(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
遠位端と近位端を有する(A)アウターシャフト、前記(A)アウターシャフト内に同軸上に配置された(B)ステント、前記(B)ステントの内側に同軸上に配置された(C)インナーシャフト、を含む構成からなるステントデリバリーシステムにおいて、前記(C)インナーシャフト上の一部に(B)ステントに接触していない(D)突起部が形成されており、ステントデリバリーシステムの径方向断面中に(B)ステントと(D)突起部の両方が含まれる限り、軸方向のどの位置で径方向断面をとっても、断面中の(B)ステントの内周と(C)インナーシャフトの外周で画定される領域の面積に対する、(D)突起部が占める面積の比率であるシャフト内充填率が、30%以上100%未満であり、(D)突起部の軸方向長さが(B)ステント全長の5%以上35%以下であることを特徴とするステントデリバリーシステム。
前記(D)突起部が前記(C)インナーシャフトの遠位端側部分であるガイドワイヤールーメンチューブ上に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のステントデリバリーシステム。
前記(D)突起部に使用される部材がショアD35以上D72以下の硬度を有した樹脂であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のステントデリバリーシステム。
請求項1ないし6のいずれかに記載のステントデリバリーシステムの製造方法であって、前記(B)ステントを前記(C)インナーシャフト上の前記(D)突起部上で縮径する工程、前記(C)インナーシャフトを押して、前記(A)アウターシャフト内に前記(B)ステントと前記(C)インナーシャフトを同時に挿入する工程を含むことを特徴とするステントデリバリーシステムの製造方法。
【背景技術】
【0002】
ステントは、一般に、血管または他の生体内管腔が、狭窄または閉塞することによって生じる様々な疾患を治療するものである。詳説すると、ステントは、狭窄または閉塞部位を拡張し、その管腔サイズを維持するために、そこに留置する医療用具である。
【0003】
ステントには、例えば、
1本の線状の金属もしくは高分子材料からなるコイル状のタイプ、金属チューブをレーザーによって切り抜いて加工したタイプ、線状の部材をレーザーによって溶接して組み立てたタイプ、または、複数の線状金属を織って作ったタイプがある。
【0004】
また、これらのステントは、そのステントをマウントしたバルーンによって拡張されるもの
(バルーン拡張型ステント
)と、外部からの拡張を抑制する部材を取り除くことによって自ら拡張していくもの
(自己拡張型ステント
)とに分類される。
【0005】
例えば、自己拡張型ステントは、一般に、管内カテーテルの遠位端付近に取り付けられ、その上からシース等を被せられて使用される。詳説すると、デリバリーシステムが、患者の体管腔内の治療部位へ進められ、治療部位にてアウターシャフトが取り除かれ、これに伴って、ステントが自己拡張することで留置される。近年、尿管、胆管、または末梢動脈の形成術に対して、これらの自己拡張型ステントが多く用いられるようになってきている。
【0006】
自己拡張型ステントが、目標とする病変部にまで搬送される場合、一般的には、そのステントはステントデリバリーシステムの中に挿入される
(なお、ステントを装着したステントデリバリーシステムを、ステントデリバリーシステムと称する場合もあるし、ステントデリバリーシステム自体をステントデリバリーシステムと称する場合もある
)。
【0007】
ステントを挿入する方法としては、ステントはデリバリーシステムのアウターシャフト内径以下に縮径され、軸方向に押し込むことによって挿入される(前記一連の工程をクリンピングと呼ぶ)。そして、デリバリーシステムで病変部にまで搬送後、アウターシャフトから乖離して病変部に留置される。詳説すると、術者が手元側からアウターシャフトを引くことで、アウターシャフト内のインナーシャフトが、ステントをアウターシャフトから押し出し、そのステントは病変部に留置される。
【0008】
ところで、病変部に留置されるステントには血管の動態に耐えうる疲労耐久性能が要求される。即ち、ステントには血管の曲げ、伸び、捻り等による繰り返し受ける応力で破損しないことが要求される。ステントが破損した場合、破損部位で血管の再狭窄が発生するため、ステントの血管動態に対する疲労耐久性能の向上は患者の予後改善のために重要である。
【0009】
ステントの疲労耐久性を向上させる方法として、ステントの柔軟性を高めて血管の動態に追従できるようにする方法が知られている。しかしながら、柔軟性の高いステントは、クリンピング時にステントがキンクし破損しやすい、ステントを病変部に留置するためにデリバリーシステムから放出する時にステントがアウターシャフトとの摩擦等により伸びて破損しやすい等の傾向がある。
【0010】
特許文献1では、インナーシャフト上に圧縮されたときに弾性率が増大する支持部材を配置したステントデリバリーシステムが提案されており、支持部材上にステントが支持部材を機械的に圧縮するようにクリンプされた状態で、ステントを搬送する。支持部材によって、ステントの支持部材上へのクリンプ時や治療部位への搬送時に、抵抗力をステント全体に渡って力を一様に分散させることによって、ステントに対し長手方向の剛性が増加し、クリンピング時や放出時におけるステントの破損を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係るステントデリバリーシステムの実施の一形態について図を参照しながら説明する。尚、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
一般的なカテーテルの構造として、OTW(Over The Wire)構造とRX(Rapid Exchange)構造等が挙げられる。本発明の説明では、
図1aに示したOTW構造を用いて説明するが、カテーテルの遠位端において、OTW構造とRX構造は同一の構造であり、本発明はOTW構造のみに限定されるものではない。
【0026】
また、本発明の説明では、突起部がインナーシャフトの遠位側部であるガイドワイヤー
(以下、GWと記載する。
)ルーメンチューブ上に形成されている形態について説明するが、これに限定されるものではない。
【0027】
図
1aは、本発明のデリバリーシステム1a、
図1b及び
図1cは、デリバリーシステムを構成しているアウターシャフト1b及びインナーシャフト1cを模式的に示している。
【0028】
アウターシャフト1bは、主にアウターチューブ102とストレインリリーフ103及びハブ104で構成されている。インナーシャフト1cは、主に先端チップ101、GWルーメンチューブ105、突起部106、及び補強スリーブ層107で構成されている。デリバリーシステム1aは、アウターシャフト1b内に、同軸上にインナーシャフト1cを配置して構成されている。
【0029】
突起部106は、GWルーメンチューブ105部分以外のインナーシャフト上、例えば補強スリーブ層107部分の上にも形成することができるが、ステントの放出時の血管形状への追従性の点で、柔軟なGWルーメンチューブ上に形成することが好ましい。
【0030】
図2は、本発明のデリバリーシステム1aの遠位端における軸方向の断面図を示している。デリバリーシステム1aの遠位端において、遠位端と近位端を有する(A)アウターシャフト1b、(B)ステント201は、アウターシャフト1b内に同軸上に配置され、更に、(B)ステント201の内側に(
C)インナーシャフト1cが同軸上に配置されている。
【0031】
前記(C)インナーシャフトのGWルーメンチューブ105上の一部に(D
)突起部106が形成されている。
【0032】
本発明のデリバリーシステム1aにおいては、前記(D
)突起部106が前記(B)ステント201に接していない部分を有していることを特徴としている。(D
)突起部106がステント内面に全て密着すると、(B)ステント201内面と(D
)突起部106の摩擦抵抗が大きくなり、デリバリーシステム1aから(B)ステント201を放出する荷重が高くなる傾向がある。また、(D
)突起部106の形状は(B)ステント201に接していない部分があれば特に制限されないが、例えば、軸方向の断面が
図3に示した様な略H状や、楕円形、多角形の突起部が挙げられる。特に加工しやすい点から、略H状がより好ましい。
【0033】
デリバリーシステムの軸方向におけ
る(D)突起部106の配置としては、突起部の全体が(B)ステントの内部
(ステントの遠位端と近位端の間
)に配置されていてもよく、突起部の一部は(B)ステントの内部に配置され、一部はステントの外部にまで延存していてもよい。突起部の(B)ステントの内面の配置位置は、(B)ステント201の内面の遠位端や、中間、近位端のいずれにも限定されないが、ステント放出時のステント挙動や、クリンピング操作の容易さの点から、(B)ステント
201近位端に存在することが好ましい。
【0034】
(B)ステント
201の内部に配置される、(D)突起部106の軸方向長さは、(B)ステント201の長さや強度により選択すればよく特には限定されないが、(B)ステント201全長の5%〜35%が好ましく、より好ましくは10%〜25%がより好ましい。35
%を超えるとデリバリーシステム1a内で(B)ステント201が固定されてしまい、ステントを放出し生体内管腔に留置する時に(B)ステント201が放出できない、もしくは、ステント放出時の過度な荷重により、(B)ステント201が破損してしまう傾向がある。一方で、5
%未満であると、クリンピング時に(D)突起部106から(B)ステント201にかかる応力が小さすぎるため、クリンピング時に(C)インナーシャフト1cが(B)ステント201と同時に動かなくなったり、(B)ステント201がキンク等により破損したりする傾向がある。
【0035】
(D
)突起部が
(B
)ステントの外部にまで延存する場合、
(D
)突起部における該延在部分の軸方向の長さは特に限定されないが、
(B
)ステント内部の配置されている長さよりも短いことが好ましい。
【0036】
図4は、
図2のC
-C’におけるデリバリーシステム1aの径方向断面の一部を示している。本発明では、折れ曲がりや、軸圧縮による(B)ステント201の破損の防止と、(B)ステント201の(A)アウターシャフト1bへの挿入とステント放出時の荷重低減とを両立するために、すべての径方向断面において、(B)ステント201の内周と(C)インナーシャフト1cのGWルーメンチューブ105外周で画される全面積
(S)に対する(D)突起部106の断面積
(S’
)の比率〔シャフト内充填率
(%)=
(S’
)/(S)×100〕を30%以上100%未
満とする。前記シャフト内充填率は98%以下であることが好ましい。さらなるステント放出荷重の低減という点からは、50%以上94%以下であることがより好ましい。前記シャフト内充填率が30%未満の場合は、
図6bに示したクリンピング工程の縮径時における(B)ステント201の(D)突起部106へのめり込みが小さいため、(A)アウターシャフト1bへの挿入時に(C)インナーシャフト1cが(B)ステント201内側を空転し、本発明のクリンピング方法が適用できない傾向がある。一方、シャフト内充填率が100%、すなわち(B)ステント201内周面全てに(D)突起部106が接触している場合は、ステント放出荷重が高くなるため、放出時にステントが変形あるいは破損する傾向がある。
【0037】
なお、「すべての径方向断面
において、シャフト内充填率が30
%以上100
%未満である」とは、径方向断面中に
(B
)ステントと
(D
)突起部の両方が含まれる限り、軸方向のどの位置で径方向断面をとっても、シャフト内充填率が常に30
%以上100
%未満であることを意味する。ただし、シャフト充填率はすべての径方向断面で同一の値である必要はなく、30
%以上100
%未満の範囲内において、軸方向の位置により異なる数値をとってもよい。
【0038】
また、前記(D)突起部106に使用される材料は、クリンピング工程におけるステント縮径時にステントが変形や破損を伴わずに縮径することができれば、特に限定されないが、ショアD35以上D72以下の硬度を有した樹脂であることが好ましい。また、クリンピング工程でステント201遠位端に対し、クイル502で軸方向の力を(B)ステント201に付与した場合における(B)ステント201内からの(C)インナーシャフト1cが空転することを抑制できる点から、ショアD35以上D55以下の樹脂であることがより好ましい。
【0039】
また、(D)突起部106の形成に使用される樹脂種としては、生体に対する安全性や良好な加工性を有していれば、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド共重合体等が挙げられる。特に医療機器として承認実績や、加工性の点から、ポリエーテルブロックアミド共重合体であるPEBAX(登録商標、アルケマ社)シリーズより選択することがより好ましい。
【0040】
また、ステント201に使用される材料としては、実績のある材料として、医療用ステンレスである316Lステンレス、タンタル、Co-Cr
(コバルト・クロム
)合金、Ni-Ti
(ニッケル・チタン
)合金などが好ましく、形状記憶性や加工性の点でNi
-Ti合金がより好ましい。
【0041】
以下、本発明のステントデリバリーカテーテルを構成しているアウターシャフトおよびインナーシャフトを構成する材料や製造方法について、詳細に説明する。
【0042】
1.アウターシャフト
まず、アウターシャフト1bを構成する各部材について説明する。
(1)アウターチューブ102
アウターチューブ102の特性としては、ステント搬送時の耐キンク性や血管への追従性の点から、剛性と柔軟性の特性バランスに優れることが求められる。更には、ステント放出時のアウターチューブ102の塑性変形を防ぐ点で、高い降伏強度を有すること、また、放出荷重を低減する点で、ステントに対して優れた潤滑性
(低摩擦性
)を有することが求められる。
【0043】
上記のアウターチューブ102に使用される材料としては、前記の各種特性を有する材料であれば、特に制限されないが、特に入手性や加工性の点でPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)や、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ポリイミド、HDPE(高密度ポリエチレン)などが好ましく
、特に医療機器として承認実績や、加工性の点から、PTFEが特に好ましい。
【0044】
また、アウターチューブ102は、単一の樹脂チューブであっても、補強材を含んだブレードチューブでもよく、単層構造であっても多層構造であっても良い。
【0045】
補強材としては、Ni-Ti製バネ・平線や、ステンレス製バネ・平線や、ステンレス製バネ・丸線などを好ましく用いることができ、特に降伏強度を高める点や、加工性の点でステンレス製バネ・平線が特に好ましい。内径は、ステントデリバリーシステム
1aにクリンピングされるステント201の設計によって決めればよいが、1.07 mm 〜 2.20 mmが好ましく、前記アウターチューブの各種特性を発揮するという点で、1.44 mm 〜 1.80 mmが特に好ましい。
【0046】
外径は、ステントデリバリーシステム1aのデリバリーに使用されるシース内径によって決めればよいが、一般的には、シースの内径は4 Fr(1.35 mm)〜7 Fr(2.50 mm)であるため、アウターチューブ102の外径は1.33 mm 〜 2.48 mmが好ましく、患者への低侵襲性や、デリバリーシステム1
a全体の剛性バランスといった点で、1.70 mm 〜 2.10 mmが特に好ましい。
【0047】
内層厚みは、補強材を含む場合は内層の内面への補強層の転写を防ぐために、補強材の厚み以上であれば特に限定されない。補強材を含まない場合は、ステントによる内層剥離を防ぐためにステントストラットの厚み以上であれば特に限定されない。
【0048】
補強材を含む場合は、補強材厚みは0.10 mm 〜 0.30 mmが好ましく、前記アウターチューブ102の各種特性を発揮するという点で、0.15 mm 〜 0.20 mmが特に好ましい。
【0049】
アウターチューブの具体的な好ましい一形態としては、例えばブレードチューブは外径2.05 mm/内径1.80 mmであり、内層が厚み0.020 mmのPTFE、補強層が厚み0.015 mm、幅0.100 mm、ピッチ4 mmであるステンレス製バネ・平線、外層がダイセル・エボニック社のポリアミド重合体であるダイアミドX1988(登録商標)シリーズにBaSO
4を添加した樹脂で構成されたアウターチューブが好ましい。
【0050】
(2)ストレインリリーフ103
ストレインリリーフ103を構成する材料としては、アウターチューブ102とハブ104境界部にかかる応力を分散させる点で柔軟な材料が好ましいため、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド共重合体が挙げられる。特に安全性や、加工性の点から、ポリエーテルブロックアミド共重合体であるPEBAX(登録商標、アルケマ社)シリーズがより好ましい。
【0051】
(3
)ハブ104
ハブ104を構成する材料としては、本発明のステントデリバリーシステム以外のデバイスとの連結に耐えうる剛性を発揮する点で、堅固な材料が好ましいため、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリサルホン、ポリアリレート、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリオレフィン等を挙げる事ができる。医療機器としての承認実績や、加工性の点でポリカーボネートがより好ましい。
【0052】
次に、アウターシャフト1bの製造方法の一形態について説明する。
【0053】
アウターシャフトは、公知の方法により製造することができる。具体的には、アウターチューブ102近位端にストレインリリーフ103及びハブ104をそれぞれに形成された孔を通し、ハブ104の近位端がアウターチューブ102近位端と一致するように配置し、接着剤でハブ104とアウターチューブ102を接着後、ストレインリリーフ103をハブ104に接着することにより製造できる。
【0054】
2.インナーシャフト
インナーシャフト1cを構成する各部材について説明する。
(1)先端チップ101
先端チップ101を構成する材質としては、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド共重合体が挙げられる。特に医療機器として承認実績や、加工が容易な点から、アルケマ社のポリエーテルブロックアミド共重合体であるPEBAX(登録商標)シリーズがより好ましい。先端チップ101の形状や加工方法は本発明によって得られる効果に影響を与えないため、どのような形状や加工方法でもよい。
【0055】
(2)GWルーメンチューブ105
GWルーメンチューブ105の特性としては、ステントデリバリー時に血管に追従するために高い柔軟性を有し、GWルーメンチューブ105の内面はGWと低い荷重で摺動でき、ステント放出時にはかかる軸方向の荷重による塑性変形を防ぐためGWルーメンチューブ105は、高い降伏強度を有することが求められる。
【0056】
上記のGWルーメンチューブ105に使用される材料としては、前記の各種特性を有する材料であれば、特に制限されないが、特に入手性や加工性の点でポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミドなどが好ましく。特に医療機器として承認実績や、入手性の点から、ポリイミドが特に好ましい。
【0057】
内径は対応するGW寸法が0.010
”(約0.25 mm)か、0.014
”(約0.36 mm)か、0.018
”(約0.46 mm)か、0.035
”(約0.89 mm)であるかによって決めればよいが、本発明では、0.018
”GW対応とし、GWルーメンチューブ105 内径は0.50 mm 〜 0.60 mmが好ましく、GWルーメンチューブ105とGWが低い荷重で摺動できるという点で、0.53 mm 〜 0.57 mmが特に好ましい。
【0058】
外径は、アウターチューブ102内径からステント201のストラットの厚みの2倍を引いた値以下で血管に追従できる高い柔軟性を維持できる範囲であれば特に限定されない。0.018
”GW対応の場合、GWルーメンチューブ105 外径は0.70 mm 〜 0.80 mmが好ましく、GWルーメンチューブ105の柔軟性と高い降伏強度という点で、0.73 mm 〜 0.77 mmが特に好ましい。
長さはアウターシャフト1bの全長より長ければ特に限定されない。
【0059】
(3)突起部106
突起部106の形成に使用される樹脂種としては、生体に対する安全性や良好な加工性を有していれば、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド共重合体等が挙げられる。特に医療機器として承認実績や、加工性の点から、ポリエーテルブロックアミド共重合体であるPEBAX(登録商標、アルケマ社)シリーズより選択することがより好ましい。
【0060】
形状や外径は(B)ステント201に接していない部分があれば特に制限されないが、例えば、軸方向の断面が
図3に示した様な略H状や、楕円形、多角形の突起部が挙げられる。特に加工しやすい点から、略H状がより好ましい。
【0061】
(D)突起
部106の軸方向長さは、本発明ではデリバリー
システム1aにクリンプするステントが最長100 mmであったため、
(D)突起
部106の軸方向長さは10 mmとした。
【0062】
(4)補強スリーブ層107
補強スリーブ層107を構成する材料としては、コアワイヤーと被覆樹脂チューブがある。
【0063】
コアワイヤーの素材として、高強度、高耐食性、高疲労特性を有するステンレス316L鋼、Co-Cr合金、Ni-Ti合金など好ましい。インナーシャフト1cの軸方向剛性を高めるという点で、ステンレス316L鋼がより好ましい。寸法は特に限定されないが、ステントデリバリー時の血管追従性を低下させないためにコアワイヤーの基端部は細く、ステント放出時にインナーシャフト1cを支えるために遠位端は太いテーパーワイヤーが好ましい。
【0064】
コアワイヤーの具体的な好ましい一形態としては、例えば遠位端外径φ:0.50 mm
、近位端外径φ:0.30 mm、長さ1500 mmのステンレス316L鋼製コアワイヤーが好ましい。
【0065】
被覆樹脂チューブの素材として、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド共重合体などが好ましい。特に医療機器として承認実績や、加工が容易な点、剛性が付与できる点から、ダイセル・エボニック社のポリアミド重合体であるダイアミドX1988(登録商標)シリーズにBaSO
4を添加した樹脂がより好ましい。
【0066】
補強スリーブ層107の外径は対応するアウターチューブ102内径以下であれば、特に限定されない。補強スリーブ層107の具体的な好ましい一形態としては、例えばアウターチューブの内径が1.80 mmである場合、補強スリーブ層107の外径は1.60 mmが好ましい。
【0067】
以下に、インナーシャフト1cの製造方法の一形態について説明する。
【0068】
インナーシャフトは、公知の方法により製造することができる。具体的には、
GWルーメンチューブ105の遠位端からステント長+20 mmの位置にコアワイヤー遠位端を合わせ、GWルーメンチューブ105とコアワイヤーの上に被覆樹脂チューブを被せる。コアワイヤーと被覆樹脂チューブの遠位端を合わせて、被覆樹脂チューブの上にシュリンクチューブ RNF-100 3/32を被せる。設定温度を220
℃、風量20 ml/min.で被覆樹脂チューブの全長にわたって、熱風溶着させて補強スリーブ層107を作製する。
【0069】
補強スリーブ層107遠位端から遠位側に2 mm離れたGWルーメンチューブ105上に10 mmに切った突起部106用チューブの近位端を合わせて、シュリンクチューブRNF-100 1/16を被せる。その際シュリンクチューブ内に芯材を挿入することや、突起部106用チューブの寸法を選択することで突起部の形状を制御できる。例えば、
図3に示した様な軸方向に垂直な断面が略H状になる突起部の作製も可能である。部材を配置後、230
℃、風量10 ml/min.で樹脂層チューブ全長に渡って、熱風溶着させる。
【0070】
インナーシャフト1cをアウターシャフト1bの中に通し、ステント201をクリンピングする。アウターシャフト1b遠位端より遠位側にGWルーメンチューブ105の遠位端が存在するため、GWルーメンチューブ105遠位端に先端チップ101をどのような加工方法でもよいので固定する。
【0071】
以下に、ステントを縮径し、デリバリーシステム内に配置する方法であるクリンピングの一形態について説明する。
【0072】
図5a〜cには、一般的なステントをデリバリーシステム内に配置する様子を示している。ステント201をアウターチューブ102内径以下にクリンプヘッド501で縮径し、縮径したステント端部を金属製のクイル502で軸方向に押し、ステント201をアウターチューブ102に挿入する。このような一般的な方法では、柔軟なステントはアウターチューブ挿入時にキンクし、変形や破損する可能性がある。
【0073】
図6a〜cには、本発明のステントをデリバリーシステム内に配置する様子を示している。G
Wルーメンチューブ105の先端部を、クリンプヘッド内に挿入する。ステント201をインナーシャフトのGWルーメンチューブ105上に存在する突起部106の上で縮径し、中実のクイル502を用いインナーシャフトの遠位端を軸方向に押すことによって、アウターチューブ102内にステント201とインナーシャフト1cを同時に挿入することができる。前記の一般的なクリンピング方法と異なりステント端部に直接負荷を与えないため、柔軟なステントが、アウターシャフト1b挿入時のキンク等による変形や破損を防ぐことができる。
【0074】
また、前記中実のクイルに代えて中空のクイルを用いる場合は、クイル内にインナーシャフトを通すことでステント端部を直接クイルで押すことも可能である。上記方法でも、ステントはインナーシャフト上の突起部で縮径されているため、ステントは、軸方向にキンクしない程度
に十分な剛性を有しており、ステント遠位端をクイルで押してもステントは破損しにくくなる。また、中実クイルを用いた場合クリンプ時にGWルーメンチューブ105の遠位端にクイル502が接触するため、GWルーメンチューブ105が破損する可能性があるが、中空クイルではクイル502がGWルーメンチューブ105に接触しないため、GWルーメンチューブ105の破損を防止できる。
【実施例】
【0075】
以下に、ステントデリバリーカテーテルの一部部材に関する具体例を列挙した実施例
1と比較例
1・
2・
3について説明するとともに、評価を行った。ただし、ステントデリバリーカテーテルはこの例に制限されるものではない。
【0076】
尚、本発明のステントデリバリーシステムにおけるシャフト内充填率の算出は、以下の通り行なった。
〔シャフト内充填率の算出方法〕
本発明におけるシャフト内充填率とは
図4に示した様にステント201内側とGWルーメンチューブ105間に存在する空間内で、突起部106が占める割合を示している。シャフト内充填率は、各部材断面を真円と仮定し、ステント201は自己拡張型ステントのためアウターチューブ102内側に密着していると仮定して下記式で算出した。r
1:ステント内側半径、r
2:GWルーメンチューブ外径の半径、S
1:突起部断面積とすると、(シャフト内充填率)=(
突起部断面積)÷(ステント内側とGWルーメンチューブ間断面積)x100=100xS
1÷[π(r
1+r
2)(r
1-r
2)]で算出される。
【0077】
(実施例
1)
発明を実施するための形態で記述したインナーシャフト作成時において、突起
部用チューブ材質をPEBAX3533、寸法を外径1.42 mm/内径0.80 mmとし、シュリンクチューブ内にφ
:0.32 mm芯材を2本挿入して溶着を行い、略H形状の断面となる突起部を作成する。上記作成方法を行った突起部の断面積S
1は0.84 mm
2であった。本発明に用いた内径が1.80 mmのアウターチューブにφ
:12.0x80 mmステントを挿入する。上記ステントのステントストラット厚みが0.20 mmであるため、ステント内側半径r
1は0.70 mm、GWルーメンチューブ外径が0.75 mmであるため、GWルーメンチューブ外径の半径r
2は0.375 mmとなり、シャフト内充填率は76.1%と算出された。
【0078】
(比較例
1)
発明を実施するための形態で記述したインナーシャフト作成時において、突起部用チューブ材質をショアD35であるPEBAX3533、寸法を外径1.45 mm/内径0.80 mmとし、シュリンクチューブ内に芯材を挿入せずに溶着を行った。上記作成方法を行った突起部の断面積S
1は1.10 mm
2であり、他部材は実施例1と同じ部材を使用するため、r
1は0.70 mm、r
2は0.375 mmとなり、シャフト内充填率は100%と算出された。
【0079】
(比較例
2)
発明を実施するための形態で記述したインナーシャフト作成時において、突起部用チューブ材質をショアD35であるPEBAX3533、寸法を外径1.06 mm/内径0.80 mmとし、シュリンクチューブ内に芯材を挿入せずに溶着を行った。上記作成方法を行った突起部の断面積S
1は0.28 mm
2であり、他部材は実施例1と同じ部材を使用するため、r
1は0.70 mm、r
2は0.375 mmとなり、シャフト内充填率は25.5%と算出された。
【0080】
(比較例
3)
発明を実施するための形態で記述したインナーシャフト作成時において、突起部用チューブ材質をショアD72であるPEBAX7233、寸法を比較例2と同じ寸法である外径1.06 mm/内径0.80 mmとし、シュリンクチューブ内に芯材を挿入せずに溶着を行った。上記作成方法を行った突起部の断面積S
1は比較例2と同じ0.28 mm
2であり、他部材は実施例1と同じ部材を使用するため、r
1は0.70 mm、r
2は0.375 mmとなり、シャフト内充填率は比較例2と同様に25.5%と算出された。
【0081】
〔評価〕
実施例
1と比較例
1・
2・
3に関して、アウターシャフト内にインナーシャフトとステントを同時に挿入できるかどうかと、図
7に示すように
37℃±
2℃の温浴701に浸された下肢模擬血管702の模擬病変部位で、ステントがデリバリーカテーテルから放出される場合に、操作部にかかる荷重
(放出荷重
)の測定を行うことと放出後のステント外観で評価した。
【0082】
なお、仮想病変部位にまで、ステントをデリバリーできたステントデリバリーカテーテルでは、アウターシャフトが、スライダー703によって、習動距離
100 mm、習動速度
10 mm/secで近位端側に引っ張られ、その場合に生じるステント放出荷重が、
20 Nフォースゲージ704
(日本電産シンポ株式会社製
)を用いて測定される。
【0083】
〔評価結果〕
評価結果を下記表
1に示す。表中、“○”は、クリンピング時にアウターチューブ内にインナーシャフトとステントを同時に挿入できたことを意味し、“×”は、挿入できなかったことを意味する。また、“NO”はステントがアウターシャフトから放出できなかったことを意味し、
“-
”は放出後のステントが観察できなかったことを意味する。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例1と比較例1を比較した結果、ステント内充填率は100%よりも、76.1%である方がステントの放出が可能である点で優れていた。実施例1と比較例2を比較した結果、ステント内充填率が25.5%よりも、76.1%の方が放出後のステントが破損していないという点で優れていた。実施例1と比較例
3を比較した結果、ステント内充填率が25.5%よりも、76.1%の方がクリンピング時にアウターチューブ内にインナーシャフトとステントを同時に挿入できた点で優れていた。