特許第6057846号(P6057846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057846
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
   A47J27/00 103H
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-136057(P2013-136057)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-8870(P2015-8870A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】富田 真司
(72)【発明者】
【氏名】小暮 栄治
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 利弘
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5955462(JP,B2)
【文献】 特開2006−334119(JP,A)
【文献】 実開昭55−130618(JP,U)
【文献】 実開昭57−099616(JP,U)
【文献】 実開平02−001025(JP,U)
【文献】 特開2008−272095(JP,A)
【文献】 特開2012−010925(JP,A)
【文献】 特開2010−075521(JP,A)
【文献】 特開2002−156042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有する内ケースを備えた本体と、
前記内ケースの前記開口部の周縁部に載置されるフランジを有し該内ケースに出し入れ自在に収納される内釜と、
前記内釜の前記フランジの下面に全周に亘って当接するように前記内ケースの前記開口部の前記周縁部に配置された熱絶縁性を有するリング状の弾性部材と、
前記弾性部材を挟み保持する第一の保持リング及び第二の保持リングと、
前記第一の保持リング及び前記第二の保持リングを固定する固定手段とを備え、
前記弾性部材は、
前記内釜の前記フランジの下面に当接するリング状の基部と、該リング状の基部から全周に亘って外向きに張り出す張出部とを備え、該張出部が前記第一の保持リングと前記第二の保持リングとに上下から挟まれて保持されており、
前記固定手段は、
前記張出部を上方から挟む前記第一の保持リング及び前記張出部を下方から挟む前記第二の保持リングの一方から延出して他方に係合するリング組付用爪と、前記リング組付用爪の設置位置から平面視でリング中心からの規定角度の範囲内に配置され前記第二の保持リング及び前記内ケースの一方から延出し他方に係合する固定用爪とを備えることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記リング組付用爪と前記固定用爪とは、同一軸線上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
上部に開口部を有する内ケースを備えた本体と、
前記内ケースの前記開口部の周縁部に載置されるフランジを有し該内ケースに出し入れ自在に収納される内釜と、
前記内釜の前記フランジの下面に全周に亘って当接するように前記内ケースの前記開口部の前記周縁部に配置された熱絶縁性を有するリング状の弾性部材と、
前記弾性部材を挟み保持する第一の保持リング及び第二の保持リングと、
前記第一の保持リング及び前記第二の保持リングを固定する固定手段とを備え、
前記弾性部材は、
前記内釜の前記フランジの下面に当接するリング状の基部と、該リング状の基部から全周に亘って外向きに張り出す張出部とを備え、該張出部が前記第一の保持リングと前記第二の保持リングとに上下から挟まれて保持されており、
前記固定手段は、
前記張出部を上方から挟む前記第一の保持リング及び前記内ケースの一方から延出して他方に係合する固定用爪を備えることを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
前記第一の保持リングと前記第二の保持リングを挿通して前記内ケースに止着されるねじを、手前側と奥側のそれぞれに複数設けるとともに、手前側と奥側の各ねじ間の距離を異ならせたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記張出部を下方から挟む前記第二の保持リングは、高さの異なるものが複数種用意され、前記内釜の前記フランジの厚さに応じて選択的に使用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の炊飯器。
【請求項6】
高さの異なる前記第二の保持リング毎、又は高さの異なる前記第二の保持リングを有するシールユニット毎に、色を異ならせたことを特徴とする請求項5に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内釜とこれを収容する本体の内ケースとの間の隙間から熱が外部へ放出されるのを抑制できるシールユニットを備えた炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器において、内釜とこれを収容する本体の内ケースとの間の隙間から炊飯時及び保温時に熱が外部へ放出されるのを抑制して、省エネルギー化を図るようにしたものがある。例えば、本体の内ケースの開口部の周縁部における左右2個所に、それぞれ2列の円弧状突起によって溝を形成し、これら溝内には、それぞれ熱絶縁性を有する弾性部材を堤状に配置している。そして、弾性部材は、その上部を円弧状突起よりも上方に突出させて内釜のフランジ下面に当接できるようにしている。これによって、内釜と内ケースとの間の隙間から外部への放熱を抑制している。
このようなものにおいて、弾性部材の固定は、この弾性部材の複数個所に設けたアンカー部を、溝の底部の複数個所に形成した取り付け孔に差し込むことで行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4822915号公報(図5図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来は、熱絶縁性を有する弾性部材が、この弾性部材の複数個所に設けたアンカー部を、溝の底部の複数個所に形成した取り付け孔に差し込むことで、内ケースに固定されるようになっている。つまり、弾性部材は、全長に亘って固定されるものではなかった。そのため、弾性部材は、外れやすく、さらにアンカー部以外の部位が浮き上がり、変形しやすいという難点があった。
【0005】
また、溝と弾性部材とは、内ケースの開口部の周縁部における左右2個所に設置されている。つまり、溝と弾性部材は、内ケースの開口部の周縁部の全周に亘って設置されたものではなかった。そのため、内釜と内ケースとの間の隙間から弾性部材が設置されていない部位を通して熱が外部へ放出されるのを阻止できなかった。
【0006】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、弾性部材の浮き上がり及び変形を防止でき、かつ内釜と内ケースとの間の隙間から外部への放熱を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炊飯器は、上部に開口部を有する内ケースを備えた本体と、内ケースの開口部の周縁部に載置されるフランジを有し内ケースに出し入れ自在に収納される内釜と、内釜のフランジの下面に全周に亘って当接するように内ケースの開口部の周縁部に配置された熱絶縁性を有するリング状の弾性部材と、弾性部材を挟み保持する第一の保持リング及び第二の保持リングと、第一の保持リング及び第二の保持リングを固定する固定手段とを備え、弾性部材は、内釜のフランジの下面に当接するリング状の基部と、リング状の基部から全周に亘って外向きに張り出す張出部とを備え、張出部が第一の保持リングと第二の保持リングとに上下から挟まれて保持されており、固定手段は、張出部を上方から挟む第一の保持リング及び張出部を下方から挟む前記第二の保持リングの一方から延出して他方に係合するリング組付用爪と、リング組付用爪の設置位置から平面視でリング中心からの規定角度の範囲内に配置され第二の保持リング及び内ケースの一方から延出し他方に係合する固定用爪とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の炊飯器によれば、内ケースの開口部の周縁部に、内釜のフランジの下面に全周に亘って当接するリング状の弾性部材を設けているので、炊飯時及び保温時に内釜と内ケースとの間の隙間から外部への放熱を抑制できる。このため、炊飯器が炊飯時及び保温時に消費するエネルギーを減少させることができる。
また、弾性部材は、内釜のフランジの下面に当接するリング状の基部と、このリング状の基部から全周に亘って外向きに張り出す張出部とを備え、張出部が第一の保持リングと第二の保持リングとに上下から挟まれて保持されているので、弾性部材の浮き上がり及び変形を防止できる。
さらに、張出部を上方から挟む第一の保持リング及び張出部を下方から挟む前記第二の保持リングが、一方から延出して他方に係合するリング組付用爪によってユニット化され互いに固定されるとともに、このユニットが、リング組付用爪の設置位置から平面視でリング中心からの規定角度の範囲内に配置され第二の保持リング及び内ケースの一方から延出し他方に係合する固定用爪によって内ケースに固定されるようになっている。このため、各爪の配置が歪みづらい配置となり、第一の保持リングと第二の保持リングとを本体にしっかり固定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る炊飯器の全体構成を示す正面視の断面図である。
図2図1のA部の拡大断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係る炊飯器の全体構成を示す側面視の断面図である。
図4図3のB部の拡大断面図である。
図5】本発明の実施形態1に係る炊飯器の外観を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態1に係る炊飯器を蓋体を開けた状態で示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態1に係る炊飯器を内釜と蓋体を省略した状態で示す平面図である。
図8】本発明の実施形態1に係る炊飯器のシールユニットの分解斜視図である。
図9】本発明の実施形態1に係る炊飯器の第一の保持リング(上リング)と第二の保持リング(下リング)との係合部、及び第一の保持リング(上リング)と内ケースとの係合部を示す縦断面図である。
図10】本発明の実施形態1に係る炊飯器のシールユニットと内ケースとのねじ止着部を示す縦断面図である。
図11】本発明の実施形態2に係る炊飯器の第一の保持リング(上リング)と第二の保持リング(下リング)との係合部を示す縦断面図である。
図12】本発明の実施形態2に係る炊飯器の第二の保持リング(下リング)と内ケースとの係合部を示す縦断面図である。
図13】本発明の実施形態3に係る炊飯器の第一の保持リング(上リング)と内ケースとの係合部を示す縦断面図である。
図14】本発明の実施形態4に係る炊飯器の第二の保持リング(下リング)と内ケースとの係合部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る炊飯器を説明する。なお、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。
なお、以下の説明において、理解を容易にするために位置を表す用語(例えば「上」、「下」、「前」、「後」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本願発明を限定するものではない。
【0011】
実施形態1.
図1は本発明の実施形態1に係る炊飯器の全体構成を示す正面視の断面図である。図2図1のA部の拡大断面図である。図3は本発明の実施形態1に係る炊飯器の全体構成を示す側面視の断面図である。図4図3のB部の拡大断面図である。図5は本発明の実施形態1に係る炊飯器の外観を示す斜視図である。図6は本発明の実施形態1に係る炊飯器を蓋体を開けた状態で示す斜視図である。図7は本発明の実施形態1に係る炊飯器を内釜と蓋体を省略した状態で示す平面図である。
本発明の実施形態1に係る炊飯器100は、図1図3図5及び図6に示すように、本体1と、本体1にヒンジ機構部2を介して取り付けられた蓋体5とを備えている。蓋体5は、ラッチ3と解除ボタン4とによって開閉される。また、炊飯器100は、本体1内に、上部に開口部6aを有し、底部にコイル台が固定された樹脂製の内ケース6を備えており、内ケース6には、内釜7が出し入れ自在に収容される。コイル台の底部外周には、内釜7を電磁誘導加熱する加熱コイル8が配置されている。また、コイル台には、その底部中央に、貫通穴が形成され、この貫通穴に、内釜7の下面に接触して内釜7の温度を検出する温度センサー9が出没自在に設置されている。加熱コイル8は、電源基板11に実装された駆動部によって高周波電力が供給され内釜7を電磁誘導加熱する。すなわち、駆動部は、商用交流電源からの交流電圧を、図示しない整流部で一旦直流に変換し、その後、スイッチング素子のスイッチングによって高周波に変換し、この高周波電流を加熱コイル8に供給する。
【0012】
本体1の前部には、冷却水を貯留したタンク10が着脱自在に設置されている。また、蓋体5には、図6に示すように、内釜7とタンク10との間に介在して調理中に内釜7内の被加熱物から発生する蒸気をタンク10内に導いて冷却水中に放散させ復水させる蒸気導管13が設けられている。
【0013】
内釜7は、その上端にフランジ7aが形成され、このフランジ7aが内ケース6への収納時に、内ケース6の開口部6aの周縁部に載置されて支持される。また、内釜7は、内ケース6の開口部6aの周縁部に載置される際、この開口部6aの周縁部に配置されたシールユニット20によって、フランジ7aの下面がシールされる。
【0014】
シールユニット20は、図2及び図4に示すように、内釜7のフランジ7aの下面に全周に亘って当接する熱絶縁性を有するシリコンゴム製のリング状の弾性部材21と、弾性部材21を上下から挟み固定する第一の保持リング(以下、「上リング」という)22及び第二の保持リング(以下、「下リング」という)23とを備えている。上リング22と下リング23とは、いずれも同一の耐熱樹脂材料(例えばナイロン樹脂)で構成されている。
【0015】
弾性部材21は、内釜7のフランジ7aの下面に当接するリング状の基部21aと、リング状の基部21aから全周に亘って外向きに張り出す張出部21bとを有する。弾性部材21の内側には下リング23が配置され、弾性部材21の外側には、上リング22が配置されている。上リング22と下リング23とは、弾性部材21の張出部21bを上下から挟み固定している。
【0016】
また、下リング23における弾性部材21の張出部21bと対向する部位には、弾性部材位置決め用の環状の突条23cが設けられている。一方、弾性部材21における下リング23の環状の突条23cと対向する張出部21bには、環状の突条23cが嵌入できる環状の溝21cが設けられている。つまり、弾性部材21は、環状の溝21cの底部が上リング22と環状の突条23cとの間に挟まれて固定される。
【0017】
このように、シールユニット20は、フランジ7aの下面を全周に亘ってシールすることで、内ケース6の内周面と内釜7の外周面との間の隙間gを閉塞する。つまり、炊飯時及び保温時には、隙間gが蓄熱空間として構成される。さらに、内釜7は、蓋体5の閉時に、蓋体5側に設けたパッキン12がフランジ7aの上面及び内面に押圧されることによって密閉される。これによって、炊飯効率またはその後の保温性能が向上する。
【0018】
シールユニット20について、図8図10に基づき図1図7を参照しながら更に詳述する。図8は本発明の実施形態1に係る炊飯器のシールユニットの分解斜視図である。図9は本発明の実施形態1に係る炊飯器の第一の保持リング(上リング)と第二の保持リング(下リング)との係合部、及び第一の保持リング(上リング)と内ケースとの係合部を示す縦断面図である。図10は本発明の実施形態1に係る炊飯器のシールユニットと内ケースとのねじ止着部を示す縦断面図である。
シールユニット20は、図7中にC,D,E,Fで示す周方向の4個所に、それぞれ図9のように上リング22と下リング23を固定する固定手段50Aが設けられている。固定手段50Aは、上リング22から垂直下方に延出して下リング23の凹部23k内の突起23lと係合するリング組付用爪22aと、リング組付用爪22aと同一軸線上に配置されて下リング23から垂直下方に延出する固定用爪23iとを備えている。固定用爪23iは、内ケース6に設けた孔6bの一側から垂下する係合用片6cの下端と係合することで、内ケース6すなわち本体1側に固定される。すなわち、シールユニット20は、周方向の4個所において、上リング22から垂直下方に延出するリング組付用爪22aが下リング23の突起23lと係合することで、互いに固定される。そして、このように弾性部材21と上リング22と下リング23とが組み付けられたシールユニット20は、リング組付用爪22aと同一軸線上に配置されるように下リング23に設けた固定用爪23iが内ケース6の係合用片6cと係合することで、本体1側に固定される。なお、リング組付用爪22aとこれが係合する突起23lとの位置関係、及び固定用爪23iとこれが係合する係合用片6cとの位置関係は逆でもよい。
【0019】
また、シールユニット20には、図2図6及び図7のようにリング中心を挟む対称となる位置に、それぞれ外周面から径方向内方へ凹陥する少なくとも一対の切欠き41,42が設けられている。切欠き41,42は、ここではシールユニット20のリング中心を通りヒンジ機構部2の軸線と平行となる仮想線上、つまり、内ケース6の開口部6aの周縁部の左右両側に、対称となるように配置されている。そして、これら切欠き41,42の部分で結果的に内釜7のフランジ7aが外側に突出する形となり、その部分が図6のようにフランジ把持空間として形成されるようにしている。さらにこの左右両側の位置は、内釜7のフランジ7aが両手で持ち易い位置であるため、内釜7の出し入れが容易となる。
また、切欠き41,42によって、本体1の左右の外郭とシールユニット20との間の寸法Aを、本体1の外郭の大きさを変えずに、少なくとも指が入る寸法である15mm以上とすることができ、掃除が容易となる。
【0020】
一方、上リング22の切欠き形成部22bは、径方向幅が狭くなっていて、他部位と比較して強度が弱く、変形し易いところである。そのため、上リング22の切欠き形成部22bの外周側には、図7及び図8に示すように、下リング23から補強用のリブ23fを突出させて設けている。
【0021】
また、シールユニット20は、図7及び図8に示すように、上リング22と下リング23のヒンジ機構部2と正対する部位の外周面が、それぞれ径方向内方に突状に湾曲する湾曲面22e,23jとして形成されている。そして、これら湾曲面22e,23jによって、本体1の奥部にある蓋体5のヒンジ機構部2とシールユニット20におけるヒンジ機構部2に正対した部位との間の寸法Bを、本体1の外郭の大きさを変えずに、少なくとも指が入る寸法である15mm以上とすることができ、掃除が容易となる。
【0022】
また、下リング23の内周壁23bの内面の周方向複数個所に、図8に示すように、内釜心出し用の突部23eを設け、内釜7の心出しができるようにしている。
【0023】
また、上リング22には、図7図8及び図10に示すように、手前側と奥側の左右に、それぞれ外向きに張り出すダボ形成部22dが設けられ、各ダボ形成部22dに下方へ突出するダボ22cが形成され、各ダボ22cにねじ挿通孔が設けられている。また、下リング23には、上リング22のダボ形成部22dに対応する位置に、それぞれダボ穴形成部23hが設けられ、そこに上リング22のダボ22cが嵌入できるダボ穴23gが設けられている。また、内ケース6の開口部6aの周縁部には、下リング23の各ダボ穴23gに対応する位置に、それぞれねじ穴6dが形成されている。すなわち、シールユニット20は、上リング22と下リング23との間に弾性部材21が挟みこまれ、各ダボ22cと各ダボ穴23gによって上リング22と下リング23が互いに位置決めされる。そして、シールユニット20は、図9のように上リング22のリング組付用爪22aによって上リング22と下リング23が互いに組み付けられ、固定される。そして、このように各部品が組み付けられて固定されたシールユニット20は、図9のように下リング23の固定用爪23iによって内ケース6に仮固定される。そして、内ケース6に固定されたシールユニット20は、図10のように各ダボ22cと各ダボ穴23gに挿通して内ケース6の各ねじ穴に螺合する複数のねじ30によって本体1側に本締めされ、更に固定される。
【0024】
また、左右のねじ30間の距離は、手前側と奥側で異ならせ、手前側のねじ30間の距離を奥側よりも大きくし、前後の位置が分かるようにしている。このため、前後方向の組み間違いを防止でき、組立て作業性が向上する。
【0025】
次に、本発明の実施形態1に係る炊飯器100の動作を図1図10に基づき説明する。
使用者によって操作部からの設定に基づく炊飯指示等の加熱開始の指示がなされると、制御部は、駆動部の制御を開始する。駆動部は、商用交流電源からの交流電圧を、整流部で一旦直流に変換し、その後、スイッチング素子のスイッチングによって高周波に変換し、この高周波電流が加熱コイル8に供給される。加熱コイル8に高周波電流が流れると、加熱コイル8からは交番磁界が発生し、これによって内釜7に磁束が与えられる。これによって内釜7には渦電流が発生し、この渦電流と内釜7の電気抵抗によってジュール熱が発生し、内釜7が加熱され、炊飯が行われる。
【0026】
炊飯動作中は、パッキン12でシールされた内釜7の内側と、弾性部材21でシールされた内釜7の外側、つまり内ケース6の内周面と内釜7の外周面との間の隙間gも相当の高温となる。
【0027】
本発明の実施形態1に係る炊飯器100は、内ケース6の開口部6aの周縁部に、内釜7のフランジ7aの下面に全周に亘って当接してシールする弾性部材21を設けているので、炊飯時及び保温時に内釜7と内ケース6との間の隙間gから外部への放熱を抑制できる。このため、炊飯器100が炊飯時及び保温時に消費するエネルギーを減少させることができる。
【0028】
また、弾性部材21が、これを保持する上リング22及び下リング23と共にシールユニット20として構成されているので、弾性部材21の組立性がよく、かつ本体組立ライン以外でのサブ組立もでき、本体組立ラインの簡素化が図れる。
【0029】
また、弾性部材21には、内釜7のフランジ7aの下面に当接するリング状の基部21aと、リング状の基部21aから全周に亘って外向きに張り出す張出部21bとを設け、張出部21bが上リング22と下リング23とで上下から挟まれて固定されているので、弾性部材21の浮き上がり及び変形を防止できる。
【0030】
また、シールユニット20は、周方向の4個所において、上リング22から垂直下方に延出するリング組付用爪22aが下リング23の突起23lと係合することで、互いに固定される。そして、このように弾性部材21と上リング22と下リング23とが組み付けられたシールユニット20は、リング組付用爪22aと同一軸線上(上下の位置関係となるよう)に配置されるように下リング23に設けた固定用爪23iが内ケース6の係合用片6cと係合することで、本体1側に固定される。そのため、リング組付用爪22aと固定用爪23iの配置が歪みづらい配置となり、上リング22と下リング23とを本体1にしっかり固定させることができる。
【0031】
また、下リング23における弾性部材21の張出部21bと対向する部位には、弾性部材位置決め用の環状の突条23cを設け、弾性部材21の張出部21bには、環状の突条23cが嵌入できる環状の溝21cを設けているので、製造時の組立作業が容易となる。
【0032】
また、弾性部材21は、環状の溝21cの底部が下リング23の環状の突条23cと上リング22との間に挟まれて固定されるので、上リング22と下リング23は、小さな押付力(保持力)で弾性部材21を保持することができる。
【0033】
また、上リング22と下リング23は、いずれも同一の耐熱樹脂材料で構成されているので、炊飯中の熱に伴う膨張または炊き上がり後の収縮が同一となり、熱に伴う変形が抑制される。
【0034】
また、上リング22の切欠き形成部22bの外周側に、下リング23からリブ23fを突出させて設けているので、上リング22の取付時の変形(広がり)を防止できる。
【0035】
また、下リング23の内周壁23bの内面の周方向複数個所に、内釜心出し用の突部23eを設け、内釜7の心出しをできるようにしているので、内釜7の外周面と内ケース6の内周面との間の空間(隙間g)が均一になり温度ムラが無くなる。さらに、蓋体5側のパッキン12との心出しもできる。
【0036】
なお、以上はリング組付用爪22aの設置位置から平面視でリング中心からの規定角度の範囲内に固定用爪23iを配置する際に、上リング22と下リング23の最も安定した固定状態が得られる形態、つまりリング組付用爪22aと固定用爪23iとを同一軸線上に配置する実施形態について説明した。しかし、リング組付用爪22aと固定用爪23iとは、必ずしも同一軸線上に配置する必要はなく、リング組付用爪22aの設置位置から平面視でリング中心からの規定角度の範囲内に固定用爪23iを配置されるようにすることで、所期の目的は達成できる。次にリング組付用爪22aの設置位置から平面視でリング中心からの規定角度の範囲内に固定用爪23iをずらせた実施形態について説明する。
【0037】
実施形態2.
図11は本発明の実施形態2に係る炊飯器の第一の保持リング(上リング)と第二の保持リング(下リング)との係合部を示す縦断面図である。図12は本発明の実施形態2に係る炊飯器の第二の保持リング(下リング)と内ケースとの係合部を示す縦断面図である。各図中、前述の実施形態1のものに相当する部分には同一符号を付してある。なお、炊飯器100の本体1、蓋体5、蒸気導管13、及びタンク10は、前述の実施形態1のものと同一構成となっているため説明を省略する。
本発明の実施形態2に係る炊飯器は、シールユニット20Aの周方向の4個所(図7のC,D,E,F参照)に、それぞれ上リング22と下リング23を固定する固定手段50Bが設けられている。固定手段50Bは、図11に示すように、上リング22から下方に延出して下リング23の孔23aのエッジと係合するリング組付用爪22aと、図12に示すように、リング組付用爪22aの設置位置から平面視でリング中心からの規定角度の範囲内に配置された固定用爪23iとを備えている。固定用爪23iは、内ケース6に設けた孔6bの一側から垂下する係合用片6cの下端と係合することで、内ケース6すなわち本体1側に固定される。すなわち、シールユニット20Aは、周方向の4個所において、上リング22から下方に延出するリング組付用爪22aが下リング23の孔23aのエッジと係合することで、互いに固定される。そして、弾性部材21と上リング22と下リング23とが組み付けられたシールユニット20Aは、下リング23に設けた固定用爪23iが内ケース6の係合用片6cと係合することで、本体1側に固定される。なお、リング組付用爪22aとこれが係合する孔23aのエッジとの位置関係、及び固定用爪23iとこれが係合する係合用片6cとの位置関係は逆でもよい。
【0038】
爪構造というのは、どうしても爪延長方向に長くなってしまう。前述の実施形態1のように同一軸線上に複数の爪構造を配置した場合、固定強度の確保は容易になるが、爪延長方向に長くなる問題が存在する。
【0039】
本発明の実施形態2に係る炊飯器のように、リング組付用爪22aの設置位置から平面視でリング中心からの規定角度の範囲内に固定用爪23iを配置することで、固定強度を確保しつつ爪延長方向の寸法を小さくすることができる。
【0040】
なお、ここでは、リング組付用爪22aに周方向でずらせて固定用爪23iを配置するものを例に挙げて説明したが、これを径方向にずらせてもよい。
【0041】
実施形態3.
図13は本発明の実施形態3に係る炊飯器の第一の保持リング(上リング)と内ケースとの係合部を示す縦断面図である。図中、前述の実施形態1のものに相当する部分には同一符号を付してある。なお、炊飯器100の本体1、蓋体5、蒸気導管13、及びタンク10は、前述の実施形態1のものと同一構成となっているため説明を省略する。
本発明の実施形態3に係る炊飯器は、図13に示すように、シールユニット20Bの周方向の4個所(図7のC,D,E,F参照)に、それぞれ上リング22Aと下リング23を固定する固定手段50Cが設けられている。固定手段50Cは、図13に示すように、上リング22Aから下方に延出する爪を長めに形成して、これを固定用爪22fとして機能させたものである。すなわち、上リング22Aから下方に延出する固定用爪22fを内ケース6の孔6bのエッジと直接係合させ、上リング22Aと内ケース6との間に弾性部材21と下リング23を挟み付けたものである。なお、固定用爪22fとこれが係合する孔6bのエッジとの位置関係は逆でもよい。
【0042】
本発明の実施形態3に係る炊飯器においては、上リング22Aの爪を長めに形成して、これを固定用爪22fとして機能させているので、下リング23に固定用爪を形成する必要が無い。そのため、構造が簡略化され、組立性が向上するとともに、下リング23の特に高さ寸法のコンパクト化が図れ、延いては本体サイズの高さを抑えることができ、コスト低減に寄与する。
【0043】
実施形態4.
図14は本発明の実施形態4に係る炊飯器の第二の保持リング(下リング)と内ケースとの係合部を示す縦断面図である。図中、前述の実施形態1のものに相当する部分には同一符号を付してある。なお、炊飯器100の本体1、蓋体5、蒸気導管13、及びタンク10は、前述の実施形態1のものと同一構成となっているため説明を省略する。
【0044】
本発明の実施形態4に係る炊飯器は、図14に示すように、シールユニット20Cの下リング23Aの高さを変えて、薄肉の内釜7Aすなわち薄肉のフランジ7aに対応させたものである。下リング23Aは、その内ケース6への載置部から弾性部材21を挟持する部位までの高さ寸法が、前述の実施形態1〜実施形態3の下リング23よりも全周で大きくなっている。一方、弾性部材21と上リング22とは、前述の実施形態1のものと同じである。
【0045】
したがって、本発明の実施形態4に係る炊飯器においては、内釜7Aのフランジ7aを載置する高さ位置、換言すれば弾性部材21と上リング22を載置する高さ位置が高くなっている。それ以外の下リング23Aの構成、つまりシールユニット20Cの構成は前述の実施形態1のものと同一である。
【0046】
このように、本発明の実施形態4に係る炊飯器は、シールユニット20Cの下リング23Aの高さを変えるだけで、内釜7Aの厚さの違いに対応させることができる。なお、高さの異なる下リング23Aは、予め複数種用意され、製品に付けられて出荷され、使用者によって選択的に使用されるものである。また、高さの異なる下リング23Aは、製造段階で使用されてもよいものである。この場合、シールユニット20Cの下リング23A以外の部品の共通化が図れる。
【0047】
本発明の実施形態4に係る炊飯器は、前述の実施形態1が持つ機能を全て備えている。すなわち、シールユニット20Cには、前述の実施形態1と同様に、リング中心を挟む対称となる位置に、それぞれ外周面から径方向内方へ凹陥する少なくとも一対の切欠き41,42(図6及び図7参照)が設けられている。そのため、これら切欠き41,42の部分で結果的に内釜7Aのフランジ7aが外側に突出する形となり、その部分がフランジ把持空間として形成され、内釜7Aの取り出しが容易となっている。さらに、切欠き41,42によって、本体1の左右の外郭とシールユニット20Cとの間の寸法Aを、本体1の外郭の大きさを変えずに、少なくとも指が入る寸法である15mmとすることができ、掃除が容易となる。また、シールユニット20Cによって内釜7Aのフランジ7aの下面を密閉できるため、炊飯時、保温時の熱ロスを小さくでき、消費エネルギーを抑制できる。
【0048】
また、上リング22の切欠き形成部22bの外周側には、下リング23Aから補強用のリブ23fを突出させて設けているので(図8参照)、上リング22の取付時の変形(広がり)を防止できる。
【0049】
また、弾性部材21が、これを保持する上リング22及び下リング23Aと共にシールユニット20Cとして構成されているので、弾性部材21の組立性がよく、かつ本体組立ライン以外でのサブ組立もでき、本体組立ラインの簡素化が図れる。
【0050】
また、リング組付用爪(図9参照)の設置位置から平面視でリング中心からの規定角度の範囲内に固定用爪23iが配置されている。そのため、固定強度を確保しつつ爪延長方向の寸法を小さくすることができる。
【0051】
なお、高さの異なる下リング23A毎、又は高さの異なる下リング23Aを有するシールユニット20C毎に、色を異ならせてもよい。これによって、間違えて組み立てられるのを防止できる。
【符号の説明】
【0052】
1 本体、2 ヒンジ機構部、3 ラッチ、4 解除ボタン、5 蓋体、6 内ケース、6a 開口部、6b 孔、6c 係合用片、6d ねじ穴、7,7A 内釜、7a フランジ、8 加熱コイル、9 温度センサー、10 タンク、11 電源基板、12 パッキン、13 蒸気導管、20,20A、20B,20C シールユニット、21 弾性部材、21a リング状の基部、21b 張出部、21c 環状の溝、22,22A 第一の保持リング(上リング)、22a リング組付用爪、22b 上リングの切欠き形成部、22c ダボ、22d ダボ形成部、22e,23j 湾曲面、22f,23i 固定用爪、23,23A 第二の保持リング(下リング)、23a 孔、23b 内周壁、23c 環状の突条、23e 突部、23f リブ、23g ダボ穴、23h ダボ穴形成部、23k 凹部、23l 突起、30 ねじ、41,42 切欠き、50A,50B,50C 固定手段、100 炊飯器、g 隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14