特許第6057779号(P6057779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057779
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20161226BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20161226BHJP
   H01L 21/76 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   H01L27/04 H
   H01L27/04 D
   H01L21/76 L
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-38599(P2013-38599)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-167954(P2014-167954A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年7月27日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省、マルチバンド・マルチモード対応センサー無線通信基盤技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】中村 重紀
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸二
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−324213(JP,A)
【文献】 特開平02−105532(JP,A)
【文献】 特開2007−067012(JP,A)
【文献】 特開平06−169061(JP,A)
【文献】 特開平03−231444(JP,A)
【文献】 特開2008−053257(JP,A)
【文献】 特開2009−177044(JP,A)
【文献】 特開2009−135149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 21/76
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面部に形成され、信号を発する第1の半導体素子と、
前記第1の半導体素子と接続された信号線と、
前記信号線直下に、前記信号線に沿って、前記半導体基板上に位置するように形成されたポリシリコン層と、
前記信号線の直下であって、前記信号線と接続されない第2の半導体素子と、
を具備し、
前記半導体基板内において、前記第1の半導体素子、及び、前記第2の半導体素子の少なくとも一方の周囲を取り囲むように、トレンチ型絶縁領域が形成され、
前記ポリシリコン層は、前記第1の半導体素子、及び、前記第2の半導体素子、が形成される範囲以外であって、前記トレンチ型絶縁領域を含む範囲に形成される、
半導体装置。
【請求項2】
前記ポリシリコン層の幅は、少なくとも、前記信号線の幅よりも広い、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板は、単一の抵抗率の素材、または、抵抗率の異なる複数の素材により成されている、
請求項1記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースバンド帯域からRF(Radio Frequency)帯域(高周波帯域)における、アナログ回路、デジタル回路またはアナログ・デジタル混載回路を構成する半導体素子及び半導体回路が形成された半導体装置に関し、特に信号線から伝搬する信号干渉を防ぐ半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線機器をはじめとする電気機器において使用されるモジュールに対する小型化・低コスト化の要望はますます強くなってきている。この要望に対応するために、半導体装置において、チップレイアウトの面積縮小、高周波帯域・ベースバンド帯域の1チップ化、及びデジタル・アナログ混載チップ化が推進されている。しかし、このような構成をとる半導体装置では、素子間、ブロック間、または、チップ間の信号間干渉が増大し、信号処理に支障がきたされるため、良好なアイソレーション対策を講じなければならない。
【0003】
従来のアイソレーション手法としては、半導体素子を電気的に分離するトレンチ型絶縁領域を用いる手法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図1は、従来のアイソレーション手法が適用された半導体基板の断面図を示す。
【0005】
図1において、半導体基板300は、第1層303と、半導体基板300の表面側に形成された第2層304と、を有する。また、第2層304内に、S1ポート(信号線)301及びS2ポート(信号線)302にそれぞれ接続された2つの半導体素子(フォトダイオード)305を有する。また、半導体基板300内において、S1ポート301に接続された半導体素子305(第2層304)を取り囲むように、トレンチ型絶縁領域306が形成されている。
【0006】
図1に示す構成を有する半導体装置では、半導体素子305間に1つのトレンチが形成されるので、半導体基板300の表面に対して平行な方向(図1では横方向)への信号干渉を防ぐことができる。また、半導体素子305の下方の基板の抵抗率を高くすることで、トレンチ型絶縁領域306の更に下方、すなわち所定の深さより深い位置まで伝搬し、横方向に伝搬する信号(つまり、トレンチを迂回する信号)は減衰する。以上より、アイソレーションが向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−67012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、半導体基板と信号線との間に生じる寄生容量により、半導体基板と信号線とは電気的に結合(寄生容量結合)される。寄生容量結合により、或る半導体素子に接続された信号線を伝搬する信号が半導体基板を介して、他の半導体素子又は他の半導体回路に伝搬することにより信号干渉が発生してしまう。これに対して、上記従来の構成では、半導体基板内におけるアイソレーションのみしか考慮されていないので、上記信号線からの信号の伝搬(不要な信号の伝搬)に起因する信号干渉によって半導体装置の信号品質が劣化するという課題が生じる。特に、高い周波数ほど寄生容量による影響がより大きくなるので、高周波帯域向けに用いられる半導体装置では、寄生容量結合が信号品質の劣化に与える影響がより大きくなる。
【0009】
本発明の目的は、周波数によらず半導体基板を介した半導体素子又は半導体回路への不要な信号の伝搬を抑制し、半導体装置の信号品質の劣化を抑えることができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板の表面部に形成され、信号を発する半導体素子と、前記半導体素子と接続された信号線と、前記信号線直下に、前記半導体基板上に位置するように形成されたポリシリコン層と、を具備する構成を採る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周波数によらず半導体基板を介した半導体素子又は半導体回路への不要な信号の伝搬を抑制し、半導体装置の信号品質の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来のアイソレーション手法を用いた半導体基板を示す断面図
図2】本発明の一実施の形態に係る半導体基板を示す断面図
図3】本発明の一実施の形態に係る半導体基板を示す平面図
図4】本発明の一実施の形態に係る周波数−アイソレーション特性を示す図
図5】本発明の一実施の形態に係る半導体基板のバリエーションを示す図
図6】本発明の一実施の形態に係る半導体基板のバリエーションを示す図
図7】本発明の一実施の形態に係る半導体基板のバリエーションを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図2は、本実施の形態に係る半導体装置における半導体基板100の断面図であり、図3は、半導体基板100の表面側から見た平面図である。なお、図2は、図3に示す平面図の線A−A’における断面図である。
【0015】
図2に示す半導体基板100の表面側に第1層107が形成され、第1層107の表面部(つまり半導体基板100の表面部)に半導体素子105および半導体素子106がそれぞれ形成されている。
【0016】
半導体素子105,106は、信号を発する。半導体素子105,106としては、例えば、アナログ回路、デジタル回路などの集積回路、バイポーラトランジスタ、MOSトランジスタなどのアクティブ素子、または、抵抗、インダクタ、キャパシタなどのパッシブ素子が挙げられる。
【0017】
信号線103は、半導体素子105が動作することにより発する信号を伝搬する。
【0018】
信号線109は、半導体素子106が動作することにより発する信号を伝搬する。
【0019】
信号線103および信号線109は、例えば、メタル配線であり、アルミ、銅などの導電性の高い金属素材によって形成される。また、信号線103は、ビアを介して半導体素子105と接続され、半導体素子106とは接続されていない。同様に、信号線109は、ビアを介して半導体素子106と接続され、半導体素子105とは接続されていない。
【0020】
ポリシリコン層102は、信号線103の直下に、半導体基板100上に位置するように形成される。なお、ポリシリコン層102は、シリコン酸化膜に代表される絶縁膜を介して半導体基板100の表面部に形成される。また、ポリシリコン層102は、信号線103とは物理的に交わっていない。例えば、ポリシリコン層102は、少なくとも半導体基板100の表面部と比較して非常に高い抵抗を有する。
【0021】
また、図3に示すように、ポリシリコン層102の幅は、少なくとも、信号線103の幅よりも広いものとする。また、図3に示すように、信号線103に沿う方向(図3では横方向)において、信号線103の直下に相当する範囲のうち、半導体素子などのデバイス単体素子上にはポリシリコン層102を形成せず、それ以外の設計規則を満たす範囲には可能な限りポリシリコン層102を形成することが望ましい。例えば、図3では、ポリシリコン層102は、信号線103直下に相当する範囲のうち、半導体素子105と、信号線103と接続されない半導体素子106とが形成される範囲以外の範囲に形成される。
【0022】
なお、図2および図3では、信号線103に対応するポリシリコン層102のみを図示している。しかし、半導体基板100では、同様にして、信号線109に対応するポリシリコン層が形成されてもよい。具体的には、半導体基板100は、信号線109の直下に、半導体基板100上に位置するように形成されるポリシリコン層を有してもよい。
【0023】
以上の構造を有する半導体装置において、例えば、半導体素子105が動作すると、信号または信号に起因する雑音は、半導体基板100に対して各方向へ拡散するとともに、ビア(図示せず)を介して半導体素子105と接続される信号線103上を伝搬する。
【0024】
この際、信号線103は、寄生容量結合によって、ポリシリコン層102と電気的に結合される。このため、信号線103を伝搬する信号はポリシリコン層102にも伝搬される。さらに、ポリシリコン層102と半導体基板100との間にも寄生容量が生じるので、ポリシリコン層102と半導体基板100とは電気的に結合される。つまり、信号線103を伝搬する信号は、ポリシリコン層を介して半導体基板100にも伝搬されることになる。
【0025】
しかし、上述したように、ポリシリコン層102は、非常に高い抵抗成分を有するため、信号線103からポリシリコン層102に伝搬される信号は、ポリシリコン層102において大幅に減衰される。このため、ポリシリコン層102から半導体基板100へ伝搬される信号成分は非常に微小な信号となる。
【0026】
このようにして、信号線103と半導体基板100との間にポリシリコン層102が形成されることにより、アイソレーションが向上する。つまり、信号線103を伝搬する信号が半導体基板100に伝搬されることに起因する信号干渉を抑制し、半導体装置の信号品質の劣化を抑えることができる。
【0027】
図4は、本実施の形態に係る構成の半導体装置(図2図3)、および、従来の構成の半導体装置(例えば図1)における周波数−アイソレーション特性を示す。
【0028】
図4において、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸はアイソレーション[dB]を示す。また、実線は、本実施の形態に係る構成の半導体装置(つまり、ポリシリコン層102を有する構成)の特性を示し、一点鎖線は、従来の構成の半導体装置(つまり、ポリシリコン層を有さない構成)の特性を示す。
【0029】
図4に示すように、本実施の形態の構成によれば、従来の構成と比較して、全ての周波数においてアイソレーションが向上していることが確認できる。特に、高周波帯域(およそ1GHz以上)では、従来の構成と比較して、周波数が高いほど、アイソレーションが向上しており、本実施の形態の構成によるアイソレーションの向上効果がより高いことが分かる。つまり、寄生容量結合が信号品質の劣化に与える影響がより大きくなる高い周波数においてもアイソレーションを向上させることができる。
【0030】
以上のように、本実施の形態によれば、ポリシリコン層を、半導体素子において生成された信号が伝搬される信号線の直下に、半導体基板上に位置するように形成されることにより、寄生容量結合による信号線から半導体基板への信号の伝搬(不要な信号伝搬)を防ぐことができる。具体的には、容量性結合により信号線(メタル配線)とポリシリコン層とが電気的に結合し、信号線を伝搬する信号がポリシリコン層に伝搬されても、ポリシリコン層が高抵抗であることから信号が減衰し、半導体基板に伝搬する信号を小さくすることができる。
【0031】
よって、本実施の形態によれば、周波数によらず半導体基板を介した半導体素子又は半導体回路への不要な信号の伝搬を抑制し、半導体装置の信号品質の劣化を抑えることができる。
【0032】
[他の実施の形態]
[1]上記実施の形態では、信号線103の直下にポリシリコン層102を形成する場合について説明した。しかし、信号線103の直下に形成される層は、ポリシリコン層に限らず、信号線と半導体基板との間に生じる寄生容量による信号線から半導体基板への信号の不要な伝搬を抑えることができる素材(絶縁層)から形成されればよい。
【0033】
[2]また、上記実施の形態では、半導体基板の構成として図2に示す半導体基板100の構成を一例として説明したが、半導体基板の構成は図2に示す構成に限らない。具体的には、図5に示すように、信号線103の直下に、半導体基板100上に位置するように形成されるポリシリコン層102を有する構成であれば、半導体基板100内の構成は限定されない。
【0034】
例えば、半導体基板100において、半導体素子105を囲うトレンチ型絶縁領域108は、図1に示すような1重に限らず、2重以上の構成であってもよい。また、図1では、半導体基板100において、トレンチ型絶縁領域108が半導体素子105を取り囲む構造を有するが、トレンチ型絶縁領域108が半導体素子106を取り囲む構造を有してもよい。図6は、一例として、半導体素子105に対して、トレンチ型絶縁領域108が2重で囲むように形成され、半導体素子106に対して、トレンチ型絶縁領域108が1重で囲むように形成される構成を示す。
【0035】
また、半導体基板100内においてアイソレーションを向上させる手法として、トレンチ型絶縁領域を形成する場合に限らず、例えば、半導体素子を囲むようにガードリングを形成した構成でもよく、または、トレンチ型絶縁領域とガードリングとを組み合わせた構成でもよい。また、半導体素子を囲むガードリングは、1重でもよく、2重以上でもよい。
【0036】
また、例えば、半導体基板内が単一の抵抗率の素材により構成される場合に限らず、抵抗率の異なる複数の素材により構成されてもよい。
【0037】
または、上述した半導体基板100内部の構成例を任意に組み合わせてもよい。
【0038】
これらのような半導体基板100内の構成を有することにより、信号線からの不要な信号伝搬に加え、半導体基板内での不要な信号伝搬も防ぐことができ、アイソレーションを更に向上させることができる。
【0039】
[3]また、ポリシリコン層102は、電気的に何れかの素材に接続されていてもよく、接続されていなくてもよい。
【0040】
[4]また、図3では、信号線103の直下に、信号線103に物理的に接続されていない半導体素子106が形成されている場合について説明した。しかし、例えば、図7に示すように、信号線103の直下に、信号線103に物理的に接続されていない半導体素子106が形成されていない場合でも、上記実施の形態と同様、信号線103からの寄生容量結合による信号干渉はポリシリコン層102において抑制されるので、信号線103から半導体基板100を介した半導体素子106への不要な信号の伝搬は抑制され、半導体装置の信号品質の劣化を抑えることができる。
【0041】
[5]また、図3では、信号線103が一方向のみに形成される場合について説明したが、例えば、図7に示すように、信号線103が分岐して複数の方向に形成されてもよい。この場合でも、信号線103の直下にポリシリコン層102が形成されればよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、半導体装置に適用でき、特に、ベースバンド帯域からRF帯域における、アナログ回路、デジタル回路またはアナログ・デジタル混載回路を構成する半導体素子及び半導体回路が形成された半導体装置等において、信号間干渉の防止およびアイソレーションの強化などの手法として有用である。
【符号の説明】
【0043】
100,300 半導体基板
102 ポリシリコン層
103,109 信号線
105,106,305 半導体素子
107,303 第1層
301 S1ポート
302 S2ポート
304 第2層
108,306 トレンチ型絶縁領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7