特許第6057909号(P6057909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057909
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】取出装置及び樹脂成形品の取出方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/42 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
   B29C45/42
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-539562(P2013-539562)
(86)(22)【出願日】2012年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2012071092
(87)【国際公開番号】WO2013058012
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2011/074118
(32)【優先日】2011年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091694
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 守
(72)【発明者】
【氏名】加藤 純二
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−073344(JP,A)
【文献】 特開2000−108068(JP,A)
【文献】 特開2002−066972(JP,A)
【文献】 特開平08−137114(JP,A)
【文献】 特開2002−370260(JP,A)
【文献】 特開2010−012638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティに熱可塑性樹脂を供給し、樹脂成形品を成形した後に該金型に張り付いている樹脂成形品を吸引することで保持して、該樹脂成形品を前記金型から取り出す取出装置であって、
前記樹脂成形品に当接される複数の孔部の形成された単独の吸着体と、
該吸着体に当接された前記樹脂成形品を保持するときに、前記複数の孔部を通じて吸引する負圧発生手段と、を備え、
前記吸着体には、前記樹脂成型品の高温部分を吸引するように、複数の孔部を高密度で配設した高密度孔部配設領域を設け、前記樹指成形品の高温部より温度の低い該樹脂成形品の低温部分を吸引するように、前記高密度孔部配設領域の複数の孔部よりも密度を粗くして低密度で複数の孔部を配設した低密度孔部配設領域を設けたことを特徴とする取出装置。
【請求項2】
前記吸着体は、弾性体であることを特徴とする請求項1に記載の取出装置。
【請求項3】
前記弾性休の表面をフッ素コーティングしたことを特徴とする請求項2に記載の取出装置。
【請求項4】
前記高密度孔部配設領域の複数の孔部及び前記低密度孔部配設領域の複数の孔部の直径を2mm以下に形成したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の取出装置。
【請求項5】
前記樹脂成形品は、平板状の導光板であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の取出装置。
【請求項6】
金型のキャビティに熱可塑性樹脂を供給し、樹脂成形品を成形した後に該金型に張り付いている樹脂成形品を吸引することで保持して、該樹脂成形品を前記金型から取り出す取出装置であって、
前記樹脂成形品に当接される複数の孔部の形成された単独の吸着体と、
該吸着体に当接された前記樹脂成形品を保持するときに、前記複数の孔部を通じて吸引する負圧発生手段と、を備え、
前記吸着体には、複数の孔部を高密度で配設した高密度孔部配設領域と、該高密度孔部配設領域の複数の孔部よりも密度を粗くして低密度で複数の孔部を配設した低密度孔部配設領域とを設けた取出装置において、
前記金型に張り付いている樹脂成形品を保持する際、該樹脂成型品の高温部分を、前記高密度孔部配設領域の複数の孔部で吸引し、前記樹指成形品の高温部より温度の低い該樹脂成形品の低温部分を、前記吸着体の低密度孔部配設領域の複数の孔部で吸引して、前記樹脂成形品を取り出すことを特徴とする樹脂成形品の取出方法。
【請求項7】
前記高密度孔部配設領域の複数の孔部及び前記低密度孔部配設領域の複数の孔部の直径を2mm以下に形成し、これら直径が2mm以下の高密度孔部配設領域の複数の孔部及び前記低密度孔部配設領域の複数の孔部により、前記樹脂成形品を吸引することを特徴とする請求項6に記載の樹脂成形品の取出方法。
【請求項8】
前記樹脂成形品は、平板状の導光板であることを特徴とする請求項7に記載の樹脂成形品の取出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネル等に採用される平板状の樹脂成形品を吸着して取出し可能な取出装置及び樹脂成形品の取出方法に関し、より詳しくは、金型に張り付いている樹脂成形品である導光板を金型から離型するとき、取り出した導光板に変形が発生することを防止することができる、導光板の取り出しに適した取出装置及び取出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶等の表示モニターには、光を均一に面発光するために導光板が採用されている。こうした導光板には、板材の一方面においては光を反射させる集光パターンが、他方面には正面に光を集めて輝度を向上させる拡散パターンが設けられている。導光板等の樹脂成形品は、射出成形機の金型により成形されることが一般的であるが、こうした樹脂成形品を金型から離型するときなどに、反りや、不均一な温度変化が生じると、製品としての品質に悪影響を及ぼすことがあるため、このような問題を防止することが望まれている。
【0003】
図3図4は従来から用いられている導光版を吸着して保持する取出装置の概略構成を示し、前者は背面図、後者は側面図である。同図に示す取出装置100においては、導光板101を負圧吸引力により吸着するための比較的大きめな吸盤102が9個ベース103に設けられており、金型に張り付いている導光板101を離型するときには、1枚の導光板101に対し9個の吸盤102を吸着して当該導光板101の取り出しが行なわれる。こうした技術に関連するものとして、特許文献1(明細書段落[0032]、[0035]、図2図4図5)には、導光板を吸着するための比較的大きな吸盤を複数備えた成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−145593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図3及び図4の従来例や特許文献1で開示されている、比較的大きめな複数の吸盤102により単独の導光板101を吸着しようという技術においては、吸引力が発生する吸盤102の当接される部分と、吸引力が発生しない吸盤の当接されない部分とでは、吸盤102を導光板101に吸着させたとき、当該導光板101に対する応力に差が生じることから反りが発生する。また、金型による成形直後に当該金型から60℃〜70℃の高温な導光板101を取り出す場合に、導光板101に対し比較的大きめな吸盤102を吸着させると、当該吸盤102により吸着された部分は、吸盤102と導光板101との間にある比較的大きめな容積の空気により、吸盤102に対向する導光板101の部分の温度低下が急に起こり、吸盤102に対向する導光板101の部分にいわゆるキスマークができてしまったり、吸盤102で吸着されている部分と、吸着されていない部分とに温度差が生じ、温度差に伴う収縮差により導光板に変形が発生してしまうことがあった。
【0006】
また、樹脂成形品を成形する場合には、射出成形機が用いられるが、射出成形機の金型で導光板等の薄板状の樹脂成形品を成形する場合には、金型内に樹脂を供給するゲート近くの樹脂は高温になることから、当該ゲート近くの樹脂成形品の部位は、高温化に伴い金型の表面に強固に密着される一方で、ゲートから離れたところにおける樹脂成形品の部位は、ゲート近くに比べ熱くならないため、金型の表面の密着力が弱くなる。そのため、金型から樹脂成形品を離型するとき、部位の相違により不均一な密着力が生じている樹脂成形品を、不良を発生させることなくいかに正常な状態で取り出せるのかが重要な課題となっていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、薄板状の導光板等の樹脂成形品を吸着して取り出す際、当該樹脂成形品が変形してしまうことを抑止することができる取出装置及び樹脂成形品の取出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本取出し装置の発明は、
金型のキャビティに熱可塑性樹脂を供給し、樹脂成形品を成形した後に該金型に張り付いている樹脂成形品を吸引することで保持して、該樹脂成形品を前記金型から取り出す取出装置であって、
前記樹脂成形品に当接される複数の孔部の形成された単独の吸着体と、
該吸着体に当接された前記樹脂成形品を保持するときに、前記複数の孔部を通じて吸引する負圧発生手段と、を備え、
前記吸着体には、前記樹脂成型品の高温部分を吸引するように、複数の孔部を高密度で配設した高密度孔部配設領域を設け、前記樹指成形品の高温部より温度の低い該樹脂成形品の低温部分を吸引するように、前記高密度孔部配設領域の複数の孔部よりも密度を粗くして低密度で複数の孔部を配設した低密度孔部配設領域を設けたことを特徴とする。
【0009】
本取出装置の発明における前記吸着体は、弾性体であることを特徴とする。
【0010】
本取出装置の発明における前記弾性体の表面をフッ素コーティングしたことを特徴とする。
【0011】
本取出装置の発明は、前記高密度孔部配設領域の複数の孔部及び前記低密度孔部配設領域の複数の孔部の直径を2mm以下に形成したことを特徴とする。
【0012】
本取出装置の発明における前記樹脂成形品は、平板状の導光板であることを特徴とする。
【0013】
本樹脂成形品の取出方法の発明は、
前記金型に張り付いている樹脂成形品を保持する際、該樹脂成型品の高温部分を、前記高密度孔部配設領域の複数の孔部で吸引し、前記樹脂成形品の高温部より温度の低い該樹脂成形品の低温部分を、前記吸着体の低密度孔部配設領域の複数の孔部で吸引して、前記樹脂成形品を取り出すことを特徴とする。
【0014】
本樹脂成形品の取出方法の発明は、
前記高密度孔部配設領域の複数の孔部及び前記低密度孔部配設領域の複数の孔部の直径を2mm以下に形成し、これら直径が2mm以下の高密度孔部配設領域の複数の孔部及び前記低密度孔部配設領域の複数の孔部により、前記樹脂成形品を吸引することを特徴とする。
【0015】
本樹脂成形品の取出方法の発明における前記樹脂成形品は、平板状の導光板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導光板等の樹脂成形品を吸着体で吸着して、金型から取り出す際、樹脂成形品の片面に、単独の吸着体を当接させ、吸着体に形成した比較的小さな大きさの貫通孔を適用し、樹脂成形品を吸着して取り出すことができる。よって、従来のような、複数の比較的大きな吸盤により単独の導光板を吸着しようという技術においては、吸引力が発生する吸盤の当接される部分と、吸引力が発生しない吸盤の当接されない部分とで、導光板に対する応力に大きな差が生じることから反りが発生したり、或いは、60℃〜70℃の導光板を金型から取り出すときに、導光板に対し比較的大きな吸盤を吸着させると、吸盤で吸着されている部分と、吸着されていない部分とに大きな温度差が生じ、当該温度差に伴う収縮差により導光板に変形が発生してしまうことがあったが、こうした不具合を解消することができる。
【0017】
また、樹脂成形品を成形する場合には、射出成形機が用いられるが、射出成形機の金型で導光板等の薄板状の樹脂成形品を成形する場合には、金型内に樹脂を供給するゲート近くの樹脂は高温になることから、当該ゲート近くの樹脂成形品の部位は、高温化に伴い金型の表面に強固に密着される一方で、ゲートから離れたところにおける樹脂成形品の部位は、ゲート近くに比べ熱くならないため、金型の表面の密着力が弱くなるが、金型に対する樹脂成形品の密着力が強い高温になる部位は高密度孔部配設領域の複数の孔部で吸引し、金型に対する樹脂成形品の密着力が弱い低温になる部位は低密度孔部配設領域の複数の孔部で吸引する。これにより、樹脂成形品の部位の相違による密着力の相違に応じた吸引力を用いて、金型から樹脂成形品を離型するときに、当該樹脂成形品が変形して不良品が発生してしまわぬよう抑制することができる。
【0018】
さらに、吸着体は、シリコンゴムであり、その全体は弾性を有ることから、導光板等の樹脂成形品に吸着体を当接させた際、樹脂成形品が傷つくことを防止でき、吸着したときの密着性もよく樹脂成形品を落下しないよう確実に保持することができる。さらに、樹脂成形品が当接される吸着体の表面に、フッ素コーティングを行っていることから、吸着体の樹脂成形品に当接される吸着面を微細な凹凸状に形成することができ、それにより、射出成形機の金型等に張り付いた樹脂成形品を、金型から容易に離型(剥離)することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1の取出装置で導光板を吸着して保持した状態を示す正面図である。
図2】実施例1の取出装置で導光板を吸着して保持した状態を示す断面図である。
図3】従来の取出装置を示す背面図である。
図4】従来の取出装置の吸盤で導光板を吸着して保持した状態を示す側面図である。
図5】実施例2の取出装置で導光板を吸着して保持した状態を示す正面図である。
図6】実施例2の取出装置で導光板を吸着して保持した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で実施例において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【実施例1】
【0021】
図1及び図2に示す実施例1の取出装置1は、射出成形機の金型に張り付いている、60℃〜70℃の平板状の比較的肉厚の薄い(0.1mm〜0.5mm程度)樹脂成形品たる導光板2を取り出す(離型)ときに用いられるものである。
【0022】
取出装置1には、平板状の導光板2の片面全面を吸着する吸着体3と、吸着体3で導光板2を吸着するときに吸引力を発生させる負圧発生手段たる真空ポンプ4と、吸着体3を保持する吸引ブロック材5、吸引ブロック材5を保持するベース6と、アーム7とを備える。
【0023】
吸着体3には、導光板2の片面全体を当接させて吸着することができる吸着面3aを一方面に有し、その反対側である他方面3b側の縁部は吸引ブロック材5に一体に固定され、ベース6の内面と吸引ブロック材5の内面とで囲まれた部分に空間部(真空室)8を有する。
【0024】
また、吸引ブロック材5には、図2に示すように、等間隔に複数の貫通孔9が形成されており、この貫通孔9は、前記空間部8と吸引ブロック材5の外側とを連通するようにして形成されている。
【0025】
吸引ブロック材5の外側には、吸引ブロック材5に形成された貫通孔9を全て覆うようにして吸着体3が装着されている。この吸着体3は、連通多孔材であり、本実施形態では、直径が、1mm以下、より詳しくは、0.5mm以下、さらに詳しくは、10μm〜500μm(0.5mm)程度の微細孔が多数形成された弾性を有する連通多孔材(例えばシリコンゴム、ウレタンゴム)であり、独立発泡材とは相違しており、連通多孔材の孔径よりも吸引ブロック材5の貫通孔9の孔径は大きく形成する。
【0026】
また、真空ポンプ4は、管体10を通じてベース6に接続されており、真空ポンプ4を駆動することにより、ベース6の内面と吸引ブロック材5の内面とで形成された空間部8に負圧が発生される。そして、その負圧を用いて、取出装置1の外側に有する外気を、吸着体3の孔、吸引ブロック材5の貫通孔9を通じ吸引し、吸着体3の外側面である吸着面3aに当接されている、金型に張り付いている導光板2を吸引し保持する。そして、アーム7を介して、取出装置1に設けた図示しない搬送手段により、吸着体3で吸着した導光板2を所定位置等に搬送することが可能となる。
【0027】
以上のように本取出装置1によれば、樹脂成形品としての導光板2を吸着体3で吸着して、金型から取り出す際、単独の導光板2の片面全体に亘って、単独の吸着体3を当接させ吸着して取り出すことができる。よって、従来のような、複数の比較的大きな吸盤により単独の導光板を吸着しようという技術においては、吸引力が発生する吸盤の当接される部分と、吸引力が発生しない吸盤の当接されない部分とで、導光板に対する応力に大きな差が生じることから反りが発生したり、或いは、60℃〜70℃の導光板を金型から取り出すときに、導光板に対し比較的大きな吸盤を吸着させると、吸盤で吸着されている部分と、吸着されていない部分とに大きな温度差が生じ、当該温度差に伴う収縮差により導光板に変形が発生してしまうことがあったが、こうした不具合を解消することができる。
【0028】
さらに、吸着体3は、例えばシリコンゴムやウレタンゴムからなる連通多孔材であり、その全体は弾性を有することから、導光板2に吸着体3を当接させた際、導光板2が傷つくことを防止でき、吸着したときの密着性もよく導光板2を落下しないよう確実に保持することができる。さらに、導光板2の表面(吸着体3の当接される面)や吸着体3の表面(導光板2に当接される吸着面3a)に、非真空状態でフッ素コーティングを行っていることから、吸着体3の導光板2に当接される吸着面3aを微細な凹凸状に形成することができ、それにより、射出成形機の金型等に張り付いた導光板2を、金型から容易に離型(剥離)することが可能となる。
【0029】
さらに、本取出装置1の吸着体3は、複数ではなく単独の吸着体3で、単独(一枚)の導光板2を吸着保持しようというものであり、単独の吸着体3には、導光板2を吸着するための複数の連通した孔が形成されている。そして、このような構成を採用することにより、導光板2のサイズよりも吸着体3のサイズが大きく、当該導光板2に対し面接触された吸着体3が、導光板2の外側へはみ出すようなサイズであったとしても、導光板2を吸着することができる。つまり、従来の前記吸盤の個々においては、吸盤と同サイズ若しくは大きいサイズであれば、当該吸盤にて、導光板等の吸着対象物を吸着させることが可能であるが、吸着対象物が、吸盤より小さいサイズである場合には、吸盤と吸着対象物との間に隙間ができてしまい、吸引力を発生させることができないため、吸盤で吸着対象物を吸着保持することができないが、本発明では、図2に示すように、吸着体3のサイズよりも導光板2のサイズが小さく、吸着体3の外側に面接触された導光板2がはみ出すような場合であったとしても、吸着体3として連通多孔材を採用していることで、当該吸着体3で導光板2を吸着保持することができる。
【実施例2】
【0030】
図5及び図6に示す実施例2の取出装置51は、射出成形機の金型に張り付いている、60℃〜70℃の平板状の比較的肉厚の薄い(0.1mm〜0.5mm程度)樹脂成形品たる導光板52を取り出す(離型)ときに用いられるものである。
【0031】
取出装置51には、平板状の導光板52の片面を吸着する弾性を有する吸着体53と、吸着体53で導光板52を吸着するときに吸引力を発生させる負圧発生手段たる真空ポンプ54と、吸着体53を保持するベース56と、アーム57とを備える。なお、前記吸着体53のその材質は、シリコンゴムであり、その表面には、非真空状態にてフッ素コーティングがなされていることで、微細な凹凸(所謂、ざらざら状態)が形成されている。
【0032】
吸着体53には、導光板52の片面が当接される吸着面53aを一方面に有し、その反対側である他方面53b側の縁部はベース56に一体に固定され、ベース56の内面と吸着体53の内面とで囲まれた部分に空間部(真空室)58を有する。各々の空間部58は、図示しない通路でつながっており、空間部58は、真空ポンプ54により均一な吸引力が得られる。
【0033】
また、吸着体53には、図5及び図6に示すように、前記空間部58と取出装置51の外側とを連通するようにして、円型で直径が1.0mm程度(より詳しくは0.5mm〜2.0mm)の複数の貫通孔59が形成されている。ただし、貫通孔59は、導光板52のサイズ等により決定される。
【0034】
当該複数の貫通孔たる複数の孔部59a,59bは、吸着体53に、高密度で配設された高密度孔部配設領域Hと、該高密度孔部配設領域Hの複数の孔部59aよりも密度を粗くして低密度で複数の孔部59bが配設された低密度孔部配設領域Lを有している。
【0035】
また、真空ポンプ54は、管体60を通じてベース56に接続されており、真空ポンプ54を駆動することにより、管体60、経路61を介して、ベース56の内面と吸着体53の内面とで囲むようにして形成された空間部58に負圧が発生される。そして、その負圧を用いて、金型に張り付いている導光板52を保持して取り出す際には、取出装置51の外側に有する外気を、吸着体53の孔部59a,59bを通じ吸引し、溶融樹脂の射出充填に伴う、導光板52の高温部分を、高密度孔部配設領域Hの複数の孔部59aで吸引し、前記導光板52の高温部分より温度の低い導光板52の低温部分を、低密度孔部配設領域Lの複数の孔部59bで吸引して、それにより、吸着体53の外側面である吸着面53aに当接された、金型に張り付いている導光板52を保持する。そして、アーム57を介して、取出装置51に設けた図示しない搬送手段により、吸着体53で吸着した導光板52を所定位置等に搬送することが可能となる。
【0036】
以上のように本取出装置51によれば、樹脂成形品としての導光板52を吸着体53で吸着して、金型から取り出す際、導光板52の片面に、単独の吸着体53を当接させ、吸着体53に形成した比較的小さな大きさの貫通孔59(59a,59b)を適用し、導光板52を吸着して取り出すことができる。よって、従来のような、複数の比較的大きな吸盤により単独の導光板を吸着しようという技術においては、吸引力が発生する吸盤の当接される部分と、吸引力が発生しない吸盤の当接されない部分とで、導光板に対する応力に大きな差が生じることから反りが発生したり、或いは、60℃〜70℃の導光板を金型から取り出すときに、導光板に対し比較的大きな吸盤を吸着させると、吸盤で吸着されている部分と、吸着されていない部分とに大きな温度差が生じ、当該温度差に伴う収縮差により導光板に変形が発生してしまうことがあったが、こうした不具合を解消することができる。
【0037】
また、樹脂成形品を成形する場合には、射出成形機が用いられるが、射出成形機の金型で導光板52等の薄板状の樹脂成形品を成形する場合には、金型内に樹脂を供給するゲート近く(本実施例における「ゲート」の位置は、アーム57の付近となっている。)の樹脂は高温になることから、当該ゲート近くの樹脂成形品の部位は、高温化に伴い金型の表面に強固に密着される一方で、ゲートから離れたところにおける樹脂成形品の部位は、ゲート近くに比べ熱くならないため、金型の表面の密着力が弱くなるが、金型に対する樹脂成形品(導光板52)の密着力が強い高温になる部位は高密度孔部配設領域Hの複数の孔部59aで吸引し、金型に対する樹脂成形品(導光板52)の密着力が弱い低温になる部位は低密度孔部配設領域Lの複数の孔部59bで吸引する。これにより、成形された樹脂成形品(導光板52)の部位の相違による密着力の相違に応じた好適な吸引力を用いて、金型から樹脂成形品(導光板52)を離型するときに、当該樹脂成形品(導光板52)が変形して不良品が発生してしまわぬよう抑制することができる。
【0038】
さらに、吸着体53は、シリコンゴムであり、その全体は弾性を有ることから、導光板52に吸着体53を当接させた際、導光板52が傷つくことを防止でき、吸着したときの密着性もよく導光板52を落下しないよう確実に保持することができる。さらに、導光板52が当接される吸着体53の表面(導光板52に当接される吸着面53a)に、非真空状態でフッ素コーティングを行っていることから、吸着体53の導光板52に当接される吸着面53aを微細な凹凸状に形成することができ、それにより、射出成形機の金型等に張り付いた導光板52を、金型から容易に離型(剥離)し易くすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように上述した実施例1、2の取出装置は、光学部品たる導光板を変形させることなく吸着保持して取り出すことができるものであるが、光学部品ではないようなあらゆる部材(例えば、携帯端末等の筐体やそのカバー)にも適用できるから、取出装置や保持装置として、各種技術分野において有効に活用することができる。また、樹脂成形品の一例として平板状の導光板について説明したが、その形状は平板状のものに限らず、湾曲状のものであってもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
51 取出装置
52 導光板(樹脂成形品)
53 吸着体
54 真空ポンプ(負圧発生手段)
56 ベース
58 空間部
59a 高密度孔部配設領域の複数の孔部
59b 低密度孔部配設領域の複数の孔部
H 高密度孔部配設領域
L 低密度孔部配設領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6