特許第6057756号(P6057756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057756
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/01 20060101AFI20161226BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20161226BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   B60C5/01 A
   B60C5/00 F
   B60C1/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-25835(P2013-25835)
(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-151875(P2014-151875A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 健史
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 政弘
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−040959(JP,A)
【文献】 特開2001−001726(JP,A)
【文献】 特開2007−302072(JP,A)
【文献】 特開平04−334603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/01
B60C 1/00
B60C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏面を構成するトレッドゴムと、
前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側に配されるクラウン部、前記クラウン部のタイヤ幅方向両側からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部、及び、前記サイドウォール部のタイヤ径方向内側に連なり、リムのビードシート部の外周にセットされる一対のビード部を有し、樹脂により形成されたシェルとを備え、
前記シェルのサイドウォール部に、タイヤ内面から突出し且つタイヤ周方向に沿って延びる一対のリブが設けられ、前記一対のリブが、断面1次の振動モードにおける変形の節となる箇所を挟んで配置されていて、
タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面からビードトゥに至るタイヤ内面の長さL、前記一対のリブの間隔D、及び、その一対のリブで挟まれた箇所に変形の節を持つ前記振動モードの次数n=1が、D≦0.1L/(2n+1)の関係を満足し、
タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面から前記一対のリブの中間までのタイヤ内面に沿った長さL1の前記長さLに対する比L1/Lが、0.35〜0.6である空気入りタイヤ。
【請求項2】
踏面を構成するトレッドゴムと、
前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側に配されるクラウン部、前記クラウン部のタイヤ幅方向両側からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部、及び、前記サイドウォール部のタイヤ径方向内側に連なり、リムのビードシート部の外周にセットされる一対のビード部を有し、樹脂により形成されたシェルとを備え、
前記シェルのサイドウォール部に、タイヤ内面から突出し且つタイヤ周方向に沿って延びる一対のリブが設けられ、前記一対のリブが、断面2次の振動モードにおける変形の節となる箇所を挟んで配置されていて、
タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面からビードトゥに至るタイヤ内面の長さL、前記一対のリブの間隔D、及び、その一対のリブで挟まれた箇所に変形の節を持つ前記振動モードの次数n=2が、D≦0.1L/(2n+1)の関係を満足し、
タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面から前記一対のリブの中間までのタイヤ内面に沿った長さL2の前記長さLに対する比L2/Lが、0.35〜0.6である空気入りタイヤ。
【請求項3】
踏面を構成するトレッドゴムと、
前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側に配されるクラウン部、前記クラウン部のタイヤ幅方向両側からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部、及び、前記サイドウォール部のタイヤ径方向内側に連なり、リムのビードシート部の外周にセットされる一対のビード部を有し、樹脂により形成されたシェルとを備え、
前記シェルのサイドウォール部に、タイヤ内面から突出し且つタイヤ周方向に沿って延びる一対のリブが設けられ、前記一対のリブが、断面3次の振動モードにおける変形の節となる箇所を挟んで配置されていて、
タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面からビードトゥに至るタイヤ内面の長さL、前記一対のリブの間隔D、及び、その一対のリブで挟まれた箇所に変形の節を持つ前記振動モードの次数n=3が、D≦0.1L/(2n+1)の関係を満足し、
タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面から前記一対のリブの中間までのタイヤ内面に沿った長さL3の前記長さLに対する比L3/Lが、0.5〜0.75である空気入りタイヤ。
【請求項4】
タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面からビードトゥに至るタイヤ内面の長さL、前記一対のリブの幅W、及び、その一対のリブで挟まれた箇所に変形の節を持つ前記振動モードの次数nが、W≦0.5L/(2n+1)の関係を満足する請求項1〜3いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記リブの厚みが、タイヤ最大幅位置における前記シェルの厚みの30%以上である請求項1〜4いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記リブが、前記シェルの本体を形成する樹脂よりも高モジュラスの材料で形成されている請求項1〜5いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂で形成されたシェルによりタイヤ骨格が構成された空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般の空気入りタイヤでは、複数のコードをゴム被覆してなるカーカスプライによりタイヤ骨格が構成され、タイヤ内面に設けられたインナーライナーゴムにより空気圧が保持される。また、タイヤのクラウン部には、カーカスプライを補強するためのベルトや、周方向剛性を高めるためのベルト補強層などのコード補強材が設けられる。
【0003】
一方、タイヤの軽量化や製造コストの低減などを目的として、カーカスプライやインナーライナーゴムを具備せずに、タイヤ形状を有するシェルによりタイヤ骨格を構成した空気入りタイヤも提案されている(例えば、特許文献1〜5)。シェルは、例えばポリウレタンなどの樹脂材料により形成され、その製造には注型や射出成型が利用される。
【0004】
近年、自動車の高級化に伴って静粛性が重視されており、上記のようにシェルで骨格を構成したタイヤにおいてもロードノイズを低減することが望まれる。走行中の空気入りタイヤは路面の凹凸に応じて振動し、これが車室内に伝達されることによってロードノイズを発生するが、所定の周波数帯域についてのタイヤ振動は、左右のビード部を固定端としてその間に定常波をつくり、ラジアル方向に振動モードを形成する。
【0005】
一般の空気入りタイヤのロードノイズ対策としては、所定の振動モードにおける変形の腹となる箇所に質量を増やす部材を設け、それにより振動を抑制する手法が知られている。しかし、この手法では、振動を抑制しうる程度まで質量を増やさなければならず、タイヤ質量の過分な増加が不可避である。特にシェルで骨格を構成したタイヤでは、そのような余計な質量増加を抑えることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−74105号公報
【特許文献2】特開昭64−56204号公報
【特許文献3】特開平3−143701号公報
【特許文献4】特開2011−42091号公報
【特許文献5】特開2012−40959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤ質量の増加を抑えながらロードノイズを低減できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き本発明により達成することができる。即ち、本発明に係る空気入りタイヤは、踏面を構成するトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側に配されるクラウン部、前記クラウン部のタイヤ幅方向両側からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部、及び、前記サイドウォール部のタイヤ径方向内側に連なり、リムのビードシート部の外周にセットされる一対のビード部を有し、樹脂により形成されたシェルとを備え、前記シェルのサイドウォール部に、タイヤ内面から突出し且つタイヤ周方向に沿って延びる一対のリブが設けられ、前記一対のリブが、断面1〜3次いずれかの振動モードにおける変形の節となる箇所を挟んで配置されているものである。
【0009】
この空気入りタイヤでは、変形の節となる箇所を挟んで配置された一対のリブにより、その節となる箇所の上下が補強され、振動時の変形に対する剛性が高められる。その結果、断面1〜3次の振動モードのうち、一対のリブで挟まれた箇所に変形の節を持つ振動モードにおいて、サイドウォール部の振動を低減し、ロードノイズを減ずることができる。また、このリブは、質量増を企図したものではなく、剛性を高めるために節となる箇所を挟むように一対で配置すれば足りるため、タイヤ質量の増加を抑えられる。
【0010】
タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面からビードトゥに至るタイヤ内面の長さL、前記一対のリブの間隔D、及び、その一対のリブで挟まれた箇所に変形の節を持つ前記振動モードの次数nが、D≦0.1L/(2n+1)の関係を満足するものが好ましい。これにより、一対のリブの間隔Dが大きくなり過ぎず、節となる箇所の上下の剛性を高めるのに有効な領域にリブを設定して、タイヤ質量の余計な増加を抑えることができる。
【0011】
タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面からビードトゥに至るタイヤ内面の長さL、前記一対のリブの幅W、及び、その一対のリブで挟まれた箇所に変形の節を持つ前記振動モードの次数nが、W≦0.5L/(2n+1)の関係を満足するものが好ましい。これにより、一対のリブの幅Wが大きくなり過ぎず、節となる箇所の上下の剛性を高めるのに有効な領域にリブを設定して、タイヤ質量の余計な増加を抑えることができる。
【0012】
前記リブの厚みが、タイヤ最大幅位置における前記シェルの厚みの30%以上であるものが好ましい。これにより、節となる箇所の上下の剛性を適切に高めて、ロードノイズの抑制効果を良好に確保することができる。
【0013】
前記リブが、前記シェルの本体を形成する樹脂よりも高モジュラスの材料で形成されているものが好ましい。これにより、節となる箇所の上下の剛性を適切に高めて、ロードノイズの抑制効果を良好に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図
図2】(A)断面1次、(B)断面2次、(C)断面3次、及び(D)断面4次の振動モードを概念的に示した図(但し、(D)は本発明に含まれない)
図3図1のタイヤの要部を示す拡大図
図4】リブの断面形状の変形例を示す図
図5】伝達関数の波形の一例を示す図
図6】本発明の別実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図
図7】本発明の別実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図
図8】本発明の別実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下で具体的に示すように、本発明に係るタイヤでは、一対のリブが、断面1〜3次いずれかの振動モードにおける変形の節となる箇所を挟んで配置される。
【0016】
[第1実施形態]
図1に示した空気入りタイヤT1は、踏面を構成するトレッドゴム1と、樹脂により形成されたシェル2を備える。シェル2は、トレッドゴム1のタイヤ径方向内側に配されるクラウン部23、クラウン部23のタイヤ幅方向両側からタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部22、及び、サイドウォール部22のタイヤ径方向内側に連なり、リム9のビードシート部91の外周にセットされる一対のビード部21を有する。図1の右側では、リム9の図示を省略している。
【0017】
トレッドゴム1は、シェル2のクラウン部23のタイヤ径方向外側に接合されている。トレッドゴム1とシェル2のクラウン部23との間には、例えば接合力を高める接着剤などの接合材や、弾力性を高めるクッションゴムなどの弾性材を介在させてもよい。図示していないが、踏面となるトレッドゴム1の表面には、ブロックやリブなどの陸部を区分する溝部が設けられ、要求されるタイヤ性能や使用条件に応じたトレッドパターンが、シェル2との接合前または接合後に形成される。
【0018】
このタイヤT1は、一般の空気入りタイヤが備えるカーカスプライやインナーライナーゴムを有しておらず、トロイダル状のシェル2がタイヤ骨格を構成している。タイヤ内腔8にはシェル2が面するとともに、ビード部21がビードシート部91に密着することにより、タイヤ内部の空気の漏洩が防止される。図1ではシェル2が一体的な構造として描かれているが、複数の分割片の組み合わせにより構成してもよく、例えばクラウン部23をタイヤ幅方向に二分割または三分割とした割り構造の採用が可能である。
【0019】
タイヤT1は、一般の空気入りタイヤが備えるベルトやベルト補強層などのコード補強材を有しておらず、トレッドゴム1とシェル2のクラウン部23との間には、金属コードや有機繊維コードを含まない部材のみが配されている。ベルトやベルト補強層、不織布、織布からなる補強材の貼付または埋設によりシェル2を補強しても構わないが、軽量化のためには補強材を省略することが好ましい。シェル2の断面形状は、タイヤサイズや車種、用途などに応じて種々に設定され、扁平率などは適宜に変更可能である。
【0020】
シェル2を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が例示される。熱可塑性樹脂はリサイクル性に優れ、熱硬化性樹脂は耐熱性に優れる。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、フッ素樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、ポリイミド、尿素樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。
【0021】
リム9に対するタイヤT1の嵌合力を高めるために、ビード部21には環状のビードコア21aが埋設されている。ビードコア21aの材料としては、ゴムや樹脂で被覆した金属コード又は有機繊維コード、硬質樹脂、硬質ゴムが例示される。リム9に対するタイヤT1の嵌合力が確保されるのであれば、ビードコア21aを省略しても構わない。
【0022】
シェル2のサイドウォール部22には、タイヤ内面から突出し且つタイヤ周方向に沿って延びる一対のリブ31,32が設けられている。以降の説明では、これらをリブ3と総称する場合がある。タイヤT1では、一対のリブ3が、断面1次の振動モードにおける変形の節となる箇所N1(以下、節部N1)を挟んで配置されている。図2(A)に示すように、断面1次の振動モードでは、タイヤ幅方向の片側において、サイドウォール部22に1つの節が形成され、その節と節との間、及び、ビード部21に形成される定常波の固定端と節との間に、それぞれ腹が形成される。
【0023】
かかる構成によれば、節部N1を挟んで配置された一対のリブ3が、その節部N1の上下を補強し、振動時の変形に対する剛性が高められる。その結果、腹となる箇所のサイドウォール部22での動きを抑えて振動を軽減し、断面1次の振動モードによるロードノイズを低減することができる。また、節部N1を挟む一対のリブ3を設けるだけで足りるため、タイヤ質量の増加を抑えられる。しかも、リブ3によってタイヤT1の横剛性が高められることで、操縦安定性能の向上効果も得られる。
【0024】
サイドウォール部22の外表面には、デザイン性を高めるための意匠や、商品名、ブランド名または製造者名などの表示が施されるものの、タイヤ外面ではなくタイヤ内面にリブ3を設けていることにより、そのような意匠や表示を妨げることがない。また、リブ3をタイヤ内面に設けているため、風切り音による不要なノイズを生じる心配もない。
【0025】
本実施形態では、サイドウォール部22に位置する複数の(本実施形態では2つの)節部N1のうち、その全てに対して一対のリブ3が設定されている。このため、サイドウォール部22の各々において腹となる箇所の動きを抑え、ロードノイズを効果的に低減できる。但し、これに限られず、サイドウォール部22に位置する複数の節部のうち、少なくとも1つに対して一対のリブ3が設けられていればよい。
【0026】
図3に拡大して示すように、リブ31,32は節部N1の近傍に配置される。タイヤ内面に沿って測定される一対のリブ3の間隔Dは、好ましくはD≦0.1L/(2n+1)であり、より好ましくはD≦0.05L/(2n+1)である。Lは、タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面Cからビードトゥに至るタイヤ内面の長さである。nは、その一対のリブ3で挟まれた箇所に変形の節を持つ振動モードの次数であり、本実施形態では1である。
【0027】
D≦0.1L/(2n+1)の関係を満足することにより、間隔Dが大きくなり過ぎず、節となる箇所の上下の剛性を高めるのに有効な領域にリブ31,32を設定して、タイヤ質量の余計な増加を抑えられる。また、リブ31,32が互いに接近し過ぎないようにする観点から、間隔Dは、好ましくは1mm以上であり、より好ましくは3mm以上であり、更に好ましくは5mm以上である。これらを満たす間隔Dの範囲としては、1〜6.5mmが例示される。
【0028】
タイヤ内面に沿って測定される一対のリブ3の幅Wは、好ましくはW≦0.5L/(2n+1)であり、より好ましくはW≦0.2L/(2n+1)である。W≦0.5L/(2n+1)の関係を満足することにより、幅Wが大きくなり過ぎず、節となる箇所の上下の剛性を高めるのに有効な領域にリブ31,32を設定して、タイヤ質量の余計な増加を抑えられる。リブ3による補強効果を確保する観点から、幅Wは、好ましくは6mm以上であり、より好ましくは15mm以上である。これらを満たす幅Wの範囲としては、6〜25mmが例示される。
【0029】
タイヤ質量の増加を極力抑えるためには、D≦0.1L/(2n+1)の関係を満足しつつ、W≦0.5L/(2n+1)の関係を満足することが望ましい。この場合において、一対のリブ3が設けられる領域の長さL3は、L3=D+2Wであるから、L3≦1.1L/(2n+1)の関係を満足する。この領域外にリブを設けたとしても、ロードノイズの低減に対する寄与は小さく、タイヤ質量の余計な増加を招来する傾向にある。
【0030】
リブ3による補強効果を確保してロードノイズを適切に低減する観点から、タイヤ内面からの突出量に相当するリブ3の厚みT3は、タイヤ最大幅位置におけるシェル2の厚みT2の30%以上であることが好ましく、50%であることがより好ましい。また、タイヤ質量の増加を抑える観点から、厚みT3は、厚みT2の200%以下であることが好ましく、150%以下であることがより好ましい。リブ3の幅Wは、そのリブ3の厚みT3と同じかそれよりも大きいことが好ましい。
【0031】
本実施形態では、リブ31,32の断面積が互いに同じであるが、それらを互いに異ならせても構わない。リブ31,32の断面積を異ならせる場合、節部N1はバットレスに近いため、タイヤ径方向外側のリブ31の断面積をタイヤ径方向内側のリブ32の断面積よりも大きくすることで操縦安定性能を向上できる。後述する節部N2,N3,N41でも同様である。一方、後述する節部N42はビード部21に近いため、その大小関係を反対にすることで操縦安定性能を向上できる。
【0032】
L1は、タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面Cから一対のリブ3の中間までのタイヤ内面に沿った長さである。断面1次の振動モードによるロードノイズを的確に低減するうえで、長さLに対する長さL1の比L1/Lは、好ましくは0.35〜0.6であり、より好ましくは0.4〜0.5である。
【0033】
タイヤ質量の増加を最小限に抑える観点から、片側のサイドウォール部22に設けられるリブ3の本数は、そのサイドウォール部22における節数の2倍が好ましい。即ち、断面1次の振動モードであれば、本実施形態のようにリブ3を2本だけ設けることが好ましく、更にはビード部21やクラウン部23のタイヤ内面にリブを設けないことが好ましい。片側のサイドウォール部22における節数は、断面1〜3次の振動モードで1つ、断面4次の振動モードで2つとなる。
【0034】
リブ3は、シェル2のサイドウォール部22におけるタイヤ内面を局部的に隆起させてなり、注型や射出成型によりシェル2を製造するときに一体的に成形できる。また、リブ3は、シェル2を形成する樹脂とは異なる樹脂材料または非樹脂材料で形成されていてもよく、その場合には、溶着などの接着手段によってシェル2の本体に取り付けられる。
【0035】
上記においては、振動時の変形に対する剛性を良好に高められるように、シェル2の本体を形成する樹脂よりも高モジュラスの材料でリブ3を形成することが好ましい。その場合、リブ3を形成する材料のモジュラス(M100)は、シェル2の本体を形成する樹脂のモジュラス(M100)の1.3倍以上が好ましい。M100は、JIS K6301に準拠して3号ダンベルを用いて測定される。シェル2の本体を形成する樹脂のM100は、タイヤ骨格を構成するうえで30MPa以上であることが好ましい。
【0036】
リブ3の断面形状は、本実施形態のような四角形状に限られず、図4のような(A)三角形状や(B)半円形状、その他の形状が採用できる。振動時の変形に対する剛性を良好に高めるうえでは、本実施形態のような矩形状や、断面二次モーメントの高い(C)I形状や(D)H形状、(E)矩形中抜き形状なども好適に採用できる。リブ3は、断続的に延びるものでも構わないが、タイヤ周方向に連続的して環状をなすものが好ましい。
【0037】
断面1次の振動モードにおける変形の節の位置は、実験モード解析によって特定できる。具体的には、ハンマリングまたは加振器による振動実験を行い、それにより採取される伝達関数の波形(図5参照)と同じ波形が得られる解析モデル(例えばFEMモデル)を作製し、そのモデルに基づく振動モードの解析によって節の位置を特定できる。振動実験では、JATMAに準じた適用リムを使用し、タイヤサイズに対応してJATMAが規定する最大負荷能力の0.7倍の荷重と、規定の空気圧を採用する。断面2〜4次の振動モードにおける変形の節の位置についても、これと同様にして特定できる。
【0038】
[第2実施形態]
第2実施形態は、以下に説明する構成の他は、第1実施形態と同様の構成であるため、共通点を省略して主に相違点について説明する。第1実施形態で説明した部材や部位と同一の部材や部位には、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。後述する第3実施形態及び参考実施形態についても、これと同様である。
【0039】
図6に示すように、タイヤT2では、一対のリブ3が、断面2次の振動モードにおける変形の節となる箇所N2(以下、節部N2)を挟んで配置されている。図2(B)に示すように、断面2次の振動モードでは、タイヤ幅方向の片側において、サイドウォール部22の各々に1つの節が形成されるとともに、クラウン部23に1つの節が形成され、その節と節との間、及び、ビード部21に形成される定常波の固定端と節との間に、それぞれ腹が形成される。
【0040】
かかる構成によれば、節部N2を挟んで配置された一対のリブ3が、その節部N2の上下を補強し、振動時の変形に対する剛性が高められる。その結果、腹となる箇所のサイドウォール部22での動きを抑えて振動を軽減し、断面2次の振動モードによるロードノイズを低減することができる。また、既述のように、タイヤ質量の増加を抑えられるとともに、操縦安定性能の向上効果も得られる。
【0041】
L2は、タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面Cから一対のリブ3間の中間までのタイヤ内面に沿った長さである。断面2次の振動モードによるロードノイズを的確に低減するうえで、長さLに対する長さL2の比L2/Lは、好ましくは0.35〜0.6であり、より好ましくは0.4〜0.5である。
【0042】
[第3実施形態]
図7に示すように、タイヤT3では、一対のリブ3が、断面3次の振動モードにおける変形の節となる箇所N3(以下、節部N3)を挟んで配置されている。図2(C)に示すように、断面3次の振動モードでは、タイヤ幅方向の片側において、サイドウォール部22の各々に1つの節が形成されるとともに、クラウン部23に2つの節が形成され、その節と節との間、及び、ビード部21に形成される定常波の固定端と節との間に、それぞれ腹が形成される。
【0043】
かかる構成によれば、節部N3を挟んで配置された一対のリブ3が、その節部N3の上下を補強し、振動時の変形に対する剛性が高められる。その結果、腹となる箇所のサイドウォール部22での動きを抑えて振動を軽減し、断面3次の振動モードによるロードノイズを低減することができる。また、既述のように、タイヤ質量の増加を抑えられるとともに、操縦安定性能の向上効果も得られる。
【0044】
L3は、タイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面Cから一対のリブ3間の中間までのタイヤ内面に沿った長さである。断面3次の振動モードによるロードノイズを的確に低減するうえで、長さLに対する長さL3の比L3/Lは、好ましくは0.5〜0.75であり、より好ましくは0.55〜0.65である。
【0045】
参考実施形態]
図8に示すように、タイヤT4では、一対のリブ3が、断面4次の振動モードにおける変形の節となる箇所N41,N42(以下、節部N41,N42)を挟んで配置されている。図2(D)に示すように、断面4次の振動モードでは、タイヤ幅方向の片側において、サイドウォール部22の各々に2つの節が形成されるとともに、クラウン部23に2つの節が形成され、その節と節との間、及び、ビード部21に形成される定常波の固定端と節との間に、それぞれ腹が形成される。
【0046】
かかる構成によれば、節部N41,N42を挟んで配置された一対のリブ3が、その節部N41,N42の上下を補強し、振動時の変形に対する剛性が高められる。その結果、腹となる箇所のサイドウォール部22での動きを抑えて振動を軽減し、断面4次の振動モードによるロードノイズを低減することができる。また、既述のように、タイヤ質量の増加を抑えられるとともに、操縦安定性能の向上効果も得られる。
【0047】
L41,L42は、それぞれタイヤ子午線断面においてタイヤ赤道面Cから一対のリブ3間の中間までのタイヤ内面に沿った長さである。断面4次の振動モードによるロードノイズを低減するうえで、長さLに対する長さL41の比L41/Lは、好ましくは0.35〜0.55であり、より好ましくは0.35〜0.5である。また、長さLに対する長さL42の比L42/Lは、好ましくは0.6〜0.8であり、より好ましくは0.6〜0.7である。
【0048】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【0049】
一対のリブが設定される節部は、断面1〜3次のうち何れの振動モードに基づくものであってもよく、その中でいずれか1つの振動モードが選択されることが好ましい。また、断面1〜3次の振動モードのうち、ロードノイズを顕著に生じる振動モードの節部に一対のリブを設定することが好ましく、どの振動モードによってロードノイズを顕著に生じるかについては、上述した振動実験または実験モード解析によって特定が可能である。
【実施例】
【0050】
本発明の構成と効果を具体的に示すため、振動伝達特性と操縦安定性能を調査した。前者では、リムに組み付けたタイヤの軸を固定し、クラウン部を加振したときの各モード周波数帯域の伝達関数レベルを確認した。比較例1を基準としたレベル差で評価し、マイナス値が大きいほどロードノイズが低減されていることを示す。後者では、転動するタイヤに1°のスリップ角を付与したときの横力を測定した。比較例1を100として指数で表示し、数値が大きいほどコーナリングパワーが大きく操縦安定性能に優れることを示す。
【0051】
図1に示したタイヤ構造において、タイヤ内面にリブを設けていないものを比較例1、各サイドウォール部のタイヤ内面にリブを1本ずつ設けたものを比較例2とした。比較例2では、タイヤ赤道面からリブの中央までのタイヤ内面に沿った長さLcが120mmであり、節部と関与しない位置にリブを設けてある。各例におけるタイヤ構造は、リブの形態を除いて共通であり、長さLは170mmである。リブは、いずれも断面矩形状をなしてシェル2の本体と一体的に成形され、その厚みT3は厚みT2の50%である。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、実施例1〜3及び参考例では、ロードノイズの低減効果が得られるとともに、操縦安定性能の向上効果が得られる。また、節となる箇所を挟む一対のリブが局所的に設けられているため、タイヤ質量の余計な増加が抑えられる。
【符号の説明】
【0054】
1 トレッドゴム
2 シェル
3 リブ
9 リム
21 ビード部
22 サイドウォール部
23 クラウン部
31 リブ
32 リブ
N1 節となる箇所(節部)
N2 節となる箇所(節部)
N3 節となる箇所(節部)
N41 節となる箇所(節部)
N42 節となる箇所(節部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8