(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一次側コイルを備えた一次側部材と、二次側コイルを備えた二次側部材とを有し、前記一次側部材又は前記二次側部材が移動体に取り付けられて前記移動体とともに移動し、前記一次側コイルと前記二次側コイルが互いに平行で向かい合わせになるように配置された電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法であって、
一定速度の速度指令値によって前記移動体を移動させ、前記電磁誘導式位置検出器で前記移動体の位置を検出して検出位置を取得する検出位置取得処理と、
前記検出位置と前記二次側コイルのコイルピッチとに基づき、又は、前記検出位置と前記一定速度と前記移動体の移動時間とに基づき、又は、前記二次側コイルのコイルピッチと前記一定速度と前記移動体の移動時間とに基づき、所定の移動区間において前記移動体が前記一定速度で移動したことを判断する一定速度判断処理と、
前記移動区間における何れかのコイルピッチの始端位置に対応する検出位置を基準検出位置とし、前記基準検出位置を取得してからの経過時間と前記一定速度との乗算値を、前記基準検出位置に加算することによって近似理想位置を求め、この近似理想位置と検出位置とに基づいて補正データを取得する補正データ取得処理と
を行い、
前記補正データ取得処理では、
前記移動区間における何れかのコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置を取得したときの時間をt0とし、
前記移動区間における他の何れかのコイルピッチpの終端位置に対応する検出位置を取得したときの時間をt0+Tとし、
前記移動区間における何れかのコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置を、基準検出位置X(t0)とし、
前記基準検出位置X(t0)を取得してからの経過時間t(m)(mはインデックス番号)を、t(m)=0〜Tとし、
Δtを固定してインデックス番号mとt(m)との対応づけをし、又は、Δxを固定してインデックス番号mとX(t0+t(m))との対応づけをし、
インデックス番号mに対応する補正データE(m)を、E(m)=X(t0)+S*t(m)−X(t0+t(m))の式によって算出する
ことを特徴とする電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、現実の電磁誘導式位置検出器(リニア形スケール、ロータリ形スケール)は、製造誤差や組み付け誤差があるため、上記の(3)式が成立せず、検出位置Xに誤差が伴う。一般に検出位置Xに含まれている誤差として顕著に現れるのはコイルピッチ周期の誤差(コイルピッチの周期に応じて周期的に変動する誤差)であり、これを内挿誤差という。
【0016】
検出位置Xを補正する方法としては、電磁誘導式位置検出器とは別の高精度位置検出器を用い、この高精度位置検出器の検出位置と電磁誘導式位置検出器の検出位置Xとを基づいて補正データを取得する方法が考えられる。しかし、この方法では高精度位置検出器を準備しなければならないため、コストが高くなり、手間もかかる。
【0017】
従って本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、電磁誘導式位置検出器とは別の高精度位置検出器を必要とせず、電磁誘導式位置検出器自身で補正データを取得して検出位置の補正を行うことができる電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決する第1発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法は、
一次側コイルを備えた一次側部材と、二次側コイルを備えた二次側部材とを有し、前記一次側部材又は前記二次側部材が移動体に取り付けられて前記移動体とともに移動し、前記一次側コイルと前記二次側コイルが互いに平行で向かい合わせになるように配置された電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法であって、
一定速度の速度指令値によって前記移動体を移動させ、前記電磁誘導式位置検出器で前記移動体の位置を検出して検出位置を取得する検出位置取得処理と、
前記検出位置と前記二次側コイルのコイルピッチとに基づき、又は、前記検出位置と前記一定速度と前記移動体の移動時間とに基づき、又は、前記二次側コイルのコイルピッチと前記一定速度と前記移動体の移動時間とに基づき、所定の移動区間において前記移動体が前記一定速度で移動したことを判断する一定速度判断処理と、
前記移動区間における何れかのコイルピッチの始端位置に対応する検出位置を基準検出位置とし、前記基準検出位置を取得してからの経過時間と前記一定速度との乗算値を、前記基準検出位置に加算することによって近似理想位置を求め、この近似理想位置と検出位置とに基づいて補正データを取得する補正データ取得処理と
を行
い、
前記補正データ取得処理では、
前記移動区間における何れかのコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置を取得したときの時間をt0とし、
前記移動区間における他の何れかのコイルピッチpの終端位置に対応する検出位置を取得したときの時間をt0+Tとし、
前記移動区間における何れかのコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置を、基準検出位置X(t0)とし、
前記基準検出位置X(t0)を取得してからの経過時間t(m)(mはインデックス番号)を、t(m)=0〜Tとし、
Δtを固定してインデックス番号mとt(m)との対応づけをし、又は、Δxを固定してインデックス番号mとX(t0+t(m))との対応づけをし、
インデックス番号mに対応する補正データE(m)を、E(m)=X(t0)+S*t(m)−X(t0+t(m))の式によって算出する
ことを特徴とする電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法。
【0019】
また、第2発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法は、第1発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法において、
前記一定速度判断処理では、
前記移動区間を、前記コイルピッチpのn倍(nは自然数)に相当する区間とし、
前記移動体が、前記一定速度Sで、前記移動区間を移動するのに要する移動時間をT
1とし、
前記移動区間の始端位置に対応する検出位置をX(t
0)、前記移動区間の終端位置に対応する検出位置をX(t
0+T
1)とし、
閾値を±Lとすると、
n*p−L
≦X(t
0+T
1)−X(t
0)
≦n*p+Lの条件を満たすとき、前記移動区間において前記移動体が前記一定速度Sで移動したと判断する
ことを特徴とする。
【0020】
また、第3発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法は、第1発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法において、
前記一定速度判断処理では、
前記移動区間を、前記コイルピッチpのn倍(nは自然数)に相当する区間とし、
前記移動体が、前記一定速度Sで、前記移動区間を移動するのに要する移動時間をT
1とし、
前記移動区間の始端位置に対応する検出位置をX(t
0)、前記移動区間の終端位置に対応する検出位置をX(t
0+T
1)とし、
閾値を±Lとすると、
S*T
1−L
≦X(t
0+T
1)−X(t
0)
≦S*T
1+Lの条件を満たすとき、前記移動区間において前記移動体が前記一定速度Sで移動したと判断する
ことを特徴とする。
【0021】
また、第4発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法は、第1発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法において、
前記一定速度判断処理では、
前記移動区間を、前記コイルピッチpのn倍(nは自然数)に相当する区間とし、
前記移動体が、前記移動区間を移動するのに要したと判断した移動時間をT
2とし、
閾値を±Lとすると、
n*p−L
≦S*T
2≦n*p+Lの条件を満たすとき、前記移動区間において前記移動体が前記一定速度Sで移動したと判断する
ことを特徴とする。
【0023】
また、第
5発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法は、第1〜第
4発明の何れか1つの電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法において、
前記移動区間を複数とし、これら複数の移動区間で補正データを取得し、これら複数の補正データの平均値を最終的な補正データとする
ことを特徴とする。
【0024】
また、第
6発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法は、第1〜第
5発明の何れか1つの電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法において、
前記補正データをフーリエ変換して、スペクトルの大きい成分F(i)を上位j個分(i=0〜j−1)メモリに記憶しておき、
前記メモリから成分F(i)を読み出し、逆フーリエ変換をして補正データを求める
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
第1発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法によれば、一次側コイルを備えた一次側部材と、二次側コイルを備えた二次側部材とを有し、前記一次側部材又は前記二次側部材が移動体に取り付けられて前記移動体とともに移動し、前記一次側コイルと前記二次側コイルが互いに平行で向かい合わせになるように配置された電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法であって、一定速度の速度指令値によって前記移動体を移動させ、前記電磁誘導式位置検出器で前記移動体の位置を検出して検出位置を取得する検出位置取得処理と、前記検出位置と前記二次側コイルのコイルピッチとに基づき、又は、前記検出位置と前記一定速度と前記移動体の移動時間とに基づき、又は、前記二次側コイルのコイルピッチと前記一定速度と前記移動体の移動時間とに基づき、所定の移動区間において前記移動体が前記一定速度で移動したことを判断する一定速度判断処理と、前記移動区間における何れかのコイルピッチの始端位置に対応する検出位置を基準検出位置とし、前記基準検出位置を取得してからの経過時間と前記一定速度との乗算値を、前記基準検出位置に加算することによって近似理想位置を求め、この近似理想位置と検出位置とに基づいて補正データを取得する補正データ取得処理とを行
い、前記補正データ取得処理では、前記移動区間における何れかのコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置を取得したときの時間をt0とし、前記移動区間における他の何れかのコイルピッチpの終端位置に対応する検出位置を取得したときの時間をt0+Tとし、前記移動区間における何れかのコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置を、基準検出位置X(t0)とし、前記基準検出位置X(t0)を取得してからの経過時間t(m)(mはインデックス番号)を、t(m)=0〜Tとし、Δtを固定してインデックス番号mとt(m)との対応づけをし、又は、Δxを固定してインデックス番号mとX(t0+t(m))との対応づけをし、インデックス番号mに対応する補正データE(m)を、E(m)=X(t0)+S*t(m)−X(t0+t(m))の式によって算出することを特徴としているため、電磁誘導式位置検出器とは別の高精度位置検出器を必要とせず、電磁誘導式位置検出器自身で補正データを取得して検出位置の補正を行うことができ
、さらに、電磁誘導式位置検出器自身で補正データE(m)を容易且つ確実に取得することができる。
【0026】
第2発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法によれば、第1発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法において、前記一定速度判断処理では、前記移動区間を、前記コイルピッチpのn倍(nは自然数)に相当する区間とし、前記移動体が、前記一定速度Sで、前記移動区間を移動するのに要する移動時間をT
1とし、前記移動区間の始端位置に対応する検出位置をX(t
0)、前記移動区間の終端位置に対応する検出位置をX(t
0+T
1)とし、閾値を±Lとすると、n*p−L
≦X(t
0+T
1)−X(t
0)
≦n*p+Lの条件を満たすとき、前記移動区間において前記移動体が前記一定速度Sで移動したと判断することを特徴としているため、電磁誘導式位置検出器自身で移動体の一定速度の判断を容易且つ確実に行うことができる。
【0027】
第3発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法によれば、第1発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法において、前記一定速度判断処理では、前記移動区間を、前記コイルピッチpのn倍(nは自然数)に相当する区間とし、前記移動体が、前記一定速度Sで、前記移動区間を移動するのに要する移動時間をT
1とし、前記移動区間の始端位置に対応する検出位置をX(t
0)、前記移動区間の終端位置に対応する検出位置をX(t
0+T
1)とし、閾値を±Lとすると、S*T
1−L
≦X(t
0+T
1)−X(t
0)
≦S*T
1+Lの条件を満たすとき、前記移動区間において前記移動体が前記一定速度Sで移動したと判断することを特徴としているため、電磁誘導式位置検出器自身で移動体の一定速度の判断を容易且つ確実に行うことができる。
【0028】
第4発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法によれば、第1発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法において、前記一定速度判断処理では、前記移動区間を、前記コイルピッチpのn倍(nは自然数)に相当する区間とし、前記移動体が、前記移動区間を移動するのに要したと判断した移動時間をT
2とし、閾値を±Lとすると、n*p−L
≦S*T
2≦n*p+Lの条件を満たすとき、前記移動区間において前記移動体が前記一定速度Sで移動したと判断することを特徴としているため、電磁誘導式位置検出器自身で移動体の一定速度の判断を容易且つ確実に行うことができる。
【0030】
第
5発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法によれば、第1〜第
4発明の何れか1つの電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法において、前記移動区間を複数とし、これら複数の移動区間で補正データを取得し、これら複数の補正データの平均値を最終的な補正データとすることを特徴としているため、より精度の高い補正データを取得することができる。
【0031】
第
6発明の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法によれば、第1〜第
5発明の何れか1つの電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法において、前記補正データをフーリエ変換して、スぺクトルの大きい成分F(i)を上位j個分(i=0〜j−1)メモリに記憶しておき、前記メモリから成分F(i)を読み出し、逆フーリエ変換をして補正データを求めることを特徴としているため、メモリの容量を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
<実施の形態例1>
図1〜
図4に基づき、本発明の実施の形態例1に係る電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法について説明する。
【0035】
まず、
図1に基づき、本実施の形態例1の電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法を実施するシステムの構成について説明する。
【0036】
図1に示すシステムは、電磁誘導式位置検出器11と、駆動制御装置20と、移動体21とを有する構成となっている。移動体21は、例えば工作機械のテーブルなどのような直線的に移動する移動体である。駆動制御装置20は、移動体21を直線的に移動させる送り機構部(例えばモータやボールねじなどを備えた送り機構部)や、この送り機構部による移動体21の駆動を制御する駆動制御部などを備えている。
【0037】
電磁誘導式位置検出器11は、検出部17と検出制御装置18とを有している。
なお、ここでは電磁誘導式位置検出器11がリニア形スケールである場合について説明するが、本発明は電磁誘導式位置検出器11がロータリ形スケールである場合についても適用することができる。
【0038】
検出制御装置18は、検出制御部18Aと固定メモリ18Bとを有している。検出制御部18Aは、検出部17への励磁電流の供給や検出部17の検出信号(誘起電圧)の処理などを行う。固定メモリ18Bは、固定メモリ18Bへの給電を停止しても記憶データが保持されるタイプのメモリ(RAM、ROM)である。
【0039】
電磁誘導式位置検出器11(リニア形スケール)の検出部17の構成や、検出制御装置18(検出制御部18A)の基本的な動作については、従来と同様である。
【0040】
詳述すると、検出部17は、一次側部材であるスライダ12と、二次側部材であるスケール15とを有している。
スライダ12は可動部であり、第1の一次側コイルである第1のスライダコイル13と、第2の一次側コイルである第2のスライダコイル14とを有している。スケール15は固定部であり、二次側コイルであるスケールコイル16を有している。コイル13,14,15はジグザグ状に折り返され(櫛形パターンとなっており)、全体が直線状となるように形成されている。スライダ12は移動体21に取り付けられて移動体12とともに直線的に移動する。スケール12は例えば工作機械のベッドなどの固定部に固定される。
【0041】
スライダ12(第1のスライダコイル13及び第2のスライダコイル14)と、スケール15(スケールコイル16)は、これらの間に所定のギャップgを保持した状態で互いに平行に向かい合わせになるように配置されている(
図6(a)参照)。また、第1のスライダコイル13と第1のスライダコイル14は1/4ピッチずれている。
【0042】
かかる構成の電磁誘導式位置検出器22では、第1のスライダコイル13と第2のスライダコイル14に励磁電流(交流電流)を流すと、スライダ12の移動に伴う第1スライダコイル13及び第2スライダコイル14とスケールコイル16との相対的な位置関係の変化に応じて、第1のスライダコイル13及び第2のスライダコイル14とスケールコイル16との電磁結合度が周期的に変化する(
図6(c)参照)。このため、スケールコイル16には周期的に変化する誘起電圧が発生する。
【0043】
具体的には、検出制御部18Aでは、下記の(11)式のような第1の励磁電流Iaを第1のスライダコイル13に流し、下記の(12)式のような第2の励磁電流Ibを第2のスライダコイル14に流す。
【0044】
Ia=−Icos(kα)sin(ωt) (11)
Ib=Isin(kα)sin(ωt) (12)
但し、I:励磁電流の大きさ
k:2π/p
p:コイルピッチ(長さ:ロータリ形スケールでは角度)
ω:励磁電流(交流電流)の角周波数
t:時間
α:励振位置
【0045】
その結果、第1のスライダコイル13及び第2のスライダコイル14とスケールコイル16との間の電磁誘導作用により、スケールコイル16には下記の(
13)式のような誘起電圧Vが発生する。
【0046】
V=KIsin(k(X−α))sin(ωt) (13)
但し、K:ギャップgと励磁電流の角周波数ωに依存する伝達係数
X:検出位置(移動体の移動位置)
【0047】
検出制御部18Aでは、スケールコイル16の誘起電圧Vを入力して、当該誘起電圧Vが0となる励振位置α(即ちX=αとなる励振位置α)の値を計算し、この励振位置αを、移動体21(スライダ12)の検出位置Xとして出力し、且つ、この励振位置αに基づいて第1励磁電流Ia及び第2励磁電流Ibを調整する。即ち、X=αとなるように移動体21(スライダ12)の位置Xに対して励振位置αを追従させて、誘起電圧V=0となるように制御することにより、移動体21(スライダ12)の位置Xを検出して出力する。
【0048】
ところが、先にも述べたとおり、現実の電磁誘導式位置検出器11は、製造誤差や組み付け誤差があるため、上記の(13)式が成立せず、検出位置Xに誤差Eが伴う。この誤差Eとして顕著に現れるのはコイルピッチ周期の誤差(内挿誤差)である。
【0049】
このため、精度のよい位置検出を行うには、補正データを取得して検出位置Xを補正する必要がある。
【0050】
以下、この検出位置Xの補正方法について説明する。まず、
図2のフローチャートに基づき、検出制御装置18(検出制御部18A、固定メモリ18B)で実施する検出位置補正方法の各処理について概要を説明し、続いて
図1〜
図4に基づき、前記検出位置補正方法の各処理について詳細に説明する。
【0051】
図2に示すように、まず、ステップS1で検出位置取得処理を行う。
この検出位置取得処理では、一定速度Sの速度指令値によって移動体21(スライダ12)を移動させ、電磁誘導式位置検出器11で移動体21(スライダ12)の位置を検出して検出位置Xを取得する。この検出位置Xは、移動体21(スライダ12)が移動する時間tの関数としてX(t)と表すことができる。
【0052】
次に、ステップS2において一定速度判断処理を行う。
一定速度Sの速度指令値によって移動体21(スライダ12)を移動させる場合、移動体21(スライダ12)は、一定速度Sになるまで加速した後、一定速度Sで目標位置の近くまで移動し、その後、減速して目標位置に停止する。そして、補正データの取得には、移動体21(スライダ12)が実際に一定速度Sで移動したときの検出位置X(t)を用いる必要がある。
このため、一定速度判断処理では、検出位置X(t)と二次側コイル16のコイルピッチpとに基づき(第1の一定速度判断方法)、又は、検出位置X(t)と一定速度Sと移動体21(スライダ12)の移動時間とに基づき(第2の一定速度判断方法)、又は、二次側コイル16のコイルピッチpと一定速度Sと移動体21(スライダ12)の移動時間とに基づき(第3の一定速度判断方法)、所定の移動区間において移動体21が一定速度Sで移動したことを判断する。
【0053】
ステップS2の一定速度判断処理の結果、何らかの不具合により、前記移動区間において移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動したと判断することができなかった場合(No)には、当該不具合が解消した後、再度、ステップS1の検出位置取得処理とステップS2の一定速度判断処理を実行する。
一方、ステップS2の一定速度判断処理の結果、前記移動区間において移動体21が一定速度Sで移動したと判断した場合(Yes)、次のステップS3において補正データ取得処理を行う。
【0054】
この補正データ取得処理では、前記移動区間における何れかのコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置を基準検出位置とし、この基準検出位置を取得してからの経過時間と一定速度Sとの乗算値を、基準検出位置に加算することによって近似理想位置(理想位置に近い位置)を求め、この近似理想位置と検出位置とに基づいて補正データを取得する。
【0055】
ステップS4では、取得した補正データを固定メモリ18Bに記憶させる。
【0056】
次に、検出位置補正方法の各処理、即ち、検出位置取得処理と一定速度判断処理と補正データ取得処理について説明する。
【0057】
(1) 検出位置取得処理
検出位置X(t)を取得するため、移動体21(スライダ12)を一定速度Sで移動させる。
具体的には、駆動制御装置20に速度指令値としての一定速度Sと目標位置とを与える。駆動制御装置20は、一定速度Sの速度指令値と目標位置とに基づき、送り機構部による移動体21(スライダ12)の駆動を制御することにより、移動体21(スライダ12)を、始動させて一定速度Sになるまで加速させた後、一定速度Sで目標位置の近くまで移動させ、その後、減速させて目標位置に停止させる。
このときに検出制御装置18の検出制御部18Aでは、検出位置X(t)を得る。
【0058】
このときに検出位置X(t)は誤差Eを伴っている。
図3(a)において横軸は時間t、縦軸X(t),Xi(t)であり、
図3(a)には誤差Eを含む検出位置X(t)の経時変化と、理想位置(真の位置)Xi(t)の経時変化とを示している。
図3(b)において横軸は時間t、縦軸は誤差Eであり、
図3(b)には検出位置X(t)に含まれている誤差Eの経時変化を、スケールコイル16のコイルパターンに対応させて示している。
【0059】
前述のとおり誤差Eとして顕著に現れるのはコイルピッチ周期の誤差(内挿誤差)であるため、誤差Eは、
図3(b)に例示するようにスケールコイル16のコイルピッチ周期に応じて周期的に変動する。従って、誤差Eを含む検出位置X(t)も、
図3(a)に例示するようにスケールコイル16のコイルピッチ周期に応じて周期的に変動する。なお、コイルピッチ周期に応じて周期的に変動することを明示するため、
図3では誤差Eを正弦波で表しているが、実際の誤差Eは、もう少し歪んだ波形となる。
【0060】
なお、以下の説明において、コイルピッチpの始端位置とは、
図3(b)に示すスケールコイル16の各コイルピッチpにおける始めの位置(始点)p
Sを意味し、コイルピッチpの終端位置とは、
図3(b)に示すスケールコイル16の各コイルピッチpにおける終わり位置(終点)p
Eを意味する。なお、始端位置及び終端位置は何れも、隣り合うコイルピッチpの境界(節目)でもある。
【0061】
(2) 一定速度判断処理
検出位置取得処理で取得した検出位置X(t)を用いて、一定速度判断処理を行う。
この一定速度判断処理は、以下に示すような第1の一定速度判断方法又は第2の一定速度判断方法又は第3の一定速度判断方法によって行う。
【0062】
(a) 第1の一定速度判断方法
時間t
0における検出位置X(t)を、X(t
0)とする。
時間t
0+T
1における検出位置X(t)を、X(t
0+T
1)とする。
移動体21(スライダ12)が、一定速度Sで、コイルピッチpのn倍(nは自然数)である所定の移動区間を移動するのに要する移動時間をT
1とする。なお、ここでは電磁誘導式位置検出器11としてリニア形スケールの例(
図1)を示しているため、前記移動量は移動距離である(ロータリ形スケールの場合には回転角度になる)。
移動時間T
1はあらかじめ設定した一定時間であり、一定速度Sとコイルピッチpとコイルピッチ数nによって決まり、n*p/Sの式によって算出できる。なお、*は掛け算の記号×を意味している(他の記載箇所においても同様であり、特許請求の範囲及び図面においても同様である)。
コイルピッチpは、リニア形スケールの場合には例えば2mm(ロータリ形スケールの場合には例えば2度)である。
コイルピッチ数nは、例えば256ピッチとする。
前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)は、例えば、スケールコイル16の101番目のコイルピッチpから、スケールコイル16の356番目(コイルピッチ数nが256の場合)のコイルピッチpまでの区間として設定する。
【0063】
検出位置X(t
0)は、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)の始端位置に対応する検出位置である。また、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)の始端位置は、当該移動区間における最初(1番目)のコイルピッチpの始端位置に相当する。
検出位置X(t
0+T
1)は、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)の終端位置に対応する検出位置である。また、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)の終端位置は、当該移動区間における最後(n番目:例えば256番目)のコイルピッチpの終端位置に相当する。
【0064】
なお、このように設定することが望ましいが、これに限定するものではなく、前記所定の移動区間(当該コイルピッチpのn倍に相当する区間)の始端位置が、当該移動区間における最初(1番目)のコイルピッチpの途中位置(当該コイルピッチpの始端位置と終端位置の間の位置)であり、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)の終端位置が、当該移動区間における最後(n番目:例えば256番目)のコイルピッチpの途中位置(当該コイルピッチpの始端位置と終端位置の間の位置)であってもよい。
即ち、移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動したことを判断する所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)は、最初(1番目)のコイルピッチpの始端位置から最後(n番目:例えば256番目)のコイルピッチpの終端位置までの区間に限らず、最初(1番目)のコイルピッチpの途中位置から最後(n番目:例えば256番目)のコイルピッチpの途中位置までの区間であってもよい。
【0065】
取得した検出位置X(t
0)と検出位置X(t
0+T
1)には誤差が含まれているため、検出位置X(t
0)から検出位置X(t
0+T
1)までの移動量X(t
0+T
1)−X(t
0)と、理想移動量(真の移動量)n*pとの関係は、下記の(21)式となる。
X(t
0+T
1)−X(t
0)≒n*p (21)
【0066】
従って、移動量X(t
0+T
1)−X(t
0)が理想移動量n*pに近ければ、検出位置X(t
0)から検出位置X(t
0+T
1)までの区間、即ち前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)において、移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動したと判断することができる。
t
0やT
1などの時間は検出制御装置18の検出制御部18Aに設けられているクロックのカウント数で計測することができる(他の時間計測手段によって計測するようにしてもよい)。
従って、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)の始端位置に対応する検出位置X(t
0)と、この検出位置X(t
0)を取得したときの時間t
0と、この時間t
0からの経過時間(移動時間)T
1と、時間t
0+T
1における検出位置X(t
0+T
1)は、検出制御部18Aにおいて知ることができる。また、コイルピッチpとコイルピッチ数nは既知の値である。
【0067】
従って、この場合、閾値を±Lとすると、下記の(22)式の条件を満すとき、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)において移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動したと判断することができる。なお、X(t
0+T
1)−X(t
0)とn*p±Lとの関係については、
図3(a)にも例示している。
n*p−L
≦X(t
0+T
1)−X(t
0)
≦n*p+L (22)
【0068】
(b) 第2の一定速度判断方法
また、上記の場合、次のような方法によって、移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動したことを判断することもできる。
【0069】
移動体21(スライダ12)が一定速度SでT
1時間移動したときの移動量(S*T
1)と、コイルピッチpのn倍(n*p)は等しい(n*p=S*T
1)。従って、検出位置X(t
0)から検出位置X(t
0+T
1)までの移動量X(t
0+T
1)−X(t
0)と、理想移動量S*T
1との関係は、下記の(23)式となる。
X(t
0+T
1)−X(t
0)≒S*T
1 (23)
【0070】
従って、移動量X(t
0+T
1)−X(t
0)が理想移動量S*T
1に近ければ、検出位置X(t
0)から検出位置X(t
0+T
1)までの区間、即ち前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)において、移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動したと判断することができる。
先にも述べたとおり、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)の始端位置に対応する検出位置X(t
0)と、この検出位置X(t
0)を取得したときの時間t
0と、この時間t
0からの経過時間(移動時間)T
1と、時間t
0+T
1における検出位置X(t
0+T
1)は、検出制御部18Aにおいて知ることができる。また、一定速度Sと移動時間T
1は既知の値である。
【0071】
従って、この場合、閾値を±Lとすると、下記の(24)式の条件を満すとき、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)において移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動したと判断することができる。
S*T
1−L
≦X(t
0+T
1)−X(t
0)
≦S*T
1+L (24)
【0072】
(c) 第3の一定速度判断方法
また、次のような方法によって、移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動したことを判断することもできる。
【0073】
時間t
0における検出位置X(t)を、X(t
0)とする。
時間t
0+T
1における検出位置X(t)を、X(t
0+
T1)とする。
移動体21(スライダ12)が、コイルピッチpのn倍(nは自然数)である所定の移動区間を移動するのに要したと判断した移動時間をT
2とする。なお、ここでは電磁誘導式位置検出器11としてリニア形スケールの例(
図1)を示しているため、前記移動量は移動距離である(ロータリ形スケールの場合には回転角度になる)。
この場合の移動時間T
2は前述の一定の移動時間T
1とは異なり、移動体21(スライダ12)が前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)を移動するのに要したと判断された時間であり、検出位置X(t
0),X(t
0+
T1)に含まれる誤差の大きさ応じて変わる。
コイルピッチpは、リニア形スケールの場合には例えば2mm(ロータリ形スケールの場合には例えば2度)である。
コイルピッチ数nは、例えば256ピッチとする。
前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)は、例えばスケールコイル16の101番目のコイルピッチpから、スケールコイル16の356番目(コイルピッチ数nが256の場合)のコイルピッチpまでの区間として設定する。
【0074】
検出位置X(t
0),X(t
0+
T1)には誤差が含まれているため、検出位置X(t
0)から検出位置X(t
0+
T1)までの移動量X(t
0+
T1)−X(t
0)と、理想移動量n*pとの関係は、下記の(24)式のようになる。
X(t
0+
T1)−X(t
0)≒n*p (25)
【0075】
また、検出位置X(t
0),X(t
0+
T1)に誤差が含まれていなければ、移動時間T
2は一定の移動時間T
1と同じになるため、検出位置X(t
0)から検出位置X(t
0+
T1)までの区間において移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動したとすれば、S*T
2とn*pは等しくなる。
しかし、実際には検出位置X(t
0),X(t
0+
T1)には誤差が含まれており、このときの移動時間T
2は一定の移動時間T
1と同じにはならないため、移動量S*T
2と理想移動量n*pの関係も、下記の(26)式となる。
S*T
2≒n*p (26)
【0076】
そして、この場合には移動時間T
2が検出位置X(t
0),X(t
0+
T1)に含まれる誤差の大きさ応じて変わるため、一定速度の判断には上記の(24)式の関係ではなく、上記の(25)式の関係を利用することができる。
即ち、S*T
2がn*pに近ければ、検出位置X(t
0)から検出位置X(t
0+
T1)までの区間、即ち前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)において、移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動したと判断することができる。
t
0やT
2などの時間は検出制御装置18の検出制御部18Aに設けられているクロックのカウント数で計測することができる(他の時間計測手段によって計測するようにしてもよい)。
従って、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)の始端位置に対応する検出位置X(t
0)を取得してから、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)の終端位置に対応する検出位置X(t
0+
T1)を取得するまでの経過時間(移動時間)、即ち移動体21(スライダ12)が前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)を移動するのに要したと判断される移動時間T
2は、検出制御部18Aにおいて知ることができる。また、一定速度Sとコイルピッチpとコイルピッチ数nは既知の値である。
【0077】
従って、閾値を±Lとすると、下記の(27)式の条件を満すとき、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)において移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動したと判断することができる。
n*p−L
≦S*T
2≦n*p+L (27)
【0078】
(2) 補正データ取得処理
次に、一定速度判断処理(第1の一定速度判断方法又は第2の一定速度判断方法又は第3の一定速度判断方法)により、移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動したと判断された前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)において取得されたX(t
0)からX(t
0+T)までの検出位置データを用いて、補正データE(m)を取得する。
【0079】
ここでは、検出位置X(t
0)が、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)の始端位置に対応する検出位置であり、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)の始端位置が、当該移動区間における最初(1番目)のコイルピッチpの始端位置に相当する場合であって、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)において取得された検出位置データを全体的に用いて補正データE(m)を取得する場合について、説明する。
【0080】
前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)における最初(1番目)のコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置を取得したときの時間をt
0とする。
前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)における最後(n番目:例えば256番目)のコイルピッチpの終端位置に対応する検出位置を取得したときの時間をt
0+Tとする。
即ち、時間Tは一定速度判断処理(第1の一定速度判断方法又は第2の一定速度判断方法又は第3の一定速度判断方法)において述べた移動時間T
1又はT
2である。
前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)における最初(1番目)のコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置X(t
0)を、基準検出位置とする。
この基準検出位置X(t
0)を取得してからの経過時間t(m)を、t(m)=0〜Tとする。
mはインデックス番号(0及び正の整数)である。例えば、インデックス番号mが0の場合にはt(0)=0とする。インデックス番号mの最大値をm
mとすると、t(m
m)=Tである。
インデックス番号mは、補正データE(m)の算出に用いる検出位置データを取得した前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)における最初(1番目)のコイルピッチpの始端位置から最後(n番目)のコイルピッチpの終端位置までの各コイルピッチ位置に対応している。即ち、m=0は最初(1番目)のコイルピッチpの始端位置に対応し、m=m
mは最後(n番目)のコイルピッチpの終端位置に対応し、その間のm=1,2,3,・・・,m
m−1は最初(1番目)のコイルピッチpの始端位置から最後(n番目)のコイルピッチpの終端位置までの間の各コイルピッチ位置に対応している。
【0081】
そして、インデックス番号mと、時間t(m)又は検出位置X(t
0+t(m))との対応づけを行う。
例えば、インデックス番号mと時間t(m)とを対応づける場合には、Δtを固定として、t(m)=m*Δtとすればよく、インデックス番号mと検出位置X(t
0+t(m))を対応づける場合には、Δxを固定として、X(t
0+t(m))=X(t
0)+m*Δxとすればよい。
【0082】
移動体21(スライダ12)が一定速度Sで移動しているときの検出位置X(t
0+t(m))に対応する理想位置Xi(t
0+t(m))は、下記の(28)式のように表すことができる。
Xi(t
0+t(m))≒X(t
0)+S*t(m) (28)
即ち、一定速度Sで移動したと判断された前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)における初期の検出位置X(t
0)(最初(1番目)のコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置)を基準とし、この基準検出位置X(t
0)に対して、一定速度Sと時間t(m)との乗算値S*t(m)を加算した値であるX(t
0)+S*t(m)は、理想位置Xi(t
0+t(m))に近い値である。この理想位置Xi(t
0+t(m))に近い位置X(t
0)+S*t(m)を、近似理想位置と称する。
【0083】
インデックス番号mでの補正データをE(m)とする。
下記の(29)式のように理想位置Xi(t
0+t(m))から検出位置X(t
0+t(m))を差し引けば、理想の補正データE(m)を得ることができる。しかし、検出位置X(t
0+t(m))に対応する理想位置Xi(t
0+t(m))を知ることはできない。
E(m)=Xi(t
0+t(m))−X(t
0+t(m)) (29)
【0084】
一方、理想位置Xi(t
0+t(m))に近い近似理想位置X(t
0)+S*t(m)に関しては、X(t
0)は検出位置取得処理において取得された検出位置データであり、一定速度S及び時間t(m)は既知の値であるため、これらに基づいて算出することができる。
【0085】
従って、理想位置Xi(t
0+t(m))に代わりに近似理想位置X(t
0)+S*t(m)を用いて、下記の(30)式に基づき、近似理想位置X(t
0)+S*t(m)から検出位置X(t
0+t(m))を差し引けば、理想に近い補正データE(m)を得ることができる。
E(m)=X(t
0)+S*t(m)−X(t
0+t(m)) (30)
【0086】
そこで、インデックス番号mに対応させてX(t
0)+S*t(m)とX(t
0+t(m))とを求め、これらのX(t
0)+S*t(m)とX(t
0+t(m))を用いて、上記の(30)式により補正データE(m)を算出する。
このとき、インデックス番号mに対応させてX(t
0)+S*t(m)とX(t
0+t(m))とを求める方法としては、前述のようにΔtを固定としてインデックス番号mと時間t(m)を対応づける方法と、Δxを固定としてインデックス番号mと検出位置X(t
0+t(m))を対応づける方法とがある。
【0087】
図4(a)の表には、Δtを固定としてインデックス番号mと時間t(m)を対応づける方法により、インデックス番号mに対応させてX(t
0)+S*t(m)とX(t
0+t(m))とを求めた場合の例を示す。
【0088】
図4(a)の表において、m=0の場合には、
t(m)=m*Δtは、t(0)=0、
X(t
0+t(m))は、X(t
0+t(0))=X(t
0)、
X(t
0)+S*t(m)は、X(t
0)+S*t(0)=X(t
0)である。
従って、E(m)は(30)式から、E(0)=X(t
0)−X(t
0)=0となる。
図4(a)の表において、m=1の場合には、
t(m)=m*Δtは、t(1)=Δt、
X(t
0+t(m))は、X(t
0+t(1))=X(t
0+Δt)、
X(t
0)+S*t(m)は、X(t
0)+S*t(1)=X(t
0)+S*Δtである。
従って、E(m)は(30)式から、E(1)=X(t
0)+S*Δt−X(t
0+Δt)となる。
図4(a)の表において、m=2の場合には、
t(m)=m*Δtは、t(2)=2*Δt、
X(t
0+t(m))は、X(t
0+t(2))=X(t
0+2*Δt)、
X(t
0)+S*t(m)は、X(t
0)+S*t(2)=X(t
0)+S*2*Δtである。
従って、E(m)は(30)式から、E(m)=X(t
0)+S*2*Δt−X(t
0+2*Δt)となる。
図4(a)の表において、m=3の場合には、
t(m)=m*Δtは、t(3)=3*Δt、
X(t
0+t(m))は、X(t
0+t(3))=X(t
0+3*Δt)、
X(t
0)+S*t(m)は、X(t
0)+S*t(3)=X(t
0)+S*3*Δtである。
従って、E(m)は(30)式から、E(m)=X(t
0)+S*3*Δt−X(t
0+3*Δt)となる。
以下、
図4(a)の表では記載を省略しているが、m=4,5,・・・,m
mの場合も同様であり、
図4(a)の表において、m=m
mの場合には、
t(m)=m*Δtは、t(m
m)=m
m*Δt=T、
X(t
0+t(m))は、X(t
0+t(m
m))=X(t
0+T)、
X(t
0)+S*t(m)は、X(t
0)+S*t(m
m)=X(t
0)+S*Tである。
従って、E(m)は(30)式から、E(m)=X(t
0)+S*T−X(t
0+T)となる。
【0089】
なお、t(m)=0,Δt,2*Δt,3*Δt,・・・,Tは、m*Δtによって得られる、即ち、検出位置X(t
0)を取得したときの時間t
0を基準時間(0)とし、この基準時間(0)からΔt時間が経過するごとの時間Δt,2*Δt,3*Δt,・・・,Tとして得られる。
X(t
0+t(m))=X(t
0),X(t
0+Δt),X(t
0+2*Δt),X(t
0+3*Δt),・・・,X(t
0+T)は、時間t
0において所得した検出位置X(t
0)と、その後、Δt時間が経過するごとの検出位置X(t
0+Δt),X(t
0+2*Δt),X(t
0+3*Δt),・・・,X(t
0+T)として得られる。
【0090】
図4(b)の表には、Δxを固定としてインデックス番号mと検出位置X(t
0+t(m))を対応づける方法により、インデックス番号mに対応させてX(t
0)+S*t(m)とX(t
0+t(m))とを求めた場合の例を示す。
【0091】
図4(b)の表において、m=0の場合には、
t(m)は、t(0)=0、
X(t
0+t(m))=X(t
0)+m*Δxは、X(t
0+t(0))=X(t
0)、
X(t
0)+S*t(m)は、X(t
0)+S*t(0)=X(t
0)である。
従って、E(m)は(30)式から、E(0)=X(t
0)−X(t
0)=0となる。
図4(b)の表において、m=1の場合には、
t(m)は、t(1)、
X(t
0+t(m))=X(t
0)+m*Δxは、X(t
0+t(1))=X(t
0)+Δx、
X(t
0)+S*t(m)は、X(t
0)+S*t(1)である。
従って、E(m)は(30)式から、E(1)=X(t
0)+S*t(1)−X(t
0)+Δxとなる。
図4(b)の表において、m=2の場合には、
t(m)は、t(2)、
X(t
0+t(m))=X(t
0)+m*Δxは、X(t
0+t(2))=X(t
0)+2*Δx、
X(t
0)+S*t(m)は、X(t
0)+S*t(2)である。
従って、E(m)は(30)式から、E(2)=X(t
0)+S*t(2)−X(t
0)+2*Δxとなる。
図4(b)の表において、m=3の場合には、
t(m)は、t(3)、
X(t
0+t(m))=X(t
0)+m*Δxは、X(t
0+t(3))=X(t
0)+3*Δx、
X(t
0)+S*t(m)は、X(t
0)+S*t(3)である。
従って、E(m)は(30)式から、E(3)=X(t
0)+S*t(3)−X(t
0)+3*Δxとなる。
以下、
図4(b)の表では記載を省略しているが、m=4,5,・・・,m
mの場合も同様であり、
図4(b)の表において、m=m
mの場合には、
t(m)=t(m
m)=T、
X(t
0+t(m))=X(t
0)+m*Δxは、X(t
0+t(m
m))=X(t
0+T)=X(t
0)+m
m*Δx、
X(t
0)+S*t(m)は、X(t
0)+S*t(m
m)=X(t
0)+S*Tである。
従って、E(m)は(30)式から、E(m)=X(t
0)+S*T−X(t
0)+m
m*Δxとなる。
【0092】
なお、X(t
0+t(m))=X(t
0)+m*Δx=X(t
0),X(t
0)+Δx,X(t
0)+2*Δx,X(t
0)+3*Δx,・・・,X(t
0)+m
m*Δxは、時間t
0において所得した検出位置X(t
0)と、その後の移動量Δxごとの検出位置X(t
0)+Δx,X(t
0)+2*Δx,X(t
0)+3*Δx,・・・,X(t
0)+m
m*Δxとして得られる。
t(m)=t(0)(=0),t(1),t(2),t(3),・・・,Tは、検出位置X(t
0)を取得したときの時間t
0を基準時間t(0)(=0)とし、その後、検出位置X(t
0)+Δx,X(t
0)+2*Δx,X(t
0)+3*Δx,・・・,X(t
0)+m
m*Δxの検出位置を得たときの時間t(1),t(2),t(3),・・・,Tとして得られる。
【0093】
なお、上記のようなインデックス番号mとの対応関係については、
図3(a)にも例示している。
【0094】
上記の(30)式に基づいて算出した補正データE(m)=E(0)(=0),E(1),E(2),E(3),・・・,E(m
m)は、インデックス番号m:0,1,2,3,・・・,m
mに沿う順、即ちE(0)(=0),E(1),E(2),E(3),・・・,E(m
m)の順に固定メモリ18Bの各アドレスへ、先頭アドレスから順に記憶させる。このように補正データE(m)を固定メモリ18Bの先頭アドレスから順に記憶させるようにすれば、インデックス番号mを記憶させる必要はない。
この場合には、インデックス番号mに代えて固定メモリ18Bのアドレスが、補正データE(m)の算出に用いる検出位置データを取得した前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)における最初(1番目)のコイルピッチpの始端位置から最後(n番目)のコイルピッチpの終端位置までの各コイルピッチ位置に対応している。
即ち、先頭アドレスは最初(1番目)のコイルピッチpの始端位置に対応し、m
m+1番目のアドレスは最後(n番目)のコイルピッチpの終端位置に対応し、2番目からm
m番目のアドレスは最初(1番目)のコイルピッチpの始端位置から最後(n番目)のコイルピッチpの終端位置まで間の各コイルピッチ位置に順に対応している。
【0095】
なお、必ずしもこれに限定するものではなく、補正データE(m)を固定メモリ18Bのアドレスにランダムに記憶させてもよい。この場合にはインデックス番号mも固定メモリ18Bに記憶させておき、このインデックス番号mと補正データE(m)とを対応づけておけばよい。例えば、5番目のアドレスにインデックス番号2と補正データE(2)を記憶させ、2番目のアドレスにインデックス番号3と補正データE(3)を記憶させるような方法でもよい。
【0096】
固定メモリ18Bに記憶される補正データE(m)の個数は、例えば、1つのコイルピッチp当たりの補正データE(m)の数を512個とし、コイルピッチ数nを256とすると、全部で131072個になる。
【0097】
また、上記では検出位置データを取得する前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)を1つにしているが、これに限定するものではなく、検出位置データを取得する前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)は複数であってもよい。
この場合には、上記の同様の方法によって、複数の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)において検出位置データを取得し、これらの検出位置データに基づいて各移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)ごとの補正データE(m)を取得し、これらの各移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)ごとの補正データE(m)の平均値を最終的な補正データE(m)とする。
そして、この最終的な(平均値の)補正データE(m)を、固定メモリ18Bに記憶させる。この場合も、補正データE(m)を固定メモリ18Bに記憶させる方法については前述のとおりである。
【0098】
(3) 検出位置の補正
その後、検出制御装置18(検出制御部18B)では、移動体21(スライダ12)を移動させて実際の作業(例えば工作機械による加工)を行うときなどにおいて、検出位置X(t)の補正を行う場合には、固定メモリ18Bから補正データE(m)を読み出す。
そして、下記の(31)式に基づき、検出位置X(t
0+t(m))に固定メモリ18Bから読み出した補正デー
タE(m)を加算することによってX’(t
0+t(m))を求め、このX’(t
0+t(m))を補正した検出位置として出力する。
X’(t
0+t(m))=X(t
0+t(m))+E(m) (31)
【0099】
詳述すると、移動体21(スライダ12)の移動位置とスケールコイル15のスケールコイル16の位置(コイルピッチ位置)は対応しているため、スケールコイル15のコイルピッチ位置と検出位置X(t)は対応している。
従って、検出制御装置18(検出制御部18B)では、移動体21(スライダ12)の位置を検出して、或る検出位置X(t)が得られた場合、当該検出位置X(t)が、どのコイルピッチ位置に対応する検出位置であるのかが分かる。
従って、検出制御装置18(検出制御部18B)では、移動体21(スライダ12)の位置を検出して或る検出位置X(t)が得られた場合、当該検出位置X(t)に対応するコイルピッチ位置を判断し、当該コイルピッチ位置に対応する補正データE(m)を固定メモリ18Bから読み出し、当該検出位置X(t)と当該補正データE(m)とを加算することによって、補正した検出位置を得る。
【0100】
なお、或る検出位置X(t)に対応するコイルピッチ位置が、第1の補正データE(m)に対応するコイルピッチ位置と、その次の第2の補正データE(m)に対応するコイルピッチ位置との間の位置である場合(例えば補正データE(10)に対応するコイルピッチ位置と、補正データE(11)に対応するコイルピッチ位置との間の位置である場合)には、第1の補正データE(m)(例えば補正データE(10))と、第2の補正データE(m)(例えば補正データE(11))とを内挿補間して補正データを求め、この内挿補間した補正データを、当該検出位置X(t)に加算することによって、補正した検出位置を得る。
【0101】
また、補正データ取得処理によって取得したn個のコイルピッチp分の補正データE(m)は、スケールコイル16のn個のコイルピッチpごとに繰り返し用いられて検出位置X(t)を補正することなる。
なお、原理的にはコイルピッチnは1個でもよい。即ち、少なくとも1つのコイルピッチpの分だけ補正データE(m)を取得するばよい。この場合には、1つのコイルピッチp分の補正データE(m)が、スケールコイル16の各コイルピッチpごとに繰り返し用いられて、検出位置X(t)を補正することなる。
【0102】
また、上記では、一定速度判断処理(第1の一定速度判断方法又は第2の一定速度判断方法又は第3の一定速度判断方法)において、移動体21が一定速度Sで移動したと判断した前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)における検出位置データを全体的に用いて補正データE(m)を求めたが、これに限定するものではなく、当該検出位置X(t)のデータのうちの一部を用いて補正データE(m)を求めるようにしてもよい。
即ち、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)における任意のN
1番目(例えば50番目)のコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置X(t
N1)のデータから、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)における任意のN
2番目(例えば150番目)のコイルピッチpの終端位置に対応する検出位置X(t
N2)のデータまでを用いて、補正データE(m)を求めてもよい。
この場合、N
1番目(例えば50番目)のコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置X(t
N1)が得られたときから、N
2番目(例えば150番目)のコイルピッチpの終端位置に対応する検出位置X(t
N2)が得られたときまでの移動時間がT
3であるとすると、前述の時間t(m)=0〜TにおけるTをT
3とすればよい。また、検出位置X(t
N1)が基準の検出位置X(t
0)となり、検出位置X(t
N2)がX(t
0+t(m
m))となる。
そして、この場合も、上記と同様の方法によって補正データE(m)を取得することができる。
【0103】
また、一定速度判断処理(第1の一定速度判断方法又は第2の一定速度判断方法又は第3の一定速度判断方法)において、移動体21が一定速度Sで移動したと判断した前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)が、最初(1番目)のコイルピッチpの途中位置から、最後(例えば256番目)のコイルピッチpの途中位置までであった場合も、上記と同様の方法によって補正データE(m)を所得することができる。
【0104】
即ち、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)における最初(1番目)のコイルピッチpを除いた任意のN
3番目(例えば2番目)のコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置X(t
N3)のデータから、前記所定の移動区間(コイルピッチpのn倍に相当する区間)の最後(例えば256番目)のコイルピッチpを除いた任意のN
4番目(例えば255番目)のコイルピッチpの終端位置に対応する検出位置X(t
N4)のデータまでを用いて、補正データE(m)を求めればよい。
この場合、N
3番目(例えば2番目)のコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置X(t
N3)が得られたときから、N
4番目(例えば255番目)のコイルピッチpの終端位置に対応する検出位置X(t
N4)が得られたときまでの移動時間がT
4であるとすると、前述の時間t(m)=0〜TにおけるTをT
4とすればよい。また、検出位置X(t
N3)が基準の検出位置X(t
0)となり、検出位置X(t
N4)がX(t
0+t(m
m))となる。
そして、この場合も、上記と同様の方法によって補正データE(m)を取得することができる。
【0105】
或いは、この場合には、最初(1番目)のコイルピッチpにおける途中位置から終端位置までの検出位置データを、最後(例えば256番目)のコイルピッチpにおける途中位置の検出位置データの後に加えて、補正データE(m)を取得してもよい。この場合には、2番目のコイルピッチpの始端位置から、最後(例えば256番目)のコイルピッチpの終端位置に対応する補正データE(m)を取得することができる。
【0106】
以上のように、本実施の形態例1に係る電磁誘導式位置検出器11の検出位置補正方法は、第1のスライダコイル13及び第2のスライダコイル14を備えたスライダ12と、スケールコイル16を備えたスケール15とを有し、スライダ12が移動体21に取り付けられて移動体21とともに移動し、第1のスライダコイル13及び第2のスライダコイル14とスケールコイル16が互いに平行で向かい合わせになるように配置された電磁誘導式位置検出器11の検出位置補正方法であって、一定速度Sの速度指令値によって移動体21を移動させ、電磁誘導式位置検出器11で移動体21の位置を検出して検出位置X(t)を取得する検出位置取得処理と、検出位置X(t)とスケールコイル16のコイルピッチpとに基づき(第1の一定速度判断方法)、又は、検出位置X(t)と一定速度Sと移動体21の移動時間T
1とに基づき(第2の一定速度判断方法)、又は、スケールコイル16のコイルピッチpと一定速度Sと移動体21の移動時間T
2とに基づき(第3の一定速度判断方法)、所定の移動区間において移動体21が一定速度Sで移動したことを判断する一定速度判断処理と、前記移動区間における何れかのコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置X(t
0)を基準検出位置とし、前記基準検出位置X(t
0)を取得してからの経過時間Tと一定速度Sとの乗算値を、基準検出位置X(t
0)に加算することによって近似理想位置を求め、この近似理想位置と検出位置とに基づいて補正データを取得する補正データ取得処理とを行うことを特徴としている。
このため、電磁誘導式位置検出器11とは別の高精度位置検出器を必要とせず、電磁誘導式位置検出器11自身で補正データを取得して検出位置の補正を行うことができる。
【0107】
また、本実施の形態例1の電磁誘導式位置検出器11の検出位置補正方法は、前記一定速度判断処理(第1の一定速度判断方法)では、前記移動区間を、コイルピッチpのn倍(nは自然数)に相当する区間とし、移動体21が、一定速度Sで、前記移動区間を移動するのに要する移動時間をT
1とし、前記移動区間の始端位置に対応する検出位置をX(t
0)、前記移動区間の終端位置に対応する検出位置をX(t
0+T
1)とし、閾値を±Lとすると、n*p−L
≦X(t
0+T
1)−X(t
0)
≦n*p+Lの条件を満たすとき、前記移動区間において移動体が一定速度Sで移動したと判断することを特徴としている。
このため、電磁誘導式位置検出器11自身で移動体21の一定速度Sの判断を容易且つ確実に行うことができる。
【0108】
また、本実施の形態例1の電磁誘導式位置検出器11の検出位置補正方法は、前記一定速度判断処理(第2の一定速度判断方法)では、前記移動区間を、コイルピッチpのn倍(nは自然数)に相当する区間とし、移動体21が、一定速度Sで、前記移動区間を移動するのに要する移動時間をT
1とし、前記移動区間の始端位置に対応する検出位置をX(t
0)、前記移動区間の終端位置に対応する検出位置をX(t
0+T
1)とし、閾値を±Lとすると、S*T
1−L
≦X(t
0+T
1)−X(t
0)
≦S*T
1+Lの条件を満たすとき、前記移動区間において移動体21が一定速度Sで移動したと判断することを特徴としている。
このため、電磁誘導式位置検出器11自身で移動体21の一定速度Sの判断を容易且つ確実に行うことができる。
【0109】
また、本実施の形態例1の電磁誘導式位置検出器11の検出位置補正方法によれば、前記一定速度判断処理(第3の一定速度判断方法)では、前記移動区間を、コイルピッチpのn倍(nは自然数)に相当する区間とし、移動体21が、前記移動区間を移動するのに要したと判断した移動時間をT
2とし、閾値を±Lとすると、n*p−L
≦S*T
2≦n*p+Lの条件を満たすとき、前記移動区間において移動体21が一定速度Sで移動したと判断することを特徴としている。
このため、電磁誘導式位置検出器11自身で移動体21の一定速度Sの判断を容易且つ確実に行うことができる。
【0110】
また、本実施の形態例1の電磁誘導式位置検出器11の検出位置補正方法によれば、前記補正データ取得処理では、前記移動区間における何れかのコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置を取得したときの時間をt
0とし、前記移動区間における他の何れかのコイルピッチpの終端位置に対応する検出位置を取得したときの時間をt
0+Tとし、前記移動区間における何れかのコイルピッチpの始端位置に対応する検出位置を基準検出位置X(t
0)とし、前記基準検出位置X(t
0)を取得してからの経過時間t(m)(mはインデックス番号)を、t(m)=0〜Tとし、Δtを固定してインデックス番号mとt(m)との対応づけをし、又は、Δxを固定してインデックス番号mとX(t
0+t(m))との対応づけをし、インデックス番号mに対応する補正データE(m)を、E(m)=X(t
0)+S*t(m)−X(t
0+t(m))の式によって算出することを特徴としている。
このため、電磁誘導式位置検出器11自身で補正データE(m)を容易且つ確実に取得することができる。
【0111】
また、本実施の形態例1の電磁誘導式位置検出器11の検出位置補正方法によれば、前記移動区間を複数とし、これら複数の移動区間で補正データを取得し、これら複数の補正データの平均値を最終的な補正データとすることを特徴としている。
このため、より精度の高い補正データを取得することができる。
【0112】
<実施の形態例2>
図5に基づき、本発明の実施の形態例2に係る電磁誘導式位置検出器の検出位置補正方法について説明する。
【0113】
本実施の形態例2は、そのシステム構成や、補正データE(m)を所得するまでの処理(検出位置取得処理、一定速度判断処理、補正データ取得処理)については、上記実施の形態例1と同じであるが(
図1〜
図4)、固定メモリ18Bへの補正データE(m)の記憶に関して上記実施の形態例1と異なる。
【0114】
図5には上記実施の形態例1と同じ方法によって取得した補正データE(m)の例を示す。
図5において、横軸はインデックス番号m、縦軸は補正データE(m)である。
先にも述べたとおり、検出位置X(t)に含まれている誤差Eは、スケールコイル16のコイルピッチ周期に応じて周期的に変動する(
図3(b))。
従って、
図5に示すように、補正データE(m)も、スケールコイル16のコイルピッチ周期に応じて周期的に変動する。なお、コイルピッチ周期に応じて周期的に変動することを明示するため、
図3(b)の場合と同様に
図5でも、補正データE(m)を正弦波で表しているが、実際の誤差Eの場合と同様に実際の補正データE(m)も、もう少し歪んだ波形となる。
【0115】
そして、本実施の形態例2の場合、検出制御装置18(検出制御部18A)では、補正データE(m)を取得した後、上記実施の形態例1のように補正データE(m)を全て固定メモリ18Bに記憶させて、この補正データE(m)を検出位置補正の際に固定メモリ18Bからを読み出すのではなく、次のような処理を行う。
【0116】
まず、
図5に例示するような補正データE(m)=E(1),E(2),E(3),・・・、E(m
m)を、フーリエ変換する。
そして、このフーリエ変換の結果から、スペクトルの大きい成分F(i)を、上位j個分(i=0〜j−1)(F(0),F(1),F(2),・・・,F(j−1))を選択して、これらを固定メモリ18Bに記憶させておく(jは自然数)。なお、成分F(i)として記憶するデータは、振幅、周波数、位相である。
【0117】
その後、移動体21(スライダ12)を移動させて実際の作業(例えば工作機械による加工作業など)を行うときなどにおいて、検出位置X(t)の補正を行う場合には、固定メモリ18Bから成分F(i)=F(0),F(1),F(2),・・・,F(j−1)を読み出し、この成分F(i)の逆フーリエ変換することによって、補正データE’(m)=E’(0),E’(1),E’(2),E’(3),・・・,E’(m
m)を求める。
そして、上記実施の形態例1の場合と同様に下記の(32)式に基づき、検出位置X(t
0+t(m))に補正データ得E’(m)を加算することによってX’(t
0+t(m))を求め、このX’(t
0+t(m))を補正した検出位置として出力する。なお、補正の詳細については上記実施の形態例1の場合と同様である。
X’(t
0+t(m))=X(t
0+t(m))+E’(m) (32)
【0118】
以上のように、本実施の形態例2に係る電磁誘導式位置検出器11の検出位置補正方法は、補正データE(m)をフーリエ変換して、スぺクトルの大きい成分F(i)を上位j個分(i=0〜j−1)固定メモリ18Bに記憶しておき、固定メモリ18Bから成分F(i)を読み出し、逆フーリエ変換をして補正データE’(m)を求めることを特徴としている。
このため、固定メモリ18Bの容量を低減することができる。
【0119】
なお、上記では電磁誘導式位置検出器がリニア形スケールである場合について説明したが、これに限定するものでなく、先にも述べたとおり電磁誘導式位置検出器がロータリ形スケールである場合についても本発明の方法を適用することができる。
ロータリ形スケールは、ステータコイル(一次側コイル)を備えたステータ(一次側部材)と、ロータコイル(二次側コイル)を備えたロータ(二次側部材)とを有し、ロータが移動体(回転体)に取り付けられて移動体(回転体)とともに移動(回転)し、ステータコイルとロータコイルが互いに平行で向かい合わせになるように配置されたものである。
このようなロータリ形スケールに対しても、本発明の方法を適用して補正データを取得し、この補正データによってロータリ形スケールの検出位置(回転角度)を補正することができる。