(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
以下、本発明の実施の形態を添付の図により説明する。なお、「表」、「裏」、「上」、「下」、「縦」、「横」、「幅方向」、「長さ方向」、「厚さ方向」等の方向を示す語は、図面の状態に基づく便宜上のものであり、実際の方向はこれに限定されるものではない。
【0010】
図1に第1の実施形態に係るシート状部材1の平面図及び断面図を示す。シート状部材1は、平面方向(幅方向X及び長さ方向Y)に延びている。
図1(b)に示すように、シート状部材1は、フィルム層2と補強層3とを備えている。フィルム層2は、平面方向に延びている。本実施形態において、フィルム層2は、シート状部材1の幅方向Xにおける両縁部1aの間に連続して延び、長さ方向Yにおける両縁部1bの間に連続して延びている。すなわち、シート状部材1を平面視したときに、フィルム層2はシート状部材1の全面に亘って設けられている。
【0011】
フィルム層2は、水溶性の材料によって構成されている。この実施形態において、フィルム層2は澱粉を糊化させて乾燥させたものによって構成されている。したがって、フィルム層2を溶かした水溶液は非電解質となる。フィルム層2は、例えば、オブラート等の、植物性の多糖質水溶性フィルムによって構成されていてもよい。
フィルム層2の一方の主面2aは、露出してシート状部材1の表面を構成している。フィルム層2の一方の主面2aは、凹凸のない平坦面である。
【0012】
フィルム層2の他方の主面2b側には、フィルム層2に沿って、補強層3が設けられている。すなわち、補強層3の一方の主面3aには、フィルム層2が積層されている。補強層3は、水溶性補強部4と絶縁性補強部5とを備えている。
絶縁性補強部5は、フィルム層2の他方の主面2b側において、フィルム層2に沿って、平面方向に延びている。すなわち、絶縁性補強部5にはフィルム層2が積層されている。
絶縁性補強部5は、非水溶性の材料によって構成されている。また、絶縁性補強部5は、絶縁性を有している。本実施形態において、絶縁性補強部5は、ガラス繊維によって構成されている。
絶縁性補強部5は平面方向に延びる水溶性補強部4に埋設されている。厚さ方向Dにおいて、絶縁性補強部5は水溶性補強部4の中央部分に位置している。絶縁性補強部5は水溶性補強部4によって覆われており、補強層3の一方の主面3a側及び他方の主面3b側に露出していない。
【0013】
図2(a)に示すように、絶縁性補強部5は、網状に形成されていて、縦横に交わる糸部8と、糸部8の間に形成された多数の網目部9とを備えている。本実施形態では、糸部8は平織りされていて、直線状に延びる複数の縦糸部8aと、直線状に延びる複数の横糸部8bとが90度の角度で交差している。縦糸部8aは、シート状部材1の長さ方向Yに沿って延び、横糸部8bは幅方向Xに沿って延びている。絶縁性補強部5は、無結節に形成されている。「無結節」とは、結節がない、すなわち、結び目がないことをいう。結び目とは、複数の糸が互いに結ばれている部分を意味し、糸が結ばれていることによって、他の部分よりも厚さ方向Dに突出している部分のことをいう。
本実施形態において、縦糸部8aと横糸部8bの交わる箇所には、厚さ方向Dに突出する結び目は形成されていない。
【0014】
なお、
図1(a)のA−A´線は、
図2(a)のA−A´線に対応している。
図1(b)は、
図2(a)のA−A´線にて示すように、絶縁性補強部5において、横糸部8bが存在する部分における断面を示している。したがって、
図1(b)の例では、横糸部8bの手前側及び奥側に網目部9が存在していることになる。
図2(b)は、
図2(a)のB−B´線にて示すように、横糸部8bが存在しない部分におけるシート状部材1の断面を示している。
図2(b)に示すように、隣り合う縦糸部8aの間には、網目部9が位置している。網目部9は、縦糸部8aと横糸部8bによって囲まれた空間であり、この空間は、水溶性補強部4によって充填されている。
なお、水溶性補強部4が透明の場合には、
図2(b)に示す断面において、奥側に、
図1(b)に示す横糸部8bが表れる場合があるが、ここでは、説明のために、横糸部8bの記載は省略している。
図1(b)及び
図2(b)においては、シート状部材1の幅方向断面(幅方向Xに横断する断面)を示しているが、長さ方向断面(長さ方向Yに縦断する断面)の形状も、
図1(b)及び
図2(b)と同様である。
【0015】
絶縁性補強部5は、シート状部材1の幅方向Xにおける両縁部1aの間に連続して延び、長さ方向Yにおける両縁部1bの間に連続して延びている。すなわち、絶縁性補強部5は、フィルム層2の他方の主面2b側において、シート状部材1の全面に亘って設けられている。
【0016】
水溶性補強部4は、水溶性の材料によって構成されている。本実施形態において、水溶性補強部4は、糊化させて乾燥させた澱粉によって形成されている。したがって、水溶性補強部4を構成する材料は、フィルム層2を構成する材料と同じである。水溶性補強部4は、フィルム層2に沿って、平面方向に延びている。説明のために、水溶性補強部4のうち、平面方向に延び、糸部8の上端8cとフィルム層2の間に設けられている部分を第1の被膜部6と呼ぶ。第1の被膜部6の上面6aは補強層3の一方の主面3aを構成している。
なお、糸部8の上端8cは、縦糸部8a及び横糸部8bにおいて、高さ位置(厚さ方向Dにおける位置)が最も高い部分を示している。
図1(b)に示す例において、縦糸部8aの上端8c及び横糸部8bの上端8cの高さ位置は同じである。
【0017】
また、説明のために、水溶性補強部4のうち、平面方向に延び、糸部8の下端8d側に設けられている部分を第2の被膜部7と呼ぶ。第2の被膜部7の下面7aは、補強層3の他方の主面3bを構成している。また、下面7aは、平坦面であり、シート状部材1の裏面を構成している。
なお、糸部8の下端8dは、縦糸部8a及び横糸部8bにおいて、高さ位置(厚さ方向Dにおける位置)が最も低い部分を示している。
図1(b)に示す例において、縦糸部8aの下端8d及び横糸部8bの下端8dの高さ位置は同じである。
【0018】
第1の被膜部6と第2の被膜部7は、澱粉を糊化させて乾燥させたものによって構成されていて、網目部9(
図2)に充填されている水溶性補強部4も、同様に、澱粉を糊化させて乾燥させたものによって構成されている。第1の被膜部6と第2の被膜部7と網目部9の充填部分とは、一体的に形成されて水溶性補強部4を構成している。
【0019】
水溶性補強部4は、シート状部材1の幅方向Xにおける両縁部1aの間に連続して延び、長さ方向Yにおける両縁部1bの間に連続して延びている。すなわち、水溶性補強部4は、フィルム層2の他方の主面2b側において、シート状部材1の全面に亘って設けられている。
【0020】
本実施形態において、シート状部材1の厚さ寸法(厚さ方向Dにおける寸法)d1は0.2mmである。シート状部材1の厚さ寸法d1は、0.1mm〜0.3mmの範囲内のいずれかの数値であることが望ましい。本実施形態において、シート状部材1の厚さ寸法d1は、均一である。本実施形態において、絶縁性補強部5の厚さ寸法d4(糸部8の上端8cから下端8dまでの厚さ寸法)は、0.035mm〜0.18mmの範囲内のいずれかの数値であり、絶縁性補強部5の厚さ寸法d4は均一である。
フィルム層2の厚さ寸法d2は、絶縁性補強部5の厚さ寸法d4よりも薄い。したがって、フィルム層2の厚さ寸法d2は、補強層3の厚さ寸法よりも薄い。フィルム層2の厚さ寸法d2は、0.02mm以上であることが望ましい。
【0021】
第1の被膜部6の厚さ寸法d3は、絶縁性補強部5の厚さ寸法d4よりも薄い。第1の被膜部6の厚さ寸法d3は、0.02mm以上であることが望ましい。第2の被膜部7の厚さ寸法d5は、絶縁性補強部5の厚さ寸法d4よりも薄い。第2の被膜部7の厚さ寸法d5は、第1の被膜部6と同様に、0.02mm以上であることが望ましい。
【0022】
次に、第1の実施形態に係るシート状部材1の製造方法について説明する。第1の実施形態に係るシート状部材1の製造方法は、糊化させた澱粉によって絶縁性補強部5を覆って乾燥させることにより、絶縁性補強部5が水溶性補強部4に埋設された補強層3を形成する補強層形成工程と、補強層3の一方の主面3aに、澱粉を糊化させた澱粉糊状液を積層させて乾燥させることにより、フィルム層2を形成するフィルム層形成工程とを含む。
【0023】
補強層形成工程においては、まず、製造するシート状部材1の寸法に合わせて、網状に形成されたガラス繊維をカットして、絶縁性補強部5を形成する。また、澱粉を糊化させた澱粉糊状液を用意する。次いで、絶縁性補強部5を澱粉糊状液に含浸させる。このとき、ガラス繊維が露出しないように、ガラス繊維の上端8c及び下端8dが澱粉糊状液によって薄く覆われるようにする。このガラス繊維の上端8c及び下端8dを薄く覆う澱粉糊状液によって形成される部分が、前述の第1の被膜部6及び第2の被膜部7に対応している。また、網目部9には、澱粉糊状液が充填されることになる。
【0024】
その後、澱粉糊状液に浸された絶縁性補強部5を乾燥させると、絶縁性補強部5が水溶性補強部4に埋設された補強層3が形成される。澱粉糊状液が乾燥した部分は、水溶性補強部4を構成している。第1の被膜部6と第2の被膜部7と網目部9の充填部分とは、一体的に同時に形成されることになる。澱粉糊状液の乾燥に際しては、例えば、澱粉糊状液の水分が10〜15%程度になるように、急速に乾燥させることが望ましい。これにより、澱粉を老化させずに糊化状態を保持できる。
【0025】
フィルム層形成工程においては、まず、形成した補強層3の上に、澱粉を糊化させた澱粉糊状液を積層させる。例えば、澱粉糊状液を補強層3の上にかけ流すことによって、澱粉糊状液を積層させてもよいし、補強層3の上に澱粉糊状液をローラ等で塗り重ねることによって積層させてもよい。このとき、澱粉糊状液の上面が平坦面となるように積層する。次いで、積層させた澱粉糊状液を乾燥させて、フィルム層2を形成する。このとき、前述の乾燥工程と同様に、澱粉糊状液の水分が10〜15%程度になるように、急速に乾燥させることが望ましい。
【0026】
次に、シート状部材1の作用について説明する。
第1の実施形態に係るシート状部材1において、フィルム層2の一方の主面2a、すなわち、シート状部材1の表面には、非水溶性の材料を重ねて、様々な非水溶性の形成物を形成することができる。例えば、シート状部材1の表面に、非水溶性の材料によって、マスキングパターンや回路パターン等の所定のパターンを印刷してもよい。シート状部材1への印刷の際には、インクジェットプリンター、レーザープリンター、コピー機等の市販の印刷機器を用いることができる。
【0027】
シート状部材1に、非水溶性の材料を塗り重ねたり印刷したりした後に、シート状部材1を水に溶解させると、水溶性のフィルム層2は溶けて、非水溶性の材料によって形成された形成物を取得することができる。
例えば、シート状部材1に、非水溶性の材料によって所定のマスキングパターンを印刷等した場合には、サンドブラスト用マスク等の各種マスキングシートを容易に形成することができる。また、シート状部材1に、導電性インク又は導電性トナー等の非水溶性の導電性材料によって所定の回路パターンを印刷等した場合には、回路基板等の電子部品を容易に形成することができる。
【0028】
シート状部材1は、前述のように、平面方向に延びる補強層3を備えているため、フィルム層2が補強されている。したがって、シート状部材1の強度が高まることになり、非水溶性の材料の塗り重ねや印刷等にも耐え得る強度が保持される。さらに、フィルム層2が水分を帯びた場合であっても、補強層3によってフィルム層2が補強されているため、フィルム層2の強度低下が低減する。
【0029】
また、絶縁性補強部5は非水溶性である。したがって、例えば、シート状部材1に非水溶性の材料によって、所定のパターンを印刷し、その後、シート状部材1を水に溶解させると、水溶性のフィルム層2及び水溶性補強部4は溶けて、非水溶性の絶縁性補強部5は残ることになる。よって、上記所定のパターンは、絶縁性補強部5の上に保持されることになる。したがって、絶縁性補強部5を把持して取り出すことにより、絶縁性補強部5の上に保持された所定のパターンが容易に取り出される。このように、所定のパターン自体を直接把持して取り出す必要がないため、パターンが変形したり破れたりする可能性が低減することになる。
【0030】
また、絶縁性補強部5によって上記所定のパターンが支持されるため、形成された所定のパターンが水の重み等で変形したり破れたりする可能性が低減することになる。加えて、絶縁性補強部5を覆う水溶性補強部4も水溶性であるため、シート状部材1を水に溶解させると、フィルム層2と共に水溶性補強部4も溶ける。よって、絶縁性補強部5が露出して網目部9も開口することになる。したがって、絶縁性補強部5を把持して水から取り出す際に、網目部9から水が落ち、水切れがよくなる。
【0031】
また、絶縁性補強部5は絶縁性を有している。したがって、上記所定のパターンが導電性の材料によって形成されていた場合であっても、上記所定のパターンと絶縁性補強部5が導通しない。したがって、上記所定のパターンを絶縁性補強部5から取り外すことなく、他の電子部品等を作成することも可能である。例えば、導電性インク又は導電性トナー等の非水溶性の導電性材料によって、シート状部材1に所定の回路パターンを印刷する。その後、シート状部材1を水に浸けると、フィルム層2及び及び水溶性補強部4が溶けて、所定の回路パターンが絶縁性補強部5の上に載置されることになる。次いで、エポキシ樹脂等の樹脂によって、回路パターンを絶縁性補強部5ごと封止して回路基板を作成する。この場合、回路パターンを絶縁性補強部5から取り外す必要がないため、回路基板の作成が容易になる。
加えて、シート状部材1によれば、回路パターンのみを形成して取り出すことが容易になるため、様々な形状、サイズの部材に回路パターンを取り付けることが可能になる。
【0032】
また、絶縁性補強部5は、平面方向に延びる網状のものであるため、シート状部材1の伸縮が防止されることになる。さらに、絶縁性補強部5は無結節に構成されている。したがって、絶縁性補強部5には、結節に起因する厚さ方向Dへの突出がない。このように、結節部分がシート状部材1の表面(フィルム層2の一方の主面2a)に突出してしまうことがないので、シート状部材1の表面が平滑に保たれる。また、結節部分がシート状部材1の表面に突出しないように、シート状部材1の厚さを厚くする必要がない。
さらに、絶縁性補強部5は水溶性補強部4に埋設されているため、絶縁性補強部5の凹凸がシート状部材1の表面及び裏面に表出しない。
【0033】
以上のように、第1の実施形態に係るシート状部材1は、平面方向に延びる補強層3を備えているため、フィルム層2が補強され、シート状部材1の強度を高めることができる。
また、絶縁性補強部5は非水溶性である。前述のように、フィルム層2が溶解した後に、絶縁性補強部5を把持して取り出すことにより、絶縁性補強部5の上に保持された非水溶性の形成物(例えば、上記所定のパターン等)を容易に取り出すことができる。また、非水溶性の形成物自体を直接把持して取り出す必要がないため、非水溶性の形成物が変形したり破れたりする可能性が低減させることができる。
【0034】
したがって、第1の実施形態に係るシート状部材1によれば、水溶性のシート状部材1に形成した非水溶性の形成物を取り出しやすくすると共に、シート状部材1の強度を高めることができる。
【0035】
また、フィルム層2が水分を帯びた場合であっても、補強層3によってフィルム層2が補強されているため、フィルム層2の強度低下を低減させることができる。
【0036】
加えて、絶縁性補強部5によって上記非水溶性の形成物が支持されるため、形成物の形状が水の重み等で変形したり、形成物が破れたりする可能性を低減させることができる。また、シート状部材1を水に溶解させると、前述のように、絶縁性補強部5が露出して網目部9も開口することになるため、絶縁性補強部5を把持して水から取り出す際に、水切れを良くすることができる。
【0037】
さらに、絶縁性補強部5は絶縁性を有している。したがって、非水溶性の形成物(例えば、上記所定のパターン等)が導電性の材料によって形成されていた場合であっても、非水溶性の形成物と絶縁性補強部5が導通してしまうことを防止することができる。したがって、前述のように、非水溶性の形成物を絶縁性補強部5から取り外すことなく、回路基板等の電子部品を作成することもできる。
また、シート状部材1によれば、回路パターンのみを形成して取り出すことが容易になるため、様々な形状、サイズの部材に回路パターンを取り付けることができる。
【0038】
また、絶縁性補強部5は、平面方向に延びる網状のものであるため、シート状部材1の伸縮を防止することができる。例えば、微細なパターンを印刷する場合には、印刷位置や印刷対象物のサイズがずれないことが望ましい。絶縁性補強部5によって、シート状部材1の伸縮が防止されることにより、正確性がより要求される印刷にも対応することができる。
【0039】
さらに、絶縁性補強部5は無結節に構成されている。したがって、前述のように、シート状部材1の表面を平滑に保つことができる。また、前述のように、結節部分がシート状部材1の表面に突出しないように、シート状部材1の厚さを厚くする必要がないため、シート状部材1を薄く形成することができる。
【0040】
前述のように、補強層3において、絶縁性補強部5は水溶性補強部4に埋設されている。したがって、絶縁性補強部5の凹凸がシート状部材1の表面及び裏面に表出することを防止することができる。よって、シート状部材1をプリンターやコピー機等の印刷機器に挿入して印刷する場合に、より円滑に印刷を行うことができる。
また、水溶性補強部4を備えることによって、補強力が高まり、シート状部材の強度をより高めることができる。
【0041】
前述のように、フィルム層2の一方の主面2aは平坦面であるため、上記一方の主面2aに対する非水溶性の材料の塗り重ねや印刷等の作業を容易に行うことができる。
【0042】
また、フィルム層2は、糊化させて乾燥させた澱粉を含んでいる。したがって、フィルム層2の一方の主面2aの表面円滑性をより高めることができる。よって、例えば、非水溶性材料によって所定の形状をフィルム層2の一方の主面2aに印刷した場合、印刷された形状の輪郭をより鮮明にすることができる。例えば、一般的なコピー用紙と比較すると、印刷した文字、画像等の輪郭の滲みがより少なく、よりシャープな印刷が可能になる。
【0043】
さらに、糊化させて乾燥させた澱粉は切れにくいため、薄くて丈夫なフィルム層2を形成することができる。また、糊化させて乾燥させた澱粉は、透明又は半透明であるため、フィルム層2も透明又は半透明に形成されることになる。これにより、フィルム層2の一方の主面2aに、不透明又は有色の材料によって所定の形状、パターン等を印刷等した場合に、その印刷した形状、パターン等の視認が容易になる。
加えて、糊化させて乾燥させた澱粉は熱に溶けにくいため、一般的な印刷機器を用いてフィルム層2に印刷を行う際に、フィルム層2に熱が加わった場合であっても、フィルム層2が溶けることなく印刷を行うことができる。
【0044】
シート状部材1においては、前述のように、厚さ寸法(厚さ方向Dにおける寸法)d1は、0.1mm〜0.3mmの範囲内のいずれかの数値であることが望ましい。これにより、プリンターやコピー機等の印刷機器によってシート状部材1に印刷を行う際に、印刷機器の内部にシート状部材1が引っかかってしまう可能性を低減させることができる。
また、シート状部材1の厚さ寸法d1は、均一であるため、上記印刷機器によってシート状部材1に印刷を行う際に、より円滑に印刷を行うことができる。
【0045】
シート状部材1においては、絶縁性補強部5の厚さ寸法d4は均一である。したがって、シート状部材1の全体に亘ってシート状部材を均一に補強することができる。
前述のように、フィルム層2の厚さ寸法d2は、絶縁性補強部5の厚さ寸法d4よりも薄い。よって、シート状部材1の厚さ寸法d1のうち、絶縁性補強部5の厚さ寸法d4の比率をより大きく確保することができる。したがって、絶縁性補強部5による補強力をより高めることができる。
シート状部材1において、フィルム層2の厚さ寸法d2は、補強層3の厚さ寸法よりも薄い。よって、シート状部材1の厚さ寸法d1のうち、補強層3の厚さ寸法の比率をより大きく確保することができる。したがって、補強層3による補強力をより高めることができる。
【0046】
また、第1の被膜部6の厚さ寸法d3は、絶縁性補強部5の厚さ寸法d4よりも薄い。よって、補強層3の厚さ寸法のうち、絶縁性補強部5の厚さ寸法d4の比率をより大きく確保することができる。したがって、絶縁性補強部5による補強力をより高めることができる。さらに、第2の被膜部7の厚さ寸法d5は、絶縁性補強部5の厚さ寸法d4よりも薄い。よって、同様に、補強層3の厚さ寸法のうち、絶縁性補強部5の厚さ寸法d4の比率をより大きく確保することができる。したがって、絶縁性補強部5による補強力をより高めることができる。
【0047】
前述のように、フィルム層2の厚さ寸法d2は、0.02mm以上であることが望ましく、第1の被膜部6の厚さ寸法d3も、0.02mm以上であることが望ましい。これにより、絶縁性補強部5において糸部8と網目部9によって構成される凹凸が、フィルム層2の一方の主面2aに表出してしまうことを防止することができる。
【0048】
さらに、本実施形態において、絶縁性補強部5は、フィルム層2の他方の主面2b側において、シート状部材1の全面に亘って設けられている。したがって、シート状部材1の全体の強度を高めることができる。
【0049】
また、本実施形態では、絶縁性補強部5をガラス繊維によって構成している。したがって、絶縁性補強部5の絶縁性を高めると共に、絶縁性補強部5を構成する糸部8が熱等によって伸縮することを防止することができる。
【0050】
また、シート状部材1の製造方法は、糊化させた澱粉によって絶縁性補強部5を覆って乾燥させることにより、絶縁性補強部5が水溶性補強部4に埋設された補強層3を形成する補強層形成工程と、補強層3の一方の主面3aに、澱粉を糊化させた澱粉糊状液を積層させて乾燥させることにより、フィルム層2を形成するフィルム層形成工程とを含んでいる。
このように、補強層形成工程において、糊化させた澱粉によって絶縁性補強部5を覆って乾燥させることにより、絶縁性補強部5が水溶性補強部4に埋設されるため、絶縁性補強部5の凹凸がシート状部材1の表面及び裏面に表出することを防止することができる。また、フィルム層2を均一の厚さで積層することを容易に行うことができる。
【0051】
[第2の実施形態]
図3に、第2の実施形態に係るシート状部材100における厚さ方向Dに沿った断面であり、前述の
図1(b)に示す位置に対応する断面図を示す。シート状部材100の平面形状は、
図1(a)に示すシート状部材1の平面形状と同様である。ここでは、主として、前述した第1の実施形態と異なる点について説明する。
図3において、第1の実施形態と同様の構成要素には、同じ符号を付している。
【0052】
シート状部材100は、前述のシート状部材1の裏面側に、他のフィルム層102を備えた構成を有している。ここでは、前述のフィルム層2を表面側フィルム層2と呼び、他のフィルム層102を裏面側フィルム層102と呼ぶ。表面側フィルム層2及び補強層3の構成は、第1の実施形態におけるフィルム層2及び補強層3の構成と同様である。
【0053】
裏面側フィルム層102は、補強層3の他方の主面3b側に設けられている。したがって、補強層3は、表面側フィルム層2と裏面側フィルム層102との間に位置している。裏面側フィルム層102は、表面側フィルム層2及び補強層3に沿って、平面方向に延びている。本実施形態において、裏面側フィルム層102は、表面側フィルム層2と同様に、平面視したときにシート状部材100の全面に亘って延びている。
【0054】
また、裏面側フィルム層102は、表面側フィルム層2と同様に、澱粉を糊化させて乾燥させたものによって構成されている。裏面側フィルム層102は、例えば、オブラート等の、植物性の多糖質水溶性フィルムによって構成されていてもよい。裏面側フィルム層102の一方の主面102aは、補強層3の他方の主面3b側に位置し、他方の主面3bに接している。裏面側フィルム層102の他方の主面102bは、凹凸のない平坦面である。
【0055】
第2の実施形態に係るシート状部材100の製造方法は、基本的には、前述した第1の実施形態に係るシート状部材1の製造方法と同様である。第1の実施形態と異なる点は、フィルム層形成工程において、補強層3の両面3a,3bに、澱粉を糊化させた澱粉糊状液を積層させて乾燥させる点である。これにより、表面側フィルム層2と共に裏面側フィルム層102を形成することができる。
【0056】
第2の実施形態に係るシート状部材100には、前述の第1の実施形態に係るシート状部材1において述べた利点に加えて、以下のような利点がある。
第2の実施形態に係るシート状部材100は、前述のように、平面方向に延びる水溶性の他のフィルム層(裏面側フィルム層)102をさらに備えている。したがって、第2の実施形態に係るシート状部材100によれば、シート状部材1の両面2a,102bに、非水溶性の材料を重ねて、様々な非水溶性の形成物を形成することができる。また、非水溶性の材料の塗り重ね又は印刷面として、シート状部材100の両面2a,102bが使用できるため、シート状部材の使用時において、表裏を確認する手間を省くことができる。
加えて、裏面側フィルム層102の他方の主面102bは、平坦面であるため、シート状部材100の裏面側においても、非水溶性の材料の塗り重ねや印刷等の作業を容易に行うことができる。
【0057】
[第3の実施形態]
図4に、第3の実施形態に係るシート状部材200における厚さ方向Dに沿った断面であり、前述の
図1(b)に示す位置に対応する断面図を示す。シート状部材200の平面形状は、
図1(a)に示すシート状部材1の平面形状と同様である。ここでは、主として、前述した第1の実施形態と異なる点について説明する。
図4において、第1の実施形態と同様の構成要素には、同じ符号を付している。
【0058】
シート状部材200においては、フィルム層2の構成は第1の実施形態と同様であり、補強層203の構成において、一部異なる点がある。補強層203は、絶縁性補強部5と水溶性補強部204を備えている。絶縁性補強部5の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0059】
第1の実施形態では、水溶性補強部4を構成する材料は、澱粉を糊化させて乾燥させたものであり、フィルム層2を構成する材料と同じである。しかしながら、第3の実施形態に係るシート状部材200おいて、水溶性補強部204を構成する材料は、水溶性繊維を混入させた澱粉を糊化させて乾燥させたものである。本実施形態では、混入させた繊維は水溶性セルロース繊維である。
したがって、絶縁性補強部5の網目部9には、繊維を混入させた澱粉を糊化させて乾燥させたものが充填されており、絶縁性補強部5の上側と下側には、同じく、繊維を混入させた澱粉を糊化させて乾燥させたものが平面方向に延びている。
【0060】
説明のために、水溶性補強部204のうち、平面方向に延び、糸部8の上端8cとフィルム層2の間に設けられている部分を第1の繊維被膜部206と呼ぶ。第1の繊維被膜部206の上面206aは、補強層203の一方の主面203aを構成し、その上にはフィルム層2が積層されている。また、説明のために、水溶性補強部204のうち、平面方向に延び、糸部8の下端8d側に設けられている部分を第2の繊維被膜部207と呼ぶ。第2の繊維被膜部207の下面207aは、補強層203の他方の主面203bを構成している。また、下面207aは、平坦面であり、シート状部材200の裏面を構成している。
【0061】
第3の実施形態に係るシート状部材200の製造方法は、基本的には、前述した第1の実施形態に係るシート状部材1の製造方法と同様である。第1の実施形態と異なる点は、補強層形成工程において、糊化させた澱粉には、水溶性繊維が混入されている点である。本実施形態では、補強層形成工程において、微細裁断した水溶性セルロース繊維を糊化させた澱粉に混入し、乾燥させている。これにより、水溶性補強部204を形成することがきる。
【0062】
第3の実施形態に係るシート状部材200には、前述の第1の実施形態に係るシート状部材1において述べた利点に加えて、以下のような利点がある。
第3の実施形態に係るシート状部材200において、水溶性補強部204は、水溶性繊維を含んでいる。したがって、シート状部材200によれば、補強層203の強度をより高めることができる。よって、シート状部材200の強度をさらに高めることができる。
【0063】
[第4の実施形態]
図5に、第4の実施形態に係るシート状部材300における厚さ方向Dに沿った断面であり、前述の
図1(b)に示す位置に対応する断面図を示す。シート状部材300の平面形状は、
図1(a)に示すシート状部材1の平面形状と同様である。ここでは、主として、前述した第3の実施形態と異なる点について説明する。
図5において、第1の実施形態及び第3の実施形態と同様の構成要素には、同じ符号を付している。
【0064】
シート状部材300は、前述のシート状部材200の裏面側に、他のフィルム層302を備えた構成を有している。ここでは、第1の実施形態において述べたシート状部材1の表面側に位置するフィルム層2を表面側フィルム層2と呼び、他のフィルム層302を裏面側フィルム層302と呼ぶ。表面側フィルム層2及び補強層203の構成は、第1の実施形態におけるフィルム層2及び第3の実施形態における補強層203の構成と同様である。
【0065】
裏面側フィルム層302は、補強層203の他方の主面203b側に設けられている。したがって、補強層203は、表面側フィルム層2と裏面側フィルム層302との間に位置している。裏面側フィルム層302は、表面側フィルム層2及び補強層203に沿って、平面方向に延びている。本実施形態において、裏面側フィルム層302は、表面側フィルム層2と同様に、シート状部材300の全面に亘って延びている。
【0066】
また、裏面側フィルム層302は、表面側フィルム層2と同様に、澱粉を糊化させて乾燥させたものによって構成されている。裏面側フィルム層302は、例えば、オブラート等の、植物性の多糖質水溶性フィルムによって構成されていてもよい。裏面側フィルム層302の一方の主面302aは、補強層203の他方の主面203b側に位置し、他方の主面203bに接している。裏面側フィルム層302の他方の主面302bは、凹凸のない平坦面である。
【0067】
第4の実施形態に係るシート状部材300の製造方法は、基本的には、前述した第3の実施形態に係るシート状部材200の製造方法と同様である。第3の実施形態と異なる点は、フィルム層形成工程において、補強層203の両面203a,203bに、澱粉を糊化させた澱粉糊状液を積層させて乾燥させる点である。これにより、表面側フィルム層2と共に裏面側フィルム層302を形成することができる。
【0068】
第4の実施形態に係るシート状部材300には、前述の第3の実施形態に係るシート状部材200において述べた利点に加えて、以下のような利点がある。
第4の実施形態に係るシート状部材300は、前述のように、平面方向に延びる水溶性の他のフィルム層(裏面側フィルム層)302をさらに備えている。したがって、第4の実施形態に係るシート状部材300によれば、シート状部材300の両面2a,302bに、非水溶性の材料を重ねて、様々な非水溶性の形成物を形成することができる。また、非水溶性の材料の塗り重ね又は印刷面として、シート状部材300の両面2a,302bが使用できるため、シート状部材の使用時において、表裏を確認する手間を省くことができる。
加えて、裏面側フィルム層302の他方の主面302bは、平坦面であるため、シート状部材300の裏面側においても、非水溶性の材料の塗り重ねや印刷等の作業を容易に行うことができる。
【0069】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、シート状部材1,100,200,300の形状は、どのようなサイズであってもよいし、どのような形状であってもよい。一例として、インクジェットプリンター、レーザープリンター、コピー機、プロッター等の一般的な印刷機器によって印刷可能なA1、A2、A3、A4、B5等の用紙サイズであってもよいし、円形、三角形、多角形等の平面形状であってもよい。また、長尺状のシート状部材をロール状にして保管、運搬等するものであってもよい。
【0070】
絶縁性補強部5の形状は、網状であれば、クロス、メッシュ等どのような形状であってもよい。
図6に、その一例を示す。
図6(a)に示す絶縁性補強部105は、糸部108と網目部109を備え、糸部108は第1の糸部108aと第2の糸部108bを備えている。第1の糸部108aと第2の糸部108bは直交していて、第1の糸部108aと第2の糸部108bはシート状部材の幅方向X及び長さ方向Yに対して斜めに延びている。
図6(b)に示す絶縁性補強部205は、糸部208と網目部209を備え、糸部208は、長さ方向Yに沿って波状に延びる複数の波状糸部208aを備えている。波状糸部208aは、幅方向Xに突出する波状の突出部208bにおいて、隣接する波状糸部208aと交差している。
【0071】
図6(c)に示す絶縁性補強部305は、糸部308と網目部309を備え、糸部308は等間隔で互いに平行に延びる複数の第1の糸部308aと、等間隔で互いに平行に延びる複数の第2の糸部308bを備えている。第1の糸部308aと第2の糸部308bは、交差している。ここでは、第1の糸部308aと第2の糸部308bは、直交している。第1の糸部308aと第2の糸部308bは、それぞれ、複数の細糸310の集合として構成されている。細糸310は、第1の糸部308a又は第2の糸部308bの延伸方向に沿って、直線状に延びている。
よって、絶縁性補強部305によれば、網目部9の空間領域を狭くすることなく、糸部308の強度を高めることができる。したがって、前述の水切れ効果を低下させることなく、絶縁性補強部5の強度及び絶縁性補強部5による補強力を高めることができる。
【0072】
なお、上記
図6(a)〜(c)を参照して説明した絶縁性補強部105,205,305には、結び目がなく、無結節の網状に形成されている。
絶縁性補強部5,105,205,305を構成する糸部8,108,208,308及び網目部9,109,209,309の形状及び大きさも、どのような形状及び大きさであってもよい。また、絶縁性補強部5では、縦糸部8aと横糸部8bとが直交しているが、縦糸部8aと横糸部8bはどのような角度で交差していてもよい。同様に、絶縁性補強部105,305では、第1の糸部108a,308aと第2の糸部108b,308bとが直交しているが、第1の糸部108a,308aと第2の糸部108b,308bはどのような角度で交差していてもよい。
【0073】
第1の実施形態に係る絶縁性補強部5では、糸部8が平織りされており、縦糸部8aと横糸部8bの交差部分において、縦糸部8aと横糸部8bが上下に重なっているが、縦糸部8aと横糸部8bが交差部分において同一平面上で接合するように縦糸部8aと横糸部8bを一体的に形成し、縦糸部8aと横糸部8bが同一平面上に位置するように構成してもよい。
また、前述の絶縁性補強部5において、複数の細い糸を束にすることによって1本の縦糸部8aを形成し、複数の細い糸を束にすることによって1本の横糸部8bを形成してもよい。
【0074】
第1の実施形態においては、補強層3に直接フィルム層2が積層されているが、フィルム層2が他の層を介して補強層3に積層されていてもよい。例えば、補強層3の上に、フィルム層2とは異なる材質からなる他の層を積層し、その上にフィルム層2を積層してもよいし、補強層3の上に、フィルム層2と同じ材質からなる他の層を積層し、その上にフィルム層2を積層してもよい。
【0075】
補強層3は、水溶性補強部4を備えているが、水溶性補強部4を備えなくてもよい。例えば、絶縁性補強部5に、フィルム層2を直接積層してもよい。また、絶縁性補強部5が水溶性補強部4に埋設されていなくてもよい。例えば、絶縁性補強部5の糸部8の下端8dがシート状部材1の裏面に露出していてもよい。
第1の実施形態においては、水溶性補強部4に絶縁性補強部5を埋設させているが、例えば、非水溶性の材料によって、絶縁性補強部5を覆って補強層3を形成してもよい。
第3の実施形態では、水溶性補強部204に含まれる水溶性繊維として、水溶性セルロース繊維を用いているが、他の繊維材を用いてもよい。
【0076】
第1の実施形態において、フィルム層2の一方の主面2aは平坦面であり、第2の実施形態において、フィルム層2の一方の主面2aと、他のフィルム層102の他方の主面102bは、平坦面であるが、これらの主面2a,102bが平坦面に形成されていなくてもよい。
【0077】
また、シート状部材1,100,200,300の製造方法は、前述した方法以外の製造方法であってもよい。一例として、第1の実施形態では、補強層形成工程において、絶縁性補強部5を澱粉糊状液に浸して、水溶性補強部4を形成しているが、他の方法によって、水溶性補強部4を形成してもよい。
例えば、絶縁性補強部5に澱粉糊状液をかけ流して、水溶性補強部4を形成してもよいし、絶縁性補強部5をオブラートシートで覆うことによって水溶性補強部4を形成してもよい。また、網目部9には、澱粉糊状液を充填させてもよいし、させなくてもよい。例えば、絶縁性補強部5をオブラートシートで覆って水溶性補強部4を形成した場合に、網目部9には空間が保持されていてもよい。
【0078】
また、第1の実施形態では、補強層3を形成してから、フィルム層2を形成しているが、補強層3とフィルム層2を同時に形成してもよい。
例えば、絶縁性補強部5に澱粉を糊化させた澱粉糊状液を所定の厚さになるまで塗り重ねて、乾燥させることにより、補強層3とフィルム層2を一体的に同時に形成してもよい。
【0079】
第1の実施形態において、フィルム層2及び補強層3は、平面視したときに、シート状部材1の全面に亘って設けられているが、これに限定されない。例えば、シート状部材1の中央部分のみにフィルム層2及び補強層3を設けてもよいし、シート状部材1において、非連続の複数の配置領域に、それぞれフィルム層2及び補強層3を配置してもよい。
【0080】
シート状部材1,100,200,300を構成する各部の材質は、どのような材質であってもよい。例えば、フィルム層2は、水溶性であれば足り、各種の澱粉、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン又はプルラン等によって構成してもよい。また、各種の材料を単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。また、各種の添加物を主材料に添加して用いてもよい。
【0081】
シート状部材1,100,200,300の一方の主面2a又は両面2a,102b,302bを保護するために、シート状部材1,100,200,300の一方の主面2a又は両面2a,102b,302bに保護フィルムを貼付してもよい。保護フィルムとして、例えば、シリコンゴムをスプレー又は塗布したポリプロピレン、再生PET、生分解性プラスチック等の薄いフィルムを用いてもよい。この場合、フィルム層2又は他のフィルム層102,302に印刷等を行う際には、この保護フィルムをシート状部材1,100,200,300から剥がして使用することができる。
【0082】
マス目や対角線、使用目的に応じた補助線、図柄、所定のパターン等を、フィルム層2、他のフィルム層102,302又は補強層3,203に、水溶性インク等の水溶性材料によって予め印刷しておいてもよい。
シート状部材1,100,200,300は、既述の用途以外にも、さまざまな用途に用いることができる。
各部の寸法は、すべて例示であり、既述した数値に限定されない。
【0083】
以上の実施形態等に関し、さらに以下の付記を記す。
(付記1)
平面方向に延びる水溶性のフィルム層と、
前記平面方向に延びる補強層とを備え、
前記フィルム層は、前記補強層に積層されており、
前記補強層は、前記平面方向に延び絶縁性を有する非水溶性の絶縁性補強部を備え、
前記絶縁性補強部は、無結節の網状に形成されているシート状部材。
【0084】
(付記2)
前記補強層は、水溶性の材料によって形成された水溶性補強部をさらに備え、前記絶縁性補強部は前記水溶性補強部に埋設されている付記1記載のシート状部材。
【0085】
(付記3)
前記水溶性補強部は、糊化させて乾燥させた澱粉を含む付記2記載のシート状部材。
【0086】
(付記4)
前記水溶性補強部は、水溶性繊維を含む付記2又は付記3記載のシート状部材。
【0087】
(付記5)
前記フィルム層の一方の主面は平坦面であり、前記フィルム層の他方の主面側に、前記補強層が設けられている付記1から付記4のいずれか1項記載のシート状部材。
【0088】
(付記6)
前記平面方向に延びる水溶性の他のフィルム層をさらに備え、前記フィルム層と前記他のフィルム層との間に、前記補強層が設けられており、
前記他のフィルム層の一方の主面は前記補強層側に位置し、
前記フィルム層の一方の主面と、前記他のフィルム層の他方の主面は、平坦面である付記1から付記5のいずれか1項記載のシート状部材。
【0089】
(付記7)
前記フィルム層は、糊化させて乾燥させた澱粉を含む付記1から付記6のいずれか1項記載のシート状部材。
【0090】
(付記8)
付記2又は付記2に従属する付記3から付記7のいずれか1項に記載のシート状部材の製造方法であって、
糊化させた澱粉によって前記絶縁性補強部を覆って乾燥させることにより、前記絶縁性補強部が前記水溶性補強部に埋設された前記補強層を形成する補強層形成工程と、
前記補強層形成工程によって形成された前記補強層の一方の主面又は両面に、澱粉を糊化させた澱粉糊状液を積層させて乾燥させることにより、前記フィルム層を形成するフィルム層形成工程とを含むシート状部材の製造方法。
【0091】
(付記9)
前記補強層形成工程において、前記糊化させた澱粉には、水溶性繊維が混入されている付記8記載のシート状部材の製造方法。
本願に開示されるシート状部材は、平面方向に延びる水溶性のフィルム層と、平面方向に延びる補強層とを備え、フィルム層は、補強層に積層されており、補強層は、平面方向に延び絶縁性を有する非水溶性の絶縁性補強部を備え、絶縁性補強部は、無結節の網状に形成されている。