特許第6057697号(P6057697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057697
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】皮膚用乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20161226BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20161226BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20161226BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20161226BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20161226BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20161226BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20161226BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20161226BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   A61K8/36
   A61K8/98
   A61K8/84
   A61K8/37
   A61K8/34
   A61K8/891
   A61K8/73
   A61K8/06
   A61Q19/00
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-280553(P2012-280553)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-125426(P2014-125426A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】100137419
【弁理士】
【氏名又は名称】桂田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】桑田 郁子
(72)【発明者】
【氏名】永松 壮晃
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−206976(JP,A)
【文献】 特開2012−180379(JP,A)
【文献】 特開2003−183165(JP,A)
【文献】 特開2010−241743(JP,A)
【文献】 特開2009−242392(JP,A)
【文献】 特開2007−297298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)高級脂肪酸、(B)ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、(C)脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、(D)糖アルコール、(E)シリコーン油および(F)カルボキシメチルセルロースナトリウムを含有してなり、
前記(A)成分が、未中和の高級脂肪酸である皮膚用乳化組成物。
【請求項2】
前記成分(C)の含有量が1.5質量%以上、7質量%以下である請求項1に記載の皮膚用乳化組成物。
【請求項3】
さらに、(G)炭化水素油、脂肪酸エステル油および高級アルコールから選ばれる少なくとも1種を含有してなる請求項1又は2に記載の皮膚用乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚用乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、肌へ潤いを与える手段としては、皮膜形成剤を配合したローション、乳液、クリームなどの組成物を肌に塗布し、十分に乾燥後、肌から組成物を剥がす試み、所謂、ピールオフタイプのパック(例えば、特許文献1を参照)がある。このようなピールオフタイプのパックは、肌表面に適度な皮膜を形成させることで潤いを与えることを特徴とする。
【0003】
しかしながら、ピールオフタイプのパックの場合、乾燥後、肌からの組成物の剥離が容易ではなく、剥離時に痛みを伴うといった問題がある。そのため、ローション、乳液などの組成物をマスクに含浸させたシートを肌に貼着させて潤いを付与する、所謂、シートパックによる試みもなされている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
しかしながら、シートパックの場合、シート材に保湿液を含浸させなければならないことから、高保湿能を有する油溶性成分を高配合できず、多価アルコールなどの水溶性成分を保湿付与の主成分として用いなければならないため、持続ある十分な潤い感が得られ難いといった問題がある。
【0005】
そのため、高保湿能を有する油溶性成分を高配合した組成物を直接肌へ塗布し、潤いを付与する試みも考えられるが、当該試みでは、しっとりとした使用感は得られる反面、油溶性成分が高配合されていることから、速乾性に劣り、厚塗りができないばかりか、塗布後もヌルヌルとしたベタつき感が続くといった問題がある。また、このような高保湿能を有する皮膚用組成物を睡眠前に用いた場合、油膜が肌を覆うことから、睡眠中の水分蒸散は防ぐことができる反面、翌朝、洗顔を行うと油膜が落ちてしまうために、肌に突っ張り感が生じたり、潤い感がなくなるといった問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−254437号公報
【特許文献2】特開2009−084239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、肌に厚塗りしたとしても速乾性に優れ、適度な油膜感があるにもかかわらずベタつき感がなく、浸透感のある潤いを十分に付与することができる皮膚用乳化組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、
〔1〕(A)高級脂肪酸、(B)ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、(C)脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、(D)糖アルコール、(E)シリコーン油および(F)カルボキシメチルセルロースナトリウムを含有してなり、前記(A)成分が、未中和の高級脂肪酸である皮膚用乳化組成物、
〔2〕前記成分(C)の含有量が1.5質量%以上、7質量%以下である前記〔1〕に記載の皮膚用乳化組成物、並びに
〔3〕さらに、(G)炭化水素油、脂肪酸エステル油および高級アルコールから選ばれる少なくとも1種を含有してなる前記〔1〕又は〔2〕に記載の皮膚用乳化組成物
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚用乳化組成物は、例え、肌に厚塗りしたとしても速乾性に優れることから、適度な油膜感と粘着感があるにもかかわらずベタつき感がなく滑らかな感触を与えるとともに、浸透感のある潤いを十分に与え、突っ張り感のない柔らかなハリ感を付与することができるという効果を奏する。
【0010】
また、本発明の皮膚用乳化組成物を睡眠前に用いた場合では、睡眠中の水分蒸散を防ぐことができ、浸透感のある潤いを十分に付与することができることから、翌朝に洗顔を行ったとしても潤いを感じ続けることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の皮膚用乳化組成物は、(A)高級脂肪酸、(B)ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、(C)脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、(D)糖アルコール、(E)シリコーン油および(F)カルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する。
【0012】
(A)成分の高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸などの炭素数12〜22の脂肪酸;オリーブ油、ヤシ油、パーム油、綿実油などの植物性油脂;魚油、牛脂などの動物性油脂などが挙げられる。
【0013】
上記した(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(A)成分としては、組成物の安定性を高め、本発明の効果を十分に発揮させる観点から、炭素数12〜18の高級脂肪酸を用いることが好ましい。本発明においては、好適な高級脂肪酸の中でも、少なくともパルミチン酸および/又はステアリン酸を含む炭素数12〜18の高級脂肪酸を用いることが最も好ましい。
【0014】
通常、高級脂肪酸は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機アルカリ塩、若しくはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの有機アルカリ塩を用いて中和された高級脂肪酸塩が用いられることが一般であるが、本発明では、未中和の高級脂肪酸を用いることが最も好ましい。このように、未中和の高級脂肪酸を用いることで、組成物の安定性を十分に高めるとともに、組成物を本発明の効果を最大に発揮させることのできる最適な粘度へと調製することができるようになる。
【0015】
(A)成分の含有量は、組成物の安定性、並びに最適な粘度とする観点から、組成物中、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1.5質量%以上である。また、組成物の粘度変化を抑える観点から、4質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3.5質量%以下である。これらの観点から、(A)成分の含有量は、1〜4質量%であることが好ましく、より好ましくは1.5〜3.5質量%である。
【0016】
(B)成分のポリオキシエチレンソルビットミツロウは、ソルビトールに酸化エチレンを付加重合して得られるポリオキシエチレンソルビトールとミツロウを反応して得られる成分である。本発明においては、(B)成分を必須成分として用いることで、例え、肌に厚塗りしたとしても速乾性に優れることから、滑らかな油膜感をもたらして浸透感のある潤いを与え、その効果を持続させることができるようになる。尚、重合される酸化エチレンの付加モル数は特に限定されない。
【0017】
(B)成分は、市販品を用いることもできる。具体的には、NIKKOL GBW−25(商品名,日光ケミカルズ社製,酸化エチレンの付加モル数:6)、NIKKOL GBW−125(商品名,日光ケミカルズ社製,酸化エチレンの付加モル数:20)などを例示することができる。
【0018】
(B)成分の含有量は、滑らかな油膜感を付与する観点から、組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上である。また、ベタつき感の観点から、1.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。これらの観点から、(B)成分の含有量は、0.1〜1.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜1質量%である。
【0019】
(C)成分の脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンが付加されていてもよいグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加されていてもよいソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0020】
ポリオキシエチレンが付加されていてもよいグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルなどを例示することができる。尚、酸化エチレンの付加モル数は、特に限定されないが、20〜55であることが好ましい。
【0021】
ポリオキシエチレンが付加されていてもよいソルビタン脂肪酸エステルの具体例としては、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどを例示することができる。尚、酸化エチレンの付加モル数は、特に限定されないが、6〜20であることが好ましい。
【0022】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの具体例としては、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジパルミチン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコールなどを例示することができる。尚、酸化エチレンの付加モル数は、特に限定されないが、20〜55であることが好ましい。
【0023】
上記した(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。本発明においては、乳化安定性を更に向上させる観点から、2種以上を適宜組合せて含有させることが好ましい。
【0024】
好適な(C)成分としては、低温および高温保存時の乳化安定性を向上させる観点から、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40)が挙げられる。尚、括弧内の数値は、酸化エチレンの付加モル数を表す。
【0025】
(C)成分の含有量は、乳化安定性を付与する観点から、組成物中、1.5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上である。また、使用感の観点から、7質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。これらの観点から、(C)成分の含有量は、1.5〜7質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜5質量%である。
【0026】
(D)成分の糖アルコールとしては、例えば、キシリトール、トレハロース、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、アラビトール、リビトール、ガラクチトール、グルシトール、エリトリトールなどが挙げられる。
【0027】
上記した(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。本発明においては、適度な粘着感を付与する観点から、トレハロース、マルチトール、ソルビトールを用いることが好ましく、中でも、マルチトール、ソルビトールを用いることがより好ましい。
【0028】
(D)成分の含有量は、適度な粘着感を付与する観点から、組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、ベタつき感の観点から、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。これらの観点から、(D)成分の含有量は、0.5〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。
【0029】
(E)成分のシリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン、平均重合度が650〜7000である高重合メチルポリシロキサンなどのジメチルシリコーン油;メチルフェニルポリシロキサンなどのメチルフェニルシリコーン油;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン油;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体などのアミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーンなどの変性シリコーン;メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノールなどが挙げられる。
【0030】
上記した(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。本発明においては、滑らかさの観点から、ジメチルシリコーン油、メチルフェニルシリコーン油および環状シリコーン油の群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0031】
(E)成分の含有量は、滑らかさを付与する観点から、組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上である。また、ベタつき感の観点から、2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。これらの観点から、(E)成分の含有量は、0.1〜2質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜1質量%である。
【0032】
(F)成分のカルボキシメチルセルロースナトリウムは、セルロースのカルボキシメチルエーテルのナトリウム塩である。本発明においては、(F)成分を必須成分として用いることで、柔らかなハリ感を付与することができるようになる。
【0033】
(F)成分は、市販品を用いることもできる。具体的には、カルボキシメチルセルロース(商品名,ダイセル化学工業社製)などを例示することができる。
【0034】
(F)成分の含有量は、柔らかなハリ感を付与する観点から、組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上である。また、突っ張り感を低減する観点から、1.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下である。これらの観点から、(F)成分の含有量は、0.1〜1.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜1質量%である。
【0035】
また、本発明の皮膚用乳化組成物には、潤いを更に高め、その効果を持続させる観点から、(G)炭化水素油、脂肪酸エステル油および高級アルコールから選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。
【0036】
炭化水素油の具体例としては、セレシン、パラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレン末、ポリエチレンワックス、ワセリン、スクワランなどを例示することができる。
【0037】
脂肪酸エステル油の具体例としては、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、イソステアリン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、セバシン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、オレイン酸ソルビタン、マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリルなどを例示することができる。
【0038】
高級アルコールの具体例としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、べへニルアルコールなどを例示することができる。
【0039】
(G)成分の含有量は、潤いを更に高める観点から、組成物中、5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上である。また、ベタつき感の観点から、40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下である。これらの観点から、(G)成分の含有量は、5〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。
【0040】
本発明の皮膚用乳化組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧品に用いられる成分、例えば、多価アルコール、低級アルコール、紫外線吸収剤、増粘剤、アミノ酸、香料、色素、キレート剤、酸化防止剤、防腐剤、ビタミン類、pH調整剤などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0041】
本発明の皮膚用乳化組成物は、前記各構成成分を混合し、公知の方法、例えばホモミキサーを用いた転相乳化法により乳化させることで製造することができる。
【0042】
本発明の皮膚用乳化組成物は、上記した如く、必須成分を充足することのより、肌に厚塗りしたとしても速乾性に優れることから、適度な油膜感を有するにもかかわらずベタつき感がなく滑らかであり、粘着感に優れることから、浸透感のある潤いを十分に与え、突っ張り感のない柔らかなハリ感を付与することができるようになる。
【0043】
本発明の皮膚用乳化組成物は、上記したような特有の効果を十分に発揮させることができることから、該組成物を睡眠前に用いた場合には、適度な油膜感を有することから、睡眠中の水分蒸散は防ぐことができることから、浸透感のある潤いを十分に付与することができ、翌朝に洗顔を行ったとしてもその潤いを感じ続けることができるようになる。
【0044】
尚、本発明の皮膚用乳化組成物は、膜圧感のない均一な皮膜を形成し、持続性に優れる潤いを十分に付与するという効果を奏するとともに、洗浄後も潤いを持続させるといった効果をも奏することから、例えば、身体用クリームなどの剤型として用いることができ、特に顔用ナイトクリームとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。
【0046】
(試料の調製1)
表1〜3に記した組成に従い、実施例1〜6および比較例1〜12の各皮膚用乳化組成物を調製し、下記評価に供した。結果を表1〜3に併記する。
尚、表中、「POE」とは、「ポリオキシエチレン」の略であり、括弧内の数値は、酸化エチレンの付加モル数を表す。
【0047】
(試験例1:使用感の評価1)
女性官能評価パネル20名により、実施例および比較例で得られた各試料3gを、顔全体に厚塗りしてもらい、塗布後の「速乾性」について、以下の評価基準に従って官能評価した。
【0048】
<速乾性の評価基準>
◎(非常に良好):20名中16名以上が、塗布後の速乾性に優れると回答
○(良好):20名中11〜15名が、塗布後の速乾性に優れると回答
△(不十分):20名中6〜10名が、塗布後の速乾性に優れると回答
×(不良):20名中5名以下が、塗布後の速乾性に優れると回答
【0049】
(試験例2:使用感の評価2)
試験例1の評価直後、同パネル20名により、肌上の「油膜感」、「粘着感」および「ベタつき感」について、以下の評価基準に従って官能評価した。
【0050】
<油膜感の評価基準>
◎(非常に良好):20名中16名以上が、適度な油膜感があると回答
○(良好):20名中11〜15名が、適度な油膜感があると回答
△(不十分):20名中6〜10名が、適度な油膜感があると回答
×(不良):20名中5名以下が、適度な油膜感があると回答
【0051】
<粘着感の評価基準>
◎(非常に良好):20名中16名以上が、適度な粘着感があると回答
○(良好):20名中11〜15名が、適度な粘着感があると回答
△(不十分):20名中6〜10名が、適度な粘着感があると回答
×(不良):20名中5名以下が、適度な粘着感があると回答
【0052】
<ベタつき感の評価基準>
◎(非常に良好):20名中16名以上が、ベタつき感がなく滑らかであると回答
○(良好):20名中11〜15名が、ベタつき感がなく滑らかであると回答
△(不十分):20名中6〜10名が、ベタつき感がなく滑らかであると回答
×(不良):20名中5名以下が、ベタつき感がなく滑らかであると回答
【0053】
(試験例3:使用感の評価3)
試験例2の評価1時間後、同パネル20名により、肌の「潤い感」および「ハリ感」について、以下の評価基準に従って官能評価した。
【0054】
<潤い感の評価基準>
◎(非常に良好):20名中16名以上が、浸透感のある潤いを感じると回答
○(良好):20名中11〜15名が、浸透感のある潤いを感じると回答
△(不十分):20名中6〜10名が、浸透感のある潤いを感じると回答
×(不良):20名中5名以下が、浸透感のある潤いを感じると回答
【0055】
<ハリ感の評価基準>
◎(非常に良好):20名中16名以上が、突っ張り感のない柔らかなハリを感じると回答
○(良好):20名中11〜15名が、突っ張り感のない柔らかなハリを感じると回答
△(不十分):20名中6〜10名が、突っ張り感のない柔らかなハリを感じると回答
×(不良):20名中5名以下が、突っ張り感のない柔らかなハリを感じると回答
【0056】
(試験例4:使用感の評価4)
同パネル20名により、実施例および比較例で得られた各試料3gを、就寝前に顔全体に厚塗りしてもらった。翌朝、ぬるま湯で顔全体を洗い流してもらい、タオルドライ後の「潤い感」について、以下の評価基準に従って官能評価した。
【0057】
<洗い流し後の潤い感の評価基準>
◎(非常に良好):20名中16名以上が、潤い感が残っていると回答
○(良好):20名中11〜15名が、潤い感が残っていると回答
△(不十分):20名中6〜10名が、潤い感が残っていると回答
×(不良):20名中5名以下が、潤い感が残っていると回答
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
表1〜3に示された結果から、本発明の構成成分を充足する実施例1〜6の皮膚用乳化組成物は、肌に厚塗りしたとしても速乾性に優れることから、適度な油膜感と粘着感があるにもかかわらずベタつき感がなく滑らかであり、浸透感のある潤いを十分に与え、突っ張り感のない柔らかなハリ感を付与していることか分かる。さらに、本発明の皮膚用乳化組成物を睡眠前に用いた場合には、睡眠中の水分蒸散は防ぐことができ、浸透感のある潤いを十分に付与することができることから、翌朝に洗顔を行ったとしても潤いを感じ続けられるものであることが分かる。
【0062】
これに対し、本発明の構成成分を充足しない比較例1〜6の皮膚用乳化組成物では、本発明の特有の効果全てを十分に発揮できていないことが分かる。さらに、本発明の(A)成分を高級脂肪酸塩へ置き換えた比較例7〜8、本発明の(B)成分を単なるポリオキシエチレンソルビットへ置き換えた比較例9、並びに本発明の(F)成分を他のセルロース系増粘剤へ置き換えた比較例10〜12の皮膚用乳化組成物においても、先と同様に本発明の特有の効果全てを十分に発揮できていないことが分かる。