特許第6057894号(P6057894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6057894充填済みシリンジ、注射デバイスおよび注射キットのための安全デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057894
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】充填済みシリンジ、注射デバイスおよび注射キットのための安全デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20161226BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   A61M5/32 510R
   A61M5/28
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-517169(P2013-517169)
(86)(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公表番号】特表2013-529985(P2013-529985A)
(43)【公表日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2011060316
(87)【国際公開番号】WO2012000832
(87)【国際公開日】20120105
【審査請求日】2014年6月16日
(31)【優先権主張番号】10168314.2
(32)【優先日】2010年7月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エクマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジェイムズ・スミス
(72)【発明者】
【氏名】トロイ・ベーカー
(72)【発明者】
【氏名】グラハム・ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】ガレス・ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・スレメン
【審査官】 鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0187522(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0111064(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0167611(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1362609(EP,A1)
【文献】 米国特許第5591138(US,A)
【文献】 特表2008−536598(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/019936(WO,A1)
【文献】 特開2002−28235(JP,A)
【文献】 特表2008−536597(JP,A)
【文献】 国際公開第03/045481(WO,A1)
【文献】 特表平6−502787(JP,A)
【文献】 特表2007−510501(JP,A)
【文献】 米国特許第5411487(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00−5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填済みシリンジ(2)が過失による針刺し怪我を起こすことを避けるための安全デバイス(1)であって、
−充填済みシリンジ(2)を中に保持するための中空支持体(1.2)、
−支持体(1.2)に対して摺動可能である中空ニードル・シールド(1.1)、および支持体(1.2)に対するニードル・シールド(1.1)の移動を案内する案内手段、を含んでなり、ここで案内手段は、
−ガイド・ピン(1.1.2)、
−ガイド・トラック(1.2.4)、
−ガイド・トラック(1.2.4)に隣接したカットアウト部(1.2.5)、
を含んでなり、ここでガイド・ピン(1.1.2)は、ニードル・シールド(1.1)が支持体(1.2)に対して摺動すると、ガイド・トラック(1.2.4)内に突入し、ガイド・トラック(1.2.4)内をそれに沿って移動し、
そしてここでカットアウト部(1.2.5)によってガイド・トラック(1.2.4)の側壁(1.2.6)が安全デバイス(1)の中心軸(A)に対して垂直な横方向(L)に曲げたわむことを可能にし、ニードル・シールド(1.1)および支持体(1.2)が互いに離れるように付勢するための圧縮スプリング(1.4)が支持体(1.2)内に配置され、ここでニードル・シールド(1.1)が実質的に支持体(1.2)内に収容される引込み位置にあるとき、圧縮スプリング(1.4)が圧縮且つ付勢されており、ガイド・トラック(1.2.4)が、その遠位端にある1つのU字形くぼみ(1.2.4.4)を含むが、1つのU字形くぼみ(1.2.4.4)は、ガイド・トラック(1.2.4)内の移動の終了位置(PIII)でガイド・ピン(1.1.2)を恒久的に保持するような形状とされ、ここでガイド・ピン(1.1.2)は、遠位でかつ横方向(L)で1つのU字形くぼみ(1.2.4.4)と、近位方向で側壁(1.2.6)の遠位端と当接して、ガイド・ピン(1.1.2)が終了位置(PIII)に錠止され、ここでガイド・ピン(1.1.2)が終了位置(PIII)に入る際に、ガイド・トラック(1.2.4)の側壁(1.2.6)が横方向に曲げたわみ、ニードル・シールド(1.1)は支持体(1.2)から突出して、前記針刺し怪我を防ぐ、
ことを特徴とする、上記安全デバイス(1)。
【請求項2】
ガイド・ピン(1.1.2)が、ニードル・シールド(1.1)または支持体(1.2)のいずれかから半径方向に延び、ガイド・トラック(1.2.4)が、ニードル・シールド(1.1)または支持体(1.2)のうちのもう一方に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の安全デバイス(1)。
【請求項3】
カットアウト部(1.2.5)の軸方向セクション(1.2.5.1)が、ガイド・トラック(1.2.4)のセクション(1.2.4.3)と平行に、そして中心軸(A)に対して平行に延びていることを特徴とする、請求項1または2に記載の安全デバイス(1)。
【請求項4】
ガイド・ピン(1.1.2)が、ニードル・シールド(1.1)の外面に一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項5】
ニードル・シールド(1.1)がガイド・トラック(1.2.4)に沿ったガイド・ピン(1.1.2)の移動によって、その初期位置(I)からその引込み位置(II)に、またはその引込み位置(II)からその前進位置(III)に移動したときに、ニードル・シールド(1.1)が支持体(1.2)に対して回転可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項6】
ガイド・トラック(1.2.4)が、ガイド・トラック(1.2.4)内の移動のスタート位置(PI)にガイド・ピン(1.1.2)を保持するような形状にされた別のU字形くぼみ(1.2.4.1)をさらに含むが、スタート位置(PI)にあるガイド・ピン(1.1.2)が、遠位でかつ横方向(L)でガイド・トラック(1.2.4)の別のU字形くぼみ(1.2.4.1)に当接し、近位方向で傾斜したカム作用面(1.2.4.2)に当接することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項7】
ガイド・ピン(1.1.2)が、ガイド・トラック(1.2.4)の弧状部分(1.2.4.5)に当接してガイド・ピン(1.1.2)を終了位置(PIII)に向け直すテーパ付き端部(1.1.2.1)を含んでなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項8】
ニードル・シールド(1.1)が、皮膚接触フランジ(1.1.1)を含んでなることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項9】
ニードル・シールド(1.1)は、ガイド・トラック(1.2.4)に沿ったガイド・ピン(1.1.2)の移動によって、その初期位置(I)から、ニードル・シールド(1.1)が支持体(1.2)の内向きに突き出ている内側リブ(1.2.7)により制限される軸方向長さだけ支持体(1.2)から突き出るその引込み位置(II)まで、支持体(1.2)内に引込み可能であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項10】
支持体(1.2)が、外側ボディ(1.3)内に保持され、外側ボディ(1.3)に対して遠位方向に摺動可能であるが、外側ボディ(1.3)が、支持体(1.2)が外側ボディ(1.3)内にほぼ受け入れられたときに、支持体(1.2)内に形成された錠止凹部(1.2.2)と係合して外側ボディ(1.3)を支持体(1.2)に対して不可逆的に錠止する少なくとも1つのロッキング・キャッチ(1.3.2.1)を含んでなることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)。
【請求項11】
請求項9に記載の安全デバイス(1)および充填済みシリンジ(2)を含んでなる注射デバイス(D)であって、安全デバイス(1)が、
−充填済みシリンジ(2)を中に保持するための中空支持体(1.2)、
−支持体(1.2)に対して摺動可能である中空のニードル・シールド(1.1)、および支持体(1.2)に対するニードル・シールド(1.1)の移動を案内する案内手段、
を含んでなり、ここで案内手段は、
−ガイド・ピン(1.1.2)、
−ガイド・トラック(1.2.4)、
−ガイド・トラック(1.2.4)に隣接したカットアウト部(1.2.5)、
を含んでなり、ここでガイド・ピン(1.1.2)は、ニードル・シールド(1.1)が支持体(1.2)に対して摺動すると、ガイド・トラック(1.2.4)内に突入し、ガイド・トラック(1.2.4)内をそれに沿って移動し、そしてここでカットアウト部(1.2.5)によってガイド・トラック(1.2.4)の側壁(1.2.6)が安全デバイス(1)の中心軸(A)に対して垂直な横方向(L)に曲げたわむことを可能にする、上記注射デバイス(D)。
【請求項12】
請求項1〜8および10のいずれか1項に記載の安全デバイス(1)および充填済みシリンジ(2)を含んでなる注射デバイス(D)であって、安全デバイス(1)が、
−充填済みシリンジ(2)を中に保持するための中空支持体(1.2)、
−支持体(1.2)に対して摺動可能である中空のニードル・シールド(1.1)、および支持体(1.2)に対するニードル・シールド(1.1)の移動を案内する案内手段、
を含んでなり、ここで案内手段は、
−ガイド・ピン(1.1.2)、
−ガイド・トラック(1.2.4)、
−ガイド・トラック(1.2.4)に隣接したカットアウト部(1.2.5)、
を含んでなり、ここでガイド・ピン(1.1.2)は、ニードル・シールド(1.1)が支持体(1.2)に対して摺動すると、ガイド・トラック(1.2.4)内に突入し、ガイド・トラック(1.2.4)内をそれに沿って移動し、そしてここでカットアウト部(1.2.5)によってガイド・トラック(1.2.4)の側壁(1.2.6)が安全デバイス(1)の中心軸(A)に対して垂直な横方向(L)に曲げたわむことを可能にする、上記注射デバイス(D)。
【請求項13】
皮下注射針(2.1)の侵入深さが、ニードル・シールド(1.1)が引込み位置(II)にあるとき、内側リブ(1.2.7)により制限されることを特徴とする、請求項11に記載の注射デバイス。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の注射デバイスを含んでなる注射キットであって、ニードル・シールド(1.1)内へ遠位端から挿入可能であるほぼ管状のニードル・キャップ・リムーバ(3)を含んでなるが、ニードル・キャップ・リムーバ(3)が、充填済みシリンジ(2)の遠位端に摩擦により貼り付けられたニードル・キャップ(2.2)を固定することを特徴とする、上記注射キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針安全性を提供する安全デバイス、特に充填済みシリンジのための安全デバイスに関する。本発明の安全デバイスは、充填済みシリンジに入っている薬剤または薬品の注入前、注入中、注入後の過失からの針刺しのよる怪我および注射針損傷を避けるようになっている。特に、本発明の安全デバイスは、皮下自己投与注射またはヘルスケア専門家により投与される注射のために注射針安全性を提供する。本発明は、さらに、充填済みシリンジからなる注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
1回分の選択された薬剤投与量で満たされた充填済みシリンジは、患者に薬剤を投与するための良く知られた注射デバイスである。使用の前後で充填済みシリンジの注射針を覆うための安全デバイスも良く知られている。代表的には、これらのデバイスは、注射針を取り囲むように手動で動かされるか、または弛緩スプリングの作用で動かされるニードル・シールドを含んでなる。しかしながら、少数の構成要素を含んでなる安全デバイスの必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一目的は、充填済みシリンジのための改良された安全デバイスを提供することにある。
【0004】
本願発明のさらなる目的は、取り扱いが安全であり、特に偶発的な針刺し事故を防ぐ充填済みシリンジを含んでなる改良された注射デバイスを提供することにある。
【0005】
この目的は、請求項1に記載の安全デバイスおよび請求項13に記載の注射デバイスにより達成される。
【0006】
好ましい実施形態は従属請求項の主題となっている。
【0007】
この明細書の文脈において、遠位および近位という用語は、注射を行う人間の観点から定義されている。その結果、遠位方向とは、注射を受ける患者の身体に向いた方向と合致しており、遠位端とは、患者の身体に向いたエレメントの端と定義する。エレメントの近位端または近位方向とは、それぞれ、注射を受ける患者の身体から離れる方向で、遠位端または遠位方向とは反対側に向いている。
【0008】
本発明によれば、充填済みシリンジのための安全デバイスは、充填済みシリンジを内部に保持している中空支持体と、支持体に相対的に摺動可能である中空ニードル・シールドと、支持体に対するニードル・シールドの移動を案内する案内手段とを含んでなる。案内手段は、ガイド・ピン、ガイド・トラックおよびガイド・トラックに隣接したカットアウト部を含んでなる。ガイド・ピンは、ガイド・トラック内に突き出しており、ニードル・シールドが支持体に対して摺動するときにガイド・トラック内をそれに沿って移動する。カットアウト部は、ガイド・トラックの側壁が安全デバイスの中心軸に対して垂直な横方向に曲げたわむのを可能にする。
【0009】
ニードル・シールドは、支持体に対して摺動して、特に、支持体内に保持されている充填済みシリンジの皮下注射針を露出させたり、覆ったりする。ガイド・トラック内に収容されたガイド・ピンは、ニードル・シールドの移動を案内し、一方、ガイド・ピンがガイド・トラックと相互作用することによって、ニードル・シールドが所定位置に保持される。ガイド・トラックの曲げたわみ可能な側壁は、ガイド・トラック内のガイド・ピンの移動を制限する戻り阻止要素として作用する。ガイド・ピンは、安全デバイスの初めての使用時のみガイド・トラックに沿って移動するのを制限される。安全デバイスを引き続いて使用するのは効果的に防止され、汚染された皮下注射針での針刺し事故によって、生じる感染症のリスクを減らす。
【0010】
安全デバイスは、好ましくは、使い捨ての充填済みシリンジと組み合わせて使われる。
【0011】
ガイド・ピンは、ニードル・シールドまたは支持体のいずれかに連結される。ガイド・トラックは、ニードル・シールドまたは支持体のうち他方のものに形成される。したがって、安全デバイスがガイド・トラックを備えた支持体と、ガイド・ピンを備えたニードル・シールドとを含んでなることは本発明の範囲にあるし、あるいは、ガイド・ピンが支持体に連結し、ガイド・トラックがニードル・シールドに形成されることも本発明の範囲内にある。
【0012】
カットアウト部の軸方向セクションは、ガイド・トラックの第1のセクションに対して平行に、そして中心軸に対して平行に延在する。ニードル・シールドは、皮下注射針を覆ったり、露出させたりするように支持体に関して摺動可能に配置されている。ガイド・ピンは、ガイド・トラックに沿ってニードル・シールドと一緒に移動する。ガイド・トラックに隣接したカットアウト部は、側壁を横方向に曲げたわみ、順次ガイド・トラックに戻り阻止要素を導入する簡単な機構となる。安全デバイスの再使用法を防ぐ付加的な部品はまったく必要ない。したがって、安全デバイスは、ほんの少数の構成要素を含んでなり、コスト効率よく大量生産され得る。
【0013】
可能性ある実施形態によれば、ニードル・シールドは、ガイド・トラックに沿ったガイド・ピンの移動によって、ある角度の円弧まわりに支持体内で回転させられ、それによって、ニードル・シールドは、支持体内に入っている皮下注射針を露出させたり、覆ったりするように支持体に対して移動される。ニードル・シールドは、それが支持体から突き出る初期位置と、ほぼ支持体内に入り込む引込み位置との間で動かされるとき支持体に関して回転する。
【0014】
あるいは、ニードル・シールドが引込み位置にあるとき支持体がほぼニードル・シールド内に入り込んでもよい。
【0015】
それに加えて、または、その代わりに、ニードル・シールドが引込み位置から前進位置へ動かされたときに、ニードル・シールドが支持体に関して回転するようにしてもよい。本発明の安全デバイスは、所定位置にニードル・シールドを保持する、故障しやすくて複雑な機構を回避することができ、薬剤を患者の皮膚の下に投与している注射のときに確実に信頼性高く使用できる。ガイド・ピンがスタート位置においてガイド・トラック内に保持されることによって、ニードル・シールドが初期位置に保持される。スタート位置のガイド・ピンは、遠位横方向においてガイド・トラックの第1のU字形くぼみに当接し、近位方向において傾斜したカム作用面に当接し、ニールド・シールドを初期位置に解除自在に保持する。ニードル・シールドが初期位置において支持体から突き出ているので、充填済みシリンジが支持体内に保持されているとき、本発明の安全デバイスはその使用前の不注意による針刺し事故を回避できる。
【0016】
可能性のある実施形態においては、ニードル・シールドは、不透明なプラスチック材料から作られており、注射前に皮下注射針がユーザの眼に触れるのを防ぐことができる。これは、特に、たとえば、糖尿病に罹っている患者が頻繁に行わなければならない自己投与注射を実施するに当たっての不安感を減らすことができる。
【0017】
代わりの実施形態によれば、ニードル・シールドは、透明なプラスチック材料から作られる。こうすれば、皮下注射針がニードル・シールドによって囲まれているときでも、安全デバイスを使用するヘルスケア専門家が患者の皮膚を刺し貫いている皮下注射針の正しい位置を視覚的に確認できる。
【0018】
本発明の安全デバイスは自己投与注射にもヘルスケア専門家によって行われる注射にも適しているので、ここでユーザまたは患者と呼ぶ人間は全く同一の人間であってもよい。
【0019】
ニードル・シールドは前進位置において支持体から突き出している。ニードル・シールドは、ガイド・ピンがガイド・トラックの遠位端に位置する終了位置に保持され、錠止されることによって前進位置に恒久的に保持される。終了位置のガイド・ピンは、遠位横方向においてガイド・トラックの第2のU字形くぼみと当接し、近位方向において側壁の遠位端に当接し、ニードル・シールドを前進位置に錠止する。前進位置において、ニードル・シールドは支持体から突き出る。したがって、本発明の安全デバイスは、注射後の注射針安全性を提供し、汚染された皮下注射針による偶発的な針刺し事故が防止される。
【0020】
ガイド・トラックの側壁は、ガイド・ピンが終了位置に達すると横方向に曲げたわむ。既に上述したように、横方向に曲げたわみ可能な側壁はガイド・トラックに戻り阻止の特徴を導入する。したがって、ガイド・ピンは、本発明の安全デバイスの最初の使用後に恒久的に終了位置に保持、錠止され、その結果、ニードル・シールドが前進位置に保持、錠止される。特に、ガイド・ピンが終了位置に達するとすぐにニードル・シールドの近位方向移動が阻止される。注射ストロークを実施するユーザの、ニードル・シールドを前進位置に錠止する付加的な相互作用は必要ない。
【0021】
好ましい実施形態では、ガイド・ピンは、それを終了位置に向け直すガイド・トラックの弧状セクションに当接するテーパ付き端部を含んでなる。ガイド・ピンのこの特別な形状とガイド・トラックの弧状セクションは、これらの部分間の摩擦を最小にし、その結果、ガイド・ピンが終了位置に確実に到達してニードル・シールドを前進位置に錠止できる。
【0022】
本発明のさらに別の好ましい実施形態においては、ニードル・シールドは、薬剤を受けている患者の皮膚表面上に乗るように設計された皮膚接触フランジを含んでなる。この皮膚接触フランジは、特に皮下注射または筋肉注射での安全デバイスの適切な設置を容易にする。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、ニードル・シールドは、初期位置からニードル・シールドが支持体内にほぼ収容される引込み位置まで支持体内に引っ込むことができるが、支持体の内向きに突出する内側リブにより制限される軸線方向長さ分だけ支持体からなお突き出ている。このことは、注射中に皮膚接触フランジが患者の皮膚面に乗るので、充填済みシリンジが安全デバイスの支持体内に保持されているときに、患者の皮膚への皮下注射針の侵入深さを制限する。本発明の安全デバイスは、未熟なユーザにとっても安全で取り扱い容易であり、不適切に実行された注射を原因とする不注意による事故を回避できる。
【0024】
支持体は、遠位方向において外側ボディ内に保持されかつそれに関して摺動可能であり、一方、外側ボディは遠位方向において支持体に対して摺動して充填済みシリンジに収容された薬剤を放出する。外側ボディは、注射ストロークの終りに外側ボディを支持体に対して不可逆的に錠止するように支持体に形成された錠止凹部と係合する少なくとも1つのロッキング・キャッチを含んでなり、それによって、支持体は外側ボディ内にほぼ収容される。外側ボディの引き続く近位方向移動は阻止され、安全デバイスが再利用されるのが防止される。
【0025】
本発明の注射デバイスは、支持体内に保持された充填済みシリンジを備える安全デバイスを含んでなる。充填済みシリンジは、従来設計であり、充填済みシリンジの遠位端に取り付けられた皮下注射針、皮下注射針と流体連通する内側キャビティを備えたバレル、内側キャビティの近位端を流体密シールしているピストンおよびバレルの近位端から突き出るピストンロッドを含んでなる。ピストンは、少なくとも遠位方向にピストンロッドを作動させることによって移動させることができる。
【0026】
充填済みシリンジは、皮下注射針が支持体の遠位端から突き出るように安全デバイスの支持体内に保持される。皮下注射針は、初期位置においておよび前進位置において、ニードル・シールドによって取り囲まれ、引込み位置において露出する。充填済みシリンジおよび安全デバイスを含んでなる注射デバイスは、上記の利点を組み合わせており、患者の皮膚の下に薬剤を投与している注射の前、その最中、その後の不注意による針刺し事故を回避できる。
【0027】
本発明の注射デバイスは、特に、規格注射器とは外観で異なるように設計され、自己投与注射を実施する際に可能性のある不安感を減らす。
【0028】
可能性ある実施形態によれば、ニードル・シールドが引込み位置にあるときに内側リブによって皮下注射針の侵入深さが制限され、その結果、自己投与注射が安全に実施される。
【0029】
本発明の注射キットは、前記注射デバイスと、遠位端からニードル・シールド内に挿入可能であるほぼ管状のニードル・キャップ・リムーバとを含んでなる。ニードル・キャップ・リムーバは、注射デバイスの使用前に充填済みシリンジの遠位端に摩擦で取り付けられたニードル・キャップを固定する。特に、ニードル・キャップ・リムーバは、ニードル・シールドが初期位置においてニードル・キャップを取り囲んでいるときのニードル・キャップの取り外しを容易にする。ニードル・キャップは、遠位方向にニードル・キャップ・リムーバを引くことによって充填済みシリンジの遠位端に取り付けた状態から取り外し可能である。
【0030】
あるいは、本発明の注射デバイスは、ニードル・キャップに取り付けられたニードル・キャップ・リムーバと共に輸送され、末端ユーザに配送されるが、ここで、ニードル・キャップ・リムーバは、遠位方向にニードル・シールドから突き出ていてニードル・キャップの除去を容易にする。
【0031】
本発明のさらなる適用範囲は、以下で行う詳細な説明から明らかとなろう。しかしながら、本発明の精神および範囲内での種々の変更、修正が本発明の詳細な説明から当業者にとって明らかになるであろうから、本発明の可能性のある実施形態を示す詳細な説明および特異的な実施例は例示として行われているものであることは了解されたい。
【0032】
本発明は、以下で行う詳細な説明からより良く理解されることになる。添付の図面は、ほんの説明の便宜上与えられたものであり、本発明の範囲を制限することはない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】安全デバイスおよび充填済みシリンジを含んでなる注射デバイスの透視図を示す。
図2】使用前の注射デバイスの断面図を示す。
図3】安全デバイスのニードル・シールドが初期位置に保持されている注射デバイスの側面図を示す。
図4】ニードル・シールドが引込み位置に保持されている、安全デバイスを備えた注射デバイスの断面図を示す。
図5】ニードル・シールドが前進位置に保持されている、安全デバイスを備えた注射デバイスの断面図を示す。
図6】ニードル・シールドが前進位置に保持されている、安全デバイスを備えた注射デバイスの側面図を示す。
図7】A〜Dは、安全デバイスのための代替実施形態の展開図を示す。
【0034】
すべての図において、対応する部分は同じ参照記号が付けてある。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、安全デバイス1および充填済みシリンジ2を含んでなる注射デバイスDを示す。注射デバイスDは、注射を実施するユーザに提供されるということでまとまった状態にある。安全デバイス1は、実質的に円筒形で中空のニードル・シールド1.1を含んでなる。ニードル・シールド1.1は実質的に円筒形で中空の支持体1.2内に収容されており、支持体1.2に関して摺動可能である。安全デバイス1の使用前、ニードル・シールド1.1は初期位置Iに保持されており、支持体1.2から突き出している。
【0036】
あるいは、ほぼ円筒形のニードル・シールド1.1は、実質的に支持体1.2を収容する寸法の半径を含んでなる。この代替実施形態においては、支持体1.2は、ニードル・シールド1.1が初期位置Iから引込み位置IIまで動かされたときにニードル・シールド1.1内に摺動する。
【0037】
安全デバイス1は、開いた遠位端と閉じた近位端を有するほぼ円筒形で中空の外側ボディ1.3を含んでなる。支持体1.2の近位端は外側ボディ1.3の開いている遠位端内に収容されており、一方、外側ボディ1.3は、遠位方向において支持体1.2に関して摺動可能であって外側ボディ1.3内に実質的に支持体1.2を収容している。
【0038】
好ましくは、ニードル・シールド1.1、支持体1.2および外側ボディ1.3は、プラスチック材料から作られる。
【0039】
周まわりに外方へ突出しているハンド・フランジ1.3.1が、外側ボディ1.3の外面にその遠位端に接近して一体形成されている。
【0040】
2つの直径方向に対向する長手方向舌片1.2.1が支持体1.2の両側部に形成されている。各長手方向舌片1.2.1は、半径方向外方へ突き出ており、ほぼ円筒形の支持体1.2の中心軸Aに対して平行に軸線方向長さにわたって延びている。長手方向舌片1.2.1は、外側ボディ1.3の内面に形成されている対応する長手方向溝(図示せず)内に収容される。外側ボディ1.3は、注射ストロークを実施するように遠位方向において、支持体1.2に対して摺動可能である。注射ストローク中の支持体1.2と外側ボディ1.3の相対的な回転は、長手方向溝1.3.1が支持体1.2の長手方向舌片1.2.1を受け入れることにより阻止される。
【0041】
ニードル・シールド1.1は、その遠位端のところに円周方向の皮膚接触フランジ1.1.1を含んでなる。皮膚接触フランジ1.1.1は、患者の皮膚に対して押圧されるようになっていて、半径方向外方へ安全デバイス1の中心軸Aに対して直角に突出している。患者の皮膚と接触することになる皮膚接触フランジ1.1.1の縁は、傷害を回避すべくまるくなっている。皮膚接触フランジ1.1.1は、安全デバイス1の中心軸A上に位置する中心開口を有する。皮膚接触フランジ1.1.1は、ニードル・シールド1.1の一体部分であるか、または、ニードル・シールド1.1に取り付けられた、プラスチック材料から作られた別体部分である。
【0042】
注射デバイスDは、支持体1.2内に保持された充填済みシリンジ2を有する安全デバイス1を含んでなる。図2は、バレル2.3の遠位端に摩擦で取り付けられたニードル・キャップ2.2によって覆われた皮下注射針2.1を含んでなる、支持体1.2内に収容された充填済みシリンジ2を示す。バレル2.3は、薬剤を収容する内側キャビティ2.3.1を有する。内側キャビティ2.3.1は、皮下注射針2.1と流体連通している。内側キャビティ2.3.1の近位端は、ピストンロッド2.5に連結されているピストン2.4によって流体密にシールされている。ピストン2.4は、近位方向にバレル2.3から突き出ているピストンロッド2.5を作動させることによって、少なくとも遠位方向に可動である。充填済みシリンジ2のバレル2.3は、充填済みシリンジ2を支持体1.2に取り付けているその近位端のところで支持体1.2の半径方向内向きに突出する内面1.2.3に当接するバレル・カラー2.3.2を含んでなる。
【0043】
あるいは、支持体1.2は、たとえば、バレル・カラー2.3.2と係合して支持体1.2内に充填済みシリンジ2を保持するスナップロック式連結部のような保持手段を含んでなるものであってもよい。
【0044】
充填済みシリンジ2は支持体1.2内に保持されおり、皮下注射針2.1が遠位方向に支持体1.2から突き出ている。
【0045】
図1、2に示すようなまとまった状態において、皮下注射針2.1は、注射デバイスDの使用前にニードル・シールド1.1によって取り囲まれているニードル・キャップ2.2によって覆われている。ニードル・キャップ2.2は、好ましくは、少なくとも部分的に、ゴムのような可塑材料から作られる。皮膚接触フランジ1.1.1の中心開口の幅は、ニードル・キャップ2.2の外径に一致している。ニードル・キャップ・リムーバ3が、皮膚接触フランジ1.1.1の中心開口に挿入され、遠位方向に皮膚接触フランジ1.1.1から突き出ており、その結果、ユーザは、遠位方向にニードル・キャップ・リムーバ3を引くことによって充填済みシリンジ2からニードル・キャップ2.2を容易に取り外すことができる。ニードル・キャップ・リムーバ3は、それをニードル・キャップ2.2の遠位端に固定するクランプ手段3.1を含んでなる。
【0046】
あるいは、注射デバイスDは、安全デバイス1内に保持されるニードル・キャップ2.2の遠位端に取り付けられたニードル・キャップ・リムーバ3と共に末端ユーザに出荷され、配送される。ニードル・キャップ・リムーバ3は遠位方向にニードル・シールド1.1から突き出ている。
【0047】
図1、2でわかるように、クランプ・アーム1.3.2がほぼ円筒形の外側ボディ1.3に形成されており、このクランプ・アーム1.3.2は、中心軸Aに対して垂直な半径方向に曲げたわみ可能である。図2で最も良くわかるように、クランプ・アーム1.3.2は、支持体1.2の遠位端に近接して支持体1.2に形成された錠止凹部1.2.2内に嵌合する寸法となっている内向きに突出するロッキング・キャッチ1.3.2.1を含んでなる。
【0048】
図1、3に示されるように、ガイド・トラック1.2.4が、支持体1.2に形成されており、ガイド・ピン1.1.2を収容する。ガイド・ピン1.1.2は、ニードル・シールド1.1の外面に形成されており、ニードル・シールド1.1から外方半径方向へ突き出ており、ガイド・トラック1.2.4内に突入している。ニードル・シールド1.1は、ガイド・トラック1.2.4内に種々の位置において保持されているガイド・ピン1.1.2によって所定位置に保持される。
【0049】
ガイド・ピン1.1.2は、遠位方向に向いたテーパ付きの端部1.1.2.1を含んでなる。
【0050】
図1〜3は、初期位置Iにおいて支持体1.2から突き出ているニードル・シールド1.1を示す。ニードル・シールド1.1は、ガイド・トラック1.2.4内の初期位置Iに相当するスタート位置PIに位置するガイド・ピン1.1.2によって初期位置Iに解除自在に保持される。
【0051】
スタート位置PIにおいて、ガイド・ピン1.1.2は遠位方向において、そして、中心軸Aに対して垂直な横方向において、第1のU字形くぼみ1.2.4.1に当接し、その結果、ガイド・ピン1.1.2は、遠位方向、横方向Lの両方向においてスタート位置PIから離れるのを阻止される。スタート位置PIにおいて、ガイド・ピン1.1.2は、さらに、近位方向において傾斜したカム作用面1.2.4.2に当接する。
【0052】
ニードル・シールド1.1が支持体1.2に対して摺動するとき、ガイド・ピン1.1.2はガイド・トラック1.2.4内をそれに沿って移動する。
【0053】
ほぼL字形のカットアウト部1.2.5がガイド・トラック1.2.4に隣接して支持体1.2に形成されている。カットアウト部1.2.5によって、ガイド・トラック1.2.4の側壁1.2.6が横方向Lに曲げたわむ。ほぼL字形のカットアウト部1.2.5は、ガイド・トラック1.2.4の第1のセクション1.2.4.3に対して平行に、そして、安全デバイス1の中心軸Aに対して平行に延びる軸方向セクション1.2.5.1を含んでなる。カットアウト部1.2.5の横方向セクション1.2.5.2は、中心軸Aに対してほぼ90度の角度の向きとなっている。カットアウト部1.2.5の横方向セクション1.2.5.2は、カットアウト部1.2.5をガイド・トラック1.2.4と連結している。
【0054】
あるいは、カットアウト部1.2.5は、強度を減らした分離壁によってガイド・トラック1.2.4から分離されていてもよい。この分離壁は、可撓性の側壁1.2.6が曲げたわむとき、可聴音を発生する所定の破断点として作用する。
【0055】
図2の断面図で分かるように、支持体1.2内には圧縮スプリング1.4が配置されており、この圧縮スプリング1.4は、支持体1.2の内面1.2.3を近位方向に押圧すると共に、ニードル・シールド1.1に形成された内面を遠位方向に押圧し、それによって、ニードル・シールド1.1および支持体1.2が互いから離れるように付勢される。圧縮スプリング1.4は、ニードル・シールド1.1が初期位置Iにあるとき、部分的に圧縮され、したがって部分的に付勢された状態にある。
【0056】
図4は、引込み位置IIにおける安全デバイス1とニードル・シールド1.1の断面図を示す。図4の断面平面は、図2に示す断面平面に対して90度の角度だけ中心軸Aまわりに回転させたものである。引込み位置IIにおいて、ニードル・シールド1.1は、支持体1.2内に実質的に収容されており、その結果、皮下注射針2.1は皮膚接触フランジ1.1.1から遠位方向に突き出る。内側リブ1.2.7が、支持体1.2の内面に形成されており、半径方向内方へ突き出ている。引込み位置IIにおいて、ニードル・シールド1.1は内側リブ1.2.7に当接しており、その結果、ニードル・シールド1.1は内側リブ1.2.7によって制限される軸線方向長さだけ支持体1.2内に引っ込むことができる。したがって、皮下注射針2.1は、注射中のその侵入深さを決める距離だけ遠位方向に皮膚接触フランジ1.1.1から突き出る。ここで、侵入深さは内側リブ1.2.7によって制限される。
【0057】
圧縮スプリング1.4は、ニードル・シールド1.1が引込み位置IIにあるとき圧縮、付勢される。外側ボディ1.3の閉じた近位端は、ピストンロッド2.5の近位端に当接しており、その結果、ピストン2.4は、外側ボディ1.3を作動させてそれを遠位方向に押すことによって遠位方向に動かされ得る。
【0058】
あるいは、ピストンロッド2.5は、外側ボディ1.3に連結するか、外側ボディ1.3と一体化される。この代替実施形態は、全体的に部品点数が少なく、製造コストが低減されるという付加的な利点を有する。
【0059】
図5は、注射デバイスDの断面図を示しており、ここでは、安全デバイス1のニードル・シールド1.1は前進位置IIIに保持されている。ニードル・シールド1.1は、前進位置IIIにあり、遠位方向に支持体1.2から突き出ており、安全デバイス1内に収容された充填済みシリンジ2の皮下注射針2.1を取り囲んでいる。ニードル・シールド1.1は、弛緩する圧縮スプリング1.4の作用によって、前進位置IIIへ動かされている。
【0060】
支持体1.2は、注射ストロークの終りには外側ボディ1.3内にほぼ収容される。クランプ・アーム1.3.2のロッキング・キャッチ1.3.2.1は、外側ボディ1.3を支持体1.2に対して不可逆的に錠止するように支持体1.2の錠止凹部1.2.2から突き出ている。したがって、支持体1.2に対する外側ボディ1.3の引き続く移動は阻止される。
【0061】
図6でわかるように、ニードル・シールド1.1は、安全デバイス1の1回の使用後、前進位置IIIに恒久的に保持され、錠止される。ニードル・シールド1.1が前進位置IIIにあるとき、ニードル・シールド1.1と一体のガイド・ピン1.1.2は、ガイド・トラック1.2.4の遠位端にある終了位置PIIIに保持される。終了位置PIIIにおいて、ガイド・ピン1.1.2は、横方向L、遠位方向の両方で第2のU字形くぼみ1.2.4.4に当接する。さらにまた、終了位置PIIIにおいて、ガイド・ピン1.1.2は,側壁1.2.6の遠位端に当接し、その結果、終了位置PIIIにおいて、ガイド・トラック1.2.4と相互作用するガイド・ピン1.1.2によって、前進位置IIIにおけるニードル・シールド1.1のいかなる回転運動も直進運動も阻止される。
【0062】
注射前、ガイド・ピン1.1.2は、図3に示されるスタート位置PIに保持されており、それによって、ニードル・シールド1.1は対応する初期位置Iに保持される。
【0063】
患者の皮膚に対してほぼ直角に中心軸Aを向けることによって注射が実施される。このとき、ニードル・シールド1.1の皮膚接触フランジ1.1.1は患者の皮膚面に乗っており、ハンド・フランジ1.3.1で近位側にある外側ボディ1.3の近位部分は注射を実施するユーザにより把持される。ハンド・フランジ1.3.1は、患者の皮膚面に向かって外側ボディ1.3を押すユーザの手を支える。
【0064】
注射の第1段階において、ニードル・シールド1.1は支持体1.2内に押し込まれ、それによって、皮下注射針2.1が露出して患者の皮膚を貫き、圧縮スプリング1.4が圧縮され、負荷をかけられる。ガイド・ピン1.1.2は、傾斜したカム作用面1.2.4.2に押し付けられ、中心軸Aに対して鋭角に向いた方向に図3の矢印で示すそのスタート位置PIを離れ、それによって、ニードル・シールド1.1は、支持体1.2に対して角度向きを変え、支持体1.2内で中心軸Aまわりに約2、3度の角度回転する。
【0065】
ガイド・ピン1.1.2がスタート位置PIを離れると直ぐに、安全デバイス1の安全特徴が注射針安全性を与え、安全デバイスの再使用を防ぐ。安全デバイス1は、薬剤送達の任意の段階で注射部位から皮膚接触フランジ1.1.1を撤去する際の注射針安全性に与えるように設計されている。
【0066】
ニードル・シールド1.1がさらに近位方向に押されると、ニードル・シールド1.1が図4に示されるように内側リブ1.2.7に当接するまでガイド・ピン1.1.2がガイド・トラック1.2.4に沿って近位方向へ移動する。このとき、皮下注射針2.1が患者の皮膚を貫く。侵入深さ(皮下注射針2.1の遠位先端が遠位方向に皮膚接触フランジ1.1.1から突き出る軸線方向長さとして定義する)は、ニードル・シールド1.1に当接している内側リブ1.2.7によって設定、制限される。図3に輪郭で示すように、ガイド・ピン1.1.2が対応する中間位置PIIに達したとき、ニードル・シールド1.1は引込み位置IIにある。中間位置PIIは、ガイド・トラック1.2.4の第1のセクション1.2.4.3の近位端のところにある。
【0067】
ニードル・シールド1.1が引込み位置IIにあるとき、支持体1.2内に配置された圧縮スプリング1.4は圧縮され、完全に付勢される。その結果、引込み位置IIにおいて、ニードル・シールド1.1は、遠位方向に圧縮スプリング1.4により付勢される。注射を実施するユーザは、ニードル・シールド1.1を引込み位置IIに保持するように患者の皮膚面に向かって遠位方向に力を加える。
【0068】
注射の第2段階において、外側ボディ1.3が患者の皮膚に向かって遠位方向に押される。外側ボディ1.3の近位端はピストンロッド2.5に当接し、その結果、ピストン2.4が内側キャビティ2.3.1内を遠位方向に動かされ、薬剤が皮下注射針2.1を通して患者の皮膚の下に放出される。図5に示されるように、注射ストロークの終りでロッキング・キャッチ1.3.2.1が支持体1.2の錠止凹部1.2.2と係合し、それによって、外側ボディ1.3が、支持体1.2に不可逆的に錠止され、安全デバイス1の引き続く使用を防止する。
【0069】
ロッキング・キャッチ1.3.2.1を備えたクランプ・アーム1.3.2は、注射の始まりでは、最初、ホール・プロファイル(図示せず)内に保持されている。ロッキング・キャッチ1.3.2.1がホール・プロファイルを出るのに必要な力は、近位方向にニードル・シールド1.1を移動させるに必要な力を超え、その結果、注射の始まりで、ニードル・シールド1.1が最初に近位方向へ移動して注射針を露出させ、注射針が露出した後、外側ボディ1.3が遠位方向に移動して薬剤を放出する。こうして、ロッキング・キャッチ1.3.2.1の相互作用が注射の段階的な作動を確実にする。
【0070】
注射デバイスDが患者の皮膚面から外されると直ぐに、圧縮スプリング1.4が緩み、前進位置IIIに向かって遠位方向へニードル・シールド1.1を移動させる。ガイド・ピン1.1.2は、図6に矢印で示すように、ニードル・シールド1.1と共にガイド・トラック1.2.4内を中間位置PIIから終了位置PIIIに向かって移動し、それによって、ガイド・トラック1.2.4の側壁1.2.6が横方向へ曲げたわむ。
【0071】
終了位置IIIに達すると、ガイド・ピン1.1.2のテーパ付き端部1.1.2.1がガイド・トラック1.2.4の弧状セクション1.2.4.5と当接し、その結果、ガイド・ピン1.1.2が横方向Lに向け直される。同時に、ガイド・ピン1.1.2が横方向Lに側壁1.2.6を押し、それによって、側壁1.2.6が横方向へ曲げたわみ、その結果、ガイド・ピン1.1.2が終了位置PIIIに達することができる。
【0072】
ガイド・ピン1.1.2が終了位置PIIIに達すると、ニードル・シールド1.1が支持体1.2に対するその角度向きをわずかに変え、支持体1.2内で中心軸Aまわりに約2、3度の角度回転する。
【0073】
ガイド・ピン1.1.2がガイド・トラック1.2.4の遠位端にある終了位置PIIIに達すると、側壁1.2.6が弾力的に所定位置へはね返って、ガイド・ピン1.1.2の引き続く近位方向移動を阻止する。さらにまた、ガイド・ピン1.1.2の横方向の移動は、第2のU字形くぼみ1.2.4.4によって、ガイド・トラック1.2.4の終了位置PIIIにおいて、阻止される。したがって、ニードル・シールド1.1は、前進位置IIIに恒久的に保持され、不可逆的に錠止される。その結果、皮下注射針2.1が再露出から保護される。
【0074】
図7A〜7Dは、本発明の範囲内にある安全デバイス1の代替実施形態の展開図を示す。
【0075】
図7Aは、ほぼ上述した安全デバイス1の設計を概略的に示す。
【0076】
図7Bは、ガイド・トラック1.2.4がニードル・シールド1.1に形成されており、ガイド・ピン1.1.2が支持体1.2の内面に形成されている別の実施形態を示す。ガイド・ピン1.1.2は、半径方向内方へ支持体1.2の内面から突き出ている。
【0077】
図7C、7Dは、ニードル・シールド1.1が支持体1.2を収容するような寸法となっている内径を有する代替実施形態を示す。支持体1.2は、ニードル・シールド1.1が初期位置Iから引込み位置IIまで動かされたときにニードル・シールド1.1内へ摺動する。
【0078】
図7Dは、ガイド・トラック1.2.4が支持体1.2に形成されており、ガイド・ピン1.1.2がニードル・シールド1.1の内面に形成されている代替実施形態を示す。ガイド・ピン1.1.2は、半径方向の内部の方向の支持体1.2の内面からから突き出る。
【0079】
上述した安全デバイス1は、少数の部品を有し、好ましくはプラスチック材料から作られる3つの部分のみ、すなわち、支持体1.2、外側ボディ1.3およびニードル・シールド1.1を含んでなる。安全デバイス1は、針刺し事故を回避するための 簡単な機構を提供する。患者の皮膚に向かって外側ボディ1.3を1回移動させるだけで注射が実施され、それによって、注射針安全性を提供する安全特徴が自動的に活性化される。注射中、ニードル・シールド1.1は、支持体1.2内でそれに対して回転する。
【0080】
〔参照符号の説明〕
1 安全デバイス
1.1 ニードル・シールド
1.1.1 皮膚接触フランジ
1.1.2 ガイド・ピン
1.1.2.1 テーパ付き端部
1.2 支持体
1.2.1 縦タング
1.2.2 錠止凹部
1.2.3 内面
1.2.4 ガイド・トラック
1.2.4.1 第1のU字形くぼみ
1.2.4.2 傾斜カム作用面
1.2.4.3 第1のセクション
1.2.4.4 第2のU字形くぼみ
1.2.4.5 弧状セクション
1.2.5 カットアウト部
1.2.5.1 軸方向セクション
1.2.5.2 横方向セクション
1.2.6 側壁
1.2.7 内側リブ
1.3 外側ボディ
1.3.1 ハンド・フランジ
1.3.2 クランプ・アーム
1.3.2.1 ロッキング・キャッチ
1.4 圧縮スプリング
2 充填済みシリンジ
2.1 皮下注射針
2.2 ニードル・キャップ
2.3 バレル
2.3.1 内側キャビティ
2.3.2 バレル・カラー
2.4 ピストン
2.5 ピストンロッド
3 ニードル・キャップ・リムーバ
3.1 クランプ手段
I 初期位置
II 引込み位置
III 前進位置
PI スタート位置
PII 中間位置
PIII 終了位置
A 中心軸
L 横方向
D 注射デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D