(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057918
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】滑り軸受用複合材料
(51)【国際特許分類】
C22C 21/00 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
C22C21/00 B
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-552896(P2013-552896)
(86)(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公表番号】特表2014-510194(P2014-510194A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2012051124
(87)【国際公開番号】WO2012107288
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2014年9月25日
(31)【優先権主張番号】102011003797.7
(32)【優先日】2011年2月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501014452
【氏名又は名称】フエデラル―モーグル・ウイースバーデン・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】アンドラー・ゲルト
(72)【発明者】
【氏名】リントナー・カール−ハインツ
【審査官】
相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−209836(JP,A)
【文献】
特開昭60−036641(JP,A)
【文献】
特開2003−119530(JP,A)
【文献】
特開平06−136475(JP,A)
【文献】
特開2002−120047(JP,A)
【文献】
特開2007−016275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00−21/18
C22F 1/04− 1/057
F16C 17/00−17/26
F16C 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼から成る支持層と、支持層上に配置された中間層と、中間層上に配置されており、不純物以外は鉛を含有しないアルミニウム合金から成る軸受金属層とを備えた滑り軸受用複合材料であって、アルミニウム合金が、
スズ10.5〜14重量%と、
ケイ素2〜3.5重量%と、
銅0.4〜0.6重量%と、
クロム0.15〜0.25重量%と、
ストロンチウム0.03〜0.08重量%と、
チタン0.05〜0.25重量%と、
を含有し、残部がアルミニウムからなり、
ケイ素が、軸受金属層内において粒子の形で、軸受金属層の1つの面に対し、前記面内で視認できる直径4μm〜8μmのケイ素粒子の面積分率が少なくとも2.5%であるように分布して存在していることを特徴とする、滑り軸受用複合材料。
【請求項2】
軸受金属層のアルミニウム合金が、VおよびZrから成る群からの少なくとも1種のさらなる元素を含んでおり、これらの元素の分率が合わせて0.05〜0.7重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の滑り軸受用複合材料。
【請求項3】
中間層が、純アルミニウムまたはアルミニウム合金から成ることを特徴とする、請求項1または2に記載の滑り軸受用複合材料。
【請求項4】
軸受金属層のアルミニウム合金におけるスズの分率が11〜13重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の滑り軸受用複合材料。
【請求項5】
軸受金属層のアルミニウム合金におけるケイ素の分率が2.25〜2.75重量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の滑り軸受用複合材料。
【請求項6】
軸受金属層のアルミニウム合金におけるチタンの分率が0.05〜0.15重量%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の滑り軸受用複合材料。
【請求項7】
軸受金属層上にポリマーベースの上張層が配置されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の滑り軸受用複合材料。
【請求項8】
ケイ素が、軸受金属層内において粒子の形で、軸受金属層の1つの面に対し、前記面内で視認できる直径4μm〜8μmのケイ素粒子の面積分率が少なくとも2.75%であるように分布して存在していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の滑り軸受用複合材料。
【請求項9】
ケイ素粒子のサイズ分布が、鋳造プロセス後の、75K/s未満の冷却速度によって調整されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の滑り軸受用複合材料を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼から成る支持層と、支持層上に配置された中間層と、中間層上に配置されており、不純物以外は鉛を含有しないアルミニウム合金から成る軸受金属層とを備えた滑り軸受用複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
このような滑り軸受用複合材料は、特に、自動車の内燃機関で使用するための軸受胴またはブッシュのために開発されている。これに関しては、アルミニウム合金から成る軸受金属層を備えたような複合材料だけでなく、そのほかにも銅基または銅・スズ基の軸受金属合金が使用される(DE102005023308A1(特許文献1)を参照)。順応性、耐疲労性、および焼付き挙動を考慮して、長い間、銅基合金がアルミニウム合金より優れているとされていたが、ごく最近では、アルミニウム基の軸受金属材料も昨今の内燃機関の高まる要求に適応させようとの努力がいっそうなされている。アルミニウム材料は軽量化の利点を有しており、かつ比較的安価であり、したがって同じ性能であればアルミニウム材料を優先するべきである。
【0003】
アルミニウム基の軸受金属層を備えた滑り軸受用複合材料は、例えば特許明細書DE10246848B4(特許文献2)、DE4323448C5(特許文献3)から、または公開明細書GB2243418A(特許文献4)、WO02/40883A1(特許文献5)、およびDE102010029158A1(特許文献6)から知られている。
【0004】
2つの明細書DE4323448C5(特許文献3)およびWO02/40883A1(特許文献5)では、焼付き傾向を抑えるための固体潤滑剤として鉛が不可欠である。しかし環境保護の理由から、鉛含有の合金は回避されるべきである。明細書DE10246848B4(特許文献2)およびDE102010029158A1(特許文献6)から知られている材料は鉛を含有しておらず、ただし、DE102010029158A1(特許文献6)では、一般論としてのみ、詳しい説明のないアルミニウム合金の記載がある。DE10246848B4(特許文献2)はこれに関してより詳しく説明されており、したがって本発明に対する属概念の従来技術である。
【0005】
その明細書から知られているアルミニウム軸受合金は、Siを1.5〜8重量%、Snを3〜40重量%、Cu、Zn、およびMgから成る群からの1種または複数の元素を総量で0.1〜6重量%、任意選択で、Mn、V、Mo、Cr、Ni、Co、およびBから成る群からの1種または複数の元素を総量で0.01〜3重量%含んでおり、残りがアルミニウムである。その明細書での試験では、出来上がったアルミニウム軸受合金生成物に含有されているSi粒子の粒子サイズ分布に重点が置かれており、この粒子サイズ分布には、特定されてはいるが非常に幅広い分布において、粒径が4μm未満の小さなSi粒子の部分も、粒径が4〜20μmであるより大きなSi粒子の部分も含まれている。提示された分布により、この材料の、摺動相手材とくっつく傾向(焼付き傾向)が減少され、かつ材料内への粒子の埋め込みが改善されるというものである。必要な粒子サイズ分布の達成に寄与するのは、その明細書の教示によれば350℃〜450℃の温度での8〜24時間にわたる焼鈍ステップとその後の圧延ステップのシーケンスである。
【0006】
これに対して本発明は、機械的特性である強度、耐摩耗性、変形性、および摩擦抵抗の最適化と同時に、安価な材料選択を考慮して、アルミニウム基の軸受金属層の化学組成を最適化することに取り組む。変形性は、滑り軸受用複合材料を圧延する際の製造上の制約に基づく高い変形度を考慮して最適化されるべきである。昨今のエンジンは比出力が比較的高いので、これと同時にできるだけ少ない材料消費でのより高い強度、特に耐熱強度を要求する。これに関しては耐摩耗性も絶えず最適化の努力が行われており、高まる出力要求のために犠牲にされるべきではない。なぜなら摩耗が進むことにより、潜在的な故障の危険以外に、エンジンの効率、したがって経済性も低下するように思われるからである。同様にエンジンの経済性に関して、昨今の内燃機関の軸受では、一方では低粘度オイルの使用に起因し、もう一方ではアイドリングストップの適用への需要に増加的に起因している混合摩擦条件がますます主流になっている。言い換えると、昨今の軸受は最低回転数のときに既にできるだけ小さい摩擦係数を示すべきである。粒子サイズ分布が、この観点での決定的な影響変数であることは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE102005023308A1
【特許文献2】DE10246848B4
【特許文献3】DE4323448C5
【特許文献4】GB2243418A
【特許文献5】WO02/40883A1
【特許文献6】DE102010029158A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この背景に基づき本発明の課題は、材料消費をできるだけ少なくしながら、耐熱強度を高めると同時に高い変形性を考慮し、かつ特にアイドリングストップの適用において主流の混合摩擦条件下での高い耐摩耗性を考慮して、改善された組成を有する滑り軸受用複合材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、特許請求項1の特徴を有する滑り軸受用複合材料によって解決される。
【0010】
本発明による滑り軸受用複合材料は、鋼から成る支持層と、不純物以外は鉛を含有しないアルミニウム合金から成る軸受金属層とを備えており、このアルミニウム合金は、
スズ10.5〜14重量%と、
ケイ素2〜3.5重量%と、
銅0.4〜0.6重量%と、
クロム0.15〜0.25重量%と、
ストロンチウム0.01〜0.08重量%と、
チタン0.05〜0.25重量%と、
を含有している。
【0011】
本発明者は、まさにアイドリングストップ動作における混合摩擦条件の範囲では、つまり軸受の(流体動力学的な)オイル潤滑が生じていない場合には、軸受金属合金の厳密な組成がますます重要になっていることを認識した。この場合、非常に少ない分率で加えられる元素の比率も決定的な役割を担う。
【0012】
Tiを添加することで、滑り軸受用複合材料の製造に関して適切な温度調節および適切な変形度に関係なく、鋳造プロセスでのマトリクス材料の微粒化が改善する。0.05〜0.25重量%、好ましくは0.05〜0.15重量%のTi含有率を厳密に守ることにより、Siの粒子サイズ分布を考慮して目標とした、鋳造プロセスの低い冷却速度の場合に、マトリクス材料の優れた伸び特性と同時に高い強度を保証する、Alマトリクス材料の十分に細かい粒径を調整することができる。マトリクス材料の粒径分布は他方で、SiがAlマトリクス中に溶解することからSi粒子の分布への影響を有すると同様に、軟質相、つまり粒界に沿った不溶性のSnの包摂への影響も有している。したがってTi含有率は、SiおよびSnの分率とのできるだけ厳密な適合を前提とする。
【0013】
Snは、本発明によれば10.5重量%〜14重量%、好ましくは11重量%〜13重量%の範囲内にある。まさにこの範囲内において、合金系は、混合摩擦条件で既にその強度を損なうことなく使用できるような秀でた摺動特性を示す。
【0014】
本発明によればSi含有率は、上限を3.5重量%、好ましくは2.75重量%としていることで、圧延ステップの高い変形度を考慮して必要とされる延性が生じるように低く調整されている。その一方で、軸受金属材料の十分な耐摩耗性を調整できるよう、Si粒子は2重量%、好ましくは2.25重量%の最低含有率を必要とする。
【0015】
耐摩耗性には、Si分率と共にSiの粒子サイズ分布も重要であり、この粒子サイズ分布の方は化学組成によって影響を及ぼされる。本発明者は、上述のSi含有率の場合、少量のSrを0.03〜0.08重量%の範囲内で的確に添加することが、粒子サイズ分布の調整性に有利に働くことを認識した。鋳造プロセス後の、<75K/sec、好ましくは<50K/secの低い冷却速度と共に、Srは、摩耗の最小化に関して最適化された粒子サイズ分布をもたらす。同時にSrはSi粒子の形状に影響を及ぼし、鋳造後のSi粒子の形状はこのSr含有率の結果として、平均的に、Sr添加なしで観察され得たよりも微細な外観形状を有している。このやり方では、後続の作業ステップの熱処理および圧延を鑑みて、マトリクス材料の変形度がSiの添加により本質的に悪化することはない。それゆえSr含有率は厳密にSi含有率に適合されている。
【0016】
Cr含有率はCu含有率と関連させて考察しなければならない。アルミニウムマトリクスにおいて両方の元素とも材料の耐熱強度に関して特に重要であることが分かった。耐熱強度は、高負荷がかかる用途では常に必要とされる。Cr含有率が0.15〜0.25重量%であり、同時にCuが0.4〜0.6重量%の含有率で添加合金されることが、マトリクス内で、十分に強度を高める析出物を形成させるのに有利であることが証明された。その一方でまた変形性に悪影響を及ぼさないためには、Crは0.25重量%およびCuは0.6重量%の含有率を超えないことが望ましい。最終的に、CrとCuの組合せは、使用されるCuの上限が0.6重量%であることが費用を下げ、かつ材料のリサイクル性を向上させるという意味でも良い効果をもたらす。
【0017】
「不純物以外は鉛を含有しない」とは、本明細書の意味においては、場合によっては個々の合金元素の不純物により存在する可能性のある鉛の分率が如何なる場合も0.1重量%の分率を上回ってはいけないということである。
【0018】
本発明の有利な一変形形態によれば、軸受金属層のアルミニウム合金は、VおよびZrから成る群からの少なくとも1種のさらなる元素を含んでおり、その分率は合わせて0.05〜0.7重量%である。
【0019】
両方の元素とも、耐熱強度を向上させる働きをする。これに関しVはマトリクス材料の再結晶化を阻止するように作用し、これはTiと共に作用して、軟質相およびSiに適合させた粒径の調整を可能にする。
【0020】
本発明によれば、軸受金属層と支持層との間には中間層が配置されている。
【0021】
中間層は、結合強度の特性に特化して最適化することができ、軸受金属層の特性を有さなくてよいので、鋼製の支持層上での軸受金属層の結合強度を向上させる。このために、好ましくは純アルミニウムまたはアルミニウム合金が使用される。好ましくは、中間層と軸受金属層が圧延方法で予めクラッディングされ、この層複合体を続いてさらなる圧延方法において鋼製の支持層上に施す。
【0022】
特に、内燃機関での非常に高い負荷がかかる軸受用途の場合には、軸受金属層上にポリマーベースの上張層が配置されることが有利である。
【0023】
ポリマー層は、特に荷重が高い場合に軸受幅全体にわたってより均一な荷重分布を生じさせる。こうして、ポリマー層の、弾性および可塑性の順応性により、軸受全体の動作の信頼性をさらに高めることができる。
【0024】
好ましくは、ケイ素は、軸受金属層内において粒子の形で、軸受金属層の1つの面に対し、この面内で視認できる直径4μm〜8μmのケイ素粒子の面積分率が少なくとも2.5%、好ましくは少なくとも2.75%であるように分布して存在している。
【0025】
この粒子サイズ分布は、Si硬質粒子が、硬質の耐力結晶として材料の高い耐摩耗性を保証するために十分な大きさであり、その一方でまた、特に動的負荷下でのマトリクスの強度を低下させるほどは大きくないので、特に有利であることが分かった。本発明者は、特別に開発した検査スタンド上で比較試験を実施し、この試験では、本発明による滑り軸受用複合材料および2つの比較用軸受材料によるクランク軸軸受を対比させた。比較のために、Siを含有しないAlSnCuMn軸受金属材料と、AlSnSiCuCrMn軸受金属材料とを考慮の対象とした。前者は、好ましい冷却速度<75K/sで鋳造し、後者は、Srの添加なしで>400K/sの比較的高い冷却速度で鋳造し、その結果、明らかにより細かいSi粒子を含んでいる。検査スタンドの15000サイクルのアイドリングストップでは、Siを含有しない軸受金属材料の摩耗は158μmと予想通り高かった。これに対し意外なことにAlSnSiCuCrMn軸受金属材料でも、Si分率が比較的高いにもかかわらず86μmという許容できないほど高い摩耗が生じ、その一方で本発明による滑り軸受の軸受金属層は、摩耗によって減ったのが9μmだけであった。
【0026】
粒子サイズ分布を確定するには、軸受金属層の特定の寸法の部分面を、顕微鏡下で好ましくは500倍の倍率で観察する。その際、軸受金属層を任意の平面で観察することができる。なぜなら層内のSi粒子が実質的に均質に分布していることを前提としているからであり、または少なくとも、故意にもしくは意図せず不均質な、つまり例えば一方向において段階的に増加もしくは減少する分布がいずれにせよ特許請求された限界を超えないことを前提としているからである。これに関し軸受金属層は、最初に平らな研磨片が作製されるように準備することが好ましい。部分面内で視認できるSi粒子は、粒子の認識可能な最も長い広がりを確定するように測定される。これに相当する直径を有する円の面積を、この粒子の等価面積として記録する。最後に、部分面内における、直径4μm〜8μmの間のすべてのSi粒子の面積を合算し、調べた部分面の総測定面積を基準として規格化する。最初にSi粒子をその直径に基づいてクラス分けして、それぞれのクラスでのSi粒子の数をそのクラスに割り当てられた平均面積と掛け合わせてから、部分面内における、直径4μm〜8μmの間のSi粒子のすべてのクラスの積を合算してもよい。統計量が十分であれば、結果にさほどの誤差はないであろう。
【0027】
以下に本発明のさらなる特徴および利点を、例示的実施形態および図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による滑り軸受用複合材料の第1の例示的実施形態の原理的な層構造を示す図である。
【
図2】本発明による滑り軸受用複合材料の第2の例示的実施形態の原理的な層構造を示す図である。
【
図3】Siの粒子サイズ分布の決定を説明する図である。
【
図4】滑り軸受用複合材料の軸受金属層におけるSi粒子の粒子サイズ分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の第1の例示的実施形態に基づく滑り軸受用複合材料の断面を概略的に示している。この滑り軸受用複合材料は全部で3つの層を備えている。最上層として
図1では軸受金属層10が示されており、この軸受金属層は、請求項に基づく、Al基の組成を有している。軸受金属層10は、中間層12を介して、鋼から成る保護または支持層14上に施されている。中間層は、軸受金属層10と鋼層との間で接着仲介剤として働く。中間層は、典型的には純アルミニウムまたはアルミニウム合金から成っている。
【0030】
さらに
図1では部分面20が象徴的に示されており、この部分面は、拡大されて、
図3に図解した内部構造を示している。このような部分面の画像を作製するには、軸受金属層の適切な位置での平らな研磨片を準備することが好ましい。部分面を、
図1での表示とは違い例えば摺動面に平行に観察することもできる。
【0031】
本発明による滑り軸受用複合材料での中間層の層厚は、好ましくは30μm〜120μm、特に好ましくは40μm〜100μmである。
【0032】
図2に基づく第2の例示的実施形態は、軸受金属層10上にポリマーコーティング16が施されているという意味で相違する層構造を有しており、このポリマーコーティングは、特に、非常に高い負荷がかかる軸受用途において有利である。
【0033】
本発明は図示した両方の実施形態に制限されない。さらなる機能層を備えた多層構成を形成することも十分に可能である。勾配層も除外されない。つまり原理的には、層の数および形状に制限はない。ただし、とりわけ冒頭で述べた費用節約の理由から、確実な動作が可能な範囲で少ない層を備えた滑り軸受用複合材料が好ましい。
【0034】
図3に基づき、以下にSiの粒子サイズ分布の決定法を説明する。最初に軸受金属層から、例えば摺動面に向かって延びている平らな面研磨片を準備した後、顕微鏡下で、例えば500倍の倍率で、特定の辺の長さおよび辺の幅を有する、軸受金属層の部分面20を選択し、マーキングする。例えば辺の長さが500μmと800μmの長方形とすると、つまり総測定面積は400,000μm
2である。この部分面内では多数のSi粒子22が認められ、このSi粒子は経験上、特定のグレー値範囲またはカラー値範囲により、他の含有物、特に軟質相と、しかし外来粒子とも(両方ともここでは図示されていない)、光学的に識別することができる。Si粒子の捕捉は、電子式画像捕捉システムにおいて自動的に行われるのが好ましい。Si粒子22は、形状には関係なく粒子の認識可能な最も長い広がりを確定するように測定される。この広がりを直径と呼ぶ。粒子の直径に応じてSi粒子は、例えば2〜4μm、4〜6μm、...のようなクラスに分けられる。それぞれのクラスに分類されたSi粒子の数を、そのクラスに割り当てられた平均面積、ここではπ×(3/2μm)
2、π×(5/2μm)
2、...と掛け合わせ、そして部分面内でのこのように捕捉された直径4μm〜8μmのSi粒子のすべての有意味なクラスの積を合算し、調べた部分面の総面積を基準として規格化する。
【0035】
この方法が、本発明による軸受金属の一例に適用され、下記の表から明らかな結果が生じた。
【0037】
これに対応する分布が
図4のグラフに示されている。有利な材料特性にとって決定的なのは、直径4μm〜8μmのSi粒子の分率であり、このSi粒子は、本発明によれば2.5%以上、好ましくは2.75%以上、および示した例に関してはそれどころか軸受金属表面の3%超を占めている。この粒子サイズ分布は、Si硬質粒子が、硬質の耐力結晶として材料の高い耐摩耗性を保証するために十分な大きさであり、その一方でまた、特に動的負荷下でのマトリクスの強度を低下させるほどは大きくないので、特に有利であることが分かった。
【符号の説明】
【0038】
10 軸受金属層
12 中間層
14 鋼支持層
16 ポリマーコーティング
20 部分面
22 Si粒子