(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057908
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】航空機から再生される電気エネルギーを処理するための方法およびアーキテクチャ
(51)【国際特許分類】
B64D 41/00 20060101AFI20161226BHJP
B64C 25/42 20060101ALI20161226BHJP
B64C 25/36 20060101ALI20161226BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
B64D41/00
B64C25/42
B64C25/36
H02P9/04 H
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-539325(P2013-539325)
(86)(22)【出願日】2011年11月22日
(65)【公表番号】特表2014-503404(P2014-503404A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】FR2011052724
(87)【国際公開番号】WO2012069755
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年10月29日
(31)【優先権主張番号】1059612
(32)【優先日】2010年11月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514181565
【氏名又は名称】ラビナル・パワー・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランボー,ジユリアン
(72)【発明者】
【氏名】ビエイヤール,セバスチヤン
【審査官】
田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0295314(US,A1)
【文献】
米国特許第05714851(US,A)
【文献】
特表2008−543658(JP,A)
【文献】
特開2001−238303(JP,A)
【文献】
米国特許第05698905(US,A)
【文献】
特開平08−079914(JP,A)
【文献】
特開2007−125909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 41/00
B64C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の可逆電動アクチュエータによって再生されるエネルギーの処理方法であり、標準モードにおいて、熱機械によって駆動される発電機が駆動モードで動作しているアクチュエータに、電圧変換マルチウェイ回路を介して電力を供給する処理方法であって、少なくとも1つのアクチュエータの制動段階では、電気エネルギーの再生は、電気エネルギー発電モードで動作しているアクチュエータ(複数可)によって、回路の対応リンク(複数可)を介して生じること、再生エネルギーは、駆動モードの状態のアクチュエータ(複数可)の少なくとも1つのリンクと発電機との間の専用バスバーを介して、電気エネルギー発電モードで動作しているアクチュエータ(複数可)の少なくとも1つのリンクからの逆方向のエネルギー伝送によって駆動モードの発電機に伝送されること、および伝送されたエネルギーは、駆動モードの発電機を介して熱機械によって機械エネルギーに変換されることを特徴とする、処理方法。
【請求項2】
電圧変換マルチウェイ回路が、航空機の地上でのタキシング機能用または熱機械の始動機能用のいずれかに使用される、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
駆動モードの発電機によって発生した機械エネルギーが、熱機械および/または動力分配機械適応手段を介して動作可能である航空機の1つの機器に供給される、請求項1または請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の処理方法を実施することができるアーキテクチャであって、熱機械によって駆動されて交流電圧を送ることができる可逆発電機と、機械力を航空機に供給することができる電動アクチュエータと、交流電圧を直流電圧に変換することができる交流電圧整流手段を備える電圧変換マルチウェイ回路とを備え、電力変換装置が前記複数のリンク上に配置され、整流手段によって送られる直流電圧によってエネルギーが供給されて同じ数の電動アクチュエータを操作することができ、少なくとも1つの電力変換装置の少なくとも1つのリンク上にバイパス接続される接続手段により、この電力変換装置からの逆エネルギー伝送手段を形成するように専用バスバーを介して発電機を操作することができ、直流電圧バスおよびバイパス接続されない他の電力変換装置はエネルギー供給源となること、および電圧変換マルチウェイ回路はさらに、駆動モードで動作している発電機に用いられる逆方向電気エネルギー伝送手段を備え、前記直流電圧バスは、電圧変換マルチウェイ回路の一部であり、交流電圧整流手段と電力変換装置との間に位置することを特徴とするアーキテクチャ。
【請求項5】
整流手段が、少なくとも1つの整流器または少なくとも1つの変換器とすることができる、請求項4に記載のアーキテクチャ。
【請求項6】
電気エネルギーが、発電モードのアクチュエータによって供給される、請求項4または請求項5に記載のアーキテクチャ。
【請求項7】
電気エネルギーが、発電機を介して始動モードで熱機械に供給するために直流電圧源によって供給される、請求項4〜6のいずれか一項に記載のアーキテクチャ。
【請求項8】
直流電圧源が、過剰供給インダクタを介して接続手段に接続される低電圧源であり、接地プラグによって送電され整流器によって直流電圧に変換されるバッテリまたは三相電圧源で形成されてもよい、請求項7に記載のアーキテクチャ。
【請求項9】
熱機械が、航空機の主エンジンを始動し、かつ故障時に主エンジンと差し替えるための補助動力装置または同等の装置である、請求項4〜8のいずれか一項に記載のアーキテクチャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、タキシング動作時に作動する航空機の電動アクチュエータによって再生されるエネルギーを処理するための方法およびアーキテクチャに関する。
【0002】
タキシング機能は、例えば、メインギアに配置される電動アクチュエータを用いて航空機を地上走行させて、減速させることで航空機の速度を監視することである。また、このアクチュエータにより、航空機は、下り傾斜の滑走路上で、または追い風の場合に制動することができる。この時、アクチュエータは、減速または制動電気エネルギーを電力が散逸される回路網に戻す。
【背景技術】
【0003】
アクチュエータのトルクの符号と速度の符号とが同じである(2つのパラメータの積が正符号である)場合、電気式アーキテクチャは、発電機からアクチュエータにエネルギーを供給する、すなわち、アーキテクチャは駆動標準モードで作動する。発電機は、熱機械によって、通常、補助動力装置、略してAPU(Auxiliary Power Unit)によって駆動される。
【0004】
トルクの符号と速度の符号とが逆である(2つのパラメータの積が負符号である)場合、アクチュエータは、いわゆる「補助機構」となり、コマンドがアクチュエータからエネルギーを除去することにより負荷を制動する。この時、アーキテクチャとアクチュエータは、「再生」エネルギーの発電モードで動作する。
【0005】
補助機構として動作する場合、電気回路網の電圧の急上昇という不利な条件の下でアクチュエータの位置で再生エネルギーを散逸させる必要があるが、電圧の急上昇は電圧破壊につながる可能性がある。
【0006】
現在のエネルギー散逸方法は、エネルギーを「消費」するのに使用される抵抗器による方法である。従来は、このようなエネルギーは、ブレーキ「チョッパ」を使用してセラミック抵抗器のジュール効果によって散逸される。
【0007】
このような方法は、再生エネルギー全体を変換するために散逸されるエネルギーを完全に識別する必要があるので、最適化するのは非常に難しい。また、このような強い電力系統において、エネルギーが散逸されるには、大容量のセラミックと制動機能専用の特別な電力変換装置が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、エネルギー散逸抵抗器によって生じる不利点を克服することである。上述の目的を達成するために、本発明は、エネルギーをアーキテクチャの発電機に戻してこのエネルギーを機械エネルギーに変換することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的には、本発明は、航空機の可逆電動アクチュエータによって再生されたエネルギーの処理方法を目的とする。標準モードにおいて、熱機械によって駆動される発電機が、電圧変換マルチウェイ回路を介して駆動モードで動作しているアクチュエータに電力を供給する。少なくとも1つのアクチュエータの制動段階で、電気エネルギーの再生は、電気エネルギー発電モードで動作しているアクチュエータ(複数可)によって、回路の対応する経路(複数可)を通って生じる。再生エネルギーは、少なくとも1つのアクチュエータの経路からの逆方向のエネルギー伝送によって駆動モードの発電機に伝送される。変換されたエネルギーは、駆動モードで操作されている発電機を介して機械エネルギーとして熱機械に伝送される。
【0010】
逆方向のエネルギー伝送は、駆動モードの状態である少なくとも1つのアクチュエータの経路と発電機との間の専用リンクによって行われる。あるいは、複数の経路のうちの少なくとも1つから、全エネルギーを可逆的に供給できる電圧変換回路によって直接行われる場合もある。
【0011】
有利には、変換回路は、航空機の地上でのタキシング機能用または熱機械の始動機能用のいずれかに使用することができる。また、駆動モードの発電機によって発生した機械エネルギーは、熱機械および/または動力分配機械適応手段(減速機、リターン機構など)を介して動作可能である航空機の1つの機器(ポンプ、オルタネータなど)に供給可能である。
【0012】
本発明は、さらに上述の方法を実施することができるアーキテクチャに関する。該アーキテクチャは、熱機械によって駆動されて交流電圧を送ることができる可逆発電機と、機械力を航空機に供給することができる電動アクチュエータと、交流電圧を直流電圧に変換することができる交流電圧整流手段を備えるマルチリンク交流電圧変換器とを備える。電力変換装置は、前記リンク上に配置され、整流手段によって送られる直流電圧によって電力が供給されて同じ数の電動アクチュエータを操作することができる。少なくとも1つの電力変換装置の少なくとも1つのリンク上にバイパス接続される接続手段により、この電力伝送変換装置(複数可)から逆方向のエネルギー伝送手段を形成することができるようにバスバーを介して発電機を操作することができ、直流電圧バスおよびバイパス接続されない他の変換器はエネルギー供給源となる。また、変換回路は、駆動モードで動作している発電機に用いられる逆方向電気エネルギー伝送手段を備える。
【0013】
整流手段は、少なくとも1つの整流器または少なくとも1つの変換器とすることができる。
【0014】
あるいは、逆方向エネルギー伝送手段は、直接、複数の経路のうちの1つからの電圧変換回路によって形成されてもよく、整流手段および変換手段は可逆手段としてもよい。この場合、整流手段は、可逆変換器で形成される。
【0015】
電気エネルギーは、発電機を介して始動モードで熱機械に供給するために、発電モードのアクチュエータによって、または直流電圧源によって供給される。
【0016】
特定の実施形態によれば、
電源は、過剰供給インダクタを介してバイパス手段に接続される低電圧源であり、接地プラグによって送電され整流器によって直流電圧に変換されるバッテリまたは三相電圧源で形成されてもよく、
整流手段は、少なくとも1つの整流器および可逆変換器から選択され、変換器を介してアクチュエータに給電する直流電圧バスと結合され、
変換器は、DC−AC変換器およびHブリッジから選択され、
接続手段は、接触器、スイッチ、および双安定フリップフロップの中から選択され、
熱機械は、航空機の主エンジンを始動するため、かつ故障時に主エンジンと差し替えるための補助動力装置または同等の装置である。
【0017】
本発明の他の態様、特徴、および利点は、特定の実施形態に関して添付図面を参照しながら説明した以下の非限定的な記述から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】逆方向のエネルギー伝送用の1つのバスを備えた本発明の再生エネルギーを処理するアーキテクチャスキーマを示す図である。
【
図2】バッテリである電圧源から1つのAPUを始動モードで使用した場合の
図1のアーキテクチャスキーマを示す図である。
【
図3】逆方向のエネルギー伝送のために可逆変換器を備える代替アーキテクチャスキーマを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1のスキーマを参照すると、タキシング機能のアクチュエータとして使用される4つの電気エンジン10a〜10dによって供給される再生エネルギーを処理するアーキテクチャA1は、
補助熱源として1つのAPU2によって駆動され、三相交流電圧を送る1つの発電機1と、
三相電圧をバス4の入力部に伝送される直流電圧「DC」に変換するために発電機1の出力部の1つのリンクL1上に配置される1つのダイオード受動整流器3と、
電気リンクLa〜Ld上で対応するエンジンを三相電圧で操作できるように可逆電力変換器であるDC/AC変換器5a〜5dを介して、標準モードで4つのエンジン10a〜10dのそれぞれにエネルギーを供給するための1つの「DC」電圧バス4(「DC」は直流を意味する)と、
DC/AC変換器と対応エンジンとの間のリンクLa〜Ldそれぞれに配置されて、エンジン10a〜10dの2つの動作モード、つまりタキシング機能の標準モードに対応する駆動モード(矢印F
M)と再生エネルギーモードに対応する発電モード(矢印F
R)に従って各リンクを設定できるようにする1組の双投式接触器6a〜6dと、
発電モードにおいて、接触器6a〜6dを介して発電機1に電気的に再接続するための1つのバスバー7と
を備える。
【0020】
再生モードでは、少なくとも1つのDC/AC変換器(図示されている例では、2つのDC/AC変換器5c、5d)を使用して制動を行い、対応するDC/AC変換器5a、5bを通って電圧バスDC4にエネルギーを返す(矢印F
R)。
【0021】
この電圧バスDC4の位置で回収されたエネルギーは、その後、残りのDC−AC変換器(複数可)(図示されている例では2つのDC/AC変換器5a、5b)と専用バスバー7を使用して発電機1に戻される。この残りのDC/AC変換器は、その後、再生モードに設定された接触器6a、6bによってそれぞれのエンジン10a、10bから切断される。同様にして、発電機1は、接触器6eによって整流器3から切断されて専用バス7に接続される。したがって、発電機1と2つの残りのDC/AC変換器5a、5bとは、専用バスバー7を介して接続される。
【0022】
この時、残りのDC/AC変換器は、発電機1を駆動モードで操作して、APU2の位置で電気エネルギーを機械エネルギーに変換するのに適した形となる。有利には、エネルギーは、特別な変換器を追加せずに戻される。典型的には、約40kWの電力をAPUに供給することができる。
【0023】
図1の再生モードのアーキテクチャA1の構造は、
図2に示されるように、APU2の始動モードで使用することも可能である。
【0024】
APU始動は、発電機1を始動機として、すなわち、「駆動」モードで使用して、発電機1にエネルギーを供給することで行われる。実際に、直流低電圧から発電機1のような発電機を始動させることができる。
【0025】
そのためには、少なくとも1つのDC/AC変換器(図示されている例では2つのDC/AC変換器5c、5d)の出力部は、有利には、リンクLe、Ld上で、DC/AC変換器と対応する接触器との間に、過剰供給インダクタ8c、8d(「ブースト自己誘導型コイル」とも呼ばれる)を介して、直流低電圧源、この場合はバッテリ9に接続される。
【0026】
このDC/AC変換器5c、5dは、バッテリ9の直流低電圧を電圧バスDC4で実現される直流電圧まで上昇させるように、ブーストモードで操作される(矢印F
B)。残りのDC/AC変換器5a、5bは、
図1の再生モードの動作と同様の形で、専用バスバー7を介して、上述のようにして発生した電圧から発電機1を始動機モードで操作する(矢印Fs)。
【0027】
2つのDC/AC変換器5c、5dは、当然、接触器6c、6dによってそれぞれのエンジン10c、10dから切断され、この同じ接触器によって、ブースト自己誘導型コイル8c、8dを介して直流低電圧バッテリ9に接続される。バッテリは、航空機に装備する28Vのバッテリである。あるいは、電圧は、28Vに変換された3×115Vの回路網に接続されたタルマック舗装の接地プラグから発生させてもよい。
【0028】
図3を参照して、代替のアーキテクチャA2について説明する。このアーキテクチャA2は、受動整流器3の代わりに、可逆変換器11(この場合、DC/AC変換器)を備え、それにより接触器および専用バスバー7を省くことができる。
【0029】
したがって、可逆変換器11により、エネルギーを発電機1から電気エンジン10a〜10dに標準モードで伝達することができる。また、この変換器11により、エネルギー再生段階でエネルギー返還と発電機1の駆動モードでの操作とが可能になる(両矢印F
D)。また、
図2の接触器、ブースト自己誘導型コイル、および直流電圧源を使用して、APU2を始動させることもできる。
【0030】
本発明は、上述の実施例に限定されない。例えば、切り替え可能な任意のタイプの接触器(スイッチ、セレクタ、SRフリップフロップなど)または能動電力部品(IGBT、MOS、ダイオード、サイリスタなど)、変換器(DC/AC変換器、Hブリッジなど)、およびフィルタと併用可能な整流器(ダイオード、サイリスタなど)を使用することができる。さらに、上述のバスDCおよびバスバーの代わりに、便利な任意の電気配電機構を使用してもよい。