【実施例】
【0135】
実施例1 − IgG結合融合タンパク質のクローニング、発現および繊維形成
融合タンパク質の概念を証明するために、Rep4CTタンパク質(4回の内部反復とCT部分を持つREP部分)がZタンパク質ドメイン(B部分)との融合物で生成された。Zドメインは、ブドウ球菌タンパク質の免疫グロブリンG(IgG)結合ドメインBの改変版であり、IgGの結晶化(Fc)領域断片に結合する58アミノ酸長の三重らせんモチーフである。我々の目標は、Rep
4CT(His
6ZQGRep
4CTを示す;配列番号14)に融合したZドメインからなる融合タンパク質から、例えば、繊維、薄膜および膜などの構造体を作成し、かつドメインZのIgG結合能力、並びにRep
4CTの特性を形成する構造をなお保持するすることが可能であるかどうかを探索することであった。そのために、Rep
4CTのN末端Zドメインからなる融合タンパク質をクローニングした。
【0136】
クローニング
His
6ZQGRep
4CT融合タンパク質(配列番号:14−15)をコードする遺伝子を以下のように構築した。プライマーは、そのようなZ配列を含むベクターからドメインZのPCR断片を生成するために設計された。また、プライマーはZとRep
4CT間のプロテアーゼ3C切断(LEALFQGP、QGを示す)の認識部位を含んでいた。得られたPCR生成物は、その後、標的ベクター(カナマイシン耐性遺伝子を有するpT7His
6TrxHis
6QGRep
4CTを示す)のように、制限エンドヌクレアーゼNdeI及びEcoRIで処理した。ターゲットベクターの制限切断に際し、TrxHis
6QG部分が切断された。切断されたPCR断片と目標ベクターを、T4 DNAリガーゼを用いて互いに連結し、そして、得られた正しく連結されたベクター(pT7His
6ZQGRep
4CT)は、カナマイシン(70μgの/ml)を補充した寒天プレート上に増殖させた化学形質転換受容性大腸菌(E.coli)BL21(DE3)細胞に形質転換された。コロニーをその後採取し、正しい挿入のためにPCR検査をし、その後、標的ベクター中にZQGが挿入されたDNA配列を確認するために配列決定した。
【0137】
産生
pT7His
6ZQGRep
4CTベクターを有する大腸菌BL21(DE3)細胞を、カナマイシン(70μgの/ml)を補充したルリア−ベルターニ培地(全6リットル)で、30℃で1−1.5のOD600値まで増殖させ、次に、300μMのIPTG(イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド)でHis
6ZQGRep
4CT発現を誘導し、約2時間、20℃でさらにインキュベートした。次に、細胞を4700rpmで20分間の遠心分離により回収し、得られた細胞ペレットを、20mMトリス(pH8.0)中に溶解した。
【0138】
精製
20mMトリス(pH8.0)中に溶解させた細胞ペレットは、細菌細胞を溶解するために、リゾチームおよびDNアーゼIが補充され、細胞溶解物を30分間15000回転の遠心後に回収した。次に、回収した細胞溶解物を分割し、合計4つのキレートセファロースファーストフローZn
2+カラムにロードし、His
6ZQGRep
4CT蛋白質がHis
6をタグを介してカラムマトリックスに結合するように保った。洗浄後、結合したタンパク質を20mM Tris/300mMイミダゾール(pH8.0)で溶出した。プールされた溶出画分は、A
280の測定によると27mgのHis
6ZQGRep
4CTタンパク質が含まれていた。次に、プールされた溶出液を2等分し(各13.5mgのHis
6ZQGRep
4CT)、最初の半分は、一晩20mMトリス(pH8.0)の5リットルに対して透析し、1.07mg/mlに濃縮され、最終的に繊維を形成させた。
図3は、巨視的His
6ZQGRep
4CT繊維を示す。この融合タンパク質(配列番号14)からの繊維の形成は、Zドメイン(B部分)がRep
4CT(REPとCT部分)の繊維成形特性と干渉しないことを示している。プロテアーゼ3Cによる切断の前にHis
6ZQGRep
4CTタンパク質の量は、透析および濃縮後に10mgであった(
図4)。
【0139】
溶出プールの2番目の半分は1.34mgのプロテアーゼ3Cで切断し、1mMのジチオスレイトール(DTT)を補充し、Rep
4CTからHis
6Zを分離した。切断は、20mMトリス(pH8.0)に対する透析で一晩実施し、この後、タンパク質溶液を、ニッケル−NTAアガロースカラムを通過させ、Rep
4CTを含有する画分を通過する流量は回収され、0.79mg/mlに濃縮され、繊維を形成させた。切断後のRep
4CTの最終量は6mgであった(
図4)。
【0140】
図4は融合タンパク質His
6ZQGRep
4CT(配列番号14)と続くプロテアーゼ3C切断生成物のRep
4CT(配列番号14の残基81から339)の精製からのSDS−PAGEゲルを示す。ゲルは以下の順番でロードされた。
(1)Spectra Multicolor Broad Range Protein Ladder,Fermentas
(2)細胞溶解物
(3)キレートセファロースファーストフローZn
2+カラムにロードした細胞溶解物からからのフロー
(4)キレートセファロースファーストフローZn
2+カラムからのHis
6ZQGRep
4CTの溶出プール
(5)プロテアーゼ3Cで切断されたHis
6ZQGRep
4CT
(6)Ni−NTAアガロースカラムにロードされた切断されたHis
6ZQGRep
4CTのフロースルー
(7)20mMのTris/500mMイミダゾール(pH8.0)を5mlによるNi−NTAアガロースカラムの再生。
His
6ZQGRep
3CT、His
6Z、Rep
4CT及びプロテアーゼ3Cの分子量はそれぞれ32kDa、9kDa、23kDa、30kDaである。
【0141】
Rep
4CTが別のタンパク質、即ちIgGに対する結合親和性を有する58アミノ酸長のZドメインに融合されているが、His
6ZQGRep
4CT(配列番号14)の巨視的な繊維を得ることができたという事実は、Zドメイン(配列番号14の残基13−70)に融合しているにもかかわらず、Rep
4CTがなおその繊維形成特性を保持していることを示している。さらに融合タンパク質のZドメインはHis
6ZQGRep
4CTに対する良好な溶解性を与えるように思われる。
【0142】
実施例2 − 融合蛋白質繊維へのビオチン化IgGの結合
融合タンパク質の概念を更に証明するために、融合タンパク質構造におけるB部分が有機ターゲットと選択的に相互作用の能力を保持しているかどうかを研究した。この研究では、融合タンパク質His
6ZQGRep
4CT(配列番号14)の繊維のZドメイン(B部分)のIgGに対する結合能力を評価した。ビオチン化ウサギIgGの溶液を、His
6ZQGRep
4CT繊維とともにインキュベートし、この後、同じ繊維をストレプトアビジン官能化ビーズとともに溶液中でインキュベートし、続いてその繊維を光学顕微鏡で可視化した。ウサギで作成されたIgGを用いる選択は、ウサギ由来のIgGがZドメインに非常に強い親和性で結合するという事実に頼っている。
【0143】
実施例1に記載したように調製した約50mm長のHis
6ZQGRep
4CT繊維を、1×PBS/0.5%ウシ血清アルブミンを50μl、及びウサギ(抗ラットIgG(H+L)、マウス吸着、Vector Laboratories、Inc)で産生された0.5mg/mlのビオチン化IgGを10μl含有する結合溶液中に浸漬し、軽く振とうしながら室温で75分間インキュベートした。上清を捨てて、繊維を60μlの1×PBS/0.07%Tween20で3回洗浄した。次に、繊維を1×PBS/0.5%ウシ血清アルブミンを40μlと10mg/mlのダイナビーズM−280ストレプトアビジン(Dynal AS)を20μl含む溶液に浸漬し、再び軽く振とうしながら室温で75分間インキュベートした。上清を捨てて、繊維を60μlの1×PBS/0.07%Tween20で3回洗浄した。
【0144】
繊維に対するダイナビーズ(Dynabeads)の非特異的結合の指標を得るべく、他のHis
6ZQGRep
4CT繊維を、ビオチン化IgGとの事前のインキュベーションなしで、上述したようにダイナビーズ溶液にのみ浸漬した。His
6ZQGRep
4CTについて上述したのと同じ手順をRep
4CTタイプの繊維と行い、すべての繊維を固定した500倍の倍率によりUSB顕微鏡で可視化した。
【0145】
図5は、ビオチン化ウサギIgG、その後のストレプトアビジン官能ダイナビーズの結合後のHis
6ZQGRep
4CT及びRep
4CT繊維の可視化である。パネル(A、B)は、最初にビオチン化IgG抗体(ウサギで生産)とインキュベートし、続いてダイナビーズM−280ストレプトアビジン(φ2.8μm)とインキュベーションしたHis
6ZQGRep
4CT繊維の、繊維に沿った異なる位置で撮影された2つの代表的な写真を示す。パネル(C、D)は、事前にIgGとインキュベーションすることなく、ダイナビーズM−280ストレプトアビジン溶液に浸漬されただけの別のHis
6ZQGRep
4CT繊維の2つの代表的な写真を示す。Rep
4CT繊維の対応する写真は、パネル(E、F)及び(G、H)にそれぞれ示されている。すべての写真は、USB顕微鏡で固定した500倍の倍率で撮影し、ダイナビーズは暗い灰色の点として写真に現れている。
【0146】
図5において、これらの写真の両方ともビオチン化IgGにさらされ、続いてストレプトアビジン官能ダイナビーズにさらされたHis
6ZQGRep
4CT繊維を示しており、ダイナビーズは、パネルのAとBにおいてほとんど唯一見られているように思われる。この結果は、融合タンパク質中のZドメインのかなりの割合は、繊維形成後His
6ZQGRep
4CTでのIgG結合能を保持していることを意味する。
【0147】
実施例3 − 融合タンパク質繊維と薄膜に対する純粋な血清IgGの結合
有機ターゲットとの選択的相互作用の融合タンパク質構造におけるB部分の能力を更に探索するために、融合タンパク質His
6ZQGRep
4CT(配列番号14)のZドメインのIgGに結合する能力を試験した。この融合タンパク質の繊維と薄膜を精製したIgG及び血清からのIgGの結合について用い、その後溶出し続いてSDS−PAGEで分析し、ここでIgGは非還元条件下で〜146kDaとして現れている。血清は、血液凝固後の残液相であり、血清の2つの主な成分は、アルブミンおよびIgGである。ウサギ血清においては、例えば、IgGの濃度は5−10mg/mlであり、アルブミンのそれはもっと高い。精製IgG及び血清は両方ともウサギ起源のものであった。
【0148】
His6ZQGRep
4Cの薄膜は、24ウェル組織培養プレートの各ウェルの底部で、タンパク質溶液100μl(0.96mg/ml)を室温で一晩空気乾燥することにより調製した。鋳造された薄膜は、その後18日間+4℃で保存し、20mMのトリス(pH8.0)に浸漬させて「T薄膜」と称したか、又は液体に浸漬させずに「A薄膜」と称した。
図6は、親水性の24ウェル組織培養プレートのウェルの底で鋳造されたHis
6ZQGRep
4CT薄膜の一部を示す。画像をとるために、倒立光学顕微鏡を2倍の倍率で用いた。実施例1に記載したように融合タンパク質の繊維を製造し、使用するまで4℃で20mMトリス(pH8.0)中に保存した。
【0149】
二つの平行する実験のセットアップを行った。最初のセットアップでは、His
6ZQGRep
4CTで作られたT薄膜、A薄膜、及び繊維の三つぞろいは、50μgの/mlの精製ウサギIgG(プールされたウサギ血清から精製、Vector Laboratories,Inc.)の500μlの中に軽く振とうしながら室温で1時間、浸漬した。別のセットアップでは、His
6ZQGRep
4CTの薄膜と繊維の同じタイプの三つぞろいは、かわりに加熱で不活性化し遠心したウサギ血清(National Veterinary Institute,Uppsala,Sweden)の5回希釈の500μlに、同様に穏やかに振とうしながら室温で1時間浸漬した。上清は全ての繊維および薄膜から廃棄され、500μlの20mMのトリス(pH8.0)中で3回洗浄した。精製したIgG又は血清に由来する結合したIgGを、0.5Mの酢酸/1Mの尿素/100mMのNaCl(pH2.7)の500μl中で30分間のインキュベーションにより溶出した。His
6ZQGRep
4CT繊維とA薄膜について上述したのと同じ手順を、コントロールとしてHis
6TrxHis
6QGRep
4CT及びRep
4CTの薄膜と繊維についても実施した。溶出した画分を、非還元条件下でのSDS−PAGEで分析した(
図7−9)。
【0150】
図7は、非還元SDS−PAGEゲルを示す。溶出画分は、次のようにレーンにロードされた:
(1−3)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6TrxHis
6QGRep
4CT, A薄膜。
(4−6)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6TrxHis
6QGRep
4CT,A薄膜。
(7−8)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6TrxHis
6QGRep
4CT,繊維。
(9)Spectra Multicolor Broad Range Protein Ladder,Fermentas
(10−11)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6TrxHis
6QGRep
4CT,繊維。
(12−14)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,T薄膜。
(15−17)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,T薄膜。
【0151】
図8は、別の非還元SDS−PAGEゲルを示す。溶出画分は以下に従ってロードされた:
(1−3)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,A薄膜。
(4−6)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,A薄膜。
(7−9)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,繊維。
(10)Spectra Multicolor Broad Range Protein Ladder,Fermentas
(11−13)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,繊維。
(14−16)ウサギIgGとインキュベートしたRep
4CT,A薄膜。
【0152】
図9は、追加の非還元SDS−PAGEゲルを示す。溶出画分は以下に従ってロードされた:
(1−3)ウサギ血清とインキュベートしたRep
4CT,A薄膜。
(4−6)ウサギIgGとインキュベートしたRep
4CT,繊維。
(7)Spectra Multicolor Broad Range Protein Ladder,Fermentas
(8−10)ウサギ血清とインキュベートしたRep
4CT,繊維。
(11)インキュベーションに用いられた精製されたウサギIgG(50μg/ml)。
(12)インキュベーションに用いられたウサギ血清(1:50希釈)。
【0153】
図7−9の結果は、全ての種類のHis
6ZQGRep
4CTマトリックス、即ち薄膜(A型とT型の両方)と繊維は、Zドメインを介して(精製されたか又は血清由来の)IgGに結合する能力を持っていることを示している。さらに、ウサギ血清に曝されたHis
6ZQGRep
4CTマトリクスは、IgG以外では血清画分の他の何にも結合していないように見える。用いた他の2つのタンパク質変異体のマトリックス(即ちHis
6TrxHis
6QGRep
4CT及びRep
4CT)は、血清に曝されたRep
4CTの繊維を除いて、何かに結合するようには全くみえず、IgG(〜146kDa)及びアルブミン(〜70kDa)の領域内に弱いバンドを示している。融合タンパク質His
6ZQGRep
4CT(配列番号14)内のZドメインのIgG結合能力を評価するこのアプローチは、Zドメインが融合タンパク質の繊維および薄膜の両方のバージョンで活性であることを強く示している。IgG以外のウサギ血清の他の画分ではHis
6ZQGRep
4CTに対する結合は観察されていない。
【0154】
実施例4 − 融合タンパク質繊維と薄膜に対する純粋な血清IgGの結合の再現性
融合タンパク質His
6ZQGRep
4CT(配列番号14)の薄膜及び繊維に対するIgG結合の再現性を探求するため、実施例3における実験を再度実施した。実施例3で用いられたHis
6ZQGRep
4CT,His
6TrxHis
6QGRep
4CT及びRep
4CTと同じ繊維と薄膜を再び使用した。全ての繊維と薄膜の材料は、前回の実験が実施された後で、20mMのTris(pH8.0)に4℃で70日間浸漬させた。実験は実施例3に記載のように行った。溶出した画分を、非還元条件下でのSDS−PAGEで分析した(
図10−12)。
【0155】
図10は、非還元SDS−PAGEゲルを示す。溶出画分は以下に従ってロードされた:
(1−3)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6TrxHis
6QGRep
4CT, A薄膜。
(4−6)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6TrxHis
6QGRep
4CT,A薄膜。
(7−8)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6TrxHis
6QGRep
4CT, 繊維。
(9)Spectra Multicolor Broad Range Protein Ladder,Fermentas
(10−11)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6TrxHis
6QGRep
4CT,繊維。
(12−14)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,T薄膜。
(15−17)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,T薄膜。
【0156】
図11は、別の非還元SDS−PAGEゲルを示す。溶出画分は以下に従ってロードされた:
(1−3)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,A薄膜。
(4−6)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,A薄膜。
(7−9)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,繊維。
(10)Spectra Multicolor Broad Range Protein Ladder,Fermentas
(11−13)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,繊維。
(14−16)ウサギIgGとインキュベートしたRep
4CT,A薄膜。
【0157】
図12は、非還元SDS−PAGEゲルを示す。溶出画分は以下に従ってロードされた:
(1−3)ウサギ血清とインキュベートしたRep
4CT,タイプAの薄膜。
(4−6)ウサギIgGとインキュベートしたRep
4CT,繊維。
(7)Spectra Multicolor Broad Range Protein Ladder,Fermentas
(8−10)ウサギ血清とインキュベートしたRep
4CT,繊維。
(11)空のウエル。
(12)インキュベーションに用いられた精製されたウサギIgG(50μg/ml)。
(13)インキュベーションに用いられたウサギ血清(1:50希釈)。
【0158】
全3つのタンパク質マトリックスのIgG結合パターン(即ち、His
6ZQGRep
4CT,His
6TrxHis
6QGRep
4CT及びRep
4CT)は実施例3で観察されたものに対応するが、アルブミン(〜70kDa)に対応するやや弱いバンドがウサギ血清でインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT繊維について見られた。この最初のIgG結合再現性試験は、His
6ZQGRep
4CTの繊維および薄膜の両方とも、精製及び血清IgGの結合と溶出について少なくとも2回用いることができることを示している。再現性の更なる試験は実施例19で報告される。
【0159】
実施例5 − 融合タンパク質マトリックス及び市販のプロテインAマトリックスに対するIgG結合
His
6ZQGRep
4CT融合タンパク質構造のIgG結合能は、市販で入手可能なプロテインAマトリックスと比較して評価した(Protein A Sepharose CL−4B,GE Healthcare)。His
6ZQGRep
4CT(配列番号14)の繊維および膜をスピンカラム内部に調製した。プロテインAマトリックスはまた、マトリックスに結合したプロテインA分子の総数がHis
6ZQGRep
4CT薄膜内のZ分子の総数に等しくなるようにスピンカラムに添加された。His
6ZQGRep
4CTの薄膜と繊維、並びにプロテインAマトリックスに対する精製IgGと血清由来IgGの結合を生じさせ、その後溶出し、続いてSDS−PAGEで分析した。
【0160】
His
6ZQGRep
4CTの薄膜はスピンカラム内部のポリエチレンフリットの下部で、100μlのタンパク質溶液(1.05mg/ml)を室温で3日間空気乾燥することにより調製し、薄膜あたり総計3×10
−9モルのHis
6ZQGRep
4CTを与えた。また、His
6ZQGRep
4CTの繊維を、同じタイプのスピンカラムの内側のフリット上に配置した。同じ手順を、Rep
4CTの薄膜と繊維に対して実施し、ここでは薄膜は膜あたり総計4×10
−9モルのRep
4CTを含有していた。市販のプロテインAマトリックスに対しては、3×10
−9モルのプロテインAに対応する排液マトリックス体積がスピンカラムごとにフリットに移され、そのマトリックスは1×500μlプラス2×150μlの脱イオン水を用いて、1.5分間の400rcfでのスピンカラムの遠心分離により洗浄した。
【0161】
二つの平行実験のセットアップが、His
6ZQGRep
4CT及びRep
4CTの繊維と薄膜について、並びにプロテインAマトリックスで実施された。第一のセットアップにおいて、すべての3つの異なるマトリックスの重複を50μg/mlの精製IgG(ウサギ血清から精製IgG、Sigma)の500μlに室温で1時間浸漬させた。他のセットアップにおいて、すべての3つの異なるマトリックスの重複はそのかわりに遠心分離したウサギ血清(正常ウサギ血清、Invitrogen)の5倍希釈の500μl中にやはり室温で1時間浸漬させた。
【0162】
上清は単純なペッティングにより全ての繊維と薄膜から捨てられ、プロテインAマトリックスに対しては遠心分離(400rcf、1.5分)により捨てられ、その後500μlの20mMのトリス(pH8.0)で3回洗浄した。精製したIgG又は血清に由来する結合したIgGを、0.5Mの酢酸/1Mの尿素/100mMのNaCl(pH2.7)の500μl中で30分間のインキュベーションにより溶出した。溶出画分を非還元条件下でSDS−PAGEで分析し(
図13−15)、実行1からきたものとして示す。溶出後直ちに、全マトリックスを3×500μlの20mMトリス(pH8.0)で洗浄し、その後、IgG結合の再現性を評価するために説明した実験をもう一回繰り返した。反復実験からの溶出画分を実行2からきたものとして示す。記:非還元SDS−PAGE条件下で、IgGの分子量は146kDa程度である。
【0163】
図13は、実行1からの溶出画分の非還元SDS−PAGEを示し、以下に従ってロードされた:
(1)インキュベーションに用いられた精製されたウサギIgG(50μg/ml)。
(2)インキュベーションに用いられたウサギ血清(1:50希釈)。
(3−4)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,薄膜。
(5−6)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,薄膜。
(7−8)ウサギIgGとインキュベートしたRep
4CT,薄膜。
(9)Spectra Multicolor Broad Range Protein Ladder,Fermentas
(10−11)ウサギ血清とインキュベートしたRep
4CT,薄膜。
(12−13)ウサギIgGとインキュベートしたプロテインAセファロースCL−4Bマトリックス。
(14−15)ウサギ血清とインキュベートしたプロテインAセファロースCL−4Bマトリックス。
(16−17)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,繊維。
【0164】
図14は、実行1及び実行2の両方からの溶出画分の非還元SDS−PAGEを示し、以下に従ってロードされた:
(1−2)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,繊維、実行1。
(3−4)ウサギIgGとインキュベートしたRep
4CT,繊維の重複、実行1。
(5−6)ウサギ血清とインキュベートしたRep
4CT,繊維の重複、実行1。
(7)Spectra Multicolor Broad Range Protein Ladder,Fermentas
(8)インキュベーションに用いられた精製されたウサギIgG(50μg/ml)。
(9)インキュベーションに用いられたウサギ血清(1:50希釈)。
(10−11)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,薄膜、実行2。
(12−13)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,薄膜、実行2。
(14−15)ウサギIgGとインキュベートしたRep
4CT,薄膜、実行2。
(16−17)ウサギ血清とインキュベートしたRep
4CT,薄膜、実行2。
【0165】
図15は、溶出画分の非還元SDS−PAGEを示し、全ては実行2からきたもので、以下に従ってロードされた:
(1−2)ウサギIgGとインキュベートしたプロテインAセファロースCL−4Bマトリックス。
(3−4)ウサギ血清とインキュベートしたプロテインAセファロースCL−4Bマトリックス。
(5−6)ウサギIgGとインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,繊維。
(7)Spectra Multicolor Broad Range Protein Ladder,Fermentas
(8−9)ウサギ血清とインキュベートしたHis
6ZQGRep
4CT,繊維。
(10−11)ウサギIgGとインキュベートしたRep
4CT,繊維。
(12−13)ウサギ血清とインキュベートしたRep
4CT,繊維。
【0166】
図13−15の結果は、マトリクスは選択的に血清からのIgGを結合することを示している。全タイプのHis
6ZQGRep
4CTマトリックス、例えば薄膜と繊維のIgG結合能は市販のプロテインAマトリックスと同じ範囲にある。市販のプロテインAマトリックスと老幼に、融合タンパク質の構造は結合能を維持することで再生可能である。
【0167】
実施例6 − 融合タンパク質マトリックス及び市販のプロテインAマトリックスの定置洗浄(Cleaning In Place)(CIP)
沈殿または変性した物質が、溶出後に、His
6ZQGRep
4CT(配列番号14)及びRep
4CTからなるタンパク質の構造と市販のプロテインAマトリックス(プロテインAセファロースCL−4B,GE Healthcare)に付着したままであるかどうかを評価するために、8Mの尿素による定置洗浄(CIP)が、実施例4−5の実験で使用されたウサギ血清に曝された全てのマトリックスに対して実施された。
【0168】
実施例4と実施例5からのHis
6ZQGRep
4CTとRep
4CTからなる繊維と薄膜、及び実施例5からの市販のプロテインAマトリックスは、全て以前にウサギ血清に対して曝されており、上清の除去の前に8Mの尿素の200μlに室温で20分間浸し、続いて非還元条件下でSDS−PAGEの尿素画分が分析された(
図16−17)。
【0169】
図16は、ウサギ血清に2回曝されたマトリックスの8Mの尿素による定置洗浄からの非還元SDS−PAGEを示す。ゲルは以下に従ってロードされた:
(1)ウサギ血清(1:50希釈)。
(2)空のウエル。
(3−5)実施例4からのHis
6ZQGRep
4CT,T薄膜。
(6−8)実施例4からのHis
6ZQGRep
4CT,A薄膜。
(9)Spectra Multicolor Broad Range Protein Ladder,Fermentas
(10−12)実施例4からのHis
6ZQGRep
4CT,薄膜。
(13−15)実施例4からのRep
4CT,A薄膜。
(16−15)実施例4からのRep
4CT,繊維。
(17)空のウエル。
【0170】
図17は、ウサギ血清に2回曝されたマトリックスの8Mの尿素による定置洗浄からの2回目の非還元SDS−PAGEを示す。ゲルは以下に従ってロードされた:
(1)ウサギ血清(1:50希釈)。
(2)空のウエル。
(3−4)実施例4からのRep
4CT,繊維。
(5−6)実施例5からのHis
6ZQGRep
4CT,薄膜。
(7)実施例5からのRep
4CT,薄膜。
(8)Spectra Multicolor Broad Range Protein Ladder,Fermentas
(9)実施例5からのRep
4CT,薄膜。
(10−11)実施例5からのHis
6ZQGRep
4CT,繊維。
(12−13)実施例5からのRep
4CT,繊維。
(14−15)実施例5からのプロテインAセファロースCL−4Bマトリックス。
(16−17)空のウエル。
【0171】
図16−17の結果は、ほんの少量の沈殿又は変性物質が、溶出又は洗浄後の融合タンパク質の構造に付着したままであることを示している。特に、ほんの少量の沈殿又は変性物質が、市販のプロテインAマトリックスと同じ範囲で、His
6ZQGRep
4CT融合タンパク質の薄膜に付着したままである。
【0172】
実施例7 − アルブミン結合融合タンパク質のクローニング、発現および繊維形成
融合タンパク質の概念を更に証明するために、Rep
4CTが連鎖球菌プロテインG由来のアルブミン結合ドメイン(Abd)との融合で生成された。Abdはアルブミンと結合する5kDaの三重らせんモチーフである。そのために、Rep
4CTのN末端のAbdドメイン(His
6AbdQGRep
4CTと称す)からなる融合タンパク質をクローニングした(配列番号16−17)。
【0173】
クローニング
プライマーは、そのような配列を含むベクターからAbdのPCR断片を生成するために設計された。また、プライマーはAbdとRep
4CT間にGQと表されるプロテアーゼ3C切断部位を含んでいた。得られたPCR生成物は、標的ベクターと同様に、その後制限エンドヌクレアーゼ NdeI及びEcoRIで処理しされ、(カナマイシン耐性遺伝子を有する)pT7His
6TrxHis
6QGRep
4CTを示した。ターゲットベクターの制限切断に際し、TrxHis
6QG部分が切断された。切断されたPCR断片と目標ベクターを、T4 DNAリガーゼを用いて互いに連結し、そして、得られた正しく連結されたベクター(pT7His
6AbdQGRep
4CT)は、カナマイシンを補充した寒天プレート上に増殖させた化学形質転換受容性E.coli BL21(DE3)細胞に形質転換された。コロニーをその後採取し、正しい挿入のためにPCR検査をし、その後また配列決定した。
【0174】
産生
pT7His
6AbdQGRep
4CTベクターを有するE.coli BL21(DE3)細胞を、カナマイシンを補充したルリア−ベルターニ培地(全6リットル)で、30℃で1−1.5のOD
600値まで増殖させ、次に、IPTGでHis
6AbdQGRep
4CT発現を誘導し、約2時間、20℃でさらにインキュベートした。次に、細胞を遠心分離により回収し、得られた細胞ペレットを、20mMトリス(pH8.0)中に溶解した。
【0175】
精製
20mMトリス(pH8.0)中に溶解した細胞ペレットに、細菌細胞を完全に溶解するためにリゾチームとDNaseIを補充し、15000rpmでの遠心分離後に上清を回収した。次に、回収した上清をニッケルIMACカラムまたはキレートセファロースファストフローZNカラムにロードし、His
6タグを介してHis
6AbdQGRep
4CTタンパク質がマトリックスに結合するように保った。洗浄後、結合したタンパク質を20mM Tris/300mMイミダゾール(pH8.0)で溶出した。His
6AbdQGRep
4CT(配列番号16)を含有するプールされた溶出画分を20mMトリス(pH8.0)の5リットルに対して透析し、濃縮し、4mgの最終量のタンパク質が得られた。
【0176】
繊維と薄膜の形成
精製された、可溶性Abd−Rep
4CTタンパク質から、繊維と薄膜の両方とも0.87mg/mlのタンパク質濃度で首尾良く作成された。
【0177】
Rep
4CTは別のタンパク質、つまりアルブミン結合ドメイン(Abd)に融合していたもののAbd−Rep
4CTの巨視的な繊維と薄膜が得られたという事実は、Abdドメインに融合しているにも関わらず、Rep
4CTはその繊維形成特性を保持することを実証している。次に、本目的は、AbdドメインはRep
4CTに融合したときにそのアルブミン結合能を保持していたかどうかを明らかにすることであった。実施例24と25を参照。
【0178】
実施例8 − IgG結合融合タンパク質のクローニング、発現および繊維形成
融合タンパク質の概念を更に証明するために、Rep
4CTは連鎖球菌プロテインGからのIgG結合ドメインC2との融合で生産された。C2は、55個のアミノ酸を含み、その構造は、シートの一方の面を横切って横たわっているα−ヘリックスを有する4本鎖の混合逆平行/平行β−シートを形成するために結合している2つのβ−ヘアピンで構成されている。そのために、Rep
4CTのN末端のC2ドメイン(His
6C2QGRep
4CTと称す)からなる融合タンパク質をクローニングした(配列番号18−19)。
【0179】
クローニング
プライマーは、そのような配列を含むベクターからC2のPCR断片を生成するために設計された。また、プライマーはC2とRep
4CT間にGQと表されるプロテアーゼ3C切断部位を含んでいた。得られたPCR生成物は、標的ベクターと同様に、その後制限エンドヌクレアーゼ NdeI及びEcoRIで処理しされ、(カナマイシン耐性遺伝子を有する)pT7His
6TrxHis
6QGRep
4CTを示した。ターゲットベクターの制限切断に際し、TrxHis
6QG部分が切断された。切断されたPCR断片と目標ベクターを、T4 DNAリガーゼを用いて互いに連結し、そして、得られた正しく連結されたベクター(pT7His
6C2QGRep
4CT)は、カナマイシンを補充した寒天プレート上に増殖させた化学形質転換受容性E.coli BL21(DE3)細胞に形質転換された。コロニーをその後採取し、正しい挿入のためにPCR検査をし、その後また配列決定した。
【0180】
産生
pT7His
6C2QGRep
4CTベクターを有するE.coli BL21(DE3)細胞を、カナマイシンを補充したルリア−ベルターニ培地(全6リットル)で、30℃で1−1.5のOD
600値まで増殖させ、次に、IPTGでHis
6C2QGRep
4CT発現を誘導し、約2時間、20℃でさらにインキュベートした。次に、細胞を遠心分離により回収し、得られた細胞ペレットを、20mMトリス(pH8.0)中に溶解した。
【0181】
精製
20mMトリス(pH8.0)中に溶解した細胞ペレットに、細菌細胞を完全に溶解するためにリゾチームとDNaseIを補充し、15000rpmでの遠心分離後に上清を回収した。次に、回収した上清をニッケルIMACカラムにロードし、His
6タグを介してHis
6C2QGRep
4CTタンパク質がマトリックスに結合するように保った。洗浄後、結合したタンパク質を20mM Tris/300mMイミダゾール(pH8.0)で溶出した。His
6C2QGRep
4CTを含有するプールされた溶出画分を20mMトリス(pH8.0)の5リットルに対して透析し、濃縮し、6mgの最終量のタンパク質が得られた。
【0182】
繊維と薄膜の形成
精製された、可溶性C2−Rep
4CTタンパク質から、繊維と薄膜の両方とも0.87mg/mlのタンパク質濃度で首尾良く作成された。Rep
4CTは別のタンパク質、つまりIgG結合ドメインC2に融合していたもののC2−Rep
4CTの巨視的な繊維と薄膜が得られたという事実は、C2ドメインに融合しているにも関わらず、Rep
4CTはその繊維形成特性を保持することを実証している。次に、本目的は、C2ドメインはRep
4CTに融合したときにそのIgG結合能を保持していたかどうかを明らかにすることであった。実施例26と27を参照。
【0183】
実施例9 − ビオチン結合融合タンパク質のクローニング、発現および薄膜と繊維の形成
ストレプトアビジンは、モノマーあたり一つの結合部位を有する4つの同一の単量体の四量体である。それはビオチン(ビタミンH)に高い親和性を示し、解離定数K
dは〜10
−15Mに達し、これを本質的に不可逆的結合事象とならしめている。ストレプトアビジンはまた、プロテアーゼの存在下、高温で、および変性剤、及び極端なpH値で、高い安定性を示す(Wilchek, M. et al., Anal. Biochem. 171: 1-32 (1988))。従って、この相互作用は、タンパク質の標識化、分離およびターゲティングを含む多くの用途において魅力的である。実際には、ビオチン化は、今日では、攻撃するいくつかの反応性有機分子のうちの一つを収容し、異なる生体分子、例えばタンパク質及びDNAに対してビオチンを架橋するビオチン化されたリンカー分子を利用して容易である。しかし、ストレプトアビジンでコーティングされた高密度機能性表面の生産は達成することが困難であることが判明しており、例えば表4を参照。結合における可逆性が不可欠である(精製中などの)用途での結合力を低減させ、かつ首尾良く大腸菌で可溶性タンパク質を発現できるように、ストレプトアビジンの単量体変異体、M4が開発された(Wu. S.-C. et al., Protein Expres. Purif. 46, 268-273 (2006))。野生型四量体ストレプトアビジンの単量体に比べて、M4は4アミノ酸置換(V55T、T76R、L109T及びV125R)を有し、これは、活性な単量体の形にM4を保っている。
【0184】
M4は、組換え技術により、N末端又はC末端がRep
4CT(配列番号20−21)に融合していた。得られたタンパク質とそれをコードする遺伝子はM4Rep
4CT(配列番号22−23),modM4Rep
4CT(配列番号24−25)及びRep
4CTM4(配列番号26−27)とそれぞれ命名された。M4Rep
4CTとmodM4Rep
4CTの違いはM4とRep
4CT間のリンカー領域内のGlyのArg−Ala−Argへの置換である。全てのタンパク質は切断されたHis
6−Trx−His
6に融合して発現され、精製中に除去された。
【0185】
全てのタンパク質の生産と精製は、Stark, M. et al., Biomacromolecules 8, 1695-1701 (2007)及びHedhammar M. et al., Biochemistry 47, 3407-3417 (2008)に記載されるように本質的に実施された。Rep
4CTM4,M4Rep
4CT及びmodM4Rep
4CTのタンパク質の濃度は53860M
−1cm
−1のモル吸光係数を使用して280nmで測定した。精製されたタンパク質サンプルを還元SDS−PAGEに供し、タンパク質の純度は、クーマシーブリリアントブルーR−250によるゲルの染色後に決定した。全ての精製されたタンパク質の理論分子量および他の関連する物理的性質を表3に示す。
【0186】
【0187】
Rep
4CTM4,M4Rep
4CT及びmodM4Rep
4CT融合タンパク質の各々から、薄膜と繊維の両方が形成された。これらの結果は、Rep
4CTはM4に融合されたものの、固体構造に自己会合する能力を保持していることを確認する。このことはまた、異なる長さのリンカーを用いて、M4がRep
4CTに融合している繊維と薄膜を得ることが可能であることを確認する。
【0188】
実施例10 − 融合タンパク質繊維と薄膜に対するビオチン含有ターゲットの結合
(A)Rep
4CTM4薄膜に対するビオチン化Atto−565の結合。
Rep
4CTM4(配列番号26)及びRep
4CT(配列番号20,コントロール)は、透明または黒色96ウェルマイクロタイタープレート中のウェルの底部において室温で25μlのタンパク質溶液を乾燥させることにより薄膜を形成させた。プレートは使用前に1〜2週間室温で保存した。ウェルは、非特異的結合を回避するために室温で1時間以上、PBS(pH7.4)中の1%のBSAの100μlとともにインキュベートした。バックグラウンドの値は、ビオチン化Atto−565の添加前に、50μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)中のRep
4CT又はRep
4CTM4の各タンパク質の薄膜を含むウェル内の蛍光強度を測定して得られた。PBS(pH7.4)中の1%BSAに溶解したビオチン化Atto−565(Sigma Aldrich,Germany)の80μM溶液を50μlとともにウェルをさらに培養した。混合物を2〜3時間室温で放置した後に、0.05% Tween−20(PBS−T)を含むPBSで2回及びPBSで1回洗浄した。生じた蛍光強度は、Tecan InfiniteのM200マイクロプレートリーダーにおいてウェルに50μlのPBSを追加した後に記録された(λ
ex=565nm,λ
em=590nm)。
【0189】
希釈系列をPBSで調製し、異なる濃度のビオチン化Atto−565のサンプル50μlを各々の膜を含むウェルに三連で添加し、その後ウェルからの蛍光強度を記録した。
図18において、ビオチン化Atto−565に浸漬させて洗浄後にタンパク質の薄膜からの蛍光強度をニコンのEclipseのTi−S蛍光顕微鏡を用いて2培の拡大で観察する(λ
ex=509−550nm及びλ
em=570−614nm)。ビオチン化Atto−565の添加後のRep
4CTM4薄膜(パネルA)とRep
4CT薄膜(パネルB)の間の蛍光強度の違いは明白である。
【0190】
Rep
4CTM4薄膜に対するビオチン化Atto−565の総量を確立するために、ビオチン化Atto−565の既知量の希釈系列を用いて蛍光強度を記録した。このようにして、既知量(モル)のビオチン化Atto−565を含むサンプルからの蛍光強度(Rep4CTM4を含むウェルに、三連で)を標準曲線を得るために使用した。バックグラウンド値に対応する得られた蛍光強度の値(ビオチン化Atto−565を含まないRep
4CTM4薄膜)及びウェルに添加したビオチン化Atto−565の3つの濃度に相関するデータ点を
図19のグラフに示す。
図19のグラフ下の表は、同じビオチン化アAtto−565濃度を持つn=3のウェル中の測定からの標準偏差とともに、蛍光強度値に対する線形回帰から取得した値を示す。
【0191】
Rep
4CTM4の薄膜に対するビオチン化Atto−565の結合実験から得られた蛍光強度値から出発して(
図20)、これらの値が得られた蛍光強度に対応するビオチン化Atto−565のモル量を計算するために使用された。得られた蛍光値を、
図20に、Rep
4CT(A)とRep
4CTM4(B)の薄膜を含むウェルに対するビオチン化Atto−565の添加前(−)と後(+)の値を表示するパネルA及びBによりプロットする。パネルCは、Rep
4CT又はRep
4CTM4の薄膜に対するビオチン化Atto−565の添加後に生じた蛍光強度の比較を示す。Rep
4CT薄膜については前の値と後の値の間で有意な違いは無かった(ns)(パネルA)。Rep
4CTM4を含むビオチン化Atto−565の添加前と後の有意な違い(パネルB;P<0.01)及びタンパク質間の有意な違い(パネルC;P<0.0001)は統計試験により確認された。
図20中のバーは、n=10の薄膜の蛍光強度値の間の標準偏差を示している。
【0192】
結合実験から得られたビオチン化フルオロフォア/表面積の比率を計算した。およそ28mm
2、2.1pmolのビオチン化Atto−565の表面積がRep
4CTM4薄膜に結合していた。これは0.073pmol/mm
2の結合ビオチン/表面積をもたらす(表5)。
【0193】
(B)Rep
4CTM4薄膜に対するビオチン化西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の結合
比較的高い安定性と非発色基質および過酸化物の変換における発色生成物の生産に起因して、HRPは、ELISA、ウェスタンブロット及び免疫組織化学などの用途で、一般に二次抗体または結合分子(例えば、ビオチン)に結合されて使用される。Rep
4CTM4(配列番号26)及びRep
4CT(配列番号20;コントロール)からなる薄膜に対するビオチン化HRPの全結合量を確率するために、ビオチン化HRPをそれぞれの薄膜に結合させた。生成物の形成の速度は、基質の既知量を用いて570nmで記録した。生成物のレゾルフィンに対するモル吸光係数はメーカー(Invitrogen)から入手し、54000cm
−1M
−1と定められた。
【0194】
Rep
4CTM4とRep
4CTのタンパク質溶液(25μl)を透明な96ウェルマイクロタイタープレート内のウェルの底で完全に乾燥させ、こうして薄膜を形成した。ウェルはPBS(pH7.4)中の1%のBSAの100μlとともに1時間以上インキュベートし、その後PBS(pH7.4)中の1%のBSA中の0.3mg/mlのビオチン化HRP(Invitrogen,Camarillo,CA)の50μlとともに1時間以上インキュベートした。続いてウェルをPBS−Tで2回、PBSで1回洗浄した。反応は0.2%BSA,28mMNaCl,0.54mM KCl,0.3mM KH
2PO
4,42mM Na
2HPO
4(pH7.4)に溶解した2mMの過酸化水素を含む50μMのAmplex red溶液(Invitrogen)を室温にて添加することにより開始した。速度論的測定はTecan InfiniteのM200マイクロプレートリーダーで行った。
【0195】
ビオチン化HRP(溶液中に遊離)の既知量が、薄膜におけるビオチン化HRPによる測定の場合と同様の速度を生じるHRPの量を確立するために使用された。50μMのAmplex red及び2mMの過酸化水素の溶液(pH7.4)中で、ビオチン化HRP無しによる触媒反応で、生成物のレゾルフィンに対して得られた反応速度を
図21のグラフに示す。データポイントは、同じ濃度でのビオチン化HRPによる三連の測定値に相関する。
図21のグラフ下の表は、データに対する線形回帰から得られた値を示す。
図21のグラフのバーは、同じ濃度のビオチン化HRPによるn=3のウェルの測定値からの標準偏差を示す。
図21の得られた標準曲線と勾配が、融合タンパク質膜に結合させたビオチン化HRP量の算出に用いられた。
【0196】
融合タンパク質の薄膜及びコントロールの薄膜がビオチン化HRPとインキュベートされるウェル内での50μMのAmplex redと2mMのH
2O
2の触媒反応における反応速度を
図22に示す。
図21と22における反応速度は、Invitrogenにより提供された吸光係数を用いて計算された(54 000cm
−1M
−1)、分あたりのμM単位でのレゾルフィンの形成として表される。バーは、n=8ウェルで測定された反応についての標準偏差を示している。
図22は、Rep
4CTM4でコーティングされたウェルとコントロールであるRep
4CTでコーティングされたウェルの間の生成物形成(それゆえ結合したビオチン化HRP)の速度の有意な違いを示している。0.2pmol HRP/mm
2がRep
4CTM4薄膜に結合することが決定された(表5)。
【0197】
(C)市販製品との比較
ストレプトアビジンでコーティングされた高密度機能性表面の生産は達成することが困難であることが判明している。市販のプレートのビオチン結合能が表4に記載される。
【0198】
実施例10Aでビオチン化Atto−565及び実施例10Bでのビオチン化HRPによる結合実験から得られたビオチン化フルオロフォア/表面積の比率が表5に要約される。Rep
4CTM4(配列番号26)の薄膜上における2つの異なるビオチン化分子の密度は0.073−0.2pmol/mm
2である。
【0199】
【0200】
表4−5の結果は、ビオチンが小さな(フルオロフォア)または大きな(タンパク質)分子に結合されているかどうかに関わらず、M4部分との融合タンパク質からなる薄膜は、商業的な代替物と同じ範囲のビオチン結合密度を提供することを示している。
【0201】
統計
GraphPadPrism4.0(GraphPad Software,San Diego,CA)をデータの統計分析のために使用した。実施例10Aにおいて、ノンパラメトリック対ウィルコクソン検定が、Rep
4CT又はRep
4CTM4の何れかから形成される薄膜に対するビオチン化Atto−565の添加前と後での蛍光値の比較に用いられた。更に、ノンパラメトリック不対マンホイットニーU検定が、Rep
4CT又はRep
4CTM4の薄膜を用いるビオチン化Atto−565のインキュベーション後におけるウェル内の蛍光強度を比較するために、また実施例10Bでビオチン化HRPとインキュベートされた薄膜上での測定から得られた[レゾルフィン]/分の値の比較のために用いられた。P値<0.05を有意とみなした。
【0202】
実施例11 − 融合タンパク質の繊維と薄膜に対するビオチン化抗体と二次抗体の結合
Rep
4CT(配列番号20,コントロール)及びmodM4Rep
4CT(配列番号24)の薄膜と繊維がウサギ起源のビオチン化抗体に対する結合能について試験された。薄膜は、8x1又は12X1ウェルストリップ(96ウェルマイクロプレートのフォーマットと同じ大きさののウェル)に形成されている。
【0203】
PBS(pH7.4)中の1%のBSAによる薄膜と繊維のプレインキュベーション後に、ビオチン化抗体(ウサギ)はタンパク質構造(薄膜/繊維)と1時間以上インキュベートされ、その後
125Iで放射活性標識された二次抗ウサギ抗体が添加される。薄膜と繊維を洗浄する。ガンマ線の検出は、ガンマカウンターで個々の薄膜又は個々の繊維上で行われる。
125I−標識抗体の既知量の希釈系列が調製され、標準曲線を得るために放射能が測定され、それから融合タンパク質薄膜と繊維に対する結合ビオチン化抗体の量を計算することができる。
【0204】
実施例12 − 融合タンパク質の純粋な薄膜の調製
薄膜は10〜20μMの濃度で25μlのRepCT
4M4(配列番号26)を使用して鋳造された。100μlのPBS(pH7.4)を、1時間ウェル中で薄膜とインキュベートした。この溶液を除去し、50μlのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)が添加され、薄膜を破壊し、タンパク質を可溶化させた。更なる薄膜に対して、事前にPBSで洗浄することなく、同量のHFIPが添加された。HFIPは、3.5時間、4つの薄膜上で作用させ、生じた透明なHFIP溶液を50μlの20%SDSを含むエッッペンドルフチューブに移した。チューブ中の水を蒸発させ、残った含量を10mMのトリスHCl(pH8.0)の60μl中に溶解し、還元SDS−PAGEに供した。
【0205】
その結果を
図23に示す。レーン1はSpectra
TM Multicolor Broad Range Protein Ladder(Fermentas)のタンパク質に相当する。数字はタンパク質の大きさに対応する。レーン2はHFIPを添加する前にPBSに浸漬していない精製されたRep
4CTM4の薄膜に対応する。レーン3はPBSに1時間浸漬させてその後この溶液を除去しその後HFIPを添加したRep
4CTM4の薄膜に対応する。
【0206】
幾つかのタンパク質はRep
4CTM4タンパク質とともに共精製されるが(レーン2、
図23)、100μlのPBSで1時間インキュベーションして汚染タンパク質を溶解し、還元SDS−PAGEにより判断されるようにRep
4CTM4タンパク質のみからなる薄膜を残した(レーン3、
図23)。従って、最も汚染されたタンパク質がそのような重合法により除去され、そして融合タンパク質からなるタンパク質構造内の残りの任意の不純物は水性緩衝液で穏やかに洗浄することによって容易に除去することができる。
【0207】
実施例13 − 溶液中の有機ターゲットの捕捉
ZRep
4CTタンパク質の溶液(〜1mg/ml)を、血清からなるサンプルに添加し、サンプル中のIgG分子を溶液中で融合タンパク質のZ部分に結合させる。混合物を疎水性/親水性界面に曝し、融合タンパク質/IgG複合体のRep
4CT部分が薄膜又は発泡体を形成するようにし、溶液中の他の血清タンパク質を残して、固体構造上でIgGを捕捉する。
【0208】
別法として、混合物を固体支持体上で乾燥させ、固定化したIgGによる薄膜を形成する。この薄膜をPBSなどの緩衝液で洗浄して溶解し、汚染タンパク質を除去する。
【0209】
あるいは、疎水性−親水性の界面を提供することで繊維が形成され、その混合物にせん断力を施す。融合タンパク質/IgG複合体のRep
4CT部分は巨視的繊維に重合化し、溶液中には他のタンパク質を残す。
【0210】
形成される固体構造(薄膜、発泡体又は繊維)が収集され、IgGは適切な溶出緩衝液中で(例えばpHを2.7に下げることにより)回収することができる。溶出タンパク質はSDS−PAGEで同定される。実施例22も参照。
【0211】
実施例14 − 細胞捕獲のための融合タンパク質の足場
(A)眼の前房内の非付着細胞のインビボ試験
ZRep
4CT繊維/薄膜/発泡体をCD45又はCD34に対するIgGとともにインキュベートさせる。白血球がCD45に対するIgGによりZRep
4CT足場に対して捕捉され、肥満細胞がCD34に対するIgGによりZRep
4CT足場で捕捉される。細胞を足場の上に固定化されるようにする。細胞と融合タンパク質足場をネイキッドマウスの前眼房内に移植する。細胞は、目の窓を通して、インビボで検査される。
【0212】
(B)非接着細胞のインビボ試験
肥満細胞と白血球をそれぞれCD34とCD45に対するIgGとともにZRep
4CT足場上で成長させ、次いでインビボで監視する。一部の細胞は、発達中の段階で、例えばクラスタで成長できる神経幹細胞など非接着性である。神経クラスターにおいて、細胞は、非分化型を保っている。神経幹細胞は、神経幹細胞上の細胞受容体に対するIgGとZRep
4CT足場上のクラスタ−で成長する。
【0213】
(C)特定細胞の選択
ZRep
4CT足場(薄膜/発泡体/繊維)が特定の抗体による細胞の選択に用いられる。肥満細胞は、2つの工程手順で選択される。工程1:CD34に対するIgGによるZRep
4CT足場に対する細胞の結合。工程2:C−kit受容体に対するIgGによるZRep
4CT足場上での肥満細胞の選択。
【0214】
(D)ZRep
4CT上で成長する真核細胞におけるタンパク質の生産。
タンパク質の生産のために使用される多くの細胞が、非接着細胞株に由来する。しかし、付着細胞を用いるときには、物理的分離が促進されるので、多くの方法で大規模な生産が容易である。細胞受容体に対するIgGによるZRep
4CT足場の使用により、非接着細胞の成長は接着様式でなされ得る。
【0215】
実施例15 − Z−Rep
4CTに対するIgG結合における尿素処理の影響の調査
IgG結合におけるZ−Rep
4CT薄膜と繊維の尿素処理の影響をここで評価した。Z−Rep
4CTの薄膜と繊維をウサギ血清からのIgGの結合の前に尿素で処理した。結合したIgGを溶出し、SDS−PAGEにより分析した。
【0216】
実施例6でウサギ血清からのIgGに結合することが観察され、8Mの尿素で処理された(200μlの8M尿素、20分、室温)Z−Rep
4CTの繊維と薄膜を、500μlのウサギ血清(1:5希釈)とともに室温で1時間インキュベートした。Rep
4CT(配列番号20)の薄膜と繊維がコントロール材料として使用され、同じ方法で処理された。600μlのPBSで3回洗浄した後、結合したIgGを、溶出緩衝液(0.5M酢酸、1M尿素、100mMのNaCl)で約2.7までpHを下げることによって500μlで溶出し、その後溶出画分を非還元SDS−PAGEにより分析した(非表示)。
【0217】
Z−Rep
4CTの薄膜と繊維は8Mの尿素による処理の後でIgGに対するその結合能を保持していることが結論された。Rep
4CTのコントロールの薄膜と繊維はIgGの結合を全く示さなかった。
【0218】
実施例16 − Z−Rep
4CTに対するIgG結合におけるNaOH処理の影響の調査
洗浄条件に対する耐久性を更に評価するため、IgG結合におけるZ−Rep
4CT(配列番号14)の薄膜と繊維のNaOH処理の影響が評価された。実施例6でウサギ血清からのIgGに結合することが観察され、8Mの尿素で処理された(200μlの8M尿素、20分、室温)実施例4及び5からのZ−Rep
4CTの繊維と薄膜を1MのNaOHで更に処理した(500μlの1MのNaOH、20分、室温)。Rep
4CT(配列番号20)の薄膜と繊維がコントロール材料として使用され、同じ方法で処理された。NaOH処理の後、薄膜と繊維は500μlのウサギ血清(1:5希釈)とともに室温で1時間インキュベートした。600μlのPBSで3回洗浄した後、結合したIgGを、溶出緩衝液(0.5M酢酸、1M尿素、100mMのNaCl)で約2.7までpHを下げることによって500μlで溶出し、その後溶出画分を非還元SDS−PAGEにより分析した(非表示)。
【0219】
Z−Rep
4CTの薄膜と繊維は1MのNaOHによる処理の後でIgGに対するその結合能を保持していることが結論された。Rep
4CTのコントロールの薄膜と繊維はIgGの結合を全く示さなかった。
【0220】
実施例17 − Z−Rep
4CT薄膜に対するIgG−HRP結合の定量化
(A)Z−Rep
4CT薄膜に対するIgG−HRP結合
Z−Rep
4CTに対するIgGの結合を定量化するため、IgGにコンジュゲートした西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(IgG−HRP)をZ−Rep
4CT薄膜に結合させた。Z−Rep
4CT(配列番号14)及びRep
4CT(コントロール,配列番号20)の薄膜が異なる濃度(0.011−890pmoles)で96ウェルプレート中に鋳造された。薄膜を室温で1時間、100μlの1%BSAでブロックした。次いで、薄膜を50μlのIgG−HRP(すなわち、34pmolのIgG−HRP、ウサギ起源のIgG)中で室温で1時間インキュベートし、その薄膜を100μlの0.05%のTweenで2回洗浄し、100μlのPBSで最終洗浄を行った。薄膜に対して結合したIgG−HRPを測定するために、50μM Amplex Red/2mM H
2Oの50μlが一度に一つの薄膜に添加され、Tecan Plate Readerで3分間570nmで吸光度をモニタリングした。可溶性IgG−HRPの希釈系列(0.05−0.5pmole)もまた薄膜のと同型のプレート中で、100μlの1%ウシ用血清アルブミン(BSA)により1時間ウェルをブロックすることによって測定され、その後20μlの水溶性のIgG−HRP、20μlの125μMのAmplex Red及び10μlの9.79mMのH
2O
2を添加した。三連の測定を薄膜および希釈系列に対して行った。
【0221】
線形回帰フィットが、個々の測定に対してテカンソフトウェアを使用して作成され、時間に対する570nmでの吸光度の生データプロットの線形領域(Abs570/min)に相当する。その勾配は、無職の基質から色付きの生成物へのHRPの変換速度に対応し、結合したIgG−HRP分子の数に比例する。
【0222】
各個々の三つ組において、結合したIgG抗体−HRP(ピコモル)の量の平均値と標準偏差を算出した。
図24Aは、異なるタンパク質濃度のZ−Rep
4CT及びRep
4CTの薄膜に結合したIgG−HRPの量を示し、
図24BはIgG−HRPに結合した異なるタンパク質濃度の薄膜におけるZ−Rep
4CT及びRep
4CTの画分を示す。
【0223】
1.1pmoleのタンパク質又はそれ以上を含有する薄膜において、Z−Rep
4CTの薄膜は対応するRep
4CTコントロール薄膜よりも有意に多くIgG−HRPに結合する。IgG−HRPに結合したこれらの薄膜中のZ−Rep
4CT分子の画分はおよそ〜7%未満である。
【0224】
(B)NaOH処理後のZ−Rep
4CT薄膜に対するIgG−HRP結合
Z−Rep
4CTの薄膜に結合したIgGにおけるNaOH処理の影響を調べるために、IgG−HRPをNaOH処理した薄膜に結合させ、結合したIgG−HRPの量が検出された。
【0225】
実施例17(A)のIgG−HRPを結合したZ−Rep
4CT(配列番号14;1.1−890pmole)及びRep
4CT(配列番号20,108pmole)の薄膜を、結合したIgG−HRPを除去するために、100μlの溶出緩衝液(pH2.7)で1時間室温でインキュベートした。次に、薄膜を100μlの1MのNaOHで20〜30分間室温でインキュベートし、その後150μlのPBSで2回洗浄した。薄膜を含むウェルは1%のBSAでブロックされ、IgG−HRP(34pmol)でインキュベートし、3回洗浄し、50μMのAmplex Red/2mM H
2O
2を添加し、続いて上記(A)に示したように570nmで吸光度をモニタリングした。各個々の三つ組において、結合したIgG抗体−HRP(ピコモル)の量の平均値と標準偏差を算出した。
【0226】
図25Aは、異なるタンパク質濃度のZ−Rep
4CT及びRep
4CTの薄膜に結合したIgG−HRPの量を示し、
図25BはIgG−HRPに結合した異なるタンパク質濃度の薄膜におけるZ−Rep
4CT及びRep
4CTの画分を示す。
図26はNaOH処理の前後において、Z−Rep
4CT及びRep
4CTの薄膜に対しての結合したIgG−HRPの量を可視化している。
【0227】
108pmoleのZ−Rep
4CTの薄膜は対応するRep
4CTの薄膜よりも有意に多い結合を示し、NaOH処理した薄膜に対するIgG−HRPのZ−Rep
4CT結合の量は、薄膜のタンパク質濃度が増加するにつれて増加する傾向を示している。Z−Rep
4CT薄膜に対するIgG−HRPの量は、未処理の薄膜に比べて、過酷な1MのNaOH処理によっておよそ2〜4培減少する。
【0228】
実施例18 − Z−Rep
4CT薄膜に対するIgG−フルオロフォア結合の定量化
フルオロフォアにコンジュゲートしたIgGの結合が、異なる量のタンパク質を含むZ−Rep
4CT及びRep
4CTの薄膜に対して行われた。
【0229】
Z−Rep
4CT(配列番号14)及びRep
4CT(コントロール,配列番号20)の薄膜が異なる濃度(0.011−890pmoles)で調製され実施例17に示したようにブロックされた。次いで、薄膜を50μlのIgG−フルオロフォア(100pmolのIgG−フルオロフォア、ウサギ起源のIgG、フルオロフォア:Alexa Fluor 633)中で室温で1時間インキュベートし、その薄膜を100μlの0.05%のTweenで2回洗浄し、100μlのPBSで最終洗浄を行った。傾向測定の前に、100μlのPBSを各薄膜に対して添加した。
【0230】
可溶性IgG−フルオロフォアの希釈系列(0−1pmole)もまた薄膜のと同型のプレート中で、100μlの1%ウシ用血清アルブミン(BSA)により1時間ウェルをブロックすることによって測定され、その後100μlの水溶性のIgG−フルオロフォアが添加された。蛍光を薄膜について三つ組として測定し、希釈系列はTecan Plate Reader機器上で測定された(励起:632nm、発光:660nm、ゲイン:200)。
【0231】
各個々の三つ組に対して、結合したIgG−フルオロフォアの平均値と標準偏差(pmol)が、0.011−55pmolのタンパク質を含む薄膜に対して計算された(
図27A)。IgG−フルオロフォアに結合するZ−Rep
4CT及びRep
4CT分子の画分もまた計算された(
図27B)。
【0232】
Z−Rep
4CT薄膜に対するIgG−Alexa Fluor 633の結合は対応するRep
4CTコントロール薄膜よりも有意に多いと結論づけることができる。0.011−11pmolのZ−Rep
4CTの薄膜の間においてIgG−フルオロフォア結合の有意な違いは観察されず、このことはこの波長でのZ−Rep
4CTの薄膜だけの自己蛍光に起因しているようには見えない(データ非表示)。55pmol以上のタンパク質を含有するZ−Rep
4CT薄膜に対するIgG−フルオロフォアの結合はいかなる信頼ある方法でも計算することはできず、それはこれらに由来する蛍光シグナルが校正曲線の外側であったためである。
【0233】
Z−Rep
4CT薄膜による結合IgG−フルオロフォアの量を実施例17のIgG−HRPの対応する量と比較することにより、Z−Rep
4CTはIgG−HRPよりも多くのIgG−フルオロフォアに結合するように見え(例えば55pmolの薄膜と1.1pmolの薄膜に対してそれぞれ〜4培及び〜6培の違い)、これはフルオロフォアとHRPの間の大きさの違いに起因する可能性がある。更に、IgG−フルオロフォアに結合するZ−Rep
4CT分子の画分もまた、IgG−HRP結合のものと比べて増加したように見える。
【0234】
実施例19 − ヒト血漿からのIgGのZ−Rep
4CT薄膜への結合
この実験において、Z−Rep
4CT(配列番号14)の3つの薄膜が実施例3で示したように調製された。全ての薄膜が、鋳造後に、保管の最中にいかなる液体にも浸漬されることなく+4℃で8ヶ月間保管された。各Z−Rep
4CT薄膜を500μlのヒト血漿(1:5希釈)と共に室温で1時間インキュベートした。600μlのPBSで3回洗浄した後、結合したIgGを、溶出緩衝液(0.5M酢酸、1M尿素、100mMのNaCl)で約2.7までpHを下げることによって500μlで溶出し、その後溶出画分を非還元SDS−PAGEにより分析した(非表示)。Rep
4CT(配列番号20)の薄膜がコントロール材料として使用され、同じ方法で処理された。
【0235】
ゲルから、IgG(〜146kDa)はZ−Rep
4CT薄膜からの溶出画分にあるように見えることが自明であり、Z−Rep
4CTの薄膜は、いかなる液体にも浸漬されることのない+4℃での8ヶ月の保管後に、ヒト血漿からのIgGに結合する能力を保持していることを示している。Rep
4CTのコントロール薄膜は、溶出画分で少しもIgGを示さない。これらの知見は、本発明による構造を使用するときに、実施例4で報告された実験再現性の観察を拡張し、またそのタンパク質構造がヒトIgGに結合することができることを示している。
【0236】
実施例20 − ヒト血漿からのIgGのオートクレーブ処理したZ−Rep
4CT繊維への結合
オートクレーブ処理により滅菌後のIgGに結合するZ−Rep
4CTの能力が調査された。Z−Rep
4CT繊維のオートクレーブ処理後に、繊維をヒト血漿からのIgGに結合させた。オートクレーブ処理した繊維のIgG結合をオートクレーブ処理してない繊維のそれと比較した。
【0237】
2つのほぼ等しい大きさのZ−Rep
4CT(配列番号14)繊維を20mMのトリス(pH8.0)を含有する2本のチューブに移した。次に繊維の一つを121℃で20分間オートクレーブ処理した。2つのRep
4CT(配列番号20)繊維がコントロール材料として使用され同じ方法で処理された。
【0238】
繊維を500μlのヒト血漿(1:5希釈)と共に室温で1時間インキュベートした。600μlのPBSで3回洗浄した後、結合したIgGを、溶出緩衝液(0.5M酢酸、1M尿素、100mMのNaCl)で約2.7までpHを下げることによって500μlで溶出し、その後溶出画分を非還元SDS−PAGEにより分析した(
図28)。
【0239】
図28に示すゲルは以下に従ってロードされた:
(1)1.4μlロードされたヒト血漿(1:5)
(2)14μlロードされたZ−Rep
4CT、オートクレーブしてない繊維
(3)14μlロードされたZ−Rep
4CT、オートクレーブした繊維
(4)14μlロードされたRep
4CT、オートクレーブしてない繊維
(5)14μlロードされたRep
4CT、オートクレーブした繊維
(6)分子量マーカー。
【0240】
オートクレーブしていない及びオートクレーブしたZ−Rep
4CT繊維の両方とも146kDa周辺に明らかなIgGのバンドを示している。これらのIgGのバンドの強度には明らかな差がなく、オートクレーブ処理は、IgG結合能力にほとんど影響を及ぼさないことを示唆している。オートクレーブしていない及びオートクレーブしたRep
4CTの繊維のどちらも溶出画分にIgGを示していない。全ての繊維は、付加的な、もっと弱い、アルブミンのバンド(〜50−60kDa)を示している。
【0241】
実施例21 − Z−Rep
4CT繊維のプロテアーゼ3C切断
Z−Rep
4CTタンパク質(全タンパク質構造はHis
6−Z−LEALFQGP−Rep
4CT;配列番号14)はプロテアーゼ3C認識部位(LEALFQGP,アミノ酸QとGの間でのプロテアーゼ3C切断)をZドメインとRep
4CTの間に含んでいる。
【0242】
任意の大きさのZ−Rep
4CT繊維をエッペンドルフチューブに移し、プロテアーゼによる切断が9.6μgのプロテアーゼ3Cと0.35μlの1MのDTTを総体積が350μlまで添加することによって開始された。切断は+4℃で24時間進行させ、その後SDS−PAGE用にサンプルを切断上清から抜き取った。SDS−PAGE用にサンプルを切断上清から抜き取って、別に24時間切断を進行させた(+4℃)。次いで2つの抜き取られたサンプルをSDS−PAGEにより分析した(
図29)。
【0243】
図29に示すゲルは以下に従ってロードされた:
(1)分子量マーカー
(2)プロテアーゼ3Cで24時間切断されたZ−Rep
4CT繊維の上清
(3)プロテアーゼ3Cで48時間切断されたZ−Rep
4CT繊維の上清。
図29から、プロテアーゼ3CによるZ−Rep
4CT繊維の切断後の上清の両方が2つの異なるバンドを含んでいたことが見て取れる。第一のバンドは、わずかに35kDa未満であり、プロテアーゼ3C(〜31kDa)に対応し、第二のバンドは10kDaの真上に位置していた。プロテアーゼ3CによるZ−Rep
4CTの切断は、(i)His
6−Z−LEALFQ(〜9kDa)及び(ii)GP−Rep
4CT(〜23kDa)に対応する2つのオリゴペプチドセグメントを生成するため、第二のバンドは切断されたHZフラグメント(9kDa)に対応する。従って、プロテアーゼ3Cによる切断部位はZ−Rep
4CT繊維の切断に対して得ることができ、それゆえ、HZ部分は除去することができる。
【0244】
実施例22 − IgGの存在下での可溶性Z−Rep
4CTの繊維形成
溶性Z−Rep
4CTをIgGと混合すると、Zドメインに対するIgG結合の動力学はZ−Rep
4CT繊維の形成よりも早くなるはずである。Zドメインの大半がIgGで占有されている場合の繊維を形成する可能性が研究された。
【0245】
IgGの存在下での繊維の形成
Z−Rep
4CT(配列番号14)の精製が前述と同様に行われ、精製されたタンパク質溶液は2.2mg/mlまで濃縮された。繊維の形成は4つの異なる条件で行われ、全て、総繊維形成体積は3mlで、71nmolの可溶性Z−Rep
4CTタンパク質を含んでいた。第一条件はZ−Rep
4CTのみ含んでおり;第二条件は精製されたウサギIgGを混合したZ−Rep
4CTであり(IgGに比べて8培超のZ−Rep
4CT);第三条件はウサギ血清を混合したZ−Rep
4CTであり(Z−Rep
4CTに比べて〜1.5培超の血清IgG);及び第四条件はウサギ血清を混合したZ−Rep
4CTであった(血清IgGに比べて〜7倍超のZ−Rep
4CT)。繊維の形成は室温で3日間進行させた。
【0246】
繊維形成の3日後に、条件1、2及び4に対して繊維が形成された。条件4の形成された繊維に加えて、かなりの量のZ−Rep
4CTタンパク質凝集体もまた形成された。条件3においては繊維又は凝集体は全く目視できなかった。
【0247】
これからの一つの結論は、数多くの他の生物分子の存在が、個々のRep
4CT分子がお互いに相互作用することを遮蔽する場合に、繊維の形成が損なわれるということであろう。このことの別の態様は、条件3の場合でありうるように、非常に多くのIgGが存在する場合、Z−Rep
4CT中の多くのZドメインがIgGと結合し、IgGと結合したZ−Rep
4CTの大きな画分が繊維の形成を妨げ得るということであろう。
【0248】
Z−Rep
4CT繊維からの結合したIgGの除去
条件1、2及び4で作成された薄膜は、条件4からの凝集体と一緒に回収され、20mMのトリス(pH8)で洗浄される。次に、全ての繊維と凝集体は等しい半分に分割され、一つの半分はpHを下げることによる結合IgGの溶出用であり、他の半分はプロテアーゼ3Cによる切断用である。
【0249】
繊維と凝集体の第一の群はエッペンドルフチュウーブへ移され、144μlの溶出緩衝液(0.5M酢酸、1M尿素、100mMのNaCl)、pH2.7が各チューブに添加された。IgGの溶出を室温で30分間進行させ、その後溶出上清を回収しSDS−PAGEで解析した(
図30)。
【0250】
繊維と凝集体の第二の群に対して、DTTを含有する144μlのプロテアーゼ3C(即ち110μgのプロテアーゼ3C)が添加された。プロテアーゼ3Cによる切断を+4℃で一晩進行させ、その後切断上清を回収しSDS−PAGEで解析した(
図30)。
【0251】
図30は、Z−Rep
4CT繊維から除去されたIgGと可溶性Z−Rep
4CTとIgGを混合することにより形成された凝集体の非還元SDSーPAGEゲルを示す。ゲルは以下に従ってロードされた:
(1)精製された可溶性Z−Rep
4CT(2.2mg/ml)
(2)Z−Rep
4CT繊維の低pH溶出(条件1)
(3)Z−Rep
4CT繊維の低pH溶出(条件2)
(4)Z−Rep
4CT繊維の低pH溶出(条件4)
(5)Z−Rep
4CT凝集体の低pH溶出(条件4)
(6)分子量マーカー
(7)Z−Rep
4CT繊維のプロテアーゼ3Cによる切断(条件1)
(8)Z−Rep
4CT繊維のプロテアーゼ3Cによる切断(条件2)
(9)Z−Rep
4CT繊維のプロテアーゼ3Cによる切断(条件4)
(10)Z−Rep
4CT凝集体のプロテアーゼ3Cによる切断(条件4)
[記:His
6Z、プロテアーゼ3C及びウサギIgGの分子量はそれぞれ9,30及び〜146kDaである。]
【0252】
図30から、どの条件下で形成されたかにかかわらず、IgGは全ての試験された繊維と凝集体から回収されることが自明である。実施例13も参照。
【0253】
実施例23 − 抗体結合を用いたZ−Rep
4CTへのリンパ球の捕捉
IgGのFc部分に結合するために、Z−Rep
4CTマトリックス、例えば繊維と薄膜を用いることは、捕捉されたIgGが特異的に指向するものの更なる結合の可能性を開く。一つの魅力的な考え方は、細胞親和性リガンドとして、Z−Rep
4CTマトリックス上で捕捉したIgGを用いて、多くの異なる細胞型を含む生物学的サンプルからある種の細胞型を単離することであろう。この細胞捕捉アプローチを試験するために、Z−Rep
4CT繊維と薄膜を、ヒトTリンパ球の細胞表面でCD3分子に特異的に指向したIgGに結合させた。捕捉された細胞を、蛍光顕微鏡によって分析した。
【0254】
Z−Rep
4CT(配列番号14)のタンパク質の発現および精製は、前述したように行った。精製されたタンパク質は、約1mg/mlに濃縮し、この後繊維および薄膜を前述した手順に従って作成した(薄膜は24ウェルの組織培養プレート中で作成された)。更に、Rep
4CT(配列番号20)コントロール繊維および薄膜を約1mg/mlのタンパク質溶液から同様にして調製した。
【0255】
マトリックス上でヒトリンパ球のCD3分子に指向したIgGを捕捉するため、繊維と薄膜をフルオロフォアがコンジュゲートした抗ヒトCD3 IgG(ヒトCD3抗原に対するマウスモノクローナルIgG
2a、ラベリング:Alexa Fluor 488)の1:20希釈no150μlに室温で1時間浸漬させた。繊維と薄膜は300μlのPBS(pH7.4)で3回洗浄し、その後それらを倒立ニコンエクリプスTiの蛍光顕微鏡(455から490nmで励起、500から540nmで検出)でIgG結合について分析した。Z−Rep
4CTの繊維と薄膜は両方ともAlexa Fluor 488にコンジュゲートしたIgG抗体を結合し、従ってZ−Rep
4CTのZドメインがIgGに結合する能力を確認している。IgGに曝露していないZ−Rep
4CTマトリックスはこの選択された領域で蛍光シグナルを示さず、Rep
4CTのコントロールの繊維と薄膜はIgGに曝露した場合でさえも蛍光を示さない。
【0256】
単核細胞(即ち、リンパ球と単球)を、Ficoll−Paque密度勾配分離培地中で室温での勾配遠心分離により(30分、400×g)新たに収集したヒト末梢血から分離した;。遠心分離後に単核細胞画分を回収し、PBSで2回洗浄し、その後細胞を20mlのRPMI/10%FCS培地に再懸濁した。単球枯渇は、T−75組織培養フラスコに細胞懸濁液を転送し、続いて37℃で90分間インキュベートすることによって達成された。単球枯渇後に、懸濁液中の細胞は回収され、リンパ球の総数は11×10
6と数えられた。
【0257】
リンパ球をZ−Rep
4CT(配列番号14)マトリックスに結合させるために、リンパ球(1ml,〜0.37×10
6細胞/ml)が繊維と薄膜に適用され、続いて+4℃で30分間インキュベートした(穏やかに揺らしながら)。次に、繊維と薄膜はPBS/2%FCS(pH7.4)の3mlで3回洗浄した。結合した細胞は、4℃で15分間、2%PFA(パラホルムアルデヒド)に固定された。細胞核は、200μlのDAPI(1μg/ml)染色溶液中に、室温で5分間、結合した細胞を有する繊維および薄膜を浸漬することによって染色し、その後300μlのPBSで3回洗浄した。300μlの体積のPBSが各繊維と薄膜に添加され、その後倒立ニコンエクリプスTi機器(380から395nmで励起、415から475nmで検出)を用いる蛍光顕微鏡分析した。
【0258】
Z−Rep
4CT繊維の写真(非表示)は、抗ヒトCD3 IgG抗体に曝されていない繊維に対していくつか結合したリンパ球を示しているが、一方、IgGに曝されている繊維はより多くのリンパ球に結合しているように見える。Z−Rep
4CT薄膜の場合、IgGに曝された薄膜のみならずIgGに曝されていない薄膜においても染色された細胞が明らかに目に見える。しかし、薄膜においてもまた、細胞の結合前に抗ヒトCD3 IgGに曝された薄膜は細胞の結合前にIgGに曝されていない薄膜よりもより多くの細胞が結合しているように見える。更に、Rep
4CT(配列番号20)のコントロールの繊維と薄膜は全くリンパ球の結合を示していない。
【0259】
この実験において、蛍光顕微鏡によって、Z−Rep
4CTの繊維と薄膜は、Rep
4CTのものとは対照的に、蛍光標識されたIgG抗体、つまりマウス抗ヒトCD3 IgGに結合する能力を有することが示されている。更に、Z−Rep
4CT繊維と薄膜の両方とも、ヒトTリンパ球を特異的に認識するIgG抗体を保有するか又は保有しないに関わらず、リンパ球に結合する能力を有する。これは、Zドメイン自体がヒトリンパ球のための多少の親和性を有することを示唆し得る。しかし、Z−Rep
4CTマトリックスに対する結合細胞の数は、細胞結合の前にIgGでコーティングたときにわずかに増加しているように見える。結合した細胞がT型のリンパ球であるかどうかを知ることができるように、他の型のリンパ球(例えば、Bリンパ球およびNK細胞)からTリンパ球を区別するために、ヒトCD3分子に指向した二次抗体を適用することが必要である。
【0260】
実施例24 − ヒト血漿からのアルブミンのAbd−Rep
4CT薄膜への結合
薄膜中でのAbdドメイン(配列番号16の残基13から58)の接近性、及びAbd−Rep
4CT薄膜のアルブミン結合する能力を評価するために、ヒト血漿をアルブミン源として使用した。結合したアルブミンを溶出し、SDS−PAGEにより分析した。
【0261】
実施例7で調製したAbd−Rep
4CT(配列番号16)の6つの薄膜を、500μlのヒト血漿(1:5希釈)とともに室温で1時間インキュベートした。600μlのPBSで3回洗浄した後、結合したアルブミンを、溶出緩衝液(0.5M酢酸、1M尿素、100mMのNaCl)で約2.7までpHを下げることによって500μlで溶出し、その後溶出画分を非還元SDS−PAGEにより分析した(
図31)。また実施例7で調製されたRep
4CT(配列番号20)の薄膜がコントロール材料として使用され、同じ方法で処理された。
【0262】
図31に示すゲルは以下に従ってロードされた:
(1)0.7μlロードされたヒト血漿(1:50)
(2−7)14μlロードされたAbd−Rep
4CT、薄膜の六つ組(Hexaplicate)
(8)14μlロードされたヒト血漿とインキュベートした空のウェル
(9)分子量マーカー
(10−12)14μlロードされたRep
4CT、薄膜の三つ組。
【0263】
Abd−Rep
4CTの全6つの薄膜はヒト血漿からのアルブミンに結合している(レーン2−7)。これらのAbd−Rep
4CT薄膜の溶出画分において単一のアルブミンのバンド(〜60kDa)のみが現れるため、それらはヒト血漿からはいかなるものにも非特異的には結合しないように見える。Rep
4CTの薄膜は、溶出画分で少しもアルブミンを示していない(レーン10−12)。
【0264】
薄膜の安定性を調べるために、以前に一回使用され、PBSで29日間保管(+4℃)されていたAbd−Rep
4CT薄膜のアルブミン結合能を再び試験した。Abd−Rep
4CTの6つの繊維を500μlのヒト血漿(1:5希釈)と共に室温で1時間インキュベートした。600μlのPBSで3回洗浄した後、結合したアルブミンを、溶出緩衝液(0.5M酢酸、1M尿素、100mMのNaCl)で約2.7までpHを下げることによって500μlで溶出し、その後溶出画分を非還元SDS−PAGEにより分析した(非表示)。Rep
4CTの薄膜がコントロール材料として使用され、同じ方法で処理された。
【0265】
Abd−Rep
4CTの全6つの薄膜はPBSで29日間保存した後、ヒト血漿からのアルブミンに結合する能力を保持していた。Rep
4CTの薄膜は、溶出画分で少しもアルブミンを示さなかった。
【0266】
実施例25 − Abd−Rep
4CT薄膜の洗浄
(A)Abd−Rep
4CT薄膜の尿素処理
Abd−Rep
4CT(配列番号16)の薄膜(合計6つの薄膜、以前実施例24で使用)を室温で20分間8Mの尿素を500μlとともにインキュベートし、その後それらを600μlのPBSで3回洗浄した。次に繊維を500μlのヒト血漿(1:5希釈)中で室温で1時間インキュベートした。600μlのPBSで3回洗浄した後、結合したアルブミンを、溶出緩衝液(即ち、0.5M酢酸、1M尿素、100mMのNaCl)で約2.7までpHを下げることによって500μlで溶出し、その後溶出画分を非還元SDS−PAGEにより分析した(非表示)。Abd−Rep
4CTの全6つの薄膜は8Mの尿素で処理した後、ヒト血漿からのアルブミンになお結合できる。
【0267】
(B)Abd−Rep
4CT繊維と薄膜のNaOH処理
Abd−Rep
4CT(配列番号16)の6つの薄膜を、最初に500μlのヒト血漿(1:5希釈)中で室温で1時間インキュベートした。600μlのPBSで3回洗浄した後、結合したアルブミンを、溶出緩衝液(0.5M酢酸、1M尿素、100mMのNaCl)で約2.7までpHを下げることによって500μlで溶出し、その後溶出画分を非還元SDS−PAGEにより分析した。同じ手順をRep
4CT(配列番号20)コントロール薄膜に実施した。
【0268】
NaOHによる処理において、Abd−Rep
4CT(配列番号16)薄膜の3つのセットの三つ組を用いた:(i)8Mの尿素で以前に処理された薄膜(上の(A)を参照)を1MのNaOHで処理し、その後アルブミンに結合させる;(ii)以前に未使用の薄膜を1MのNaOHで処理し、その後アルブミンに結合させる;(iii)以前に未使用の薄膜をアルブミン結合について分析だけ行う。アルブミンの結合について上で使用されるAbd−Rep
4CT繊維は、1MのNaOHで処理され、その後再びアルブミンに結合させる。
【0269】
NaOHによる処理において、Abd−Rep
4CTの繊維と薄膜[薄膜セット(i)と(ii)]は室温で〜20分間、500μlの1MのNaOHとインキュベートし、その後、それらを600μlのPBSで3回洗浄した。次に繊維と全3セットの薄膜を500μlのヒト血漿(1:5希釈)中で室温で1時間インキュベートした。600μlのPBSで3回洗浄した後、結合したアルブミンを、溶出緩衝液(0.5M酢酸、1M尿素、100mMのNaCl)で約2.7までpHを下げることによって500μlで溶出し、その後溶出画分を非還元SDS−PAGEにより分析した(
図32)。
【0270】
図32のゲルは以下に従ってロードされた:
(1)1.4μlロードされたヒト血漿(1:5)
(2−3,5)8Mの尿素と1MのNaOHで処理され、アルブミン結合させて、14μlロードされたAbd−Rep
4CT薄膜の三つ組。
(4)分子量マーカー
(6−8)アルブミン結合の前に未処理であって14μlロードされたAbd−Rep
4CT薄膜の三つ組。
(9−11)アルブミン結合の前に1MのNaOHで処理され、14μlロードされたAbd−Rep
4CT薄膜の三つ組。
(12)アルブミン結合の前に未処理であって14μlロードされたAbd−Rep
4CT繊維。
(13)アルブミン結合の前に1MのNaOHで処理され、14μlロードされたAbd−Rep
4CT繊維。
(14)アルブミン結合の前に未処理であって14μlロードされたRep
4CT繊維。
【0271】
Abd−Rep
4CT繊維は1MのNaOHによる処理の前と後の両方で明らかにアルブミン(〜60kDa)に結合するが(それぞれレーン12と13)、一方対応する未処理のRep
4CT繊維は少しもアルブミン結合を示さなない(レーン14)。全てのAbd−Rep
4CT薄膜は、アルブミン結合の前に、1MのNaOHにより処理されない薄膜と処理された薄膜の間で、バンド強度に明らかな相違は示していない(それぞれレーン6−8及びレーン9−11)。更に、アルブミン結合の前に、8Mの尿素と1MのNaOHの両方で処理された薄膜は、別の2組の薄膜と比較して、溶出アルブミンのバンド(レーン2、3、及び5)の強度に減少を示している。
【0272】
実施例26 − ウサギ及びマウスIgGのC2−Rep
4CT薄膜と繊維に対する結合
C2−Rep
4CT繊維と薄膜のC2ドメイン(配列番号18の残基13−67)の接近性は以下のように分析される。室温で1時間、C2−Rep
4CT(配列番号18)の2つの薄膜と一つの繊維を500μlのウサギ血清(1:5希釈)とインキュベートし、一方C2−Rep
4CT(配列番号18)の別の2つの薄膜と一つの繊維を〜50μg/mlのマウスIgG
1(モノクローナル抗ウサギ免疫グロブリン、マウスIgG
1アイソタイプ、マウス腹水)の500μlとともにインキュベートした。600μlのPBSで3回洗浄した後、結合したIgGを、溶出緩衝液(0.5M酢酸、1M尿素、100mMのNaCl)で約2.7までpHを下げることによって500μlで溶出し、その後溶出画分を非還元SDS−PAGEにより分析した(
図33)。Rep
4CT(配列番号20)の薄膜と繊維がコントロール材料として使用され、同じ方法で処理された。
【0273】
図33のゲルは以下に従ってロードされた:
(1)マウス腹水(IgG
1のアイソタイプ)
(2)ウサギ血清(1:50)
(3−4)C2−Rep
4CT、薄膜、マウスIgG
1の二つ組
(5、7)C2−Rep
4CT、薄膜、ウサギ血清の二つ組
(6)分子量マーカー
(8)C2−Rep
4CT、繊維、マウスIgG
1
(9)C2−Rep
4CT、繊維、ウサギ血清
(10−11)Rep
4CT、薄膜、マウスIgG
1の二つ組
(12)Rep
4CT、薄膜、ウサギ血清
(13)Rep
4CT、繊維、ウサギ血清
(14)Rep
4CT、繊維、マウスIgG
1
[記:非還元SDS−PAGE条件下で、ウサギIgGは〜146kDaでマウスIgGは〜160kDaである。]
【0274】
腹水からのマウスIgG
1のC2−Rep
4CT薄膜に対する結合はSDS−PAGEの溶出画分に検出可能なIgGのバンドを与えなかったが(レーン3−4)、C2−Rep
4CT繊維はマウスIgG
1と結合したように見える(レーン8、マウスIgGは〜160kDaである)。しかし、C2−Rep
4CTの薄膜(レーン5及び7)と繊維(レーン9)はウサギ血清からのIgGの結合を示している。マウスIgG1の起源がここでが腹水の形態にあるので、この液体中で何かがどういうわけか薄膜におけるC2とIgG1の間の結合を乱している事例である可能性がある。Rep
4CTのコントロールの薄膜と繊維は、溶出画分で少しもIgGを示さなかった(レーン10−14)。
【0275】
実施例27−ヒト血漿からのIgGのC2−Rep
4CT薄膜への結合
C2−Rep
4CTのIgGに結合する能力をさらに調べるため、C2−Rep
4CT(配列番号18),Z−Rep
4CT(配列番号14)及びRep
4CT(配列番号20)の各々の2つの薄膜を、ヒト血漿(1:5希釈)の500μlとともに室温で1時間インキュベートした。600μlのPBSで3回洗浄した後、結合したIgGを、溶出緩衝液(0.5M酢酸、1M尿素、100mMのNaCl)で約2.7までpHを下げることによって500μlで溶出し、その後溶出画分を非還元SDS−PAGEにより分析した(
図34)。
【0276】
図34のゲルは以下に従ってロードされた:
(1)1.4μlロードされたヒト血漿(1:5)
(2)分子量マーカー
(3−4)14μlロードされたC2−Rep
4CT、薄膜の二つ組。
(5−6)14μlロードされたZ−Rep
4CT、薄膜のニつ組。
(7−8)14μlロードされたRep
4CT、薄膜のニつ組。
【0277】
図34において、Z−Rep
4CT薄膜はヒト血漿からのIgGに明らかに結合していることが見てとれる(レーン5−6)。C2−Rep
4CT薄膜はまた、溶出画分(レーン3−4)に弱いIgGのバンドを示す。Rep
4CTのコントロール薄膜はヒト血漿からのアルブミンに結合しないことを示している(レーン7−8)。
【0278】
実施例28 − ATR−FTIRを用いたZ−Rep
4CT及びRep
4CTの繊維と薄膜の二次構造の比較
Zドメインの二次構造はその活性なコンフォーメーションにおいてαヘリックスであり、一方Rep
4CTの二次構造は主にβシート型である。Z−Rep
4CT繊維と薄膜のZドメインが正しくフォールドした場合、Rep
4CT薄膜と繊維のと比較してそれらのマトリックスに高いαヘリックス含量を期待することができよう。二次構造の違いを調べるために、Z−Rep
4CTとRep
4CTの繊維と薄膜を分光学的方法である減衰全反射型フーリエ変換赤外分光光度計(ATR−FTIR)により分析し、それによりβシート構造(バンド位置:1623−1641,1674−1695cm
−1)からαヘリックス(バンド位置:1648−1657cm
−1)を識別することが可能である。
【0279】
Z−Rep
4CT(配列番号14)の一つの薄膜及びRep
4CT(配列番号20)の一つを、15μlのタンパク質溶液を室温で一晩空気乾燥させることにより作成した。Z−Rep
4CTとRep
4CTについて繊維が作成され、その後張力下で、室温で〜30分間空気乾燥した。ATR−FTIRは、その後、BrukerのプラチナATRユニットを用いて記録した。繊維と薄膜の両方のIRスペクトル(非表示)は、Z−Rep
4CTがRep
4CTよりも高いαヘリックス含量を有することを示し、これは正しくフォールドしたZドメインの存在を示している。このことは、本発明によるZ−Rep
4CT構造中のZドメインの維持された機能に合致しており、例えば実施例2−5、17−19及び22−23を参照。