(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共重合体が多段階型の重合によって得られ、この場合、第1段階で非極性セグメントPが、最終段階で極性セグメントDが生成されることを特徴とする、請求項1に記載の共重合体。
前記ニトロキシド媒介重合(NMP)の実施に用いられる移動可能なニトロキシルラジカル化合物が、リン原子を少なくとも1個含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の共重合体。
前記共重合体が多段階型の重合によって得られ、この重合の際、リン原子を少なくとも1個有する移動可能なニトロキシルラジカル化合物が用いられ、この場合、このリン原子を少なくとも1個有する移動可能なニトロキシルラジカル化合物が、極性セグメントDの末端に局在化されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の共重合体。
前記共重合体が、スチレン単量体から導かれる反復単位を含み、このスチレン単量体から導かれる反復単位の割合が、0.5〜10質量%の範囲にあることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の共重合体。
前記非極性セグメントPの極性セグメントDに対する質量比が、100:1〜1:1の範囲にあることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の共重合体。
少なくとも1つの極性セグメントDが分散性反復単位を有し、この反復単位は2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートから導かれたものであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の共重合体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル基を含む共重合体と、それら共重合体を含む潤滑剤とに関する。本発明はさらに、エステル基を含む共重合体を、潤滑剤の摩擦特性を改善するために用いる使用に関する。
【0002】
燃料節約(fuel economy)上の理由から、チャーニングロス(churning loss)と、オイルの内部摩擦とをさらに削減することが、現代の研究の課題である。この理由から、近年とくに高温時に、使用されるオイルの粘性をさらに少なくし、それとともに潤滑薄膜をさらに薄くする傾向が示されている。それに従い、この傾向にともなって生じる欠点を補償する解決法が、つねに求められている。
【0003】
WO2004/087850(Evonik RohMax社)は、潤滑油中のPAMAブロック共重合体、たとえば2−(4−モルホリニル)エチルメタクリレートMoEMAをベースとする、または2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)をベースとするブロック共重合体の薄膜形成、摩擦軽減効果を記載する。
【0004】
WO2006/105926(Evonik RohMax社)は、新しい単量体のグループ、たとえば2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(AcAcEMA)およびN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素(EUMA、ethilene urea methacrylat)のグループ、ならびにこれらから導かれたランダム共重合体およびブロック共重合体と、これらを潤滑油中で使用することとを記載する。
【0005】
WO2009/019065(Evonik RohMax社)は、抗疲労添加剤として用いるための、薄膜形成特性を有するシーケンシャルなブロック−またはグラフト重合体を記載する。
【0006】
Arkema社の2つの文書は、NMP(ニトロキシド媒介重合(Nitroxide Mediated Polimerization))によって得られるブロック重合体と、それを潤滑油中に用いることを記載する。この場合WO2005/056739は、粘性指標改善剤としての使用を記載し、それに対してEP1696020は、凝固点改善剤としての使用を記載する。後者の文書と同様に、WO2009/077396(Ciba社)は、バイオディーゼル燃料流動性改善剤として用いるための、NMPによって得られるブロック重合体を記載する。
【0007】
上記の重合体はすでに、潤滑油の摩擦特性のいちじるしい改善を生じる。しかし、潤滑剤とくに潤滑油の特性プロファイル改善の要求が絶えず存在する。従来の技術にかんがみ、ここで本発明の課題は、特性プロファイルを改善された添加剤または潤滑剤とくに潤滑油を提供することである。
【0008】
たとえば、潤滑剤とくに潤滑油の摩擦係数の大きな改善を生じる、効果的な添加剤を提供したい。
【0009】
この場合上記の改善は、さまざまな条件下で、とくに"境界潤滑(boundary lubrication)"または"境界摩擦(boundary friction)"の領域でも得られるようにしたい。この場合、表面はほぼ完全接触の状態にあって、たとえば表面間の間隔が、その表面粗さよりも小さい(これは、とくに速度が小さいとき、粘度が小さいとき、および/または負荷が高いときに得られる状態である)。このような状態は、たとえばエンジンのピストンの戻り行程で生じ、とくにHigh Frequency Reciprocating Rig(HFRR)試験によってシミュレーションされる。このテーマについては次の文献を参照されたい。B.J.Hamrock;B.O.Jacobson;S.R.Schmid:Fundamentals of Fluid Film Lubcidation,Marcel Dekker,New York,2
ndEd.,2004。
【0010】
またこの添加剤はとくに、安価に製造可能なものとしたい。本発明の課題はさらに、高い分散性、高い腐食防止性(すなわち高い金属不活性剤特性)、酸化および熱負荷に対する高い安定性、高いせん断強度を有する添加剤を提供することであった。またこの添加剤は、非常に非極性の潤滑油、たとえば完全合成潤滑油に大量に溶解するものとしたい。それにとどまらず本発明の課題は、摩擦を最小限に抑える作用だけでなく、潤滑油の流動特性を改善する、すなわち粘度指標を改善する作用を有する、このような添加剤を提供することであった。またこの添加剤は、摩擦保護添加剤および/または抗疲労添加剤としての作用を示すものとしたい。
【0011】
ここでは、トランスミッションの金属表面、とくに歯付き部とローラベアリングの欠陥に関し、2つのグループが区別される。
1.継続的な表面の材料磨滅による摩耗(wear)、または摩擦両パートナーの表面が摩耗した後の突然の材料磨滅によるかじり(scuffing)。
2.グレイステイニング(grey staining、surface fatigue、micro−pitting)、または孔食(sub−surface fatigue、pitting)が視認される。これらの損傷は、表面より20〜40μmないし100〜500μm下の金属格子中で、せん断応力によって亀裂が生じることにより、金属が剥落または欠落して生じるものである。
【0012】
上記の課題、および明示的には挙げないが、冒頭で論じた事項からただちに導かれまたは推論可能な下記の課題は、請求項1の特徴を有する共重合体によって解決される。本発明の共重合体の適切な別形は、請求項1に従属される各請求項で保護される。
【0013】
したがって本発明の対象は、少なくとも1つの非極性セグメントPと、少なくとも1つの極性セグメントDを有し、エステル基を含む次のような共重合体である。すなわちこの場合、極性セグメントDは少なくとも8個の反復単位を有し、極性セグメントDにおける分散性反復単位の質量割合は、極性セグメントDの質量に対して少なくとも30%であり、この共重合体は、NMP(Nitroxide Medeated Polymerization)によって得られることを特徴とする。
【0014】
これにより、潤滑剤とくに潤滑油の添加剤として、とくに有利な特性プロファイルを示すものを、予期せずして提供できるようになる。こうして本発明の共重合体は、摩擦特性の優れた潤滑油を生じる。この改善は、驚くべきことに広い周波数領域で得られる。これによりこれらの共重合体は表面を摩耗から保護する。
【0015】
また本発明の共重合体を使用することによって、材料疲労の軽減が得られる(抗疲労添加剤)。この場合これらの添加剤によって、上記に説明したグレイステイニング(grey staining、surface fatigue、micro−pitting)、または孔食(sub−surface fatigue、pitting)の形成の軽減が得られる。
【0016】
またこの添加剤は簡単かつ安価に製造することができ、とくに市販の構成成分を使用できる。この場合、製造を巨大技術によって行うことができ、そのために新設備または構造が複雑な設備を必要としない。
【0017】
こうしてこれら共重合体は、驚くべきことにせん断強さあるものとして形成され、結果、潤滑剤は非常に長い維持性を有する。また本発明により用いられる添加剤は、潤滑剤中に望まれる特性を多数生じる。たとえば入手可能なエステル基を含む重合体を有する潤滑剤でありながら、すぐれた低温特性または粘度特性を有する潤滑剤を製造できる。これにより異なる添加剤の個数を最小限に抑えることができる。それだけでなく、これら入手可能なエステル基を含む重合体は、多数の添加剤と両立性がある。これにより潤滑剤を、さまざまな要求事項に適合させることができる。
【0018】
本発明の共重合体はすぐれた分散特性を示す。これによりこれら共重合体は、堆積物の形成を防止する。これら共重合体は、すぐれた腐食防止特性、すなわち金属不活性剤特性を有する。本発明の共重合体は、金属イオンを拘束するのに優れている。これにより潤滑油の早期の酸化が軽減される。
【0019】
使用される添加剤はまた、燃費または潤滑剤の環境両立性に、不利な作用を示さない。
【0020】
エステル基を含む重合体とは、本発明の場合、次のような重合体をいう。すなわちエチレン性不飽和化合物を含み、その化合物は、下記ではエステル単量体と呼ぶエステル基を少なくとも1つ有する、このような重合体である。したがってこれらの重合体は、エステル基を側鎖の一部として含む。これらの重合体に属するのは、とくにポリアルキル(メタ)アクリレート(PAMA)、ポリアルキルフマレート、および/またはポリアルキルマレエートである。
【0021】
エステル単量体はそれ自体公知である。これに属するのはとくに、さまざまなアルコール残基を有する場合がある(メタ)アクリレート、マレエート、およびフマレートである。(メタ)アクリレートという表現は、メタクリレートとアクリレート、それにこれらの混合物を含む。これらの単量体は広く公知である。
【0022】
エステル基を含む重合体は、エステル単量体から導かれた反復単位を、好ましくは少なくとも40質量%、とくに好ましくは少なくとも60質量%、さらにとくに好ましくは少なくとも80質量%、まったくとくに好ましくは少なくとも90質量%含む。
【0023】
本発明の共重合体は、少なくとも1つの非極性セグメントPと、少なくとも1つの極性セグメントDとを含み、この場合、極性セグメントDは、少なくとも8個の反復単位を有し、極性セグメントDにおける分散性反復単位の質量割合は、極性セグメントDの質量に対して少なくとも30%である。
【0024】
反復単位という概念は、当業者に広く公知である。これら入手可能な重合体は、NMP法による単量体のラジカル重合で得られる。この場合、二重結合は、共有結合の形成によって開かれる。これに応じて、使用された単量体から反復単位が得られる。
【0025】
本発明の重合体は、極性および非極性のセグメントを有する。"セグメント"という概念は、この場合重合体の一部分をいう。セグメントは、1つ以上の単量体構成単位からなるほぼ一定の組成物である。セグメントはまた1つの勾配を有し、これは、さまざまな単量体構成単位(反復単位)の濃度がセグメント長さに沿って変化する勾配である。極性セグメントDは、分散性単量体の割合の点で、非極性セグメントPと異なる。非極性セグメントは、分散性反復単位(単量体構成単位)を含んだとしてもわずかな割合であるが、極性セグメントは、分散性反復単位(単量体構成単位)を高い割合で含む。
【0026】
分散性単量体とは、とくに官能基を有する単量体をいうが、この場合、これら官能基を有する重合体は粒子とくにスート粒子を溶液中に保持できると、想定することができる(参照:R.M.Moritier,S.T.Orszulik(eds):"Chemistry and Technology of Lubricants",Blackie Academic & Professional,London,2
nded.1997)。これに属するのはとくに、硼素−、リン−、ケイ素−、硫黄−、酸素−、および窒素を含む基を有する単量体があり、この場合、酸素−および窒素官能基化単量体が好ましい。
【0027】
極性セグメントDは、本発明の場合、反復単位を少なくとも8個、好ましくは少なくとも12個、まったく好ましくは少なくとも15個含む。この場合、極性セグメントDは分散性反復単位を、極性セグメントDの質量に対して少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも40質量%含む。この極性セグメントは、分散性反復単位のほか、分散作用を示さない反復単位をも有する。この極性セグメントは、統計的に構築されたものとすることができるので、異なる反復単位がセグメント長さに沿って統計的分布を示す。さらにこの極性セグメントは、ブロック状、または勾配の形態に構築されたものとすることができるので、非分散性反復単位と分散性反復単位とは、極性セグメントの内部で不均一な分布を示す。
【0028】
非極性で疎水性のセグメントPは、分散性反復単位を非極性セグメントPに対して少量の割合で、好ましくは20質量%未満、とくに好ましくは10質量%未満、まったくとくに好ましくは5質量%未満含むことができる。とくに適切な実施形態の場合、非極性セグメントPは、分散性反復単位をほとんど含まない。
【0029】
エステル基を含むこの重合体の非極性セグメントPは、炭素原子7〜15個を有するエステル単量体から導かれた反復単位を、5〜100質量%、とくには20〜98質量%、好ましくは30〜95質量%、まったくとくに好ましくは70〜92質量%含むことができる。
【0030】
1つの特別な視点によれば、エステル基を含むこの重合体の非極性セグメントPは、アルコール残基中に炭素原子16〜40個を有するエステル単量体から導かれた反復単位を、0〜80質量%、好ましくは0.5〜60質量%、とくには2〜50質量%、まったくとくに好ましくは5〜20質量%含むことができる。
【0031】
さらには、エステル基を含むこの重合体の非極性セグメントPは、アルコール残基中に炭素原子1〜6個を有するエステル単量体から導かれた反復単位を、0〜40質量%、好ましくは0.1〜30質量%、とくに好ましくは0.5〜20質量%含むことができる。
【0032】
エステル基を含むこの重合体の非極性セグメントPは、エステル単量体から導かれた反復単位を、好ましくは少なくとも40質量%、とくに好ましくは少なくとも60質量%、とくに好ましくは少なくとも80質量%、まったくとくに好ましくは少なくとも90質量%含む。
【0033】
本発明によるエステル基を含む重合体の非極性セグメントPから得られる混合物は、化学式(I)
【化1】
[式中、Rは水素またはメチルを表し、R
1は炭素原子1〜6個を有する直鎖型または分岐型のアルキル残基を意味し、R
2およびR
3は互いに独立して水素を、または化学式−COOR’基を示す。この場合、R’は水素、または炭素原子1〜6個を有するアルキル基を意味する]の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物を、0〜40質量%、とくには0.1〜30質量%、とくに好ましくは0.5〜20質量%含むことができる。
【0034】
構成成分(I)の例はとくには、飽和アルコールから導かれる(メタ)アクリレートやフマレート、マレエートとして、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソ−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートとペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、たとえばシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、また不飽和アルコールから導かれる(メタ)アクリレート、たとえば、2−プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、およびビニル(メタ)アクリレートである。
【0035】
好ましくは、この非極性セグメントPを製造するため重合される組成物は、下記化学式(II)
【化2】
[式中、Rは水素またはメチルを表し、R
4は炭素原子7〜15個を有する直鎖型または分岐型のアルキル残基を意味し、R
5およびR
6は互いに独立して水素を、または化学式−COOR''基を示す。この場合、R''は水素、または炭素原子7〜15個を有するアルキル基を意味する]の1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物を、5〜100質量%、好ましくは10〜98質量%、とくに好ましくは20〜95質量%含む。
【0036】
構成成分(II)の例はとくには、飽和アルコールから導かれる(メタ)アクリレートやフマレート、マレエートとして、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3−イソ−プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、また不飽和アルコールから導かれる(メタ)アクリレート、たとえば、オレイル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレートとして、たとえば3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、そしてこれらに対応するフマレートとマレエートである。
【0037】
そのほか、この非極性セグメントPを製造するための好ましい組成物は、下記化学式(III)
【化3】
[式中、Rは水素またはメチルを表し、R
7は炭素原子16〜40個、好ましくは16〜30個を有する直鎖型または分岐型のアルキル残基を意味し、R
8およびR
9は互いに独立して水素を、または化学式−COOR'''基を示す。この場合、R'''は水素、または炭素原子を16〜40個、好ましくは16〜30個有するアルキル基を意味する]で表される1つ以上のエチレン性不飽和エステル化合物を、0〜80質量%、好ましくは0.5〜60質量%、とくに好ましくは2〜50質量%、まったくとくに好ましくは5〜20質量%含む。
【0038】
構成成分(III)の例はとくには、飽和アルコールから導かれる(メタ)アクリレートとして、たとえば、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソ−プロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソ−プロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、および/またはエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレート。またシクロアルキル(メタ)アクリレート、たとえば、2,4,5−トリ−t−ブチル−3−ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,3,4,5−テトラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート。それにこれらに対応するフマレートとマレエートである。
【0039】
長鎖型のアルコール残基を有するエステル化合物、とくに構成成分(II)と(III)はたとえば、(メタ)アクリレート、フマレート、マレエートおよび/または対応する酸を長鎖型の脂肪アルコールで置換することによって得られる。この場合一般的には、たとえば(メタ)アクリレートのようなエステルの混合物が、さまざまな長鎖型アルコール残基によって生じる。これらの脂肪アルコールに属するものに、とくにOxo Alcohol(登録商標)7911、Oxo Alcohol(登録商標)7900、Oxo Alcohol(登録商標)1100、Alfol(登録商標)610、Alfol(登録商標)810、Lial(登録商標)125およびNafol(登録商標)諸タイプ(Sasol社)、Alphanol(登録商標)79(ICI社)、Epal(登録商標)610とEpal(登録商標)810(Afton社)、Linevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911およびNeodol(登録商標)25E(Shell社)、Dehydad(登録商標)、Hydrenol(登録商標)およびLorol(登録商標)の諸タイプ(Cognis社)、Acropol(登録商標)35およびExxal(登録商標)10(Exxon Chemicals社)、Kalcol(登録商標)2465(Kao Chemicals社)がある。これらのエチレン性不飽和エステル化合物では、マレエートやフマレートよりも(メタ)アクリレートの方がとくに好ましい。すなわち化学式(I)、(II)、(III)のR
2、R
3、R
5、R
6、R
8、R
9が水素であるのが、とくに好ましい実施形態である。
【0040】
化学式(II)のエステル単量体と、化学式(III)のエステル単量体との混合物を、本発明の共重合体製造に用いる場合、化学式(II)のエステル単量体の化学式(III)のエステル単量体に対する質量比は、広い範囲に及ぶ。好ましくは、アルコール残基に炭素原子を7〜15個有する化学式(II)のエステル化合物の、アルコール残基に炭素原子を16個〜40個有する化学式(III)のエステル化合物に対する比は、50:1〜1:30、とくに好ましくは10:1〜1:3、さらにとくに好ましくは5:1〜1:1にあるものとする。
【0041】
また非極性セグメントを製造するための単量体混合物は、化学式(I)、(II)、(III)のエチレン性不飽和エステル化合物によって重合させることができる、エチレン性不飽和単量体を含むことができる。
【0042】
本発明による重合にとくに適する共重合体は、下記の化学式
【化4】
に相当するものである:
式中、R
1*とR
2*は互いに独立して、次の群から選択されたものである。すなわちこのグループをなすものに、水素、ハロゲン、CN、直鎖型または分岐型アルキル基があり、ただしこのアルキル基は、炭素原子を1〜20個、好ましくは1〜6個、とくに好ましくは1〜4個有するものとし、またこれらアルキル基は、ハロゲン原子1〜(2n+1)個と置換されたものとすることができる。この場合、nはアルキル基の炭素原子の個数である(たとえばCF
3)。また上記グループをなすものに、α−、β−不飽和の直鎖型または分岐型アルケニルまたはアルキル基があり、これらの基は、炭素原子2〜10個、好ましくは2〜6個、とくに好ましくは2〜4個を有し、これらの基は、ハロゲン原子、好ましくは塩素1〜(2n−1)個で置換されたものとすることができる。この場合、nは、アルキル基たとえばCH
2=CClの個数である。また上記グループをなすものに、炭素原子3〜8個を有するシクロアルキル基があり、これらのシクロアルキル基は、ハロゲン原子、好ましくは塩素1〜(2n−1)個で置換されたものとすることができる。この場合、nはシクロアルキル基の炭素原子の個数である。また上記グループをなすものに、炭素原子3〜40個、好ましくは5〜18個を有する芳香族基またはヘテロ芳香族基があり、これらの基は、炭素原子またはハロゲン1〜6個を有する前記に挙げた基、好ましくはアルキル基で置換されたものとすることができる。また上記群をなすものに、C(=Y
*)R
5*、C(=Y
*)NR
6*R
7*、Y
*C(=Y
*)R
5*、SOR
5*、SO
2R
5*、OSO
2R
5*、NR
8*SO
2R
5*、PR
5*2、P(=Y
*)R
5*2、Y
*PR
5*2、Y
*P(=Y
*)R
5*2、NR
8*2があり、これらは、追加的なR
8*−、アリール−またはヘテロシクリル基によって四級化され得る。この場合、Y
*NR
8*、SまたはOは、Oであるのが好ましい。またR
5*は、炭素原子1〜20個を有するアルキル基、炭素原子1〜20個を有するアルキルチオ、OR
15(R
15は水素またはアルカリ金属)、炭素原子1〜20個を有するアルコキシ、アリールオキシまたはヘテロシクリルオキシである。R
6*とR
7*は、互いに独立して水素、または炭素原子1〜20個を有するアルキル基であるか、または、 R
6*とR
7*は両者併せて炭素原子2〜7個、好ましくは2〜5個を有するアルキレン基を形成する。この場合、これら両者は、3〜8員環型、好ましくは3〜6員環型の環を形成し、R
8*は、水素であるか、炭素原子1〜20個を有する直鎖型または分岐型のアルキル−またはアリール基である。
R
3*とR
4*は、水素、ハロゲン(フッ素または塩素が好ましい)、炭素原子1〜6個を有するアルキル基、COOR
9*からなる群から、互いに独立して選択されている。この場合R
9*は、水素、アルカリ金属、または炭素原子1〜40個を有するアルキル基である。あるいは、R
1*とR
3*は、両者併せて化学式(CH
2)
n’で表される基を形成し、この基は、ハロゲン原子1〜2n’個またはC
1〜C
4アルキル基で置換することができ、あるいは化学式C(=O)−Y
*−C(=O)を形成する。この場合、n’は2〜6、好ましくは3または4であり、Y
*は前記の定義と同様であり、またこの場合、残基R
1*、R
2*、R
3*、R
4*の少なくとも2つは、水素またはハロゲンである。
【0043】
好ましい構成成分に属するものとして、とくにビニルハロゲン化物、たとえばビニル塩化物、ビニルフッ化物、ビニリデン塩化物、およびビニリデンフッ化物がある。
またスチレン単量体、たとえばスチレン、鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、たとえば、アルファ−メチルスチレンとアルファ−エチルスチレン、環にアルキル置換基を有する置換スチレン、たとえばビニルトルエンとp−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、たとえばモノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリブロモスチレンとテトラブロモスチレン、ビニル−およびイソプレニルエーテルがある。
【0044】
マレイン酸とマレイン酸誘導体は、(I)、(II)、(III)に挙げたものとは同一ではない。たとえばマレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、マレインイミド、メチルマレインイミドである。
【0045】
フマル酸とフマル酸誘導体は、(I)、(II)、(III)に挙げたものとは同一ではない。
【0046】
そのほか、非極性セグメントを製造するための単量体混合物が、分散性単量体を含むことができる。
【0047】
その共単量体の割合は、非極性セグメントPを製造するための単量体組成物の質量に対して、好ましくは0〜50質量%、とくに好ましくは0.1〜40質量%、まったくとくに好ましくは0.5〜20質量%である。
【0048】
とくに好ましい一実施形態では、非極性セグメントPが、アルキル残基に炭素原子を好ましくは7〜40個、とくに好ましくは10〜30個有するメタクリレートから導かれた反復単位と、スチレン単量体から導かれた反復単位とを含む。そのスチレン単量体の割合は、非極性セグメントPを製造するための単量体組成物の質量に対して、好ましくは0〜40質量%、とくに好ましくは0.1〜20質量%、まったくとくに好ましくは0.5〜5質量%である。メタクリレートの割合は、非極性セグメントPを製造するための単量体組成物の質量に対して、好ましくは少なくとも60質量%、とくに好ましくは少なくとも80質量%、まったくとくに好ましくは少なくとも90質量%である。
【0049】
とくに好ましい一実施形態では、非極性セグメントPが、アルキル残基に炭素原子を好ましくは7〜40個、とくに好ましくは10〜30個有するメタクリレートから導かれた反復単位と、アルキル残基に炭素原子を好ましくは7〜40個、とくに好ましくは10〜30個有するアクリレートから導かれた反復単位とを含む。アルキル残基に炭素原子を好ましくは7〜40個、とくに好ましくは10〜30個有するアクリレートの割合は、非極性セグメントPを製造するための単量体組成物の質量に対して、好ましくは0〜40質量%、とくに好ましくは0.1〜20質量%、まったくとくに好ましくは0.5〜5質量%である。メタクリレートの割合は、非極性セグメントPを製造するための単量体組成物の質量に対して、好ましくは少なくとも60質量%、とくに好ましくは少なくとも80質量%、まったくとくに好ましくは少なくとも90質量%である。
【0050】
本発明で使用可能な重合体は、非極性セグメントPだけでなく分散性単量体から導かれた反復単位を含む少なくとも1つの極性セグメントDを含む。
【0051】
分散性単量体は以前から、潤滑油への重合体添加物を官能化するために用いられ、したがって当業者には公知である。(参照。R.M.Montier,S.T.Orszulik(eds.):"Chemistry and Technology of Lubricants",Blackie Academic & Professional, London,2
nd ed.1997)。適切にはとくに、下記化学式(IV)
【化5】
[式中、Rは水素またはメチルであり、Xは酸素、硫黄、または化学式−NH−または−NR
a−で表されるアミノ基であり、ここでR
aは炭素原子1〜40個、好ましくは1〜4個を有するアルキル残基を表す。また、R
10は、ヘテロ原子を少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個有しながら、炭素原子2〜1000個、とくには2〜100個、好ましくは2〜20個を含む残基である。R
11とR
12は、互いに独立して水素であるか、または化学式COX’R
10’で表される基であって、この場合、X’は酸素、または化学式−NH−または−NR
a’−で表されるアミノ基であり、ここでR
a’は炭素原子1〜40個、好ましくは1〜4個を有するアルキル残基を表す。また上記式中、R
10’は、炭素原子1〜100個、好ましくは1〜30個、とくに好ましくは1〜15個を含む残基である]の複素環式ビニル化合物および/またはエチレン性不飽和、極性エステル化合物を、分散性単量体として用いることができる。
【0052】
"炭素2個〜1000個を含む残基"という表現は、炭素原子2〜1000個を有する有機化合物の残基を表す。同様な定義が、対応する諸概念に当てはまる。この表現は、芳香族基やヘテロ芳香族基、たとえばアルキル−、シクロアルキル−、アルコキシ−、シクロアルコキシ−、アルケニル−、アルカノイル−、アルコキシカルボニル基、それにヘテロ脂肪族基に当てはまる。この場合、ここに挙げた基は分岐型、あるいは非分岐型であり得る。またこれらの基は、通常の置換基を有する。置換基は、炭素原子1〜6個を有するたとえば直鎖型および分岐型のアルキル基、たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−メチルブチルまたはヘキシルであり得る。またシクロアルキル基、たとえばシクロペンチルやシクロヘキシル、また芳香族基、たとえばフェニルまたはナフチル、アミノ基、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ハロゲン化物である。
【0053】
本発明では、芳香族基とは、炭素原子を好ましくは6〜20個、とくには6〜12個有する単核または多核化合物の残基をいう。ヘテロ芳香族基とは、少なくとも1個のCH基をNで置換され、そして/または隣接する少なくとも2個のCH基が、S、NH、またはOで置換されているアリール残基をいう。この場合、ヘテロ芳香族基は、炭素原子3〜19個を有する。
【0054】
本発明で好ましい芳香族基またはヘテロ芳香族基は、次のものから導かれる。すなわち、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルホン、チオフェン、フラン、ピロール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピラゾール、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−オキサジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,4−トリアゾール、2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,5−トリフェニル−1,3,4−トリアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,3,4−テトラゾール、ベンゾ[b]チオフェン、ベンゾ[b]フラン、インドール、ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾ[c]フラン、イソインドール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール、ピリジン、ビピリジン、ピラジン、ピラゾール、ピリミジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン、1,3,4−トリアジン、1,2,4,5−トリアジン、テトラジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、キノリン、1,8−ナフチリジン、1,5−ナフチリジン、1,6−ナフチリジン、1,7−ナフチリジン、フタラジン、ピリドピリミジン、プリン、プテリジンまたはキノリジン、4H−キノリジン、ジフェニルエーテル、アントラセン、ベンゾピロール、ベンゾオキサチアジアゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、ピリドピリジン、イミダゾピリミジン、ピラジノピリミジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジジン、アクリジジン、ベンゾプテリジン、フェナントロリン、およびフェナントレンである。これらは、場合によって置換されたものであり得る。
【0055】
好ましいアルキル基に属するものに、メチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、1−ブチル−、2−ブチル−、2−メチルプロピル−、t−ブチル残基、ペンチル−、2−メチルブチル−、1,1−ジメチルプロピル−、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、1,1,3,3−テトラメチルブチル−、ノニル−、1−デシル−、2−デシル−、ウンデシル−、ドデシル−、ペンタデシル−、およびエイコシル基がある。
【0056】
好ましいシクロアルキル基に属するものに、シクロプロピル−、シクロブチル−、シクロペンチル−、シクロヘキシル−、シクロヘプチル−、およびシクロオクチル基があり、これらは場合によって、分岐型または非分岐型のアルキル基で置換されたものである。
【0057】
好ましいアルカノイル基に属するものに、ホルミル−、アセチル−、プロピオニル−、2−メチルプロピオニル−、ブチリル−、バレロイル−、ピバロイル−、ヘキサノイル−、デカノイル−、およびドデカノイル基がある。
【0058】
好ましいアルコキシカルボニル基に属するものに、メトキシカルボニル−、エトキシカルボニル−、プロポキシカルボニル−、ブトキシカルボニル−、t−ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル−、2−メチルヘキシルオキシカルボニル−、デシルオキシカルボニル−、またはドデシルオキシカルボニル基がある。
【0059】
好ましいアルコキシ基に属するものに、その炭化水素残基が前記に挙げた好ましいアルキル基であるアルコキシ基がある。
【0060】
好ましいシクロアルコキシ基に属するものに、その炭化水素残基が前記に挙げた好ましいシクロアルキル基であるシクロアルコキシ基がある。
【0061】
残基R
10に含まれている好ましいヘテロ原子に属するものに、とくに酸素、窒素、硫黄、ホウ素、ケイ素、リンがあり、この場合、酸素と窒素が好ましい。
残基
10は、ヘテロ原子を少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個、さらに好ましくは少なくとも3個含む。
【0062】
好ましくは残基
10は、化学式(IV)のエステル化合物において、互いに異なる2個のヘテロ原子を含む。この場合残基
10は、化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つにおいて、窒素原子を少なくとも1個、酸素原子を少なくとも1個含むことができる。
【0063】
化学式(IV)のエチレン性不飽和、極性エステル化合物の例は、とくにはアミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、複素環型の(メタ)アクリレート、および/またはカルボニル含有(メタ)アクリレートである。
【0064】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに属するものとしてとくに、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオール(メタ)アクリレートがある。
【0065】
適切なカルボニル含有(メタ)アクリレートに、たとえば次のものがある。2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシメチル(メタ)アクリレート、オキサゾリジニルエチル(メタ)アクリレート、N−(メタクリルオキシ)ホルムアミド、アセトニル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸−モノ−2−(メタ)アクリルオキシエチルエステル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイル−2−ピロリジノン、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、N−(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノン、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシペンタデシル)−2−ピロリジノン、N−(3−(メタ)アクリロイルオキシヘプタデシル)−2−ピロリジノン、およびN−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)エチレン尿素。
【0066】
複素環型の(メタ)アクリレートに数えられるものとしてとくに、2−(1−イミダゾリル)エチル(メタ)アクリレート、2−(4−モルホリニル)エチル(メタ)アクリレート、および1−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−2−ピロリドンがある。
【0067】
またとくに関心を引くものに、アミノアルキル(メタ)アクリレートとアミノアルキル(メタ)アクリレートアミド、たとえば、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノジグリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、3−ジエチルアミノペンチル(メタ)アクリレート、3−ジブチルアミノヘキサデシル(メタ)アクリレートがある。
【0068】
そのほかリン−、ホウ素−、および/またはケイ素を含む(メタ)アクリレートを、極性セグメントDの製造に用いることができる。たとえば、2−(ジメチルホスフェート)プロピル(メタ)アクリレート、2−(エチレンホスファイト)プロピル(メタ)アクリレート、ジメチルホスフィノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルホスホノエチル(メタ)アクリレート、ジエチル(メタ)アクリロイルホスホネート、ジプロピル(メタ)アクリロイルホスファト、2−(ジブチルホスホノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ブチレン(メタ)アクリロイルエチルボレート、メチルジエトキシ(メタ)アクリロイルエトキシシラン、ジエチルホスフェートエチル(メタ)アクリレートである。
【0069】
好ましい複素環型ビニル化合物に数えられるものではとくに、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−エチル−4−ビニルピリジン、2,3−ジメチル−5−ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペリジン、9−ビニルカルバゾール、3−ビニルカルバゾール、4−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリビン、N−ビニルピロリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルブチロラクタム、ビニルオキソラン、ビニルフラン、ビニルチオフェン、ビニルチオラン、ビニルチアゾールおよび水素添加ビニルチアゾール、ビニルオキサゾールであって、この場合、N−ビニルイミダゾールとN−ビニルピロリドンは、官能化に使用する際にとくに好ましい。
【0070】
上記に説明した単量体は、個別に、あるいは混合物として使用できる。
【0071】
本発明に特別な視点によれば、化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つにおいて、残基R
10における少なくとも1個のヘテロ原子が、少なくとも4個の原子によって、とくに好ましくは少なくとも6個の原子によって、Xで表した基から分離されているものとすることができる。
【0072】
好ましくは、化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つにおいて、残基R
10は、下記化学式(V)
【化6】
[式中、Aは結合基であって、炭素原子を1〜500個、好ましくは1〜100個、とくに好ましくは1〜50個有し、また残基R
13とR
14は、それぞれ互いに独立して水素を意味するか、またはアルキル基であって炭素原子を1〜40個有するもの、とくに好ましくは炭素原子を1〜20個有するもの、まったく好ましくは炭素原子を1〜4個有するものを意味する]で表される1つの基である。"炭素原子を1〜500個有する結合基"という表現は、炭素原子1〜500個を有する有機化合物の残基を表す。この表現は、芳香族基とヘテロ芳香族基、たとえばアルキル−、シクロアルキル−、アルコキシ−、シクロアルコキシ−、アルケニル−、アルカノイル−、アルコキシカルボニル基、およびヘテロ脂肪族基を含む。これら残基については上記に詳しく説明した。
【0073】
化学式(V)における好ましい結合基に属するものに、下記化学式(VI)
【化7】
[式中、nは、1〜8の範囲、好ましくは1〜6の範囲、とくに好ましくは1〜3の範囲にある1つの整数を意味する]で表される基がある。
【0074】
好ましくは、化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つにおいて、残基R
10は、下記化学式(VII)
【化8】
で表される1つの基である。
【0075】
とくに好ましくは分散性単量体として、下記化学式(VIII)
【化9】
のジメチルアミノジグリコールメタクリレート、(2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エチルメタクリレート、2−メチル−2−プロペン酸−2−[2−(ジメチルアミノ)エトキシ]エチルエステル)を使用することができる。
【0076】
本発明のもう1つの視点によれば、化学式(VI)のエステル化合物の少なくとも1つにおける残基R
10は、化学式−CO−で表される基を少なくとも1個、とくに好ましくは少なくとも2個有する。化学式−CO−で表される基は、次のようなカルボニル基であり得る。すなわち、ケトンおよび/またはアルデヒドのカルボニル基、カルボン酸、カルボン酸エステルおよび/またはカルボン酸アミドのカルボニル基、および/または炭酸誘導体、とくに尿素基およびまたはウレタン基のカルボニル基である。
【0077】
この場合、化学式−CO−で表される少なくとも2つの基が、最大4個の原子を介して互いに結合されているものとすることができる。
【0078】
好ましくは、化学式(VI)のエステル化合物の少なくとも1つにおける残基R
10は、下記化学式(IX)
【化10】
で表される基であり得る。
【0079】
とくに好ましくは、構成成分d)は、下記化学式(X)
【化11】
で表されるコハク酸−モノ−2−メタクリロイルオキシエチルエステルを含む。
【0080】
好ましくは化学式(IV)のエステル化合物における残基R
10は、下記化学式(XI)
【化12】
で表される基である。
【0081】
とくに好ましくは、分散性単量体として、下記化学式(XII)
【化13】
で表される2−アセトアセトキシエチルメタクリレート(3−オキソ−ブタン酸−2−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチルエステル)を使用することができるものとする。
【0082】
本発明のもう1つの視点によれば、化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つにおける残基R
10は、化学式−CO−で表される基を少なくとも1個と、窒素原子を少なくとも1個含む。
【0083】
この場合、化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つにおいて、残基R
10は、尿素基を少なくとも1個有し、この尿素基は、一般に化学式−NR
b−CO−NR
c−で表示することができる。式中、残基R
bとR
cは、それぞれ互いに独立して水素であるか、または炭素原子を1〜40個、好ましくは1〜20個、とくに好ましくは1〜4個有する1つの基である。あるいは残基R
bとR
cは、炭素原子1から80個を有する1つの環を形成することができる。
【0084】
好ましくは、化学式(IV)のエステル化合物の少なくとも1つにおいて、残基R
10は、下記化学式(XIII)
【化14】
[式中、Aは、炭素原子を1〜500個、好ましくは1〜100個、とくに好ましくは1〜50個有する結合基である]で表される基であり得る。"炭素原子1〜500個を有する結合基"という概念については、前記に詳しく説明した。
【0085】
とくに好ましくは、分散性単量体として、化学式(XIV)
【化15】
で表されるN−(メタクリロイルオキシエチル)エチレン−尿素(2−メチル−2−プロペン酸−2−(2−オキソ−1−イミダゾールイジニル)エチルエステル)を使用することができる。
【0086】
とくに関心を引くものとしてとくに、次のものを使用して得られるエステル基を含む重合体がある。すなわち、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、コハク酸−モノ−2−メタクリロイルオキシエチルエステル、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−エチレン尿素、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、2−(4−モルホリニル)エチルメタクリレート、ジメチルアミノジグリコールメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、および/またはジメチルアミノプロピルメタクリルアミドである。この場合、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、2−(4−モルホリニル)エチルメタクリレートを使用すると、特別な利点がそれにともなう。この場合、2−アセトアセトキシエチルメタクリレートがとくに好ましい。
【0087】
極性セグメントを製造するための組成物は、分散性単量体だけでなく、非分散性単量体をも含むことができる。非分散性単量体については、前記で説明した。非分散性単量体に属するものとしてとくに、化学式(I)、(II)、および/または(III)のエチレン性不飽和エステル化合物がある。
【0088】
とくに好ましい一実施形態では、極性セグメントDが、化学式(IV)による分散性メタクリレートから導かれた反復単位と、スチレン単量体から導かれた反復単位とを含む。そのスチレン単量体の割合は、極性セグメントDを製造するための単量体組成物の質量に対して、好ましくは0〜40質量%、とくに好ましくは0.1〜30質量%、まったくとくに好ましくは0.5〜20質量%である。化学式(IV)による分散性メタクリレートの割合は、極性セグメントDを製造するための単量体組成物の質量に対して、好ましくは少なくとも50質量%、とくに好ましくは少なくとも70質量%、まったくとくに好ましくは少なくとも80質量%である。
【0089】
とくに好ましい一実施形態では、極性セグメントDが、化学式(IV)による分散性メタクリレートから導かれた反復単位と、アクリレートから導かれた反復単位とを含む。アクリレートの割合は、極性セグメントDを製造するための単量体組成物の質量に対して、好ましくは0〜40質量%、とくに好ましくは0.1〜30質量%、まったくとくに好ましくは0.5〜20質量%である。化学式(IV)による分散性メタクリレートの割合は、極性セグメントDを製造するための単量体組成物の質量に対して、好ましくは少なくとも50質量%、とくに好ましくは少なくとも70質量%、まったくとくに好ましくは少なくとも80質量%である。
【0090】
適切には、疎水性セグメントの極性セグメントに対する質量比は、100:1〜1:1の範囲、とくに好ましくは30:1〜2:1の範囲、まったくとくに好ましくは10:1〜4:1の範囲にある。
【0091】
疎水性および極性セグメントの長さは、広い範囲で変化する。好ましくは非極性セグメントPは、重量平均で求められた重合度が少なくとも10、とくには少なくとも40である。好ましくは疎水性セグメントの重量平均で求められた重合度は、20〜5000の範囲、とくには50〜2000の範囲である。
【0092】
エステル基を含む重合体の質量に対して、分散性反復単位の割合は、好ましくは0.5〜20質量%の範囲、とくに好ましくは1.5〜15質量%の範囲、まったくとくに好ましくは2.5〜10質量%の範囲である。この場合、これらの反復単位は、好ましくは、エステル基を含む重合体内部でセグメント状構造を形成するので、極性セグメントDの構成部分は、分散性反復単位の全質量に対して、好ましくは少なくとも70質量%、とくに好ましくは少なくとも80質量%である。
【0093】
エステルを含む重合体の質量に対し、スチレン単量体から導かれた反復単位の割合は、好ましくは0〜40質量%の範囲、とくには0.1〜25質量%の範囲、とくに好ましくは0.5〜10質量%の範囲、まったくとくに好ましくは1〜5質量%の範囲にある。
【0094】
本発明は、好ましくは高い油溶性を有する重合体について記述する。油溶性という概念は、肉眼で見えるような相形成をすることなく、ベースオイルとエステル基を含む重合体の混合物を製造可能なことを意味する。この混合物は、重合体に対して、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%とする。この混合物中には、重合体が、分散状態および/または溶解状態で存在することができる。この油溶性はとくに、親油性側鎖の割合とベースオイルとに依存する。この特性は、当業者に公知であり、いずれのベースオイルに対しても、親油性単量体の割合を介して容易に調整することができる。
【0095】
とくに関心を引くものとして、エステル基を含む次のような重合体がある。すなわちこの重合体の場合、好ましくはその重量平均分子量M
wが7500〜1000000g/molの範囲、とくに好ましくは10000〜600000g/molの範囲、まったくとくに好ましくは15000〜80000g/molの範囲にある。
【0096】
数平均分子量M
nは、好ましくは、5000〜800000g/molの範囲、とくに好ましくは7500〜500000g/molの範囲、まったくとくに好ましくは10000から80000g/molの範囲にあるものとすることができる。
【0097】
そのほか適切なものとして、エステル基を含む次のような重合体がある。すなわちこの重合体の場合、その多分散指数M
w/M
nが、1〜5、とくに好ましくは1.05〜4の範囲にある。この数平均および重量平均分子量は、公知の方法、たとえばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求めることができる。
【0098】
このエステル基を含む重合体は、多様な構造を有することができる。たとえば、この重合体は、ジブロック−、トリブロック−、マルチブロック−、櫛型−、および/または星型共重合体として存在することができ、これらの共重合体は、対応する極性および非極性セグメントを含む。本発明の場合、これら共重合体は、MNP(Nitroxide Medeated Polymerization)によって得られる。このMNP法は当業者に公知であり、たとえば、K.Matyjaszewski,T.P.Davis,Handbook of Radical Polimerization,Wiley−Interscience,Hoboken 2002に記載されている。
【0099】
本方法を特徴づけるものとして、N−オキシルラジカル化合物とも呼ばれる安定なニトロキシルラジカル化合物の存在がある。これらの化合物については、これら化合物の鎖末端が可逆反応可能であると想定される。
とくに好ましいニトロキシルラジカル化合物に属するものとして、好ましくは下記の構造式(XV)
【化16】
[式中、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21は、それぞれ互いに独立して、炭素原子を1〜100個、好ましくは1〜30個、とくに好ましくは1〜15個を含む1つの残基である。この場合、2つ以上の残基R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21は、1つの環、好ましくはC
1〜C
10−アルキル−、C
1〜C
10−アルケニル−、C
1〜C
10−アルコキシ−、C
6〜C
18−アリール−、C
7〜C
19−アラルキル−、C
6〜C
18−アリール−、C
1〜C
6−アルキル−、またはC
3〜C
18−ヘテロアリール基を形成することができる。この場合、好ましくは残基R
18とR
19が一緒に、1つの環、とくに好ましくは(C
1〜C
4)−アルキレンブリッジを形成することができる。このアルキレンブリッジは、飽和または不飽和の状態、1つ以上の次のような置換基で置換されない状態、または置換された状態であり得る。この置換基とは、炭素原子1〜30個を含む残基、C
1〜C
8 −アミド−、ハロゲン、オキシ−、ヒドロキシ−、アミノ−、アルキルアミノ−、ジアルキルアミノ−、アルキルカルボニルオキシ−、アリールカルボニルオキシ−、アルキルカルボニルアミノ−、アリールカルボニルアミノ基から選択されたものである。この場合、残基R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21はヘテロ原子を含み、このヘテロ原子は、炭素鎖の末端または炭素鎖の中に組み込まれたものであり得る]で表される化合物がある。とくに好ましいヘテロ原子に数えられるものにとくにリン原子がある。したがって、とくに好ましいニトロキシルラジカル化合物は、リン原子を少なくとも1個有する。
【0100】
本発明の特別な実施形態では、残基R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21の少なくとも1つが、下記化学式(XVI)
【化17】
[式中、R
22、R
23は、それぞれ互いに独立して1個のハロゲン原子、とくには塩素、臭素、フッ素、またはヨウ素の1個の原子であるか、あるいは、炭素原子を1〜50個、好ましくは1〜30個、とくに好ましくは1〜15個含む1個の残基である。この残基は、好ましくは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アリール、アラルキルオキシ、ペルフルオロアルキル、アラルキルであって、これらはいずれも炭素原子1〜20個を有する。また点線は、化学式(XVI)の基と、N−オキサイド基の窒素原子と結合している炭素原子との結合を示す]で表される基である。
【0101】
前記のニトロキシルラジカル化合物は、個別に、または混合物として使用することができる。
【0102】
好ましくはニトロキシルラジカル化合物として、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、および/または2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルの複素環の4位を置換された誘導体を用いる。この誘導体は、炭素原子1〜30個を含む残基から選択された1個以上の置換基、すなわち、C
1〜C
8−アミド−、ハロゲン、オキシ−、ヒドロキシ−、アミノ−、アルキルアミノ−、ジアルキルアミノ−、アリールアミノ−、ジアリールアミノ−、アルキルカルボニルオキシ−、アリールカルボニルオキシ−、アルキルカルボニルアミノ−、アリールカルボニルアミノ基を有する。ここで炭素1〜30個を含む残基は、とくに好ましくは、(C
1〜C
10)−アルキル−、(C
1〜C
10)−アルケニル−、(C
1〜C
10)−アルコキシ−、(C
6〜C
18)−アリール、(C
7〜C
19)−アラルキル−、(C
6〜C
18)−アリール(C
1〜C
8)−アルキル−、または(C
3〜C
18)ヘテロアリール基である。
【0103】
好ましくは次のニトロキシルラジカル化合物を用いる。すなわち、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−MeO−TEMPO)、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−oxo−TEMPO)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−hydroxy−TEMPO)、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(BnO−TEMPO)、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(AA−TEMPO)、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、N,Nジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(NNDMA−TEMPO)、3,6−ジヒドロ−2,2,6,6−テトラメチル−1(2H)−ピリジニル−オキシル(DH−TEMPO)、ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル)セバケート、またはこれら化合物のうち2つまたは3つの混合物である。
【0104】
まったくとくに好ましくは、次のものから選択されたニトロキシルラジカルを用いる。すなわち、N−t−ブチル−1−フェニル−2−メチルプロピル−N−オキシド、N−t−ブチル−1−(2−ナフチル)−2−メチルプロピル−N−オキシド、N−t−ブチル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピル−N−オキシド、N−t−ブチル−1−ジベンジルホスホノ−2,2−ジメチルプロピル−N−オキシド、N−フェニル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピル−N−オキシド、N−フェニル−1−ジエチルホスホノ−1−メチルエチル−N−オキシド、N−1−(フェニル−2−メチルプロピル)−1−ジエチルホスホノ−1−メチルエチル−N−オキシドから選択されたものである。
【0105】
安定なフリーラジカルは、重合可能な単量体と安定なフリーラジカルの質量合計に対して0.005〜5重量%の量を、重合または共重合の反応混合物中に加えることができる。
【0106】
重合の方法に応じて別個に添加される重合開始剤を用いることができる。この重合開始剤に属するものとしてとくに次のものがある。すなわち、当業者に公知のアゾ開始剤、たとえば、AIBNと1,1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびペルオキシ化合物、たとえば、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイル−ペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート。および、ここに挙げた化合物の2つまたは3つの混合物、それにここに挙げた化合物と、ここには挙げなかったがやはりラジカルを形成可能な化合物との混合物である。
【0107】
別個に添加される重合開始剤は、一般に用いられる量で使用可能である。この場合、ニトロキシルラジカル化合物の量が、コントロールされた重合を得るに十分でなければならない。
【0108】
前記に説明したニトロキシルラジカル化合物は、1つの特別な視点によれば、重合プロセスにおける次のような開始剤として用いることができる。すなわち、上記のニトロキシルラジカル化合物と少なくとも1つのラジカル開始剤とを遊離する開始剤である。
【0109】
上記のニトロキシルラジカルを遊離することができ、それを用いるのがとくに好ましい開始剤に属するものに、とくに下記の化学式(XVII)
【化18】
[式中、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21は、先に化学式(XV)で説明したのと同じ意味を有する。nは、1〜10、とくに好ましくは1〜5の整数、まったくとくに好ましくは1であり、Aで表した基は、炭素原子1〜50個、好ましくは1〜30個、とくに好ましくは1〜15個を含む残基である。とくに好ましくはこの化学式(XVII)でAと記した基は、少なくとも1個のカルボン酸−、エステル−、および/またはシアノ基、および/または少なくとも1個のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子を含む。この場合、ここに挙げた基の誘導体、たとえば塩を用いることができる]で表される化合物がある。
【0110】
上記のニトロキシルラジカル化合物を遊離する開始剤は、とくに次の文書に記載されている。すなわち、2002年03月15日、米国特許商標庁(USPTO)に出願番号09/979,124を持って提出されたUS6,657,043。および2003年07月23日、フランス特許庁に出願番号PCT/FR2003/002328をもって提出されたWO2004/014926A。および2000年02月10日、フランス特許庁に出願番号PCT/FR00/00335をもって提出されたWO00/49027Aである。この場合、そこに挙げられた開始剤は、本発明に参照をもって開示されたものとする。
【0111】
ラジカル開始剤のみならずニトロキシルラジカル化合物をも遊離する、ここに挙げた開始剤に属するものに、とくにヒドロキシルアミン化合物、たとえば2−メチル−2−(N−t−ブチル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピル−N−オキシル)−プロパン酸、2−メチル−2−(N−t−ブチル−1−ジベンジルホスホノ−2,2−ジメチルプロピル−N−オキシル)−プロパン酸、2−メチル−2−(N−フェニル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピル−N−オキシル)−プロパン酸、2−メチル−2−(N−フェニル−1−ジエチルホスホノ−1−メチルエチル−N−オキシル)−プロパン酸、および/または2−メチル−2−(N−1−(フェニル−2−メチルプロピル)−1−ジエチルホスホノ−1−メチルエチル−N−オキシル)−プロパン酸である。ここに挙げた化合物は、塩またはプロパン酸エステルたとえばメチルエステルの状態のものを用いることもできる。
【0112】
とくに好ましい開始剤(2−メチル−2−(N−t−ブチル−1−ジエチルホスホノ−2,2−ジメチルプロピル−N−オキシル)−プロパン酸)、すなわち、ラジカルソースもニトロキシルラジカルも、1つの分子中で同時に準備するこの開始剤は、BlocBuilder(登録商標)MAという商品名で入手可能である。
【0113】
【化19】
【0114】
本発明の好ましい一実施形態によれば、複数段階の重合によってこの共重合体が得られる。この場合第一の段階では非極性のセグメントPが、最後の段階で極性セグメントDが得られる。とくに好ましくはこの場合、この複数段階の重合を、リン原子を少なくとも1個有する移動可能なニトロキシルラジカル化合物を用いて行うが、その際、リン原子を少なくとも1個有する移動可能なニトロキシルラジカル化合物が、極性セグメントDの末端に局在化されるようにする。
【0115】
この重合は、標準圧、負圧、正圧の下で行うことができる。重合温度も厳密ではない。一般に重合温度は、20〜200℃、好ましくは50〜150℃、とくに好ましくは80〜130℃である。
【0116】
この重合は、溶剤を用いても、用いなくても行うことができる。溶剤という概念はこの場合、広い意味に理解するべきである。溶剤の選択は、使用される単量体の極性に従って行われ、この場合、好ましくは100N−オイル、軽質ガスオイル、および/または芳香族炭化水素、たとえばトルエンまたはキシレンを用いることができる。
【0117】
本発明による添加物は、とくに潤滑剤、好ましくは潤滑油(潤滑油組成物を含む)において、これらの摩擦特性を改善するために用いられる。潤滑油は、常温で流動可能な潤滑剤をいう。これら潤滑剤は、通常ベースオイルを含む。好ましいベースオイルに属するものに、とくに鉱油、合成油、天然石油がある。
【0118】
鉱油は、それ自体公知であり市販されている。鉱油は、一般に石油または未精製油から、蒸留および/または精製、場合によってはさらなるとくにクリーニングおよび純化によって得られる。この場合、鉱油という概念は、未精製油または石油の比較的高沸点の部分に該当する。一般に鉱油の沸点は、5000Paの場合、200℃より、好ましくは300℃より高い。シェール油の乾留、石炭のコークス化、空気密閉下における褐炭からの蒸留、石炭または褐炭の水素添加による製造も可能である。したがって鉱油は、その由来に応じて、その含む芳香族、環状型、分岐型、直鎖型の各炭化水素の割合が異なる。
【0119】
一般には、未精製油または鉱油において、パラフィンベース、ナフテン系、芳香族の各構成割合はさまざまである。この場合、パラフィンベースの割合という概念は、長鎖型または著しい分岐型のイソアルカンを、そしてナフテン系の割合という概念はシクロアルカンを表す。それだけでなく鉱油は、その由来と生成に応じて次のものの構成割合を異にする。すなわち、n−アルカン、分岐度の少ないイソ−アルカン、いわゆるモノメチル分岐パラフィン、それにヘテロ原子とくにO、Nおよび/またはSを有していて、あたえられる極性特性が限定されている化合物である。しかし分類が難しい。なぜならば、個々のアルカン分子が、長鎖を分岐する基だけでなく、シクロアルカン残基や芳香族の部分を有することがあるからである。本発明の目的のためには、この分類を、DIN51378に従って行う。極性を有するものの割合は、ASTM D2007に従って測定することもできる。
【0120】
n−アルカンの構成割合は、好ましい鉱油において、3質量%未満であり、O、Nおよび/またはSを含む化合物の構成割合は、6質量%未満である。芳香族化合物およびモノメチル分岐パラフィンの構成割合は、一般に0〜40質量%である。1つの興味深い視点によれば、鉱油は、主としてナフテン系およびパラフィンベースのアルカンであって、かつ、一般には13個を超える、好ましくは18個を超える、まったくとくに好ましくは20個を超える炭素原子を有する、このようなアルカンである。これら化合物の構成割合は、一般に60質量%以上、好ましくは80質量%以上であるが、それに限定されるものではない。1つの好ましい鉱油は、その含む芳香族の構成割合が、鉱油の全質量に対して0.5〜30質量%、ナフテン系の構成割合が15〜40質量%、パラフィンベースの構成割合が35〜80質量%、n−アルカンが最大3質量%まで、極性化合物が0.05〜5質量%である。
【0121】
従来の方法、たとえばシリカゲルに対する尿素分離と液体クロマトグラフィーを用いて行われた、とくに好ましい鉱油の分析は、たとえば次のような構成部分を示す。ただしこの場合、パーセント表示は、それぞれ使用された鉱油の全質量に対するものである:
炭素原子18〜31個を有するn−アルカン:0.7〜1.0%
炭素原子18〜31を有し、分岐のわずかなアルカン:1.0〜8.0%
炭素原子14〜32個を有する芳香族化合物:0.4〜10.7%
炭素原子20〜32個を有するイソ−およびシクロ−アルカン:60.7〜82.4%
極性化合物:0.1〜0.8%
損失:6.9〜19.4%
【0122】
改良された種類の鉱油(硫黄含有量の削減、窒素含有量の削減、粘性指数の向上、凝固点の低下)は、鉱油の水素処理によって得られる(水素化異性化、水素化分解、水素化処理、水素化仕上げ(hydro isomerization、hydro cracking、hydro treatment、hydro finishing))。この場合、水素の存在の下で、主として芳香族の構成割合を削減し、ナフテン系構成割合を構築する。
【0123】
鉱油の分析に関する重要な注意事項と、通常と異なる構成を有する鉱油のリストアップが、たとえば次の文献に記載されている。T.Mang, W.Dresel(eds.):"Lubricants and Lubrication",Wiley−VCH,Weinheim 2001;R.M.Mortier, S.T.Orzsulik(eds.):"Chemistry and Technology of Lubricants",Blackie Academic & Professional,London,2
nded.1997;J.Bartz:"Additive fur Schmierstoffe",Expert−Verlag,Renningen−Malsheim 1994
【0124】
合成油は、とくに有機エステル、たとえばジエステルとポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、合成炭化水素、とくにポリオレフィン(その中ではポリアルファオレフィン(PAO)が好ましい)、シリコーン油、ペルフルオロアルキルエーテルを含む。これらを介して、ガス・ツー・リキッド(gas to liquid(GTL))、コール・ツー・リキッド(coal to liquid(CTL))またはバイオマス・ツー・リキッド(biomass to liquid(BTL))の各プロセス由来の合成ベースオイルを用いることができる。これらベースオイルは、多くの場合、鉱油より若干高価であるが、性能上の長所を有する。
【0125】
天然のオイルは、動物系または植物系のオイル、たとえば牛脚油またはホホバオイルである。
【0126】
潤滑油を形成するためのベースオイルは、API(American Petroleum Institute)に定める各グループに分類される。鉱油は、グループI(水素処理されていない)、飽和度、硫黄含有量、粘性指数に従ってグループIIとIII(両者とも水素処理されている)に分類される。PAOはグループIVに相当する。そのほかすべてのベースオイルは、グループVにまとめられる。好ましい潤滑剤は、上記グループ分けのグループIIおよび/またはIIIに属する少なくとも1つのベースオイルを含み、とくに好ましくはグループIIIに属する少なくとも1つのベースオイルを含む。これらのベースオイルは、混合物としても使用することができ、さまざまなものが市販され入手可能である。
【0127】
潤滑剤組成物におけるエステル基を含む重合体の濃度は、同組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜40質量%、とくに好ましくは0.5〜25質量%、まったくとくに好ましくは1〜15質量%である。
【0128】
ここに説明する潤滑油組成物は、本発明によって使用されるエステルを含む重合体のみならず、そのほかの添加剤や追加物質を含むことができる。これらの添加剤に属するものに、とくに粘性指数改善剤、凝固点改善剤、および分散添加剤(分散剤、洗剤、脱泡剤、腐食防止剤、酸化防止剤、摩耗防止添加剤と極圧添加剤、摩擦係数調整剤)がある。
【0129】
粘性指数改善剤に属するものに、とくにアルコール基に炭素原子を1〜30個有するポリアルキル(メタ)アクリレート(PAMA、部分的に分散剤、摩耗防止添加剤および/または摩擦係数調整剤として有利な追加的特性を有するN/O官能基)がある。これらの物質は、請求項1に挙げた共重合体とは異なるものである。上記粘性指数改善剤に属するものにはそのほか、ポリ(イソ)ブテン(PIB)、フマレート−オレフィン−共重合体、スチレン−マレエート−共重合体、水素化スチレン−ジエン−共重合体(HSD)、およびオレフィン共重合体(OCP)がある。
【0130】
凝固点改善剤に属するものに、とくに、アルコール基に炭素原子を1〜30個有するポリアルキル(メタ)アクリレート(PAMA)がある。
【0131】
潤滑油のための粘性指数改善剤と凝固点改善剤との組み合わせについては、次の文献にも記載がある。すなわち、T.Mang, W.Dresel(eds.):"Lubricants and Lubrication",Wiley−VCH,Weinheim 2001;R.M.Mortier, S.T.Orszulik(eds.):"Chemistry and Technology of Lubricants",Blackie Academic & Professional,London,2
nded.1997;J.Bartz:"Additive fur Schmierstoffe",Expert−Verlag,Renningen−Malsheim 1994。
【0132】
適切な分散剤(dispersant)は、とくに、ポリ(イソブチレン)−誘導体、たとえばポリ(イソブチレン)−スクシンイミド(PIBSI)、N/O官能性を有するエチレン−プロピレン−オリゴマーを含む。
【0133】
好ましい界面活性剤(detergent)に属するものに、とくに次のものがある。すなわち、金属を含む化合物、たとえばフェノレート、サリチレート、チオホスホネート、とくにチオピロホスホネート、チオホスホネートとホスホネート、スルホネートとカーボネートである。これらの化合物が金属として含むことができるのは、とくにカルシウム、マグネシウム、およびバリウムである。これらの化合物は、好ましくは中性、または過塩基性のものとして使用することができる。
【0134】
そのほかとくに関心を引くのは脱泡剤(defoamer)である。この脱泡剤は、シリコーンを含む脱泡剤と含まない脱泡剤のさまざまなものに区分される。シリコーンを含む脱泡剤に数えられるものに、とくに直鎖型ポリ(ジメチルシロキサン)と環状型のポリ(ジエチルシロキサン)とがある。シリコーンを含まない脱泡剤としては、さまざまなポリエーテル、たとえばポリ(エチレングリコール)またはトリブチルホスフェートを用いることができる。
【0135】
1つの特別な実施形態では、本発明による潤滑剤組成物は、腐食防止剤(corrosion inhibitor)を含むことができる。これら腐食防止剤は、防錆添加剤(antirust additive)や金属不動態化剤/−不活性剤(metal passivator/desactivator)の中でさまざまに区分される。すなわち、防錆添加剤として次のものを用いることができる。すなわち、とくにスルホネート、たとえば石油スルホネート、または(さまざまな過塩基性の)合成アルキルベンゼンスルホネートたとえばジノニルナフテンスルホネート、カルボン酸誘導体、たとえばラノリン(羊毛脂)、酸化パラフィン、亜鉛ナフテネート、アルキル化コハク酸、4−ノニルフェノキシ−酢酸、アミドおよびイミド(N−アシルサルコシン、イミダゾリン誘導体)、アミン中和されたモノ−およびジアルキルリン酸エステル、モルホリン、ジシクロヘキシルアミン、またはジエタノールアミンを用いることができる。金属不動態化剤/−不活性剤に数えられるものに、とくに次のものがある。すなわち、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジアルキル−2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、N,N’−ジサリチリデンエチレンジアミン、N,N’−ジサリチリデンプロピレンジアミン、亜鉛−ジアルキルジチオホスフェート、およびジアルキルジチオカルバメートである。
【0136】
添加剤のもう1つの好ましいグループは酸化防止剤(antioxidant)である。この酸化防止剤に属するものには、たとえば次のようなものがある。すなわち、フェノール、たとえば2,6−ジ−t−ブチル−フェノール(2,6−DTB)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、芳香族アミン、とくにアルキル化ジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン(PNA)、重合2,2,4−トリメチルジヒドロキノン(TMQ)、硫黄とリンを含む化合物、たとえば金属ジチオホスフェートたとえば亜鉛ジチオホスフェート(ZnDTP)、"OOS−トリエステル"=ジチオリン酸とオレフィンなど(オレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、アルファ−ピネン、ポリブタン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステル(燃焼時に灰を生じないもの))の活性二重結合との反応生成物、有機硫化合物、たとえば、ジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、修飾されたチオール、チオフェン誘導体、キサンタート、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄を含むカルボン酸、ヘテロ環硫黄/窒素−化合物、とくにはジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2−メルカプト−ベンズイミダゾール、亜鉛−およびメチレン−ビス(ジアルキルジチオカルバメート)、有機リン化合物、たとえばトリアリールおよびトリアルキルホスファイト、有機銅化合物、ならびに過塩基性カルシウム−およびマグネシウム−ベースのフェノレートおよびサリチレートである。
【0137】
好ましい摩耗防止−(antiwear AW)および極圧添加剤(extrem pressure EP)に属するものに、とくに次のものがある。リン化合物、たとえばトリアルキルホスフェート、トリアリールホスフェート、たとえば、トリクレシルホスフェート、アミン中和されたモノ−およびジアルキルリン酸エステル、エトキシ化されたモノ−およびジアルキルリン酸エステル、ホスファイト、ホスホネート、硫黄とリンを含む化合物、たとえば、金属ジチオホスフェート、たとえば亜鉛−C
3〜12ジアルキル−ジチオホスフェート(ZnDTP)、アンモニウム−、アンチモン−、モリブデン−、鉛ジアルキルジチオホスフェート、"OOS−トリエステル"=ジチオリン酸とオレフィンなど(オレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、アルファ−ピネン、ポリブタン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステル、トリフェニル燐チオネート)の活性二重結合との反応生成物、硫黄と窒素を含む化合物、たとえば、亜鉛−ビス(アミルジチオカルバメート)、またはメチレン−ビス(ジ−n−ブチルジチオカルバメート)、遊離硫黄を含む硫黄化合物、例えばH
2Sと、硫化水素で硫化された炭化水素(ジイソブチレン、テルペン)。硫化されたグリセリドと脂肪酸エステル。過塩基性のスルホネート。塩化化合物、またはグラファイトまたはモリブデンジスルフィドのような固形物である。
【0138】
添加剤のもう1つの好ましいグループは、摩擦係数調整剤(friction modifier)である。摩擦係数調整剤として用いることができるものに、とくには次のものがある。すなわち、機械的に作用する化合物、たとえばモリブデンジスルフィド、グラファイト(フッ化物を含む)、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリイミド、吸収薄膜を形成する化合物、たとえば、長鎖型のカルボン酸、脂肪酸、エーテル、アルコール、アミン、アミド、イミド、摩擦化学反応によって薄膜を形成する化合物、たとえば、飽和脂肪酸、リン酸とチオリン酸エステル、キサントゲネート、硫化脂肪酸、硫化オレフィン。または有機金属化合物、たとえばモリブデン化合物(モリブデンジチオホスフェートおよびモリブデンジチオカルバメートMoDTC)、およびこれらとZnDTPとの組み合わせ、銅を含む有機化合物である。
【0139】
前記の添加剤のうちいくつかは、多機能を遂行できる。たとえばZnDTPは、第一には摩耗防止添加剤、極圧添加剤であるが、酸化防止剤や腐食防止剤の性格も有する(この場合:金属不動態化剤/不活性剤)。
【0140】
前記の添加剤については、とくに次の文献に詳細に説明されている。T.Mang, W.Dresel(eds.):"Lubricants and Lubrication",Wiley−VCH,Weinheim 2001;J.Bartz:"Additive fur Schmierstoffe",Expert−Verlag,Renningen−Malsheim 1994;R.M.Mortier,S.T.Orzsulik(eds.):"Chemistry and Technology of Lubricants",Blackie Academic & Professional,London,2
nded.1997
【0141】
好ましい潤滑油組成物を含むものとしては、ASTM D 445により40℃で測定された粘性が、10〜120mm
2/s、とくに好ましくは20〜100mm
2/sの範囲にある。100℃で測定された動粘性KV
100は、好ましくは少なくとも3.5mm
2/s、とくに好ましくは少なくとも4.0mm
2/s、まったくとくに好ましくは少なくとも4.5mm
2/sである。
【0142】
本発明の1つの特別な視点によれば、好ましい潤滑油組成物は、ASTM D 2270に従って測定された粘性指数が、100〜400、とくに好ましくは125〜325、まったくとくに好ましくは150〜250の範囲にある。
【0143】
潤滑油組成物は、DIN51350−6に定めるPSSI(20h KRL、Kegelrollenlager「円錐ローラベアリング」の略)が100以下のものが適切である。とくに好ましくは、このPSSIが、65以下、さらにとくに好ましくは25以下のものとする。
【0144】
本発明による潤滑油組成物は、とくにトランスミッションオイル、エンジンオイル、または油圧系統オイルとして用いることができる。とくに手動−(manual)、自動クラッチつき手動−(automated manual)、デュアルクラッチ−(double clutch)またはダイレクトシフト−(DSG)、自動−(automatic)、無段変速トランスミッション(continuous variable transmission)にこの潤滑油を用いる場合、驚くべき利点が得られる。またこの本発明による潤滑剤は、とくにトランスファーギヤボックス(transfer case)、およびアクスル−(axle)またはディファレンシャルギヤボックス(differential)に使用することができる。
【0145】
本発明によるエステルを含む重合体はさらに、潤滑剤における抗疲労添加剤として用いることができる。驚くべきことに、この添加剤は材料疲労に対抗するので、トランスミッション、エンジン、または油圧系統の寿命を向上可能なことが確認された。この所見は、さまざまな方法によって確認することができる。この潤滑油調製物の疲れ寿命(耐孔食性)の測定は、歯付けやローラベアリングの方法に従って行うことができる。下記の方法は、広範囲のヘルツ応力をカバーする。
【0146】
疲れ寿命(回転の回数)は、たとえば、DIN 51350−1で規格化されている4球式摩擦試験機(VKA、four−ball apparatus)で測定することができる。この場合、1個の回転するボールが、荷重の下に、3個の同種のやはり回転するボールに押しつけられる。Volkswagen株式会社の試験基準VW−PV−1444が用いられる("ローラ摩擦を受ける部品の耐孔食性―ピッティング試験"、VW−PV−1444、 Volkswagen)。
測定温度は120℃である。4.8kNの荷重と、回転数4000rpm、最大ヘルツ応力7.67GPaにおいて、ピッチ点における速度(entrainment speed)は5.684m/sである。加速度センサーが、試験体のロールオーバー周波数の周波数帯域で、0.25gより大きい振動を記録すると(地球重力をg=9.81m/s
2とする)、ただちに疲れが発生する。これは、たとえば、ロール軌道の孔食の直径が1〜2mmであることを指摘する。この試験を、下記ではVKA試験と呼ぶ。
【0147】
またこの疲労は、FAG FE8試験で測定することができる。そのためには、DIN51819−1に定めるFAG社(Schaeffler合資会社、Schweinfurt市)のローラベアリング潤滑剤試験機FE8を用いることができる。この場合、2つずつ共通に取り付けられたアキシャルシリンダーローラーベアリングの疲れ寿命(単位は時間)を、Volkswagen株式会社の試験基準VW−PV−1483("ローラベアリングにおける耐孔食性の試験―疲れ時間試験"、VW−PV−1483、Volkswagen株式会社、2006年9月草案。Volkswagen社の、手動トランスミッションのためのオイル規格VW TL52512/2005の構成部分。およびデュアルクラッチトランスミッションのためのオイル規格VW TL52182/2005)に従って試験する。ベアリングワッシャは、算術平均粗さが0.1〜0.3μmのものを用いる。
【0148】
測定はI20℃で行う。荷重60kNと回転数500rpmにより、最大ヘルツ応力が1.445GPaのとき、ピッチ点における速度1.885m/sが得られる。トルク(すなわち摩擦トルク)の増加が10%を超えるとき、すなわち、アキシャルシリンダーローラーベアリングが疲労しただけでも、ただちに疲労が生じる。
【0149】
原則的には、ローラーベアリング潤滑剤試験機FE8は、より厳しい方法、すなわちZF Fredrichshafen株式会社のZF−702−232/2003に従っても運転することができる(参照:"ZF Bearing Pitting Test"、ZF−702−232、ZF Friedrichshafen株式会社、2004)。
【0150】
IP305/79に従い、11球のボールベアリングをベースとする(その変形として3球型もある)、Unisteel機は産業界に普及しているが、これもまた、ベアリングにおける疲れ寿命の測定方法を提供する。
【0151】
さらには、FZG(「ミュンヘン工業大学歯車・ギヤシステム構造研究所」の略称)の歯車噛み合い試験機を、DIN51354−1に従って利用することができる。この試験機では、PT−C(
pitting
test type
C)専用歯車を用いて、疲れ寿命(単位は時間)を測定する。この方法は、FVA情報誌2/IVに記載されている(参照。U.Schedl:"FVA研究計画2/IV:ピッティング試験―単一ステージ試験および荷重スペクトル試験において、浸炭処理された歯車の孔食寿命に対する潤滑剤の影響"駆動技術研究協会、第530号、フランクフルト市、1997年。"ピッティング試験―単一ステージ試験および荷重スペクトル試験において、浸炭処理された歯車の孔食寿命に対する潤滑剤の影響"、FVA情報誌2/IV、駆動技術研究協会(略称FVA)、フランクフルト市、1997年)。
【0152】
測定はI20℃で行われる。荷重ステージ10(すなわち、トルク373Nm)、そして回転数1450rpm、最大ヘルツ応力1.834GPaのとき、ピッチ点における速度5.678m/sが得られる。孔食の総面積≧5mm
2が認められるとき、疲労が生じる。この方法を下記では、FZG PT−C 10/120検査という。
【0153】
さらに発展したもので実地に近い試験歯車PT
X−Cを、DIN51354−1によるFZG歯車噛み合い試験機に利用し、疲れ寿命の再現性と比較可能性の改善が得られる。この方法は、FVA情報のシート371に記載されている(参照。T.Radev:"FVA−研究計画371:実地に近いピッティング試験の開発"、駆動技術研究協会、第710号、フランクフルト市、2003年。"Development of a Practice Relevant Pitting Test"、FVA情報のシート371、駆動技術研究協会、フランクフルト市、2006年)。
【0154】
測定は90℃で行われる。荷重ステージ10(すなわち、トルク373Nm)、そして回転数1450rpm、最大ヘルツ応力2.240GPaのとき、ピッチ点における速度5.678m/sが得られる。孔食の総面積≧5mm
2が認められるとき、疲労が生じる。この方法を下記では、FZG PTX−C 10/90検査という。
【0155】
本発明による潤滑剤はすぐれた摩擦特性を示し、これは、さまざまな条件下で証明することができる。したがって、このエステルを含む共重合体を、摩擦特性の改善に用いることも、本発明の対象である。
【0156】
本発明の1つの好ましい視点によれば、とくにこの摩擦特性を、前記に詳しく説明した"boundary luburication"の領域で改善できる。この領域は、表面粗さより小さい表面間隔Rを特徴とする。この場合、この表面粗さは、触知的方法で測定可能な平均粗さRaとしてあたえられている(DIN EN ISO 4287参照)。
【0157】
このすぐれた摩擦特性は、とくに、UTFI(Ultrathin Film Interferometry
;超薄膜光学干渉計)、MTM(Mini−Traction Machine
;ミニトラクションマシン)、またはHFRR(High Frequency Reci
procating Rig
;高周期往復リグ)を用いて測定することができる。
【0158】
Ultrathin Film Interferometry(UTFI)を用いてトライボロジー特性を測定するには、1つの鋼球を用いる。この鋼球は荷重をかけられ、コーティングされたガラス板の上を転がる。高級とガラス板間の薄膜厚さの変化を、光学的干渉により、転がり速度の関数として調べる。
【0159】
好ましくは、UTFI数値を求めるため、次のような測定パラメーターを用いることができる:ヤング率(AISI 52100 スチール)=210GPa。ヤング率(ガラス)=75GPa。二乗平均(root mean squere RMS)粗さ(スチール)=10〜13nm。RMS粗さ(ガラス)=3nm。荷重=20N。得られた最大ヘルツ応力=0.54GPa。転がり−または飛沫同伴速度(entrainment speed)=0.005〜1.5m/s。温度=120℃。
【0160】
Mini−Traction Machine(MTM)を用いてトライボロジー特性を求めるには、直径19mmの鋼球を用いる。この鋼球は、磨かれたスチールディスク上を滑る、または転がる。球とディスクは、互いに独立して電動機に駆動されるので、さまざまなスライディング/ローリング比(sliding/rolling ratio SRR)が設定可能である。摩擦係数は、平均転がり速度の関数として求められる。摩擦実験の結果としてストライベック曲線が得られ、この曲線から摩擦係数が得られる。
【0161】
好ましくは、MTM数値を求めるため、次のような測定パラメーターを用いることができる:ヤング率(AISI 52100 スチール)=210GPa。粗さ(鋼球)=10〜13nm。粗さ(スチールディスク)=25〜30nm。荷重=30N。得られた最大ヘルツ応力=0.93GPa。SSR=50%。平均転がり速度または飛沫同伴速度=0.005〜2.5m/s。温度=120℃。
【0162】
高周期往復リグ(HFRR)を用いてトライボロジー特性を測定するには、直径6mmの鋼球をクランプ装置に固定し、荷重をかけながら、直径10mmのスチールディスク表面に押しつける。摩擦係数を連続的に記録し、実験終了時に摩耗溝直径を測定する。
【0163】
好ましくは、HFRR数値を求めるため、次のような測定パラメーターを用いることができる:ヤング率(AISI 52100 鋼球)=210GPa。燃料試験に普通用いられる軟質のディスクではなく、硬質VPN800スチールディスク。荷重=4N。たわみ=2mm。周波数=20s
-1。摩擦時間=75min。温度=I20℃。
この場合、本発明による重合体は、HFRR数値に驚くほど大きな改善を示す。前記のパラメーターを用いて75分測定した後、好ましい潤滑剤の場合、その相対摩耗度が最大0.8、好ましくは最大0.75、とくに好ましくは最大0.65である。この相対摩耗度は、この場合、本発明による添加剤を追加しない比較可能な潤滑剤に関する。絶対摩耗は、摩耗溝直径として測定されたもので、好ましくは最大280μm、とくには最大260μm、とくに好ましくは最大240μm、まったくとくに好ましくは最大220μmである。好ましい潤滑剤はさらに、HFRR試験によれば、摩擦係数が最大0.2、とくには最大0.15、とくに好ましくは最大0.10である。添加を行わない比較可能な潤滑剤に対して、相対摩擦係数は、好ましくは最大0.8、さらに好ましくは最大0.75、とくに好ましくは最大0.65である(相対摩擦係数=共重合体を用いた摩擦係数/標準油の摩擦係数)。
【0164】
したがって、摩耗軽減のためにエステル基を含む共重合体を使用することは、本発明の対象である。
【0165】
さらにとくに関心を引くのは、次のような潤滑剤調製物である。この調整物は、150℃で測定した高せん断粘度HTHSが、少なくとも1.6mPas、とくに好ましくは少なくとも2.0mPasである。100℃で測定された高せん断粘度はHTHSは、好ましくは最大10mPas、とくに好ましくは最大7mPas、まったくとくに好ましくは最大5mPasである。100℃および150℃で測定した高せん断粘度の差、HTHS
100−HTHS
150は、好ましくは最大4mPas、とくに好ましくは最大3.3mPas、まったくとくに好ましくは最大2.5mPasである。100℃時の高せん断粘度HTHS
100の150℃時の高せん断粘度HTHS
150に対する比、すなわちHTHS
100/HTHS
150は、好ましくは最大2.0、とくに好ましくは最大1.9である。この高せん断粘度HTHSは、いずれの温度時でも、ASTM D4683に従って測定することができる。
【0166】
下記では、実施例や比較例を用いて本発明を説明するが、それによって何らかの限定を行うものではない。
【0167】
実施例1
加熱マントル、内部温度制御装置、撹拌機、窒素供給管、冷却装置を備える反応フラスコに、12/15−アルキルメタクリレートを945gと、スチレン42gとを入れておく。この混合物を、ドライアイスで徹底的に脱気し、窒素を供給しながら80℃に加熱する。この加熱段階の間、60℃で、開始剤(BlocBuilder(登録商標)MA)19gを添加することにより、重合を開始する。つづくプロセスにおいて、12/15アルキルメタクリレートが置換されたか、屈折率によって追跡する。4時間後、90%が置換されたら、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)52gと、スチレン10gとの脱気された混合物を添加する。この反応混合物を、さらに16時間、80℃で再撹拌する。GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定された重合体の重量平均分子量は、約25000g/molであった。
【0168】
重合体の特性をHFRR試験で調査した。このため、グループIIIのオイル(NexBase 3030)を用いて、潤滑油調製物を生成した。この場合、動粘度を120℃で約4.73mm
2/sに設定した。重合体の濃度は13.3質量%であった。HFRRにより測定された摩擦係数は0.132であった。Nexbase 3080およびNexbase 3060からなるグループIIIの標準オイルは、120℃において動粘度4.74mm
2/sであって、摩擦係数は約0.21を示した。
【0169】
実施例2
実施例1とほぼ同様であるが、この場合、非極性セグメントPを生成するため、12/15−アルキルメタクリレートを914gと、スチレンを32g用意した。置換が90%に達すると、極性セグメントDを生成するため、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレン−尿素(EUMA)を84gと、スチレンを21gとからなる脱気された混合物を添加し、この反応混合物もやはり80℃で16時間、再撹拌した。GPCにより測定された重合物の重量平均分子量は、約25000g/molであった。
【0170】
重合体の特性をHFRR試験で調査した。このため、グループIIIのオイル(NexBase 3030)を用いて、潤滑油調製物を生成した。この場合、動粘度を120℃で約4.70mm
2/sに設定した。重合体の濃度は13.2質量%であった。HFRRにより測定された摩擦係数は0.096であった。Nexbase 3080およびNexbase 3060からなるグループIIIの標準オイルは、120℃において動粘度4.74mm
2/sであって、摩擦係数は約0.21を示した。
【0171】
実施例3
実施例1とほぼ同様であるが、この場合、非極性セグメントPを生成するため、12/15−アルキルメタクリレートを914gと、スチレンを42g用意した。置換が90%に達すると、極性セグメントDを生成するため、アセトアセトキシエチルメタクリレート(AcAcEMA)を84gと、スチレンを11gとからなる脱気された混合物を添加し、この反応混合物もやはり80℃で16時間、再撹拌した。GPCにより測定された重合物の重量平均分子量は、約25000g/molであった。
【0172】
重合体の特性をHFRR試験で調査した。このため、グループIIIのオイル(NexBase 3030)を用いて、潤滑油調製物を生成した。この場合、動粘度を120℃で約4.74mm
2/sに設定した。重合体の濃度は14.8質量%であった。HFRRにより測定された摩擦係数は0.085であった。Nexbase 3080およびNexbase 3060からなるグループIIIの標準オイルは、120℃において動粘度4.74mm
2/sであって、摩擦係数は約0.21を示した。この重合体は、示した絶対摩耗が約208μmであったが、標準オイルは摩耗約334μmを示した。
【0173】
比較例1
加熱マントル、内部温度制御装置、撹拌機、窒素供給管、冷却装置を備える2L反応フラスコに、イソC
12〜C
15−アルキルメタクリレートを900g、ブチルアセテートを225g、クミルジチオベンゾエート6.75g(RAFTのための開始剤)を入れておく。この混合物を、ドライアイスで徹底的に脱気し、窒素を供給しながら90℃に加熱する。反応温度に達した後、tBPO(t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート)1.8gを添加することにより、重合をスタートする。反応時間4時間後と8時間後、それぞれtBPOを0.9gずつ添加し、つづいてさらに15時間追加撹拌する。
【0174】
その後、ブチルアセテート300g中のN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレン尿素(EUMA)71、9gと、tBPO0.97gとを添加する。さらに4時間後、この混合物をオイル647.9gで希釈する。つづいてこの混合物を、ロータリーエバポレーターで脱気し、120℃で到達真空度12mbarとする。
【0175】
GPCを用いて測定された重合体の重量平均分子量は、約75000g/molであった。
【0176】
重合体の特性をHFRR試験で調査した。このため、グループIのオイル(Enerpar 11=150N)を用いて、潤滑油調製物を生成した。この場合、動粘度を120℃で約9.21mm
2/sに設定した。重合体の濃度は7.0質量%であった。HFRRにより測定された摩擦係数は0.18であった。Ergenol BSおよびEsso 600NからなるグループIの標準オイルは、120℃において動粘度約9.24mm
2/sであって、摩擦係数は約0.20を示した。
【0177】
比較例2
加熱マントル、内部温度制御装置、撹拌機、窒素供給管、冷却装置を備える2L反応フラスコに、イソC
12〜C
15−アルキルメタクリレートを900g、ブチルアセテートを225g、クミルジチオベンゾエート6.75g(RAFTのための開始剤)を入れておく。この混合物を、ドライアイスで徹底的に脱気し、窒素を供給しながら85℃に加熱する。反応温度に達した後、tBPO(t−ブチルペル−2−エチルヘキサノエート)1.8gを添加することにより、重合をスタートする。反応時間5時間後、tBPOを0.9g添加する。反応時間さらに5時間後、ブチルアセテート300g中のアセトアセトキシエチルメタクリレート(AcAcEMA)78.3gと、tBPO0.98gとを添加する。つづいてさらに30時間、85℃で再撹拌する。その後この混合物を、この混合物をオイル526.8gで希釈し、ロータリーエバポレーターで脱気し、120℃で到達真空度12mbarとする。
【0178】
GPCを用いて測定された重合体の重量平均分子量は、約150000g/molであった。
【0179】
重合体の特性をHFRR試験で調査した。このため、グループIのオイル(Enerpar 11=150N)を用いて、潤滑油調製物を生成した。この場合、動粘度を120℃で約9.12mm
2/sに設定した。重合体の濃度は5.5質量%であった。HFRRにより測定された摩擦係数は0.19であった。Ergenol BSおよびEsso 600NからなるグループIの標準オイルは、120℃において動粘度9.24mm
2/sであって、摩擦係数は約0.20を示した。