(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のピロリジン誘導体は、前記一般式(1)で表される。本発明の新規ピロリジン誘導体が、過酸化水素を用いた漂白処理において、既存のピロリジン誘導体よりも優れた漂白向上効果を発揮する理由は明らかではないが、グリセリル基を導入することで、漂白対象分子への吸着性が向上した、又はピロリジン誘導体の水溶性が向上したためであると考えられる。
【0016】
一般式(1)において、R
1は、炭素数1以上、12以下の炭化水素基を示し、炭素数1以上、12以下の鎖状炭化水素基、好ましくは直鎖又は分岐鎖炭化水素基、炭素数3以上、10以下の環状炭化水素基、及びベンジル基から選ばれる炭化水素基が好ましい。R
1の炭化水素基、例えば、前記の直鎖又は分岐鎖炭化水基及び環状炭化水素基は、置換基を有してもよい。そのような置換基としては、水酸基、アミノ基、エステル基、及びアルコキシ基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。
【0017】
R
1のうち、直鎖又は分岐鎖炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基が挙げられ、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1以上、12以下の直鎖アルキル基、炭素数3以上、12以下の分岐鎖アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、及びn−ドデシル基、2−エチルヘキシル基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。また、アルキル基は置換基を有するアルキル基であってもよい。置換基を有するアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、2−(ジメチルアミノ)エチル基、3−(ジメチルアミノ)プロピル基等が挙げられる。R
1のアルキル基は、炭素数1以上、そして、6以下が好ましい。R
1は直鎖炭化水素基が好ましく、更に直鎖アルキル基が好ましい。
【0018】
また、R
1のうち、環状炭化水素基としては、フェニル基、シクロヘキシル基、及びシクロペンチル基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。
【0019】
R
1としては、漂白性能(過酸化水素を用いた漂白における漂白性能及び脱色性能の意味である、以下、特記しない場合は同様)向上の観点から、炭素数1以上、6以下の直鎖又は分岐鎖炭化水基(直鎖炭化水素基、更に直鎖アルキル基が好ましい。)、及び炭素数5以上、10以下の環状炭化水素基から選ばれる炭化水素基が好ましく、炭素数1以上、4以下の直鎖又は分岐鎖炭化水素基(直鎖炭化水素基、更に直鎖アルキル基が好ましい。)がより好ましく、メチル基、又はエチル基が更に好ましい。
【0020】
一般式(1)において、R
2、R
3は、それぞれ独立に、水素原子、もしくは炭素数1以上、12以下の炭化水素基を示し、又は共同して隣接する四級炭素原子とともに環構造を形成する。前記炭化水素基は、炭素数1以上、12以下の直鎖又は分岐鎖炭化水素基、炭素数3以上、10以下の環状炭化水素基、及びベンジル基から選ばれる炭化水素基が好ましい。
【0021】
R
2、R
3のうち、炭素数1以上、12以下の直鎖又は分岐鎖炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基が挙げられ、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1以上、12以下の直鎖アルキル基、炭素数3以上、12以下の分岐鎖アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、及び2−エチルヘキシル基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。R
2、R
3は、直鎖炭化水素基が好ましい。
【0022】
また、R
2、R
3のうち、環状炭化水素基としては、フェニル基、シクロヘキシル基、及びシクロペンチル基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。
【0023】
また、R
2、R
3、及び隣接する四級炭素原子が形成する環構造の具体例としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環が挙げられる。
【0024】
R
2、R
3としては、漂白性能向上の観点から、それぞれ独立に、炭素数1以上、6以下の直鎖又は分岐鎖炭化水基(直鎖炭化水素基、更に直鎖アルキル基が好ましい。)、及び炭素数5以上、10以下の環状炭化水素基から選ばれる炭化水素基が好ましく、炭素数1以上、4以下の直鎖又は分岐鎖炭化水基(直鎖炭化水素基、更に直鎖アルキル基が好ましい。)がより好ましく、メチル基、又はエチル基が更に好ましい。
【0025】
一般式(1)において、R
4、R
5は、それぞれ独立に、水素原子、又は下記一般式(2)で表される基を示す。ただし、R
4、R
5は、同時に水素原子にはならない。すなわち、R
4、R
5の一方又は両方が、下記一般式(2)で表される基である。
−[(G)
m/(A)
n]−R
7 (2)
[式(2)中、
Gは、下記式(3)で表される基(以下、基(3)という)及び式(4)で表される基(以下、基(4)という)から選ばれる1種以上の基を示す。基(3)及び基(4)の酸素原子は、それぞれ、水素原子と結合しているか、又は他の基(3)もしくは基(4)の炭素原子もしくはAの炭素原子と結合しているか、又はR
7と結合している。
Aは、下記式(5)で表される基(以下、基(5)という)を示す。
R
7は水素原子、又は炭素数1以上、30以下の炭化水素基を示す。
mは、1以上、20以下の数を示す。
nは、0以上、20以下の数を示す。
なお、“/”は、GとAの結合順序を問わないことを表す。]
【0028】
[式(5)中、R
8、R
9、R
10、R
11は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1以上、30以下の炭化水素基を示し、R
8、R
9、R
10、R
11の炭素数の合計は30以下となる。基(5)の酸素原子は、基(3)もしくは基(4)の炭素原子と結合しているか、又は他の基(5)の炭素原子と結合しているか、又はR
7と結合している。]
【0029】
一般式(2)中のmは、漂白性能向上の観点から、10以下、更に8以下、更に5以下、更に3以下が好ましい。
【0030】
一般式(2)中のnは、漂白率向上の観点から、10以下、更に8以下、更に5以下が好ましい。nは0超の数であってよい。また、0であることも好ましい。
【0031】
一般式(2)中のAは、漂白率向上の観点から、一般式(5)で表される基であり、R
8、R
9、R
10、R
11は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1以上、30以下の炭化水素基であり、R
8、R
9、R
10、R
11の炭素数の合計が30以下である。R
8、R
9、R
10、R
11の炭化水素基としては、炭素数1以上、24以下の直鎖又は分岐鎖炭化水素基、及び炭素数3以上、12以下の環状炭化水素基から選ばれる炭化水素基が好ましい。該炭化水素基は、炭素数1以上、18以下の直鎖又は分岐鎖炭化水素基が好ましい。R
8、R
9、R
10、R
11のうち、直鎖又は分岐鎖炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基が挙げられ、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ステアリル基、イソステアリル基から選ばれる基が挙げられる。
【0032】
基(5)の酸素原子は、基(3)もしくは基(4)の炭素原子と結合しているか、又は他の基(5)の炭素原子と結合しているか、又はR
7と結合している。
【0033】
一般式(2)中のR
7は、水素原子、又は炭素数1以上、30以下の炭化水素基を示す。該炭化水素基としては、炭素数1以上、24以下の直鎖又は分岐鎖炭化水素基、及び炭素数5以上、12以下の環状炭化水素基から選ばれる炭化水素基が好ましい。該炭化水素基は、炭素数1以上、18以下の直鎖又は分岐鎖炭化水素基が好ましい。R
7のうち、直鎖又は分岐鎖炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基が挙げられ、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ステアリル基、イソステアリル基から選ばれる基が挙げられる。
【0034】
一般式(2)中のnが0である場合や一般式(2)中のnが0超であって(G)
mとR
7とが結合する場合のように、R
7が基(3)又は基(4)の酸素原子と結合する場合、R
7は、漂白性能向上の観点から、炭素数1以上、24以下の直鎖又は分岐鎖炭化水素基、及び炭素数5以上、12以下の環状炭化水素基から選ばれる炭化水素基が好ましく、更に炭素数1以上、18以下の直鎖又は分岐鎖炭化水素基が好ましい。
【0035】
R
4、R
5は、一方が水素原子であり、他方が一般式(2)で表される基であることが好ましい。
【0036】
ピロリジン環の炭素原子は全て水素原子と結合してもよく、1個以上、7個以下のR
6を置換基として有していてもよい。一般式(1)中、kは、0又は1以上、7以下の整数である。kは、0又は1が好ましく、0がより好ましい。また、一般式(1)において、R
6は、kが1以上の場合にピロリジン環の炭素原子に結合する1つ以上の置換基であり、水酸基、又は炭素数1以上、12以下の炭化水素基を示す。前記炭化水素基は、炭素数1以上、12以下の直鎖又は分岐鎖炭化水素基、炭素数3以上、10以下の環状炭化水素基、及びベンジル基から選ばれる炭化水素基が好ましい。
【0037】
R
6のうち、直鎖又は分岐鎖炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基が挙げられ、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、炭素数1以上、12以下の直鎖アルキル基、炭素数3以上、12以下の分岐鎖アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、及びn−ドデシル基、2−エチルヘキシル基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。また、アルキル基は置換基を有するアルキル基であってもよい。置換基を有するアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、2−(ジメチルアミノ)エチル基、3−(ジメチルアミノ)プロピル基等が挙げられる。R
6のアルキル基は、炭素数1以上、そして、6以下が好ましい。R
6は直鎖炭化水素基が好ましく、更に直鎖アルキル基が好ましい。
【0038】
また、R
6のうち、環状炭化水素基としては、フェニル基、シクロヘキシル基、及びシクロペンチル基から選ばれる1種以上の基が挙げられる。
【0039】
R
6としては、漂白性能向上の観点から、水酸基、炭素数1以上、6以下の直鎖又は分岐鎖炭化水基(直鎖炭化水素基、更に直鎖アルキル基が好ましい。)、及び炭素数5以上、10以下の環状炭化水素基から選ばれる基が好ましく、炭素数1以上、4以下の直鎖又は分岐鎖炭化水基(直鎖炭化水素基、更に直鎖アルキル基が好ましい。)がより好ましい。
【0040】
一般式(2)において、GとAの結合順序は問わず、ブロック型、ランダム型、何れでもよい。なお、R
2、R
3の両方が水素原子である場合は、一般式(2)中のmが2以上の数である、及び、一般式(2)で表される基が−(A)
n−(G)
m−R
7(m、nはそれぞれ1以上の数である)で表されるブロック型の基である、の少なくとも一方を満たす。
【0041】
本発明のピロリジン誘導体は、少なくとも1つの不斉炭素を有するが、光学活性な化合物であっても、ラセミ体として入手されるものであってもよい。また、任意の比率の混合物でもよい。
【0042】
本発明のピロリジン誘導体の好ましい態様を例示する。
(I)一般式(1)中、R
1が炭素数1以上、12以下、更に6以下、更に4以下の直鎖又は分岐鎖炭化水基、好ましくは直鎖炭化水素基、より好ましくは直鎖アルキル基である化合物
(II)一般式(1)中、R
2、R
3が、それぞれ、炭素数1以上、12以下、更に6以下、更に4以下の直鎖又は分岐鎖炭化水基、好ましくは直鎖炭化水素基、より好ましくは直鎖アルキル基である化合物
(III)一般式(1)中、R
4、R
5の一方が水素原子であり、他方が一般式(2)で表される基である化合物
(IV)一般式(1)中、kが0である化合物
(V)一般式(2)中のmが、10以下、更に8以下、更に5以下、更に3以下である化合物
(VI)一般式(2)中のnが、10以下、更に8以下、更に5以下、更に0である化合物
(VII)一般式(2)中のmが、10以下、更に8以下、更に5以下、更に3以下であり、且つ一般式(2)中のnが、10以下、更に8以下、更に5以下、更に0である化合物
(VIII)一般式(2)中、R
7が水素原子、又は炭素数1以上、30以下、更に24以下、更に18以下の直鎖又は分岐鎖炭化水基である化合物
(IX)一般式(1)中、R
1が炭素数1以上、12以下、更に6以下、更に4以下の直鎖又は分岐鎖炭化水基、好ましくは直鎖炭化水素基、より好ましくは直鎖アルキル基であり、R
2、R
3が、それぞれ、炭素数1以上、12以下、更に6以下、更に4以下の直鎖又は分岐鎖炭化水基、好ましくは直鎖炭化水素基、より好ましくは直鎖アルキル基であり、R
4、R
5の一方が水素原子であり、他方が一般式(2)で表される基であり、kが0であり、一般式(2)中のmが、10以下、更に8以下、更に5以下、更に3以下であり、一般式(2)中のnが、10以下、更に8以下、更に5以下、更に0であり、一般式(2)中のR
7が水素原子、又は炭素数1以上、30以下の炭化水素基、更に24以下、更に18以下の直鎖又は分岐鎖炭化水基である化合物
【0043】
本発明のピロリジン誘導体の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。なお、アルキル基を有する化合物においては、アルキル基は異性体(直鎖、分岐鎖)も含む。
【0047】
本発明のピロリジン誘導体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、下記一般式(6)で表されるピロリジン誘導体に対して、無触媒、もしくは酸又は塩基性触媒存在下において、下記式(7)で表される1種以上のエポキシ化合物、又は下記式(7)で表される1種以上のエポキシ化合物および下記一般式(8)で表わされる1種以上のエポキシ化合物を、一般式(1)を満たす条件となるように用いて、反応させる(以下、方法1という)ことで製造することができる。
【0049】
[式(6)中、R
1、R
2、R
3、R
6、及びkは一般式(1)と同じである。式(7)中、R
7は一般式(2)と同じである。式(8)中、R
8、R
9、R
10、及びR
11は一般式(5)と同じである。]
【0050】
反応原料の一つである一般式(6)で表されるピロリジン誘導体は、例えば特開2007−246455号公報に記載の方法で合成することができる。
【0051】
方法1における反応温度は、反応させるエポキシ化合物(前記グリシドール等)の反応性により適宜設定することができるが、通常−20℃以上、200℃以下である。反応時発熱を伴う場合は、−20℃以上、0℃以下で反応することが好ましい。反応が進行しづらい場合には、80℃以上、200℃以下で反応することが好ましい。
【0052】
方法1に用いる溶媒としては、反応条件下安定でかつ蒸留等の操作により生成物から分離できるものであれば、特に限定はされない。使用されうる溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、エーテル化合物、アミド化合物、スルホキシド化合物等が挙げられる。なお、溶媒を用いずに反応を行ってもよく、反応後の精製工程の負荷の観点から、前記溶媒の使用量は、式(6)のピロリジン誘導体に対して5000質量%以下、更に2000質量%以下、更に1000質量%以下が好ましい。
【0053】
方法1では、酸性及び塩基性の均一系触媒もしくは酸性及び塩基性の固体触媒を使用することができるが、反応後の精製工程の負荷低減の観点からは、無触媒で反応を行うことが好ましい。
【0054】
前記の反応に用いる酸触媒としては、アルキル硫酸、p−トルエンスルホン酸等のアルキルスルホン酸やアリールスルホン酸、リン酸、トルフルオロメタンスルホン酸、フッ化水素、SO
3、ホウ酸、過塩素酸、ルイス酸(例えばホウ素、アルミニウム、鉄、チタン、スズ、亜鉛、スカンジウム、ランタン等のハロゲン化物やスルホン酸塩)、スルホン酸基を有する酸性イオン交換樹脂、ヘテロポリ酸およびその塩(H
4SiMo
12O
40、H
3PMo
12O
40、H
3PW
12O
40)、ゼオライト、などを挙げることができる。
【0055】
塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水素化ナトリウム、ナトリウムメトキサイド等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、水素化物、アルコキサイド等が挙げられる。
【0056】
使用する触媒の量としては、一般式(6)で表されるピロリジン誘導体に対して、0.001質量%以上、更に0.01質量%以上、更に0.1質量%以上が好ましく、そして、30質量%以下、更に20質量%以下、更に10質量%以下が好ましい。
【0057】
本発明のピロリジン誘導体の好ましい用途については、医薬、農薬等の合成中間体や衣料用洗剤、カビとり剤、パルプの漂白、染毛剤など、過酸化水素を酸化剤として用いる漂白剤や脱色剤において、その漂白効果や脱色効果を向上させる基剤として利用することができる。本発明により、本発明のピロリジン誘導体を含む漂白剤組成物が提供される。また、本発明により、本発明のピロリジン誘導体及び過酸化水素又は水中で過酸化水素を放出する化合物を含む漂白剤組成物が提供される。
【実施例】
【0058】
◎NMR測定条件
・NMR装置:Mercury400BB(400MHz、Varian社製)
・観測幅:6410.3Hz
・データポイント:64K
・パルス幅:45マイクロ秒
・パルス遅延時間:10秒
・積算:16回
・測定温度:室温(25℃)
・溶媒:重メタノール
【0059】
◎ガスクロマトグラフィー(GC)測定条件
化合物(1)〜(3)は、試料にトリメチルシリル化剤(GLサイエンス社製、TMSI−H)を添加混合し、固形分をろ別後、GCにより、以下の条件で測定した。化合物(4)〜(7)は、エタノール溶液とし、GCにより、下記条件で測定した。
・装置: HP6850 Series(HEWLETT PACKARD社製)
・カラム:Agilent J&W DB1−HT(Agilent Technologies社製、内径0.25mm、長さ15m、膜厚0.1m)
・キャリアガス:He、1.0mL/分
・注入口温度:350℃
・検出:FID方式、350℃
・カラム温度条件:100℃で2分保持した後、10℃/分で昇温し、350℃で8分保持した。
【0060】
◎ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)測定条件
化合物(1)〜(3)は、試料にトリメチルシリル化剤(GLサイエンス社製、TMSI−H)を添加混合し、固形分をろ別後、GC/MSにより、以下の条件で測定した。化合物(4)〜(7)は、エタノール溶液とし、GC/MSにより、下記条件で測定した。
・GC装置: GC−2010 Series(島津サイエンス社製)
・カラム:RESTEK Rxi−1ms(島津ジーエルシー社製、内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm)
・キャリアガス:He、1.0mL/分
・注入口温度:300℃
・検出:FID方式、300℃
・カラム温度条件:50℃で2分保持した後、10℃/分で昇温し、330℃で10分保持した。
・MS装置: QP−2010plus Series(島津サイエンス社製)
・イオン源種類:NCI
・イオン源温度:200℃
・インターフェス温度:300℃
・イオン化モード:SCI
【0061】
実施例1<1−エチル−2−[1−エチル−1−(2,3−ジヒドロキシプロピルアミノ)プロピル]ピロリジンの合成>
特開2007−246455号公報記載の方法で合成したピロリジン誘導体〔一般式(6)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、kが0である化合物〕1.86g(10.09mmol)とグリシドール0.76g(10.26mmol、日本油脂株式会社製)を反応容器にて混合した後、ホットプレートスターラー(Reacti-Therm Heating/Stirring Module、PIEACE社製)を用いて90℃に昇温し、6時間維持した。反応終了後、2.62gの薄黄色粘性液体として1−エチル−2−[1−エチル−1−(2,3−ジヒドロキシプロピルアミノ)プロピル]ピロリジン〔一般式(1)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、R
4が水素原子、R
5が一般式(2)で表される基(mは1、nは0、R
7は水素原子)、kが0である化合物、以下、化合物1という〕を得た。
図1に化合物1のガスクロマトグラムを示した。
【0062】
・1H-NMR
δ 0.80-1.00 (m 6H), 1.00-1.10 (t 3H, J= 7.2Hz), 1.38-1.60 (m 4H), 1.64-1.83 (m 4H), 2.38-3.20 (m 7H), 3.50-3.57 (m 2H), 3.60-3.67 (m 1H)
【0063】
・MS
Retention time: 19.917
Calculated for C
20H
47N
2O
2Si
2+ [M+2TMS+H]
+ 403.3
Found 403
Retention time: 24.233
Calculated for C
26H
61N
2O
4Si
3+ [M+3TMS+H]
+ 549.4
Found 549
【0064】
実施例2<1−エチル−2−[1−エチル−1−(N−ジグリセリルアミノ)プロピル]ピロリジンの合成>
特開2007−246455号公報記載の方法で合成したピロリジン誘導体〔一般式(6)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、kが0である化合物〕1.86g(10.09mmol)とグリシドール1.52g(20.52mmol、日本油脂株式会社製)を反応容器にて混合した後、ホットプレートスターラー(Reacti-Therm Heating/Stirring Module、PIEACE社製)を用いて90℃に昇温後、6時間昇温状態を維持した。反応終了後、3.38gの黄色粘性液体として1−エチル−2−[1−エチル−1−(N−ジグリセリルアミノ)プロピル]ピロリジン〔一般式(1)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、R
4が水素原子、R
5が一般式(2)で表される基(mは2、nは0)、kが0である化合物、以下、化合物2という〕を得た。
図2に化合物2のガスクロマトグラムを示した。
【0065】
実施例3<1−エチル−2−[1−エチル−1−(N−ペンタグリセリルアミノ)プロピル]ピロリジンの合成>
特開2007−246455号公報記載の方法で合成したピロリジン誘導体〔一般式(6)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、kが0である化合物〕0.95g(5.15mmol)とグリシドール1.92g(25.92mmol、日本油脂株式会社製)を反応容器にて混合した後、ホットプレートスターラー(Reacti-Therm Heating/Stirring Module、PIEACE社製)を用いて90℃に昇温後、19時間昇温状態を維持した。反応終了後、2.85gの琥珀色粘性液体として1−エチル−2−[1−エチル−1−(N−ペンタグリセリルアミノ)プロピル]ピロリジン〔一般式(1)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、R
4が水素原子、R
5が一般式(2)で表される基(mは5、nは0)、kが0である化合物、以下、化合物3という〕を得た。
図3に化合物3のガスクロマトグラムを示した。
【0066】
実施例4<1−エチル−2−[1−エチル−1−(N−(3−ブチルオキシ−2−ヒドロキシプロピルアミノ))プロピル]ピロリジンの合成>
特開2007−246455号公報記載の方法で合成したピロリジン誘導体〔一般式(6)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、kが0である化合物〕1.172g(6.36mmol)とn−ブチルグリシジルエーテル0.828g(6.36mmol、日本油脂株式会社製)を反応容器にて混合した後、ホットプレートスターラー(Reacti-Therm Heating/Stirring Module、PIEACE社製)を用いて120℃に昇温後、48時間昇温状態を維持した。反応終了後、2.000gの黄色粘性液体として1−エチル−2−[1−エチル−1−(N−(3−ブチルオキシ−2−ヒドロキシプロピルアミノ))プロピル]ピロリジン〔一般式(1)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、R
4が水素原子、R
5が一般式(2)で表される基(mは1、nは0、R
7がn−ブチル基)、kが0である化合物、以下、化合物4という〕を得た(GC純度99%)。
【0067】
・1H-NMR(CD
3OD, 20℃)
δ 0.86-0.94 (m 9H), 1.02-1.05 (t 3H, J= 7.2Hz), 1.35-1.59 (m 8H), 1.65-1.82 (m 4H), 2.37-2.44 (m 2H), 2.53-2.58 (m 1H), 2.68-2.83 (m 3H), 2.94-2.99 (m 1H), 3.30-3.47 (m 4H), 3.68-3.74 (m 1H)
・GC/MS
Retention time: 17.075
Calculated for C
18H
39N
2O
2+ [M+H]
+ 315.3
Found 315
【0068】
実施例5<1−エチル−2−[1−エチル−1−(N−(3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアミノ))プロピル]ピロリジンの合成>
特開2007−246455号公報記載の方法で合成したピロリジン誘導体〔一般式(6)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、kが0である化合物〕0.995g(5.40mmol)と2−エチルヘキシルグリシジルエーテル1.005g(5.40mmol、日本油脂株式会社製)を反応容器にて混合した後、ホットプレートスターラー(Reacti-Therm Heating/Stirring Module、PIEACE社製)を用いて120℃に昇温後、48時間昇温状態を維持した。反応終了後、2.00gの黄色粘性液体として1−エチル−2−[1−エチル−1−(N−(3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアミノ))プロピル]ピロリジン〔一般式(1)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、R
4が水素原子、R
5が一般式(2)で表される基(mは1、nは0、R
7が2−エチルヘキシル基)、kが0である化合物、以下、化合物5という〕を得た(GC純度97%)。
【0069】
・1H-NMR(CD
3OD, 20℃)
δ 0.83-0.93 (m 12H), 1.02-1.05 (t 3H, J= 7.2Hz), 1.26-1.84 (m 17H), 2.36-2.44 (m 2H), 2.53-2.58 (m 1H), 2.69-2.85 (m 3H), 2.94-3.00 (m 1H), 3.30-3.43 (m 6H), 3.68-3.74 (m 1H)
・GC/MS
Retention time: 19.850
Calculated for C
22H
47N
2O
2+ [M+H]
+ 371.4
Found 371
【0070】
実施例6<1−エチル−2−[1−エチル−1−(N−(3−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシプロピルアミノ))プロピル]ピロリジンの合成>
特開2007−246455号公報記載の方法で合成したピロリジン誘導体〔一般式(6)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、kが0である化合物〕0.864g(4.69mmol)とn-ドデシルグリシジルエーテル1.136g(4.69mmol、日本油脂株式会社製)を反応容器にて混合した後、ホットプレートスターラー(Reacti-Therm Heating/Stirring Module、PIEACE社製)を用いて120℃に昇温後、48時間昇温状態を維持した。反応終了後、2.00gの黄色粘性液体として1−エチル−2−[1−エチル−1−(N−(3−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシプロピルアミノ))プロピル]ピロリジン〔一般式(1)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、R
4が水素原子、R
5が一般式(2)で表される基(mは1、nは0、R
7がn−ドデシル基)、kが0である化合物、以下、化合物6という〕を得た(GC純度98%)。
【0071】
・1H-NMR(CD
3OD, 20℃)
δ 0.87-0.93 (m 9H), 1.02-1.05 (t 3H, J= 7.2Hz), 1.23-1.83 (m 28H), 2.36-2.47 (m 2H), 2.57-2.60 (m 1H), 2.67-2.83 (m 3H), 2.97-3.00 (m 1H), 3.30-3.33 (m 2H), 3.40-3.50 (m 4H) 3.67-3.73 (m 1H)
・GC/MS
Retention time: 23.525
Calculated for C
26H
55N
2O
2+ [M+H]
+ 427.4
Found 427
【0072】
実施例7<1−エチル−2−[1−エチル−1−(N−(3−n−イソステアリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルアミノ))プロピル]ピロリジンの合成>
特開2007−246455号公報記載の方法で合成したピロリジン誘導体〔一般式(6)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、kが0である化合物〕0.722g(3.92mmol)とイソステアリルグリシジルエーテル1.278g(3.91mmol、日本油脂株式会社製)を反応容器にて混合した後、ホットプレートスターラー(Reacti-Therm Heating/Stirring Module、PIEACE社製)を用いて120℃に昇温後、48時間昇温状態を維持した。反応終了後、2.00gの黄色粘性液体として1−エチル−2−[1−エチル−1−(N−(3−n−イソステアリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルアミノ))プロピル]ピロリジン〔一般式(1)中のR
1がエチル基、R
2、R
3が、それぞれエチル基、R
4が水素原子、R
5が一般式(2)で表される基(mは1、nは0、R
7がイソステアリル基)、kが0である化合物、以下、化合物7という〕を得た(GC純度99%)。
【0073】
・1H-NMR(CD
3OD, 20℃)
δ 0.83-0.93 (m 12H), 1.02-1.05 (t 3H, J= 7.2Hz), 1.20-1.85 (m 37H), 2.35-2.45 (m 2H), 2.53-2.58 (m 1H), 2.68-2.85 (m 3H), 2.94-3.00 (m 1H), 3.30-3.46 (m 6H), 3.68-3.74 (m 1H)
【0074】
試験例1
合成メラニン(Aldrich)に含む溶液に、化合物1〜3を添加した場合の効果を調べた。ガラス容器に、下記表1に示す配合量の溶液を調製し、調製直後の吸光度(600nm)と調製後30分後の吸光度(600nm)を、ビー・エー・エス株式会社製SEC2000−UV/VISスペクトロメーターを用いたシステムにて測定し、次式により合成メラニンの分解率を算出した。なお、表1中、かっこ内の数字は各水溶液中の有効分の配合量である。
【0075】
【数1】
【0076】
【表1】
【0077】
*1 非イオン界面活性剤:ソフタノール90、第2級高級アルコールエトキシレート、株式会社日本触媒製
【0078】
試験例2
表2に示す組成のA液及びB液を調製し、両者を等量(体積比1:1)混合し、酸化性組成物であるカビ取り剤組成物を得た〔(C)成分の含有量は過酸化水素としての量である。〕。A液とB液は、硫酸及び/又は水酸化ナトリウムを用いてpHを調整した。この組成物を使用し、下記のカビ汚れ洗浄試験を実施した。その結果を下記表2に示す。なお、A液とB液を等量混合した組成物のpH(20℃)は、何れも12.0であった。また、A液とB液を等量混合した直後の組成物中の各成分の含有量は、表2中の数値(質量%)の1/2となる。なお、各試験例の(A)成分の含有量が同モル濃度となるように、(A)成分の質量濃度を調整している。
【0079】
<カビ汚れ洗浄試験>
クラドスポリウム(Cladosporium)属細菌を素焼きタイルに接種し、温度30℃、湿度100%RHで60日間培養したものをカビ発生タイルとし、漂白性能を比較した。
【0080】
カビ発生タイルに上記カビ取り剤組成物を20μl滴下し、直径約1cmとし、25℃で20分放置後、水洗、風乾した後、色差計(日本電色工業製SE6000)を用いて明度(L)値を測定し、次式により漂白率を算出した。
【0081】
【数2】
【0082】
【表2】
【0083】
表2の結果から、(B)成分と(C)成分と(D)成分の併用系に(A)成分を用いることで、漂白率が大幅に向上することがわかる。
【0084】
また、試験例1、2で用いた化合物1〜7を以下に示す。
【0085】
【化10】