(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極活物質、結着剤及び導電材を含む正極活物質合剤層中に、添加剤として正極活物質よりも低電位で電気化学的に酸化し、且つ電池として充放電で使用する正極電位では還元しない物質であるLi7Ti5O12(岩塩型)を添加してなる正極電極からなることを特徴とするリチウムイオン電池。
前記正極活物質よりも低電位で電気化学的に酸化し、且つ電池として充放電で使用する正極電位では還元しない物質の添加量は、正極活物質と合わせた重量を1としたとき、0.5〜10%であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギーの発電量の平準化とピークカット等の負荷の平準化には、蓄電池がシステムに組み込まれる。激しいエネルギー需給の変動に対応するためには。急速充放電が要求され、蓄電池の中ではリチウムイオン電池が適していると考えられている。このリチウムイオン電池は、民生用として、20年あまり歴史があるが、このような過酷な条件下で、10数年の寿命が必要であるという要求には対応してきておらず、これらの技術をそのまま転用すると、充分な電池寿命が得られない。
【0003】
そこで、これらの用途には、非特許文献1、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示されているように、リン酸鉄正極が主に用いられている。リン酸鉄正極は、エネルギー密度が、コバルト酸リチウムや、ニッケル酸リチウムと比べて劣るため、携帯用の民生用途にはあまり使用されていなかった。しかし、定置用、すなわち屋外で据置いて使用する場合は、エネルギー密度よりも寿命が重視される。リン酸鉄正極の寿命が優れているのは、結晶構造が安定しているため、リチウムの挿入脱離に伴う、結晶構造の乱れが生じにくいからであると考えられる。コバルト酸リチウムや、ニッケル酸リチウムのサイクルに伴う特性低下は、特に電解液と接する最表面部分で結晶構造が変化し、リチウムの拡散のバリアとなり、急速充放電が困難になるが、リン酸鉄正極には、この劣化モードはないため、これらの材料に比べて長寿命が得られる。しかし、リン酸鉄正極を使用するだけでは、実用上、まだ不充分である。
【0004】
リン酸鉄−グラファイトの系で電池を構成し、長期の充放電を行うと、電池容量が低下する。発明者らは、この原因を調査した結果、正極、負極ともに、電極材料は劣化しておらず、単極で試験するとほぼ初期の容量が得られることが判明した。さらに、詳細に調べた結果、電池が完全放電された状態では、正極が一部充電された状態となっており、放電には関与せず、これが原因で、電池容量が低下したものであることが知得された。
このような状態の電池の放電容量は、負極の容量によって支配されている。このとき、正極が一部充電された状態になっているのは、充電時に負極活物質上で副反応が進行し、これに相当する電気量が正極に蓄積されたものと考えられる。副反応の量はわずかでも、数千サイクルに渡って蓄積されると、このような結果を招く。
【0005】
これを解決する方法として、非特許文献2及び特許文献4に負極にリチウムをプリドープする方法が記載されている。この方法によれば、負極の長期サイクルに渡って生じる副反応を見込んで、あらかじめ負極の充電レベルを高くしておくことにより、正極が完全放電されるまで負極が放電されることになり、前記現象においても、電池の容量低下を防止することができる。しかし、活物質にあらかじめリチウムを担持させる当該方法は、活物質を含有する電極にリチウム金属箔を接触させる等のプロセスが、必要となり、比較的厚い電極を用いるコイン型などに有効であるが、薄い電極を複数枚積層する積層型構造電池、あるいは、巻回型構造電池においては、工程が煩雑になり、また、安全性を確保するための方策が必要となる課題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
昨今、自然エネルギーの活用、ピークカット等の需要が高まり、これらに資する蓄電池として、リチウムイオン電池に期待が高まってきている。リチウムイオン電池は、民生用として、20年あまり歴史があるが、このように、急速充放電が可能で、かつ、10数年の寿命が必要な要求には対応してきておらず、これらの技術をそのまま転用すると、電池寿命が不充分となる。そこで、10数年の寿命を得るためには、従来技術を使用した時に生じる劣化モードを鑑み、その対策を講じる必要がある。また、製造工程が複雑となる方法は避けるほうが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリチウムイオン電池には、正極活物質中に、正極活物質の充電電位よりも低電位で電気化学的に酸化され、且つ電池として2サイクル目以降の充放電で使用する場合の正極電位では還元しない物質を添加してなることを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明は以下の技術的手段から構成される。
〔1〕 正極活物質、結着剤及び導電材を含む正極活物質合剤層中に、添加剤として正極活物質よりも低電位で電気化学的に酸化し、且つ電池として充放電で使用する正極電位では還元しない物質を添加してなる正極電極からなることを特徴とするリチウムイオン電池。
〔2〕 前記添加剤が、正極活物質よりも低電位でリチウムを放出させるリチウム含有物質であることを特徴とする前記〔1〕に記載のリチウムイオン電池。
〔3〕 前記リチウム含有物質が、チタンとリチウムの複合酸化物又はケイ素とリチウムの複合酸化であることを特徴とする前記〔2〕に記載のリチウムイオン電池。
〔4〕 前記チタンとリチウムの複合酸化物が、Li
7Ti
5O
12(岩塩型)であることを特徴とする前記〔3〕に記載のリチウムイオン電池。
〔5〕 前記正極活物質よりも低電位で電気化学的に酸化し、且つ電池として充放電で使用する正極電位では還元しない物質の添加量は、正極活物質と合わせた重量を1としたとき、0.5〜10%であることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
〔6〕 前記正極活物質は、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)又はスピネル型マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)であることを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
【発明の効果】
【0011】
定置用、すなわち、自然エネルギーの活用、ピークカット等のシステムに組み込まれる蓄電池として活用した場合、従来のリチウムイオン電池に対して、長寿命が得られ、耐用年数が長くなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るリチウムイオン二次電池は、正極活物質、結着剤及び導電材を含む正極活物質合剤層中に、添加剤として正極活物質よりも低電位で電気化学的に酸化し、且つ電池として充放電で使用する正極電位では還元しない物質を添加してなる正極電極からなることを特徴とする。
【0013】
前記添加剤である「正極活物質よりも低電位で電気化学的に酸化し、且つ電池として充放電で使用する正極電位では還元しない物質を添加充放電で使用する正極電位では還元しない物質」は、1サイクル目の充電時、酸化され、その生成物はその後、化学反応しない物質であり、正極活物質よりも低電位でリチウムを放出させるリチウム含有物質とリチウムを含有しない物質があるが、添加し易さ等の点でリチウム含有物質が好ましい。
【0014】
前記正極活物質よりも低電位でリチウムを放出させるリチウム含有物質としては、Li
7Ti
5O
12、Li
2TiO
2等のチタンとリチウムの複合酸化物、SiLi
2O
3をはじめとするSiLixOyと記載されるケイ素とリチウムの複合酸化物、リチウムアルミニウム合金LixAl等がそれに該当する。
【0015】
また、前記リチウムを含有しない物質としては、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノンなどのキノン系化合物およびその誘導体や、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレンなどの導電性高分子や、有機ジスルフィド化合物、カーボンスルフィド、単体硫黄などの有機硫黄系化合物などが挙げられる。
【0016】
そして、前記添加剤は、前記正極活物質よりも低電位でリチウムを放出させるリチウム含有物質を用いるのが好ましく、リチウム含有物質の中では、チタンとリチウムの複合酸化物を用いることが好ましく、その中でもLi
7Ti
5O
12(岩塩型)を用いることがより好ましい。
【0017】
また、前記添加剤(前記正極活物質よりも低電位で電気化学的に酸化し、且つ電池として充放電で使用する正極電位では還元しない物質)の添加量は、正極活物質と合わせた重量を1としたとき、0.5〜10%であることが好ましい。添加量を0.05%以下にすると、負極に蓄えられるリチウムのリザーブ量が少ないため、充分な効果が得られず、また、10%以上とすると、設計可能な電池容量が低下する。
【0018】
更に、本発明において、前記添加剤が添加される正極活物質合剤層中の正極活物質は、充電および放電反応にともない、酸化数が変化する物質であればよいが、その例を挙げれば、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト-ニッケル-マンガン3成分層状酸化物(Li(Co−Ni−Mn)O
2)などを用いることができる。その中でも、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)又はスピネル型マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)であることが好ましい。
【0019】
次に、本発明に用いる正極の作成方法について説明する。
正極は、通常のリチウムイオン電池の正極のように、正極活物質合剤層と集電体から構成される。
正極活物質合剤(正極活物質、添加剤、結着剤、導電材の混合物層)は、以下の方法で作製する。
表面にカーボンをコーティングした前記正極活物質に、前記添加剤である正極活物質よりも低電位で電気化学的に酸化し、且つ電池として充放電で使用する正極電位では還元しない物質を添加し、これに導電材と結着剤を加えて混合し、正極活物質合剤を作製した。
【0020】
前記導電材としては、カーボンブラック、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、導電性高分子等を用いることができる。
【0021】
また、前記結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン粉末、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体あるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとクロロトリフルオロエチレンなどのフッ素系高分子、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテルフタレート、ポリエチレンナフタレート、等を用いることができる。
【0022】
さらに、正極活物質合剤とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルカーボネート、アセトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン、水などの、結着剤を溶解または分散可能な溶液と混合してスラリーを調製し、アルミニウム箔等の集電体の両面にドクターブレード法により塗布して正極活物質合剤層を形成する。その後、圧縮ローラーを用いて圧縮し電極を得る。
上記塗布方法として、他にスプレーコート法、バーコート法またはスリットコート法などが挙げられるが、これに限定されない。
【0023】
前記集電体は、一般に用いられるアルミニウム箔、アルミニウムメッシュ等を用いることができる。
【0024】
次に、本発明に用いる負極の作成方法について説明する。
負極活物質としては、カーボン等を用いる。前記負極活物質としては、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイトなどの炭素材料や、ポリアセチレン、ポリピロール等の高分子やSnO
2、Li
4Ti
5O
12、Si、Al、Sn、あるいはこれらを混合したものなどが挙げられるが、これに限定されない。活物質と結着剤を溶剤に混合してスラリーを調製した後、負極集電体としての銅箔の両面に塗布した。塗布の方法は、前記の正極の作成で記載した一般的な方法を用いることができる。その後、溶剤を乾燥し、ローラーで所定の厚みにまで圧縮した後、前記正極と組み合わせる負極電極を作製した。
【0025】
負極作成の前記結着材及び前記溶剤は、正極の作成に用いたものと同様のものを用いることができる。
【0026】
また、前記負極集電体として、銅箔、ニッケル箔、銅メッシュ、ニッケルメッシュ等が用いられる。
【0027】
次に、本発明に用いる電解液について説明する。
電解液は、等体積比のエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1.5モル/リットル濃度で溶解させて調製し用いる。
【0028】
本発明に用いられる上記溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトンあるいはε−カプロラクトンなどのラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ビニレンカーボネートあるいはビニルエチレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、1,2−ジメトキシエタン、1−
エトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフランあるいは2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、スルフォラン系溶媒、リン酸類、リン酸エステル溶媒、またはピロリドン類などの非水溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
また、電解質としては、通常の電池電解液に用いられるリチウム塩を使用することができる。具体的には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF
6)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(SO
2CF
3)
2)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(LiC(SO
2CF
3)
3)、四フッ化アルミン酸リチウム(LiAlCl
4)あるいは六フッ化ケイ酸リチウム(LiSiF
6)などが挙げられる。
【0030】
次に、本発明のリチウムイオン電池の作成方法は、正極、負極、電解液及びセパレータを用いて通常行われる方法によって作成することが可能である。以下に、その1例を説明する。
【0031】
複数の正極板と負極板を用いて微多孔性フィルムからなるセパレータを、セパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータ/負極の順に積層し、この電極群を、アルミラミネートフィルムに挿入し、正極・負極端子を具備させて、電解液を注入し、ヒートシールして、ラミネートタイプの試験セルを作成し、充放電サイクルを繰り返して、寿命の測定を行う。
【0032】
その他、1枚の正極と負極からなる電極群を捲回して、円筒形の電池缶に挿入してもよい。
【0033】
前記セパレータとは、正極と負極とを隔離、絶縁するものを意味し、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン等、電池のセパレータとして用いられている公知の多孔質膜や不織布をセパレータとして用いることができる。また、これらの材料が複数種積層されたものでも良い。さらに、電極板とセパレータの接着を容易にする目的で、セパレータの表面に熱により接着可能な接着層を儲けても良い。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明のリチウムイオン電池を構成する工程、この発明を用いた電池のサイクル寿命向上に及ぼす効果について述べていく。
【0035】
〔正極の作製〕
一般式LiFePO
4で表されるオリビン型構造を有するリン酸鉄は、以下の方法により作成した。先ず、2価の鉄塩とリン酸および水酸化リチウムを含有するリチウム水溶液を混合してリン酸鉄リチウムを晶析させた後、ケッチンブラックとショ糖を加えて、加熱処理焼成し、カーボンを被覆したLiFePO
4を得た。得られたLiFePO
4とカーボンの複合粒子は、LiFePO
4が99質量パーセント、表面にコーティングされたカーボン1質量%であり、平均粒径は、90μmと測定された。
この複合粒子と、添加剤としての岩塩型のLi
7Ti
5O
12(平均粒径2μm)を合わせて85質量部、導電剤としてのケッチンブラック粉末が10質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン粉末が5質量部となるよう混合し、これをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液と混合してスラリーを調製した。このスラリーをアルミニウム製の集電体(厚み:18μm)の両面にドクターブレード法により塗布して正極活物質合剤層を形成した。その後、圧縮ローラーを用いて圧縮し、短辺の長さが100mm、長辺の長さが150mmの実施例1〜4及び比較例で使用する正極を作製した。LiFePO
4とLi
7Ti
5O
12の重量比率は、90:10、95:5、98:2、99.5:0.5の4種類を作成した。
【0036】
〔負極の作製〕
負極活物質としては、天然黒鉛の表面を非晶質炭素で被覆した平均粒径が20μmの粉末を用意した。結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを5重量%と、溶剤としてのNMP溶液とを混合してスラリーを調製した後、負極集電タブの溶接部位を除き、上記スラリーを負極集電体としての銅箔(厚み:16μm)の両面に塗布した。その後、溶剤を乾燥し、ローラーで所定の厚みにまで圧縮した後、短辺の長さが105mm、長辺の長さが155mmとなるように負極を作製した。
【0037】
〔試験セルの作製〕
上記の工程で製造した10枚の正極板及び11枚の負極板を用いて、これら正・負極板と、ポリエチレン系の微多孔性フィルムからなるセパレータを、セパレータ/負極/セパレータ/正極/セパレータ/負極の順に積層し、外形が115mm×160mm×4mmの電極群を作製した。この電極群を、アルミラミネートフィルムに挿入し、正極・負極端子を具備させて、ヒートシールした。電解液は、当体積比のエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1.5モル/リットル濃度で溶解させて調製し、この電解液を注入した。
【0038】
〔効果確試験〕
上記のセルについて、充放電サイクル試験を行った。充電は1C相当の1Cで終止電圧が3.9Vに達するまで、3.9Vの定電圧を90分維持した。放電は1Cで終止電圧が2.7Vになるまで行った。充放電が安定する10サイクル目の放電容量と1000サイクル目の放電容量を表1に示した。なお、表中に記載した数値は、同条件で作製し、試験した5セルのうち、劣化率が最も大きかったものと、小さかったものを除いた3セルの平均値である。
【0039】
【表1】
【0040】
本発明によれば、1000サイクル経過時の容量維持率は、従来技術の比較例より高く、活物質に占めるLi
7Ti
5O
12添加量が0.05〜10%の範囲において、1000サイクル時の容量が高くなっている。添加量を0.05%以下にすると、負極に蓄えられるリチウムのリザーブ量が少ないため、このような効果が得られない。また、10%以上とすると、表1の結果からも類推されるように、設計可能な電池容量が低下するため、1000サイクル目で得られる放電容量の絶対値も無添加の条件(比較例1)より、低下する。