC波形に対する所定の時間遅延シーケンスを行うように制御することができ、それにより、AC波形の位相は、一連の期間それぞれにつき数度(例えば10度)増分される。別法として、処理装置は、エネルギー印加区域からのフィードバックに基づいて、変調を動的におよび/または適応性をもって調整することができる。例えば、処理装置1401は、(物体1410を含む)空洞1412から受信される電磁エネルギーの量を示すアナログまたはデジタルフィードバック信号を検出器1416から受信するように構成することができ、また、処理装置1401は、受信されたフィードバック信号に基づいて、次の期間に関する位相変調器での時間遅延を動的に決定することができる。
【0212】
任意の所与のMSE組合せから得られるエネルギー分布は、例えば、試験、シミュレーション、または分析的計算によって求めることができる。試験手法を使用するとき、センサ(例えば小さなアンテナ)をエネルギー印加区域内に配置することができ、所与のMSE組合せから得られるエネルギー分布を測定する。次いで、その分布を、例えばルックアップテーブルに記憶することができる。シミュレーション手法では、MSEの組合せを仮想で試験することができるように仮想モデルを構成することができる。例えば、エネルギー印加区域のシミュレーションモデルは、コンピュータに入力される1組のMSEに基づいてコンピュータで実施することができる。CSTやHFSSなどのシミュレーションエンジンを使用して、エネルギー印加区域内の電磁界分布を数値計算することができる。得られた電磁界パターンは、撮像技法を使用して視覚化することができ、またはデジタルデータとしてコンピュータに記憶することができる。このようにして、MSEと得られる電磁界パターンとの相関を確立することができる。このシミュレーション手法は事前によく行うことができ、既知の組合せをルックアップテーブルに記憶することができ、またはエネルギー印加操作中に必要に応じてシミュレーションを行うことができる。
【0213】
同様に、試験およびシミュレーションの代替方法として、選択されたMSE組合せに基づくエネルギー分布を予測するために、分析モデルに基づいて計算を行うことができる。例えば、既知の寸法を有するエネルギー印加区域の形状に鑑みて、所与のMSEに対応する基本電磁界パターンを、分析的方程式から計算することができる。次いで、「モード」とも呼ぶこの基本電磁界パターンを使用して、一次結合によって所望の電磁界パターンを構成することができる。シミュレーション手法と同様に、分析手法は事前によく行うことができ、既知の組合せをルックアップテーブルに記憶することができ、またはエネルギー印加操作中に必要に応じて行うこともできる。
【0214】
本発明のいくつかの実施形態によれば、処理装置は、エネルギー印加区域内の少なくとも2つの領域に所定量のエネルギーを送達するように構成することができる。エネルギーは、エネルギー印加区域内の物体(負荷とも呼ぶ)の既知の特性に基づいて予め決定することができる。例えば、同じ物理的な特性を共有する製品(例えば同じハンバーガーパテ)を繰り返し加熱する専用オーブンの場合、処理装置は、少なくとも2つの既知の電磁界パターンに対応する異なる既知の量のエネルギーを送達するように予めプログラムすることができる。処理装置は、電磁界パターンに応じて異なる量のエネルギーを印加することができる。すなわち、エネルギー印加のパワーまたは期間は、適用される(すなわちMSEから得られる)電磁界パターンに応じて変えることができる。印加すべき所定量のエネルギーと、電磁界パターンとのこの相関は、前述したように、試験、シミュレーション、または分析的解析によって求めることができる。
【0215】
また、電磁界パターンと、送達されるエネルギーの量との相関は、物体1410のエネルギー吸収プロファイルによって求めることもできる。すなわち、物体1410は、1つまたは複数のMSEを使用して走査することができ、1つまたは複数のMSEそれぞれに関する散逸エネルギーを示唆する情報(例えば対応する散逸比)を決定することができる。散逸比および所望のエネルギー送達特性に基づいて、所望の目標を実現するために、走査されるMSEそれぞれに関してパワーレベルを選択することができる。例えば、目標が、物体の体積にわたってエネルギーを均一に印加することである場合、処理装置は、均一のエネルギー印加をもたらすMSEの組合せを選択することができる。他方、均一でないエネルギー印加が望まれる場合、処理装置は、所望の不均一性を実現するために、それぞれ異なる電磁界パターンを有する所定量のエネルギーを印加することができる。MSEは、散逸エネルギーを示唆する受信された情報に基づいてサブセットにグループ化することができ、これらのサブセットはそれぞれ、負荷に印加されるエネルギーを調整するために使用することができるパワー送達プロトコルに関連付けることができる。上記の周波数スイープの例で説明したように周波数のサブセットを選択してスイープすることができるのと同様に、所望のエネルギー印加目標を実現するために、MSEのサブセットを選択してスイープすることもできる。そのような順次プロセスを、本明細書では「MSEスイープ」と呼ぶことがある。このスイーププロセスは、1つまたは複数のMSEを特徴付けるために使用される任意のパラメータ(例えば周波数、位相、振幅など)に関連付けて使用することができる。スイーププロセスは、図15に示されるように、周波数、位相、または振幅(例えば1つのMSEで使用される複数の供給機構間の振幅の差)など、MSでの1つの次元に関連付けられる値を順次に変化させることを含むことがある。別法として、スイーププロセスは、スイープ中の各ステップに関して、MSでの複数のパラメータを順次に変化させることを含むことがある。
【0216】
図2に戻ると、スイープ/感知ステップ21は、任意のMSEを用いてスイープするステップを含むことがある。したがって、ステップ23は、任意の選択されたMSEの適用により得られるフィードバック情報の分析を含むことがある。ステップ23で、ステップ21で使用されるものと同じまたは異なるMSEセットを使用してエネルギーを伝送させることができる。
【0217】
MSEスイープを使用して、物体のいくつかの部分または領域を違う条件で加熱することができる。例えば、1つまたは複数のMSEを走査することができ、物体または負荷の一部の散逸特性を決定することができる(例えば、走査されるMSEに関して散逸比を決定することができる)。負荷の散逸特性に基づいて、走査されるMSEそれぞれで、または走査されるMSEの一部で適用するための所望のパワーレベルを選択することができる。一例では、大きな散逸比を示すMSEには、比較的低いパワー値を割り当てることができ、より小さい散逸比を示すMSEには、より高いパワー値を割り当てることができる。当然、特定のエネルギー印加目標に応じて、走査されるMSEにパワーレベルを割り当てるための任意の方式を採用することができる。次いで、MSEスイープを開始することができ、その間、対応するMSEで、選択されたパワーレベルが特定の時間にわたって印加される。MSEスイープは、物体が、所望の加熱レベルまたは所望の温度プロファイルを実現するまで続けることができる。
【0218】
MSEスイープ中、定期的に、同じまたは異なるMSEを使用して負荷を再び走査して、更新された散逸比セットを得ることができる。更新された散逸比セットに基づいて、MSEそれぞれで印加すべきパワーレベルを調節することができる。このMSE走査は、特定の実施形態の要件に応じて任意の所望のレートで行うことができる。いくつかの実施形態では、MSE走査は、毎分約120回のレートで繰り返すことができる。より高い走査レート(例えば200回/分または300回/分)またはより低い走査レート(例えば約100回/分、20回/分、2回/分、10回/解凍時間、または3回/解凍時間)を使用することもできる。追加として、走査を不定期に行うことができる。時として、MSE走査シーケンス(例えば1回または複数回の走査)を、0.5秒毎に1回、または5秒毎に1回、または任意の他のレートで行うことができる。さらに、走査の間隔は、空洞内に伝送すべきエネルギーの量、および/または負荷内に散逸すべきエネルギーの量によって定義することができる。例えば、所与の量のエネルギーの後に(例えば、10kJ以下、または1kJ以下、または数百ジュール、またはさらには100J以下が、負荷内、または負荷の所与の部分(例えば、重量で100gなど、またはパーセンテージで負荷の50%など)に伝送または散逸された後に)、新たな走査が行われることがある。
【0219】
上述した原理を反復するため、さらには拡張するために、本明細書で開示する実施形態は、負荷にRFエネルギーを印加するための装置を含むことができる。上述したように、装置は、少なくとも1つの処理装置を含むことができる。例えば、処理装置は、入力に対して論理演算を行う電気回路を含むことがある。例えば、そのような処理装置は、1つまたは複数の集積回路、マイクロチップ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、中央処理装置(CPU)の全体または一部、グラフィックス処理装置(GPU)、デジタル信号処理装置(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または命令の実行もしくは論理演算の実施に適した他の回路を含むことがある。
【0220】
少なくとも1つの処理装置は、複数の変調空間要素(MSE)それぞれに関して、散逸エネルギーを示唆する情報を受信するように構成することができる。例えば、負荷によって散逸されたエネルギーを示唆する受信された情報は、前述したように、負荷によって吸収されたエネルギーの量、負荷によって反射されたエネルギーの量、または任意の他の適切なエネルギー散逸指標を示唆する情報を含むことができる。1つの例示的実施形態では、処理装置は、負荷によって散逸されたエネルギーを示唆する情報に基づいて、複数のMSE(またはMSEのセット)それぞれに関する散逸比を決定することができる。
【0221】
処理装置は、任意の望ましいレートでMSEのセットに関する散逸比を決定することができる。一実施形態では、MSEのセットに対応する散逸比のセットは、毎分少なくとも約120回のレートで決定することができる。他の実施形態では、MSEのセットに対応する散逸比のセットは、毎分約120回未満のレートで決定することができる。レートは、物体の性質、MSEの性質、システムの物理的な特性、および実現すべき所望の結果に応じて決まることがある。単に一例として、いくつかの場合には、毎秒5回よりも高いレートが望ましいことがある。他の例では、毎秒2回未満のレートが望ましいことがある。
【0222】
処理装置は、散逸エネルギーを示唆する受信された情報に基づいて、いくつかの複数のMSEを少なくとも2つのサブセットにグループ化するように構成することができる。例えば、より高い散逸比を示すMSEを1つのサブセットにグループ化することができ、より低い散逸比を示すMSEを別のサブセットにグループ化することができる。複数のMSEを、任意の数のサブセットに一緒にグループ化することができる。また、処理装置は、パワー送達プロトコルを少なくとも2つのサブセットそれぞれに関連付けるように構成することもでき、パワー送達プロトコルはサブセット毎に異なる。本明細書で使用するとき、用語「パワー送達プロトコル」は、エネルギーの量、パワーレベル、およびエネルギー印加の期間など、エネルギーが印加される任意の様式および/または量を含むことがある。処理装置は、MSEの異なるサブセットに関して異なるパワー送達プロトコルを決定することができる。パワー送達プロトコルに関する例には、例えば以下のものが含まれることがある。(a)1つのグループ内のすべてのMSEによって同じ量のパワーを負荷内で散逸させるプロトコル、(b)エネルギーとグループ要素を相関させる任意の形の関数に基づいて、異なるMSEによって異なる量のパワーを負荷内で散逸させるプロトコル、および(b)所与のグループでのMSEについてパワー伝送に関して最大値または最小値を設定するプロトコル。さらに、処理装置は、各パワー送達プロトコルに従って負荷に印加されるエネルギーを調整するように構成することができる。例えば、上述したように、より高い散逸比を示すMSEは、より低い散逸比を示す他のMSEよりも低いレベルでパワーを受け取ることがある。より低い散逸比を示すMSEは、より低い散逸比を示す他のMSEよりも高いレベルでパワーを受け取ることがある。さらに、中間レベルの散逸比を示すMSEは、異なる印加パワーレベル値を含む所定の関数に従ってパワーを受け取ることができる。当然、特定の実施形態の要件またはエネルギー送達目標に従って、利用可能な範囲内での任意のパワーレベル、および/またはパワーを印加するための任意の所望の機能を、任意のMSEまたはMSEサブセットに割り当てることができる。同様に、エネルギー印加中に任意の期間を任意のMSEに割り当てることができる。
【0223】
上述したように、複数のMSEはそれぞれ、負荷へのエネルギー送達に影響を及ぼすことがある複数のパラメータのうちの任意のパラメータに関する値によって定義することができる。一実施形態では、複数のMSEは、周波数、位相、および振幅、ならびに任意選択で他の次元に関する値によって定義することができる。他の実施形態では、MSEは1次元でよく、ただ1つのパラメータが変わり、任意の他のものは一定のままである。例えば、1次元MSEのセットは、周波数、位相、および振幅の1つのみが互いに異なることがある。いくつかの実施形態では、周波数の値が複数のMSE間で異なることがあり、一方、位相および/または振幅など他のパラメータに関する値は一定のままである。
【0224】
複数のMSEそれぞれに関連付けられるパワー送達プロトコルは、任意の所望のエネルギー送達方式に従って選択することができる。一実施形態では、第1の散逸比に関連付けられるMSEに対応するパワーレベルは、第1の散逸比よりも低い第2の散逸比に関連付けられるMSEに対応するパワーレベルよりも低い。
【0225】
また、開示する実施形態は、負荷を受け取るための空洞と、EMエネルギーを負荷に向けるための少なくとも1つの放射要素とを含むことがある。さらに、装置は、少なくとも1つの放射要素を介してEMエネルギーを負荷に供給するためのEMエネルギーの発生器を含むことがある。
【0226】
また、本明細書で開示する実施形態を使用して、複数の物質相(例えば固体、液体、気体、およびプラズマのうちの複数)を含む素材にエネルギーを印加することができる。そのような実施形態では、処理装置は、素材に関連付けられるエネルギー散逸特性の値を決定し、エネルギー散逸特性の値に基づいて、素材へのエネルギー移動を調整するように構成することができ、それにより、1つの素材領域内に位置される第1のタイプの相が、別の素材領域内に位置される第2のタイプの相よりも多くのエネルギーを受け取る。本明細書で使用するとき、用語「エネルギー散逸特性」は、散逸比、反射されるエネルギーの指標、吸収されるエネルギーの指標、または負荷がエネルギーを散逸させることができる能力の任意の他の直接的または間接的な指標を含むことがある。いくつかの実施形態では、気体は水蒸気を含むことがあり、固体は氷を含むことがあり、液体は水を含むことがある。しかし、開示する実施形態は、氷以外の固体、水以外の液体、および水蒸気以外の気体で使用することもできると考えられる。
【0227】
他の実施形態では、処理装置は、第1の物質相を有する第1の素材部分にエネルギーを選択的に印加し、第2の物質相を有する第2の素材部分に印加されるエネルギーを選択的に制限するようにRFエネルギーの印加を調整するように構成することができる。例えば、処理装置は、固体相を含む素材領域にエネルギーを選択的に印加するように構成することができ、液体相を含む別の素材領域内へのエネルギーの印加を選択的に制限することができる。したがって、第1の素材部分(例えば固体を含む領域)に供給されるエネルギーの量は、第2の素材部分(例えば液体を含む領域)に印加されるエネルギーの量とは異なることがある。例えばこの様式の選択的なエネルギー印加では、氷を含まない素材領域へのエネルギー印加を選択的に制限することができると同時に、氷を溶解することができる。
【0228】
エネルギー移動の調整は、例えば前述したように負荷からのフィードバックに基づいて行うことができ、その後、所望の結果を実現するために異なるMSEに関して送達されるパワー(例えば振幅、時間、またはその両方)を調節する。調整は、意図された用途に応じて異なることがある。例えば、均一なエネルギー印加が望まれる場合には、エネルギー移動の調整は、負荷の特定の部分のみにエネルギーを選択的に印加することが望まれる状況とは異なる。
【0229】
いくつかの本明細書で開示する実施形態では、処理装置は、素材によって吸収可能なエネルギーを示唆する情報(例えば、入射エネルギーレベルに対する反射エネルギーの量)を受信した後、エネルギーを負荷に送達するための複数の電磁界パターンを選択することができる。これらの電磁界パターンは、例えば、各電磁界パターンに関連付けられるエネルギー吸収特性に従って選択することができる。例えば、高い散逸比をもたらす電磁界パターンは、より高い強度の領域(例えばホットスポット)を含むことができ、これらの領域は、より低い散逸比に関連付けられる電磁界パターンに比べて、より高いエネルギー吸収率の素材または素材相との重なりがより大きい。処理装置は、これらの電磁界パターンのエネルギー吸収特性に基づいて、複数の電磁界パターンそれぞれにパワー送達プロトコルを選択的に割り当てるように構成することができる。
【0230】
複数の物質相を含む素材にエネルギーが印加される実施形態では、素材へのエネルギー移動は、第1のタイプの相から第2のタイプの相への変換をもたらすことがある。例えば、エネルギー移動は、氷を溶解させて水にすることがある。いくつかの実施形態では、処理装置は、変換が実質的に完了したときにエネルギー移動を終了するように構成することができる。これは、例えば、実質的な量の氷が負荷内にもはや存在しないことを負荷からのフィードバックが示唆するときに行うことができる。既知の撮像技法がそのようなフィードバックを提供することがある。あるいは、異なる物質相が異なる吸収(および反射)特性を示すことがあるので、フィードバックは、一般に、負荷から反射される、またはエネルギー印加区域から反射されるエネルギーの量に関係付けられることがあり、またはエネルギー吸収の任意の他の指標に関係付けられることがある。
【0231】
本明細書で開示する実施形態は、負荷にRFエネルギーを印加するための装置を含むことがあり、この装置は少なくとも1つの処理装置を含み、処理装置は、負荷に関連付けられる複数の散逸比を決定し、複数の散逸比に基づいて(上に詳述した)周波数/パワー対を設定するように構成される。また、処理装置は、エネルギーを負荷に印加するために、周波数/パワー対の適用を調整するように構成することもできる。例えば、処理装置は、第1の散逸比が第2の散逸比よりも高いときに、第1の散逸比に関連付けられる周波数が第2の散逸比に関連付けられる第2の周波数よりも低いパワーレベルを割り当てられるように、周波数/パワー対を設定するように構成することができる。別の実施形態では、処理装置は、少なくとも0.7の散逸比を有する周波数での負荷へのエネルギー移動の速度が、0.4未満の散逸比を有する周波数での負荷へのエネルギー移動の速度の50%以下であるように、周波数/パワー対を設定するように構成することができる。
【0232】
多品目の食品の加熱実験の例
いくつかの食品および食品タイプの散逸特性が、様々な条件および周波数で知られている。例えば、Bengtsson, N.E. & Risman, P.O. 1971. “Dielectric properties of food at 3 GHz as determined by a cavity perturbation technique. II. Measurements on food materials.” J. Microwave Power 6: 107−123を参照されたい。そのような知られている値(食品または任意の他の負荷に関する)、またはプレート(または負荷)の組合せに関して異なる周波数での散逸比を推定または測定するための様々な技法の使用を任意選択で使用して、例えば異なる負荷の相対的な加熱を制御することを狙いとした以下の例で示されるように異なる物体(例えば食材)に対して違う条件で加熱を行う。
【0233】
どちらの加熱プロセスも、実質的に国際公開第07/096878号パンフレット(’878号)の一実施形態に従って構成および動作された、800〜1000MHzでの作業帯域を有する900ワットのデバイスを使用して行った。
【0234】
炊いたライスと生の鶏もも肉を、従来の家庭用プレート上に一緒に置いて、以下のプロトコルの1つに従って加熱した。
【0235】
プロトコル1:加熱は、比較的高い散逸比を有する周波数に限定されるが、実質的に均一なエネルギー移動がすべての伝送周波数で行われる。この特定のプロトコルでは、ep(f)が散逸比と正規相関しているので、最大のep(f)を有する周波数の30%で、均質な量のエネルギー(またはパワー)の伝送が行われた。さらに、伝送は、前記30%の周波数のうち、最小ep(f)の少なくとも80%を有するすべての周波数で行われた。また、本明細書で説明する他のプロトコルでは、各部分に対応するセットへの周波数の分離は、しきい値ではなくパーセンテージに従うことがあることに留意すべきである。
【0236】
プロトコル2:最大の伝送は、約30%以下の正規化された散逸比(dr’)を有する周波数で行われ、80%以上の正規化された散逸比を有する周波数では伝送が行われず、それらの間ではほぼ線形の関係がある。使用される正確な関数を示すグラフを、図9として本明細書と共に添付する。
【0237】
温度を、加熱前(T)、および加熱後(T;ΔT=T−T)に測定した。鶏肉のいくつかの箇所をプローブした。加熱後、いくらかの温度のばらつきが観察された。ライスでは、温度は、プローブしたどの箇所でも同じだった。これらの結果を以下の表に要約する。
【0238】
上記の表で見られるように、プロトコル1では、ライスよりもはるかに高い度合いで鶏肉が加熱され、一方、プロトコル2では、2つの食品間で加熱はより均一であり、ライスが鶏肉よりもわずかに強く加熱された。同様の結果が、繰返し実験で得られた。状況(例えばユーザ嗜好)に応じて、いずれかの結果が望ましいことがあることに留意すべきである。
【0239】
図10は、上記のプロトコル2に関して示した加熱実験において、異なる周波数で、ライスと鶏肉のプレートに関してデバイス空洞内で測定された正規化された散逸比を示す図である。加熱が進むにつれて、および加熱中に負荷の位置および/または場所が変化するにつれて、測定される散逸比が変化することがある。それにも関わらず、第一近似は、より高い散逸比の周波数に関しては、エネルギーのほとんどが、高い散逸比の負荷部分で散逸し(この例では鶏肉)、より低い散逸比の周波数に関しては、エネルギーのほとんどが、低い散逸比の負荷部分で散逸する(この例ではライス)というものである。
【0240】
したがって、プロトコル1を使用したとき、加熱は、主に高い散逸比の周波数で生じ、それにより主に鶏肉が加熱された。プロトコル2を使用したとき、加熱は、主に低い散逸比の周波数で生じ(しかし、中間の散逸比の周波数においても異なる量で生じ)、それにより、鶏肉よりもわずかに強くライスが加熱された。
【0241】
例示的な変形形態
本発明の1つの例示的実施形態では、上記の方法を使用して、ある温度に達するのを回避することができるだけでなく、追加として、または別法として、温度窓内の時間を最小限にすることができる。例えば、ある温度では、その温度が維持された場合に、細菌の増殖または食品の劣化が進むことがある。例えば、上記の方法を使用して、すべての負荷が、温度窓の下限に達しはしないがそこに近付き、次いで温度窓の上限を通るまで比較的急速な加熱が適用されることを保証することができる。
【0242】
上記の方法は、完全な照射プロファイルを決定する方法として説明してきたが、その他の形で使用することもできる。例えば、上記のhplの計算は、例えば暴走加熱を防止するための安全な尺度として、他の照射プロファイルが選択された後に適用される制限として使用することができる。別の例では、水の沸騰を防止するためにパワーが伝送されないように周波数帯域を選択することができ、この選択された周波数帯域は、周波数/パワーセットの通常指定される方法に適用される。
【0243】
任意選択で、一部分が目標の熱に達した後、および/または解凍された後、エネルギー供給は停止されず(またはいくつかの場合にはlplに設定され)、その部分が再結晶化しないこと、および/または所望の温度に留まることを保証するように選択される。理解することができるように、その部分が解凍されたことが分かると、物理的な考察から、またはルックアップテーブルを使用して、その部分に対する所望の温度効果を有するパワーレベルを計算することができる。
【実施例】
【0244】
以下の非限定的な例は、本発明のいくつかの例示的実施形態の適用を示し、必ずしも限定とみなすべきではない。以下の実験では、(以下に詳述するように)一度に1つの冷凍物体を、解氷のために、円筒形の空洞内に3つの入力アンテナを有する0.9kWで動作するオーブンの空洞内に置き、スペクトル情報を取得した。
【0245】
図6は、冷凍された(−20℃)790gの牛サーロインの切り身で得られたスペクトル情報(破線)と、冷凍された(−20℃)790gのマグロのサクで得られたスペクトル情報(実線)とを示すグラフである。また、スペクトル情報から計算された平均散逸も示され(一点鎖線)、約0.5で現れる肉と、約0.17で現れる魚とに関する平均散逸である。点線は、hplに関する許容される最大および最小値を示す(これは典型的には、負荷ではなく、デバイスに応じたものである)。散逸比が氷、水、または氷/水を示す位置のいくつかの例がマークされている。
【0246】
図7は、冷凍された(−20℃)1250グラムの鶏肉で得られたスペクトル情報(破線)と、冷凍された(−20℃)450グラムの鶏肉で得られたスペクトル情報(実線)とを示す。また、スペクトル情報から計算された平均分散も示され(一点鎖線)、約0.55で現れる大きい方の鶏肉と、約0.29で現れる小さい方の鶏肉に関する平均散逸である。
【0247】
グラフで見られるように、各周波数での散逸、および平均の散逸は、とりわけ、負荷の組成(例えば、異なる脂肪/タンパク質/水の比率を有する肉と魚)およびそのサイズ(より大きな鶏肉は、より多くの液体水分を含み、比較的低い吸収率の周波数でRFエネルギーを吸収する)によって影響を及ぼされる。
【0248】
概要
以下は、本明細書で説明する方法および装置と共に使用することができるRFオーブンおよび方法を説明する出願および出願公開のリストである。
【0249】
上記の説明では、異なる周波数を、それらの周波数で伝送される異なるパワーを有するものとして説明した。そのようなパワーの相違は、以下の1つまたは複数を含めたいくつかのタイプのものであることがある。異なるピークパワー、異なるデューティサイクルおよび/または異なるレート(例えば、パワーは一定の振幅で供給されるが、異なる周波数に関するパルス間で異なるレートおよび/または遅延である)、および/または異なる効率(例えば、より大きなパワーが供給機構に反射されて戻るような構成で伝送される)。別の例では、パワーはスイープで提供され、各スイープパワーに関して、ある周波数で、その周波数で送達すべき総パワーに応じて提供される、または提供されない。別の例では、パワーは、多重周波数パルスとして提供され、各パルスが、複数の周波数でのパワーを含む。各パルスの周波数および/またはパルスでの周波数に関するパワーの振幅は、所望の平均パワーを印加するように選択することができる。
【0250】
一般に、用語「パワー」は、時間(例えばスイープ間の時間)にわたる平均として提供されるパワーを表すために使用する。
【0251】
特に規定しない限り、本明細書で使用するすべての技術的および/または科学的用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味合いを有する。本明細書で説明したものと同様または均等な方法および素材を本発明の実施形態の実施または試験で使用することができるが、例示的な方法および/または素材を以下に説明する。相容れない場合には、定義を含めた本特許明細書を優先する。さらに、素材、方法、および例は、例示にすぎず、必ずしも限定とは意図されていない。
【0252】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムの実装は、選択されたタスクを、手動で、自動で、またはそれらの組合せで実施または完了することを含むことができる。さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施形態の実際の設備および機器に従って、いくつかの選択されるタスクは、オペレーティングシステムを使用して、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、またはそれらの組合せによって実装することができる。
【0253】
例えば、本発明の一実施形態による選択されたタスクを行うためのハードウェアは、チップまたは回路として実装することができる。ソフトウェアとしては、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用するコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装することができる。本発明の1つの例示的実施形態では、本明細書で説明する方法および/またはシステムの例示的実施形態による1つまたは複数のタスクは、データ処理装置、例えば複数の命令を実行するための計算プラットフォームによって行われる。任意選択で、データ処理装置は、命令および/またはデータを記憶するための揮発性メモリ、および/または命令および/またはデータを記憶するための不揮発性記憶装置、例えば磁気ハードディスクおよび/またはリムーバブルメディアを含む。任意選択で、ネットワーク接続が提供されることもある。ディスプレイおよび/またはキーボードやマウスなどのユーザ入力デバイスも、任意選択で提供される。
【0254】
用語「例示的」は、本明細書では、「一例、事例、または実例としての役割を果たす」を意味するものとして使用する。「例示的」と記載された任意の実施形態は、他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されるものでは必ずしもなく、および/または他の実施形態からの特徴の組込みを除外するものでは必ずしもない。
【0255】
語「任意選択で」は、本明細書では、「いくつかの実施形態で提供され、他の実施形態では提供されない」を意味するために使用する。本発明の任意の特定の実施形態は、特徴が競合しない限り、複数の「任意選択の」特徴を含むことができる。
【0256】
本明細書で使用するとき、用語「約」は、±10を表す。
【0257】
用語「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、およびそれらの語形変化は、「含むが、限定されない」を意味する。
【0258】
用語「からなる」は「含み、限定される」を意味する。
【0259】
用語「から本質的になる」は、組成、方法、または構造が、特許請求される組成、方法、または構造の基本的な新規の特徴を実質上変えない場合にのみ追加の成分、ステップ、および/または部分を含むことがあることを意味する。
【0260】
本明細書で使用するとき、文脈上そうでないことが明らかな場合を除き、単数形は複数形を含む。例えば、用語「1つの合成物」または「少なくとも1つの合成物」は、合成物の混合物を含めた複数の合成物を含むことがある。
【0261】
本出願を通じて、本発明の様々な実施形態は、範囲の形式で提示することがある。範囲の形式での説明は、単に便宜上および簡略化のためのものにすぎず、本発明の範囲に対する融通性のない限定とみなすべきではないことを理解すべきである。したがって、ある範囲の説明は、その範囲内のすべての可能な部分範囲および個別の数値を具体的に開示しているものとみなすべきである。例えば、1〜6などの範囲の説明は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など具体的に開示される部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5、および6を含むものとみなすべきである。これは、範囲の広さに関係なく当てはまる。
【0262】
本明細書で数値範囲を示すときは常に、その示した範囲内に、任意の提示した数値(分数または整数)も含めるものと意図される。第1の提示した数値と第2の提示した数値の「間の範囲」という語句と、第1の提示した数値「から」第2の提示した数値「までの範囲」という語句は、本明細書では交換可能に使用され、第1および第2の提示した数値、ならびにそれらの間のすべての分数値および整数値を含むものと意味される。
【0263】
本明細書で使用するとき、用語「方法」は、所与のタスクを達成するための様式、手段、技法、および処置を表し、限定はしないが、化学、薬理学、生物学、生物化学、および医療分野の当業者に知られている、またはそのような当業者が既知の様式、手段、技法、および処置から容易に開発できる様式、手段、技法、および処置を含む。
【0264】
本明細書で使用するとき、「治療」は、症状の進行を排除する、実質的に妨げる、遅らせる、もしくは後退させること、症状の臨床的もしくは審美的徴候を実質的に改善すること、または症状の臨床的もしくは審美的徴候の顕出を実質的に妨げることを含む。
【0265】
分かりやすくするために個々の実施形態の文脈で説明した本発明のいくつかの特徴を、単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることを理解されたい。逆に、単純にするために単一の実施形態の文脈で説明した本発明の様々な特徴を、個別に、または任意の適切な部分的組合せで提供することもでき、または、本発明の任意の他の説明する実施形態に適したものとして提供することもできる。様々な実施形態の文脈で説明するいくつかの特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作できない場合を除き、それらの実施形態の本質的な特徴とみなすべきではない。
【0266】
本発明をその具体的な実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替形態、修正形態、または変形形態が当業者には明らかであることは明白である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および広範な範囲内にあるすべてのそのような代替形態、修正形態、および変形形態を包含するものと意図される。
【0267】
本明細書で言及したすべての刊行物、特許、および特許出願は、各刊行物、特許、または特許出願がそれぞれ参照により本明細書に具体的にかつ個別に示されて組み込まれているかのような程度まで、それらの全体を参照により本明細書に組み込む。さらに、本出願における任意の参考文献の引用または識別は、そのような参考文献を本発明に対する従来技術として利用可能であることを認めるものとは解釈されないものとする。項目の表題が使用される限りにおいて、それらは、必ずしも限定と解釈すべきではない。
【0268】
本発明の実施形態の詳細な説明を使用して本発明を説明してきたが、実施形態は、例として提示され、本発明の範囲を限定する意図のものではない。説明した実施形態は様々な特徴を含み、本発明のすべての実施形態でそれらすべてが必要とされるわけではない。本発明のいくつかの実施形態は、特徴のいくつかまたは特徴の可能な組合せのみを利用する。記載した本発明の実施形態の変形形態、および記載した実施形態で述べた特徴の異なる組合せを含む本発明の実施形態が当業者には明らかであろう。
【0269】
本発明を主に解凍の文脈で説明してきたが、本発明の方法は、場合によってはより高い周波数で、焼きおよび調理、または(キッチンに限定されない)任意の他の形の加熱のために使用することができ、これらは、よく知られているように従来の電子レンジが苦手とする分野である。一例として、チーズペストリーを加熱するとき、チーズは、油分を多く含むことがあるペストリーよりも速く加熱し、さらなる加熱を保証するために上述した方法を適用することができる。別の例は、より散逸比の高い具(例えば肉、チーズ、野菜)を挟んだサンドイッチを、サンドイッチのパンを温めて具は温めない(または具は解凍だけする)ように加熱することである。他の例は、魚とサラダを載せた皿(例えば魚/肉を温め、野菜は温めない)、あるいは肉または魚とライス/パスタとを載せた皿(上で示したように、例えば、魚よりもライスを温める、またはその逆)を含む。
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14