(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057425
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】自動車シュレッダーダストの分別装置
(51)【国際特許分類】
B07B 9/00 20060101AFI20161226BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20161226BHJP
B07B 7/08 20060101ALI20161226BHJP
B07B 1/00 20060101ALI20161226BHJP
B07B 1/46 20060101ALI20161226BHJP
B04C 9/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
B07B9/00 A
B09B5/00 ZZAB
B07B7/08
B07B1/00 B
B07B1/46 K
B04C9/00
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-63574(P2013-63574)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-188387(P2014-188387A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】和田 肇
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 紳一郎
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−194860(JP,A)
【文献】
特開2008−80680(JP,A)
【文献】
特開2002−113716(JP,A)
【文献】
特開2002−316101(JP,A)
【文献】
特開2003−165115(JP,A)
【文献】
実開昭61−37246(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 9/00
B04C 9/00
B07B 1/00
B07B 1/46
B07B 7/08
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂又は/及びガラスが付着した自動車シュレッダーダストを投入する投入口と、前記自動車シュレッダーダストから前記土砂又は/及びガラスを分離する筒状の本体と、該本体から排出された自動車シュレッダーダストを風力で分級する風力分級装置と、前記投入口から前記本体を通過させて前記風力分級装置まで気体を誘引する誘引ファンとを備える自動車シュレッダーダストの分別装置であって、
前記本体は、該本体内に水平に配置された回転軸と、該回転軸に装着され、前記投入口から本体内に投入された自動車シュレッダーダストに付着した土砂又は/及びガラスを叩き落とす回転羽根と、該回転羽根の下方に配置され、前記自動車シュレッダーダスト並びに土砂又は/及びガラスを分級する篩分装置と、前記回転軸に装着され、該篩分装置の篩上に残留した自動車シュレッダーダストを持ち上げて排出口から排出する排出ロータとを備えることを特徴とする自動車シュレッダーダストの分別装置。
【請求項2】
前記風力分級装置によって分級され、気体と共に搬送された自動車シュレッダーダストを回収する固気分離装置を備え、
該固気分離装置の下流側に前記誘引ファンを備えることを特徴とする請求項1に記載の自動車シュレッダーダストの分別装置。
【請求項3】
前記風力分級装置は、サイクロンであって、該サイクロンのディメンジョンを調整するか、前記誘引ファンによる誘引風量を調整するか、あるいはこれらの両方を行うことにより、前記固気分離装置で回収される自動車シュレッダーダストの量を制御することを特徴とする請求項2に記載の自動車シュレッダーダストの分別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を廃棄する際に生じる自動車シュレッダーダスト(以下「ASR」という。)をセメント製造用燃料等に有効利用するための分別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車リサイクル法の施行によりASRのセメント燃料としての利用が進んでいる。ASRを高度燃料化する際は細破砕する必要があり、ASRには土砂、ガラス、金属等の異物が含まれているため、破砕機の破砕刃に損傷を与えたり、破砕刃の摩耗速度を高めたりしている。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、篩分装置と、風力選別機と、2基の破砕機等を備え、建設廃材系プラスチック廃棄物や、廃ASRの様な、多様な異物や不純物が混入している廃プラスチックを含有する混合廃棄物をセメント焼成設備のバーナー吹込み用燃料としてリサイクルする処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−194860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1記載の処理装置では、装置点数が多いため設備コストが高くなり、また、設置スペースによっては設置が困難になることがある。また、ASRの付着水分が増加すると土砂やガラス等の分離が困難になる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、設備コストを低く抑え、設置が容易で、水分の多いASRに付着した土砂やガラス等を効果的に分離することも可能なASRの分別装置を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、ASRの分別装置であって、土砂又は/及びガラスが付着したASRを投入する投入口と、前記ASRから前記土砂又は/及びガラスを分離する筒状の本体と、該本体から排出されたASRを風力で分級する風力分級装置と、前記投入口から前記本体を通過させて前記風力分級装置まで気体を誘引する誘引ファンとを備えるASRの分別装置であって、前記本体は、該本体内に水平に配置された回転軸と、該回転軸に装着され、前記投入口から本体内に投入されたAS
Rに付着した土砂又は/及びガラス
を叩き落とす回転羽根と、該回転羽根の下方に配置され
、前記ASR並びに土砂又は/及びガラスを分級する篩分装置と、前記回転軸に装着され、該篩分装置の篩上に残留したASRを持ち上げて排出口から排出する排出ロータとを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、1台の装置でASRに付着している土砂、ガラス、金属等を破砕機に影響を及ぼさないレベルまで分離することができるため、設備コストを低く抑えることができ、設置も容易である。また、回転羽根で叩き落とすことで、水分の多いASRに付着した土砂やガラス等を効果的に分離することもできる。
また、土砂、ガラス、金属等を分離した後のASRから可燃物を効率よく分離することができる。
【0010】
前
記風力分級装置によって分級され、気体と共に搬送されたASRを回収する固気分離装置
を備え、該固気分離装置の下流側に
前記誘引ファ
ンを備えることができる。これによって、排出口から排出されるASRから、軟質プラスチックを主に含む可燃物を効率よく回収することができる。
【0011】
前記風力分級装置をサイクロンとし、該サイクロンのディメンジョンを調整するか、前記誘引ファンによる誘引風量を調整するか、あるいはこれらの両方を行うことにより、前記固気分離装置で回収される自動車シュレッダーダストの量を制御することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係るASRの分別装置によれば、設備コストを低く抑えることができ、設置が容易で、水分の多いASRに付着した土砂やガラス等を効果的に分離することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るASRの分別装置の要部を示す概略断面図である。
【
図2】
図1の分別装置のA−A矢視及び全体構成図である。
【
図3】本発明に係るASRの分別装置の分別効果を示すグラフであり、(a)はスクリーン径が30mm、(b)はスクリーン径が10mmの場合を表している。
【
図4】本発明に係る分別装置による熱回収効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するため形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1及び
図2は、本発明に係る分別装置の一実施の形態を示し、この分別装置1は、筒状の本体2と、ASRを投入する投入口3と、投入されたASRを本体2に導入するスクリュー4と、本体2の内部に水平に配置された回転軸5と、回転軸5に装着された回転羽根6及び排出ロータ8と、回転羽根6の下方に配置されたスクリーン(篩分装置)9と、排出口10から排出されるASR(D)を分級する分級装置としてのサイクロン11と、固気分離装置としてのサイクロン12と、誘引ファン13等を備える。
【0016】
スクリュー4は、モータ18によって回転する回転軸17に装着され、投入口3から投入されたASRを本体2に押し込むようにして導入する。
【0017】
回転軸5は、本体2の内部の中心部に水平に配置され、モータ15によって伝導装置14を介して700rpm程度の高速で回転する。
【0018】
回転羽根6は、回転軸5に複数設けられ、回転軸5と共に高速回転し、ASRに付着する土砂やガラス等(以下「土砂ガラス」という。)を叩き落とす。
【0019】
排出ロータ8は、回転軸5の排出口10側の端部に装着され、回転軸5と共に高速回転し、スクリーン9を通過せずに本体2に残留するASR(D)を排出口10から本体2の外部に排出する。
【0020】
スクリーン9は、ASRから分離した土砂ガラスSを下方の系外に排出するために備えられる。
【0021】
サイクロン11は、本体2の排出口10から排出されるASR(D)を分級するために備えられる。サイクロン11に代えて、慣性分級機等を用いることもできる。
【0022】
サイクロン12は、サイクロン11で分離され、空気A1と共に搬送されたプラスチック類P2を回収するために備えられる。サイクロン12以外の固気分離装置を用いることもできる。
【0023】
誘引ファン13は、投入口3から空気を吸引し、本体2の内部、サイクロン11、サイクロン12を通過させ、系外に排出するために備えられ、誘引する空気の量を調整することで、サイクロン11での分離径を調整し、サイクロン12でのプラスチック類P3の回収量を調整することができる。
【0024】
次に、上記構成を有する分別装置1の動作について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0025】
ASRを分別装置1の投入口3に投入すると、投入されたASRはスクリュー4により本体2の内部に押し込まれ、高速回転する回転羽根6でASRに付着している土砂ガラスSが叩き落とされる。ASRの付着水分が増加すると、土砂ガラスSがASR中の可燃物の表面に付着して分離し難い状態となるが、高速回転する回転羽根6を用いることで土砂ガラスSが分離し易くなる。
【0026】
叩き落とされた土砂ガラスSは、スクリーン9を通過し、下方に排出される。一方、土砂ガラスSを分離した後のASR(D)は、排出ロータ8によって持ち上げられ、排出口10から排出される。尚、土砂ガラスS以外にも、粒径の小さい金属Mもスクリーン9から排出される。
【0027】
次に、排出口10から排出されたASR(D)をサイクロン11において分級する。この分級によって、ASR(D)は、下方に落下する主に硬質のプラスチック類P1及び金属Mと、空気A1と共に搬送される主に軟質のプラスチック類P2とに分離される。
【0028】
プラスチック類P2を含む空気A1は、サイクロン12で固気分離され、プラスチック類P3が回収され、固気分離後の空気A2は、誘引ファン13を介して大気に放出される。
【0029】
上記のようにしてスクリーン9の下方に回収された土砂ガラスS及び金属Mは廃棄され、サイクロン11で回収されたプラスチック類P1及び金属Mの混合物は、磁選機(不図示)等で金属Mを除去し、破砕機(不図示)で破砕された後、セメント焼成装置において燃料として用いることができる。また、サイクロン12で回収したプラスチック類P3もセメント焼成装置において燃料として用いることができる。セメント焼成装置では、回収したプラスチック類P1、P3を適宜破砕してセメントキルンバーナの燃料として、又はそのまま仮焼炉で燃料として用いる。
【0030】
次に、上記構成を有する分別装置1の分別効果及び熱回収効果について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
【0031】
図3は、上記構成を有する分別装置1の分別効果を示す試験例である。スクリーン9のスクリーン径を変えることにより、スクリーン9の通過分(スクリーン下)、サイクロン11での回収物(装置出口)、サイクロン12での回収物(サイクロン回収)の構成割合を示している。
【0032】
スクリーン径が30mmのスクリーン(以下「30mmスクリーン」という。)を用いた場合には、硬質プラスチック、軟質プラスチック等の可燃物がスクリーン下に落下する割合が32%であるのに対し、スクリーン径が10mmのスクリーン(以下「10mmスクリーン」という。)を用いた場合には、11%である。従って、より多くの可燃物を回収することのできる10mmスクリーンが望ましい。
【0033】
図4は、分別装置1の熱回収効果を示す試験例であり、スクリーン径を変えたときのスクリーン9の通過分(スクリーン下)、サイクロン11での回収物(装置出口)、サイクロン12での回収物(サイクロン回収)の熱回収率を表している。30mmスクリーンを用いた場合には、サイクロン11での回収物の熱回収率が38%で、サイクロン12での回収物の熱回収率は20%であるのに対し、10mmスクリーンを用いた場合には、サイクロン11での回収物の熱回収率が60%で、サイクロン12での熱回収率は29%である。従って、10mmスクリーンを用いることが望ましい。
【0034】
以上のように本実施の形態では、ASRから土砂、ガラス、金属等を1台の装置で破砕機に影響を及ぼさないレベルまで分離することで設備コストを低減し、設置も容易になり、さらに水分の多いASRに付着した土砂ガラスを効果的に分離することが可能となり、ASRから可燃物を効率よく分別してセメント焼成装置で有効利用することができる。
【0035】
また、サイクロン11のディメンジョンを調整することで、サイクロン12で回収される硬質プラスチック類の回収割合を増量させることができる。
【0036】
また、受け入れたASRの性状によっては、分別装置1の前段に破砕装置を設置し、破砕した後分別装置1で分別処理を行ってもよい。
【0037】
1 ASRの分別装置
2 本体
3 投入口
4 スクリュー
5 回転軸
6 回転羽根
8 排出ロータ
9 スクリーン
10 排出口
11、12 サイクロン
13 誘引ファン
14 伝導装置
15 モータ
17 回転軸
18 モータ
A1、A2 空気
M 金属
P1 (主に硬質の)プラスチック類
P2 (主に軟質の)プラスチック類
P3 (回収した)プラスチック類
S 土砂ガラス