(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の薄膜及び第2の薄膜で覆うべき領域を示す第1のイメージデータで定義された領域から、前記第2の薄膜を形成するための基礎となる第2のイメージデータで定義された領域を除外して得られるイメージデータに基づいて、複数の第1のノズル穴から対象物の表面に向けて、ソルダーレジストである第1の色の液状材料を吐出して前記対象物の表面に着弾させながら光硬化させることで第1の色の第1の薄膜を形成する工程と、
前記第2のイメージデータに基づいて、複数の第2のノズル穴から前記対象物の表面に向けて、ソルダーレジストである前記第1の色とは異なる第2の色の液状材料を吐出して前記対象物の表面に着弾させながら光硬化させることで第2の色の第2の薄膜を形成する工程と
を有する薄膜形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方法では、ソルダーレジスト層の塗布、印字、露光、及び現像の工程により、識別情報が印字された基板が製造される。印字のための工程数の削減が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
対象物を保持するステージと、
前記対象物に対向し、第1の色の液状材料を吐出する複数のノズル穴が形成された第1のノズルヘッドと、
前記対象物に対向し、第1の色とは異なる第2の色の液状材料を吐出する複数のノズル穴が形成された第2のノズルヘッドと、
前記第1のノズルヘッド及び前記第2のノズルヘッドに対して前記ステージを、または前記ステージに対して前記第1のノズルヘッド及び前記第2のノズルヘッドを、前記対象物の面内方向に移動させる移動機構と、
前記移動機構、前記第1のノズルヘッド、及び前記第2のノズルヘッドを制御する制御装置と
を有し、
前記制御装置は、
第1の薄膜及び第2の薄膜で覆うべき領域を示す第1のイメージデータと、前記第2の薄膜を形成するための基礎となる第2のイメージデータとを記憶しており、
前記第1のノズルヘッド及び前記移動機構を制御して、前記対象物に、
前記第1のイメージデータで定義された領域から前記第2のイメージデータで定義された領域を除外して得られるイメージデータに基づいて、前記第1の色の液状材料で
前記第1の薄膜を形成し、前記第2のノズルヘッド及び前記移動機構を制御して、前記対象物に、前記第2の色の液状材料で
前記第2の薄膜を形成する薄膜形成装置が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
第1の薄膜及び第2の薄膜で覆うべき領域を示す第1のイメージデータで定義された領域から、前記第2の薄膜を形成するための基礎となる第2のイメージデータで定義された領域を除外して得られるイメージデータに基づいて、複数の第1のノズル穴から対象物の表面に第1の色の液状材料を吐出して第1の色の第1の薄膜を形成する工程と、
前記第2のイメージデータに基づいて、複数の第2のノズル穴から前記対象物の表面に前記第1の色とは異なる第2の色の液状材料を吐出して第2の色の第2の薄膜
を形成する工程と
を有する薄膜形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
第1のノズルヘッド及び第2のノズルヘッドを用いて、1度の走査によって2色の液状材料を塗布することができる。一方の色の液状材料で文字や記号等を表せば、印字のための独立した工程を実施することなく印字を行うことができる。また、2色で塗り分けることにより、意匠的な効果を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施例1]
図1に、実施例1による薄膜形成装置の概略側面図を示す。定盤20の上に、移動機構21によりステージ25が保持されている。ステージ25の上に、薄膜を形成する対象物30、例えばプリント基板が保持されている。移動機構21は、ステージ25を、その保持面に平行な2方向に移動させるとともに、保持面に垂直な軸を回転中心として回転させることができる。ステージ25は、例えば真空チャックにより対象物30を固定する。
【0011】
ステージ25の上方に、ノズルユニット40及び撮像装置50が配置されている。ノズルユニット40及び撮像装置50は、支柱22及び梁23により、定盤20に支持されている。ノズルユニット40は、複数のノズル穴を有しており、ノズル穴から対象物25に向かって液状材料の液滴、例えばソルダーレジストの液滴を吐出する。撮像装置50は、対象物30の表面に形成されているアライメントマーク、配線パターン等を撮像する。
【0012】
撮像装置50で取得されたイメージデータが、制御装置60に入力される。制御装置60は、移動機構21を制御することによりステージ25を移動させる。さらに、制御装置40は、ノズルユニット40に吐出信号を送信することにより、所望のノズル穴から液状材料の液滴を吐出させる。また、制御装置40は、撮像装置50で取得されたイメージデータの画像解析を行う。制御装置60内に準備された記憶装置61に、薄膜形成に必要となる種々のイメージデータや、制御装置60が実行するプログラム等が記憶されている。
【0013】
図1では、ノズルユニット40及び撮像装置50を定盤20に対して固定し、ステージ25を定盤20に対して移動可能な構成とした。その逆に、ステージ25を定盤20に固定し、ノズルユニット40及び撮像装置50を、定盤20に対して移動可能な構成としてもよい。さらに、ステージ25を、定盤20に対して一次元方向に移動可能にし、ノズルユニット40及び撮像装置50を、ステージ25の移動方向に直交する方向に移動可能な構成としてもよい。
【0014】
図2Aに、対象物30の表面に形成すべき第1の薄膜32、及び表面に形成されているアライメントマーク31の平面図を示す。対象物30の外形は、例えば長方形である。対象物30の表面に、形成すべき第1の薄膜32の平面形状を示すイメージデータが定義されている。さらに、対象物30の四隅に、アライメントマーク31が形成されている。アライメントマーク31には、対象物30の表面に形成されている配線パターンと同様に、銅箔が用いられる。第1の薄膜32の平面形状、アライメントマーク31の平面形状、及び両者の相対位置関係を示すイメージデータが、記憶装置61(
図1)に記憶されている。
【0015】
図2Bに、第1の薄膜32の一部分、及び文字や記号等の平面形状を有する第2の薄膜33を示す。
図2Bのハッチングを付した領域に、第1の薄膜32が形成される。長方形または円形等の開口34には、銅箔が露出する。第2の薄膜33は、「C01」、「R21」、「RAM」、「CPU」等の文字の形状に対応する平面形状を有する。第2の薄膜33を形成すべき位置が、イメージデータにより定義されている。
【0016】
図2Bに示した例では、第2の薄膜33が、文字を示す平面形状を有するが、文字以外の種々の記号を示す平面形状を有してもよい。第2の薄膜33は、肉眼で識別可能な平面形状及び大きさを有する。
【0017】
図3Aに、ノズルユニット40の斜視図を示す。支持部材41の底面に、6個のノズルヘッド42が取り付けられている。ノズルヘッド42の各々に、複数のノズル穴45が形成されている。ノズル穴45は、例えば2列に配列している。6個のノズルヘッド42のうち4個のノズルヘッド42Gは、ノズル穴45から、第1の色、例えば緑色の液状材料の液滴を吐出する。残りの2個のノズルヘッド42Wは、ノズル穴45から、第2の色、例えば白色の液状材料の液滴を吐出する。ノズルヘッド42は、ノズル穴45の配列方向と直交する方向に配列している。相互に隣り合うノズルヘッド42の間、及び最も端に位置するノズルヘッド42よりも外側に、紫外光源43が配置されている。紫外光源43は、対象物30(
図1)に紫外線を照射する。
【0018】
図3Bに、ノズルヘッド42及び紫外光源43の底面図を示す。ノズルヘッド42の各々の底面(基板30に対向する表面)に、2列のノズル列46が形成されている。ノズル列46の各々は、
図3Bにおいて縦方向に、ピッチ(周期)8Pで配列した複数のノズル穴45で構成されている。一方のノズル列46のノズル穴45の位置は、他方のノズル列46のノズル穴45の位置に対して、縦方向に4Pだけずれている。
【0019】
第1の色用の4個のノズルヘッド42Gは、縦方向に少しずつずらして、支持部材41(
図3A)に固定されている。ずれ量は、1つのノズル列46におけるノズル穴45のピッチ8Pの1/8である。例えば、最も左側のノズルヘッド42Gを基準として、2番目、3番目、及び4番目のノズルヘッド42Gは、
図3Bにおいて下方に2P、P、3Pだけずらされている。縦方向のみに着目すると、4個のノズルヘッド42Gに形成されているノズル穴45は、ピッチPで等間隔に配置されることになる。
【0020】
第2の色用の2個のノズルヘッド42Wは、縦方向の2Pだけずれて固定されている。さらに、一方のノズルヘッド42Wは、第1の色用の基準となるノズルヘッド42Gに対して、縦方向にP/2だけずれている。縦方向のみに着目すると、2個のノズルヘッド42Wに形成されているノズル穴45は、ピッチ2Pで等間隔に配置されることになる。
【0021】
このため、第2の色用のノズルヘッド42Wによって形成される記号パターン33(
図2B)の縦方向の解像度は、第1の色用のノズルヘッド42Gによって形成される薄膜パ
ターン32(
図2B)の縦方向の解像度の1/2になる。縦方向に関して、薄膜パターン32を形成する液状材料の2つの着弾点に対して、記号パターン33を形成する液状材料の1つの着弾点が対応する。既に説明したように、第2の色用のノズルヘッド42Wの1つが、第1の色用の基準となるノズルヘッド42Gに対して、縦方向にP/2だけずれて固定されている。このため、縦方向に関して、記号パターン33を形成する液状材料の着弾点が、薄膜パターン32を形成する液状材料の2つの着弾点の中間に位置することになる。
【0022】
図3Bに示したノズルヘッド42の底面に対象物30(
図1)を対向させた状態で、対象物30を横方向に移動させながら、ノズルヘッド42から液状材料を吐出させることにより、対象物30に液状材料を塗布することができる。
【0023】
図3Bにおいて横方向に関する解像度は、ステージ25(
図1)の移動速度、及びノズル穴45(
図3B)からの液状材料の吐出周期により決定される。第1の色用のノズルヘッド42Gの個数が第2の色用のノズルヘッド42Wの個数の2倍であるため、ノズルヘッド42の吐出周期が同一である場合、横方向に関しても、第2の薄膜33(
図2B)の縦方向の解像度が、第1の薄膜32(
図2B)の縦方向の解像度の1/2になる。液状材料の着弾点の、横方向に関する相対位置は、ノズル穴45からの吐出タイミングを制御することにより、調整可能である。
【0024】
図4に、第1の薄膜32及び第2の薄膜33を構成する液状材料の着弾点の分布を示す。第1の薄膜32を形成する液状材料の着弾点70が、縦方向及び横方向にピッチPで配置されている。第2の薄膜33を形成する液状材料の着弾点71が、縦方向及び横方向にピッチ2Pで配置されている。着弾点70、71の位置を示す円形は、液状材料が対象物表面で広がる領域を示しているのではなく、円形の大きさが、当該着弾点に着弾する液滴の体積の大小関係に対応する。すなわち、第2の薄膜33の着弾点71に着弾する液滴の体積が、第1の薄膜32の着弾点70に着弾する液滴の体積より大きい。実際には、1つの液滴を構成する液状材料の広がる領域は、
図4に示した円形領域よりも広い。第1の薄膜32を形成する液状材料は、隣接する着弾点に着弾した液状材料に連続する。これにより、面的に隙間が生じない薄膜を形成することができる。第2の薄膜33が形成される領域には、第1の薄膜32を形成するための液状材料が着弾しないように、液状材料の吐出が制御される。
【0025】
液滴の体積は、ノズルヘッド42に与える吐出信号により制御可能である。一例として、第2の薄膜33の着弾点71に着弾する液状材料の体積は、第1の薄膜32の着弾点70に着弾する液状材料の体積の約4倍である。第2の薄膜33の、縦方向及び横方向の解像度が、それぞれ第1の薄膜32のそれの1/2である。このため、第1の薄膜32と第2の薄膜33との平均膜厚をほぼ等しくすることができる。
【0026】
図5Aに、
図4の一点鎖線5A−5Aにおける断面図を示す。対象物30の表面に、第1の薄膜32及び第2の薄膜33が形成されている。
図5Aにおいては、着弾点70、71の位置をわかりやすくするために、着弾点ごとに、表面形状が凸になるように示しているが、実際にはほとんど平坦な表面が得られる。
図3Bに示したように、ノズルヘッド42の間に紫外光源43が配置されているため、1つのノズルヘッド42から吐出された液状材料が硬化した後、次のノズルヘッド42から吐出された液状材料が対象物30の表面に着弾する。
【0027】
図5Aは、第1の薄膜32を形成する液状材料が着弾して硬化した後に、第2の薄膜33を形成する液状材料が着弾した例を示している。第1の薄膜32と第2の薄膜33との境界において、第2の薄膜33の縁が、第1の薄膜32の縁の上に覆い被さっている。
【0028】
図5B〜
図5Cに、第1の薄膜32を形成する液状材料と、第2の薄膜33を形成する液滴との着弾順序が異なる他の例を示す。
図5Bに示した例では、第2の薄膜33を形成する液状材料が着弾して硬化した後、第1の薄膜32を形成する液状材料が着弾する。このため、
図5Aに示した例とは逆に、第2の薄膜33の縁が、第1の薄膜32の縁の下に潜り込んでいる。
図5Cに示した例では、第1の薄膜32と第2の薄膜33との境界の場所によって、着弾順序が異なる。例えば、
図5Cの左側の境界においては、第1の薄膜32を形成する液状材料が、第2の薄膜33を形成する液状材料より先に着弾する。
図5Cの右側の境界においては、その逆に、第2の薄膜33を形成する液状材料が、第1の薄膜32を形成する液状材料より先に着弾する。
【0029】
図6に、実施例1の薄膜形成方法で用いられるイメージデータを、視覚的に示す。これらのイメージデータは、例えばラスタ形式で定義されている。
図6では、液状材料を着弾させるべき着弾点が位置する領域(薄膜形成領域)を、ハッチングを付して示している。薄膜、例えばソルダーレジスト膜で覆うべき領域を示すイメージデータ80においては、薄膜形成領域内に、複数の開口34が画定されている。第2の薄膜33を形成するための基礎となるイメージデータ81においては、薄膜形成領域の平面形状が、文字または記号を表している。
【0030】
従来は、ソルダーレジスト膜を形成した後に、文字等を印字していた。このため、ソルダーレジスト膜のパターニングは、第1の薄膜32を形成するためのイメージデータ80に基づいて行われていた。実施例1においては、
図4、
図5A〜
図5Cに示したように、第2の薄膜33が形成される領域には、第1の薄膜32の液状材料を着弾させない。このため、イメージデータ80で定義された薄膜形成領域から、第2の薄膜33のイメージデータで定義された薄膜形成領域を除外することにより、イメージデータ82を生成する。このイメージデータ82に基づいて、第1の薄膜32を形成する。
【0031】
上記実施例1では、液状材料の吐出及び硬化の処理が終了した時点で、既に対象物30の表面に文字や記号が表示されている。このため、製造工程数を削減することができる。さらに、文字や記号もソルダーレジストで形成される。このため、インクで文字等を印字する場合に比べて、インクの剥落による文字の消失を防止することができる。
【0032】
また、第1の薄膜32と第2の薄膜33とで構成されるソルダーレジスト膜の膜厚を、面内で均一に近づけることができる。
【0033】
上記実施例1では、第1の薄膜32が、主として本来のソルダーレジスト膜として機能し、第2の薄膜33が、主として識別標識として機能する。ここで、「主として」と表記したのは、厳密には第2の薄膜33もソルダーレジスト膜としての役割を担っているためである。ただし、第2の薄膜33の機能は、識別標識に限定する必要はない。例えば、対象物30の表面のうちソルダーレジスト膜を形成すべき領域を2色に塗り分けることにより、意匠的な効果を持たせることができる。この時、開口34(
図2B)の縁を確定する領域には、高解像度でパターンを形成することが可能な第1の薄膜33を配置することが好ましい。
【0034】
上記実施例1では、第1の色(例えば緑)と第2の色(例えば白)との2色の液状材料を用いたが、3色以上の液状材料を用いてもよい。
【0035】
[実施例2]
図7に、実施例2による方法で形成された薄膜の断面図を示す。実施例1では、第2の薄膜33が形成される領域には、第1の薄膜32が形成されなかった。実施例2では、第
2の薄膜33を形成すべき領域にも第1の薄膜32が形成される。第2の薄膜33は第1の薄膜32の上に形成される
実施例2においても、第2の薄膜33をソルダーレジストで形成するため、インクの剥落により文字等の消失を防止することができる。また、実施例1の方法に比べて、立体的な識別標識を形成することができる。
【0036】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。