特許第6057361号(P6057361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 倖生工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6057361-焼物調理機 図000002
  • 特許6057361-焼物調理機 図000003
  • 特許6057361-焼物調理機 図000004
  • 特許6057361-焼物調理機 図000005
  • 特許6057361-焼物調理機 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6057361
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】焼物調理機
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/06 20060101AFI20161226BHJP
   F24C 15/24 20060101ALI20161226BHJP
   F24C 15/20 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   A47J37/06 366
   F24C15/24 B
   F24C15/24 C
   F24C15/20 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-22817(P2016-22817)
(22)【出願日】2016年2月9日
【審査請求日】2016年7月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511122514
【氏名又は名称】倖生工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148688
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 裕行
(72)【発明者】
【氏名】陶山 次郎
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−016591(JP,U)
【文献】 実開平05−010904(JP,U)
【文献】 実開昭59−165119(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0164275(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/06
F24C 15/20
F24C 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を加熱するバーナーの上方を覆うカバーと、
該カバーの内部に着脱自在に装着され食材が載せられる焼き網と、
前記カバーの上部に形成された開口と、
該開口に着脱自在に装着され食材が載せられる焼き板と、
該焼き板の下面に前記焼き網に対向して設けられ、前記バーナーで加熱されることで遠赤外線を放射する遠赤外線放射層と、
前記カバーの内面に前記焼き網に臨んで設けられ、前記バーナーの熱を反射する熱反射層とを備え、
前記焼き板が一方向に傾斜され、
前記カバーに、前記焼き板の下面における傾斜の上部に位置して排気口が形成され、
該排気口に連通して煙突が設けられた、ことを特徴とする焼物調理機。
【請求項2】
前記カバーは、左右の側部、前部、背部および上部を有し、底部が開放され上部に前記開口が形成された略ボックス状に形成され、
前記左右の側部および前部は、内部に断熱用の空気を収容する空気室が形成された中空構造である、ことを特徴とする請求項1に記載の焼物調理機。
【請求項3】
前記左右の側部の下部に、外部の空気を前記空気室に取り込むための空気取込口が形成され、
前記左右の側部の上部に、取り込んだ空気を前記空気室から排出するための空気排出口が、前記煙突に連通して形成された、ことを特徴とする請求項2に記載の焼物調理機。
【請求項4】
前記焼き板の最下部に、前記焼き板の食材を加熱することで浸出した油を下方に排出するための油排出孔が形成され、
前記左右の側部の何れか一方の空気室に、前記油排出孔から排出された油を貯留する油受槽が設けられた、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の焼物調理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの熱源で魚介類、肉類等の食材を上下二段に加熱焙焼でき、上段と下段とで焼き方を異ならせた焼物調理機に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類、肉類等の食材を加熱焙焼する焼物調理機として、食材を加熱するバーナーの上方に串刺し食材を配置し、串刺し食材の上方および側方をカバーで覆い、カバーの内面にセラミック層(遠赤外線放射層)を設けた焼き上げ調理装置が知られている(特許文献1)。この焼き上げ調理装置によれば、バーナーの火炎およびセラミック層から放射された遠赤外線によって、カバー内部の串刺し食材を短時間で内部まで均一に焼き上げることができる。
【0003】
また、食材を上下二段に加熱焙焼する焼物調理機として、バーベキューコンロを上下二段に配置し、下段のコンロに水の受け皿を設けた二段型バーベキュー用装置が知られている(特許文献2)。この二段型バーベキュー用装置によれば、上段のコンロで肉等の食材の炙り焼きすると同時に、下段のコンロで魚等の食材の蒸し焼きし、上段の食材と下段の食材の味が混ざることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−295843号公報
【特許文献2】特開2009−50668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、文献1、2に開示された焼物調理機には、以下に述べるような改善の余地が残されている。
【0006】
文献1に開示された焼き上げ調理装置においては、カバーがバーナーで熱せられているため、そのカバーを調理用食材の加熱部材として利用できる余地が残されている。また、カバーの内面全体がバーナーで熱せられるため、カバーが高温となり、調理人が意に反してカバーの外面に触れた場合、火傷の虞がある。また、カバー内の食材が焙焼されるときの煙や排気の処理が問題となる。
【0007】
文献2に開示された二段型バーベキュー用装置においては、一般的なバーベキューコンロを上下二段に配置しているため、上段コンロおよび下段コンロの夫々に加熱源が必要となる。また、バーベキュー用コンロなので、文献1のような遠赤外線放射用のセラミック層が設けられておらず、セラミック層から放射される遠赤外線を利用して食材を加熱することができない。また、屋外では問題がないが、屋内では煙や排気の処理が問題となる。
【0008】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、一つの熱源で上下二段焼きでき、下段と上段とで焼き方を異ならせ、下段の食材を覆うカバーの外面の温度が過剰に上昇することを抑制でき、下段の食材を遠赤外線および反射熱を利用して効率よく焙焼でき、下段の食材の煙や排気を適切に排気でき、上段の食材から浸出した油を適切に排除できる焼物調理機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために創案された本発明に係る焼物調理器は、食材を加熱するバーナーの上方を覆うカバーと、カバーの内部に着脱自在に装着され食材が載せられる焼き網と、カバーの上部に形成された開口と、開口に着脱自在に装着され食材が載せられる焼き板と、焼き板の下面に焼き網に対向して設けられ、バーナーで加熱されることで遠赤外線を放射する遠赤外線放射層と、カバーの内面に焼き網に臨んで設けられ、バーナーの熱を反射する熱反射層とを備え、焼き板が一方向に傾斜され、カバーに、焼き板の下面における傾斜の上部に位置して排気口が形成され、排気口に連通して煙突が設けられた、ことを特徴とする焼物調理機が提供される。
【0010】
本発明に係る焼物調理機においては、カバーは、左右の側部、前部、背部および上部を有し、底部が開放され上部に開口が形成された略ボックス状に形成され、左右の側部および前部は、内部に断熱用の空気を収容する空気室が形成された中空構造であってもよい。
【0011】
本発明に係る焼物調理機においては、左右の側部の下部に、外部の空気を空気室に取り込むための空気取込口が形成され、左右の側部の上部に、取り込んだ空気を空気室から排出するための空気排出口が、煙突に連通して形成されていてもよい。
【0012】
本発明に係る焼物調理機においては、焼き板の最下部に、焼き板の食材を加熱することで浸出した油を下方に排出するための油排出孔が形成され、左右の側部の何れか一方の空気室に、油排出孔から排出された油を貯留する油受槽が設けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る焼物調理機によれば、次のような効果を発揮できる。
(1)カバー下方に配置されたバーナーによって、カバー内部の焼き網に載せられた食材を網焼きできると同時に、カバー上部の開口に装着された焼き板に載せられた食材を鉄板焼きできる。
(2)焼き網がカバーで覆われているのでその内方に熱がこもり、焼き網の食材を効率よく加熱できる。ここで、カバー内の焼き網に載せられた食材は、カバー上部に配置された焼き板の下面に設けられた遠赤外線放射層がバーナーで加熱されて放射する遠赤外線が上方から照射され、同時にカバーの内面に設けられた熱反射層で反射されたバーナーの熱が側方から照射されることになり、バーナーとは反対側(上方、側方)からも加熱できる。
(3)カバーの内面に熱反射層を設けたので、バーナーの熱が熱反射層によって反射され、カバーの外面の温度が過剰に上昇することを抑制でき、調理人が意に反してカバーの外面に触れた場合の火傷を抑えられる。すなわち、熱反射層は、カバー内部の食材にバーナーの熱を反射して加熱する機能を発揮することに加え、カバー外面が過剰に加熱されることを抑える機能を発揮する。
(4)カバー上部に配設された焼き板を一方向に傾斜させ、カバーに焼き板の下面の傾斜の上部に位置して排気口を形成し、排気口に連通する煙突を設けたので、カバー内の焼き網の食材を焼くことで生じた煙や排気は、傾斜した焼き板の下面に沿って上昇し、排気口を通じて煙突にスムーズに排気される。
(5)焼き板が傾斜されているので、焼き板の食材から浸出した油は傾斜に沿って下降し、焼き板の食材が油切りされる。すなわち、焼き板の傾斜は、下段のカバー内の食材の煙および排気を上方に案内して煙突から排出する排気ガイド機能と、上段の焼き板の食材から浸出した油を重力によって下方に集める油切り機能とを兼用する。
(6)以上述べたように、本発明に係る焼物調理機によれば、一つの熱源で上下二段焼きでき、下段と上段とで焼き方を異ならせ、下段の食材を覆うカバーの外面の温度が過剰に上昇することを抑制でき、下段の食材を遠赤外線および反射熱を利用して効率よく焙焼でき、下段の食材の煙や排気を適切に排気でき、上段の食材から浸出した油を適切に排除できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る焼物調理機の斜視図である。
図2】上記焼物調理機のカバーに設けた扉部を開放した様子を示す斜視図である。
図3図1のIII−III線断面図(概要図)である。
図4図1のIV−IV線断面図(概要図)である。
図5図1のV−V線断面図(概要図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
(焼物調理機1の概要)
図1図3図1のIII−III線断面図)、図4図1のIV−IV線断面図)に示すように、本発明の一実施形態に係る焼物調理機1は、一つの熱源で食材を上下二段焼きするものであり、食材を加熱するバーナー2の上方を覆うカバー3と、カバー3の内部に着脱自在に装着され食材F1が載せられる焼き網4と、カバー3の上部に形成された開口Kと、開口Kに着脱自在に装着され食材F2が載せられる焼き板5とを備えている。また、この焼物調理器1は、焼き板5の下面に設けられバーナー2で加熱されることで遠赤外線を放射する遠赤外線放射層6と、カバー3の内面に設けられバーナー2の熱を反射する熱反射層7とを備えている。遠赤外線放射層6は、焼き網4に対向して配設されており、熱反射層7は、焼き網4に臨んで配設されている。更に、この焼物調理器1は、焼き板5が一方向に傾斜され、カバー3に、焼き板5の下面における傾斜の上部に位置して排気口8が形成され、排気口8に連通して煙突9が設けられている。以下、焼物調理機1の各構成要素について説明する。
【0017】
(バーナー2)
図3図4に示すように、バーナー2は、略直方体状の筐体を有するグリルユニット10の内部に設けられており、グリルユニット10の前面には、バーナー2の火力を調節するツマミ2aが設けられている。グリルユニット10の上面には、カバー3が載置され、バーナー2は、カバー3内に火炎および熱を供給する。このバーナー2によって、カバー3内部の焼き網4に載せられた食材F2が網焼きされ、同時に、カバー3上部の開口Kに装着された焼き板5に載せられた食材F1が鉄板焼きされる。バーナー2は、本実施形態では、焼物調理機1の幅方向に間隔を隔てて3列配設されているが、小型の焼物調理機では1列でもよく、中型では2列、大型では4列以上配設してもよい。
【0018】
(焼き網4)
図2に示すように、焼き網4は、本実施形態では左右に1個ずつ計2個配設されているが、1個でも3個以上配設しても構わない。焼き網4は、カバー3の内面に設けられたガイドレール11に沿って、手前側に引き出し可能となっている。カバー3の前部には、焼き網4およびそれに載せられた食材F1を取り出すための取出口12が形成されている。取出口12には、扉部材13がヒンジ14を介して開閉自在に設けられている。扉部材13の左右には、開閉時に把持されるハンドル15が取り付けられている。
【0019】
(カバー3)
図1に示すカバー3は、例えば、厚さ1.5mm程度のステンレス板を用いて組み立てられており、左右の側部3L、3R、前部3F、背部3Bおよび上部3Uを有し、底部が開放されたボックス状に構成されている。図3図4に示すように、カバー3の上部には、上述した開口Kが矩形に形成されており、開口Kには、焼き板5が着脱自在に装着されている。また、カバー3の前部3Fには、上述した取出口12が形成され、取出口12には、扉部材13が開閉自在に設けられている。
【0020】
(熱反射層7)
図2図3図4に示すように、カバー3の側部3L、3R、前部3F、背部3Bおよび上部3Uの内面には、バーナー2の熱を反射する熱反射層7が、焼き網4に臨んで設けられている。熱反射層7は、熱の反射効率を高めるため、表面が銀色、金色または白色であってもよい。熱反射層7として、本実施形態では、ガルバリウム鋼板が用いられている。ガルバリウム鋼板7(熱反射層)は、経年使用に伴ってバーナー2の熱により劣化や損傷した場合に交換できるように、カバー3の内面に着脱可能に取り付けられている。具体的には、カバー3の内面に取り付けられたピン(図示せず)に、ガルバリウム鋼板7(熱反射層)に形成されたピン孔(図示せず)を挿抜可能に差し込み、交換可能となっている。
【0021】
(排気口8)
図3図4に示すように、カバー3の背部3Bおよびそこに装着された熱反射層7(ガルバリウム鋼板)には、焼き板5の下面における傾斜の上部に位置して、複数の排気口8が千鳥配置で形成されている。これら排気口8は、カバー3の背面に配置された煙突9に連通している。図1に示すように、煙突9は、細長い断面矩形の四角筒体からなり、その前面の下部がカバー3の背面に接触するように、グリルユニット10の上面に載置されている。図4に示すように、煙突9の前面の下部には、カバー3の排気口8と繋がる切欠部9aが形成されている。煙突9の底面の開口は、グリルユニット10の上面で塞がれる。
【0022】
(空気室16)
図3図4図5に示すように、カバー3の左右の側部3L、3Rおよび前部3Fは、内部に断熱用の空気を収容する空気室16が形成された中空構造となっている。図1図5に示すように、カバー3の左右の側部3L、3Rの前面および側面の下部には、外部の空気を空気室16に取り込むための空気取込口17が複数形成されている。図3図5に示すように、側部3L、3Rの背面の上部には、取り込んだ空気を空気室16から煙突に排出するための空気排出口18が複数形成されており、空気排出口18は、既述の切欠部9a(図4参照)を介して煙突9と連通している。
【0023】
(焼き板5)
図3図4に示すように、カバー3の上部3Uに矩形に形成された開口Kには、焼き板5が着脱自在に装着されている。焼き板5は、カバーより厚い例えば8〜10mm程度の鉄板から構成されている。図4に示すように、焼き板5の食材載置面は、手前側が低くなるように一方向に傾斜されており、かかる焼き板5の下面における傾斜の上部となるカバー3の奧側に、既述の排気口8が配設されている。すなわち、焼き板5は一方向に傾斜されており、カバー3には、焼き板5の下面における傾斜の上部に位置して排気口8が形成され、排気口8に連通して煙突9が設けられている。
【0024】
(遠赤外線放射層6)
図3図4に示すように、焼き板5の下面には、バーナー2で加熱されることで遠赤外線を放射する遠赤外線放射層6が、焼き網4に対向するように設けられている。遠赤外線放射層6としては、本実施形態では、セラミック層が用いられている。このセラミック層6は、バーナー2で加熱されることで、遠赤外線(波長2.5〜1000μm、ピーク波長3〜5μm)を放射する。このように、焼き板5の下面に遠赤外線放射層6(セラミック層)が設けられ、カバー3の内面に反射層7(ガルバリウム鋼板)が設けられているので、カバー3内の焼き網4に載せられた食材F1は、バーナー2から熱が供給される下方を除き、遠赤外線放射層6および反射層7で囲われることになる。
【0025】
(油排出孔19)
図4に示すように、焼き板5は、手前側が低くなるように傾斜されていると共に、図3に示すように、その手前側が僅かに右方に低くなるように傾斜されている。焼き板5の最下部(手前側の右端部)には、焼き板5の食材F2を加熱することで浸出した油Lを下方に排出するための油排出孔19が形成されている。図3図5に示すように、右方の側部3Rの空気室16には、油排出孔19から排出された油Lを貯留する油受槽20が設けられている。油受槽20は、底面が支持部材21で支持されており、手前に引き出すことができるようになっている。
【0026】
(油受槽20)
図1に示すように、焼き板5は、カバー3の上部3Uに、右方に片寄って配設されており、図3に示すように、焼き板5の油排出孔19は、カバー3の右方の側部3Rの空気室16内に収容された油受槽20の上方に配置されている。このため、油排出孔19から滴下した油Lは、樋などを用いることなく、直接、油受槽20で受けることができ、樋などの清掃メンテナンスが不要となる。なお、本実施形態とは逆に、焼き板5の左右の傾斜を逆にして最下部を手前側の左端部とし、左方の側部3Lの空気室16に油受槽20を配設してもよい。
【0027】
(作用・効果)
図3図4に示すように、本実施形態に係る焼物調理機1によれば、カバー3下方に配置されたバーナー2によって、カバー3内部の焼き網4に載せられた食材F1を網焼きできると同時に、カバー3上部の開口Kに装着された焼き板5に載せられた食材F2を鉄板焼きできる。
【0028】
焼き網4がカバー3で覆われているのでその内方に熱がこもり、焼き網4の食材F2を効率よく加熱できる。ここで、カバー3内の焼き網4に載せられた食材F1は、カバー3上部に配置された焼き板5の下面に設けられた遠赤外線放射層6(セラミック層)がバーナー2で加熱されて放射する遠赤外線が上方から照射され、同時にカバー3の内面に設けられた熱反射層4(ガルバリウム鋼板)で反射されたバーナー2の熱が側方から照射されることになり、バーナー2とは反対側(上方、側方)からも加熱できる。すなわち、焼き網4の食材F1は、下方からバーナー2の火炎で加熱され、側方からバーナー2の反射熱で加熱され、上方からセラミック層6の遠赤外線で加熱されるので、効率よく短時間で加熱焙焼できる。
【0029】
カバー3の内面に設けた熱反射層7(ガルバリウム鋼板)によって、バーナー2の熱がカバー3の内方に反射されるため、カバー3の外面の温度が過剰に上昇することを抑制できる。よって、調理人が意に反してカバー3の外面に触れた場合の火傷を抑えられる。すなわち、熱反射層7(ガルバリウム鋼板)は、カバー3内部の食材F1にバーナー2の熱を反射して加熱する機能を発揮することに加え、カバー3外面が過剰に加熱されることを抑える機能を発揮する。
【0030】
図4に示すように、カバー3上部に配設された焼き板5を一方向に傾斜させ、カバー3に焼き板5の下面における傾斜の上部に位置して排気口8を形成し、排気口8に連通する煙突9を設けたので、カバー3内の焼き網4の食材F1を焼くことで生じた煙や排気は、矢印Xで示すように傾斜した焼き板5の下面に沿って上昇し、排気口8を通じて煙突9にスムーズに排気される。よって、バーナー2の燃焼状態を良好に維持でき、煙突9の出口を屋外に引き出すことで調理人が排気ガス中毒(一酸化炭素中毒)になることを防止できる。
【0031】
焼き板5が傾斜されているので、焼き板5の食材F2から浸出した油Lは傾斜に沿って下降し、焼き板5の食材F2が油切りされる。すなわち、焼き板5の傾斜は、カバー3内の下段の食材F1の煙および排気(加熱されており常温の空気よりも比重が小さい)を上方に案内して排気口8を通じて煙突9に排出する排気ガイド機能と、上段の焼き板5の食材F2から浸出した油を重力の作用によって下方に集める油切り機能とを兼用する。
【0032】
以上述べたように、この焼物調理機1によれば、一つの熱源(バーナー2)で食材F1、F2上下二段焼きでき、下段と上段とで焼き方を異ならせ、下段の食材F1を覆うカバー3の外面の温度が過剰に上昇することを抑制でき、下段の食材F1を遠赤外線および反射熱を利用して効率よく焙焼でき、下段の食材F1の煙や排気を適切に排気でき、上段の食材F2から浸出した油Lを適切に排除できる。
【0033】
また、図3に示すように、カバー3の側部3R、3Lは、内部に断熱用の空気を収容する空気室16が形成された中空構造となっており、図4に示すように、カバー3の前部3Fは、内部に断熱用の空気を収容する空気室16が形成された中空構造となっている。これら空気室16内の空気の断熱作用によって、カバー3の外面の温度が過剰に高まることを防止できる。すなわち、カバー3の側部3R、3Lおよび前部3Fは、調理人が誤って触れ易い部分であるが、それらの内面に貼られた上述の熱反射層7(ガルバリウム鋼板)による熱反射作用と、空気室16内の空気の断熱作用との相乗作用によって、カバー3の外面の温度が過剰に高まることを防止でき、火傷を抑制できる。
【0034】
加えて、本実施形態では、図5に示すように、カバー3の左右の側部3R、3Lの下部に、外部の空気を空気室16に取り込むための空気取込口17が形成され、左右の側部3R、3Lの上部に、取り込んだ空気を空気室16から排出するための空気排出口18が煙突9に連通して形成されている。このため、空気室16内の空気は、煙突9内を上昇する上昇気流(図4の焼き網4の食材F1の煙および排気ガスによる上昇気流)に引かれて空気排出口18から煙突9に排出され、その排出に応じてカバー3外の空気が空気取込口17から空気室16に引き込まれる。
【0035】
すなわち、図5に矢印Yで示すように、カバー3の左右の側部3R、3Lにおいては、カバー3外の空気が空気取込口17から内部の空気室16に取り込まれ、空気室16の空気が空気排出口18から煙突9に排出されるので、空気室16の空気は、常にカバー3外の比較的温度の低い空気と入れ替えられることになり、その冷却作用によっても、カバー3の外面の温度上昇を抑えることができる。この結果、カバー3の側部3R、3Lは、その内面に貼られた熱反射層7(ガルバリウム鋼板)による熱反射作用と、空気室16内の空気の断熱作用と、空気室16の空気入れ替えによる冷却作用とが相俟って、外面の温度が過剰に高まることを的確に防止でき、火傷を抑制できる。
【0036】
図3図5に示すように、焼き板5の最下部に、焼き板5の食材F2を加熱することで浸出した油Lを下方に排出するための油排出孔19が形成され、カバー3の側部3Rの空気室16に、油排出孔19から滴下した油Lを受けて貯留する油受槽20が設けられている。よって、長時間(例えば飲食店の営業時間の始めから終わり)に亘って焼き板5に載せられた食材F2を鉄板焼きした場合であっても、焼き板5に食材F2の油Lが貯まることはなく、食材F2を油まみれにさせず適切に鉄板焼きできる。油受槽20の油は、営業時間後などに油受槽20を手前に引き出して廃棄できる。
【0037】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、一つの熱源で魚介類、肉類等の食材を上下二段に加熱焙焼でき、上段と下段とで焼き方を異ならせた焼物調理機に利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 焼物調理機
2 バーナー
3 カバー
3R カバー側部(右側)
3L カバー側部(左側)
3F カバー前部
3B カバー背部
3U カバー上部
4 焼き網
5 焼き板
6 遠赤外線放射層
7 熱反射層
8 排気口
9 煙突
16 空気室
17 空気取込口
18 空気排出口
19 油排出孔
20 油受槽
K 開口
F1 食材
F2 食材
【要約】
【課題】一つの熱源で上下二段焼きでき、下段と上段とで焼き方を異ならせ、下段の食材を覆うカバーの外面の温度が過剰に上昇することを抑制でき、下段の食材を遠赤外線および反射熱を利用して効率よく焙焼でき、下段の食材の煙や排気を適切に排気でき、上段の食材から浸出した油を適切に排除できる焼物調理機を提供する。
【解決手段】バーナー2の上方を覆うカバー3と、カバー3の内部に配置された焼き網4と、カバー3の上部の開口Kに装着された焼き板5と、焼き板5の下面に焼き板5に対向して設けられ加熱されることで遠赤外線を放射する遠赤外線放射層6と、カバー3の内面に焼き網4に臨んで設けられバーナー2の熱を反射する熱反射層7とを備え、焼き板5が一方向に傾斜され、カバー3に、焼き板5の下面における傾斜の上部に位置して排気口8が形成され、排気口8に連通して煙突9が設けられている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5