【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年9月27日に可視化情報全国講演会(会津2013)講演論文集第241頁にて発表 平成25年9月27日に可視化情報全国講演会(会津2013)にて発表 平成25年11月7日に日本フルードパワーシステム学会の平成25年秋季フルードパワーシステム講演会講演論文集第115〜117頁にて発表 平成25年11月8日に平成25年秋季フルードパワーシステム講演会にて発表 平成25年11月18日にFLUCOME 2013講演論文集、Paper No.OS5−01−4にて発表 平成25年11月21日にFLUCOME 2013にて発表 平成26年1月8日に日本フルードパワーシステム学会(JFPS)、機能性流体との融合化によるフルードパワーシステムの新展開に関する研究委員会、第7回研究委員会にて発表
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
磁気粘性(Magneto Rheological:MR)流体は、鉄(Fe)等の磁性粒子をオイル等の分散媒に分散させた流体である。MR流体は、磁場の作用がない場合には分散媒中に磁性粒子がランダムに浮遊している。MR流体に外部から磁場を印加すると、磁界の方向に沿って磁性粒子が多数のクラスタを形成し、降伏応力が増大する。このようにMR流体は電気信号によってレオロジー特性又は力学的な性質を容易に制御できる材料であるため、種々の分野への応用が検討されている。現状では自動車向けショックアブソーバー及び建設機械向けシートダンパ等の直動型デバイスとして主に用いられている。
【0003】
磁性粒子をオイル等の分散媒に分散させた流体としてはMR流体以外に、磁性流体がある。磁性流体の場合に用いられる磁性粒子の粒子径は数nm〜10nm程度であり、熱エネルギーに起因するブラウン運動により粒子が振動する。このため、磁性流体には磁場を与えてもクラスタを形成せず、降伏応力は増大しないという点でMR流体とは全く異なる。
【0004】
MR流体において一般的に用いられる磁性粒子は、平均粒子径が数μm〜数十μmである。磁性流体と比べて大きな磁性粒子を用いることにより、磁場を印加した際にクラスタを形成させることができる。MR流体は、大きな磁性粒子を用いるため、放置しておくと磁性粒子の沈降によるケーキングが発生してしまうという問題がある。また、磁場の付与と解除とを繰り返すと、磁性粒子が二次凝集して、安定した分散状態を維持できなくなるという問題がある。MR流体の安定性を向上させるために、粒子径が異なる2種類の磁性粒子を混合したMR流体が検討されている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
【0005】
例えば、特許文献1においては、大径のカルボニル鉄粒子と、小径の二酸化クロム粒子とを混合している。二酸化クロム粒子がカルボニル鉄粒子に吸着されることにより、安定したMR流体を実現しようとしている。
【0006】
特許文献2においては、大径のカルボニル鉄粒子に、小径の鉄粒子を少量混合している。これにより、MR流体を安定化すると共に、高せん断時のせん断応力を低く抑えようとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらは、MR流体の安定性について検討しているに過ぎずない。MR流体は、磁場を印加した際の応力の増大ができるだけ大きいことが好ましい。また、MR流体に印加する磁場はできるだけ小さくできることが好ましい。しかし、粒子径が異なる2種類の磁性粒子を混合したMR流体において、磁場を印加した際の性能はほとんど検討されていない。
【0009】
本開示は、磁場を印加した際に鋭敏に応力が増大する高効率のMR流体を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の磁気粘性流体の一態様は、磁性粒子混合体と、磁性粒子混合体を分散させる分散媒とを備え、磁性粒子混合体は、第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子を含み、第1の磁性粒子は、平均粒子径が1μm以上、30μm以下であり、第2の磁性粒子は、平均粒子径が50nm以上、200nm以下の軟磁性体であり、第2の磁性粒子の磁性粒子混合体に占める割合は
25質量%以上、40質量%以下である。
【0011】
磁気粘性流体の一態様において、第2の磁性粒子は、マグネタイト粒子、又はアークプラズマ法により形成した鉄微粒子とすることができる。
【0012】
磁気粘性流体の一態様において、第1の磁性粒子の平均粒子径は、第2の磁性粒子の平均粒子径の20倍以上、500倍以下とすることができる。
【0013】
磁気粘性流体の一態様において、第1の磁性粒子は、カルボニル鉄粉とすることができる。
【0014】
磁気粘性流体の一態様において、第2の磁性粒子は、その表面に表面改質層を有していてもよい。
【0015】
この場合において、表面改質層は、第2の磁性粒子の表面に結合された炭化水素鎖を有する化合物とすることができる。
【0016】
本開示のクラッチの一態様は、相対回転可能な第1の部材及び第2の部材と、第1の部材と第2の部材との間に充填された磁気粘性流体と、磁気粘性流体に磁場を加える磁場発生部とを備え、磁気粘性流体は、本開示の磁気粘性流体である。
【発明の効果】
【0017】
本開示の磁気粘性流体によれば、磁場を印加した際に鋭敏に応力が増大する高効率の磁気粘性流体を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一実施形態に係る磁気粘性(MR)流体は、第1の磁性粒子と第2の磁性粒子とを混合した磁性粒子混合体と、磁性粒子混合体を分散させる分散媒とを備えている。第1の磁性粒子は、一般的なMR流体において用いられる平均粒子径が1μm〜30μm程度の磁性粒子であればよい。第2の磁性粒子は、平均粒子径が50nm〜200nm程度の軟磁性体からなる磁性粒子であればよい。第2の磁性粒子の磁性粒子混合体に占める割合(第2の磁性粒子の混合比率)は、10質量%〜40質量%程度であればよい。
【0020】
第1の磁性粒子は、適した平均粒子径を有する磁性粒子であればどのようなものであってもよい。例えば、鉄、窒化鉄、炭化鉄、カルボニル鉄、二酸化クロム、低炭素鋼、ニッケル又はコバルト等を用いることができる。また、アルミニウム含有鉄合金、ケイ素含有鉄合金、コバルト含有鉄合金、ニッケル含有鉄合金、バナジウム含有鉄合金、モリブデン含有鉄合金、クロム含有鉄合金、タングステン含有鉄合金、マンガン含有鉄合金又は銅含有鉄合金等の鉄合金を用いることもできる。ガドリニウム、ガドリニウム有機誘導体からなる常磁性、超常磁性又は強磁性化合物粒子及びこれらの混合物からなる粒子等を用いることもできる。中でも、カルボニル鉄は第1の磁性粒子として適した平均粒子径のものが容易に得られるため好ましい。
【0021】
第1の磁性粒子の平均粒子径は、1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、30μm以下、より好ましくは15μm以下である。
【0022】
第2の磁性粒子は平均粒子径が第1の磁性粒子よりも平均粒子径が小さい粒子である。第1の磁性粒子よりも平均粒子径が小さい第2の磁性粒子を適量混合することにより、磁場を印加していない場合の基底粘度の上昇を抑えつつ、磁場を印加した場合に粘度を大きく上昇させることが可能となる。また、第2の磁性粒子を混合することにより、MR流体の安定性を向上させることもできる。
【0023】
第1の磁性粒子と、第2の磁性粒子とは、その混合比率により
図1(a)〜(c)に示すような構造を形成する。粒子径が小さい第2の磁性粒子を含まない場合には、
図1(a)に示すように、磁場を加えた際に第1の磁性粒子は鎖状の構造を形成する。第2の磁性粒子を適量含む場合には、
図1(b)に示すように、第2の磁性粒子により第1の磁性粒子の形成する鎖状の構造が補強される。しかし、第2の磁性粒子の混合比率がさらに高くなり第1の磁性粒子の混合比率が低下すると、
図1(c)に示すように、第1の磁性粒子の間隔が拡がってしまう。
【0024】
図1(b)のような、第1の磁性粒子が形成する鎖状のクラスタが第2の磁性粒子により補強された構造を形成させることにより、降伏応力及び高せん断域におけるせん断応力を増大させることができる。また、第2の粒子を大量に添加すると粘度が増大してしまうが、少量の添加であれば、磁場を与えていない場合の基底粘度は第1の磁性粒子単独の場合と比べて大きく上昇しない。
【0025】
一方、
図1(c)のような構造が形成されている場合には、第2の磁性粒子による補強の効果がある程度生じ、降伏応力及び高せん断領域におけるせん断応力の増大が期待できる。しかし、第2の磁性粒子による構造粘性が現れるため、基底粘度が第1の磁性粒子単独の場合と比べて大きく上昇する。
【0026】
第2の磁性粒子による十分な補強効果を得るという観点から、第2の磁性粒子の混合比率は、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、40質量%以下、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下とすることができる。特に好ましい第2の磁性粒子の混合比率は25質量%である。基底粘度の上昇を抑えるという観点からもこの範囲とすることができる。
【0027】
第2の磁性粒子は、第1の磁性粒子よりも小さく、磁場を印加した際に、第1の磁性粒子が形成するクラスタの間に侵入してクラスタを形成し、第1の磁性粒子のクラスタを補強できればよい。磁場を印加した際にクラスタを形成し、MR流体としての機能に寄与させるという観点から、第2の磁性粒子の平均粒子径は50nm以上、好ましくは60nm以上、より好ましくは70nm以上である。一方、第2の磁性粒子の平均粒子径は200nm以下、好ましくは150nm以下である。従って、第2の磁性粒子は、平均粒子径が50nm〜200nm程度であればよく、50nm〜150nm程度であることが好ましい。このような粒子径の第2の磁性粒子を混合することにより、MR流体が沈降しにくくなり安定性が向上するという利点も得られる。
【0028】
第2の磁性粒子による補強効果を得るためには、第1の磁性粒子と第2の磁性粒子との粒子径の比が大きいことが好ましい。具体的には、第1の磁性粒子の平均粒子径は、第2の磁性粒子の平均粒子径の20倍以上であることが好ましく、30倍以上であることがより好ましく、50倍以上であることがさらに好ましい。また、500倍以下であることが好ましく、300倍以下であることがより好ましく、100倍以下であることがさらに好ましい。
【0029】
第2の磁性粒子は、軟磁性体の粒子であることが好ましい。軟磁性体の粒子とは、保磁力が100Oe〜200Oe程度で、磁場が印加されていない状態では磁石とならない粒子である。例えば、アークプラズマ法により形成した鉄粒子は、第2の磁性粒子として適した平均粒子径のものが容易に得られるため好ましい。また、二価の鉄と三価の鉄を含む複合酸化物であるマグネタイトも、第2の磁性粒子として適した平均粒子径のものが容易に得られるため好ましい。
【0030】
分散媒は、磁性粒子混合体を分散させることができる液体であればどのようなものであってもよい。例えば、シリコンオイル、フッ素オイル、ポリアルファオレフィン、パラフィン、エーテル油、エステル油、鉱物油、植物性油又は動物性油等を用いることができる。また、トルエン、キシレン及びヘキサン等に代表される有機溶媒又はエチルメチルイミダゾリウム塩、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム塩及び1−メチルピラゾリウム塩等に代表されるイオン性液体(常温溶融塩)類等を用いることもできる。これは、単独で用いることも2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
磁性粒子混合体の分散媒に対する濃度は、MR流体としての機能を発揮させる観点から、5vol%以上とすることが好ましく、10vol%以上とすることがより好ましい。基底粘度の上昇を押さえる観点から、50vol%以下とすることが好ましく、30vol%以下とすることがより好ましい。
【0032】
第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子と分散媒とは、最初にへら等を用いて混合した後、自転・公転型の攪拌機等を用いて十分に高せん断混合することが好ましい。但し、第1の磁性粒子を先に分散媒中に分散させた後、第2の磁性粒子を分散媒中に分散させてもよい。また、第2の磁性粒子を先に分散媒中に分散させた後、第1の磁性粒子を分散媒中に分散させてもよい。攪拌機に代えて、ホモジナイザー又は遊星混合機等を用いて磁性粒子の分散を行ってもよい。また、分散剤等を添加して磁性粒子を分散させてもよい。
【0033】
第2の磁性粒子は、MR流体の基底粘度を低く抑えるため及び安定性を向上させるために、その表面に表面改質層を設けることができる。表面改質層を形成しその表面の疎水性(親油性)を高くすることにより、基底粘度を低く抑え、分散媒への分散を容易とすることができる。
【0034】
表面改質層は、例えばシランカップリング剤により形成することができる。表面改質層の形成に用いるシランカップリング剤は、金属粒子の表面に形成した水酸基と反応するメトキシ基又はエトキシ基等の加水分解基を有していればどのようなものであってもよい。また、水酸基と反応させることができればシランカップリング剤に限らず他のカップリング剤であってもよい。表面改質層により、第2の磁性粒子の表面を疎水性とする場合には、メチルトリエトキシシラン又はメチルトリメトキシシラン等の炭化水素鎖のみを有するカップリング剤が好ましい。但し、反応性の官能基を有するシランカップリング剤を結合した後、反応性の官能基を用いて疎水性の化合物を固定してもよい。さらに、分散媒の種類に応じて分散媒と親和性が高い官能基を導入してもよい。カップリング反応は、気相にて行う方が液相にて行う場合よりも第2の磁性粒子の凝集を抑制することができるので好ましい。表面改質層は、第2の磁性粒子の表面に均一に設けられていることが好ましいが、第2の磁性粒子の表面の少なくとも一部に形成されていてもよい。分散をさらに容易とするために、第2の磁性粒子だけでなく、第1の磁性粒子にも同様の表面改質層を形成してもよい。表面改質層を親水性とすれば、水等を分散媒とすることも可能である。
【0035】
表面改質層を形成する場合には、磁性粒子の解砕を行うことが好ましい。解砕は、粉砕機(例えばボールミル)を用いた既知の方法により行えばよい。解砕機を用いて解砕することにより、第2の磁性粒子の平均粒子径を、所定の大きさ以下に正確に制御することが可能になる。なお、第2の磁性粒子の解砕工程は省略することも可能である。
【0036】
本実施形態のMR流体は、例えば
図2に示すようなクラッチに用いることができる。クラッチは、入力軸101と、出力軸102と、これらの周囲を囲むように配置された磁場発生部である電磁石103とを有している。入力軸101の端部には外筒111が固定され、出力軸102の端部にはローター121が固定されている。外筒111はローター121を囲んでおり、外筒111とローター121とは相対回転可能に配置されている。外筒111の内側の空間を密閉するようにオイルシール104が設けられている。外筒111とローター121との間には間隙が設けられており、回転時には遠心力によりこの間隙にはMR流体105が満たされる。電磁石103により磁場を発生させると、MR流体中の磁性粒子が磁束の方向にクラスタを形成し、クラスタを介して外筒111とローター121との間にトルクが伝達される。
【0037】
クラッチ以外にも、ブレーキ等のトルク制御デバイスに用いることができる。特に、高いせん断速度が加わる用途に利用することができる。
【0038】
以下に、実施例を用いてMR流体の特性についてさらに詳細に説明する。
【0039】
<第1の磁性粒子>
第1の磁性粒子には、平均粒子径が6.6μmのカルボニル鉄粉(BASF社製:Carbonyl Iron Powder CS)を用いた。
【0040】
<第2の磁性粒子>
第2の磁性粒子には以下のようなアークプラズマ法を用いて形成した平均粒子径が0.1μmのFeナノ粒子を用いた。なお、平均粒子径はBET(Brunauer-Emmett-Teller)法により求めた。
【0041】
まず、
図3に示す装置Aの容器13内に、水素及びアルゴンの混合気体を満たして大気圧とした。水素及びアルゴンの分圧はそれぞれ、0.5atmとした。直流電源14により、タングステンからなるプラズマトーチ11(陰極)と、水冷銅ハース12の上に載置した金属材料21(陽極)との間に40Vで150Aの電流を供給することにより、アークプラズマ18を発生させた。金属材料21として、純鉄(純度99.98%:アルドリッチ社製)を用いた。鉄粒子の生成速度は0.8g/min程度であった。
【0042】
鉄粒子を生成した後、容器13及び粒子捕集器16内をアルゴンを5%含むドライエア(窒素80%、酸素20%)雰囲気として、3時間放置した。これにより、鉄粒子の表面に厚さが2nm〜10nm程度の酸化膜が形成された。なお、酸化膜の形成は透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。放置時間が3時間を超えても酸化膜の膜厚はほとんど変化しなかった。
【0043】
酸化膜が形成された鉄粒子を、装置Aから取り出し、大気中に常温で1時間放置することにより、鉄粒子の表面に水酸基を導入した。水酸基を導入した鉄粒子と、シランカップリング剤とを圧力容器内に入れ、圧力容器を密閉した。シランカップリング剤には、メチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社:KBM−13)を用いた。シランカップリング剤はビーカー等の開口容器に入れ、鉄粒子とシランカップリング剤とが直接混合されないようにした。シランカップリング剤は、鉄粒子10gに対し0.38gの比率となるようにした。鉄粒子及びシランカップリング剤を入れた圧力容器を80℃の乾燥炉内に2時間放置し、シランカップリング剤を圧力容器内で気化させた。気化したシランカップリング剤が、鉄粒子表面の水酸基と反応することにより、表面に表面改質層を有する第2の磁性粒子が得られた。
【0044】
表面改質層を形成した後、第2の磁性粒子をトルエン中に分散させ、ボールミルによる解砕を6時間行った。ボールミルのポッドには容量が1リットルのジルコニアポッドを用い、ボールには直径1mmのジルコニアボールを用いた。
【0045】
得られた第2の磁性粒子の保磁力は175Oeであった。なお、保磁力の測定には、試料振動型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer:VSM)を用いた。
【0046】
<MR流体の調製>
第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子を所定の比率で分散媒中に分散させることによりMR流体を得た。分散媒にはシリコンオイル(信越化学社製:KF−96−50cs)を用いた。所定量の第1の磁性粒子、第2の磁性粒子及び分散媒を容器中にてへらを用いて手で混合した後、自転・公転型の攪拌機(倉敷紡績社製:マゼルスター)を用いて高せん断混合することにより磁性粒子を分散媒中に分散させた。第1の磁性粒子及び第2の磁性粒子を混合した磁性粒子混合体の分散媒に対する濃度は10vol%とした。
【0047】
<評価>
せん断応力の測定には、磁場印加装置(英弘精機製:MR−101N)を組み込んだ高精度レオメータ(HAAKE社製:レオストレス6000)を用いた。平板の間隔は250μmとした。
【0048】
(
参考例1)
第2の磁性粒子の混合比率を、15質量%とした。磁場を0.3テスラ(T)とし、せん断速度を100s
-1とした場合におけるせん断応力は11.2kPaであった。
【0049】
(実施例
1)
第2の磁性粒子の混合比率を、25質量%とした。磁場を0.3Tとし、せん断速度を100s
-1とした場合におけるせん断応力は11.5kPaであった。磁場を印加せず、せん断速度を100s
-1とした場合におけるせん断応力は、0.012kPaであった。
【0050】
(実施例
2)
第2の磁性粒子の混合比率を、35質量%とした。磁場を0.3Tとし、せん断速度を100s
-1とした場合におけるせん断応力は10.8kPaであった。
【0051】
(比較例1)
第2の磁性粒子の混合比率を、0質量%とし、第1の磁性粒子単独とした。磁場を0.3Tとし、せん断速度を100s
-1とした場合におけるせん断応力は9.2kPaであった。磁場を印加せず、せん断速度を100s
-1とした場合におけるせん断応力は0.0095kPaであった。
【0052】
(比較例2)
第2の磁性粒子の混合比率を、50質量%とした。磁場を0.3Tとし、せん断速度を100s
-1とした場合におけるせん断応力は9.5kPaであった。磁場を印加せず、せん断速度を100s
-1とした場合におけるせん断応力は0.021kPaであった。
【0053】
(比較例3)
第2の磁性粒子の混合比率を、75質量%とした。磁場を0.3Tとし、せん断速度を100s
-1とした場合におけるせん断応力は6.2kPaであった。
【0054】
(比較例4)
第2の磁性粒子の混合比率を、100質量%とし、第2の磁性粒子単独とした。磁場を0.3Tとし、せん断速度を100s
-1とした場合におけるせん断応力は5.2kPaであった。磁場を印加せず、せん断速度を100s
-1とした場合におけるせん断応力は0.025kPaであった。
【0055】
(比較例5)
第2の磁性粒子として平均粒子径が1μmのカルボニル鉄粒子(ISP Tech社製:S−3700)とし、第2の磁性粒子の混合比率を、25質量%とした。磁場を0.3Tとし、せん断速度を100s
-1とした場合におけるせん断応力は9.4kPaであった。
【0057】
各実施例及び比較例を表1にまとめて示す。また、0.3Tの磁場を印加した場合における第2の磁性粒子の混合比率とせん断応力との関係を
図4に示す。平均粒子径が0.1μmの第2の磁性粒子を用いた場合には、混合比率が10質量%〜40質量%の間において、せん断応力が10kPaを超えており、第2の磁性粒子を混合していない比較例1の場合と比べて、せん断応力を大きくすることができた。また、
図4において△印で示したように、第2の磁性粒子の粒子径が大きく、第1の磁性粒子の平均粒子径と第2の磁性粒子の平均粒子径との比率が10倍以下である比較例5においては、第2の磁性粒子の混合比率を25質量%としても、せん断応力の向上は認められなかった。
【0058】
図5には、磁場を印加していない場合における第2の磁性粒子の混合比率とせん断応力との関係を示す。第2の磁性粒子の混合比率が25質量%である実施例2においては、第2の磁性粒子を混合していない比較例1の場合とほぼ同じせん断応力を示し、基底粘度の上昇が抑えられていた。第2の磁性粒子の混合比率が50質量%である比較例2においては、第2の磁性粒子を混合していない場合の2倍以上のせん断応力となった。このように、第2の磁性粒子の混合比率が40質量%以下の場合には、磁場を印加していない場合のせん断応力の値は小さく、基底粘度の上昇を抑えることができた。