特許第6057973号(P6057973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057973
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】流体用ダイヤフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/02 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
   F04B43/02 C
   F04B43/02 M
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-233197(P2014-233197)
(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公開番号】特開2016-98644(P2016-98644A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2015年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】593057263
【氏名又は名称】多田プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】藤田 学
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−232846(JP,A)
【文献】 実開平3−119583(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心一方向(L1)に開口する3つ又は4つのダイヤフラム(50)と該ダイヤフラム(50)を円周等分配に一体状に連結する軸心直交平面状の横隔膜部(54)とを有するダイヤフラム集合体(5)と、モータ(9)の出力軸(91)が軸心他方向(L2)側から差し込まれるケース部材(8)と、を備えた流体用ダイヤフラムに於て、
上記ケース部材(8)は、上記軸心一方向(L1)に開口する3葉又は4葉のクローバ型の収納空間部(80)と、該収納空間部(80)が開口する開口端面(81)と、を有し、
上記開口端面(81)は、軸心(L)廻りに隣り合う上記ダイヤフラム(50)と上記ダイヤフラム(50)の間に入り込むように各上記ダイヤフラム(50)の周囲の上記横隔膜部(54)にC字状に当接するように構成され、
上記ダイヤフラム集合体(5)の上記横隔膜部(54)を、上記開口端面(81)で支持するように構成したことを特徴とする流体用ダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
上記ダイヤフラム(50)の底壁部(50b)から突出するダイヤフラム駆動軸部(53)を保持してピストン運動させるための駆動体(7)を備え、
上記駆動体(7)は、上記ダイヤフラム駆動軸部(53)を軸心直交状方向から差し込むスリット部(7e)を有する保持孔(7a)を備えている請求項1記載の流体用ダイヤフラムポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体用ダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイヤフラムポンプとしては、図7に示すように、軸心一方向L1に開口する複数のダイヤフラム40と、その複数のダイヤフラム40を円周等分配に一体状に連結する軸心直交平面状の横隔膜部44と、を有するダイヤフラム集合体4を備え、さらに、ダイヤフラム集合体4の横隔膜部44を支持すると共にダイヤフラム40が挿通する貫孔61を有するリテーナ部材6と、リテーナ部材6が取着すると共に、モータ74の出力軸74aが軸心他方向L2から差し込まれるケース部材73と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−2347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、リテーナ部材を用いると、部品点数が多くなるといった問題や、組立作業に手間がかかるといった問題があった。つまり、製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、部品点数が少なく組立が容易な流体用ダイヤフラムポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の流体用ダイヤフラムポンプは、軸心一方向に開口する3つ又は4つのダイヤフラムと該ダイヤフラムを円周等分配に一体状に連結する軸心直交平面状の横隔膜部とを有するダイヤフラム集合体と、モータの出力軸が軸心他方向側から差し込まれるケース部材と、を備えた流体用ダイヤフラムに於て、上記ケース部材は、上記軸心一方向に開口する3葉又は4葉のクローバ型の収納空間部と、該収納空間部が開口する開口端面と、を有し、上記開口端面は、軸心廻りに隣り合う上記ダイヤフラムと上記ダイヤフラムの間に入り込むように各上記ダイヤフラムの周囲の上記横隔膜部にC字状に当接するように構成され、上記ダイヤフラム集合体の上記横隔膜部を、上記開口端面で支持するように構成したものである。
また、上記ダイヤフラムの底壁部から突出するダイヤフラム駆動軸部を保持してピストン運動させるための駆動体を備え、上記駆動体は、上記ダイヤフラム駆動軸部を軸心直交状方向から差し込むスリット部を有する保持孔を備えているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の流体用ダイヤフラムポンプによれば、リテーナ部材を省略でき、部品点数を少なくできると共に組立が容易にできる。部材の製造工数や組立工数を少なくできると共に作業効率が向上し製造コストを大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態を示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施の形態を示す要部縦断面図である。
図3】ダイヤフラム集合体と駆動体の一例を示す斜視図である。
図4】ケース部材の一例を示す正面図である。
図5】駆動軸部連結工程を示す要部縦断面図であって、(a)は連結前の状態を示す要部縦断面図であり、(b)は連結後の状態を示す要部縦断面図である。
図6】駆動軸部連結工程を示す要部横断面図であって、(a)は連結前の状態を示す要部横断面図であり、(b)は連結途中の状態を示す要部横断面図であり、(c)は連結後の状態を示す要部横断面図である。
図7】従来例を示す分解斜視図である。
図8】従来の駆動軸部連結工程を示す要部縦断面図であって、(a)は連結前の状態を示す要部縦断面図であり、(b)は連結途中の状態を示す要部縦断面図であり、(c)は連結後の切断作業を示す要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
本発明の流体用ダイヤフラムポンプは、図1及び図2に示すように、軸心一方向L1に突出する小円筒状の吸入口部10及び吐出口部15を有する蓋体1と、軸心他方向L2に突出する短円筒状の吸入弁膜22を3つ有する吸入弁膜集合体2と、軸心一方向L1に開口する3つの椀型ダイヤフラム50を有するダイヤフラム集合体5と、吸入弁膜集合体2とダイヤフラム集合体5の間に介装される中蓋体3と、ダイヤフラム50の底壁部50bから突出するダイヤフラム駆動軸部53を保持してピストン運動させるための駆動体7と、円柱状小型直流用のモータ9と、モータ9の出力軸91に固着すると共に出力軸91から偏心位置に配設される偏心孔72aを有する回転台72と、駆動体7のボス部7bに一端71aが挿入されて固着すると共に他端71bが偏心孔72aに傾斜状に差し込まれる軸部材71と、モータ9の出力軸91が軸心他方向L2側から差し込まれると共に回転台72及び出力軸91を収容してモータ9に取着するケース部材8と、を備えている。
【0010】
ケース部材8内で、出力軸91により回転台72が回転し、回転台72にて偏心位置に他端71bが配設された傾斜状の軸部材71が軸心L廻りに円錐体状の軌跡を描くように回転して(擂粉木状に運動して)駆動体7を揺動させ、駆動体7の揺動によってダイヤフラム駆動軸部53をピストン運動させて、ダイヤフラム50と中蓋体3によって形成されるポンプ室Pを圧縮膨張させて、流体を吸入吐出するように構成している。
【0011】
本発明に於て、流体用ダイヤフラムポンプ全体の中心軸を軸心Lと呼ぶ。また、軸心Lに沿った矢印L1方向を軸心一方向L1と呼ぶ。図2は、説明を容易にするために、軸心L方向からみて120度で折れ曲がった切断面の切り口(図4に一点鎖線で示す切断線S−S)で切断した縦断面図である。
【0012】
図2及び図3に於て、ダイヤフラム集合体5は、ゴム等の弾性材から一体に形成され、椀型のダイヤフラム50の開口縁部を軸心一方向L1に延設して形成した短円筒状の吐出弁膜部52と、軸心L廻りの円周方向に120度間隔で配設された3つのダイヤフラム50を一体状に連結する軸心直交平面状の横隔膜部54と、を有している。
【0013】
図1図4に於て、ケース部材8は、軸心一方向L1に開口する平面視で3葉のクローバ型の収納空間部80を有し、1つの樹脂成型品から成る。
収納空間部80は、クローバの葉型の小空間部80aを軸心L廻りに等間隔に3つ配設して、軸心L近傍で連通連結している。
収納空間部80内に軸心一方向L1側から、ダイヤフラム集合体5と連結した駆動体7を収納可能に開口している。
1つの小空間部80a内に、ダイヤフラム集合体5のダイヤフラム50及びダイヤフラム駆動軸部53と、駆動体7の保持片部7dと、を収納する。また、平面視で、収納空間部80の中央部に、回転台72と軸部材71と駆動体7の中央部(ボス部7b)を収納する。
【0014】
そして、収納空間部80が開口する開口端面81を、図2に示すように、ダイヤフラム集合体5の横隔膜部54の裏面(軸心他方向L2側の面)54bに直接に当接させて支持するように構成している。
収納空間部80をクローバ型に開口することで、単に1つの大きな円形に開口した場合に比べて、各ダイヤフラム50の周囲の横隔膜部54にC字状に当接し、軸心L廻りに隣り合うダイヤフラム50とダイヤフラム50の間に入り込むように支持し(ダイヤフラム50をC字状に包囲し)、ダイヤフラム集合体5が軸心他方向L2へ撓むのを防止する。
【0015】
また、図2図4に示すように、ケース部材8は、底壁部82に、出力軸91に固着された回転台(クランク台)72が挿通可能な貫通孔83を有している。出力軸91に回転台72を固着した後に、ケース部材8の底壁部82を、モータ9の出力軸側の端面92a(一端壁部92)に当接させて取着可能としている。
【0016】
また、ケース部材8は、底壁部82に、モータ9の一端壁部92に形成したケース取着用ネジ孔93に螺着するケース取着用ネジ76が挿通可能な取付孔84を、1つのみ貫設している。
また、取付孔84の周囲に、底壁部82(の表て面82a)から軸心一方向L1に突設させたネジ用座部85を設けて、肉厚にし、ケース取着用ネジ76を強く締付け可能としている。
【0017】
さらに、ケース部材8は、モータ9の一端壁部92に形成した位置決め用孔部94に差し込まれる位置決め用の差込軸部86を、底壁部82の裏面82bよりも軸心他方向L2に突設している。なお、モータ9の位置決め用孔部94は、図示のような貫通に限らず、ネジ孔や有底孔であっても良い。
【0018】
図2及び図3に示すように、ダイヤフラム集合体5は、ダイヤフラム50の底壁部50bから突出するダイヤフラム駆動軸部53を有している。
ダイヤフラム駆動軸部53は、ダイヤフラム50の底壁部50bから突出する短円柱状のヘッド部53aと、ヘッド部53aから突出して該ヘッド部53aよりも小径の中間軸部53bと、中間軸部53bの軸心他方向L2側端部から膨出状に設けた引掛部53cと、から成る。
【0019】
駆動体7は、ボス部7bの軸心一方向L1側の端部から、平面視で、軸心直交状方向(ラジアル方向)に、放射状に突設される3つの保持片部7dを有している。
保持片部7dに、ダイヤフラム駆動軸部53の中間軸部53bを軸心直交状方向(横方向)から差し込むスリット部7eと、スリット部7eと連続する切欠円形状の係止孔部7fと、を有する平面視で切欠形状の保持孔7aを備えている。
【0020】
図6(a)に示すように、係止孔部7fの内径寸法dを、中間軸部53bの外径寸法Dよりも僅かに小さく設定している。また、スリット部7eの最小スリット幅寸法Wを、中間軸部53bの外径寸法D及び係止孔部7fの内径寸法dよりも小さく形成して、保持孔7aを、平面視で、あり溝状に形成している。
【0021】
図2に於て、蓋体1は、樹脂成形品であって、流体を排出するための吐出路16が、軸心Lを中心として貫設されている。また、軸心Lに対して偏心位置に、流体を吸い込むため吸入路11が貫設されている。吐出口部15に吐出路16の一部が形成されている。吸入口部10に吸入路11の一部が形成されている。また、軸心他方向L2側に、吸入路11と連通すると共に吐出路16を包囲するように環状に凹設された吸込路12と、吸込路12と吐出路16とを区切る円環状の区切壁部17と、を形成している。吸入弁膜集合体2を軸心一方向L1側から押さえるように形成している。
【0022】
吸入弁膜集合体2は、ゴム等の弾性材から一体に形成され、軸心直交平面状の平板部24と、軸心Lを中心として平板部24に形成した吐出孔26と、吐出孔26に対応して設けた舌片状の吐出用逆止弁27と、軸心L廻りの円周方向に120度間隔で平板部24に貫設された3つの吸入孔21と、吸入孔21の開口縁部から軸心他方向L2に延設される短円筒状の吸入弁膜22と、を有している。
【0023】
中蓋体3は、短円柱状の樹脂成形品であって、軸心Lを中心として排出孔36を貫設している。排出孔36の周囲(近傍)から軸心L廻りに複数の支柱部33を軸心他方向L2へ突設させている。また、各支柱部33の軸心他方向L2側端部(突出先端部)に連結して支持される押さえ部37を設けている。押さえ部37は、組立状態に於て、軸心一方向L1側からダイヤフラム集合体5の横隔膜部54の中央部54kに当接して、軸心一方向L1への撓みを防止し、横隔膜部54を平板状に保持する。流体は複数の支柱部33の間を通過して排出孔36から蓋体1側へ流れる。
【0024】
また、中蓋体3は、軸心他方向L2側の面に排出孔36と連通する円形状窪部の排出路39を設けている。排出路39には、軸心L廻りの円周方向に120度間隔で配設されると共に、軸心一方向L1に開口する3つの有底円筒部30が突設されている。有底円筒部30の円筒壁部を、吐出弁膜部52が密着分離自在に接触する吐出弁座部35としている。
また、有底円筒部30の底壁部30bから、軸心一方向L1に突出すると共に、横断面の外形状が円形状の突出部31を設けている。この突出部31の周壁部を、吸入弁膜22が密着分離自在に接触する吸入弁座部32としている。また、この突出部31の周壁部(吸入弁座部32)を、軸心一方向L1へ向かって縮径するテーパ状に形成している。また、吸入弁座部32は縦溝32aを有している。
吐出弁座部35と同心状に吸入弁座部32を配設して、軸心一方向L1に開口する円環状凹溝34を形成している。また、有底円筒部30の底壁部30bに、円環状凹溝34に連通する貫孔38を設けている。吸入弁膜集合体2を軸心他方向L2側から支持すると共に、ダイヤフラム集合体5の横隔膜部54を軸心一方向L1側から押さえるように構成している。
【0025】
上述した本発明の流体用ダイヤフラムポンプの作用を組立工程と共に説明する。
駆動体7と、ダイヤフラム集合体5を連結する駆動軸部連結工程を行う。
図5(a)及び図6(a)に示すように、駆動体7のスリット部7eと、ダイヤフラム集合体5の中間軸部53bを、軸心直交状方向に相互に接近させる。図6(b)に示すように、スリット部7eに、中間軸部53bが弾性変形しつつ、差し込まれる。そして、図6(c)に示すように、係止孔部7fに中間軸部53bが弾性変形して縮径し、その弾性復元力によって、中間軸部53bが係止孔部7fの内周面に圧接する。
さらに、図5(b)に示すように、ダイヤフラム駆動軸部53は、ヘッド部53aによって、軸心他方向L2への抜けが防止されると共に、引掛部53cによって、軸心一方向L1への抜けが防止される。また、スリット部7eの最小スリット幅寸法Wを、中間軸部53bの外径寸法D及び係止孔部7fの内径寸法dよりも小さく形成しているので、ダイヤフラム駆動軸部53がポンプ使用中にスリット部7eから軸心直交状方向へ抜けるのを防止する。
【0026】
ここで、図7及び図8に示す従来例では、駆動軸部連結工程において、リテーナ部材6の貫孔61に、従来のダイヤフラム集合体4のダイヤフラム40及びダイヤフラム駆動軸部43を挿通させ、リテーナ部材6の軸心一方向L1側の面を横隔膜部44に当接させて支持させた後に、従来の駆動体70との連結を開始していた。
さらに、従来の駆動体70の保持孔70aは、円形孔であるため(スリット部7eを有していないため)、図8(a)に示すように、駆動体70の保持孔70aと、ダイヤフラム駆動軸部43を、軸心方向に相互に接近させる。
図8(b)に示すように、引掛部43cから突設した細い棒状のガイド軸部43dを、保持孔70aに挿通させ、ペンチやニッパー等の把持工具にて掴持し、軸心他方向L2へ引っ張る。引掛部43cを大きく弾性変形させつつ保持孔70aを通過させ、中間軸部43bを挿通させ、ヘッド部43aで係止させていた。
その後、図8(c)に示すように、ガイド軸部43dを、カッターやニッパー等の切断工具にて切断していた。
【0027】
つまり、図8に示した従来の駆動軸部連結工程では、保持孔70aに引掛部43cを通過させることが、困難で、手間と時間がかかると共に、従来のダイヤフラム集合体4が損傷する虞れがあった。また、ダイヤフラム駆動軸部43に把持工具にて掴持するためのガイド軸部43dを設ける必要があった。また、ガイド軸部43dを切断すると、切断屑が発生し、従来のケース部材73内に入って、故障の原因となる虞れがあった。また、切断バリが、時間の経過と共に、粉粒状のゴミとなり故障の原因となる虞れもあった。また、ガイド軸部43dの切断作業忘れがあると、回転台72等に接触して、動作が安定しなくなることや故障する虞れがあった。また、把持工具や切断工具、押さえ治具等が必要であった。
しかし、本発明は、保持孔7aがスリット部7eを有しているため、ガイド軸部43dを設ける必要がなく、無理な引っ張りや、切断作業も必要無く、容易かつ迅速に連結できると共に、製造工程が原因の故障の発生が抑えられ、品質が安定する。
【0028】
次に、図1及び図2に於て、ケース部材8とモータ9を取着するための収納部組立工程は、先ず、モータ9の出力軸91を回転台72の中心孔72b(図2参照)に差し込んで固着する。その後、ケース部材8の底壁部82の貫通孔83に、回転台72及び出力軸91を軸心他方向L2側から挿通させる。そして、ケース部材8の差込軸部86を、モータ9の位置決め用孔部94に差し込んで、位置決めを行う。収納空間部80内からケース取着用ネジ76を取付孔84に挿通させると共にモータ9のケース取着用ネジ孔93に螺着して、ケース部材8とモータ9を固着する。
つまり、回転台72を、開放された広い空間で、容易に出力軸91に固着できる。また、ケース取着用ネジ76を1本だけ螺着すれば良いので、部品点数を減少できると共に組立工数を減少させることができ、作業効率を向上できる。
【0029】
そして、駆動軸部連結工程及び収納部組立工程が終了した後、ケース部材8の収納空間部80内で、駆動体7に固着している軸部材71の他端71bを回転台72の偏心孔72aに差し込む。さらに、駆動体7と連結しているダイヤフラム集合体5の横隔膜部54の裏面54bを、ケース部材8の開口端面81に当接させて、ケース部材8によって直接に、ダイヤフラム集合体5を支持して、駆動機構組立工程を終了する。
【0030】
駆動機構組立工程を終了後に、ダイヤフラム集合体5の横隔膜部54の軸心一方向L1側の面(表て面)54aに、中蓋体3と、吸入弁膜集合体2と、蓋体1と、を順次積層状に配設して、蓋取着用のネジ75を蓋体1と中蓋体3とに挿通させた後、ケース部材8に螺着して、組立工程を終了する。
図2に示すように、ダイヤフラム50と中蓋体3に囲まれた3つのポンプ室Pが形成される。また、吸入路11、吸込路12、吸入孔21、円環状凹溝34、貫孔38、から成る吸入流路が形成されると共に、吸入弁膜22と吸入弁座部32とから成る吸入弁が吸入流路に介設される。また、吐出路16、吐出孔26、排出孔36、排出路39、から成る吐出流路が形成されると共に、吐出弁膜部52と吐出弁座部35とから成る吐出弁が吐出流路に介設される。
また、3つの円環状凹溝34は互いに連通しておらず、吸入弁を介して吸込路12と連通可能である。また、円環状凹溝34は、貫孔38を介して対応するポンプ室Pと連通している。
また、出力軸91の回転により駆動体7が揺動し、ダイヤフラム駆動軸部53をピストン運動させ、ダイヤフラム50を圧縮・膨張可能となる。
【0031】
そして、ポンプ室Pが圧縮状態から膨張した場合は、ポンプ室P内が負圧となって、負圧によって引き寄せられる流体が吸入弁膜22を吸入弁座部32から分離させ、吸込路12とポンプ室Pとを開通状態にする。負圧作用により流体は吸入流路を流れポンプ室Pに流入する。また、吐出弁膜部52は、負圧により吐出弁座部35に吸い寄せられ圧接する。排出路39からポンプ室Pへの流体の浸入を防止する。
【0032】
ポンプ室Pが圧縮した場合は、ポンプ室P内の流体が、吐出弁膜部52を、押圧して吐出弁座部35から離間させ、排出路39とポンプ室Pが開通状態となりポンプ室P内の流体が吐出路16から排出される。また、ポンプ室Pの圧縮により、円環状凹溝34内の流体が、吸入弁膜22を吸入弁座部32に圧接させる。吸入弁は吸入流路を遮断状態とし流体が吸込路12へ流出するのを防止する。
【0033】
次に、図示省略するが、他の実施形態は、4つのダイヤフラム50を円周方向に90度等間隔で配設してダイヤフラム集合体5を形成し、ケース部材8の収納空間部80を、4葉のクローバ型に形成する。つまり、ダイヤフラム50の数に対応するように、ケース部材8にクローバの葉型の小空間部80aを4つ設ける。そして、駆動体4の保持片部7dを放射状に4つ設け、さらに、吸入弁膜集合体2の吸入弁膜22と、中蓋体3の吸入弁座部32及び吐出弁座部35と、を夫々4つ設ける。他の構成及び作用効果は図1乃至図6の実施形態と同様である。
【0034】
なお、本発明は設計変更可能であって、蓋体1と吸入弁膜集合体2と中蓋体3の構成や、吐出流路と吸入流路の構造や、吸入弁及び吸入弁座部の構造や、吐出弁及び吐出弁座部の構造は、自由である。例えば、ダイヤフラム集合体5の吐出弁膜部52及び吸入弁膜集合体2の吸入弁膜22は円筒状に限らず、舌片状とするも良い。吸入弁膜集合体2を省略して、ダイヤフラム集合体5に、吸入弁部を形成したものであっても良い。
【0035】
以上のように、本発明は、軸心一方向L1に開口する3つ又は4つのダイヤフラム50とダイヤフラム50を円周等分配に一体状に連結する軸心直交平面状の横隔膜部54とを有するダイヤフラム集合体5と、モータ9の出力軸91が軸心他方向L2側から差し込まれるケース部材8と、を備えた流体用ダイヤフラムに於て、ケース部材8は、軸心一方向L1に開口する、3葉又は4葉のクローバ型の収納空間部80を有し、ダイヤフラム集合体5の横隔膜部54を、ケース部材8の収納空間部80が開口する開口端面81で支持するように構成したので、部品点数を少なくできると共に組立が容易にできる。部材の製造工数や組立工数を少なくできると共に作業効率が向上し製造コストを大幅に削減できる。収納空間部80を単に1つの大きな円形に開口した場合に比べて、軸心L廻りに(周方向に)隣り合うダイヤフラム50とダイヤフラム50の間に入り込むように支持でき、ダイヤフラム集合体5が軸心他方向L2へ撓むのを確実に防止できる。
【0036】
また、ダイヤフラム50の底壁部50bから突出するダイヤフラム駆動軸部53を保持してピストン運動させるための駆動体7を備え、駆動体7は、ダイヤフラム駆動軸部53を軸心直交状方向から差し込むスリット部7eを有する保持孔7aを備えているので、ダイヤフラム集合体5と駆動体7の連結を容易かつ迅速にできる。組立工数が減少し、作業効率が向上して製造コストを削減できる。組立工程が原因の不具合品の発生を抑制できる。
【符号の説明】
【0037】
5 ダイヤフラム集合体
7 駆動体
7a 保持孔
7e スリット部
8 ケース部材
9 モータ
50 ダイヤフラム
50b 底壁部
53 ダイヤフラム駆動軸部
54 横隔膜部
80 収納空間部
81 開口端面
91 出力軸
軸心
L1 軸心一方向
L2 軸心他方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8