特許第6057652号(P6057652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許60576523,3’−ジニトロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057652
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】3,3’−ジニトロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 201/08 20060101AFI20161226BHJP
   C07C 205/38 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   C07C201/08
   C07C205/38
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-224514(P2012-224514)
(22)【出願日】2012年10月9日
(65)【公開番号】特開2014-76954(P2014-76954A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 誠二
(72)【発明者】
【氏名】仲間 渉
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−195749(JP,A)
【文献】 国際公開第01/81293(WO,A1)
【文献】 特許第5936511(JP,B2)
【文献】 Transactions of the Kentucky Academy of Science,1961年,Vol.22,p.60-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 201/00−207/04
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルを、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンからなる群から選ばれる一種または二種以上からなる溶媒下、硝酸を用いてニトロ化することを特徴とする3,3’−ジニトロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れる樹脂(耐熱性ポリマー)の原料モノマーの中間体となる3,3’−ジニトロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)エーテル類は、耐熱性ポリマー用の中間体として重要な化合物であり、かかるエーテル類またはその関連物質を得る方法としては次の方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)類を、硫酸水溶液中で硝酸にてニトロ化することにより、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)類を製造する方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)類を、不活性溶媒中実質的に他の酸の存在しない条件下で硝酸を用いてニトロ化することにより、ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)類を製造する方法が開示されている。
【0005】
非特許文献1には、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルを、ベンゼン−氷酢酸の混合溶媒下、硝酸にてニトロ化を行い、反応後、反応液を多量の水に投入し結晶化させることにより、収率75%で3,3’−ジニトロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルを得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−106365号
【特許文献2】国際公開第2001/081293号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Trans. Kentucky Acad. Sci., 22 60-68(1961)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1に開示される方法によれば、33.6gの原料物質から反応生成物を得るために、溶媒として80質量%硫酸を200g必要とし、さらに、原料物質と硝酸とを含む反応液に氷水260ccを必要とする。すなわち、40g程度の製品を得るために硫酸および硝酸を含む廃液が500g程度も発生することになり、工業的な製造方法とはいえない。また、特許文献1には、ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)エーテル類を製造した実施例が記載されておらず、当該文献に記載される方法でかかるエーテル類が製造されるか否かは不明である。
【0009】
特許文献2に開示される方法は、不活性溶媒の定義が明確でなく、その実施例等によれば、事実上ハロゲン化炭化水素を溶媒として用いているため、環境に与える影響がきわめて大きい方法である。したがって、環境保護の意識が高まった現在では、当該方法は工業的な製造方法とはいえない。また、特許文献2には、ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)エーテル類を製造した実施例が記載されておらず、当該文献に記載される方法でかかるエーテル類が製造されるか否かは不明である。この点に関し、本発明者らがこの方法がビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)エーテル類に適用可能か否かを確認したところ、収率は30%程度となって、適用不可能であった(後述する比較例2参照)。
【0010】
非特許文献1に記載される方法は、10g程度の製品を得るために、260mlの溶媒を使用し、さらに反応生成物の結晶化のために2Lもの氷を必要とする。本発明者らが確認したところ、この結晶化のための水の使用量を制限すると、収率が低下した(後述する比較例1参照)。したがって、収率を高めるためには水の使用量を制限することができず、この方法は工業的なレベルでの製造方法とはなりえない。
【0011】
かかる現状を鑑み、本発明は、下記式(1)に示される4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(本明細書において「HPE」ともいう。)から、下記式(2)に示される3,3’−ジニトロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(本明細書において「NHPE」ともいう。)を生産性良く製造する方法を提供することにある。なお、本発明において、「生産性が良い」とは、収率および廃液量の少なくとも一方の観点で従来技術に係る製造方法よりも優れていることを意味する。
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討した結果、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)を芳香族炭化水素溶媒中、硝酸でニトロ化することにより、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(NHPE)が生産性良く得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)から3,3’−ジニトロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(NHPE)を製造するにあたり、高収率で得ることおよび廃液量を少なくすることの少なくとも一方を達成でき、好ましい態様においては双方を実現できる。したがって、本発明により、NHPEを工業的な製造方法として適用可能な程度に生産性良く製造する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について詳しく説明する。
反応原料である4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)の製造方法は公知であり、また、市販もされており、比較的安価に手に入れることができる化合物である。HPEを含む材料を原料として使用するにあたり求められるHPEの純度に特に制限はないが、通常、HPLC分析による純度としてHPEの含有量が97%以上の材料を使用することができる。
【0017】
本実施形態において溶媒として使用する芳香族炭化水素化合物として、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が具体例として挙げられる。これらの芳香族炭化水素の中でも、トルエン、キシレンが好ましい。なお、キシレンは、三種の異性体(オルト体、メタ体、パラ体)から選ばれる一種を単独で使用してもよいし、これらの異性体の二種以上の混合物を用いてもよい。また、本実施形態に係る溶媒は一種類の芳香族炭化水素化合物から構成されていてもよいし、複数種類の芳香族炭化水素から構成されていてもよい。
【0018】
芳香族炭化水素は硝酸によりニトロ化する可能性が十分にある化合物であり、ニトロ化に対して不活性溶媒とはいえない。このような化合物を溶媒として使用すれば、その溶媒のニトロ化は目的とするHPEのニトロ化と競合することは明らかである。したがって、芳香族炭化水素化合物を溶媒とすれば、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(NHPE)の収率は低下すると思われるところ、予想に反して、NHPEの収率は高まり、従来技術に係る製造方法に比べて廃液の発生量も少なくすることができる。
【0019】
本実施形態に係る製造方法において溶媒とされる芳香族炭化水素化合物の使用量は、通常、HPEに対して0.1〜50倍(重量比)であり、好ましくは0.5〜10倍である。
【0020】
反応原料のニトロ化剤として使用する硝酸の濃度は特に限定されず、濃度が10質量%以上100質量%未満の水溶液を用いればよい。一般的に入手可能な工業用硝酸をそのまま用いてもよいし、これを水で希釈したものを使用してもよい。廃液量を低減させる観点および反応の均一性を高める観点などから、硝酸の濃度は40質量%以上80質量%以下とすることが好ましい。また、硝酸の濃度を40質量%以上70質量%以下とした場合には反応原料のニトロ化の効率が向上し、収率が向上することもある。
【0021】
硝酸の使用量も特に限定されないが、過度に少ない場合にはニトロ化が十分に進行せず、過度に多くしても使用量に見合う収率の向上は得られず、経済的観点(含む廃液処理コスト)から不利となる。したがって、硝酸の使用量は、HPE1モルに対して1.3モル以上3.0モル以下とすることが好ましく、1.7モル以上2.8モル以下とすることがより好ましく、1.9モル以上2.4モル以下とすることが特に好ましい。
【0022】
HPEからNHPEを製造するための反応温度は、−30℃以上50℃以下とすることが好ましい。反応温度が過度に高い場合には、反応終了後の反応混合物(反応原料であるHPEおよび目的物であるNHPEが反応液に分散したもの)をろ過した際に、目的物であるNHPEがろ液に含有されやすくなり、目的物の収率が低下してしまう。一方、反応温度が過度に低い場合には、HPEのニトロ化反応が進みにくくなり、目的物であるNHPEの収率が低下する。
【0023】
反応混合物中の反応液の分析によれば、反応液に含有される主たる不純物は、HPEの分解物であるキノンまたはそのラジカルである。こうした不純物の生成を少なくし、反応目的物であるNHPEをより効率的に得る、つまり収率を高める観点から、反応温度は−25℃以上10℃以下とすることが好ましく、−20℃以上5℃以下とすることがより好ましく、−20℃以上0℃以下とすることがさらに好ましく、−20℃以上−5℃以下とすることが特に好ましい。なお、HPEからNHPEを製造する反応は、反応原料のジニトロ化であり、この反応に至るにはモノニトロ化を経由し、過反応によりトリニトロ化が生じる可能性がある。また、溶媒である芳香族炭化水素化合物もニトロ化される可能性がある。
【0024】
本実施形態に係る製造方法において硝酸の供給方法は特に限定されないが、上記のように反応温度が過度に高まらないことが好ましいことから、次のような製造方法により製造することが好ましい。
【0025】
すなわち、HPEおよび芳香族炭化水素溶媒を含む液体を、反応容器内にて、温度を所定の温度に維持しながら攪拌して、HPEを芳香族炭化水素溶媒内に均一に分散させる。この反応容器内の攪拌された状態にある反応混合物に、液温を所定の温度に維持しながら所定量の硝酸水溶液を滴下する。
【0026】
硝酸を添加した後も反応混合物の攪拌を継続して、ニトロ化反応を進行させることが好ましい。この硝酸を添加した後の攪拌時間は特に限定されず、基本的な傾向として反応温度が低いほど攪拌時間は長く設定することが好ましい。この攪拌時間を設定する一つの方法として、攪拌中の反応混合物から反応液のサンプリングを定期的に行って、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などにて反応原料の濃度を確認する方法が例示される。具体例として、HPLCを用いた場合には、面積百分率として、反応液中の反応原料の濃度が2%以下になった段階を反応終点として、反応を終了させることが挙げられる。
【0027】
目的物であるNHPEの収率を高めることと作業性を向上させることとを両立させる観点から、芳香族炭化水素溶媒とHPEとを含む反応混合物に硝酸を供給した後、攪拌開始から1〜2時間は反応混合物を硝酸添加時と同様に冷却し、その後、攪拌を継続しながら反応混合物を室温程度の温度(例えば20℃)まで上昇させて、ろ過などの後処理の作業を容易にしてもよい。この際の昇温速度は特に限定されないが、1℃/分程度を目安にすればよい。この場合には、反応混合物の温度が室温程度となってから数時間(2,3時間)後に反応終点に至る場合が多い。なお、反応終点に至るまでの時間を長くすることは、必ずしも目的物の収率の向上に寄与しない場合があり、むしろ目的物の収率を低下させる場合もある。この傾向は、反応温度が高い場合により顕著となる。
【0028】
反応終点に到達した反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水で洗浄し、洗浄後のケーキを乾燥することで目的物が得られる。必要に応じ、再結晶などの精製手段を実施してもよい。
【実施例】
【0029】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれらの具体例にのみ限定されるものではない。なお、分析は下記条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により実施し、面積%により純度を評価した。
【0030】
(カラム)L−column ODS4.6mmφ×150mm((財)化学物質評価研究機構製)
(移動相)
A:20mmol/Lのリン酸二水素カリウム溶液に、HPLC用リン酸を滴下してpH3.0に調製する。
B:HPLC用メタノール(関東化学製)
(移動相組成)
A/B:50体積%/50体積%(分析開始から20分間)
:10体積%/90体積%(分析開始から20分経過後40分まで)
(移動相流量)1.0mL/min
(測定波長)254nm
(カラム温度)40℃
(注入量)10μL
(サンプル調製法)30mgを50mLメスフラスコに秤量し、アセトニトリルでメスアップする。
【0031】
(実施例1)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた200mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)20.2g(0.1モル)およびトルエン101gを加えて、フラスコ内の反応混合物を撹拌し、0℃に冷却した。続いて、反応混合物の温度を0〜5℃に保持しながら、61質量%硝酸21.0g(反応原料に対する理論モル比:2.0)を1時間かけて滴下した。滴下終了後の反応混合物を0〜5℃を保持しながら3.5時間撹拌した後、反応混合物の温度を20℃まで徐々に昇温した。20℃となった反応混合物をさらに攪拌し、上記の昇音開始後2時間の時点で反応混合物中の反応液をHPLCにて分析した。その結果、HPLCによる面積百分率で反応液中の反応原料の濃度が2%以下となっていることを確認した。そこで、この時点で反応終点に到達していると判断して、反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水50gで洗浄してウェットケーキ27.8gを得た。このウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品20.5gを、やや黒みがかった黄色粉末結晶として得た。収率は61.6モル%であり、純度は87.6%であった。
【0032】
(実施例2)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた200mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)20.2g(0.1モル)およびトルエン101gを加えて、フラスコ内の反応混合物を撹拌し、−20〜−15℃に冷却した。続いて、反応混合物の温度を上記の温度範囲に保持しながら、61質量%硝酸21.0g(反応原料に対する理論モル比:2.0)を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後の反応混合物を−20〜−15℃に保持しながら2時間撹拌した後、反応混合物の温度を20℃まで徐々に昇温した。20℃となった反応混合物をさらに攪拌し、上記の昇音開始後2時間の時点で反応混合物中の反応液をHPLCにて分析した。その結果、HPLCによる面積百分率で反応液中の反応原料の濃度が2%以下となっていることを確認した。そこで、この時点で反応終点に到達していると判断して、反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水50gで洗浄してウェットケーキ28.7gを得た。このウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品21.7gを、やや黒みがかった黄色粉末結晶として得た。収率は66.5モル%であり、純度は88.4%であった。
【0033】
(実施例3)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた200mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)20.2g(0.1モル)およびキシレン(三種の異性体の混合物、キシレン含有量85質量%、残部エチルベンゼンなど)60.6gを加えて、フラスコ内の反応混合物を撹拌し反応混合物を0℃に冷却した。続いて、反応混合物の温度を0〜9℃の範囲に保持しながら、69質量%硝酸18.3g(反応原料に対する理論モル比:2.0)を1.5時間かけて滴下した。滴下終了後の反応混合物を0〜2℃に保持しながら2時間撹拌した後、反応混合物の温度を20℃まで徐々に昇温した。20℃となった反応混合物をさらに攪拌しながら、反応終点(HPLCによる面積百分率で反応液中の反応原料の濃度が2%以下)の確認を行った。その結果、攪拌開始から2時間後に反応終点に到達したことを確認した。反応終点に到達した反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水50gで洗浄してウェットケーキ26.4gを得た。このウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品20.9gを、やや黒みがかった黄色粉末結晶として得た。収率は60.4モル%であり、純度は85.4%であった。
【0034】
(実施例4)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた200mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)20.2g(0.1モル)およびトルエン101gを加えて、フラスコ内の反応混合物を撹拌し反応混合物を15℃に冷却した。続いて、反応混合物の温度を15〜20℃の範囲に保持しながら、61質量%硝酸21.0g(反応原料に対する理論モル比:2.0)を1.0時間かけて滴下した。滴下終了後の反応混合物を15〜20℃に保持しながら4時間撹拌した。攪拌後の反応液の分析の結果、HPLCによる面積百分率で反応液中の反応原料の濃度が2%以下であることを確認した。そこで、この時点で反応終点に到達していると判断して、反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水50gで洗浄してウェットケーキ22.4gを得た。このウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品17.2gを、やや黒みがかった黄色粉末結晶として得た。収率は52.0モル%であり、純度は88.2%であった。
【0035】
(実施例5)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた1000mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)80.9g(0.4モル)およびトルエン647gを加えて、フラスコ内の反応混合物を撹拌し反応混合物を−9℃に冷却した。続いて、反応混合物の温度を−9〜2℃の範囲に保持しながら、69質量%硝酸73.1g(反応原料に対する理論モル比:2.0)を2.0時間かけて滴下した。滴下終了後の反応混合物を−2〜2℃に保持しながら2時間撹拌した。攪拌後の反応液の分析の結果、HPLCによる面積百分率で反応液中の反応原料の濃度が2%以下であることを確認した。そこで、この時点で反応終点に到達していると判断して、反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水324gで洗浄してウェットケーキ113.7gを得た。このウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品85.3gを、やや黒みがかった黄色粉末結晶として得た。収率は、64.1モル%であり、純度は87.8%であった。
【0036】
(実施例6)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた200mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)20.2g(0.1モル)およびトルエン162gを加えて、フラスコ内の反応混合物を撹拌し反応混合物を0℃に冷却した。続いて、反応混合物の温度を0〜3℃の範囲に保持しながら、69質量%硝酸18.3g(反応原料に対する理論モル比:2.0)を1.0時間かけて滴下した。滴下終了後の反応混合物を0〜3℃に保持しながら2時間撹拌した。攪拌後の反応液の分析の結果、HPLCによる面積百分率で反応液中の反応原料の濃度が2%以下であることを確認した。そこで、この時点で反応終点に到達していると判断して、反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水60gで洗浄してウェットケーキ28.0gを得た。このウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品20.6gを、やや黒みがかった黄色の粉末結晶として得た。収率は、60.7モル%であり、純度は86.0%であった。
【0037】
(実施例7)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた200mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)10.1g(0.05モル)およびトルエン50.5gを加えて、フラスコ内の反応混合物を撹拌し反応混合物を0℃に冷却した。続いて、反応混合物の温度を0〜2℃の範囲に保持しながら、61質量%硝酸6.8g(反応原料に対する理論モル比:1.3)を0.5時間かけて滴下した。さらに61質量%硝酸2.1g(反応原料に対する理論モル比:0.40)を0.5時間かけて滴下し、フラスコ内の反応混合物の温度を0〜2℃に保持したまま4時間撹拌した。攪拌後の反応液の分析の結果、HPLCによる面積百分率で反応液中の反応原料の濃度が2%以下であることを確認した。そこで、この時点で反応終点に到達していると判断して、反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水30gで洗浄してウェットケーキ12.5gを得た。このウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品9.51gを、山吹色の粉末結晶として得た。収率は、54.9モル%であり、純度は84.4%であった。
【0038】
(実施例8)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた200mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)20.2g(0.1モル)およびトルエン162gを加えて、フラスコ内の反応混合物を撹拌し反応混合物を0℃に冷却した。続いて、反応混合物の温度を0〜2℃の範囲に保持しながら、69質量%硝酸16.4g(反応原料に対する理論モル比:1.8)を1.3時間かけて滴下した。滴下終了後の反応混合物を0〜2℃に保持しながら4時間撹拌した。攪拌後の反応液の分析の結果、HPLCによる面積百分率で反応液中の反応原料の濃度が2%以下であることを確認した。そこで、この時点で反応終点に到達していると判断して、反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水61gで洗浄してウェットケーキ24.5gを得た。このウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品18.9gを、やや黒みがかった黄色の粉末結晶として得た。収率は、54.8モル%であり、純度は84.9%であった。
【0039】
(実施例9)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた200mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)20.2g(0.1モル)およびトルエン60.6gを加えて、フラスコ内の反応混合物を撹拌し反応混合物を0℃に冷却した。続いて、反応混合物の温度を0〜7℃の範囲に保持しながら、61質量%硝酸20.0g(反応原料に対する理論モル比:1.9)を0.8時間かけて滴下した。滴下終了後の反応混合物を0〜7℃に保持しながら2時間撹拌した。その後、攪拌を継続しながら、反応混合物の温度を20℃まで昇温し、20℃まで到達した後、さらに攪拌を継続した。昇音開始から2時間の時点で反応混合物中の反応液をHPLCにて分析した。その結果、HPLCによる面積百分率で反応液中の反応原料の濃度が2%以下であることを確認した。そこで、この時点で反応終点に到達していると判断して、反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水100gで洗浄してウェットケーキ26.9gを得た。このウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品20.2gを、やや黒みがかった黄色の粉末結晶として得た。収率は、59.1モル%であり、純度は85.4%であった。
【0040】
(実施例10)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた200mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)20.2g(0.1モル)およびトルエン162gを加えて、フラスコ内の反応混合物を撹拌し反応混合物を0℃に冷却した。続いて、反応混合物の温度を0〜3℃の範囲に保持しながら、69質量%硝酸20.1g(反応原料に対する理論モル比:2.2)を1.0時間かけて滴下した。滴下終了後の反応混合物を0〜5℃に保持しながら2時間撹拌した。攪拌後の反応液の分析の結果、HPLCによる面積百分率で反応液中の反応原料の濃度が2%以下であることを確認した。そこで、この時点で反応終点に到達していると判断して、反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水60gで洗浄してウェットケーキ26.1gを得た。このウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品20.2gを、やや黒みがかった黄色の粉末結晶として得た。収率は、60.2モル%であり、純度は87.0%であった。
【0041】
(実施例11)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた200mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)20.2g(0.1モル)およびトルエン162gを加えて、フラスコ内の反応混合物を撹拌し反応混合物を0℃に冷却した。続いて、反応混合物の温度を0〜3℃の範囲に保持しながら、69質量%硝酸21.9g(反応原料に対する理論モル比:2.4)を1.0時間かけて滴下した。滴下終了後の反応混合物を0〜5℃に保持しながら4時間撹拌した。攪拌後の反応液の分析の結果、HPLCによる面積百分率で反応液中の反応原料の濃度が2%以下であることを確認した。そこで、この時点で反応終点に到達していると判断して、反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水60gで洗浄してウェットケーキ25.6gを得た。このウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品20.1gを、やや黒みがかった黄色の粉末結晶として得た。収率は、59.8モル%であり、純度は87.0%であった。
【0042】
(比較例1)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた300mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)3.0g(0.015モル)、ベンゼン26.1gおよび酢酸49.8gを加えて撹拌し反応混合物を15℃に冷却した。その後、フラスコ内の反応混合物の温度を15〜19℃に保持しながら、61質量%硝酸2.7g(反応原料に対する理論モル比:1.8)を1.6時間かけて滴下した。滴下後の反応混合物の温度を15〜19℃に保持しながら1時間撹拌した後、反応混合物に水30gを添加して、添加後の反応混合物を0〜5℃まで冷却して、この温度を保持しながら1時間撹拌した。攪拌終了後、反応混合物をろ過して、ろ過ケーキを水30gで洗浄してウェットケーキ4.0gを得た。ウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品2.1gを黄色結晶として得た。収率は47.8モル%であり、純度は、96.5%であった。
【0043】
(比較例2)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた200mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)10.1g(0.05モル)、塩化メチレン50.5gを加えて撹拌し反応混合物を0℃に冷却した。その後、フラスコ内の反応混合物の温度を0〜6℃を保持しながら61質量%硝酸6.8g(反応原料に対する理論モル比:1.3)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに61質量%硝酸2.1g(反応原料に対する理論モル比:0.40)を1時間かけて滴下し、フラスコ内の反応混合物の温度を0〜6℃に保持したまま3時間撹拌した。攪拌終了後、反応混合物をろ過し、ろ過ケーキを水10gで洗浄してウェットケーキ7.1gを得た。ウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品4.8gを結晶として得た。収率は30.2モル%であり、純度は91.6%であった。
【0044】
(比較例3)
温度計、ジムロート冷却器および攪拌機を備えた200mL四つ口フラスコに、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)20.2g(0.1モル)およびアセトニトリル101gを加えて撹拌し反応混合物を0℃に冷却した。その後、反応混合物を0〜5℃を保持しながら61質量%硝酸10.3g(反応原料に対する理論モル比:1.0)を16分かけて滴下した。温度を保持したまま30分撹拌後、さらに61質量%硝酸2.6g(反応原料に対する理論モル比:0.25)を6分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合物の温度を0〜5℃に保持したまま2時間撹拌し、その後、さらに61%硝酸2.6g(反応原料に対する理論モル比:0.25)を6分かけて滴下した。滴下終了後の反応混合物をろ過し、得られたろ過ケーキを水50gで洗浄してウェットケーキ14.9gを得た。ウェットケーキを真空乾燥機で乾燥し、乾燥品14.1gを黄色結晶として得た。収率は26.5モル%であり、純度は54.8%であった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明により提供される製造方法は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(HPE)を原料として、生産性の高い工業的な処方で、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル(NHPE)を製造できる方法である。