特許第6057482号(P6057482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6057482体のある領域に亘って注射液を提供するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057482
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】体のある領域に亘って注射液を提供するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20161226BHJP
   A61M 5/32 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   A61M5/20
   A61M5/32
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-542315(P2014-542315)
(86)(22)【出願日】2012年10月18日
(65)【公表番号】特表2014-533552(P2014-533552A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】US2012060818
(87)【国際公開番号】WO2013074244
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年8月6日
(31)【優先権主張番号】13/298,742
(32)【優先日】2011年11月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511005516
【氏名又は名称】ガブリエル インスティテュート, インク.
(73)【特許権者】
【識別番号】514109237
【氏名又は名称】スターンズ, スタンレー, ディー.
(73)【特許権者】
【識別番号】514109260
【氏名又は名称】ロイ, マックス, エイチ.; ジュニア
(73)【特許権者】
【識別番号】514109271
【氏名又は名称】デイビス, ドナルド, ジー.
(74)【代理人】
【識別番号】100167047
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸典
(74)【代理人】
【識別番号】100085785
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 昌典
(72)【発明者】
【氏名】スターンズ, スタンレー, ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ロイ, マックス, エイチ.; ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】デイビス, ドナルド, ジー.
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−527228(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/123161(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0068907(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/00 − 9/00
31/00
39/00 − 39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型注射装置であって、該注射装置(100)は、
取付エンド(104)と、射出エンド(106)と、針の外径(138)と、内部断面積(202)と、針の長手方向の軸(144)とを有する注射針(102)と、
開口第一端(124)と、前記注射針(102)の外径(138)よりも大きい内径(136)と、前記注射針(102)の長手方向の軸(144)とほぼ平行な長手方向の軸(150)とを備え、前記注射針(102)の長手方向の軸(144)を囲むように設けられるチューブ状に形成された注射針受容部材(108)を備えるハウジング(118)と、
前記ハウジング(118)の内部に位置し、前記注射針(102)とチューブを介して流体的に連通状態にあり、治療薬(116)を保持するようになった治療薬リザーバー(110)と、
液体(148)を保持するようになった第二リザーバー(140)と、
前記治療薬リザーバー(110)と連通状態にあるリザーバー接続導管(142)と、
前記第二リザーバー(140)内の液体(148)と流体結合しており、前記リザーバー接続導管(142)と連通する流体ドライブ(114)と、
前記注射針(102)又は前記注射針受容部材(108)に関係する直線ドライブ(120)とを備え、
前記直線ドライブ(120)は、前記注射針(102)を前記ハウジング(118)に近づく方向に直線的に変位させるか、又は、前記注射針受容部材(108)を前記ハウジング(118)から遠ざかる方向に直線的に変位させるようになっており、その時の前記直線的な変位の変位量と前記注射針(102)の内部断面領域(202)の積が変位容量となり、そして単位時間当たりの該変位容量によって流量が定まり、
前記注射針(102)が前記ハウジング(118)に近づく方向に直線的に変位しているか、又は、前記注射針受容部材(108)が前記ハウジング(118)から遠ざかる方向に直線的に変位している間、前記流体ドライブ(114)が、前記第二リザーバー(140)から前記リザーバー接続導管(142)へ前記液体(148)を前記流量で送り出すように且つ前記治療薬リザーバー(110)から前記治療薬(116)を前記流量でドライブするようになっており、
前記直線ドライブ(120)が、前記注射針(102)を前記ハウジング(118)に近づく方向に直線的に変位させるか、又は、前記注射針受容部材(108)を前記ハウジング(118)から遠ざかる方向に直線的に変位させる動作の間、前記治療薬リザーバー(110)から前記注射針(102)への流体的な連通状態が前記チューブによって維持される、
ことを特徴とする分散型注射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の注射装置であって、該注射装置は更に、
前記注射針(102)がその第一端(146)のところで所定位置に固定され、前記注射針受容部材(108)内にスライド可能に設けられ、そして前記直線ドライブ(120)が接続されるスライド部材(134)を備えることを特徴とする分散型注射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体のある領域に亘って治療を施すための器具に関する。より具体的には、本発明は、身体組織のある領域を通して、治療薬、溶液又は注射液を提供及び射出するための自動化された装置及びシステムに関する。本発明は更に、身体内のある治療対象部位を治療するために、その部位を横切って注射溶液を提供または注入するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮下注射器は、医療分野において薬物を投与するために広く用いられている。一般的に、皮下注射器は、薬瓶の栓や患者の体を貫通するための鋭利な先端部を有する針を備えている。針は、注射器バレルに対して固定的に又は取り外し可能に取り付けられる。実際の使用では、これらの注射器は、体内の一箇所の特定の部位に薬剤を供給する手段を提供する。使用時には、プランジャはバレル内に押し込まれ、それによって薬剤が放出される。このシステムは、注射器が発明されて以来ほとんど変わっていなく、治療薬の効果が隣接する細胞を通して伝達される単一の場所に治療薬を提供することを考慮したものである。ここで問題なのは、治療薬が細胞の集合体に対して作用することが意図されるようなものである時、たとえ組織の集合体の一側面から他の側面への距離が非常に小さくても、そのような伝達では、その効果が減退及び/又は遅延することである。専門医は、親指で注射器のプランジャを押し込むと同時に注射器を引き抜くことによって、上記の制約を克服すると共に拡散された薬液の提供を試みてきた。しかしながら、この技術は、習得が困難であり、また、特に所望の位置が腫瘍のように明瞭な境界を有する時は、所望の治療薬の量を所望の位置に適切に提供するには非効率的である。
【0003】
自動的に治療薬を供給するためのシステムとして構成されているものが従来からあるが、これらのものは、従来の注射器のような欠点を有しているか、または治療薬を供給する対象が血流のような動的な部位である必要が生じていた。血流などの動的部位への供給の場合、局部的に治療薬の拡散が必要な場合であっても、治療薬が身体組織の全体に亘ってしまい、つまり望ましくない拡散が生じてしまうことがあった。
【0004】
さらに、治療薬が放射性物質である場合など、治療薬の供給者側に危険が及ぶような場合、治療薬供給者に対する放射性物質の曝露を最小限とすることが望まれる。具体的には、治療薬供給者への曝露時間を制限したり、曝露自体を抑制または防止する供給装置を提供したり、または、使用される薬液の量を制限する供給装置を提供することにより行われる。
【0005】
そこで、身体組織の集合体におけるある一つの軌跡に沿って自動的に治療薬が射出される供給装置が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえに、本発明の主たる目的は、操作者のごく限られた操作によって、身体組織の集合体におけるある一つの軌跡に沿って治療薬が射出される供給装置を提供することである。
【0007】
特に、本発明の主たる目的は、注射溶液が体内に注入されながらそれと同時に、注射針を引き込む供給装置を利用したシステムを提供することである。ここで、治療薬としての液体は、リザーバーに蓄えられ、注射針を引き込む動作に関連付けられたポンプ又は分離したシリンダーを介して供給される。このシステムでは、必要な治療薬が供給されると、使用後には治療薬はシステム内に残存しない。注射針は、その中の注射溶液が好ましくは他の液体によって押されながら、差圧ゼロで注射溶液を体内に導入するように動作する。これにより、治療薬が放射性物質であるような上述したケースにおいては、治療薬の供給者や施術者に対する放射性物質の曝露が減少する。このユニットは、手持形式のものであっても、遠隔機械制御形式のものであっても良い。すなわち、液体は注射針から“一箇所に噴出”されると言うのではなく、むしろ注射針を引き込んだ際のその注射針の軌跡に沿って拡散して身体内に残存する。注射針は、治療薬として放射性物質を身体に導入することもあるため、理想的には、注射針受容部材に注射針が包囲されるような構成とすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した利点は、使用中は管状の注射針受容部材に包囲される注射針と、ハウジングの内部に設けられ、注射針と流体的に連通している治療薬リザーバーと、第二リザーバーと、治療薬リザーバーと連通しているリザーバー接続導管と、第二リザーバーと連通しており且つリザーバー接続導管と連通している流体ドライブと、注射針又は注射針受容部材に取り付けられた直線ドライブとを備える装置によって達成される。好ましくは、直線ドライブは一定の速度で注射針又は注射針受容部材を直線的に変位させ、その直線変位量と注射針の内部断面領域の積が、変位容量と流量を決定する。直線ドライブは、それ自体が治療目的のものではない液体を、前記第二リザーバーから前記リザーバー接続導管に向けて、前記直線変位が生じている間、前記の流速で送り出す。その液体は、前記治療薬リザーバーから前記注射針に向けて、その治療針が身体から引き抜かれている間、治療薬を後ろから押し出すように作用する。
【0009】
実際の動作では、内部断面領域を持つ注射針は先ず最初に体の内部へ挿入され、そしてその次に、注射針受容部材を備えるハウジングの内部に向かって、直線ドライブによって一定の速度で引き込まれる。その結果、注射針は引き込み動作の間に包囲されることになる。注射針から射出される治療薬の流量は、注射針が引き込まれる速度と注射針の断面領域との積によって決まる。注射針が引き込まれる間、ポンプによって、第二リザーバーからリザーバー接続導管を通過して治療薬リザーバーに向けて、液体が上述の原理で決まる流速で押し出される。治療薬リザーバーは、チューブ(管)をコイル状にしたものであることが好ましく、その中に治療溶液を貯留する。治療薬リザーバーを含む管の断面積及び直径が小さいことにより、治療薬は液体と混合することなく移動し、所定の流量で注射針から射出される。
【発明の効果】
【0010】
これにより、注射針が引き込まれている間、差圧を生じることなく注射液を身体内に射出することができる。
【0011】
前述の及びその他の目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら行う、以下の本発明の詳細な説明を読むことで、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る注射装置が初期位置にある状態を示した図である。
図2図2は、本発明に係る注射針の断面を示した図である。
図3図3は、受容部材に対して注射針が変位している間の、液体の容量変化を示した図である。
図4図4は、本発明の代替実施形態に係る注射装置が初期位置にある状態を示した図である。
図5図5は、本発明の代替実施形態に係る注射装置が最終位置にある状態を示した図である。
図6図6は、本発明の代替実施形態に適用可能なカートリッジアセンブリを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述した本発明の特徴、利点及び目的と、これから明らかになる他のそれらが達成され且つ詳細に理解されるように、上で簡単に要約した本発明のより詳細な実施形態についての説明を、以下、本願明細書の一部を構成する添付図面を参照しながら行う。本願に添付の図面は、本発明に係る典型的な好適な実施形態を示すに過ぎず、有効な他の実施形態に変更することを許容するものであり、本願の権利範囲を限定するものではないという点に注意すべきである。
【0014】
本発明は、体のある領域部分に亘って注射液を提供するための改良を含んでいる。より具体的には、本願発明は、従来の注射器のように機能するもの、即ち、ある局所的な一部分に注射液を射出するというよりは、身体組織のある領域に亘ってより広く、治療薬、溶液又は注射液を提供または注入するための注射器を含んでいる。
【0015】
理想的には、本発明は、身体から注射針を引き抜く間、差圧を生じることなく、ある一線に沿って治療薬を拡散する注射装置を提供するものである。この装置は、注射針と、管状の注射針受容部材を備えたハウジングと、治療薬を保持するための治療薬リザーバーと、第二リザーバーと、リザーバー接続導管と、流体ドライブと、直線ドライブとを備えている。
【0016】
先ず最初に、図1には、注射針102、注射針受容部材108を含むハウジング118、治療薬リザーバー110、第二リザーバー140、リザーバー接続導管142、流体ドライブ114及び直線ドライブ120を備える注射装置100が示されている。ハウジング118は、必要な各要素を保持することができて、使用が容易であるなら、図1に示すようなピストル形状のグリップタイプや、図4及び図5に示すようなロッド形状のグリップタイプなどを含んで、どのような形状に構成されても良い。
【0017】
注射針102は、取付エンド104と射出エンド106とを備えており、外径138を有する。この構造は、注射針102の内部断面領域202を画定し(図2を参照)、また、注射針102の長さ方向の軸144を画定する。注射針102の射出エンド106は、容易に理解されるとおり、皮膚への貫通時に傷つけないよう鋭利に尖っているか、又は注射部が予め存在する場合には鋭利とせずに平らに形成されても構わない。操作時又は使用時に必要な注射針の全長を短くするために、注射針102は、その取付エンド104がスライド部材104に対してそのスライド部材の第一端146の所で装着されることが好ましい。
【0018】
注射針102を引っ込めた後その注射針102を最終的に包み込み、また、注射針102を引っ込めている間にそれを周囲から遮蔽するように構成されたものが、注射針受容部材108である。注射針受容部材108は管状であり、また、注射針102と連通するための開口第一端124を備えている。容易に理解されるとおり、注射針102を容易に引っ込めることができるように、注射針受容部材108の内径136は注射針102の外径138よりも大きい。注射針102を引っ込める機能及びそれを遮蔽する機能に合わせるため、注射針受容部材108は、注射針102の長さ方向の軸144とほぼ平行な長さ方向の軸150を備えている。
【0019】
治療薬リザーバー110は、注射針に供給する治療薬116を保持するようになっている。すなわち、治療薬リザーバー110は、注射針102と液体連通状態にあり、その結果、先ず治療薬リザーバー110から治療薬116が注射針102に流れ、そしてその治療薬116は人体内に射出される。好ましくは、治療薬リザーバー110は、特に治療薬116が放射性物質である場合にその治療薬116の内容物に対する安全なバリアー領域を構成するハウジング118内に配置される。理想的には、治療薬リザーバー110は、好ましくは注射針102と同様の断面積を有する、所定の長さの細い管によって構成される。治療薬リザーバー110の内壁とその断面積が小さいことに関連する表面張力は、治療薬116が確実に毛細管現象を呈するように選択されるのが理想である。すなわち、治療薬116は、治療薬リザーバー110を流れることはできるが、いかなる上流の流れとも混合することなくそれ自体粘性流体状態を維持する。
【0020】
第二リザーバー140は、例えば生理食塩水である、特に注射溶液として意図したものではなく、治療薬と関係して危険物を生じることのない、好ましくは治療薬116と化学的に区別できるものである液体148を保持できるようになっている。
【0021】
好ましくは治療薬リザーバー110と同等の内径を有するリザーバー接続導管142は、治療薬リザーバー110の上流側に接続されることで治療薬リザーバー110と連通状態となる。
【0022】
第二リザーバー140及びリザーバー接続導管142の中間には、第二リザーバー140からリザーバー接続導管142への液体の流れを発生(駆動)する流体ドライブ114が設けられる。流体ドライブ114は、例えばポンプであり、第二リザーバー140の内部の液体148と連通すると共に、リザーバー接続導管142とも連通する。このような接続関係であることにより、流体ドライブ114は、第二リザーバー140から液体148を引き込み、リザーバー接続導管142を通して液体148を送り出す。治療薬リザーバー110の断面積が狭いことにより、第二リザーバー140からの液体148は、混合することなく治療薬リザーバー110を通して治療薬116を押し出すように作用する。さらに、リザーバー接続導管142及び治療薬リザーバー110の断面積が小さいこと及びその中での表面張力により、液体148及び治療薬116との間に、その間を分離する為の分離体として空気の泡が望まれる場合には、その空気の泡を導入しても良い。
【0023】
最後に、本装置は、注射針102又は注射針受容部材108に関連して直線ドライブ120を備えている。流体ドライブ114によって第二リザーバー140からの液体148がリザーバー接続導管142を通して押し出されることにより、治療薬116が供給される間、注射針102は、一定の速度で身体から引き抜かれていく。図3に示されるように、直線ドライブ120による注射針102の変位量304と注射針102の内部断面積との積によって変位容積302が決まり、そして、単位時間当たりの変位量に関連して流量が決まる。この構造、注射針の引き抜き速度、及び流体ドライブからの流速により、注射針102を通過する注射液の流速は、身体から注射針102を引き抜くことに伴う、単位時間当たりに生じる注射液射出容量に等しくなる。すなわち、差圧を生じさせることなく治療薬116を身体内に提供する。このゼロ差圧は、人間による操作では達成することはできず、また、治療薬116が意図された容量で所望の場所に正確に供給することを確実にする。図1に示されるように、注射針102の確実な操作性を確保するために、直線ドライブ120は、注射針102に取り付けられても良く、又は、注射針受容部材108の内部をスライドするように適切なサイズで構成されたスライド部材134に取付けられても良い。このスライド部材134は、チューブ112のサイズに合わせた内部通路135を有して、その内部通路を通して注射針102と直接接続されても良く、又は、注射針102及びチューブ112を両端にそれぞれ接続するための取付具を備え、それらを接続することにより導管として機能する内部通路135を有しても良い。注射針102が最終的に図4及び図5にそれぞれ示されるように配置されるように、操作中に注射針102が引き込まれることを確実とするために、直線ドライブ120は、ハウジング118に固定されるか、または、注射針受容部材108に固定されるか、更にはまた、他の部材に固定される。あるいは、注射針受容部材108が注射針102に向かって動き、その結果として身体に対する装置100の再配置と同時に、注射針102の引き込みと同様に注射針102が包囲されるように、直線ドライブ120が注射針受容部材108に固定されても良い。この構成とすれば、注射針102の引き込み量を直ちに知ることができる。スライド部材134は、注射針102と治療薬リザーバー110の間にあるチューブ112を配置するための場所も提供するものである。
【0024】
図4及び図5には、ロッド形状のグリップを備える注射装置100が示されている。該注射装置100は、注射針102、注射針受容部材108、治療薬リザーバー110、ハウジング118、該ハウジング118に関連して設けられた直線ドライブ120と、第二リザーバー140と、ハウジング118の外部に備えられ、リザーバー接続導管142を介して接続される流体ドライブ114を具備する。図4は、ロッド形状のグリップを備える注射装置100が射出を行う前の及び射出中の状態を示しており、注射針102が最も伸びた位置となっている。図4及び図5に示す代替的実施例は、直線ドライブ120が縮小動作することにより、注射針102が格納された状態が最も分かり易いように、注射針102を注射針受容部材108内に位置させるものである。図5は、ロッド形状のグリップを備える注射装置100が注射液の射出を終えた状態を示しており、その時、直線ドライブ120は完全に引き込まれており(格納されており)、また、注射針102は完全に包囲されている。
【0025】
第一実施例と同様に、注射針102は、注射針受容部材108内に設けられるスライド部材134に対して、その取付端104に取り付けられる。ロッド形状グリップ形式の注射装置100の全ての構成要素は、注射装置100の長手方向の軸400に沿って一直線に配置されている。
【0026】
治療薬リザーバー110は、前にも説明したとおり、スライド部材134の一部周囲にコイル状に巻かれた、所定の長さを有した細い管によって構成されても良い。
【0027】
図4及び図5に示されるように、注射針102は、注射装置100の一端に配置され、好ましくは、周知の取付手段によってスライド部材134に接続される。スライド部材134はその内部に、全長にわたって内部通路135を備えており、その内部通路135は、治療薬リザーバー110に接続されている。治療薬リザーバー110の殆どの長さ部分はコイル状に巻かれたものである。注射針受容部材108は、操作中にその位置を保ち、また直線的に動くように、ハウジング108の上側部分404から延び出たガイドアーム402と連携するようにしても良い。ガイドアーム402は、注射針102が患者との接触を維持しながら注射針の引き込みを行えるよう、直線ドライブ120のストロークと同じ長さだけ延び出ていれば良い。拘束を減少させるため、ガイドアーム402は通路406から伸縮するように構成されても良く、また、必要に応じてスプリングによる負荷が加えられても良い。ピストン及びシリンダーのアセンブリなどによって構成される直線ドライブ120は、ガイドアーム402から見てスライド部材134の反対側に配置されても良い。また、直線ドライブ120は、注射針受容部材108を前方方向に押し出し、その結果、注射針102が引き込まれる状態となるように延び出るように構成されても良い。すなわち、直線ドライブ120が注射針102と同一の方向に動く第一実施例とは異なり、この第二実施例では、直線ドライブ120は注射針102と相対的に、つまり注射針102とは正反対の方向に動くことになる。
【0028】
図4及び図5に示されるように、また、特に図6に明瞭に示される如く、ハウジング118への装着及び脱着が容易となるように、注射針102と治療薬リザーバー110は単一のカートリッジユニット600の構成としても良い。図4及び図5に示されるように、第二リザーバー140から治療薬リザーバー110へ治療薬を運ぶためのチューブ142は、治療薬リザーバー134がスライド部材134と共に移動する操作中に、伸縮するようになったコイル状の部分をスライド部材134の左側(図面上)に有しても良い。
【0029】
カートリッジユニット600は伸縮型チューブ受容体408内に装着される。この伸縮型チューブ受容体408は、注射針受容部材108が前進することにより身体から注射針102が引き抜かれることの動作が次に来る、直線ドライブ120の最初の動作中は伸びた状態である。伸縮型チューブ受容体408は導管412の端部をその中に納めており、この導管412のコイル状になっている部分が、伸縮型チューブ受容体408の移動量を吸収する。伸縮型チューブ受容体408は、マウントブロック410を介して、伸縮型チューブ受容体408を前方へ押しやる直線アクチュエータに固定されている。この構造により、伸縮型チューブ受容体408は伸縮自在に伸びることができる。コイル状の導管412は伸縮型チューブ受容体408の端部から延び出て第二リザーバーに接続されている。

【0030】
好都合なことは、治療薬116に直接触れる又はその放射性エネルギーによって照射されるもの全ての構成要素を、注射装置100のハウジング118内部に配設することにより、使用した後、治療薬リザーバー110、チューブ112及び注射針102を、隔離及び破壊処理するために取り除くことができ、またその一方、遮蔽処理が施されたものであっても構わないハウジング118は、次の使用に備えて隔離して保存又は消毒洗浄できることである。すなわち、治療そのものには必ずしも必須の物ではない、非治療薬ユニット(第二リザーバー140、流体ドライブ114及びリザーバー接続導管142)をハウジング118の外側に配置させることによって、これらのユニットは廃棄処分されたり又は隔離して保管される必要がなく、したがって、治療の後に直ちに再使用が可能である。これは特に、もし操作中に、治療薬リザーバー110が必要とされる治療薬116の容量よりも少ない容量しか供給できないような場合に大きな助けとなる。上記の構成に代えて、自己包含型の注射装置として、全ての構成要素をハウジング118の内部に配置することもできる。しかしながらこの場合、より厳格な規制に沿って液体148の廃棄処分が求められる、使用後に、全ての構成要素が一回限りの使用という制限を受けたり潜在的な隔離の必要性が生じたりする対象となるであろう。
【0031】
治療薬116が放射性同位体を含んでいる限り、ハウジング118及び注射針受容部材108は、治療薬116が放射能を有するときに注射針102から射出される放射線から操作者を保護するために、遮蔽素材で構成されるか又は遮蔽素材が塗布されていても構わない。好ましい実施形態では、注射針受容部材108はタングステンで構成される。治療薬リザーバー110についても、そのような場合には、操作者を保護する目的で、遮蔽物質で構成されるか又は遮蔽物質が塗布されても良い。例えば、エネルギー的にプラスチックを透過することができない放射性同位体が仮に選択された場合には、ハウジング118や注射針受容部材108といった上述の構成要素は、プラスチック層を備えるか又はそれら自体がプラスチックによって構成されても良い。
【0032】
図1に示した第一実施例において、第二リザーバー140と注射針102の中間に流量計126が配置されても良い。この流量計126は、リザーバーからの流量と身体を通って注射針102が引き込まれることに関連した流量とが確実に同一となるように、リニアポジションセンサ130から送られて来るデータと比較するためにコンピュータ128に対してデータを送る。
【0033】
ハウジング118は操作スイッチ132を一体的に備えることもできる。この操作スイッチ132は、注射針102を引き込む間、その注射針102が通過する軌跡に沿って注射針102の射出エンド106から治療薬116が確実に射出されるように、直線ドライブ120及び流体ドライブ114の両方を同時に有効化することを操作者に可能とさせるものである。
【0034】
使用後、注射針102、治療薬リザーバー110及びチューブ112は、安全基準に従ってハウジング118から廃棄処分のために取り外され、他方、治療薬116と接触していない残りの構成物は再使用される。
【0035】
本願に係る発明は従来技術を超える顕著な利点を提供する。病気の治療薬として高いpHの放射性同位体が用いられる場合、放射性同位体と血液が混合することは望ましくない。むしろ、放射性同位体が組織内で線に沿って残存すること、特に、身体組織を通る注射針102の通過する軌跡に沿って残存することが望ましい。高いpHの放射性同位体は典型的な反応として、毛細血管において凝固したり、放射性同位体が血流に進入することを妨げたりする。これにより、たとえ必要な容量の液体を射出できたとしても、血流に進入する放射性同位体には望ましくない損失が生じることになる。理想的には、放射性同位体の放射能レベルが非常に小さいものであるため、しばしば各射出ラインの間隔が6ミリメートルの範囲内といったような形で複数の射出ラインが利用される。各注射針に対応した複数の射出ラインは、腫瘍の相当な部分を覆うことになり、潜在的には約90パーセントの放射性同位体が腫瘍の中に残存して効果を発揮するものである。これは、身体への進入を行う部位を最小限にとどめて残存物を供給するものであり、現行手法に対して実質的な障害リスクを十分に低くするものである。
【0036】
本発明の精神又は請求の範囲を逸脱しない範囲において、開示した実施形態について種々の代替及び/又は変更を行っても良いことは言うまでもない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6