【文献】
The Pediatric Infectious Disease Journal,2004年,Vol.23,No.1,p.S87−97
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
したがって、本発明の1つの態様において、本発明は、患者の呼吸状態を治療するための、患者の損傷を受けた呼吸細胞の表面のシアリル複合糖質の修復を促進する方法であって、患者に、シアリル複合糖質生合成を促進する能力がある少なくとも1種の医薬的に許容しうる化合物を投与するステップを包含する方法を提供する。
【0018】
本発明のもう1つの態様において、本発明は、患者の呼吸状態を治療するための、患者の損傷を受けた呼吸細胞の細胞生存能力の回復を促進する方法であって、患者に、シアリル複合糖質生合成を促進する能力がある少なくとも1種の医薬的に許容しうる化合物を投与するステップを包含する方法を提供する。
【0019】
呼吸細胞の表面上のシアリル複合糖質の修復の促進はまた、細胞が、呼吸表面に影響を及ぼして、咳、ウイルスまたは細菌感染後、急性/慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症およびその他の呼吸器炎症性疾患などの呼吸状態(これらに限定されるものではない)に導く因子に応答する正常な生物学的機能のためにより良い状態にあるように、生存能力のある状態への細胞の回復または生存能力の回復を示す可能性がある。
【0020】
もう1つの実施態様において、少なくとも1つの医薬的に許容しうる化合物は、シアリル複合糖質生合成において、中間体、その前駆体およびそのプロドラッグならびにその医薬的に許容しうる塩および誘導体ならびにその組み合わせとして参加する能力がある炭水化物から選ばれる。
【0021】
上記化合物は、咳、ウイルスまたは細菌感染後、急性/慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症およびその他の呼吸器炎症性疾患から選ばれる呼吸状態の治療のために、経口、吸入または注射投与にて用いることができる
【0022】
本明細書の詳細な説明および請求の範囲の記載を通して、単語「含む(comprise)」および「含む(comprising)」および「含む(comprises)」などのその変化形は、他の添加物、成分、整数またはステップを排除することを意図するものではない。
【0023】
もう1つの実施態様において、本明細書は、
式(1)で示される化合物:
式(1)
[式中、
B=Hである場合、Aは、NHCOCH
3、NH
2、OH、NH
2・HXであるか、またはA=Hである場合、Bは、NHCOCH
3、NH
2、NH
2・HXであり、ここで、HXは、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸などの医薬的に適切な無機または有機酸である;
R
1、R
2、R
3、R
4は、同一もしくは異なって、H、CH
3、(CH
2)
nCH
3(n=1-20)、CH
2Ph、COCR
5R
6R
7、CO-活性エステル(ピバエステル(piva ester)、インデニルエステル(indenyl ester)など)である;
R
5、R
6、R
7は、同一もしくは異なって、H、CH
3、(CH
2)
nCH
3(n=1-20)、C
6H
5、CH
2Ph、CH
3CH
2(OCH
2CH
2)
mCH
3(m=1-200)である;および
R
4は、
であってもよい;
R
5’、R
6’は、同一もしくは異なって、HまたはNa、K、Ca、Mg、Zn、NH
3、トリエチルアミンなどの医薬的に適切な無機または有機塩であってもよいか、またはR
5’、R
6は、(CH
2)
nCH
3(n=1-20)もしくはCH
3CH
2(OCH
2CH
2)
mCH
3(m=1-200)などの医薬的に適切なエステルまたはピバエステル、インデニルエステルなどの活性エステルである]
および
式(2)で示される化合物:
式(2)
[式中、
R
8は、H、CH
3、(CH
2)
nCH
3(n=1-20)、CH
2Ph、COCH
2Ph、CO-活性エステル(ピバエステル、インデニルエステルなど)、COCR
14R
15R
16である;ここで、R
14、R
15、R
16 は、同一もしくは異なって、H、CH
3、(CH
2)
nCH
3(n=1-20)、C
6H
5、CH
2Ph、CH
2CH
2(OCH
2CH
2)
mCH
3(m=1-200)である;
R
8は、シチジン、シチジン一リン酸、シチジン二リン酸、シチジン三リン酸、アデノシン、アデノシン一リン酸、アデノシン二リン酸、アデノシン三リン酸であってもよい;
R
9は、H、CH
3、Na、K、Ca、Mg、Zn、NH
3、トリエチルアミンなどの医薬的に適切な無機または有機塩、またはピバエステル、インデニルエステルなどの医薬的に適切な活性エステル、またはCH
2CR
17R
18R
19であってもよい;ここで、R
17、R
18、R
19は、同一もしくは異なって、H、CH
3、(CH
2)
nCH
3(n=1-20)、CH
2CH
2(OCH
2CH
2)
mCH
3(m=1-200)、C
6H
5、CH
2Phである;
R
10、R
11、R
12、R
13は、同一もしくは異なって、H、CH
3、(CH
2)
nCH
3(n=1-20)、CH
2Ph、ピバエステルなどの活性エステルまたはCOCR
20R
21R
22である;ここで、R
20、R
21、R
22は、同一もしくは異なって、H、CH
3、(CH
2)
nCH
3(n=1-20)、C
6H
5、CH
2Ph、CH
2CH
2(OCH
2CH
2)
mCH
3(m=1-200)である;
R
13は、
であってもよい;
R
23、R
24は、同一もしくは異なって、H、CH
3、(CH
2)
nCH
3(n=1-20)、CH
2CH
2(OCH
2CH
2)
mCH
3(m=1-200)、CH
2Ph、またはピバエステル、インデニルエステルなどの活性エステル、またはCH
2CR
25R
26R
27、またはNa、K、Ca、Mg、Zn、NH
3、トリエチルアミンなどの医薬的に適切な無機または有機塩であり、R
25、R
26、R
27 は、同一もしくは異なって、H、CH
3、(CH
2)
nCH
3(n=1-20)、C
6H
5、CH
2Phである]
から選ばれる化合物の使用を提供する。
【0024】
A=NHCOCH
3である式(1)で示される化合物における1つの実施態様において、化合物は、N-アセチル-D-マンノサミンである。本明細書を通じて、これを化合物(1)と称する。
【0025】
R
8、R
10、R
11、R
12、R
13=H、R
9=Naである式(2)で示される化合物における別の実施態様において、化合物は、N-アセチルノイラミン酸ナトリウム塩(シアル酸ナトリウム塩)である。本明細書を通じて、これを化合物(2)と称する。
【0026】
R
8がシチジン一リン酸であり、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13=Hである場合、化合物は、CMP-シアル酸である。
【0027】
細胞の表面上の複合糖質のオリゴ糖鎖上の末端糖鎖としてのシアル酸は、細胞接着[1](後記参考文献番号;以下同様)、認識決定基の形成またはマスキング[2][3]および糖タンパク質の構造の安定化[4]などの特定の生物学的過程の分子決定基としてよく適している。生細胞におけるシアリル複合糖質の生合成経路を以下の図式1[5]に示す。
【0029】
ラクトースではなくてN-アセチルノイラミン酸は、粘液線毛輸送機能の障害を用量依存的に防ぐことが報告された[6]。さらに、N-アセチルノイラミン酸の繰り返し投与(吸入)による前処理は、ウサギをSO
2に長期曝露することによって引き起こされる炎症性変化を著しく防いだ[7]。哺乳類へのN-アセチル-D-マンノサミンの経口投与は、グルコースに急速に代謝されることも報告された[8]。遺伝性封入体ミオパチー(HIMB)および縁取り空砲型遠位型ミオパチー(Nonaka myopathy)などの筋萎縮症を治療するための、N-アセチルマンノサミンまたはその誘導体を投与する方法(糖分子が不足している患者においてシアル酸を生成するため)も報告された。腎臓膜の低シアリル化から起こる症状などの特定の腎症状も、この方法によって治療することができる[8b] [8c]。
【0030】
しかし、これらの治療は、呼吸状態の治療のためのこれらの中間体の使用に関連しない。
【0031】
式(1)および/または式(2)で示される化合物の安全性は、本出願人によって試験されている。たとえば、化合物(1)および(2)を、Balb-Cマウス(AEC 承認番号:BAM/B/2005/16)における耐容性および亜慢性毒性試験で用いた。耐容性試験の結果から、両方の化合物が、経口用量5g/Kgまたは腹腔内用量2g/Kgにて、良好な耐容性を示すことが明らかになった。亜慢性毒性試験では、結果から、両方の化合物が、経口用量1g/Kg/日 x 30日間または腹腔内用量0.5g/Kg/日 x 30日間にて、無毒性であることが明らかになった。
【0032】
モルモットの咳モデルも、本出願人によって確立された。このモデルにおいて、化合物(1)および(2)を試験した。500mg/kg/日 X 3日間の経口用量にて、両方の化合物は、ノイラミニダーゼによって引き起こされたモルモットの気道の損傷を修復することができた。これらのインビボの結果は、インビトロのデータと一致した。したがって、有効性および安全性のデータは、式(1)および/または式(2)で示される化合物をサポートし、特に、化合物(1)および(2)は、医薬としての適用に有用である。
【0033】
式(1)および/または式(2)で示される化合物が、損傷を受けた気道細胞上のシアリル複合糖質を修復することによって、該細胞の生存能力の回復を加速しうることが、本出願人によって見出されている。
【0034】
式(1)および/または式(2)で示される化合物は、細胞に入った後に、シアリル複合糖質の生成を増強する。したがって、本発明の1つの態様は、
咳、ウイルスまたは細菌感染後、急性/慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症およびその他の呼吸器炎症性疾患の治療のための活性治療薬としての、式(1)および/または式(2)で示される化合物およびその医薬的に許容しうる塩および誘導体ならびにその組み合わせ、またはその混合物の使用に関する。
【0035】
式(1)および/または式(2)で示される化合物およびその混合物の医薬的に許容しうる組成物もまた、呼吸状態の治療のための1種以上の他の有効成分と化合物を組み合わせることによって形成されうる。たとえば、コリンテオフィリネート(気管支拡張剤)、テオフィリン(気管支拡張剤)、サルブタモールおよび硫酸テルブタリン(喘息およびその他の呼吸状態に伴う気管支けいれんの緩和)、ブロムヘキシン(去痰薬、粘液溶解薬)、コデイン、フォルコデイン(鎮痛薬、鎮咳薬)、クロフェダノール(鎮咳薬)、ペントキシベリン(鎮咳薬)、ジメトキサネート、グラウシン(鎮咳薬)、プロムデート、タロキシミン、アセチルピペラアセトアミド、ユーカリ油、塩化アンモニウムおよびfritillariae cirrhosaeなどのハーブ(抗咳ハーブ)など。タルニフルメート、2-アミノ-フェニル-酢酸などのムチン合成インヒビター、またはフルニソリド(抗喘息薬)などの糖質コルチコイドとの組み合わせ、または症状緩和医薬適合性咳シロップとの組み合わせ、または慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療のためのシロミラスト(Ariflo製)などのホスホジエステラーゼ4インヒビターとの組み合わせ。
【0036】
さらに、式(1)および/または式(2)で示される化合物およびその医薬的に許容しうる塩および誘導体ならびにその組み合わせならびにその混合物の医薬的に許容しうる組成物もまた、それらを1種以上の他の有効成分、たとえば、ザナミビルおよび/またはオセルタミビル(抗インフルエンザウイルス薬)、プレコナリルおよび/またはエンビロキシム(抗ライノウイルス薬)などの抗ウイルス薬;、たとえば、エリスロマイシン、テトラサイクリン、リファマイシン、ペニシリン、セファロスポリン、キノロン、フルオロキノリン、スルホンアミドおよびトリメトプリムといったような抗生物質などの抗菌薬;アンホテリシン、クロトリマゾール、エコナゾール、フルコナゾール、フルシトシンなどの抗真菌薬などと組み合わせることによって形成される。
【0037】
本明細書において式(1)および/または式(2)で示される化合物は、式(1)および/または式(2)で示される化合物ならびにその医薬的に許容しうる誘導体および塩を包含する。
【0038】
本発明の別の実施態様は、有効量の式(1)および/または式(2)で示される化合物の投与を含む、ヒトなどの動物におけるウイルス/細菌感染後、急性/慢性気管支炎、COPD、嚢胞性線維症および炎症性疾患などの呼吸状態の治療または予防方法を提供する。
【0039】
本発明のさらなる態様は、ヒトなどの動物におけるウイルス/細菌感染後、急性/慢性気管支炎、COPD、嚢胞性線維症および炎症性疾患などの呼吸状態の治療用薬剤の製造における式(1)および/または式(2)で示される化合物の使用を提供する。
【0040】
治療における使用に必要な式(1)および/または式(2)で示される化合物の量は、投与経路、治療される状態の性質ならびに動物(ヒト患者を含む)の年齢および状態によって変わり、最終的には、かかりつけの獣医または医師の判断で決まる。
【0041】
一般的に、適当な用量は、約0.1mg〜500mg/体重kg/日の範囲、好ましくは0.1mg〜50mg/kg/日の範囲である。
【0042】
一般に、経口投与用の用量は、1mg/kg/日〜500mg/kg/日、注射用の用量は、1mg/kg/日〜100 mg/kg/日である。吸入用の用量は、0.01mg/kg/日〜5mg/kg/日である。用量が、経口または注射投与用で5mg〜50mg/kg、1日2〜3回、5〜10日間;吸入用で0.1〜0.5mg/kg、1日1〜5回、5〜10日間であるのが好ましい。
【0043】
治療は、咳または関連する状態が起こった後またはその時点で開始され、咳または関連する状態が終わるまで継続するのが好ましい。投与が、1日1〜4回、3〜30日間行われるのが適切である。
【0044】
所望の用量を、一回で、または適当な間隔を開けて分割して、たとえば、1日当たり2、3、4回またはそれ以上に分けて投与することができる。
【0045】
式(1)および/または式(2)で示される化合物は、たとえば、単位投与剤形当たり有効成分を0.1〜500mg含む単位投与剤形で投与されるのが都合がよい。本明細書で用いる用語「単位用量」は、バイアルなどの個別にパッケージングされた単位用量のみならず、バイアルから注射器に分注されたアリコートおよび輸液用容器に入れた点滴用組成物をも包含する。
【0046】
治療用途においては、式(1)および/または式(2)で示される化合物を、未加工の化学物質として投与することも可能であるが、有効成分を医薬製剤として提供するのが好ましい。
【0047】
したがって、本発明は、式(1)および/または式(2)で示される化合物またはその医薬的に許容しうる誘導体とともに1種以上の医薬的に許容しうる担体、および必要に応じて他の治療および/または予防成分を含む医薬製剤を提供する。担体は、製剤の他の成分と適合するという意味では「許容しうる」ものでなければならないが、レシピエントにとっては有害であってはならない。
【0048】
医薬製剤として、経口、直腸、経鼻または非経口(筋肉内、皮内、皮下および静脈内など)投与に適した製剤、または消化管への投与に適した剤形、または吸入あるいは送気などによる気道(鼻腔など)への投与に適した剤形、または皮内もしくは皮下埋め込み用の製剤、または経皮パッチ用の製剤が挙げられる。製剤は、適切な場合には、個別の投与剤形で提供されるのが好都合であり、調剤の分野で公知の方法のいずれかによって製造することができる。すべての方法は、活性化合物を液体担体もしくは微粉の固体担体もしくやその両方と合わせ、次いで、要すれば、所望の製剤に成形するステップを包含する。
【0049】
経口投与に適した医薬製剤は、既定量の有効成分を含むカプセル剤、カシェ剤または錠剤などの個別の単位として;散剤または顆粒剤として;液剤、懸濁剤または乳液剤として投与することができる。有効成分は、ボーラス、舐剤またはペースト剤として投与することもできる。経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、結合剤などの慣例の賦形剤、増量剤、滑沢剤、崩壊剤または湿潤剤を含んでもよい。錠剤は、当業界で公知の方法にしたがってコーティングされてもよい。経口液体製剤は、たとえば、油性懸濁液、液剤、乳液剤、シロップ剤またはエリキシル剤の水溶液などの形態であってもよく、あるいは、水または他の適当なビヒクルで使用前に戻す乾燥製品として提供されてもよい。このような液体製剤は、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒク(食用油が含まれる)ルまたは保存剤などの慣例の添加剤を含んでもよい。
【0050】
式(1)および/または式(2)で示される化合物は、非経口投与(たとえば、ボーラス注射または持続注入などの注射)用に製剤されてもよく、アンプル、充填済注射器、少量注入または保存剤を加えた複数回投与用容器などの単位投与剤形で投与されてもよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液または乳液として製剤されてもよく、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの調剤に必要な薬剤を含んでもよい。あるいは、有効成分が、使用前に滅菌、パイロジェンフリーの水などの適当なビヒクルで戻すための、滅菌固体の無菌的単離によるか、または溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形状であってもよい。
【0051】
直腸投与には、担体が固体である単位用量座薬が好ましい。適当な担体として、ココアバターおよび当業界で通例用いられる物質が挙げられ、座薬は、通例、有効化合物を軟化もしく融解した担体と混合し、次いで、型に入れて冷やし、成型することによって形成される。
【0052】
気道への投与(鼻腔内投与など)には、気道への投与のために当業界で用いられるいずれかの方法および製剤によって、式(1)および/または式(2)で示される化合物を投与することができる。
【0053】
したがって、一般に、式(1)および/または式(2)で示される化合物は、溶液または懸濁液または乾燥粉末の形態で投与することができる。
【0054】
溶液および懸濁液は、たとえば、水単独(たとえば、滅菌またはパイロジェンフリー水など)または水と生理的に許容しうる共溶媒(たとえば、エタノール、プロピレングリコール、PEG 400などのポリエチレングリコールなど)から製造される水性液であるのが好ましい。
【0055】
このような溶液または懸濁液は、たとえば、保存剤(塩化ベンザルコニウムなど)、ポリソルベートなどの可溶化剤/界面活性剤(たとえば、Tween(登録商標)80、Span(登録商標)80、塩化ベンザルコニウムなど)、緩衝液、等張性調節剤(たとえば、塩化ナトリウムなど)、吸収促進剤および粘度増強剤などの他の賦形剤をさらに含むことができる。懸濁液はさらに、懸濁化剤(たとえば、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)を含んでもよい。
【0056】
溶液または懸濁液は、スポイト、ピペットまたはスプレーなどの慣例の手段によって鼻腔に直接適用される。製剤は、単回または複数回形態で提供される。後者の場合、用量計測手段が提供されるのが好ましい。スポイトまたはピペットの場合、用量の計測は、適切な規定量の溶液または懸濁液を患者に投与することによって達成される。スプレーの場合、用量の計測は、たとえば、計測噴霧スプレーポンプなどによって達成される。
【0057】
気道投与のために、エアロゾル製剤を用いてもよく、式(1)および/または式(2)で示される化合物は、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンもしくはジクロロテトラフルオロエタンなどのクロロフルオロカーボン(CFC)、二酸化炭素またはその他の適当なガスなどの適当な高圧ガスの入った加圧パックで提供される。エアロゾルはまた、レシチンなどの界面活性剤を含むのが好都合である。薬物の用量は、定量噴射バルブによってコントロールすることができる。
【0058】
あるいは、式(1)および/または式(2)で示される化合物は、ラクトース、デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのデンプン誘導体およびポリビニルピロリドン(PVP)といったような適当な粉末原料中の該化合物の混合粉末などの乾燥粉末の形態で提供されてもよい。粉末担体は、鼻腔内でゲルを形成するのが好都合である。粉末組成物は、たとえば、それから吸入によって粉末が投与される、ゼラチンなどのカプセルもしくはカートリッジまたはブリスターパックなどの単位投与剤形で提供される。
【0059】
鼻腔内製剤などの気道への投与を意図された製剤において、化合物は、一般に、5ミクロン以下などの小さい粒径を有する。このような粒径は、微粒子化などの当業界で公知の手段によって得ることができる。
【0060】
望ましい場合、有効成分が持続的に放出されるように適合された製剤を用いることができる。
【0061】
式(1)および/または式(2)で示される化合物は、たとえば、抗生物質、抗ウイルス薬といったような抗感染症薬、および気道状態の治療薬などの他の治療薬と組み合わせて用いてもよい。したがって、さらなる態様において、本発明は、式(1)および/または式(2)で示される化合物またはその医薬的に許容しうる誘導体とともにもう1つの治療的活性薬剤を含む組み合わせを提供する。
【0062】
上述の組み合わせは、医薬製剤の形態での使用のために提供されるのが好都合であり、したがって、上記の組み合わせとともに医薬的に許容しうる担体を含むこのような製剤は、さらなる本発明の態様である。
【0063】
このような組み合わせの個々の成分は、別々または組み合わせでの医薬製剤において、順次または同時に投与することができる。
【0064】
式(1)および/または式(2)で示される化合物を治療において活性のある第2の治療薬とともに用いる場合、各化合物の用量は、各化合物を単独で用いる場合の用量と同じであっても異なってもよい。適当な用量は、当業者によって容易に理解される。
【0065】
式(1)および/または式(2)で示される化合物およびその医薬的に許容しうる誘導体は、類縁構造をもつ化合物の製造のための当業界で公知のいずれかの方法によって製造することができる。
【0066】
本発明のもう1つの態様において、本発明は、気道状態の治療のための化合物をスクリーニングする方法であって、以下のステップ:
細胞表面上に減少したシアリル複合糖質を有する細胞を、試験化合物に曝露させること;および
細胞を試験化合物に曝露させた後に、細胞の生存能力の回復を測定すること;
を含む方法を提供する。
【0067】
本発明に基づいて、呼吸細胞の表面上のシアリル複合糖質の修復を促進するため;またはシアリル複合糖質生合成を促進する能力によって細胞の生存能力の回復を促進するために、他の化合物を用いてもよい。したがって、呼吸状態に至る、呼吸面に影響を及ぼす因子に応答する正常な生物学的機能のためのより良い状態への細胞修復は、もしシアリル複合糖質が細胞の表面上で修復されるならば達成されうる。
【0068】
この方法は、表面上のシアリル複合糖質が減少している細胞、好ましくは呼吸細胞を得ることを含む。この細胞は、その正常に機能する能力に影響を及ぼす因子に攻撃されやすい「裸細胞」と呼ばれる。
【0069】
裸細胞は、呼吸細胞などの正常な細胞をノイラミニダーゼに曝露させて細胞表面上のシアリル複合糖質からシアル酸を除去することによって誘導される。次いで、この細胞を、表面上のシアリル複合糖質を修復する試験化合物の能力によって評価する。試験化合物は、シアリル複合糖質生合成を促進することによって、あるいは細胞表面上のシアリル複合糖質の修復をもたらす他の手段によって、シアリル複合糖質を修復する。
【0070】
細胞表面上のシアリル複合糖質を修復する能力は、細胞の生存能力の修復によって評価される。細胞の生存能力は、当業者に利用可能ないずれかの方法によって評価される。しかしながら、細胞の生存能力は、細胞増殖のための細胞の能力によって決定される。これは、複製細胞の新たに合成されたDNAに取り込まれたBrdUを測定する細胞増殖ELISAキットなどの標準的細胞増殖キット(これに限定されるものではない)の使用によって、あるいは[
3H]-チミジンに基づく細胞増殖アッセイの使用によって評価される。
【0071】
該能力は、試験化合物への細胞の曝露の結果として細胞上に修復されたシアリル複合糖質の数を決定することによって評価してもよい。これは、シアリル複合糖質に対する抗体の使用(これに限定されるものではない)などの当業者に入手可能な手段によって評価することができる。
【0072】
もう1つの実施態様において、本発明は、患者における呼吸状態を治療または予防する方法であって、スクリーニング法によって同定される少なくとも1つの化合物を患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0073】
最終的に、これまでに本明細書に記載したように、本発明は、特に記載したもの以外の変化、修飾および/または付加の影響を受けてもよく、本発明は、これまでに本明細書に記載したように、記載の範囲の中にあるさまざまな他の修飾および/または付加であると理解されるべきそのような変化、修飾および/または付加のすべてを包含することが理解される。以下の実施例は、説明を目的とするものであり、本発明の限定であると解釈されるべきではない。
【0074】
実施例
実施例で用いた一般的方法:
NMRは、Bruker Avance 300、Xwin-NMR version 3.5、DPX 300Aで記録した。
MSは、ESI(エレクトロスプレーオン化プローブ)を用い、質量分析計Waters Micromass ZMDで記録した。システムは、ソフトウェアを用いて実行させた。
フラッシュクロマトグラフィーは、シリカゲル60 F
245(E. Merck)で行った。
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、シリカゲルプレコートプレート(E. Merck)で行った。
HPLCは、Waters alliance 2690分離モジュールで行い、Waters二波長2487 UV 検出器で検出し、ソフトウェアは、Waters Millenium 32であった。
細胞培養および細胞生存能力アッセイ
【0075】
方法1
使用した細胞:小気道上皮細胞(SAEC)
培地:SAGM Bulletキット(SABM+増殖サプリメント)
および/または
使用した細胞:正常ヒト気管支上皮細胞(NHBE)
培地:BEGM Bulletキット(BEBM+増殖サプリメント)
【0076】
実験の詳細:
凍結保存細胞(l×l0
6細胞/1ml)を解凍し、175cm
2ペトリ皿にて完全培地中で培養した。翌日、培地を除去し、新鮮な培地と交換した。細胞を約5〜6日間培養して、70〜80%の集密度を得た。増殖期の間、培地は、1日置きに交換する。
【0077】
適当な集密度が得られたら、培地を除去する。細胞の単層をi×PBSで濯ぐ。PBSの除去に続いて、2mlのトリプシン+EDTAを加える。細胞を室温にて2分間穏やかに揺らす。1×PBSで細胞を収穫し、200gで10分間遠心分離する。ペレットを5×l0
4/mlに再懸濁させた。96ウエルプレートにて、細胞をl00μl/ウエル(約5000細胞/ウエル)に等分した。細胞を37℃にて24時間インキュベートする。
【0078】
細菌ノイラミニダーゼ(ウェルシュ菌からのもの)10μlを各ウエルに加え、最終濃度をSAECでは0.0lU/mlおよびNHBEでは0.008u/mlにした。次いで、細胞を37℃にて6時間インキュベートした。
【0079】
1000rpmにて10分間プレートの遠心分離を行い、培地を吸引し、200μlの新鮮な培地を加えた。プレートを再度遠心分離し、培地を100μlの新鮮な培地と交換した。
【0080】
試験用の化合物は、所望濃度の6xからなった;20μlの化合物を各ウエルに3回ずつ加えた。次いで、細胞を37℃にて24時間インキュベートした。
【0081】
細胞を、10μlのBrdUラベルで、37℃にて一夜(約16時間)標識した(細胞増殖ELISAキット、Roche)。
【0082】
標識培地を除去し、製造者によって供給された固定液で細胞を固定し、室温にて30分間変性させた。
【0083】
固定液の除去に続いて、100μlの抗BrdU-POD(製造者が推奨する適当な濃度で)を各ウエルに加えた。プレートを室温にて90分間インキュベートした。
【0084】
抗体複合体を除去し、ウエルを200μlの洗浄液(供給されたもの)で3回洗浄した。洗浄液を除去した後、100μlの基質溶液(供給されたもの)を加え、室温にて30分間インキュベートした。50μlの1M H
2S0
4を加えて反応を停止した。450nm(参照波長690nm)にて、サンプルの吸光度を測定した。
【0085】
ウェルシュ菌由来のノイラミニダーゼ(NA)0.01U/mlで処理した小気道上皮細胞(SAEC):
【0086】
ウェルシュ菌由来のノイラミニダーゼ(NA)0.008U/mlで処理した正常ヒト気管支上皮細胞(NHBE):
【0087】
細胞生存能力アッセイは、通常、±10%の操作上の逸脱がある。したがって、コントロール(ノイラミニダーゼで処理したもの)の生存能力に対して細胞生存能力≧120%を示す結果のみが、有意であるとみなされる。肯定的な結果を示す化合物が、48時間以内に細胞生存能力を修復できたことが示される。式(1)および/または式(2)で示される化合物のうち、細胞毒性が低く最も活性のある化合物は、N-アセチルマンノサミン(化合物(1))およびN-アセチルノイラミン酸(化合物(2))である。
【0088】
方法2
使用した細胞:小気道上皮細胞(SAEC)
培地:SAGM Bulletキット(SABM+増殖サプリメント)
および/または
使用した細胞:正常ヒト気管支上皮細胞(NHBE)
培地:BEGM Bulletキット(BEBM+増殖サプリメント)
【0089】
実験の詳細:
凍結保存細胞(l×l0
6細胞/1ml)を解凍し、175cm
2ペトリ皿にて完全培地中で培養した。翌日、培地を除去し、新鮮な培地と交換した。細胞を約5〜6日間培養して、70〜80%の集密度を得た。増殖期の間、培地は、1日置きに交換した。
【0090】
適当な集密度が得られたら、培地を除去した。細胞の単層をi×PBSで濯いだ。PBSの除去に続いて、2mlのトリプシン+EDTAを加えた。細胞を室温にて2分間穏やかに揺らした。1×PBSで細胞を収穫し、200gで10分間遠心分離した。ペレットを5×l0
4/mlに再懸濁させた。96ウエルプレートにて、細胞をl00μl/ウエル(約5000細胞/ウエル)に等分した。細胞を37℃にて24時間インキュベートした。
【0091】
ウイルスノイラミニダーゼ(インフルエンザウイルスNWS/G70Cからのもの)10μlを各ウエルに加え、最終濃度を0.0l7U/mlにした。次いで、細胞を37℃にて6時間インキュベートした。
【0092】
1000rpmにて10分間プレートの遠心分離を行い、培地を吸引し、200μlの新鮮な培地を加えた。プレートを再度遠心分離し、培地を100μlの新鮮な培地と交換した。
【0093】
試験用の化合物は、所望濃度の6xからなった;20μlの化合物を各ウエルに3回ずつ加える。次いで、細胞を37℃にて24時間インキュベートする。
【0094】
細胞を、10μlのBrdUラベルで、37℃にて一夜(約16時間)標識する(細胞増殖ELISAキット、Roche)。
【0095】
標識培地を除去し、製造者によって供給された固定液で細胞を固定し、室温にて30分間変性させた。
【0096】
固定液の除去に続いて、100μlの抗BrdU-POD(製造者が推奨する適当な濃度で)を各ウエルに加えた。プレートを室温にて90分間インキュベートする。
【0097】
抗体複合体を除去し、ウエルを200μlの洗浄液(供給されたもの)で3回洗浄した。洗浄液を除去した後、100μlの基質溶液(供給されたもの)を加え、室温にて30分間インキュベートした。50μlの1M H
2S0
4を加えて反応を停止した。450nm(参照波長690nm)にて、サンプルの吸光度を測定した。
【実施例1】
【0098】
N-アセチル-D-マンノサミン(1)の製造
[化合物(1)、式(1)、B=H、A=NHCOCH
3、R
1=R
2=R
3=R
4=H]
キチンの加水分解によって得られるN-アセチル-D-グルコサミン1 gを3mlの水に溶解し、次いで、30% NaOH溶液を用いてpH>11に調節した。混合物を20℃-40℃にて時間48静置した。得られる溶液を、5N H
2SO
4で中和してpH 6.5-7.0にし、次いで、減圧蒸発乾固した。固体をエタノール中で10分間還流し、室温に冷却し、濾過した。濾液を減圧蒸発乾固して、
1H-NMRにより測定して、85% N-アセチル-D-マンノサミンおよび15% N-アセチル-D-グルコサミンを含む白色固体を得た。固体を、エタノール/イソプロパノール/EAから分別再結晶して、標記化合物を白色固体で得た(125mg、N-アセチル-D-マンノサミンの変換率20%に基づいて62.5%)。未反応のN-アセチル-D-グルコサミン(0.8g)は、次の反応バッチに再利用することができた。
1H-NMR(D
2O) δ(ppm)
5.15(d、0.7H)、3.85-3.32(m、6.3H)、1.99(s、3H)。
MS 222(M+1)
【実施例2】
【0099】
N-アセチル-ノイラミン酸ナトリウム塩(2)の製造
[化合物(2)、式(2)、R
8=R
10=R
11=R
12=R
13=H、R
9=Na]
水(15ml)中のN-アセチルマンノサミン(2.7g、12.2 mmole)およびピルビン酸ナトリウム(2.7g、24.5mmole)のpH 7.0-7.5の溶液に、pH 7.0-7.5にて水(3ml)中のN-アセチルマンノサミン(0.54g)およびピルビン酸ナトリウム(0.54g)の反応混合物中のN-アセチルノイラミン酸リアーゼ [EC 4.1.3.3](25単位)を含む透析バッグ(分画MW 20,000)を加えた。反応混合物を60 r.p.m.で30℃にて5日間振とうした。酵素バッグを除去し、新たなバッチの反応に再利用した。反応混合物を水(15ml)で希釈し、アンバーライトIRA-400(HCOO
- 型)(150ml)を通した。次いで、樹脂を水(300ml)で洗浄し、0.5M HCOOH溶液で溶離した。溶出液を集め、真空蒸発乾固した。残渣を水(2ml)に溶解し、次いで、氷酢酸(10ml)で4℃にて一夜希釈し、結晶を濾過し、EtOHで洗浄し、乾燥して、N-アセチルノイラミン酸を白色結晶粉末で得た(1.5g、39.8%)。
【0100】
1H-NMR(D
2O) δ(ppm)
4.00(m、1H)、3.97(m、1H)、3.87(d、1H)、3.77(dd、1H)、3.67(m、1H)、3.55(dd、1H)、3.48(d、1H)、2.24(dd、1H、J=13.2 H
Z、5.1H
Z)、1.98(s、3H)、1.83(dd、1H、J=13.2 H
Z、11.5 H
Z)。
MS 310(M+1)
【0101】
N-アセチルノイラミン酸(1g、3.23 mmol)を水(20ml)に溶解し、次いで、NaHCO
3(0.26g、3.09mmol、pH 6-6.5)とともに撹拌し、凍結乾燥した後、標記生成物を白色固体で得た(1.05g、98%)。
【実施例3】
【0102】
N-アセチル-ノイラミン酸エチル(3)の製造
無水エタノール(75ml)中のN-アセチル-ノイラミン酸(1g、3.23mmole)の懸濁液に、塩化アセチル1.5mlを加えた。混合物を密封し、室温にて16時間撹拌して、透明な溶液を形成させた。得られる溶液を真空蒸発乾固した。白色固体を酢酸エチルで洗浄し、真空乾燥して、標記化合物を白色固体で得た(1g、91.7%)。
1H-NMR(D
2O) δppm)
4.27(q、2H)、4.04(m、2H)、3.91(d、1H)、3.78(dd、1H)、3.68(dd、1H)、3.57(dd、1H)、3.52(d、1H)、2.28(dd、1H)、2.01(s、3H)、1.88(dd、1H)、1.28(t、3H)。
MS 338(M+1)、360(M+23)
【実施例4】
【0103】
エチル 5-アセトアミド-4,7,8,9,-テトラ-o-アセチル-3,5-ジデオキシ-β-D-グリセロ-D-ガラクト-2-ノヌロピラノソネート(5-アセトアミド-4,7,8,9-テトラ-o-アセチル-ノイラミン酸エチル)(4)の製造
無水酢酸(0.72g)および過塩素酸の60%水溶液(5μl)の溶液に、激しく撹拌しながら、40℃にて、5-アセトアミド-ノイラミン酸エチル(230mg、0.68mmol)を30分間にわたって分けて加えた。得られる混合物を40℃にて2時間撹拌した。次いで、室温に冷却し、冷水(10ml)、飽和硫酸アンモニウムで希釈し、酢酸エチル(40ml×3)で抽出した。有機抽出物を合わせ、飽和NaHCO
3溶液および水で連続的に洗浄した。有機層を乾燥(硫酸マグネシウム)し、真空蒸発乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、ヘキサンで希釈して、標記化合物を白色結晶で得た(223mg、65%)。
1H-NMR(CDCl
3) δ(ppm)
5.71(m、1H)、5.36(dd、1H、J=1.5H
Z、5.6H
Z)、5.25(ddd、1H、J=2.4H
Z、7.5H
Z)、5.22(ddd、1H、J=11.4H
Z、5.4H
Z、9.5H
Z)、4.51(dd、1H、J=12.4H
Z)、4.47(d、1H、J=0.8H
Z)、4.21-4.13(m、4H)、4.03(dd、1H)、2.26(ddd、1H、12.8H
Z)、2.19(dd、1H)、2.15、2.11、2.03、2.02、and 1.91(5s、15H)、1.29(t、3H、J=7.2H
Z)。
MS 506(M+1)
【実施例5】
【0104】
シチジン-5’-モノホスホ-5-アセトアミド-3,5,-ジデオキシ-β-D-グリセロ-D-ガラクト-2-ノヌロピラノソン酸(CMP-シアル酸)(5)の製造
N-アセチルノイラミン酸(100mg、0.32mmole)およびシチジン-5’-三リン酸ナトリウム塩(156.3mg、0.32mmole)を、MgCl
2(20mM)を含むTris-HCl緩衝液(100mM、pH8.8)32mlに溶解した。この溶液に、CMP-Neu5Acシンセターゼ(5mg、髄膜炎菌(N. meningitidis)由来)を加えた。TLC(シリカゲル、EtOH:1M NH
4HCO
3=7:3)によってモニターしながら、反応混合物を37℃にて2-3時間インキュベートした。反応混合物をメタノール(50ml)で希釈し、濾過した。濾液を減圧蒸発乾固した。残渣をBio Gel P-2樹脂(50ml)でクロマトグラフィーに付し、凍結乾燥した後、標記化合物を白色結晶粉末で得た(147mg、75%)。
【0105】
HPLC分析:
C-18カラム
移動相:緩衝液A(8mM 硫酸水素テトラブチルアンモニウムを補足した、0.1M リン酸カリウム緩衝液、pH5.3)および緩衝液B(70%緩衝液A+30%メタノール、pH 5.9)
勾配条件:100%緩衝液Aで2.5分間、0-40%緩衝液Bで7.5分間、40-100%緩衝液Bで1分間、100%緩衝液Bで4分間、100-0%緩衝液Bで1分間、次いで、100%緩衝液Aで4分間の平衡相
流速:1ml/分
270nmにてU.V.検出
【0106】
1H-NMR(D
2O) δ(ppm)
7.87(d、1H、J=7.6 H
Z)、6.25(d、1H、J=7.6 H
Z)、5.91(d、1H、J=4.4H
Z)、4.26-4.20(m、2H)、4.17-4.10(m、3H)、4.09-3.98(m、2H)、3.90-3.80(m、3H)、3.59-3.40(m、2H)、2.42(dd、1H、J=4.8、13.2 H
Z)、1.98(s、3H)、1.60(dt、1H、J=5.6、12.6 H
Z)。
MS 635(M
2-+Na
+)
【実施例6】
【0107】
5-アセトアミド-8,9-O-イソプロピリジン-ノイラミン酸エチル(6)の製造
無水DMF(2ml)中の5-アセトアミドノイラミン酸エチル(150mg、0.445mmole)の溶液に、2,2-ジメトキシプロパン(1ml、8mmole)およびアンバーライト15(50mg)を加えた。混合物を60℃にて7時間撹拌し、次いで、室温に冷却し、濾過した。濾液を減圧蒸発乾固した。TLC(シリカゲル、EA/MeOH=10:4)が、反応の完了を示した。残渣をEA/MeOH=10/1(1ml)に再溶解し、次いで、フラッシュカラムクロマトグラフィーに付した。必要な画分を合わせ、真空蒸発乾固して、標記化合物を白色形態で得た(135mg、75%)。
1H-NMR(D
2O) δ(ppm)
4.28-4.23(m、2H)、4.23-4.11(m、2H)、4.08-3.92(m、2H)、3.96-3.52(m、3H)、2.31(dd、1/3H)、2.23(dd、2/3H)、1.99(s、3H)、1.82(dd、2/3H)、1.70(dd、1/3H)、1.36(s、3H)、1.32(s、3H)、1.25(t、3H)。
MS 428(M+Na)
【実施例7】
【0108】
小気道上皮細胞(SAEC)の生存能力の回復における化合物(1)の活性
化合物(1) [式(1)、B=H、A=NHCOCH
3、R
1=R
2=R
3=R
4=H]
【実施例8】
【0109】
正常ヒト気管支/気管上皮細胞(NHBE)の生存能力の回復における化合物(1)の活性
【実施例9】
【0110】
SAECの生存能力の回復における化合物(2)の活性
化合物(2) [式(2)、R
8=R
10=R
11=R
12=R
13=H、R
9=Na]
【実施例10】
【0111】
NHBEの生存能力の回復における化合物(2)の活性
【実施例11】
【0112】
SAECの生存能力の回復における化合物(3)の活性
化合物(3) [式(2)、R
8=R
10=R
11=R
12=R
13=H、R
9=C
2H
5]
【実施例12】
【0113】
NHBEの生存能力の回復における化合物(3)の活性
【実施例13】
【0114】
SAECの生存能力の回復における化合物(4)の活性
化合物(4) [式(2)、R
8=H、R
9=C
2H
5、R
10=R
11=R
12=R
13=CH
3CO]
【実施例14】
【0115】
NHBEの生存能力の回復における化合物(4)の活性
【実施例15】
【0116】
SAECの生存能力の回復における化合物(5)の活性
化合物(5) [式(2)、R
8=シチジン一リン酸塩、R
9=R
10=R
11=R
12=R
13=H]
【実施例16】
【0117】
NHBEの生存能力の回復における化合物(5)の活性
【実施例17】
【0118】
SAECの生存能力の回復における化合物(6)の活性
化合物(6) [式(2)、R
8=H、R
9=C
2H
5、R
10=R
11=H、R
12 およびR
13=>C(CH
3)
2]
【実施例18】
【0119】
NHBEの生存能力の回復における化合物(6)の活性
【実施例19】
【0120】
SAECの生存能力の回復における化合物(7)の活性
化合物(7) [式(1)、B=H、A=NHCOCH
3、R
1=R
2=R
3=R
4=COCH
3]
【実施例20】
【0121】
NHBEの生存能力の回復における化合物(7)の活性
【実施例21】
【0122】
SAECの生存能力の回復における化合物(8)の活性
化合物(8) [式(1)、B=H、A=NHCOCH
3、R
1=H、R
2=R
3=R
4=COCH
3]
【実施例22】
【0123】
NHBEの生存能力の回復における化合物(8)の活性
【実施例23】
【0124】
SAECの生存能力の回復における化合物(9)の活性
化合物(9) [式(1)、A=H、B=NHCOCH
3、R
1=R
2=R
3=R
4=H]
【実施例24】
【0125】
NHBEの生存能力の回復における化合物(9)の活性
【実施例25】
【0126】
SAECの生存能力の回復におけるD-グルコースの活性
【実施例26】
【0127】
NHBEの生存能力の回復におけるD-グルコースの活性
【実施例27】
【0128】
SAECの生存能力の回復における高濃度の化合物(1)の活性
【実施例28】
【0129】
NHBEの生存能力の回復における高濃度の化合物(1)の活性
【実施例29】
【0130】
SAECの生存能力の回復における高濃度の化合物(2)の活性
【実施例30】
【0131】
HBEの生存能力の回復における高濃度の化合物(2)の活性
【実施例31】
【0132】
SAECの生存能力の回復における高濃度の化合物(9)の活性
【実施例32】
【0133】
NHBEの生存能力の回復における高濃度の化合物(9)の活性
【実施例33】
【0134】
SAECの生存能力の回復における高濃度の化合物(1)(85%)および化合物(9)(15%)の混合物の活性
【実施例34】
【0135】
NHBEの生存能力の回復における高濃度の化合物(1)(85%)および化合物(9)(15%)の混合物の活性
【実施例35】
【0136】
SAECの生存能力の回復における化合物(1)(85%)および化合物(9)(15%)の混合物の活性
【実施例36】
【0137】
NHBEの生存能力の回復における化合物(1)(85%)および化合物(9)(15%)の混合物の活性
【実施例37】
【0138】
モルモットにおける咳実験[9][10]
雄性モルモットを囲いに入れて飼い、水および食餌を自由にとらせる。この実験は、Bio21 Institute Animal Ethics Committeeによって承認された。24匹の覚醒雄性ハートレイモルモット(500-550g)をA、B、Cの3つのグループ(各グループ8匹の動物)に分け、第1日に、エアロゾルを介して5分間、水(グループ)BおよびCまたは生理食塩水単独(グループA)中のノイラミニダーゼ(Sigma N2133、凍結乾燥粉末、Type X、150-400単位/mg タンパク質)の5単位/ml溶液のいずれかで前処理した。次いで、第1、2および3日に、500 mg/kgの化合物(1)(グループC)あるいは水のみ(グループAおよびB)のいずれかを、モルモットに経口投与した。第4日に、すべての動物を0.5Mクエン酸溶液で処置した(噴霧、10分間の曝露)。次いで、咳の頻度、1回目、2回目および3回目の咳までの時間、ならびに最初の鼻こすりまでの時間を、15分間にわたって記録した。結果は、化合物(1)が、ノイラミニダーゼによって引き起こされたダメージを修復するのに役立つという傾向を示した。
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
同じ実験プロトコルによって、化合物(1)の代わりに化合物(2)を用いると、同様の結果が得られた。
【0143】
参考文献
[1] Edelman、G.M. and Crossin、K.L. Cell adhesion molecules:Implications for a molecular histology. Annu. Rev. Biochem. 60, 155-190(1991).
[2] Varki A. Divesity in the sialic acids. Glycobiology 2, 25-40(1992).
[3] Schauer, R., et al. Biochemistry and role of sialic acids. In:Biology of the sialic acids.
A. Rosenberg, ed. New York, USA. pp 7-67(1995).
[4] Rens-Domiano, S. and Reisine, T. Structural分析 and functional role of the carbohydrate component of somatostatin receptors. J. Biol. Chem. 266, 20094-20102(1991).
[5] Keppler, O. T., et al. Science 284(5418), 1372-1376(1999).
[6] Miyata、T., et al. Archives internationales de pharmacodynamie et de therapie ,296, 202-9(1988).
[7] Miyata、T., et al. Archives internationales de pharmacodynamie et de therapie, 304、277-89(1990).
[8] Amir, S.M., et al. Nature, 211(5052), 976-7(1966).
[8b] B. Galeano et al. Mutation in the key enzyme of sialic acid biosynthesis causes severe glomerular proteinuria and is rescued by N-acetylmannosamine. J. Clin. Invest. 2007 117(6) 1585 -1594.
[8c] U.S. Provisional Application No. 60/932,451 filed 31 May 2007.
[9] Laude, E.A. et al, “A comparative study of the effects of Citric acid, Capsaicin and Resiniferatoxin on the Cough challenge in Guinea-pig and Man”. Pulmonary Pharmacology 6, 171-175(1993).
[10] Tanaka、M. et al, Mechanisms of Capsaicin- and Citric-acid-induced Cough Reflexes in Guinea pig. J. Pharmacol. Sci., 99, 77-82(2005).
【0144】
将来の特許出願は、本願に基づくか、または本願から優先権を主張して出願することができる。以下の請求の範囲が、例示のみを目的として提供されるものであり、いずれかのそのような将来の出願における請求の範囲を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。特徴は、後日、発明(1つまたは複数)をさらに定義するか、または再定義するために、請求の範囲に付加されるか、または削除されてもよい。
【0145】
最後に、本明細書において概説した本発明の精神から逸脱することなく、本願の様々な他の修飾および/または変更がなされうることを理解すべきである。