特許第6057387号(P6057387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クライン メディカル リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6057387-分光分析器 図000020
  • 特許6057387-分光分析器 図000021
  • 特許6057387-分光分析器 図000022
  • 特許6057387-分光分析器 図000023
  • 特許6057387-分光分析器 図000024
  • 特許6057387-分光分析器 図000025
  • 特許6057387-分光分析器 図000026
  • 特許6057387-分光分析器 図000027
  • 特許6057387-分光分析器 図000028
  • 特許6057387-分光分析器 図000029
  • 特許6057387-分光分析器 図000030
  • 特許6057387-分光分析器 図000031
  • 特許6057387-分光分析器 図000032
  • 特許6057387-分光分析器 図000033
  • 特許6057387-分光分析器 図000034
  • 特許6057387-分光分析器 図000035
  • 特許6057387-分光分析器 図000036
  • 特許6057387-分光分析器 図000037
  • 特許6057387-分光分析器 図000038
  • 特許6057387-分光分析器 図000039
  • 特許6057387-分光分析器 図000040
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057387
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】分光分析器
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3577 20140101AFI20161226BHJP
   G01N 21/359 20140101ALI20161226BHJP
【FI】
   G01N21/3577
   G01N21/359
【請求項の数】21
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-503621(P2014-503621)
(86)(22)【出願日】2012年4月10日
(65)【公表番号】特表2014-510291(P2014-510291A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】NZ2012000052
(87)【国際公開番号】WO2012138236
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年4月8日
(31)【優先権主張番号】61/472,290
(32)【優先日】2011年4月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513252666
【氏名又は名称】クライン メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】スミス ブライアン ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】クローズ ドナル ポール
(72)【発明者】
【氏名】シンプキン レイモンド アンドリュー
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−175514(JP,A)
【文献】 特表2009−527333(JP,A)
【文献】 特表2007−512041(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/093001(WO,A1)
【文献】 特開2008−157809(JP,A)
【文献】 特表2003−508745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/3577
G01N 21/359
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体ベースの薬物試料を同定又は検証するための分析器であって、
試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる波長を含む電磁波を放出するための電磁波源と、
前記試料により影響を受けた前記放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出し検出された影響を受けた電磁波を表す出力を与える試料検出器と、
前記検出された影響を受けた電磁波を表す前記検出器出力から前記試料を同定又は検証するために基準薬物のデータベースに問い合わせるように構成されたプロセッサと、を備え
各波長、又は前記波長の少なくとも2つが、実質的に1300nmと2000nmの間にあり、各波長、又は前記波長の少なくとも2つが、実質的に1300nmと2000nmの間の液体スペクトル内のスペクトル特性特徴の近傍の波長又はこれを跨ぐ領域内にあり
スペクトル特性特徴の近傍またはスペクトル特性特徴を跨ぐ領域における各周波数での前記液体スペクトルと液体ベース薬物スペクトルの間の各波長での差を利用して、基準薬物から薬物を区別し、前記液体ベースの薬物を同定または検証する薬物同定または薬物検証ができるようにしている、
ことを特徴とする分析器。
【請求項2】
前記電磁波は、各ビームが異なる波長を有する複数の電磁波ビームを含む、
請求項1に記載の分析器。
【請求項3】
前記異なる波長は、1300nmと2000nmの間の前記液体スペクトル内の前記スペクトル特性の複数の少なくとも一部を跨ぐか又はこれらを捕捉する、
請求項1または2に記載の分析器
【請求項4】
前記液体スペクトルは、2つ又はそれよりも多くのスペクトル特性を含み、
各スペクトル特性が、前記液体スペクトルの領域に入るか又はそれを跨ぎ、
各波長が、前記領域の1つに入る、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の分析器。
【請求項5】
前記スペクトル特性は、前記液体スペクトルのピーク、谷、変曲点、安定点又は領域プラトー、屈曲部、及び/又は勾配を含む、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の分析器。
【請求項6】
前記液体は、水であり、かつ水スペクトルの以下の領域:
1300nmと1400nmの間の第1領域、
1400nmと1500nmの間の第2領域、
1500nmと1600nmの間の第3領域、
1600nmと1700nmの間の第4領域、
1700nmと1800nmの間の第5領域、及び
1800nmと2000nmの間の第6領域、
に入るスペクトル特性を含む、
請求項4または5に記載の分析器。
【請求項7】
前記試料に放出された前記電磁波ビームを変調し、変調された前記試料検出器により検出された検出された影響を受けた電磁波をもたらすための変調器を更に含み、
前記検出器からの前記出力から前記試料を同定又は検証する部分としての前記プロセッサは、前記検出された影響を受けた変調電磁波を表す該出力から暗電流成分を除去する、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の分析器。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記暗電流成分を除去するために、前記検出された影響を受けた変調電磁波を表す前記出力に正弦及び余弦関数を掛けて変調振動の周期にわたって積分することによって該暗電流成分を除去する、
請求項7に記載の分析器。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記変調されて検出された影響を受けた電磁波を表す前記出力にフーリエ変換を行い、かつ該変換されたものから前記暗電流成分を除去することによって該暗電流成分を除去する、
請求項7に記載の分析器。
【請求項10】
前記電磁波源は、光検出器を含むレーザであり、
前記光検出器は、前記レーザからの電磁波を検出し、かつ基準情報を出力する、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の分析器。
【請求項11】
液体ベースの薬物試料を同定又は検証する方法であって、
試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる波長を含む電磁波を放出する段階と、
前記試料により影響を受けた前記放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出し、かつ該検出された影響を受けた電磁波を表す出力を与える段階と、
前記検出された影響を受けた電磁波を表す前記検出器出力から前記試料を同定又は検証するために基準薬物のデータベースに問い合わせる段階と、を含み、
各波長又は該波長の少なくとも2つが、実質的に1300nmと2000nmの間にあり、各波長又は該波長の少なくとも2つが、実質的に1300nmと2000nmの間の液体スペクトルのスペクトル特性特徴の波長の近傍又はこれを跨ぐ領域内にあり
スペクトル特性特徴の近傍またはスペクトル特性特徴を跨ぐ領域における各周波数での前記液体スペクトルと液体ベース薬物スペクトルの間の各波長での差を利用して、基準薬物から薬物を区別し、前記液体ベースの薬物を同定または検証する薬物同定または薬物検証ができるようにしている、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記電磁波は、各ビームが異なる波長を有する複数の電磁波ビームを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記異なる波長は、1300nmと2000nmの間の前記液体スペクトル内の前記スペクトル特性の複数の少なくとも一部を跨ぐか又はこれらを捕捉する、
請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記液体スペクトルは、2つ又はそれよりも多くのスペクトル特性を含み、
各スペクトル特性が、前記液体スペクトルの領域に入るか又はそれを跨ぎ、
各波長が、前記領域の1つに入る、
請求項11ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記スペクトル特性は、前記液体スペクトルのピーク、谷、変曲点、安定点又は領域、プラトー、屈曲部、及び/又は勾配を含む、
請求項11ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記液体は、水であり、かつ水スペクトルの以下の領域:
1300nmと1400nmの間の第1領域、
1400nmと1500nmの間の第2領域、
1500nmと1600nmの間の第3領域、
1600nmと1700nmの間の第4領域、
1700nmと1800nmの間の第5領域、及び
1800nmと2000nmの間の第6領域、
に入るスペクトル特性を含む、
請求項11ないし15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
各レーザが、光検出器を含み、
前記光検出器は、前記レーザからの電磁波を検出し、かつ基準情報を出力する、
請求項11ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
液体担体内の薬物試料又は他の物質を同定又は検証するための分析器であって、
試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる選択された波長を含む電磁波を放出するための電磁波源と、
前記試料により影響を受けた前記放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出する試料検出器と、
前記検出された影響を受けた電磁波から前記試料を同定又は検証するためのプロセッサと、を含み、
各波長が、前記液体担体のスペクトル内のスペクトル特性の(又はこれを跨ぐ領域内の)波長の近くにあるように選択され、各波長が、該液体担体に適する分析範囲に入る、
ことを特徴とする分析器。
【請求項19】
液体担体内の薬物試料又は他の物質を同定又は検証する方法であって、
試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる選択された波長を含む電磁波を放出する段階と、
前記試料により影響を受けた前記放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出する段階と、
前記検出された影響を受けた電磁波から前記試料を同定又は検証するために基準薬物のデータベースに問い合わせる段階と、を含み、
各波長が、前記液体担体のスペクトル内のスペクトル特性の波長の近傍又はこれを跨ぐ領域内にあるように選択され、各波長が、該液体担体に適する分析範囲に入る、
スペクトル特性特徴の近傍またはスペクトル特性特徴を跨ぐ領域における各周波数での前記液体スペクトルと液体ベース薬物スペクトルの間の各波長での差を利用して、基準薬物から薬物を区別し、前記液体ベースの薬物を同定または検証する薬物同定または薬物検証ができるようにしている、
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記電磁波源は、各レーザが固定の又は調節可能な波長で電磁波ビームを放出するように構成された単一パッケージ内の複数のレーザである、
請求項1、請求項11、請求項18、又は請求項19に記載の分析器。
【請求項21】
前記試料検出器および/又は電磁波源とが、閉鎖システムにおいてサーミスタおよびペルチェ素子を使用し温度安定性を提供するように温度補償されている、
請求項1、請求項11、請求項18、又は請求項19に記載の分析器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物、血液、又は他の物質を検証及び/又は同定又はそうでなければ分析するための分光光度計のような分光分析器に関する。
【背景技術】
【0002】
分光法は、例えば、分光光度計のような分光分析器を使用して、物質を分析するために用いることができる。例えば、試料に向けて入射電磁波を誘導し、かつ影響を受けた電磁波のスペクトルの性質を分析することにより、試料の性質の表示を得ることが可能である。
【0003】
しかし、このような分析器は、分析が不正確であることが多い。異なる物質間で正確に区別することは困難である可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、分光法を使用して薬物又は他の物質を検証又は同定又はそうでなければ特徴付けるための分析器及び/又はその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様において、本発明は、試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる波長を含む電磁波を放出する電磁波源と、試料により影響を受けた放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出し、かつ検出された影響を受けた電磁波を表す出力を与える試料検出器と、検出された影響を受けた電磁波を表す検出器出力から試料を同定又は検証するためのプロセッサとを含む液体ベースの薬物試料を同定又は検証するための分析器にあるということができ、各波長又は波長の少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間であり、各波長又は波長の少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間の液体スペクトル内のスペクトル特性の(又はこれを跨ぐ領域内の)波長の近くにある。
【0006】
好ましくは、電磁波は、異なる波長を各ビームが有する複数の電磁波ビームを含む。
【0007】
好ましくは、薬物試料を検証又は同定することは、1組のn個の薬物の1つに対する比較データに照らすことであり、電磁波は、1つ又はそれよりも多くのビームに少なくともlog2n個の異なる波長を含む。
【0008】
好ましくは、異なる波長は、1300nmと2000nmの間の液体スペクトル内のスペクトル特性の複数の少なくとも一部を跨ぐか又はこれらを捕捉する。
【0009】
好ましくは、液体スペクトルは、2つ又はそれよりも多くのスペクトル特性を含み、各スペクトル特性は、液体スペクトルの領域に入るか又はそれを跨ぎ、各波長は、領域の1つに入る。
【0010】
好ましくは、各領域は、波長範囲により定められる。
【0011】
好ましくは、スペクトル特性は、液体スペクトルのピーク、谷、変曲点、安定点又は領域、プラトー、屈曲部、及び/又は勾配を含む。
【0012】
好ましくは、液体は、水であり、かつ水スペクトルの以下の領域、すなわち、1300nmと1400nmの間の第1領域、1400nmと1500nmの間の第2領域、1500nmと1600nmの間の第3領域、1600nmと1700nmの間の第4領域、1700nmと1800nmの間の第5領域、及び1800nmと200nmの間の第6領域に入るスペクトル特性を含む。
【0013】
好ましくは、電磁波は、液体スペクトル内の安定領域の(又はこれを跨ぐ領域内の)波長の近くにアンカー波長を有する。
【0014】
好ましくは、各波長は、容易に/廉価に取得可能である電磁波源によって生成される波長に更に対応する。
【0015】
好ましくは、その電磁波源は、各レーザが固定の又は調節可能な波長で電磁波ビームを放出するように構成された複数のレーザである。
【0016】
好ましくは、試料に放出された電磁波ビームを変調し、変調された試料検出器により検出される検出された影響を受けた電磁波をもたらす変調器を含み、検出器からの出力から試料を同定又は検証する部分としてのプロセッサは、検出された影響を受けた変調電磁波を表す出力から暗電流成分を除去する。
【0017】
任意的に、プロセッサは、暗電流成分を除去するために、検出された影響を受けた変調電磁波を表す出力に正弦及び余弦関数を掛けて変調振動の周期にわたって積分することによって暗電流成分を除去する。
【0018】
任意的に、プロセッサは、変調されて検出された影響を受けた電磁波を表す出力にフーリエ変換を行い、変換されたものから暗電流成分を除去することによって暗電流成分を除去する。
【0019】
好ましくは、プロセッサは、基準情報を使用して薬物試料を同定又は検証する。好ましくは、アンカー波長での影響を受けた電磁波又はアンカー波長を含む電磁波ビームが基準情報を提供する。
【0020】
好ましくは、分析器は、基準試料に複数の電磁波ビームを誘導するための光学デバイスと、基準情報を取得するために基準試料により影響を受けた影響を受けた電磁波ビームを検出し、かつプロセッサに基準情報を渡す基準検出器とを更に含む。
【0021】
好ましくは、検出器及び/又は電磁波源は、好ましくは閉ループシステム内でサーミスタ及びペルチェ素子を使用して温度安定性を与えるように温度補償される。
【0022】
好ましくは、各電磁波ビームは、高強度狭帯域光ビームである。
【0023】
好ましくは、検出器は、影響を受けた電磁波の波長に対応する応答を有するようにバイアスが掛けられた広帯域フォトダイオードである。
【0024】
好ましくは、複数のレーザから放出された電磁波ビームは、試料経路内でレーザビームを位置決めするカルーセル又は搬送デバイス、又はプリズム、回折格子、ビームスプリッタ、又は試料経路に沿って電磁波ビームを向け直す他の光学デバイスの1つ又はそれよりも多くによって試料経路に誘導される。
【0025】
好ましくは、プロセッサは、薬物試料情報を提供する薬物試料から影響を受けた電磁波を表す出力及び任意的に各波長に対する基準情報を受信し、プロセッサは、薬物試料情報の代表値をその情報及び任意的に各波長に対する基準情報を使用して判断する。
【0026】
好ましくは、試料情報及び基準情報は、各電磁波ビームに対して強度及び波長を相関させる。
【0027】
好ましくは、代表値は、試料情報と任意的に基準情報との間の最良適合に対応する。
【0028】
好ましくは、各波長に関する電磁波ビームの代表値は、薬物試料を検証又は同定するために格納値と比較される。
【0029】
好ましくは、液体は、水であり、6つの電磁波ビームが存在し、波長は、実質的に1350nm、1450nm、1550nm、1650nm、1750nm、及び1850nmであり、任意的に、1450nmは、アンカー波長である。
【0030】
好ましくは、試料は、IV輸液セット又は注射器のような静脈内送出デバイス、又は試験セル、試験管、又はフローセルなどのような他のレセプタクル内にある。
【0031】
好ましくは、電磁波源は、光検出器を含むレーザであり、光検出器は、レーザからの電磁波を検出し、かつ基準情報を出力する。
【0032】
別の態様において、本発明は、試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる波長を含む電磁波を放出する段階と、試料により影響を受けた放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出し、かつ検出された影響を受けた電磁波を表す出力を与える段階と、検出された影響を受けた電磁波を表す出力から試料を同定又は検証する段階とを含む液体ベースの薬物試料を同定又は検証又はそうでなければ特徴付ける方法にあるということができ、各波長又は波長の少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にあり、各波長又は波長の少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間の液体スペクトル内のスペクトル特性の(又はこれを跨ぐ領域内の)波長の近くにある。
【0033】
好ましくは、電磁波は、各ビームが異なる波長を有する複数の電磁波ビームを含む。
【0034】
好ましくは、薬物試料を検証又は同定することは、1組のn個の薬物の1つに対する比較データに照らすことであり、電磁波は、1つ又はそれよりも多くのビームに少なくともlog2n個の異なる波長を含む。
【0035】
好ましくは、異なる波長は、1300nmと2000nmの間の液体スペクトル内のスペクトル特性の複数の少なくとも一部を跨ぐか又はこれらを捕捉する。
【0036】
好ましくは、液体スペクトルは、2つ又はそれよりも多くのスペクトル特性を含み、各スペクトル特性は、液体スペクトルの領域に入るか又はそれを跨ぎ、各波長は、領域の1つに入る。
【0037】
好ましくは、各領域は、波長範囲により定められる。
【0038】
好ましくは、スペクトル特性は、液体スペクトルのピーク、谷、変曲点、安定点又は領域、プラトー、屈曲部、及び/又は勾配を含む。
【0039】
好ましくは、液体は、水であり、かつ水スペクトルの以下の領域、すなわち、1300nmと1400nmの間の第1領域、1400nmと1500nmの間の第2領域、1500nmと1600nmの間の第3領域、1600nmと1700nmの間の第4領域、1700nmと1800nmの間の第5領域、及び1800nmと200nmの間の第6領域に入るスペクトル特性を含む。
【0040】
好ましくは、電磁波は、液体スペクトル内の安定領域の(又はこれを跨ぐ領域内の)波長の近くにアンカー波長を有する。
【0041】
好ましくは、各波長は、容易に/廉価に取得可能である電磁波源によって生成される波長に更に対応する。
【0042】
好ましくは、電磁波は、各レーザが固定の又は調節可能な波長で電磁波ビームを放出するように構成された複数のレーザを含む電磁波源を使用して発生される。
【0043】
好ましくは、試料に放出された電磁波ビームを変調し、変調されて検出された影響を受けた電磁波をもたらすための変調器が使用され、出力からの試料を同定又は検証する段階は、検出された影響を受けた変調電磁波を表す出力から暗電流成分を除去する段階を含む。
【0044】
任意的に、暗電流成分を除去する段階は、暗電流成分を除去するために、検出された影響を受けた変調電磁波を表す出力に正弦及び余弦関数を掛けて変調振動の周期にわたって積分する段階を含む。
【0045】
任意的に、暗電流成分を除去する段階は、変調されて検出された影響を受けた電磁波を表す出力にフーリエ変換を行い、変換されたものから暗電流成分を除去する段階を含む。
【0046】
好ましくは、同定又は検証する段階は、基準情報を使用して薬物試料を同定又は検証するプロセッサによって実行される。
【0047】
好ましくは、アンカー波長での影響を受けた電磁波又はアンカー波長を含む電磁波ビームが、基準情報を与える。
【0048】
好ましくは、本方法は、光学デバイスを使用して基準試料に複数の電磁波ビームを誘導する段階と、基準検出器を使用して基準試料により影響を受けた影響を受けた電磁波ビームを検出して基準情報を取得し、かつプロセッサに基準情報を渡す段階とを更に含む。
【0049】
好ましくは、本方法は、好ましくは閉ループシステム内でサーミスタ及びペルチェ素子を使用して温度安定性を与えるように検出器及び/又は電磁波源を温度補償する段階を更に含む。
【0050】
好ましくは、各電磁波ビームは、高強度狭帯域光ビームである。
【0051】
好ましくは、検出器は、影響を受けた電磁波の波長に対応する応答を有するようにバイアスが掛けられた広帯域フォトダイオードである。
【0052】
好ましくは、複数のレーザから放出された電磁波ビームは、試料経路内でレーザビームを位置決めするカルーセル又は搬送デバイス、又はプリズム、回折格子、ビームスプリッタ、又は試料経路に沿って電磁波ビームを向け直す他の光学デバイスの1つ又はそれよりも多くによって試料経路に誘導される。
【0053】
好ましくは、プロセッサは、薬物試料情報を提供する薬物試料から影響を受けた電磁波及び任意的に各波長に対する基準情報を受信し、プロセッサは、薬物試料情報及び任意的に各波長に対する基準情報の代表値を判断する。
【0054】
好ましくは、試料情報及び基準情報は、各電磁波ビームに対して強度及び波長を相関させる。
【0055】
好ましくは、代表値は、試料情報と任意的に基準情報との間の最良適合に対応する。
【0056】
好ましくは、各波長に関する電磁波ビームの代表値は、薬物試料を検証又は同定するために格納値と比較される。
【0057】
好ましくは、液体は、水であり、6つの電磁波ビームが存在し、波長は、実質的に1350nm、1450nm、1550nm、1650nm、1750nm、及び1850nmであり、1450nmは、アンカー波長である。
【0058】
好ましくは、試料は、IV輸液セット又は注射器のような静脈内送出デバイス、又は試験セル、試験管、又はフローセルなどのような他のレセプタクル内にある。
【0059】
好ましくは、各レーザは、光検出器を含み、光検出器は、レーザからの電磁波を検出し、かつ基準情報を出力する。
【0060】
別の態様において、本発明は、試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる選択された波長を含む電磁波を放出するための電磁波源と、試料により影響を受けた放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出する試料検出器と、検出された影響を受けた電磁波から試料を同定又は検証するためのプロセッサとを含む液体担体内の薬物試料(又は他の物質)を同定又は検証又はそうでなければ特徴付けるための分析器にあるということができ、各波長は、液体担体のスペクトル内のスペクトル特性の(又はこれを跨ぐ領域内の)波長の近くにあるように選択され、各波長は、液体担体に適する分析範囲に入る。
【0061】
別の態様において、本発明は、試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる選択された波長を含む電磁波を放出する段階と、試料により影響を受けた放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出する段階と、検出された影響を受けた電磁波から試料を同定又は検証する段階とを含む液体担体内の薬物試料(又は他の物質)を同定又は検証又はそうでなければ特徴付ける方法にあるということができ、各波長は、液体担体のスペクトル内のスペクトル特性の(又はこれを跨ぐ領域内の)波長の近くにあるように選択され、各波長は、液体担体に適する分析範囲に入る。
【0062】
別の態様において、本発明は、試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる波長を含む電磁波を放出するための電磁波源と、試料により影響を受けた放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出する試料検出器と、検出された影響を受けた電磁波から試料を同定又は検証するためのプロセッサとを含む液体ベースの薬物試料(又は他の物質)を同定又は検証又はそうでなければ特徴付けるための分析器にあるということができ、各波長は、液体担体内の薬物に対する同定/検証を改善する分析範囲に入り、各波長は、分析範囲の液体スペクトル内のスペクトル特性の(又はこれを跨ぐ領域内の)波長の近くにある。
【0063】
別の態様において、本発明は、試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる波長を含む電磁波を放出する段階と、試料により影響を受けた放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出する段階と、検出された影響を受けた電磁波から試料を同定又は検証する段階とを含む液体ベースの薬物試料(又は他の物質)を同定又は検証又はそうでなければ特徴付ける方法にあるということができ、各波長は、液体担体内の薬物に対する同定/検証を改善する分析範囲に入り、各波長は、分析範囲の液体スペクトル内のスペクトル特性の(又はこれを跨ぐ領域内の)波長の近くにある。
【0064】
別の態様において、本発明は、試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる波長を含む変調電磁波を放出するための電磁波源と、試料により影響を受けた放出電磁波から生じる影響を受けた変調電磁波を検出し、かつ検出された影響を受けた変調電磁波を表す出力を与える試料検出器と、出力から暗電流を除去することを含む検出された影響を受けた変調電磁波を表す出力から試料を同定又は検証するためのプロセッサとを含む液体ベースの薬物試料を同定又は検証又はそうでなければ特徴付けるための分析器であり、各波長又は波長の少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間である。
【0065】
別の態様において、本発明は、試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる波長を含む変調電磁波を放出する段階と、試料により影響を受けた放出電磁波から生じる影響を受けた変調電磁波を検出し、かつ検出された影響を受けた電磁波を表す出力を与える段階と、出力から暗電流を除去することを含む検出された影響を受けた変調電磁波を表す出力から試料を同定又は検証する段階とを含む液体ベースの薬物試料を同定又は検証又はそうでなければ特徴付ける方法であり、各波長又は波長の少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間である。
【0066】
別の態様において、本発明は、試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる波長を含む電磁波を放出し、かつ放出電磁波の電力を測定するための電磁波源と、試料により影響を受けた放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出し、かつ検出された影響を受けた電磁波を表す出力を与える試料検出器と、放出電磁波の測定電力を使用することを含む検出された影響を受けた電磁波を表す検出器出力から試料を同定又は検証するためのプロセッサとを含む液体ベースの薬物試料を同定又は検証又はそうでなければ特徴付けるための分析器であり、各波長又は波長の少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間にあり、各波長又は波長の少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間の液体スペクトル内のスペクトル特性の(又はこれを跨ぐ領域内の)波長の近くにある。
【0067】
別の態様において、本発明は、試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる波長を含む電磁波を放出し、かつ放出電磁波ビームの電力を測定する段階と、試料により影響を受けた放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出し、かつ検出された影響を受けた電磁波を表す出力を与える段階と、放出電磁波の測定電力を使用することを含む検出された影響を受けた電磁波を表す検出器出力から試料を同定又は検証する段階とを含む液体ベースの薬物試料を同定又は検証又はそうでなければ特徴付ける方法であり、各波長又は波長の少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間である。
【0068】
別の態様において、本発明は、試料に少なくとも1つのビームで少なくとも2つの異なる波長を含む電磁波を放出するための電磁波源と、試料により影響を受けた放出電磁波から生じる影響を受けた電磁波を検出する試料検出器と、検出された影響を受けた電磁波から試料を同定又は検証するためのプロセッサとを含む試料を同定又は検証又はそうでなければ特徴付けるための分析器であり、各波長又は波長の少なくとも2つは、実質的に1300nmと2000nmの間である。
【0069】
好ましくは、電磁波源は、各レーザが固定の又は調節可能な波長で電磁波ビームを放出するように構成された単一パッケージ内の複数のレーザである。
【0070】
本明細書に開示する数の範囲(例えば、1から10)への言及は、その範囲の全ての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、及び10)も、その範囲の有理数のいずれかの範囲(例えば、2から8、1.5から5.5、及び3.1から4.7)への言及も組み込まれることが意図されている。
【0071】
本明細書で使用する「を含む」という用語は、「から少なくとも部分的に構成される」を意味する。「を含む」及び「から構成される」のような関連の用語は、同様に解釈されるものとする。
【0072】
本発明はまた、大まかに言って、個々に又は集合的に本出願の本明細書で言及するか又は示す部品、要素、及び特徴、及びこの部品、要素、又は特徴のいずれか2つ又はそれよりも多くのいずれか又は全ての組合せにあるということができ、本発明が関連する当業技術で公知の均等物を有する特定の整数が本明細書で言及される場合に、このような公知の均等物は、個々に示されたかのように本明細書に組み込まれていると見なされる。
【0073】
本発明の好ましい実施形態を以下の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】本発明による分光分析器を示す概略図である。
図2】仮想的液体基体/担体の仮想的スペクトルを示す概略図である。
図3】誤差対分光分析器に使用された波長の数を示すグラフである。
図4】分光分析器の作動を示す流れ図である。
図5】水である液体ベースのスペクトルに重なり合った薬物(琥珀酸化ゲロフシンゼラチン溶液4%)のスペクトルを示す図である。
図6】1300nmと2000nmの間の水のスペクトル特性を示す図である。
図7】電磁波源が回転カルーセル上のレーザである分光分析器の第1の実施形態の概略図である。
図8】前処理及び検証/同定段階を含む検出器からの出力を処理する方法を示すである。
図9】前処理及び比較データ発生段階を含む検出器からの出力を処理する方法を示す図である。
図10】試料及び基準検出器からの出力から得られたデータ点を通る最良適合線を示す図である。
図11】トレーニング試料及び比較試料に対する前処理されたデータ点間の分離線を示す図である。
図12】電磁波源が回折格子を使用して試料経路14aに沿って誘導される6つのレーザを含む第2の実施形態を示す図である。
図13】出力がビームスプリッタを使用して試料経路に沿って誘導される6つのレーザの電磁波源を含む第3の実施形態を示す図である。
図14】出力がプリズムを使用して試料経路上へ収束される6つのレーザを含む電磁波源の第4の実施形態を示す概略図である。
図15】1組の試料薬物に対する検証を示すマトリックスを示す図である。
図16】基準チャンネルを排除するために電磁波源変調を使用する分析器を示す図である。
図17】電磁波源が変調されるレーザ出力電力を示す図である。
図18】変調器を伴う概略図である。
図19】暗電流を抽出するための流れ図である。
図20】出力が平面光波回路を使用して試料経路上へ収束される6つのレーザを含む電磁波源のための第5の実施形態を示す概略図である。
図21】単一パッケージ電磁波源とコリメータレンズとを含む電磁波源のための第6の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
概要
図1は、薬物又は他の試料(例えば、血液、生体試料のような)を検証又は同定する(すなわち、分析/特徴付ける)本発明による分光分析器10(例えば、分光光度計)の概要を示している。用語「薬物」は、臨床医に管理される9(例えば、病院、処方箋、又は薬局を通じて)か又は入手自由である患者らを治療するあらゆる製薬又は他の薬又は物質を包含すると広義に解釈されなければならない。分析器(装置)10は、作動の物理的制御の態様も処理の態様も制御するコントローラ12を含む。分析器10は、波長範囲の複数の波長を有する/複数の波長の電磁波22を生成及び放出するための電磁波源11を含む。電磁波源は、制御を目的として光検出器4又は類似物も有する場合がある。電磁波は、異なる波長での複数の電磁波ビーム又は複数の波長成分を含む単一の電磁波ビームの形態を取る可能性がある。
【0076】
電磁波出力に使用される用語「波長」は、1300nmのような特定の波長を指す。以下で認められるように、実際には、電磁波源は、純粋な単一の波長を有する電磁波出力を与えるものとはならず、出力は、中心の波長/ピークの両側に様々な成分を含む可能性がある。この場合に、用語「波長」は、電磁波出力の中心の波長/ピークを指し、電磁波出力は、中心波長の両側に波長成分を有し、例えば、両側に±30nm又は±12nm又は2、3nm(例えば、レーザに対しては2nm)さえも有する場合がある。各々のこのような波長は、たとえ他の成分が存在するとしても、実際上は個別であるので「個別の」波長と呼ぶことができる。
【0077】
例えば、電磁波ビーム22は、1つ又はそれよりも多くのレーザから放出された可視光ビームである可能性がある。1つの例では、電磁波源(「ソース」)11は、連続して又は同時に異なる波長を有する複数の電磁波ビームを生成及び放出するように構成することができ、又は複数の波長成分を有する単一の電磁波ビームを放出する単一のデバイスとすることができる。別の例では、電磁波源11は、各々が望ましい波長を有する電磁波ビーム22を生成及び放出するように構成された1組の個々の電磁波源とすることができる。「ソース」という用語は、単一のソース又はソースを構成する複数のソースを指すことができる。各々の場合に、ソース11は、固定の波長の電磁波ビームを生成することができ、又は波長の範囲の1つで電磁波ビームを放出するように調節可能とすることができる。他の例も、当業者は仮定することができると考えられる。
【0078】
電磁波源11は、対応する波長を有する各電磁波ビーム22を連続して独立して放出することができるように構成されることが好ましい。これは、波長の範囲を通して掃引する電磁波ビームを放出するように調節された単一の電磁波源を使用して達成される場合がある。代替的に、電磁波源が、各々を順に作動させることができる複数の電磁波源を含む場合に、「アクティブ」電磁波源になる各電磁波源によって達成される場合がある。アクティブ電磁波源の電磁波ビームが望ましい試料経路14aに沿って誘導されるように、電磁波源からの各電磁波ビーム出力は、回折格子、ミラー、プリズム、又は望ましい試料経路14aに沿ってその電磁波源からビームを向け直す他の光学装置13に衝突するように配置することができる。このような配置では、各電磁波ビームは、発生/作動された状態で望ましい経路に沿って連続して誘導することができる。代替的に、同時にビーム経路14aに沿って複数の電磁波ビームを誘導することができ、複数の波長成分を含む電磁波の単一のビームを提供する。代替的に、経路14aに沿って電磁波ビームを放出するように、各電磁波源を物理的に位置決めするように機械的に制御することができるカルーセル又は線形搬送器(同じく13により表される)上に電磁波源を配置することができる。これらの代案に関しては更に後述する。望ましい経路14aに沿って電磁波源11からの複数の電磁波ビームを向け直す他の配置を仮定することができると考えられる。経路14aに沿って誘導される電磁波ビームを試料電磁波ビームと呼ぶことができる。
【0079】
装置10は、試料電磁波ビームの経路14a内に試料を保持する試料/試料保持器16を含む。試料保持器16は、試験管/試験管保持具、他のタイプの試験セル、輸液ポンプ/IVセットの一部、フローセル又はこれらのいずれかを保持するか又はあらゆる方法で試料/物質を保持するあらゆる他のタイプのデバイスとすることができる。代替的に、単に試料を経路14a内に置くことができる。あらゆる試料保持器は、試料への及びこれを通る電磁波22の透過を可能にする。試料は、液体ベースの薬物であることが好ましい。液体ベースの試料は、例えば、水ベースの薬物とすることができるが、水又は他の液体担体内の別のタイプの試料/物質とすることができる。用語「試料」は、分析(例えば、検証/同定)のための物質を示すために一般的に使用され、必ずしも試験試料/より多量の物質の少ない部分に制限されるわけではない。例えば、試料は、単に投与すべきその薬物(試料)の一部ではなく、投与すべき実際の薬物とすることができる。承認前の薬物を検証/同定するために、臨床又は他の環境内で装置10を使用することができる。この場合に、装置10内に入れられる試料は、投与される実際の薬物になる。
【0080】
経路14aに沿って放出された電磁波ビームは、経路内(例えば、試料保持器内)に設けられた試料(物質)16に入射電磁輻射を提供する。試料16に到達するあらゆる入射電磁波ビーム14aは、試料による(例えば、試料を通る透過及び/又は試料による反射による)影響を受ける。試料16を出る影響を受けた(試料)電磁波14bは、影響を受けた電磁波であり、かつ試料に関するスペクトル情報を含む。例えば、影響を受けた電磁波14bは、入射電磁波の1つの波長での影響を受けた電磁波の強度に関する情報を含む。
【0081】
試料検出器17は、試料を出る影響を受けた電磁波14bを検出することができるように、影響を受けた電磁波経路14b内に設けられる。検出器17は、例えば、1つ又はそれよりも多くの光検出器を含むことができる。検出器17は、試料16のスペクトル情報を表すか又は示すデータ/信号の形態で情報14cを出力し、すなわち、出力は、検出された影響を受けた電磁波を表している。検出器17出力は、保持器内の試料を検証又は同定又はそうでなければ分析するために任意的に前処理及び検証/同定アルゴリズムを実行するためのプロセッサ18に渡される。プロセッサ18は、コントローラ12の一部を形成することができ、又はコントローラ12とは別々にすることができる。プロセッサ18は、試料を検証又は同定又はそうでなければ分析する基準/比較データを有するデータベース23を含むか、これにアクセス可能である。経路14a、14b、放出された影響を受けた電磁波及び/又は試料/試料保持具16を「試料チャンネル」と呼ぶことができる。試料検出器16及びプロセッサ18への入力(及び任意的にプロセッサ自体)は、試料チャンネルの一部を形成することができる。
【0082】
任意的に、試料16に入射する放出電磁波ビーム14aが、基準試料/物質(又は単に「基準」)19を含む別の保持器19に向けて基準経路15aに従って分割装置21又は他の方法で向け直される基準チャンネルがある場合がある。ビームスプリッタ21を使用して、これをもたらすことができる。基準物は、例えば、生理食塩水とすることができる。基準試料保持器19は、試料チャンネルに関して触れた保持器16のいずれか1つとすることができる。基準経路15aに沿った基準電磁波ビームは、基準検出器20に入射し、それによって検出される影響を受けた(基準)電磁波15bを生成するために、基準試料19に入射して基準試料19により影響を受ける。基準検出器20は、試料チャンネルと同じか又は異なる検出器とすることができる。図1では、基準検出器20は、一例として独立した検出器として示されている。
【0083】
基準検出器20は、基準のスペクトル情報15cを表す又は示すデータ/信号の形態で情報15cを出力し、すなわち、出力は、検出された影響を受けた電磁波を表している。検出器出力15cは、保持器内の試料16を検証又は同定するために前処理及び検証/同定アルゴリズムを実行するためのプロセッサ18に渡される。基準チャンネルからの検出器出力15cにより、試料チャンネルデータ14cを正規化及び/又は補正するデータを与える。基準チャンネルは、試料の前に中性フィルタを含む場合がある。それによって検出器の出力が試料チャンネル上の検出器の出力での処理/それとの比較を可能にするための適切なレベルにあるように、検出された影響を受けた電磁波を正規化するか又は他の方法で変更するように入射電磁輻射が減衰される。
【0084】
各電磁波ビーム22は、分析範囲(「分析領域」)に入る(好ましくは1300〜2000ナノメートル(nm)の)波長を有する(又は複数の波長成分を有する)。この領域は、「近赤外線」又は「NIR」と名目上いうことができる。この領域により、薬物を検証又は同定する有用なスペクトル情報を与える。各電磁波ビーム22の波長(又は電磁ビームを構成する波長)は、分析範囲に入る薬物試料の基体液体のスペクトル特性(特徴)に基づいて選択される。このような特性は、例えば、基体液体スペクトルのピーク、谷、変曲点、安定点又は領域、プラトー、屈曲部、及び/又は勾配とすることができる。選択された各波長は、このようなスペクトル特性(又はこれを跨ぐ領域内)の近くにある。特性を跨ぐ領域を定める公称波長(例えば、特性の中心の波長)又は波長の範囲によりスペクトル特性の位置を定めることができる。
【0085】
図2に示すように仮想的基体液体のスペクトルを参照して各波長の選択を示すことができる。仮想的スペクトルは、分析範囲の以下のスペクトル特性A〜Eを含む。
・1300nmと1400nmの間のピーク(実際のピークの1350nmの中心波長)(A)。
・1400nmと1500nmの間の谷(実際の谷の1450nmの中心波長)(B)。
・1500nmと1600nmの間の変曲点(実際の変曲点の1550の中心波長)(C)。
・1600nmと1800nmの間の勾配(D)。
・1800nmと2000nmの間のプラトー(E)。
・屈曲部も特性DとEの間の1800nm付近に示されている。
【0086】
この仮想的液体が基体である薬物の分析に関して、上述のスペクトル特徴A〜Eの1つ又はそれよりも多くに対して波長範囲(又は中心波長)の近くにあり、又は上述のスペクトル特徴A〜Eの1つ又はそれよりも多くに対して波長範囲を跨ぐ(定義する/区切る)領域に入る波長を選択することができる。スペクトル特性の「近傍」の波長は、スペクトル特徴の中心波長での波長を意味することができる。例えば、3つの異なる波長を以下のように選択することができる。
・波長#1 1310nm−特徴Aの領域1300〜1400nm内のもの。
・波長#2 1450nm、大まかに特徴Bの中心波長で又はその近く内のもの。
・波長#3 1800nm、特徴Eの縁部/屈曲部(すなわち、領域E内)でのもの。
【0087】
液体スペクトルのスペクトル特性に関連する選択された個別の波長を「選択された波長」又は「選ばれた波長」と呼ぶことができる。一般的に、選択された又は選ばれた波長は、スペクトル特性に「対応」又はそれを「捕捉」する。
【0088】
図2は、スペクトル特性(特徴)のいくつかの仮想的例のみを示し、更に多くがスペクトルに可能であることは認められるであろう。更に、スペクトル特性のための波長範囲は、重なるか又は更に一致する可能性もある。更に、別々の波長を分析範囲の各スペクトル特性に対して選択する必要はなく、すなわち、スペクトル特性の選択に関連する波長の選択のみが選択される場合がある。波長範囲によりスペクトル特性を定義することが不可能であると考えられるか、又はあらゆる関連の範囲は、解釈次第では変動する場合がある。スペクトル特性の近くの波長が、その代わりに選択される場合がある。これは、例えば、スペクトル特性の中心点の波長の特定の公差(例えば、±30nm)近傍又はこれ以内である波長である可能性がある。
【0089】
更に、選択される波長は、関連のスペクトル特性を跨ぐ領域の近くにあり、又はこの領域に入る波長まで容易に取得可能か又は構成可能である電磁波源11によって影響を与えられる場合がある。放出電磁波の適切な波長の選択により、プロセッサによる正確な検証又は同定に向けてより良好な情報を与えることになる。
【0090】
更に、選択される波長を試験される薬物とは独立して選択することができることが好ましい。
【0091】
あらゆる適切な数の波長を使用することができる。任意的に、本質的にではないが、電磁波源11によって供給される電磁波(1つ又は複数のビーム22での)を構成する異なる波長の数は、少なくともlog2nであり、ここで、nは、試験されるサンプル数である。使用される波長が多いほど、精度が良くなるが、これは、費用及び便宜に対して最適化される。図3で分るように、電磁波ビーム/波長の数が増加する時に、検出の誤差が減少する。2つの波長の選択により、1組の30個の薬物に対する誤差は、0.14になり、一方、5つの波長では、誤差は僅か0.02である。
【0092】
アンカー点で波長を有するように電磁波波長22の1つを選択することができ、基準チャンネルを不要にするためにアンカー点を使用することができる。アンカー点は、基本的な基体液体のスペクトルの安定している又は他の適切な部分の波長を有するように選択される。アンカー波長に関しては更に後述する。
【0093】
試料検出器17及び任意的に基準検出器20から出力を受信すると、プロセッサ18は、比較データを含むデータベース23にアクセスして、その出力を使用するアルゴリズムを実行し、試料16から検出された影響を受けた電磁波14bに基づいて、及び任意的に準チャンネルが使用される場合には比較データを使用してその基準試料からの検出された影響を受けた電磁波15bに基づいて試料16を検証又は同定する。プロセッサ18は、コントローラ12と共に又はこれとは独立して作動させることができる。処理に関しては更に後述する。
【0094】
ユーザインタフェース24により、ユーザは、パラメータの設定、予想された薬物の入力、分析の結果の受信(画面、ディスプレイ、オーディオアラーム、インジケータ、又は類似物を通じた)を含め装置10を作動させることができる。結果は、薬物が予想された薬物であるか否かを示す(検証/確認)場合があり、又は薬物を通知する(同定)場合がある。
【0095】
装置10は、電磁波源11及び/又は検出器17、20の温度を安定させるフィードバックシステムを含むことも好ましい。1つの例では、サーミスタが、電磁波源及び/又は検出器の温度を検出する。ペルチェ冷却デバイスを操作して、電磁波源11及び検出器17、20を冷却してその温度を安定させることができる。サーミスタの出力は、コントローラ12に送られ、コントローラ12は、電磁波源及び/又は検出器を冷却するようにペルチェ冷却デバイスを制御する。サーミスタは、内蔵光検出器サーミスタ5a、5bであることが好ましい。また、ペルチェ熱電冷却器が、光検出器5a、5bに内蔵される。
【0096】
装置10は、図4の流れ図に関連して以下のように一般的に作動する。コントローラ12が、試料16の方向に選択された波長で/選択された波長を有する1つ又はそれよりも多くの電磁波ビーム22を放出するように(好ましくは個々に及び連続して)電磁波源11を作動させるのに使用される、段階40。試料16上の電磁波による入射光14aが試料を透過するか又は反射され、検出器17により検出される影響を受けた電磁波4bになる、段階41。任意的に、放出電磁波を基準試料19にもビームスプリッタ21により方向転換することができ、放出電磁波が、同じか又は異なる検出器20により検出される、段階42。試料検出器17及び任意的に基準検出器20からの出力14c、15cは、プロセッサ18に渡される、段階42。ここでは、検出器出力14c、15cを正規化及び/又は補正するために前処理が行われる、段階42。その後に、得られた情報が正規化された検出器出力から試料を同定又は検証するのに利用される基準薬物のデータベース23に問い合わせることを含む同定/検証アルゴリズムが実行される、段階43。試料の検証又は同定の結果が、ユーザインタフェース24により伝達される、段階44。
【0097】
本発明のより詳細な説明が提供されると、他のオプションが明らかになるであろう。
【0098】
第1の実施形態
本発明の1つの可能な実施形態をここで一例として詳細に説明する。これは、制限的ではなく例示的と考えるべきである。例えば、1組の30の薬物から水ベースの薬物の検証又は同定を行う装置に関連してこの実施形態を説明する。
【0099】
電磁波の6つの波長が、この例に向けて選択され、6は、30のlog2nよりも大きい。波長は、分析範囲において選択され、かつその範囲に入る基体液体である水のスペクトル特性に基づいている。水ベースの薬物(又は他の液体ベースの薬物又は水溶液)のスペクトルは、基体液体スペクトルによりかなり支配されることになる。例えば、図5を参照すると、薬物W(琥珀酸化ゲロフシンゼラチン溶液4%)のスペクトル(点線)は、水のスペクトル(実線)と非常に似通っている。これは、水のスペクトルが優位であるからである。しかし、異なる水ベースの薬物間の透過係数の差を測定することができる。水スペクトルのスペクトル特性の区域/波長に着目すると、それらの波長で電磁波ビームを使用することにより、それらの波長での水スペクトルと水ベースの薬物スペクトルの差を利用して、薬物同定又は検証に向けて薬物の区別を行うことができる。
【0100】
図6は、分析範囲の一部の可能なスペクトル特性(特徴)が同定された以下で更に説明する水のスペクトルを示している。
○スペクトル特徴A(勾配)−1300nmと1400nmの間の第1の領域におけるもの。
○スペクトル特徴B(プラトー/谷)−1400nmと1500nmの間の第2領域におけるもの。
○スペクトル特徴C(勾配)−1500nmと600nmの間の第3領域におけるもの。
○スペクトル特徴D(ピーク)−1600nmと1700nmの間の第4領域におけるもの。
○スペクトル特徴E(変曲点)−1700nmと1800nmの間の第5領域におけるもの。
○スペクトル特徴F(屈曲部)、1800nmと2000nmの間の第6領域。
【0101】
これは、可能なスペクトル特徴の網羅的なリストではない。
【0102】
電磁波ビームのための波長の選択は、厳密には一定ではなく、かつ必ずしも単に基体液体のスペクトル特性に基づくわけではない。それは、薬物試料の基体水のスペクトル内のスペクトル特性の波長によって影響を与えられるが、更に、選択される波長を他の要素に基づくことができる。例えば、費用効果及び規則正しく取得可能なサプライチェーンのために代替波長が市販品レーザ又は他の光学要素により簡単に取得可能である場合には、スペクトル特性に近いが全く同じわけではないその代替波長を使用又は選択することが好ましい場合がある。
【0103】
例えば、通信業界において広く行き渡った用途を有するのでこれらの波長のために構成された多くのデバイスがあるために、水ベースの薬物に向けて1310nm及び1550nmを選択される波長として使用することができる。レーザダイオードは、1650ナノメートル、1750ナノメートル、及び1850ナノメートルで名目上中心波長を有するが、これらは、最大±30ナノメートルまで変動する可能性がある。従って、これらの範囲の波長を選択することができる。従って、これらの成分の利用可能性及び基体液体のスペクトル特性を見ることにより、放出電磁波の適切な波長を判断することができる。
【0104】
従って、以前の説明に基づいて、6つの波長の各々は、スペクトル特徴の各々の1つを跨ぐ領域の近く又はこの領域内のあるように選択することができるが、ハードウエアの利用可能性によって影響を与える可能性もある。従って、水の6つの波長は、全てが1300〜2000ナノメートルに入る特徴Aに対応する1350ナノメートル、特徴Bに対応する1450ナノメートル、特徴Cに対応する1550ナノメートル、特徴Dに対応する1650ナノメートル、特徴Eに対応する1750ナノメートル、及び特徴Fに対応する1850ナノメートルとすることができる(一例として)。図示のように、1350nm〜1850nmの波長選択は、水スペクトル内のピーク及び谷及び他のスペクトル特性に必ずしも適合するわけではないがそれに近い。この選択は、利用可能なハードウエアの作動波長にも関連する。これらは、言うまでもなく公称波長であり、実際の波長は、電磁波源11特性のために実際には変動する場合がある。
【0105】
図7は、全体的に図1に説明したような装置10の1つの可能なタイプを概略図の形態に示している。分光分析器10は、コントローラ12及び6つのレーザ51a〜51fを支持するカルーセル50を有し、コントローラ12及びカルーセル50と併せて光の形態で複数の波長で電磁波22を出力する電磁波源11を構成する。各レーザは、先に定義された6つの波長の1つで電磁波22を放出するように調節されるか又は調節可能である。各レーザは、ドライバ回路を通じて電子的に容易に制御される、安定した高強度狭帯域の平行化された電磁波出力をもたらすレーザダイオードを含むか又はこれで形成することができる。各レーザは、適切なレンズを使用してビームに放出電磁波ビーム14aを平行化することができるレンズを含む。各レーザ51a〜51fは、その電磁波のフィードバック制御に向けて出力電磁波を検出する1つ又はそれよりも多くのフォトダイオード4a〜4fを有することができる。レーザは、熱放出上の問題が他の電磁波源より少なく、従って、測定値に及ぼす悪影響が低減される。各レーザの出力電力は、均衡が取れた装置を有するために名目上同じ(典型的には30mW)であることが好ましい。それによって一般的なダイオードドライバ回路をレーザダイオードに使用することができることが好ましい。
【0106】
コントローラ12は、レーザ51a〜51fのいずれか1つを作動させて、試料経路/ビーム経路14aに沿ってビーム22を放出するために作動したレーザ(例えば、図示のように51f)を位置合せさせるように軸線周りに回転するようにカルーセル50を制御することができる。必要であれば暗電流信号の測定を容易にするためにレーザ51a〜51fを完全にオフにすることができる。機械的に活性化される光学式チョッパの使用をそれによって排除することができる(しかし、必要に応じて含めることもできる)。作動すると、レーザは、経路14aに沿って試料に向けて電磁波22を放出する。電磁波源から検出器までの経路14aは、好ましくはあるとしても最低限の光ファイバ構成要素を有する好ましくは支配的に自由空間を通じてものである。それによって光減衰及びハードウエアが低減される。装置は、ビーム経路14aと位置合せされる試料保持器16aも含む。アクティブレーザ51a〜51fからの放出電磁波は、試料保持器内の試料16に入射すると試料保持器内の試料16を透過するか又は反射する。
【0107】
検出器16は、試料16aを出る影響を受けた電磁波の経路14b内に設けられる。検出器16は、影響を受けた電磁波に存在することになる波長の電磁波を検出するために適切な応答を有するようにバイアスが掛けられた単一の光検出器/フォトダイオードであることが好ましい。単一の検出器は、成分により生じた変動による誤差を低減し、すなわち、複数の光検出器の相対的な差を除去し、放出電磁波の出力に対する応答の安定化が可能になり、従って、感度が改善する。例えば、InGaAsフォトダイオードを使用することができる。検出器17は、影響を受けた電磁波14bを検出し、かつ検出器17の出力14cが、上述したように試料を検証又は同定するためのプロセッサ18に渡される。
【0108】
装置は、基準検出器20まで通過する基準経路15aに沿って基準試料保持器の方向に入射電磁波ビーム22/14aを向け直すビームスプリッタ21も有する。基準検出器20の出力も、プロセッサ18に渡される。例えば、基準物は、生理食塩水とすることができる。
【0109】
装置は、電磁波源11及び検出器の温度を安定させるフィードバックシステムを含むことも好ましい。1つの例では、サーミスタが、電磁波源及び/又は検出器の温度を検出する。ペルチェ冷却デバイスを操作して、電磁波源及び検出器を冷却してその温度を安定させることができる。サーミスタの出力は、コントローラに送られ、コントローラは、電磁波源及び/又は検出器を冷却するようにペルチェ冷却デバイスを制御する。サーミスタは、内蔵光検出器サーミスタ5a、5bであることが好ましい。また、ペルチェ熱電冷却器は、光検出器5a、5bに内蔵される。
【0110】
図4を参照して、装置10の作動をここで説明する。コントローラ12は、作動させる位置に各レーザ51a〜51fを回転させるようにカルーセル50を作動させる。作動させる位置にある時に、レーザ51a〜51fは、試料16(及び任意的に基準試料19に)に選択された波長の1つで電磁波ビームを放出するようにコントローラ12により操作される。このようにして、異なる選択された波長を有する6つの電磁波ビームが、各々が異なる選択された波長に調節された6つのレーザ51a〜51fの各々から連続して放出される、段階40。各レーザ51a〜51fは、試料に向けて経路14aに沿って電磁ビーム22を放出する。試料から来る影響を受けた電磁波が、試料16の方向に14a放出される各々の電磁波ビームに対して検出される、段階41。電磁波ビームをオン及びオフして、オフ段階中にも検出器よって行われた読取/測定の結果を取得することができ、すなわち、それによって参考のために暗信号/電流を得ることができる。放出電磁波は、ビームスプリッタ21を使用して基準経路15aに沿っても誘導されて基準試料19を通過すると、基準検出器20により検出される。試料検出器17及び基準検出器20からの出力は、プロセッサ18に渡される、段階42。プロセッサは(任意的に)、検出器からの出力に前処理を提供し、その後に、予め処理された出力に基づいて薬物を検証又は同定する、段階43。ユーザインタフェース24を通じて結果を出力する、段階44。
【0111】
1つの可能な実施形態において、プロセッサ18は、図8に示すように、前処理の方法、その後に検証/同定方法を含むか又は実行する。この実施形態において、基準チャンネルが使用され、暗電流読取値も使用される。暗電流は、電磁波(例えば、光)が検出器に入射しなかった時に検出器17、20によって供給される出力である。較正を目的として、検出器からのこの暗電流読取値を検出器からの実際の読取値から差し引くことができる。暗読取値を有することは本発明に関して、不可欠ではなく、1つの可能なオプションとしてここに説明し、すなわち、処理方法の残りの説明は、暗読取値が取られなくても機能する。
【0112】
図8の検証又は同定を実行する前に、図9図11に示すように、試料を検証/同定することができる比較データを生成するためにトレーニング処理が実行される。トレーニング処理では、比較データを生成するアルゴリズムが使用され、それによって異なる薬物間の分離を最適化する、サンプルデータの各々からのデータ値の特定の線形結合を判断する。得られる数学的な規則が、その後に、試験中の薬物が意図する薬物であることを検証するため試験中の薬物のために得られたデータに適用される。説明する実施形態において、暗電流読取値が使用される。トレーニング処理は、前処理の段階及び比較データ発生段階を含むことが好ましい。前処理は不可欠ではないが、前処理により性能が改善する。
【0113】
図9を参照すると、トレーニング処理に向けて、いくつかのトレーニング試料を分析器において試験する。各トレーニング試料は、分析器の実際の使用中に試験されることになる試料に関連する。各トレーニング試料に関して、試料チャンネル及び基準チャンネルからの出力をプロセッサで受信する、段階90。暗電流が使用される場合に、暗読取値のための各検出器からの出力を実際の読取値の出力から差し引く。試料検出器17からプロセッサ18で受信した出力14cは、試料16での各放出電磁波ビームに対して影響を受けた電磁波14bの強度を示している。例えば、直接、間接に関わらず検出器の光電流及び/又は検出された電磁波の強度を示すデータを含む場合がある。同様に、基準検出器20からプロセッサ18で受信した出力15cは、基準試料での各放出電磁波ビームに対して影響を受けた電磁波15bの強度を示している。装置は、各波長に対して複数の測定を実行することが好ましい。例えば、各波長で、装置は、15個の異なる時間に試料により影響を受けた影響を受けた電磁波を検出してプロセッサにこの出力を渡す、段階94。同様に、各波長で、装置は、15個の異なる時間に基準により影響を受けた影響を受けた電磁波を検出してプロセッサにこの出力を渡す、段階94。
【0114】
次に、各波長に関して、プロセッサ18は、基準検出器及び試料検出器の出力から、試料に関して、特定の選択された波長で試料により影響を受けた影響を受けた電磁波14bの強度を相関させる試料データ点の範囲を生成する、段階91。例えば、図10に示すように、これらのデータ点100を表すことができるが、プロセッサは、必ずしも実際にデータをプロットするというわけではないことが認められるであろう。x軸は、試料検出器17に対して検出器出力に対応する強度を示す値を示し、y軸は、基準検出器20に対して検出器出力と相関する強度を示す値を示している。値は、直接又は間接に関わらず、検出された影響を受けた電磁波の強度を示している。基準チャンネルが使用される場合に、基準検出器上の出力は、同時に取られた試料検出器からの出力と対号される。各試料/基準チャンネル検出器出力値対が、グラフ上でプロットされる。このような測定値は、各波長に対していくつかの時間にわたって取ることができる。従って、図10のプロットは、トレーニング試料16及び基準19に入射した14a電磁波の特定の選択された波長(例えば、名目上1350nm)に対していくつかの時間(例えば、15個)で測定された強度103を示す値を示している。
【0115】
各トレーニング試料に関して、処理は、その後に、第2の(比較)試料101及び制御(例えば、生理食塩水)102に向けて類似のデータ点を得るために繰り返される。第2の(比較)101の試料及び対照試料102の試料/基準チャンネル検出器出力値対も、図9に示すようにグラフ上でプロットすることができる、段階91。
【0116】
その後に、適切な統計技術(段階92)を使用して最良適合直線を計算することができ、図10に示すように、特定の波長(1350nm)のデータ点の
−トレーニング試料セット103
−第2の(比較)試料101、及び
−対照試料102
のセットの各々に対してx軸の切片値を見つける、段階92。
【0117】
これから、正規化された前処理された値を見つける。例えば、それぞれトレーニング試料103及び対照102試料のx軸切片値(例えば、842500及び850500)を見つけることができ、その後に、正規化された前処理された値(例えば、8000)を取得するために互いから差し引くことができる、段階93。同様に、それぞれ第2の(比較)試料101及び対照102試料のx軸切片値も見つけ、その後に、正規化された前処理された値(例えば、95000)を取得するために互いから差し引くことができる、段階93。他の選択された波長(例えば、この場合は他の5つ)の各々に対してこの処理を実行することができ、段階94及び段階90〜93、従って、トレーニング試料に対して1組の6個の正規化された前処理された値(各波長に1つ)を与える。第2の(比較)試料に対しても他の選択された波長の各々に対して処理を実行することができ、従って、各波長に対して第2の(比較)薬物の1組の6個の正規化された前処理された値を与える。各波長試料に対してトレーニング試料及び第2の(比較)試料のこれらの組の正規化前処理された値を多次元空間において相関させる/プロットすることができ、各軸線は、波長及びその軸線に対してプロットされるその波長の前処理された値に対応する。
【0118】
実際には、その後に、各々のトレーニング試料及び第2の(比較)試料に対して6つの正規化された前処理された値の複数の組があるように、この処理、段階90〜94を各波長に対して何回も実行することができる。各組を多次元的(この場合6次元)空間内の1つの点としてプロットする/相関させることができる。このようなプロットの例を図11に示している。ここでは、簡潔さを期すために、2次元空間のみが示されており、各軸線は、2つの波長からの結果に関連し、すなわち、実際には、6つの波長の全てを包含するためには6次元グラフである必要がある。トレーニング試料及び第2の(比較)試料の各々の各組に関して、1対の2つの正規化された前処理された値(すなわち、各波長に1つの値)が、2次元グラフ上の単一の点、例えば、110としてプロットされ、従って、トレーニング試料111及び第2の(比較)試料112に対して正規化された前処理された値データセットを与える。
【0119】
上述の前処理の段階では、システム内の系統的誤差及び測定したデータのドリフトの悪影響が低減される。尚、基準チャンネル/値は任意的である。代案では、サンプルデータだけに対してx軸切片値を見つける。
【0120】
代替的な実施形態において、上述の前処理の段階は、システムドリフト及び系統的誤差を非常に安定したレーザダイオード電磁波源及びレーザの固有のモニターダイオード出力から導出された基準信号を使用して実際上排除することができるという理由で省略することができる。それによって単一の光検出器との単一のチャンネルの併用が容易にされ、使用すべき別々の光学基準チャンネル及び/又は対照試料が不要になる。この目的のために、複数の試験管を使用して単一のチャンネルにおいて各薬物の試料を連続して測定することにより、様々な静脈内薬物の測定された透過スペクトルのデータベースをより簡単な方法で構成することができる。
【0121】
トレーニング試料及び第2の(比較)試料に向けてデータが前処理されて図11に示すように相関させた後に、代表値をトレーニング試料に対して取得することができる。前処理が実行されない場合に、処理は、非前処理(生)データで代表値を見つける段階に進む。最初に、第2の(比較)試料データセット112からトレーニング試料データセット111を分離する線113を判断する、段階95。その後に、比較試料からトレーニング試料を分離するためにスコアにおける重み付けとして線の法線方向を使用する。また、トレーニング試料が下回る閾値を判断する、段階96。閾値及び重み付け得点により、そのトレーニング試料に対して検証/同定を補助する比較データの代表値を与える。代表値をトレーニング試料のデータベース23に比較データとして記憶する、段階98。
【0122】
その後に、処理全体は、トレーニング試料のデータベース23内の比較データとしての記憶に向けて第2の代表値を得るために、第3の(比較)試料に照らす同じトレーニング試料に対して繰り返される(段階99及び段階90〜98)。その後に、処理は、トレーニング試料の比較データとしての記憶に向けて、第3及びその後の代表値を生成するために、第4及びその後の比較試料に照らして再び繰り返される(段階99及び段階90〜98)。これらを併せてトレーニング試料を同定/検証する比較データベース内の代表値を形成する。
【0123】
その後に、処理全体(段階100、段階90〜99)は、各々の付加的なトレーニング試料に対しても代表値を取得するために、複数の比較試料に照らす各々の他のトレーニング試料(n個の薬物の組内の)に対して繰り返される。
【0124】
トレーニング処理の段階90〜100を説明する際にグラフ及び技術への参照があったことが認められるであろう。これらを例示を目的として説明する。代表値を判断するためにトレーニング処理を実行するあらゆるプロセッサは、実際に、最終結果を取得するために関連のグラフを生成したり、又は関連の技術を利用したりせず、同じ結果をもたらす他の処理技術を使用する場合がある。
【0125】
以前のトレーニング処理では、各トレーニング試料(n個の薬物の組の)に関して、データベース23に記憶することができ、かつ試験中の組の実際の試料を同定又は検証するのに使用することができる比較データを生成することになる。比較データベース23は、実際の試料試験よりかなり予め生成することができ、又は直前に又は進行中にさえ生成することができる。検出器からの得られた多次元的スペクトルデータに基づいて比較データは、多次元的検証/同定マトリックスと見なすことができる。比較データを使用して、n個の薬物の組の他の薬物のいずれかから薬物のいずれかを検証又は同定することができる。
【0126】
図8を再び参照すると、比較データベースが生成されてデータベース23に記憶された状態で、実際の試料の検証/同定が以下のように行われる。試料チャンネル及び基準チャンネルからの出力をプロセッサで受信する、段階80。暗電流が使用される場合に、暗読取値のための各検出器からの出力を実際の読取値の出力から差し引く。試料検出器17からプロセッサ18で受信した出力14cは、試料16での各放出電磁波ビームに対して影響を受けた電磁波14bの強度を示している。例えば、直接、間接に関わらず検出器の光電流及び/又は検出された電磁波の強度を示すデータを含む場合がある。同様に、基準検出器20からプロセッサ18で受信した出力15cは、基準試料での各放出電磁波ビームに対して影響を受けた電磁波15bの強度を示している。装置は、各波長に対して複数の測定を実行することが好ましい。例えば、各波長で、装置は、15個の異なる時間に試料により影響を受けた影響を受けた電磁波を検出してプロセッサにこの出力を渡す、段階80。同様に、各波長で、装置は、15個の異なる時間に基準により影響を受けた影響を受けた電磁波を検出してプロセッサにこの出力を渡す、段階80。
【0127】
その後に、トレーニング処理に関してかつ図9図11を参照して上述したのと同様にこの出力を前処理することが好ましい(段階81〜84)。その説明は、ここで繰り返す必要はないが、要約すると、データ点を発生させ、段階81、最良適合線を見つけ、段階82、正規化された前処理された値を与えるx軸値を取得する、段階83。これを全ての波長に対して行う、段階84。前処理は、不可欠ではないが、性能を改善することができる。
【0128】
この前処理を各波長の影響を受けた電磁波に対して実行した段階81〜84の後に、次に、同定/検証アルゴリズムを呼び出すことができる、段階85。検証では、試料薬物が予想される薬物であることを検証する。例えば、臨床医は、例えば、ユーザインタフェース24を通じて、薬物が何であるかと自分が考えているか(例えば、n個の薬物の組から)を指定することができ、段階80、その後に、装置を使用して、保持器内の薬物が実際に臨床医により指定されたその薬物であるか否かを検証する。同定では、薬物が何であるかに関する臨床医からの提案がなくても薬物が実際に何であるかを判断する。検証/同定に関して、薬物を同定するか、又はそれが臨床医により指定されるような予想された薬物であるか否か検証するために、スペクトルデータ(すなわち、前処理された値)をデータベース23内の比較データと比較する、段階85。その後に、出力をユーザインタフェースに供給する、段階86。
【0129】
1つの可能な同定/検証アルゴリズムでは、サンプルデータが取得及び前処理された状態で、図9図11を参照して上述したように、トレーニング処理中に見つれたのと同様に代表値を試料に対して見つける。代表値は、各選択された波長での試料に向けて、及び各他の比較試料に対して見つけられる。代表値を比較データ内の代表値と比較する。試料に対して見つけた代表値と同じ試料に対応する比較データ内の代表値間に十分な類似点がある場合に、検証又は同定を提供する。あらゆる適切な統計上の又は他の技術を使用して十分な類似点を判断することができる。例えば、十分な類似点は、代表値の一部又は全てが検証マトリックス内のものと適合した時に発生する場合がある。別の例では、これは、試料が各比較試料の閾値よりも小さい時に発生する場合がある。検証/同定の結果のユーザに知らせるためにユーザインタフェースを通じてアラーム又は出力が為される場合がある。
【0130】
図15は、分析器を使用して検証された1組の30個の薬物に関する試験データを示している。試験では、各薬物を分析器に挿入し、その後に、系統的に、30個の薬物の1つであるか否かを検査するように分析器を構成した。アラームが作動され場合に、これは、薬物が予想されたものではないことを示し、アラームが知らされている。他の薬物の各々に関連して、各薬物を15回試験した。従って、例えば、メタラミノールに分析器に入れ、その後に、メタラミノールがないか検査するように分析器を構成した。15回の試験後に、分析器は、アラームを1回も作動せず、これは、分析器がメタラミノールを別の薬物と検出しなかったことを示している。試料保持器内にメタラミノールを入れたままにして、その後に、ヘパリンがないか検査するように分析器を構成した。15回の独立した試験の各々に関して、分析器は、アラームを作動し、これは、毎回、分析器内の薬物(メタラミノール)が予想された薬物(ヘパリン)ではないことを検出したことを示している。その後に、他の薬物の各々に対して分析器を再構成して、試験を各々に対して15回行った。一方、メタラミノールは、試料保持器内にあった。その後に、同じ処理を試料として使用される他の全ての薬物に対する繰返し、分析器は、系統的に、他の全ての薬物がないか検査するように再構成した。アラームが作動される(分析器が保持器内の薬物を有無検査対象の薬物ではないと見なすことを示す)度に、アラームが気づかれる。図15の表は、各薬物検出の組合せに対してアラームが作動された回数を反映する。誤差率が示されている。この低い誤差率は、検証精度の大幅な改善を示すものである。
【0131】
第2の実施形態
図12は、装置10の代替的な実施形態を示している。この実施形態において、カルーセル50を使用するのではなく、電磁波源11を形成する6つのレーザ51a〜51fが、反射タイプの回折格子120の方向に電磁波ビーム22を放出するように配置される。各レーザ51a〜51fは、回折格子の方向に調節されたか又は調節可能な波長の平行化された電磁ビーム22を放出するように作動可能である。各レーザ51a〜51fの回折格子面上の入射角Xは、1次回ビームが同じ角度Yで出て、従って、各レーザの共通の光路14aが生成されるように選択される。コントローラ12は、試料に向けて単一の波長のビームを放出するために連続して各レーザ51a〜51fを作動させる。代替的に、複数の波長成分を含む電磁ビーム22を試料16の方向に放出することができるように複数のレーザ51a〜51fを同時に作動させることができる。別々の回折格子又はビームスプリッタ21を使用して、例えば、図1に示すように基準チャンネル試料19がある場合は、基準チャンネル試料19の方向にビームを誘導することができる。実施形態の全ての他の態様は、図1図2図16、及び/又は図18に図示及び説明するようなものとすることができる。
【0132】
第3の実施形態
図13は、装置10の別の代替的な実施形態を示している。この実施形態において、カルーセル50を使用するのではなく、電磁波源11を形成する6つのレーザ51〜51fが、試料経路14aに沿って放出電磁波ビーム22を向け直すそれぞれのビームスプリッタ130a〜130fの方向に電磁波ビーム14aを放出するように配置される。コントローラ12は、それぞれのビームスプリッタ130a〜130fを通じて試料に向けて調節されたか又は調節可能な波長の電磁波を放出するように各電磁波源11を制御することができる。代替的に、試料16の方向に14a複数の波長成分を有する電磁ビーム22を供給するために、レーザ51a〜51fの2つ又はそれよりも多くを同時に作動させることができる。ビームスプリッタからの透過されたエネルギを吸い取る吸収体135が、ビームスプリッタアレイの後に設けられる。別々の回折格子又はビームスプリッタ21を使用して、例えば、図1に示すように基準チャンネル試料19がある場合は、基準チャンネル試料19の方向にビームを誘導することができる。実施形態の全ての他の態様は、図1図2図16、及び/又は図18に図示及び説明するようなものとすることができる。
【0133】
第4の実施形態
図14は、装置10の代替的な実施形態を示している。この実施形態において、カルーセル50を使用するのではなく、電磁波源11を形成する6つのレーザ51a〜51fが、プリズム140の方向に電磁波ビーム22を放出するように配置される。各レーザ51a〜51fは、プリズムの方向に調節されたか又は調節可能な波長の平行化された電磁ビーム14aを放出するように作動可能である。各レーザ51a〜51fの回折格子面上の入射角Xは、1次屈折ビーム22が同じ角度Yで14a出て、従って、各レーザ51a〜51fの共通の光路14aが生成されるように選択される。コントローラ12は、試料に向けて単一の波長のビームを放出するために連続して各レーザ51a〜51fを作動させる。代替的に、複数の波長成分を含む電磁ビーム22を試料16の方向に14a放出することができるように複数のレーザ51a〜51fを同時に作動させることができる。別々の回折格子又はビームスプリッタ21を使用して、例えば、図1に示すように基準チャンネル試料19がある場合は、基準チャンネル試料19の方向にビームを誘導することができる。実施形態の全ての他の態様は、図1図2図16、及び/又は図18に図示及び説明するようなものとすることができる。
【0134】
第5の実施形態
図20は、装置10の代替的な実施形態を示している。この実施形態において、カルーセル50を使用するのではなく、電磁波源11を形成する6つのレーザ51a〜51fが、平面光波回路(PLC)(光ファイバ結合器)200の方向に別々の光ファイバケーブル201a〜201fを通じて電磁波ビーム22を放出するように配置される。各レーザ51a〜51fは、光ファイバケーブル201a〜201fを通じてPLC200の方向に調節されたか又は調節可能な波長の平行化された電磁ビーム14aを放出するように作動可能である。コントローラ12は、試料に向けて単一の波長のビームを放出するために連続して各レーザ51a〜51fを作動させる。代替的に、複数の波長成分を含む電磁ビーム22を試料16の方向に14a放出することができるように複数のレーザ51a〜51fを同時に作動させることができる。別々の回折格子又はビームスプリッタ21を使用して、例えば、図1に示すように基準チャンネル試料19がある場合は、基準チャンネル試料19の方向にビームを誘導することができる。実施形態の全ての他の態様は、図1図2図16、及び/又は図18に図示及び説明するようなものとすることができる。
【0135】
第6の実施形態
図21は、装置10の代替的な実施形態を示している。この実施形態において、カルーセル50を使用するのではなく、電磁波源11を形成する6つのレーザを含む単一パッケージ211が、一体型コリメータレンズ210の方向に電磁波ビーム201a〜201fを放出するように配置される。レーザは、レンズ210の方向に6つの波長の各々で調節されたか又は調節可能な波長を放出するように作動可能である。コントローラ12は、試料に向けて単一の波長のビーム212a〜212fを放出するために連続してレーザを作動させる。代替的に、複数の波長成分を含む電磁ビーム22をレンズ210を通じて試料16の方向に14a放出することができるように複数のビーム51a〜51fを同時に作動させることができる。別々の回折格子又はビームスプリッタ21を使用して、例えば、図1に示すように基準チャンネル試料19がある場合は、基準チャンネル試料19の方向にビームを誘導することができる。実施形態の全ての他の態様は、図1図2図16、及び/又は図18に図示及び説明するようなものとすることができる。
【0136】
代替的な実施形態
選択された波長の1300〜2000nmの公称分析範囲は、薬物検証又は同定の改善のための長所を与えるように選択される。しかし、1300〜2000nmへの言及は、制限的と見なすべきではなく、僅かに異なる範囲又は完全に他の範囲のスペクトル特性に関連付けられた波長を選択することができることが認められるであろう。選択された波長(及び従ってスペクトル特性)は、液体担体内の薬物に対する同定/検証の改善をもたらすあらゆる分析範囲に入る。例えば、分析範囲は、1300nm〜1900nm、1350nm〜1950nm、1400nm〜1900nm、1500nm〜1800nmのような1300nm〜2000nmの部分集合、又は何らかの他の部分集合とすることができる。この範囲はまた、1250〜2050nm、1200nm〜2100nm、又は1150nm〜2150nmなどのようにより大きいものとすることができる。分析範囲は、1200nm〜1900nm又は1300nm〜1900nmのような公称範囲からオフセットしていることさえあり得る。これらは、非限定的な例である。一般的に、分析範囲は、例えば、1100nm〜1500nmからのどこででも開始することができ、1800nm〜2150nmからのどこででも終了することができると考えられる。それさえも非限定的であり、この範囲は、検証/同定の改善をもたらす何らかの完全に異なるものである可能性がある。更に、これらの分析範囲から外れ、かつ以前のこれらの分析範囲外にあるスペクトル特徴に対応する波長が、言及した分析範囲に入る波長と組み合わせて使用される可能性もある。分析範囲に入るスペクトル特性に対応する複数の波長を使用して性能が改善される。好ましくは、いずれか及び全ての波長は、分析範囲で選択されるが、それは、有用とすることができる他の範囲に入る波長を使用することを排除しない。
【0137】
この範囲は、構成要素選択により少なくとも部分的に影響を与えられる可能性がある。例えば、シリコンフォトダイオードは、少なくとも1100nmまでの反応を有し、従って、使用された場合に、この波長は、範囲の下端として使用される場合がある。好ましくは、本発明では、1つの検出器のみを使用し、従って、この範囲は、単一の検出器が対象とすることができる波長によって定義されることがあり、例えば、InGaAs検出器の場合では1300nm〜2000nmとすることができると考えられる。
【0138】
水に対する他の液体は、同定/検証を改善する他の分析範囲を有する場合がある。
【0139】
上述の実施形態において、検出器17、20からの出力データを較正/正規化するために暗電流を使用した。暗電流は、検出器読取値から差し引かれる。別の実施形態において、チョッパホイールを使用する暗電流読取値を取得すること(又は電磁波源11をオフにすること)は不要である。むしろ、レーザドライバ電流変調が、暗電流読取値を不要にするのに使用される。図16の分析器の略示概略図を参照すると、レーザは、ドライバ電流/変調器160により駆動される。ドライバ電流/変調器は、電磁波源の一部を構成することができ、又は電磁波源とは別々とすることができる。電磁波源11は、内蔵光検出器4(制御フィードバックを供給する)レーザダイオードである。試料セル16及び光検出器17が設けられる。レーザドライバ電流変調器160は、図18にも示されており、図1の全体的な分析器のより詳細なブロック図に組み込まれている。
【0140】
試料チャンネル出力電流は、2つの成分、すなわち、いかなる照明もない場合にさえ存在する暗電流項及び検出器に入射する光の強度に比例した項の合計である。従って、試料チャンネル出力電流ISを以下のように書くことができる(1)。
ここで、(1)では、以下の通りである。
は、試料チャンネル検出器の暗電流信号である。
Sは、試料セルを含む光路内の減衰を表す定数である。
Pは、試料セルを照らす入射電力である。
【0141】
レーザダイオード電磁波源の内蔵光検出器から生成された基準チャンネル出力電流IRに対して類似の式を書くことができる(2)。
ここで、(2)では、以下の通りである。
は、レーザダイオードパッケージ内の基準光検出器の暗電流信号である。
Rは、基準に供給される入射電力の小部分を表す定数である。
【0142】
ここで、既知の波形でドライバ電流を変調することによってレーザ電磁波源を励起する。一般的に、角度周波数ωによる正弦波変調が、平均値に対して電流を変えるために使用される。これは、図17に示す類似の正弦波方法でレーザダイオード電磁波源の出力電力を変調する効果を有する。
【0143】
数学的に、時間依存レーザ出力電力P(t)を以下のように書くことができる(3)。
ここで、(3)では、以下の通りである。
P0は、レーザからの平均出力電力である。
ΔPは、出力電力波形の変調振幅(変調の深さ)である。
φは、時間t=0での変調波形の位相である。
【0144】
ここで(3)を使用して方程式(1)及び(2)を代入した場合に、試料チャンネル及び基準チャンネルからの出力電流に対して以下の式を取得する。

【0145】
試験中の試料の特徴付けに対するこのようなパラメータは、定数S及びRである。これらの2つの定数の比率は、試料セル内の液体の特性を示す正規化された係数を表している。
【0146】
以前の方程式の正弦波項を展開すると次式:
が与えられ、それによって次式(4)、(5)が与えられる。

従って、以下のようになる。





【0147】
方程式(4)及び(5)を詳しく調べると、出力電流が、固定のDC項:A0S及びA0R更に、振幅A1SA1RB1S及びB1Rと共に、変調周波数で変動する正弦及び余弦項ωから構成された簡単なフーリエ級数の形を有することを見ることができる。
【0148】
暗電流項は、(4)及び(5)のフーリエ級数のDC項だけに関わっている。暗電流項は、方程式(4)及び(5)のDC成分内に含まれている。従って、変調された出力波形の簡単なフーリエ分析により、sin(ω)t及びcos(ω)t項、すなわち、暗電流から独立のフーリエ係数が与えられる。
【0149】
各出力電流の正弦的に変動する成分を測定することにより、定数S及びRを求めることができ、各検出器ダイオードの暗電流を測定せず済む。DC遮断成分により、又は出力電流のフーリエ分析を実行して正弦波項以外の全てを切り捨てることにより、これらの後者の項を排除することができる。
【0150】
従来の分光計システムでは、暗電流は、光照明を周期的に遮断し、その後に復帰させる機械的回転チョッパを使用して、検出器ダイオードへの照明を遮断することによって測定されると考えられる。上述のレーザ−電流変調を使用して、回転チョッパのような機械部品が不要になり、それによって分光計設計が簡素化され、費用が低減され、かつ可動部品を使用しないことによって信頼性が改善する。機械的チョッパを駆動するのに使用される電動モータからの電気的干渉も排除される。
【0151】
付加的な暗電流方法が追加されたが図4に示す方法と同じである方法は、図19を参照すると以下のように働く。図16/18の装置を使用して出力ソース電磁波を変調して試料段階190の方向に放出する。試料及び基準検出器17及び20(使用される場合)が、影響を受けた検出された電磁波を受け取って、段階191、処理に向けてプロセッサ18に伝達する、段階192。受け取られた出力の暗電流(DC)成分:A0S及びA0R及びあらゆる他の不要な成分を除去するために(以前の方程式(4)及び(5))に従って)受け取られた出力をプロセッサにより処理することができる、段階192。望ましい成分sin(ω)t及びcos(ω)tが得られ、かつ暗電流なしの強度測定値を表している。当業者に公知のあらゆる適切な信号処理を使用してこの処理を行うことができる。残りの段階193及び194は、上述した通りである。
【0152】
例えば、暗電流を抽出する段階192のための1つの可能性において、出力にそれぞれsin(ω)t及びcos(ω)tを掛けて、振動の周期にわたって積分することによって出力電流のフーリエ分析を実行することができる。変調が、単一の周波数、例えば、単一の周波数での正弦波変調である場合にこれを使用することができる。この手順は、測定値ノイズを低減する際に有用である平均化の形態になる。
【0153】
代替的に、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムをデジタル化された出力波形及び抽出される関連のフーリエ成分に適用することができる。従って、フーリエ係数から、試料チャンネルに対して
及び基準チャンネルに対して
を取得する。
【0154】
これらのフーリエ振幅の比率を取ると、変調度ΔPに対する依存が排除されて次式(6):
N=S/R
により与えられる正規化出力Nを与える。
【0155】
Nの値は、関連の各波長で判断され、かつ試験中の液体に対する出力データセットを形成する。
【0156】
この情報を抽出する他の方法は、当業者によって公知であり、かつ使用することができると考えられる。
【0157】
代替分析処理では、基準チャンネルは使用されない。むしろ、基準チャンネル内の基準からの影響を受けた電磁波からの検出器出力15cではなく、アンカー波長で得られた影響を受けた電磁波(試料からの)からの検出器出力14cを使用する。アンカー波長での影響を受けた電磁波の検出器出力を使用して、他の波長に関する受信した影響を受けた電磁波からの全ての他の検出器出力14cを正規化/補正する。アンカー波長は、選択された波長の1つとすることができるが、基体液体スペクトル内の適切なスペクトル特徴/点を跨ぐ領域の近く又はこの領域内であるように選択されることが好ましい。例えば、アンカー波長は、基体液体スペクトルの安定領域を跨ぐ領域の近くか又はこの領域内とすることができる。基準チャンネル/検出器出力の排除により、試料及び試料差を覆い隠す可能性がある基準チャンネル間の変動が除去され、従って、この除去により装置の感度改善及び安定化を与える。アンカー波長での出力を使用して、他の波長の出力を正規化、較正、又はそうでなければ調節することができる。試料を検証/分析するために、上述したように、アンカー波長からの出力を基準チャンネルからの出力と同じ方法で処理することができる。すなわち、アンカー出力は、基準情報になることができる。
【0158】
1つの可能性では、水が基体液体である場合、1450ナノメートルがアンカー点に選択され、その理由は、特にこの波長辺りでは水のスペクトルの安定性があるからである。この波長は、OH結合の存在のために光吸収が最大である水溶液に対応する。それは、試験される試料薬物の共通の透過媒体である。この波長で得られるデータは、最小の温度感度を示し、従って、非常に安定して予想可能な基準を与える。これは、水ベースの薬物の1つの例であるにすぎず、示唆的であるにすぎず、かつ他の考慮事項に基づいて選択される場合がある波長及びアンカー点に関して制限的と見なすべきではない。
【0159】
以前の実施形態の各々では、処理データに使用される基準測定値を取得するための基準チャンネルの任意的な使用を説明した。代案では、基準チャンネルは使用されない。むしろ、レーザダイオード11(レーザダイオードの電力モニタリング及び制御に使用される)内のフォトダイオード4(図20を参照されたい)を利用して、基準情報を取得することができる。レーザダイオードには、レーザの出力電力をモニタするのに使用される内蔵光検出器ダイオード4が取り付けられることが多い。これは、レーザドライバ電流を一体型フォトダイオード信号を組み込むフィードバック回路を通じて制御することを可能にすることにより、レーザを安定させるために行われる。説明した実施形態のいずれも、基準チャンネルの代わりに基準情報を取得するこの代案で置換することができる。代案を用いて取得した基準測定値は、あらゆる以前の実施形態で上述したものと同じ方法で利用することができる。ソース電磁波の出力電力を検出するレーザダイオード光検出器4の出力は、プロセッサ18に渡され、試料チャンネル内の検出器17からの出力を正規化及び/又は補正するために、基準検出器20によって得られる基準読取値の代わりに使用される。光検出器4からのこの出力信号は、そうでなければより従来的には2つの別々の測定値チャンネルを伴うビームスプリッタ配置を使用して生成されたと思われる基準チャンネルと同じ機能を実行する。基準信号としてレーザからのフォトダイオード出力を使用し、それによってビーム分割光学系及び付加的な基準試料及び検出器の必要性を排除する。
【0160】
代替的な実施形態において、電磁波源11は、広帯域電磁波源と試料の間に配置することができる複数のフィルタ13を異なる波長に有する広帯域電磁波源である。各フィルタからの出力により、選択された波長の1つを有する電磁ビーム22が供給される。広帯域電磁波源は、例えば、広帯域フィラメント黒体電磁波源及びフィルタとすることができる。電磁波源11は、代替的に、フィルタの有無に関わらず1つ又はそれよりも多くのLEDの形態を取ることができる。第1の実施形態に対して上述したように、代替電磁波源のいずれかをカルーセル50上に取り付けて作動させることができ、又は実施形態2〜4に説明したような光学デバイスと共に作動させることができる。
【0161】
電磁波源のいずれも、例えば、上述したようにサーミスタ及びペルチェ冷却デバイスを使用することにより、フィードバックシステムを用いて温度安定化させることができる。
【0162】
検出器は、1つ又はそれよりも多くのInGaAsフォトダイオード又は他の光センサの形態とすることができる。
【0163】
別々のフォトダイオード又は類似か又は他の検出器は、基準チャンネル及び試料チャンネルの各々に対して使用することができる。代替的に、両方のチャンネルの影響を受けた電磁波ビームを統合するか又は検出器に他の方法で誘導するために光学デバイスを利用して、単一のフォトダイオード又は類似か又は他の検出器は、試料チャンネル及び基準チャンネルの両方に対して使用することができる。
【0164】
多くの測定値(例えば、500個)にわたる検出器読取値を平均化することによって測定値のランダム誤差を低減することができる。暗測定値(電磁波源オフ)を使用して、測定データを補正することができる。
【0165】
暗電流読取値に対して、試料16及び基準20に入射する電磁波22を消し去る/遮断するチョッパホイールを任意的に使用することができる。チョッパは、光学デバイス13の一部を形成することができる。各電磁読取値に対して、検出器17/20は、チョッパが電磁波22を遮断する時に「暗」読取値も取る。チョッパホイール及び暗読取値を有することは本発明に関して不可欠ではなく、1つの可能なオプションとしてここに説明する。
【0166】
帯域1300nm〜2000nmにわたって、検出器システムを簡素化するインジウムガリウムヒ素(InGaAs)技術に基づいて単一のタイプのフォトダイオード検出器を使用することも更に可能である。
【0167】
本発明は、1300nm〜2000nm又はその変形の分析領域内の波長を使用することが好ましい。この領域は、吸光率スペクトルにおいて出現する広いスペクトルピーク及び谷の短所が察知されたために、薬物分析に対して過去には無視されていた。赤外線(IR)分光法では、過去には、2000nmよりも長い波長に対して存在する多くの狭帯域スペクトル吸収特性を利用していた。このいわゆる「指紋」領域は、供試材料に存在する特定の化学結合の特性を示すスペクトル線を示し、それによって材料を同定する非常に感度の高い技術を与える。本発明者は、1300nm〜2000nmの分析範囲(又はその各部分)により薬物検証又は同定又は他の分析の利点を与えると判断した。更に、本発明者は、この分析領域内の顕著なスペクトル特徴のスペクトル位置の方が温度変化による影響が小さいと確認した。2000nmよりも長い領域内で出現する多くの狭スペクトル帯域は、高い温度感度を示している。2000nmよりも長いこの領域が検証又は同定に使用された場合に、分析装置には非常に正確な波長分解能が必要である。この分解能は、高価かつ高度な分光計を使用してのみ達成することができるものである。
【0168】
より具体的には、このタイプのIR分光学測定(2000nmよりも長い)には、多くの個々のスペクトル特徴を解像するために広いスペクトル帯域にわたって維持される非常に精妙な波長分解能(典型的には2、3ナノメートル)が必要である。精妙な波長分解能は、特に、温度変化に対する狭いスペクトル線のシフトに対処するのに必要とされる。
【0169】
このような非常に解像度の高いスペクトル線の測定には、機械的に回転する回折格子及び単一検出器又は検出要素の線形アレイを有する固定式回折格子に基づく高度なモノクロメータが取り付けられた分光計の使用が必要である。両方のオプションとも既存の分光計に見出され、両方とも実施するには高価である。
【0170】
例えば、静脈内水ベースの薬物検証/同定又は他の分析を目標とする費用効率の高い代替として、本発明者は、1300nmと2000nmの間のより短い波長域内で測定を行うことが有利であると判断した。この波長域内のスペクトル特性/特徴は、個数が遥かに少なくなり、かつスペクトルは遥かに広域になる(水と殆ど異ならない)が、本発明者は、薬物(又は他の液体ベースの試料)間に検証/同定を容易にするのに十分なスペクトル差が残ることを見出した。1300nm〜2000nm領域では、各薬物のIR透過スペクトルのピーク及び谷(及び他のスペクトル特性)が発生する波長は、全ての水ベースの薬物(又は他の試料)に対して温度に関して非常に安定したままであることも見出された。
【0171】
重要なことに、感温性の狭いスペクトル吸収特徴がないために、測定すべき解像度の高いスペクトル線の要件がなく、従って、高価なモノクロメータが不要であることが確立された。各薬物(又は他の試料)を特徴付けるのに、範囲1300nm〜2000nmにわたる個別の波長で行う数回の測定で十分である(典型的には5回又は6回)。典型的に、各測定は、帯域幅12nmにわたって(例えば、広帯域電磁波源によって照射された帯域通過フィルタにより判断される時)、又はレーザベースの照射に対しては数ナノメートルにわたって行われる。
【符号の説明】
【0172】
10 分光分析器
11 電磁波源
16 薬物試料
17 試料検出器
18 プロセッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21