特許第6057825号(P6057825)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057825
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】道床掻き上げ作業補助装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 27/04 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
   E01B27/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-90164(P2013-90164)
(22)【出願日】2013年4月23日
(65)【公開番号】特開2014-214436(P2014-214436A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390007607
【氏名又は名称】大鉄工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591159837
【氏名又は名称】東進産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】福井 義弘
(72)【発明者】
【氏名】木川 浩介
(72)【発明者】
【氏名】坂本 士
(72)【発明者】
【氏名】北野 生喜
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−216703(JP,A)
【文献】 特開平09−268508(JP,A)
【文献】 特開平02−304123(JP,A)
【文献】 実公昭49−032402(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 27/00−37/00
E02F 3/54
E02F 3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道床掻き上げ作業者(P)が把持する掻き上げ具(S)に一端(1a)が連繋されるロープ(1)と、該ロープ(1)の他端(1b)が取着されるロープ固定部(31)を有する基枠(3)と、該基枠(3)に設けられ該ロープ(1)の一端(1a)を引き上げるための引き上げ手段(2)と、を備え、
上記引き上げ手段(2)は、電動モータ(M)によって回転可能なピニオン(20)と、該ピニオン(20)に噛合する第1ラック部(25)と上記ロープ(1)が懸架される第1滑車(23)とを有する第1スライド部材(21)と、上記ピニオン(20)に噛合する第2ラック部(26)と上記ロープ(1)が懸架される第2滑車(24)とを有する第2スライド部材(22)と、を備え、
上記ピニオン(20)を介して上記第1スライド部材(21)と上記第2スライド部材(22)とは相反方向に直線往復移動自在であり、
上記ロープ(1)を上記第1滑車(23)及び上記第2滑車(24)にS字を描くように懸架し、上記ピニオン(20)の回転によって、上記第1スライド部材(21)と上記第2スライド部材(22)を電動直線移動させて、上記ロープ(1)の描く上記S字を扁平変化させつつ、上記ロープ(1)の一端(1a)を引き上げるように構成したことを特徴とする道床掻き上げ作業補助装置。
【請求項2】
上記電動モータ(M)と上記ピニオン(20)の間に介装されるクラッチ装置(7)と、
上記第1スライド部材(21)及び上記第2スライド部材(22)の少なくとも一方を上記電動直線移動に抗するように弾発付勢する弾発付勢手段(6)と、を設け、
さらに、上記クラッチ装置(7)をクラッチ切り離し状態とした際に、上記第1スライド部材(21)及び上記第2スライド部材(22)を上記弾発付勢手段(6)の弾発付勢力によって上記電動直線移動の開始前位置に戻すようにして、上記ロープ(1)の一端(1a)を引き下げ可能に構成した請求項1記載の道床掻き上げ作業補助装置。
【請求項3】
上記電動モータ(M)及び上記クラッチ装置(7)を電気的に操作するための操作部(8)を、上記掻き上げ具(S)の把持部(Sa)に付設した請求項2記載の道床掻き上げ作業補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道床掻き上げ作業補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、砂利や砕石によって形成される鉄道の道床は、列車の振動や風雨等によって崩れるため、スコップや熊手を用いて人力により砂利や砕石を掻き上げていた。
このような道床掻き上げ作業は重労働であるため、道床裾部で、スコップを把持する掻き上げ作業者と、道床上部で、スコップに繋がれたロープを引っ張る引き上げ作業者とに、役割分担して共同作業を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−109624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ロープ引き上げ作業は、重労働であり長時間作業することが困難といった問題や、一人の道床掻き上げ作業者と、複数人のロープ引き上げ作業者を配置するため、人手がかかり効率が悪いといった問題があった。また、引き上げ作業者の疲労や引き上げのタイミングにより引き上げ力が安定せず、掻き上げ作業者にも負担がかかっていた。
【0005】
そこで、本発明は、道床掻き上げ作業者が一人で、長時間にわたって容易かつスムーズに道床掻き上げ作業を行うことが可能な道床掻き上げ作業補助装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の道床掻き上げ作業補助装置は、道床掻き上げ作業者が把持する掻き上げ具に一端が連繋されるロープと、該ロープの他端が取着されるロープ固定部を有する基枠と、該基枠に設けられ該ロープの一端を引き上げるための引き上げ手段と、を備え、上記引き上げ手段は、電動モータによって回転可能なピニオンと、該ピニオンに噛合する第1ラック部と上記ロープが懸架される第1滑車とを有する第1スライド部材と、上記ピニオンに噛合する第2ラック部と上記ロープが懸架される第2滑車とを有する第2スライド部材と、を備え、上記ピニオンを介して上記第1スライド部材と上記第2スライド部材とは相反方向に直線往復移動自在であり、上記ロープを上記第1滑車及び上記第2滑車にS字を描くように懸架し、上記ピニオンの回転によって、上記第1スライド部材と上記第2スライド部材を電動直線移動させて、上記ロープの描く上記S字を扁平変化させつつ、上記ロープの一端を引き上げるように構成したものである。
【0007】
また、上記電動モータと上記ピニオンの間に介装されるクラッチ装置と、上記第1スライド部材及び上記第2スライド部材の少なくとも一方を上記電動直線移動に抗するように弾発付勢する弾発付勢手段と、を設け、さらに、上記クラッチ装置をクラッチ切り離し状態とした際に、上記第1スライド部材及び上記第2スライド部材を上記弾発付勢手段の弾発付勢力によって上記電動直線移動の開始前位置に戻すようにして、上記ロープの一端を引き下げ可能に構成したものである。
また、上記電動モータ及び上記クラッチ装置を電気的に操作するための操作部を、上記掻き上げ具の把持部に付設したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、引き上げ作業者が不要となり、掻き上げ作業者ひとりで、人手をかけずに効率的かつ安全に作業を行うことができる。電動による強い引き上げ力を、安定して得られ、掻き上げ作業者の負担を軽減できる。装置全体の高さを低くすることができ、安定設置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態を示す正面図である。
図2】平面図である。
図3】断面正面図である。
図4】ロープ引き上げ状態を示す断面正面図である。
図5】掻き上げ具の把持部を示す要部拡大図である。
図6】要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係る道床掻き上げ作業補助装置は、図1に示すように、鉄道等の軌道Rが敷設された道床Jの裾部に配置される道床掻き上げ作業者Pの道床掻き上げ作業を補助するものであって、道床掻き上げ作業者Pが把持するスコップ等の掻き上げ具Sの先端掻上部Sd近傍に一端1aが連繋されるロープ1と、軌道Rを走行可能な台車Dに載置されロープ1の他端1bが取着される基枠3と、基枠3に設けられロープ1の一端1aを道床上部側へ電動にて引き上げるための引き上げ手段2と、を備えている。
【0011】
図2及び図3に示すように、基枠3は、左右一方側に、ロープ1を基枠3の内部に導入するための開口部30と、ロープ1が懸架される両外鍔付きのガイドローラ32と、を有し、左右他方側に、基枠3の内部に導入されたロープ1の他端1bを固定するためのロープ固定部31を有している。
【0012】
引き上げ手段2は、電動モータMと、電動モータMによって回転可能なピニオン20と、ピニオン20と噛合する第1ラック部25とロープ1が懸架される第1滑車23を有する第1スライド部材21と、第1スライド部材21を左右水平方向に直線往復移動可能にガイドする第1ガイドレール27と、ピニオン20と噛合する第2ラック部26とロープ1が懸架される第2滑車24を有する第2スライド部材22と、第2スライド部材22を左右水平方向に直線往復移動可能にガイドする第2ガイドレール28と、を備えている。
【0013】
第1ガイドレール27を基枠3の内部下面37に固着し、第2ガイドレール28を基枠3の内部上面38に固着して、ピニオン20を挟んで上下方向対面状に配設し、第1ラック部25と第2ラック部26を上下方向対面状にピニオン20に噛合させて、ピニオン20を介して第1スライド部材21と第2スライド部材22とを相反方向に直線往復移動自在に設けている。このように上下一対に配設して、基枠3の前後方向寸法を小さくして、基枠3の薄型化を実現している。
【0014】
さらに、基枠3において、ロープ1の一端1a側をガイドローラ32に懸架し、ロープ1の他端1bをロープ固定部31に固定し、ガイドローラ32とロープ固定部31の間のロープ1の中間部1dを、第1滑車23及び第2滑車24にS字(Z字)を描くように懸架している。より具体的には、基枠3の左右一方側から順に、ロープ1を、ガイドローラ32の上面側、第1滑車(下側滑車)23の下面側、第2滑車(上側滑車)24の上面側、に懸架し、他端1bをロープ固定部31に固定している。
【0015】
ここで、図6に示すように、第1スライド部材21は、第1ラック部25と、第1滑車23と、が平面視で重ならないように、(異なる前後方向位置に)設けると共に、第1滑車23を、前後水平状軸心廻りに回転自在に設けている。
また、図示省略するが、(第1スライド部材21と同様に)第2スライド部材22は、第2ラック部26と第2滑車24との前後方向位置を相違して配設し、第2滑車24を前後水平状軸心廻りに回転自在に設けている。
【0016】
また、第1滑車23と第2滑車24との前後方向位置を一致させ、ロープ1を、鉛直一平面上にS字を描くように保持している。つまり、第1・第2ラック部25,26と、ロープ1と、が平面視で交差しない(重ならない)ように配設している。
【0017】
そして、図4に示すように、電動モータMによるピニオン20の回転にて、第1スライド部材21と第2スライド部材22を電動直線移動させて、ロープ1の中間部1dが描くS字を左右外方へ引き延ばすように扁平変化させつつ、ロープ1を基枠3内に引き込むように構成している。
【0018】
より具体的には、ピニオン20の電動回転によって、第2スライド部材22を左右一方へ電動直線移動可能とし、第1スライド部材21を左右他方へ電動直線移動可能に設けている。そして、ピニオン20を電動回転させる前は(第1・第2スライド部材21,22の電動直線移動の開始前位置では)、第1滑車23の軸心L23を第2滑車24の軸心L24よりも左右一方側に配設している。また、第1滑車23と第2滑車24とは、正面視でピニオン20の回転軸心L20に関して(中心点として)、相互に点対称位置に配設されており、電動直進移動による第1滑車23と第2滑車24との水平方向のスライド寸法は同じである。
このように、第1・第2滑車23,24を配設することで、基枠3の左右方向寸法を小さくしながらも、十分なスライド寸法を確保できる。
【0019】
そして、ピニオン20の電動回転によって、第1滑車23を、ガイドローラ32(ロープ1の一端1a)から水平方向に離間させると共に、第2滑車24をロープ固定部31(ロープ1の他端1b)から水平方向に離間させ、第1滑車23と第2滑車24とが接近し、平面視で交差した後、水平方向に離間して、ロープ1を基枠3内に引き込んで、図1に二点鎖線で示すように、ロープ1の一端1a(先端掻上部Sd)を引き上げる。
【0020】
そして、描いたS字が扁平変化するロープ1の中間部1dは、第1滑車23に水平方向に折り返して懸架されると共に第2滑車24に水平方向に折り返して懸架されるようになり、ロープ1は、スライド寸法の約4倍の長さ寸法が基枠3内に引き込まれる。
【0021】
次に、図2に示すように、電動モータMとピニオン20の間にクラッチ装置7を介装している。電動モータMの回転力は、チェーン等の(可撓性)動力伝達部材Tにてクラッチ装置7の入力軸72に入力され、内部のクラッチ機構を介して、出力軸71に伝達され、ピニオン20を電動回転させるように設けている。
また、クラッチ装置7のクラッチ切り離し状態では、ピニオン20は、電動モータMから回転力や制動力(ブレーキ力)を受けず、回転自由状態である。
【0022】
また、図2乃至図4に示すように、第1スライド部材21及び第2スライド部材22の少なくとも一方を電動直線移動に抗するように弾発付勢する弾発付勢手段6を備えている。
弾発付勢手段6は、例えば、スプリングバランサ60であって、ケーシング61内に渦巻きバネ(ゼンマイバネ)を有し、ケーシング61から引き出されている可撓線材62をケーシング61内部に常時引き込む(巻き取る)方向に弾発付勢力を発揮するものである。可撓線材62の先端62aを第2スライド部材22に連結して、第2スライド部材22を電動直線移動に抗して弾発付勢するように設けている。
なお、弾発付勢手段6は、第1スライド部材21を、電動直線移動に抗して弾発付勢するように設けても良い。或いは、第1・第2スライド部材21,22の両方を電動直線移動に抗して弾発付勢するように設けても良い。
【0023】
第1・第2スライド部材21,22の電動直線移動の完了後(図4参照)に、クラッチ装置7をクラッチ切り離し状態にしてピニオン20を回転自由状態とし、弾発付勢手段6の弾発力によって、第2スライド部材22を電動直線移動方向の反対へ弾発直線移動させる。そして、その弾発直線移動によって、ピニオン20を電動回転方向と反対に回転させ、第1スライド部材21も電動直線移動方向の反対へ移動(弾発直線移動)させて、第1・第2スライド部材21,22を、電動直線移動の開始前位置(図3参照)に戻すことで、ロープ1の一端1aの引き下げを可能としている。
【0024】
また、図5に示すように、電動モータMの回転・停止と、クラッチ装置7のクラッチ接続・切り離しと、を電気的に操作するための押しボタンスイッチ等の操作部8を、掻き上げ具Sの把持部Saに付設している。
操作部8は、作業者Pが把持部Saを把持した手(片手)で操作可能に設けている。また、電動モータMやクラッチ装置7への命令信号を、無線にて伝達可能な無線通信部を有している。また、命令信号を受信して電動モータM及びクラッチ装置7を制御する制御部を基枠3に設けている。
【0025】
操作部8を操作した状態(ON状態)では、クラッチ装置7のクラッチ接続状態で電動モータMが回転し、ピニオン20を電動回転させて、ロープ1の一端a(先端掻上部Sd)を引き上げる。
操作部8の非操作状態(OFF状態)では、電動モータMの回転を停止させると共に、クラッチ装置7をクラッチ切り離し状態として、ピニオン20を回転自由状態にし、ロープ1の一端1aを引き下げ可能とする(先端掻上部Sdを引き上げ前位置に戻すことを可能とする)。
【0026】
第1・第2スライド部材21,22の電動直線移動の停止は、リミットスイッチ等にて電動モータMを制御するのが望ましい。また、第1・第2スライド部材21,22の弾発直線移動の停止は、第1スライド部材21及び第2スライド部材22の少なくとも一方に当接するストッパ部材を設けるのが望ましい。
【0027】
次に、本発明の道床掻き上げ作業補助装置の使用方法(作用)について説明する。
作業者Pが道床裾部に堆積している砂利や砕石群に、掻き上げ具Sの先端掻上部Sdを差込んで、操作部8をON操作する。
すると、第1・第2スライド部材21,22の電動直線移動によって、第1滑車23及び第2滑車24に懸架されたロープ1が描くS字が扁平変化しつつ、ロープ1を基枠3内に引き込む。
【0028】
基枠3内にロープ1が引き込まれることで、ロープ1の一端1aが道床上部側へ移動し、把持部Saを中心として、先端掻上部Sdが電動モータMの力にて上方揺動し、道床(砂利や砕石)を掻き上げる。
【0029】
その後、作業者Pが把持部Saを把持したままで、操作部8をOFF操作すると、ピニオン20が回転自由状態となり、第1スライド部材21及び第2スライド部材22が弾発付勢手段6によって、弾発直線運動する。先端掻上部Sdが上昇揺動した掻き上げ具Sの荷重(自重)や作業者Pからの引き戻し力を受けて、ロープ1は、一端1a側へテンションが付与されているので、第1・第2滑車23,24やガイドローラ32への懸架が保持され(基枠3内でロープ1が大きく撓むことなく)、第1・第2スライド部材21,22は、電動直進移動の開始前位置に戻って、再びON操作されるまで、引き上げ待機状態となる。
【0030】
道床掻き上げ作業者Pは、掻き上げ具Sの姿勢を整える程度の弱い力で把持していればよく、先端掻上部Sdを上昇揺動させるような労力を必要とせず、道床掻き上げ作業をひとりで、長時間、安全に行える。
【0031】
なお、本発明は、設計変更可能であって、弾発付勢手段6は、圧縮コイルバネや引っ張りバネ、ガススプリング等機械的な弾発力を発揮可能なものであれば良い。また、ピニオン20を電動回転させる前状態(図3参照)で、第1滑車23の軸心L23を第2滑車24の軸心L24よりも左右他方側に配設して、ピニオン20の電動回転によって、第1滑車23と第2滑車24とが、ロープ1の描くS字を扁平変化させるように、左右水平方向に離間するように設けても良い。掻き上げ具Sは、スコップに限らず、熊手やクワ等の手持ち道具であれば良い。
【0032】
なお、説明を容易にするために、(図1に示すような)道床Jの左右一方側斜面の掻き上げ作業を行う際の使用状態を基準姿勢として方向を説明している。つまり、道床J(軌道R)幅方向を左右方向と呼び、道床J(軌道R)の長手方向を前後方向と呼んでいる。したがって、方向を基に、使用状態の姿勢を限定するものではない。なお、本発明に於て「S字状」に懸架するとは「Z字状」に懸架することも含む。
【0033】
以上のように本発明の道床掻き上げ作業補助装置は、道床掻き上げ作業者Pが把持する掻き上げ具Sに一端1aが連繋されるロープ1と、ロープ1の他端1bが取着されるロープ固定部31を有する基枠3と、基枠3に設けられロープ1の一端1aを引き上げるための引き上げ手段2と、を備え、引き上げ手段2は、電動モータMによって回転可能なピニオン20と、ピニオン20に噛合する第1ラック部25とロープ1が懸架される第1滑車23とを有する第1スライド部材21と、ピニオン20に噛合する第2ラック部26とロープ1が懸架される第2滑車24とを有する第2スライド部材22と、を備え、ピニオン20を介して第1スライド部材21と第2スライド部材22とは相反方向に直線往復移動自在であり、ロープ1を第1滑車23及び第2滑車24にS字を描くように懸架し、ピニオン20の回転によって、第1スライド部材21と第2スライド部材22を電動直線移動させて、ロープ1の描くS字を扁平変化させつつ、ロープ1の一端1aを引き上げるように構成したので、引き上げ作業者が不要となり、一ヶ所の道床掻き上げ作業現場に、作業者を一人配置すればよく、人手をかけずに効率的に道床掻き上げ作業を行うことができる。電動による強い引き上げ力を、安定して得られ、掻き上げ作業者の負担を軽減でき、長時間作業できる。また、引き上げ作業者が掻き上げ作業者に引っ張られて道床上部へ滑り落ちるような虞がなく安全に作業できる。また、大型の重機が必要なく、狭い現場や緊急作業に容易かつ迅速に対応できる。基枠3の高さ寸法と左右方向寸法を小さくでき、装置全体をコンパクトなものとしながら、第1・第2スライド部材21,22のスライド寸法の約4倍の長さ寸法をもってロープ1を引き上げることができる。
【0034】
また、電動モータMとピニオン20の間に介装されるクラッチ装置7と、第1スライド部材21及び第2スライド部材22の少なくとも一方を電動直線移動に抗するように弾発付勢する弾発付勢手段6と、を設け、さらに、クラッチ装置7をクラッチ切り離し状態とした際に、第1スライド部材21及び第2スライド部材22を弾発付勢手段6の弾発付勢力によって電動直線移動の開始前位置に戻すようにして、ロープ1の一端1aを引き下げ可能に構成したので、電動モータMを逆回転させて戻す場合に比べて、電動モータMの停止や逆回転への切り換わり待ち時間が発生せず、道床掻き上げ作業をテンポよく、迅速かつスムーズに行うことができる。
【0035】
また、電動モータM及びクラッチ装置7を電気的に操作するための操作部8を、掻き上げ具Sの把持部Saに付設したので、掻き上げ作業者Pは、手動にて直ちに引き上げと引き下げの切換え作動を起こすことができ、テンポ良く効率的に作業が行える。かつ作業時の安全性にも優れている。
【符号の説明】
【0036】
1 ロープ
1a 一端
2 引き上げ手段
3 基枠
6 弾発付勢手段
7 クラッチ装置
8 操作部
20 ピニオン
21 第1スライド部材
22 第2スライド部材
23 第1滑車
24 第2滑車
25 第1ラック部
26 第2ラック部
31 ロープ固定部
M 電動モータ
P 道床掻き上げ作業者
S 掻き上げ具
Sa 把持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6