【0017】
本発明の軽油燃料組成物は、最終的に得られる軽油燃料組成物が規定する特定の性状を有するように1種または2種以上の軽油基材を脱硫装置などの2次装置などで処理し、硫黄分10massppm以下にしたものや、硫黄分値に関わらず、1種または2種以上の軽油基材を混合して調製できる。
例えば、原油を常圧蒸留して得られる灯油留分や軽油留分及びそれらを脱硫した脱硫灯油や脱硫軽油を用いることができる。また常圧蒸留装置から得られる軽油留分と分解軽油を適切な割合で混合、脱硫処理して得られた硫黄分10massppm以下の軽油燃料組成物も用いることができる。なお、分解軽油とは、直接脱硫装置から得られる直脱軽油や、間接脱硫装置から得られる間接脱硫軽油、或いは、流動接触分解装置から得られるライトサイクルオイルなど重油のアップグレーディングプロセスから留出する軽油留分をいい、近年の社会的要請に従えば、それの混合比率はできるだけ高くすることが好ましい。
更に、これらを色相改善のために水素化処理した軽油も用いることができる。すなわち、脱硫装置処理後の脱硫軽油中に炭素数15〜23のノルマルパラフィン類、シクロパラフィン類、芳香族分、2環シクロパラフィン、アルキルベンゼン類が適正量になるように、脱硫装置原料種類や比率を調整したり、脱硫装置内の反応で消滅、生成するこれらの物質を最終製品で適正範囲内になるように種々の脱硫条件を調整して得られたものを使用することができる。
更にまた、脱硫後の軽油が炭素数15〜23のノルマルパラフィン類、シクロパラフィン類、芳香族分、2環シクロパラフィン、アルキルベンゼン類の適正量を満たす、満たさないに関わらず、石油精製2次装置から留出する軽油相当油や、水素化分解軽油、フィッシャートロップシュ合成油などを基材として用いて、上記適正量を満たすものにすることも可能である。
【実施例】
【0023】
以下の軽油燃料組成物を調製し、表1に示す性状を測定した。
「実施例1」
沸点範囲181〜352℃の直留軽油留分が95vol%、流動接触分解装置から留出する沸点範囲145〜374℃のライトサイクルオイルが5vol%の混合油を、市販の脱硫触媒を用い、液空間速度1.1、水素分圧5MPa、水素オイル比170NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た、軽油燃料組成物。
「実施例2」
沸点範囲181〜362℃の直留軽油留分が90vol%、流動接触分解装置から留出する沸点範囲145〜374℃のライトサイクルオイルが10vol%の混合油を、市販の脱硫触媒を用い、液空間速度1.5、水素分圧4MPa、水素オイル比150NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た、軽油燃料組成物。
「比較例1」
沸点範囲181〜372℃の直留軽油留分が98vol%、流動接触分解装置から留出する沸点範囲145〜374℃のライトサイクルオイルが2vol%の混合油を、市販の脱硫触媒を用い、液空間速度1.5、水素分圧4MPa、水素オイル比150NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た、軽油燃料組成物。
「比較例2」
沸点範囲181〜371℃の直留軽油留分が85vol%、流動接触分解装置から留出する沸点範囲145〜372℃のライトサイクルオイルが10vol%および沸点範囲が170〜365℃の間接脱硫装置から留出する間脱軽油が5vol%の混合油を、市販の脱硫触媒を用い、液空間速度1.0、水素分圧5MPa、水素オイル比150NL/Lの条件で硫黄分が10massppm以下となるまで脱硫処理して得た、軽油燃料組成物。
「比較例3」
市場より採取した軽油燃料組成物。
【0024】
【表1】
【0025】
なお、表1に示す各性状は以下に示すものである。
「密度(@15℃)」
JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」により測定される15℃における密度。
「動粘度(@30℃)」
JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定される30℃における動粘度。
「硫黄分」
JIS K 2541−2「原油及び石油製品−硫黄分試験方法 第2部:微量電量滴定式酸化法」により得られる硫黄分。
「引火点」
JIS K 2265−3「引火点の求め方−第3部:ペンスキーマルテンス密閉法」により得られる引火点。
「10%残油の残留炭素分」
JIS K 2270「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」により得られる10%残油の残留炭素分。
「セタン指数」
JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法 8. 4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」により測定されるセタン指数を意味する。
「蒸留性状」
JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」により得られる蒸留性状。
「飽和分合計」
JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」により測定されるパラフィン分。
「芳香族分合計」
JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」により測定される1環芳香族分と2環芳香族分と3環以上芳香族炭化水素分との総和。
「C19−23ノルマルパラフィン分」
ASTM D 2887「Standard Test Method for Boiling Range Distribution of Petroleum Fraction by Gas Chromatography」に準拠したガスクロマトグラフ法を用い、得られたクロマトグラムから各炭素数毎の炭化水素含有量を算出することによって得た。すなわち、炭素数の異なるノルマルパラフィンの混合物を標準物としてリテンションタイムを調べておき、ノルマルパラフィンのピーク面積値からノルマルパラフィンの含有量を求め、炭素数N−1のノルマルパラフィンによるピーク〜炭素数Nのノルマルパラフィンによるピークの間にあるピークのクロマトグラム面積値の総和を炭素数Nのイソパラフィン含有量として求めた。ガスクロマトグラフィの検知器は水素炎イオン化型検出器(FID)であることから、測定感度はパラフィンの炭素数に比例する。そこで、この感度を考慮して面積値から含有モル比を求め、最終的に各質量比を求めた。
なお、ガスクロマトグラフ法におけるカラムの種類は、HP5(長さ:30m,内径:0.32mm,液層厚さ:0.25μm)であり、各分析条件は以下のとおりである。
カラム槽昇温条件:35℃(5分)→10℃/分(昇温)→320℃(11.5分)
試料気化室条件:320℃一定 スプリット比150:1
検出器部:320℃
「シクロパラフィン類、ナフテンベンゼン類、アルキルベンゼン類」
シクロパラフィン類、ナフテンベンゼン類、アルキルベンゼン類の分析には、Agilent Technology社製HP−6890N型FI−MS検出器付きガスクロマトグラムおよびJEOL社製JMS−T100GC飛行時間型質量分析計からなるGCシステムを用い、ノルマルパラフィン標準試料の分析強度にて補正グラフを作成し、測定したデータを補正グラフにて補正後、全体の強度を100mass%として各重量比を求めた。
なお、ガスクロマトグラム法におけるカラムの種類は、DB−5(長さ:30m、内径:0.25mm、液層厚さ:0.25μm)であり、各分析条件は以下の通りである。
カラム槽昇温条件:30℃(5分)→20℃/分(昇温)→300℃(27分)
試料気化室条件:300℃一定 スプリットレス
検出器部:250℃
溶媒:ヘキサン
溶媒待ち時間:3分
収集範囲:25.00m/zから600.00m/z
「流動点」
JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」によって得られる流動点。
「曇り点」
JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」によって得られる曇り点。
「目詰まり点」
JIS K 2288「石油製品−軽油−目詰まり点試験方法」によって得られる目詰まり点。
「作動限界温度」
作動限界温度は、公益社団法人石油学会製品部会燃料油分科会「ディーゼル車の燃料供給システム調査専門委員会」で検討、提示された「低温シャシによるディーゼル車のフィルタ閉塞試験マニュアル」に準拠して行った。試験車両は、新短期規制ディーゼルエンジン搭載車両を用い、室温から各試験燃料の曇り点+5.0℃まで急冷し、その後試験温度まで1.0℃/hで徐冷し、試験温度で1時間保持した後、試験法の手順に従い作動限界温度の確認を行った。作動限界温度は始動、走行が可能な温度。
【0026】
表1において、炭素数19〜23のノルマルパラフィン分が少ない実施例1が低温性能において優れることが確認された。また、炭素数19〜23のノルマルパラフィン分を実施例1に対して増やした場合であっても、それが7.5mass%以下であり、かつ、シクロパラフィン類と芳香族分を所定の量に調製すれば、より具体的には、少なくとも、シクロパラフィン類を35mass%以下とし、芳香族分を18vol%以上とすれば、低温性能の悪化は抑制できることが確認できた。