(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る伝送装置100の概略構成を示す機能ブロック図である。伝送装置100は、通信回路110と、磁界アンテナ120と、マッチング回路(共振回路)130と、シグナル電極140とを備える。伝送装置100は、磁界アンテナ120を用いて、例えば非接触ICカード等として構成される磁界用通信装置と、磁界信号を介して通信(磁界通信)を行うことができるとともに、シグナル電極140を用いて、シグナル電極140に接触する伝送媒体を介して電気的に結合される電界用通信装置と、電界信号を介して通信(電界通信)を行うことができる。シグナル電極140は、電界アンテナの一部として機能する。
【0022】
まず、伝送装置100における、磁界通信について、伝送装置100が備える各機能ブロックの詳細とあわせて説明する。
【0023】
通信回路110は、伝送装置100が備える磁界アンテナ120および電界アンテナから出力される信号を制御する。通信回路110は、磁界信号を介した通信においては、所定の周波数の磁界信号を送信させるための制御信号を磁界アンテナ120に送信する。また、通信回路110は、非接触ICカード等の磁界用通信装置から磁界アンテナ120が受信した磁界信号に基づいて情報処理を行う。通信回路110は、グランドに接続されている。
【0024】
磁界アンテナ120は通信回路110に接続されており、通信回路110からの制御信号に基づいて所定の周波数の磁界信号を送信する。磁界アンテナ120は、例えばループアンテナにより構成される。磁界アンテナ120から送信された磁界信号は、磁界用通信装置(図示せず)により受信される。磁界用通信装置は、磁界信号により伝送装置100と通信可能なアンテナと、所定の情報を記憶するとともに通信装置全体を制御するICチップと、を含む。磁界信号を受信した磁界用通信装置は、ICチップ内の情報を信号化して、アンテナから発信する。磁界アンテナ120は、磁界用通信装置からの磁界信号を受信する。
【0025】
非接触ICカード等の磁界用通信装置が、磁界アンテナ120から送信される磁界信号を受信可能な範囲に配置されると、伝送装置100と磁界用通信装置との間における磁界信号を介した磁界通信が確立される。このように、通信回路110と、磁界アンテナ120とは、従来公知の磁界通信システム(非接触通信システム)における磁界伝送装置(R/W装置)として機能する。
【0026】
次に、伝送装置100における、電界通信について説明する。
【0027】
マッチング回路130は、通信回路110に接続される。マッチング回路130は、通信回路110のインピーダンスと、電界用通信装置のインピーダンスとを整合させるための回路である。マッチング回路130は、例えばコンデンサおよびインダクタ等を組み合わせた公知のLC回路として構成することができる。本実施形態において、マッチング回路130は、その一端がグランドに接続されている。
【0028】
シグナル電極140は、電界通信を行う場合に、金属等の導体または誘電体により構成される伝送媒体と結合する結合電極である。シグナル電極140は、例えば金属板により構成される。
【0029】
図2は、伝送装置100と電界通信が可能な電界用通信装置の一例を示す図である。電界用通信装置150は、2個の入出力端子152aおよび152bと、2個の入出力端子152aおよび152bに接続された送受信機151とを備える。送受信機151は、伝送装置100との通信において、例えば10kHzから10GHzの高周波信号(または高周波電力)を送受信する。電界用通信装置150の一方の入出力端子152aは、グランド、または仮想的なグランドとして機能する端末線路170に接続されている。端末線路170の詳細については後述する。電界用通信装置150の他方の入出力端子152bが伝送媒体を介してシグナル電極140に電気的に結合されると、伝送装置100と電界用通信装置150との間における電界通信が確立される。このように、マッチング回路130と、シグナル電極140とは、電界アンテナとして機能する。
【0030】
上述のように、本実施形態に係る伝送装置100では、1つの通信回路110に、磁界アンテナ120と、電界アンテナ(マッチング回路130およびシグナル電極140)とが接続されている。そのため、伝送装置100では、磁界アンテナ120および電界アンテナの双方から、同時に同じ内容(データ)の信号を送信することができる。そのため、ユーザは、磁界通信および電界通信のいずれかを自由に選択できる。
【0031】
また、伝送装置100は、従来公知の磁界通信システムにおける磁界伝送装置として機能する通信回路110および磁界アンテナ120に対して、マッチング回路130およびシグナル電極140を設けることにより構成される。そのため、伝送装置100は、既存の磁界通信システム上に、電界信号による伝送システムを構築することにより構成することが可能である。つまり、伝送装置100は、既存の磁界通信システムを利用して、電界通信のための電界アンテナを設けることにより構成される。そのため、伝送装置100によれば、従来公知の磁界通信(非接触通信)と、電界通信との双方の機能を備える装置を新たに構築する場合と比較して、装置を作成するための費用を低減できる。また、伝送装置100によれば、既存の磁界通信システムを廃棄することなく活用できる。
【0032】
ここで、再び
図2を参照して、仮想的なグランドとして機能する端末線路について説明する。
図2には、一例として、電界用通信装置150と、伝送媒体160と、端末線路170とを示している。
【0033】
電界用通信装置150は、2個の入出力端子152aおよび152bと、送受信機151とを備える。一方の入出力端子152bは、伝送媒体160と電気的に結合する端子である。他方の入出力端子152aは、金属等の導体または誘電体により構成される端末線路170と電気的に結合されている。ここでは、一例として、送受信機151が高周波信号を送信する場合について説明する。
【0034】
送受信機151が伝送装置100と電界通信により高周波信号を送信する場合、端末線路170に結合された送受信機151の入出力端子152aから端末線路170に電流が流れる。これと同時に、端末線路170に流れる電流と大きさが同じで向きが逆の電流が、入出力端子152bから伝送媒体160に流れる。このようにして、送受信機151は、高周波信号を伝送媒体に送り出す。
【0035】
端末線路170は、90度の電気長を有する。90度の電気長とは、入出力端子152aに接続された端部170aからもう一方の端部170bまでの線路の長さが、伝送する高周波信号の波長の4分の1の長さ、すなわち、入出力端子152aに接続された端部170aからもう一方の端部170bまでに至るあいだに、伝送する高周波信号の位相が90度進む長さである。
【0036】
したがって、入出力端子152aに接続された端部170aから端末線路170側に流れる電流が、端末線路170のもう一方の端部170bで反射し、一往復してふたたび入出力端子152aに接続された端部170aに戻ると、それまでの間に2分の1波長分の距離を経て、位相が180度進む。
【0037】
このとき、
図2に示すように、電気長が90度、すなわち長さが伝送する高周波信号の波長の4分の1で、端部170bが開放された端末線路170に、送受信機151が高周波信号を入力するので、端部170bの電圧振幅が最大で電流振幅がゼロ、端部170aの電圧振幅がゼロで電流振幅が最大の定在波が端末線路170に発生し、端部170aに電流が流れる。すなわち、端末線路170が90度の電気長を有する場合には、端部170aの電圧振幅がゼロである一方、電流が流れるので、
図3に模式的に示すように、端部170aは、仮想的にグランドに短絡されたように動作する。そのため、端末線路170に接続された入出力端子152aは、仮想的にグランドに接続された短絡端子とみなすことができる。
【0038】
図2に示すように、端末線路170の電気長が90度、すなわち、端末線路170の、送受信機151の入出力端子152aに接続される端部170aから入力された信号がもう一方の端部170bで反射して一往復してくる反射波の位相が180度のとき、入出力端子152aに流れる電流が最大になる。そのため、端末線路170の電気長が90度の場合、最も効率的に電界通信が行われる。ただし、電界通信を行うに際しては、端末線路170の電気長が90度を中心に±45度の範囲内、つまり反射波の位相が90度より大きく270度より小さい範囲内で動作しても、高周波を伝送するための所定の効果を生じる。従って、端末線路170は、90度を中心に±45度の範囲内を含む、ほぼ90度の電気長を有していればよい。また、端末線路170は、((2n+1)・90±45)度の電気長(但し、nは0以上の整数)を有していてもよい。端末線路170は、((2n+1)・90±45)度の電気長を有する場合、
図2を参照して説明したのと同様の原理により、仮想的なグランドとして機能する。
【0039】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る伝送装置200の概略構成を示す機能ブロック図である。伝送装置200は、通信回路210と、第1磁界アンテナ220と、マッチング回路(共振回路)230と、シグナル電極240と、第2磁界アンテナ250とを備える。本実施形態に係る伝送装置200は、第1実施形態に係る伝送装置100と同様に、磁界用通信装置と磁界通信を行うことができるとともに、電界用通信装置と電界通信を行うことができる。以下、第1実施形態に係る伝送装置100と同一の点については適宜説明を省略し、主に異なる点について説明する。
【0040】
本実施形態に係る伝送装置200は、実質的に2つの伝送装置により構成される。伝送装置の一方(第1伝送装置)は、通信回路210と、第1磁界アンテナ220とを備える、磁界伝送装置である。第1伝送装置は、例えば既存の磁界伝送装置である。伝送装置の他方(第2伝送装置)は、マッチング回路230と、シグナル電極240と、第2磁界アンテナ250とを含む。第2実施形態に係る伝送装置200は、第1伝送装置と第2伝送装置とが組み合わされることにより構成される。
【0041】
本実施形態における通信回路210は、第1実施形態の通信回路110に対応し、第1磁界アンテナ220から出力される信号を制御する。通信回路210は、グランドに接続されている。第1磁界アンテナ220は、第1実施形態における磁界アンテナ120に対応し、通信回路210からの制御信号に基づいて所定の周波数の磁界信号を送信する。通信回路210および第1磁界アンテナ220は、例えば磁界通信を実現するための既存の設備(磁界伝送装置)である。
【0042】
磁界用通信装置(図示せず)が、第1磁界アンテナ220から送信される磁界信号を受信可能な範囲に配置されると、伝送装置200と磁界用通信装置との間における磁界通信が確立される。本実施形態では、通信回路210と、第1磁界アンテナ220とが、従来公知の磁界通信システムにおける磁界伝送装置として機能する。
【0043】
本実施形態では、第1磁界アンテナ220が送信する磁界信号を受信可能な位置に、第2磁界アンテナ250が配置される。第2磁界アンテナ250は、マッチング回路230に接続されている。第2磁界アンテナ250では、第1磁界アンテナ220から送信される磁界信号が受信されると、受信した磁界信号に基づいてマッチング回路230に供給される制御信号が生成される。第2磁界アンテナ250で生成された制御信号は、マッチング回路230に供給される。
【0044】
本実施形態におけるマッチング回路230およびシグナル電極240の機能は、それぞれ第1実施形態のマッチング回路130およびシグナル電極140と同様である。本実施形態では、マッチング回路230に、第2磁界アンテナ250から信号が供給される点が、第1実施形態と異なる。
【0045】
本実施形態においても、シグナル電極240が伝送媒体を介して電界用通信装置と電気的に結合された場合に、伝送装置200と電界用通信装置との間で電界通信が確立される。すなわち、本実施形態では、マッチング回路230と、シグナル電極240とが、電界アンテナとして機能する。
【0046】
このように、本実施形態に係る伝送装置200によっても、第1磁界アンテナ220および電界アンテナの双方から、同時に同じ内容(データ)の信号を送信することができる。そのため、ユーザは、磁界通信および電界通信のいずれかを自由に選択できる。
【0047】
また、伝送装置200は、例えば磁界伝送装置として機能する第1伝送装置が既存の設備として設けられていたとしても、当該既設の第1伝送装置に対して、新たに第2伝送装置を設けることにより構成することができる。このように、伝送装置200は、既存の磁界通信システムを利用して、電界通信のための電界アンテナを設けることにより構成することができる。そのため、伝送装置200によれば、従来公知の磁界通信と、電界通信との双方の機能を備える装置を新たに構築する場合と比較して、装置を作成するための費用を低減できる。また、伝送装置200によれば、既存の磁界通信システムを廃棄することなく活用できる。さらに、本実施形態では、既設設備に対して通信回路210とマッチング回路230とを接続するための配線工事を必要としないため、より簡便に既設設備に対して電界アンテナを設けやすい。また、既設設備である第1伝送装置において、外装ケースが接地された金属等で構成されている場合には、グランド接続も容易であり、第2伝送装置を既存設備に外付けすることにより、伝送装置200を構成することができる。
【0048】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係る伝送装置300の概略構成を示す機能ブロック図である。伝送装置300は、通信回路310と、第1磁界アンテナ320と、マッチング回路(共振回路)330と、シグナル電極340と、第2磁界アンテナ350と、グランド電極360とを備える。
【0049】
本実施形態に係る伝送装置300は、2つの独立した伝送装置により構成される。独立した伝送装置の一方(第1伝送装置)は、通信回路310と、第1磁界アンテナ320とを備える、磁界伝送装置である。第1伝送装置は、例えば既存の磁界伝送装置である。独立した伝送装置の他方(第2伝送装置)は、マッチング回路330と、シグナル電極340と、第2磁界アンテナ350と、グランド電極360とを含む。すなわち、第3実施形態に係る伝送装置300は、第1伝送装置に第2伝送装置が組み合わされることにより構成される。
【0050】
本実施形態に係る伝送装置300は、第2実施形態に係る伝送装置200と同様に、磁界用通信装置と磁界通信を行うことができるとともに、電界用通信装置と電界通信を行うことができる。以下、第2実施形態に係る伝送装置200と同一の点については適宜説明を省略し、主に異なる点について説明する。
【0051】
伝送装置300が備える通信回路310、第1磁界アンテナ320、マッチング回路330、シグナル電極340および第2磁界アンテナ350は、それぞれ、第2実施形態に係る伝送装置200が備える通信回路210、第1磁界アンテナ220、マッチング回路230、シグナル電極240および第2磁界アンテナ250に対応するため、ここではその詳細な説明を省略する。本実施形態では、マッチング回路330と、シグナル電極340とが、電界アンテナとして機能する。
【0052】
本実施形態に係る伝送装置300では、第2実施形態に係る伝送装置200と異なり、マッチング回路330はグランドに接続されていない。伝送装置300のマッチング回路330は、金属板等により構成されるグランド電極360に接続されている。グランド電極360は、通信回路310が接続されたグランドの近傍に配置される。ここで、グランドの近傍は、グランド電極360が、通信回路310が接続されたグランドを構成する金属板等と容量結合可能な位置をいう。すなわち、グランド電極360は、容量結合によりグランドと接続される。これにより、グランド電極360に接続されたマッチング回路330は、実質的にグランドに接続された状態となる。
【0053】
第3実施形態に係る伝送装置300においても、第2実施形態に係る伝送装置200と同様に、第1磁界アンテナ320および電界アンテナ(マッチング回路330およびシグナル電極340)の双方から、同時に同じ内容(データ)の信号を送信することができる。そのため、ユーザは、磁界通信および電界通信のいずれかを自由に選択できる。
【0054】
また、伝送装置300は、第2実施形態に係る伝送装置200と同様に、既存の磁界通信システム(第1伝送装置)を利用して、電界通信のための電界アンテナ(第2伝送装置)を設けることにより構成することができる。そのため、伝送装置300によれば、従来公知の磁界通信と、電界通信との双方の機能を備える装置を新たに構築する場合と比較して、装置を作成するための費用を低減できる。また、伝送装置300によれば、既存の磁界通信システムを廃棄することなく活用できる。さらに、本実施形態では、既設設備に対して通信回路210とマッチング回路230とを接続するための配線工事を必要とせず、また、マッチング回路330をグランドに接続する必要が無い。そのため、本実施形態では、独立した第2伝送装置を、既設設備である第1伝送装置と組み合わせて使用することができる。さらに、第2伝送装置は、第1伝送装置とは独立して構成されるため、第2伝送装置を第1伝送装置に容易に着脱できる。
【0055】
(第4実施形態)
図6は、本発明の第4実施形態に係る伝送装置400の概略構成を示す機能ブロック図である。第4実施形態に係る伝送装置400は、通信回路410と、第1磁界アンテナ420と、マッチング回路(共振回路)430と、シグナル電極440と、第2磁界アンテナ450と、接続端子470とを備える。接続端子470は、伝送装置400の使用時に、端末線路460と接続される。
【0056】
本実施形態に係る伝送装置400も、2つの独立した伝送装置により構成される。独立した伝送装置の一方(第1伝送装置)は、通信回路410と、第1磁界アンテナ420とを備える、磁界伝送装置である。第1伝送装置は、例えば既存の磁界伝送装置である。独立した伝送装置の他方(第2伝送装置)は、マッチング回路430と、シグナル電極440と、第2磁界アンテナ450と、接続端子470とを含む。第2伝送装置は、接続端子470に接続された端末線路460を含んでいてもよい。第4実施形態に係る伝送装置400は、第1伝送装置に第2伝送装置が組み合わされることにより構成される。
【0057】
本実施形態に係る伝送装置400は、第3実施形態に係る伝送装置300と比較して、グランド電極360に代えて、端末線路460を備える点において異なる。本実施形態では、マッチング回路430と、シグナル電極440とが、電界アンテナとして機能する。
【0058】
端末線路460は、金属等の導体または誘電体により構成され、ほぼ90度の電気長を有する。端末線路460は、伝送装置400により電界通信が行われる際に、上述した原理により仮想的なグランドとして機能する。そのため、本実施形態に係る伝送装置400においても、マッチング回路430は、実質的にグランドに接続された状態となる。
【0059】
従って、本実施形態に係る伝送装置400によっても、第3実施形態に係る伝送装置300と同様に、ユーザは、磁界通信および電界通信のいずれかを自由に選択できる。また、伝送装置400によれば、従来公知の磁界通信と、電界通信との双方の機能を備える装置を新たに構築する場合と比較して、装置を作成するための費用を低減できる。さらに、本実施形態では、独立した第2伝送装置を、既設設備である第1伝送装置と組み合わせて使用することができる。また、第2伝送装置は、第1伝送装置とは独立して構成されるため、第2伝送装置を第1伝送装置に容易に着脱できる。
【0060】
(第5実施形態)
図7は、本発明の第5実施形態に係る伝送システム500の概略構成を示す機能ブロック図である。本実施形態では、例えば上述の第1乃至第4実施形態で説明したような磁界通信と電界通信とを選択的に実行可能な伝送装置510を使用した、通信の一例について説明する。本実施形態では、一例として、ユーザが、電子乗車券520を用いて、自動改札機530に構成された伝送装置510と通信を実行させる場合について説明する。また、本実施形態では、電子乗車券520はカード型の磁界用通信装置(いわゆる非接触ICカード)であるとして説明する。ただし、電子乗車券520は、必ずしもカード型でなくてよく、他の任意の形態であってよい。
【0061】
本実施形態において、伝送装置510は、通信回路511と、第1磁界アンテナ512と、マッチング回路(共振回路)513と、シグナル電極514と、第2磁界アンテナ515とを備える。本実施形態における伝送装置510は、上述した第2実施形態に係る伝送装置200と同様に構成されているため、ここでは伝送装置510が備える各機能ブロックに関する詳細な説明を省略する。本実施形態における通信回路511および第1磁界アンテナ512は、例えば磁界通信を実現するための既存の設備(磁界伝送装置)を利用できる。また、本実施形態では、マッチング回路513と、シグナル電極514とが、電界アンテナとして機能する。
【0062】
本実施形態における伝送装置510では、自動改札機530の、通信を行う面530aにおいて、第1磁界アンテナ512による磁界信号が発生する位置で電界信号が送信可能となるように、シグナル電極514が配置される。これにより、自動改札機530の面530aにおいて、磁界信号と電界信号とが同じ位置から送信される。本明細書において、面530aにおけるこの位置を、以下「通信位置」ともいう。自動改札機530は、面530aに、通信位置を示す任意の表示531を有していてもよい。当該表示により、ユーザは、自動改札機530における通信位置を認識しやすくなる。
【0063】
なお、本実施形態における第1磁界アンテナ512およびシグナル電極514の位置関係のように、磁界アンテナの近傍に金属板が存在する場合、金属板に渦電流が流れ、これによって磁界アンテナによる信号の送受信が妨げられる場合がある。伝送装置510は、渦電流の発生を防ぐために、従来公知の任意の手段を備えていてもよい。例えば、伝送装置510において、シグナル電極514に例えば多数のスリットを形成することにより、シグナル電極514をくし形状にすることにより、渦電流の発生を抑制しやすくなる。
【0064】
電子乗車券520は、所定の情報を記憶するとともに電子乗車券520における磁界通信処理を制御するICチップ521と、磁界信号により伝送装置510と通信可能な磁界アンテナ522とを備える。電子乗車券520のユーザは、伝送システム500において磁界通信を実行させる場合、電子乗車券520を、自動改札機530の通信位置にかざす。これにより、第1磁界アンテナ512から送信される電界信号に基づいて、伝送装置510と電子乗車券520との間で磁界通信が実現される。
【0065】
電子乗車券520のユーザは、伝送システム500において電界通信を実行させる場合、まず、電子乗車券520を、例えば専用のカードホルダ540に挿入する。カードホルダ540は、電子乗車券520を挿脱可能に構成された挿入部(溝)を有する。また、カードホルダ540は、磁界アンテナ541と、マッチング回路(共振回路)542と、シグナル電極543と、端末線路544とを備える。カードホルダ540における、磁界アンテナ541、マッチング回路542、シグナル電極543及び端末線路544の構成は、それぞれ第4実施形態に係る伝送装置400の第2磁界アンテナ450、マッチング回路430、シグナル電極440及び端末線路460と等価である。
【0066】
磁界アンテナ541は、カードホルダ540において、電子乗車券520の挿入部への挿入状態で、電子乗車券520の磁界アンテナ522からの磁界信号を受信可能な位置に配置される。磁界アンテナ541は、マッチング回路542に接続されている。カードホルダ540の磁界アンテナ541では、電子乗車券520の磁界アンテナ522から送信される磁界信号が受信されると、受信した磁界信号に基づいてマッチング回路542に供給される制御信号が生成される。
【0067】
マッチング回路542およびシグナル電極543の機能は、それぞれ、例えば第1実施形態のマッチング回路130およびシグナル電極140と同様である。本実施形態において、マッチング回路542は、端末線路544に接続されている。端末線路544は、金属等の導体または誘電体により構成され、ほぼ90度の電気長を有する。端末線路544は、伝送システム500において電界通信が行われる際に、上述した原理により仮想的なグランドとして機能する。
【0068】
カードホルダ540は、ユーザがカードホルダ540を手首または腕等に装着可能な、例えばベルト等の装着部を有する。ユーザは、装着部を手首または腕に巻きつける等して、カードホルダ540を装着する。本実施形態では、ユーザは、装着部を手首に巻きつけるとして、以下説明する。シグナル電極543は、カードホルダ540において、ユーザがカードホルダ540を手首に巻きつけた状態において、ユーザ(人体)と接触する位置に配置される。すなわち、シグナル電極543は、ユーザがカードホルダ540を手首に巻きつけた状態において、ユーザと電気的に結合された状態となる。
【0069】
ユーザは、伝送システム500において電界通信を実現させる場合、電子乗車券520を挿入したカードホルダ540を手首に巻きつけた状態で、例えば指等の人体の一部で伝送装置510の通信位置に触れる。このとき、誘電体である人体において、通信位置に接触した指等と、シグナル電極543に接触する部分との間が、伝送媒体として機能する。電界信号は、シグナル電極514に直接又は容量結合により結合される人体を介して、人体と直接又は容量結合により結合されるシグナル電極543において、カードホルダ540に伝送される。これにより、伝送媒体として機能する人体を介して、伝送装置510と、電子乗車券520が挿入されたカードホルダ540との間で電界通信が実現される。
【0070】
このように、本実施形態に係る伝送システム500によれば、ユーザは、磁界通信および電界通信のいずれかを選択して通信を行うことができる。磁界通信および電界通信の選択については、ユーザは、電子乗車券520をカードホルダ540に挿脱することにより、容易に実行できる。また、ユーザは、電子乗車券520をカードホルダ540に挿入することにより、磁界通信が可能な電子乗車券520を用いて、伝送システム500における電界通信を行うことができるため、伝送システム500によれば、磁界通信システムが既存の場合であっても、これらの既存の資産を利用して、電界通信を実現できる。
【0071】
(第6実施形態)
図8は、本発明の第6実施形態に係る伝送システム600の概略構成を示す機能ブロック図である。本実施形態に係る伝送システム600においても、第5実施形態に係る伝送システム500と同様に、ユーザは磁界通信および電界通信を選択的に実行可能である。
【0072】
本実施形態では、第5実施形態で説明した場合と同様に、ユーザが、電子乗車券620を用いて、自動改札機に構成された伝送装置610と通信を実行させる場合について説明する。本実施形態においても、電子乗車券620はカード型の磁界用通信装置であるとして説明する。
【0073】
本実施形態における伝送装置610は、例えば第3実施形態に係る伝送装置300と同様に、2つの独立した伝送装置により構成される。独立した伝送装置の一方(第1伝送装置630)は、例えば磁界通信が可能な既存の自動改札機である。独立した伝送装置の他方(第2伝送装置650)は、第1伝送装置630に着脱可能な電界アンテナを含んでこ構成される。
【0074】
第1伝送装置630は、通信回路631と、第1磁界アンテナ632とを備える。通信回路631および第1磁界アンテナ632の機能は、それぞれ、例えば第3実施形態における通信回路310および第1磁界アンテナ320と同様であるため、詳細な説明については省略する。本実施形態において、通信回路631および第1磁界アンテナ632は、例えば磁界通信を実現するための既存の設備(磁界伝送装置)である。
【0075】
第2伝送装置650は、マッチング回路(共振回路)651と、シグナル電極652と、第2磁界アンテナ653と、グランド電極654とを備える。マッチング回路651、シグナル電極652、第2磁界アンテナ653およびグランド電極654の機能は、それぞれ、例えば第3実施形態におけるマッチング回路330、シグナル電極340、第2磁界アンテナ350およびグランド電極360と同様である。すなわち、第2磁界アンテナ653は、第2伝送装置650が第1伝送装置630に据え付けられた状態において、第1伝送装置630の第1磁界アンテナ632が送信する磁界信号を受信可能な位置に配置される。本実施形態では、マッチング回路651と、シグナル電極652とが、電界アンテナとして機能する。また、グランド電極654は、第2伝送装置650が第1伝送装置630に据え付けられた状態において、第1伝送装置630の通信回路631が接続されたグランドと容量結合可能な位置に配置される。
【0076】
上述の構成を有する第2伝送装置650が第1伝送装置630に据え付けられて構成される伝送装置610は、上述の第3実施形態に係る伝送装置300と同様の構成を有する。
【0077】
本実施形態における伝送装置610では、第5実施形態に係る伝送装置510と同様に、第1伝送装置630に据え付けられた第2伝送装置650の、通信を行う面650aにおいて、第1磁界アンテナ632による磁界信号が発生する位置で電界信号が送信可能となるように、シグナル電極652が配置される。これにより、第2伝送装置650の面650aにおいて、磁界信号と電界信号とが同じ位置から送信される。本実施形態では、面650aにおける個の位置が、「通信位置」に該当する。本実施形態においても、第2伝送装置650は、面650aに、通信位置を示す任意の表示655を有していてもよい。
【0078】
本実施形態における電子乗車券620は、ICチップ621と、磁界アンテナ622とを備える。ICチップ621および磁界アンテナ622の機能は、それぞれ第5実施形態の電子乗車券520が備えるICチップ521および磁界アンテナ522と同様であるため、詳細な説明については省略する。
【0079】
本実施形態に係る伝送システム600において、第5実施形態で説明したものと同様の原理により、ユーザが電子乗車券620を伝送装置610の通信位置にかざすことにより、伝送装置610と電子乗車券との間の磁界通信が実現される。
【0080】
本実施形態におけるカードホルダ640は、第5実施形態におけるカードホルダ540と同様に、ユーザがカードホルダ640を手首または腕等に装着可能な装着部を有する。
【0081】
本実施形態におけるカードホルダ640は、磁界アンテナ641と、マッチング回路(共振回路)642と、第1結合電極643と、第2結合電極644とを備える。カードホルダ640において、磁界アンテナ641、マッチング回路642および第1結合電極643の機能は、それぞれ第5実施形態におけるカードホルダ540の磁界アンテナ541、マッチング回路542およびシグナル電極543の機能と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0082】
本実施形態におけるカードホルダ640は、第5実施形態におけるカードホルダ540と比較して、端末線路を有さず、第2結合電極644を有する点で異なる。第2結合電極644は、マッチング回路642に結合されている。第2結合電極644は、カードホルダ640において、ユーザがカードホルダ640を手首等に巻きつけた状態において、ユーザ(人体)と接触する位置に配置される。すなわち、第2結合電極644は、ユーザがカードホルダ640を手首等に巻きつけた状態において、ユーザと電気的に結合された状態となる。第1結合電極643と、第2結合電極644とは、カードホルダ640において、ユーザがカードホルダ640を手首等に巻きつけた状態で、第1結合電極643に接触する人体(例えば指先等)が伝送装置610との電界通信を行うための伝送媒体として機能し、第2結合電極644に接触する人体(カードホルダを装着した手首よりも末端側を除く体全体)が端末線路として機能する位置になるように配置される。
【0083】
ここで、人体が伝送媒体および端末線路として機能する原理について説明する。
図9は、カードホルダ640を誘電体700に結合させた状態を模式的に示す図である。
図9では、誘電体700を模式的に円柱形状で示している。また、
図9では、電子乗車券620が挿入された状態のカードホルダ640における、高周波電力を送受信する機能部をまとめて送受信部645として示している。
【0084】
図9に示すように、円柱形状の誘電体700は、第1底面(第1端)710aおよび第2底面(第2端)710bを備える。円柱形状の誘電体700の高さは、誘電体700の底面(第1底面710aおよび第2底面710b)の直径よりも長い。以下、円柱の高さ方向を長手方向ともいう。
【0085】
カードホルダ640は、第1結合電極643および第2結合電極644が誘電体700の長手方向に沿って並ぶように、誘電体700に結合される。ここでは、第1底面710aに近い側に第1結合電極643が結合され、第2底面710bに近い側に第2結合電極644が結合されるとする。
【0086】
カードホルダ640が結合された誘電体700において、第1結合電極643が結合された位置よりも第1底面710a側の領域を第1領域700aとし、第2結合電極644が結合された位置よりも第2底面710b側の領域を第2領域700bとする。第1領域700aの高さ(長手方向の長さ)をLaとし、第2領域700bの高さをLbとする。ユーザは、カードホルダ640の第1結合電極643および第2結合電極644を、誘電体700に対して、次に説明する所定の位置に結合させることにより、第1領域700aは伝送媒体として機能し、第2領域700bは端末線路として機能する。
【0087】
ここで、第1領域700aが伝送媒体として機能し、第2領域700bが端末線路として機能するための上記所定の位置について説明する。カードホルダ640は、誘電体700において、長さLbが((2n+1)・90)度の電気長となる位置に結合される。長さLbが((2n+1)・90)度の電気長である場合、
図10に示すように第1領域700aが、模式的に示される伝送装置610のシグナル電極652と結合すると、カードホルダ640、誘電体700および伝送装置610により電界通信可能な伝送システムが確立される。この場合、
図2を参照して説明した原理により、第2領域700bの第2底面710bにおいて、電圧振幅が最大で電流振幅がゼロ、第2領域700bの第2結合電極644が結合された側の端部において、電圧振幅がゼロで電流振幅が最大の定在波が発生する。そのため、送受信部645から、第2結合電極644を介して誘電体700の第2領域700bに向かって電流が流れるとともに、第1結合電極643を介して第1領域700aに向かって電流が流れる。その結果、カードホルダ640は、伝送装置610との間で、第1領域700aを伝送媒体とした通信を行うことが可能になる。このように、第2領域700bは、
図2で示した端末線路170として機能する。
【0088】
なお、
図2の説明でも述べたように、端末線路170の電気長が90度を中心に±45度の範囲内、つまり反射波の位相が90度より大きく270度より小さい範囲内で動作しても、高周波を伝送するための所定の効果を生じる。そのため、第2領域700bが端末線路として機能するためには、長さLbは、((2n+1)・90±45)度の範囲の電気長となる位置に結合されればよい。
【0089】
ここで、カードホルダ640は、誘電体700において、長さLaが(2n・90)度の電気長となる位置に結合される。仮に、長さLaも、長さLbと同様に((2n+1)・90)度の電気長である場合、
図11に示すように第2領域700bが伝送装置610のシグナル電極652と結合すると、第1領域700aが端末線路として機能し、第2領域700bが伝送媒体として機能する。すなわち、この構成では、第1領域700aおよび第2領域700bのいずれも、端末線路として機能し得る。
【0090】
しかしながら、伝送装置100を、誘電体700において、第1領域700aの長さLaが(2n・90)度の電気長となる位置に結合した場合、第1領域700aの第1結合電極643が結合された側の端部において、
図2に示した定在波は発生しない。そのため、
図11に示すように第2領域700bが伝送装置610のシグナル電極652と結合しても、第1領域700aは端末線路170として機能せず、仮想的なグランドが形成されないので、カードホルダ640と伝送装置610との間で、通信が確立されない。
【0091】
このように、第1領域700aの長さLaが(2n・90)度の電気長となり、第2領域700bの長さLbが(2(n+1)・90)度の電気長となる位置にカードホルダ640を結合させた場合、誘電体700の第2領域700bは、端末線路として機能するが、誘電体700の第1領域700aは、端末線路として機能しない。そのため、カードホルダ640は、伝送装置610のシグナル電極652が、第1領域700aに結合した場合に通信が確立され、第2領域700bに結合した場合には通信が確立されない。
【0092】
このように、カードホルダ640を誘電体700の所定の位置に結合することにより、誘電体700において、シグナル電極652と結合した際に通信を確立可能な領域と通信を確立不可能な領域とを形成することができる。すなわち、このようにして、誘電体700において通信を確立可能な領域を制限することができる。そのため、カードホルダ640を、誘電体700において上記所定の位置に結合した場合、通信を確立可能な領域を制限できるので、意図しない通信が発生しにくくなり、意図しない情報の漏えいを防止しやすくなる。本実施形態におけるカードホルダ640によれば、この点において安全性が向上する。
【0093】
なお、カードホルダ640は、第1領域700aの長さLaが第1領域700aにおいて定在波が発生しない長さとなる位置に結合されればよい。そのため、カードホルダ640は、長さLaが(2n・90±45)度の範囲の電気長となる位置に結合されればよい。
【0094】
図12は、
図8のカードホルダ640を誘電体である人体720に結合して構成した伝送システム600の一例を示す図である。
図12に示すように、カードホルダ640は、例えば人体の指または腕等に装着されることによって、第1結合電極643および第2結合電極644と人体720とが結合される。このとき、第1結合電極643および第2結合電極644は、腕の胴体側から末端側に沿って並ぶように、人体720に結合される。カードホルダ640を人体720に結合する場合、カードホルダ640は、例えばリストバンドまたはアームバンド等、手首または腕等に装着可能な態様で形成されてもよい。
【0095】
カードホルダ640を人体720に結合させると、カードホルダ640は、末端側に結合した第1結合電極643から末端(例えば指先)までが
図9に示した第1領域700a、胴体側の第2結合電極644から腕、胴体および足の全体が
図9に示した第2領域700bとなるよう、所定の周波数の電界信号を使用する。当該所定の周波数は、例えば13.56MHzとすることができる。電界信号の周波数が13.56MHzである場合、胴体側の第2結合電極644を手首付近で誘電体である人体720に結合させると、成人の一般的な身長(例えば170cm)の人体720において、第2領域の長さが約90度の電気長となり、第1領域の長さが45度未満の電気長となる。以下、カードホルダ640が使用する信号の周波数は、13.56MHzであるとして説明する。また、末端側の第1結合電極643から末端(例えば指先)までを、人体720の末端側720aといい、胴体側の第2結合電極644から腕、胴体および足の全体を、人体720の胴体側720bという。
【0096】
カードホルダ640を装着した人体720が、例えば指先で伝送装置610の通信位置に触れると、人体720の胴体側720bにおいて、定在波が発生し、仮想的なグランドが形成される。すなわち、胴体側720bが端末線路として機能する。また、末端側720aは、伝送媒体として機能する。これにより、伝送媒体として機能する人体720を介して、伝送装置610と、電子乗車券620が挿入されたカードホルダ640との間で電界通信が実現される。なお、ここでの伝送装置610は、上述の第1乃至第4実施形態における伝送装置100乃至400であってよい。
【0097】
なお、本実施形態においては、カードホルダ640を装着した人体720の胴体側720bがシグナル電極652と結合しても、末端側720aは、端末線路として機能しないので、通信が確立されない。すなわち、本実施形態に係る伝送システム600によれば、電界通信を実現可能な一方で、意図しない通信が発生しにくくなるため、意図しない情報の漏えいを防止しやすくなり、安全性が向上する。
【0098】
このように、本実施形態に係る伝送システム600によれば、ユーザは、磁界通信および電界通信のいずれかを選択して通信を行うことができる。磁界通信および電界通信の選択については、ユーザは、電子乗車券620をカードホルダ640に挿脱することにより、容易に実行できる。また、ユーザは、電子乗車券620をカードホルダ640に挿入することにより、磁界通信が可能な電子乗車券620を用いて、伝送システム600における電界通信を行うことができるため、伝送システム600によれば、磁界通信システムが既存の場合であっても、これらの既存の資産を利用して、電界通信を実現できる。
【0099】
さらに、本実施形態に係る伝送システム600によれば、既存の第1伝送装置630に第2伝送装置650を据え付けることにより伝送装置610を構成することができるため、既存の第1伝送装置630自体の構成を変更することなく、容易に伝送装置610を構成することができる。
【0100】
なお、上記第6実施形態の説明においては、人体720の末端側720aにカードホルダ640の第1結合電極643が結合され、胴体側720bに第2結合電極644が結合される場合について説明したが、伝送システム600では、末端側720aに第2結合電極644が結合され、胴体側720bに第1結合電極643が結合されることによっても電界通信が確立される。この場合、上述した第1結合電極643と第2結合電極644との機能が入れ替わり、第2結合電極644よりも末端側が伝送媒体として機能し、第1結合電極643よりも胴体側が端末線路として機能する。
【0101】
また、上記第5実施形態および第6実施形態では、ユーザが電界通信のために使用する電界用通信装置が、磁界用通信装置である電子乗車券を挿脱可能なカードホルダであるとして説明したが、電界用通信装置はこれに限られない。ユーザは、例えばリストバンドまたはアームバンド等、人体に着脱可能に構成された、専用の電界用通信装置を使用して電界通信を行ってもよい。
【0102】
以上、実施形態を参照しながら、本発明について詳説した。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、当業者であれば、該実施形態の修正や代用を成し得る。すなわち、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0103】
また、本明細書の記載は、本明細書に記載される発明の全てを意味するものではない。換言すれば、本明細書の記載は、この出願では請求されていない発明の存在、すなわち、将来、分割出願されたり、補正により追加されたりする発明の存在を否定するものではない。
【0104】
本明細書においては、例示という形態で本発明を開示したのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。
【解決手段】伝送装置100は、伝送する信号を制御する通信回路110と、通信回路110に電気的に接続され、通信回路110による制御に基づいて磁界信号を送信可能な磁界アンテナ120と、通信回路110に電気的に接続され、通信回路110による制御に基づいて電界信号を送信可能な電界アンテナと、を備える。