(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057975
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】光伝送システムの電子非線形性補償
(51)【国際特許分類】
H04B 10/2507 20130101AFI20161226BHJP
H04B 10/61 20130101ALI20161226BHJP
【FI】
H04B9/00 251
H04B9/00 610
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-240955(P2014-240955)
(22)【出願日】2014年11月28日
(62)【分割の表示】特願2013-505027(P2013-505027)の分割
【原出願日】2011年4月12日
(65)【公開番号】特開2015-92683(P2015-92683A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2014年12月25日
(31)【優先権主張番号】12/762,127
(32)【優先日】2010年4月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チヨンジン・シエ
(72)【発明者】
【氏名】ルネ−ジヤン・エツシーアンブレ
【審査官】
後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−226254(JP,A)
【文献】
特開2010−050578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号のデジタル形式を前置補償するための第1の電子波長分散補償モジュールと、
第1の電子波長分散補償モジュールの出力を直列に補償するための少なくとも1つの非線形性補償段と、
少なくとも1つの非線形性補償段のうちの最後の非線形性補償段の電子波長分散補償器の出力を補償するための第2の電子波長分散補償モジュールと、
を含む、入力信号のデジタル形式を処理するように構成されたデジタル信号処理装置を具備し、
少なくとも1つの非線形性補償段のうちの少なくとも1つは、
電子非線形性補償器と、
電子波長分散補償器と、
を備える、受信機。
【請求項2】
第2の電子波長分散補償モジュールが、少なくとも1つの非線形性補償段の少なくとも1つのための電子波長分散補償を施すように構成された、請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
入力信号に対応する非線形位相回転の大きさを調整するためのパラメータが各非線形性補償段について同一である、請求項1に記載の受信機。
【請求項4】
パラメータが、1つまたは複数のファイバスパンにおける電力発生、および1つまたは複数のファイバスパンのファイバ損失係数に基づく、請求項3に記載の受信機。
【請求項5】
少なくとも1つの非線形性補償段の少なくとも1つによって施される非線形性補償が、平均総電子位相偏移、非線形性補償段数、電気信号電力に基づく、請求項1に記載の受信機。
【請求項6】
少なくとも1つの非線形性補償段のうちの最後の非線形性補償段は、電子非線形性補償器を備え、第2の電子波長分散補償モジュールは、少なくとも1つの非線形性補償段のうちの最後の非線形性補償段に対する電子波長分散補償を施すようにさらに構成されている、請求項1に記載の受信機。
【請求項7】
受信機において入力信号のデジタル形式を処理するための方法において、
入力信号のデジタル形式に第1の電子波長分散前置補償を実施することと、
少なくとも1つの非線形性補償段を使って第1の電子波長分散補償の出力を補償することと、
少なくとも1つの非線形性補償段のうちの最後の非線形性補償段の電子波長分散補償器の出力の第2の電子波長分散補償を実施することとを含み、
少なくとも1つの非線形性補償段を使って第1の電子波長分散補償の出力を補償することは、
第1の電子波長分散補償の出力に非線形性補償を実施することと、
第1の電子波長分散補償の非線形性補償された出力にさらなる電子波長分散補償を実施することとを含む、方法。
【請求項8】
少なくとも1つの非線形性補償段を使って第1の電子波長分散補償の出力を補償することが、
複数の非線形性補償段を通して第1の電子波長分散補償の出力を直列に処理することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの非線形性補償段の出力に第2の電子波長分散補償を実施することは、
少なくとも1つの非線形性補償段のうちの最後の非線形性補償段に対して電子波長分散補償を実施することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
入力信号に対応する非線形位相回転の大きさを調整するためのパラメータが各非線形性補償段について同一であり、このパラメータが、1つまたは複数のファイバスパンにおける電力発生、および1つまたは複数のファイバスパンのファイバ損失係数に基づく、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光伝送システムに関し、より詳細には、光伝送システムの電子非線形性補償のためのシステム、装置、技術に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分散(CD)は光ファイバの設計によって与えられる決定論的な歪みである。CDは、光位相の周波数依存性をもたらし、また、送信信号スケールに対して、帯域幅消費に関しまたは同等にデータレートに関し二次関数的な影響をもたらす。したがって、信号のデータレートを4倍に増加させると、CD耐力は1/16に減少する。2.5Gb/sのデータレートまでは、長距離搬送であっても、CDの補償全くなしに光データ伝送が可能である。10Gb/sでは波長分散の考慮が必要になり、分散補償ファイバ(DCF)がしばしば使用される。40Gb/sおよびそれより大きい場合では、DCF適用後でも、光通信を可能にするには残留CDがいまだに大き過ぎることがある。
【0003】
光伝送において経験される別の伝送障害に偏光モード分散(PMD)がある。これは、製造および敷設における不備を原因とする、光ファイバの確率特性である。1990年以前のファイバは、0.1ps/√kmを優に超える高PMD値を示し、それらの値は、10Gb/sの場合でも境界線である。より新しいファイバのPMDは、0.1ps/√kmに満たない。しかし、再構成可能なアド/ドロップマルチプレクサ(ROADM)などファイバリンク内のその他の光学部品は、実質的なPMDを引き起こすことがある。より古いファイバリンク上または多くのROADMを有する新しいファイバリンク上で40Gb/sシステムを動作させる場合、PMDは重大な有害要因となることがある。
【0004】
PMDは、ファイバとは逆の伝送特性を有する光学素子によって補償され得る。しかし、数キロヘルツの範囲までの高速な変化速度を有するPMDの統計的性質のために、光学PMD補償器の実現は困難である。チャネルデータレートの増加に伴い、光信号は、CDやPMDなどによる光ファイバ内の伝送障害によってますます制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、デジタルコヒーレント検出は、100−Gb/sイーサネット(登録商標)、テラビットイーサネットおよびその他の次世代光伝送システムなど、将来の高速光伝送のための有望な技術とみなされている。デジタル信号処理を使った光コヒーレント検出は、その高い受信機感度、および高速伝送のパフォーマンスに重大な影響を与える伝送障害を補償する能力のために、光ネットワークのための有望な技術とみなされている。それは、デジタル信号処理を使用して、電気領域中の波長分散(CD)および偏光モード分散(PMD)などのほとんどの線形な効果を効果的に補償することができ、また、直接検出に比べ、低所要光信号対雑音比(OSNR)および高スペクトル効率を提供する。コヒーレント受信機におけるデジタル信号処理は、ファイバの非線形効果を部分的に補償できることも示されている。しかし、ファイバの非線形効果の複雑さのために、ファイバの非線形性を補償することは簡単ではない。
【0006】
最近、単純な電力依存非線形位相回転法やより複雑な逆伝播法を含む、コヒーレント受信機におけるデジタル信号処理を使った電子非線形性補償に注目が向けられている。しかし、これらの方法は、効果的ではないか、完全に効果的とはいえないか、複雑すぎるかのいずれかである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の主題のいくつかの態様を理解できるように、以下に開示の主題の簡略化した概要を提示する。本概要は、開示の主題の網羅的な概観ではなく、また、開示の主題の範囲を詳細に描写しないために開示の主題の重要または重大な要素を識別することを意図したものでもない。その唯一の目的は、後述のより詳細な説明の前置きとして、いくつかの概念を簡略化された形で提示することである。
【0008】
コヒーレント受信機において使用するための電子非線形性補償方法が提供されている。これらの方法は、受信機における非線形性補償の効率を高め、また、伝送システムのパフォーマンスを改善する。このような方法は、電子非線形性補償のために使用される非線形性補償器段の数の削減を可能にし、それによって受信機の複雑さおよびコストを著しく削減することができる。
【0009】
例示的一実施形態は、入力信号のデジタル形式を処理するように構成されたデジタル信号処理装置を含む受信機である。デジタル信号処理装置は、入力信号のデジタル形式を補償するための第1の電子波長分散補償モジュールと、電子波長分散補償モジュールの出力を直列に補償するための少なくとも1つの非線形性補償段と、少なくとも1つの非線形性補償段の出力を補償するための第2の電子波長分散補償モジュールとを含む。
【0010】
光信号の効率的デジタル検出のために、システム、方法、装置の実施形態が提供される。例示的実施形態はまた、光信号中の変調搬送波によって搬送されたデータを再生するためにデジタル検出および補償されたデジタル信号のさらなる処理を行うステップおよび構造を含むことができる。
【0011】
一実施形態では、受信機が、少なくとも1つの非線形性補償器(NLC)段において電子分散管理を含み、NLC段(場合により複数)に先立って電子CD前置補償を実施し、NLC段(場合により複数)の後にCD後置補償を実施する。受信機には、各NLC段について同一または異なる電子波長分散補償器(ECD)値を設定することができる。本説明を通して、ECDのCDの符号に関する制約は一切ない。正の場合も負の場合もあり、必ずしもファイバスパンに累積されたCDの逆の符号であるとは限らない。
【0012】
例示的実施形態は、本明細書で以下に記載する詳細な説明および添付の図面からより十分に理解されよう。図面では同様の要素は同様の参照番号で表されているが、それらは単に例示するために与えられたものにすぎず、したがって、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来技術による多段電子非線形性補償器(NLC)を有する例示的受信機の概略図である。
【
図2】従来技術による多段電子NLCを有する別の例示的受信機の概略図である。
【
図3】例示的波長分割多重(WDM)光伝送システムの概略図である。
【
図4】多搬送波光信号を受信するための本発明による段階的電子NLCの実施形態を含む、本発明による例示的受信機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら、さまざまな例示的実施形態をより十分に説明する。本明細書で開示される具体的な構造上および機能上の詳細は、例示的実施形態を説明する目的のための典型にすぎないことに注意されたい。例示的実施形態は、多くの代替形態でも実施することができ、本明細書で示す実施形態のみに限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0015】
本明細書では、さまざまな要素を説明するために、最初の、2番目の、などという用語が使用されることがあるが、そのような用語は1つの要素を別の要素と区別するために使用されているのにすぎないため、それらの要素がそれらの用語によって限定されるべきものではないことを理解されよう。たとえば、例示的実施形態の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができるし、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。説明の中で使用されているように、「および」という用語は、接続的な意味と分離的な意味の両方で使用され、関連付けられた列挙項目の1つまたは複数の組み合わせのいずれかおよびすべてを含む。「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数のその他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことをさらに理解されよう。
【0016】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、例示的実施形態が属する当技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。いくつかの代替実装においては、示された機能/行為が図に示された順序ではなく生じることがあることにも注意されたい。たとえば、関係している機能性/行為によっては、連続して示された2つの図が実際には実質的に同時に実行されることがあり、または、場合によっては逆の順序で実行されることがある。
【0017】
図1は、従来技術による多段電子NLCを有する例示的受信機の概略図である。受信機100において、光信号102は、偏光位相ダイバーシティハイブリッド110によって局部発信器104で混合される。複数の光検出器120は、偏光位相ダイバーシティ光ハイブリッドの出力信号を検出する。これらの光検出器は、平衡検出器、シングルエンド検出器、またはそれらの組み合わせであってよい。その後、複数のアナログデジタル変換器(A/D)130が、複数の光検出器からの検出された出力信号をデジタル形式に変換する。デジタル形式は、光信号102中の変調搬送波によって搬送されたデータを再生するために、検出されたデジタル信号の処理のためデジタル信号処理装置(DSP)140に供給される。
【0018】
デジタル形式は、多段NLC150に供給される。多段NLC150は、N個のNLC段152を含み、この場合Nは1よりも大きい、または1に等しい整数である(たとえば、段1、段2、・・・段N)。
図1に図示する各NLC段において、デジタル形式はNLC154に、次いで電子CD補償器(ECD)156に供給される。デジタル形式は、各NLC段によって直列に補償される。たとえば、デジタル形式はまず第1のNLC段(すなわち、NLC
1154およびECD
1156)によって補償され、その補償されたデジタル形式が、次に第2のNLC段(すなわちNLC
2およびECD
2)(図示せず)によって補償され、というように、順に、補償されたデジタル形式が次にN番目のNLC段(すなわちNLC
NおよびECD
N)によって補償されるまで補償が行われる。多段NLC150によって非線形補償が施された後、N回補償されたデジタル形式は、偏光デマルチプレクサ160、搬送波位相推定器170、シンボル識別/前方誤り訂正(FEC)のためのモジュール180に供給される。偏光逆多重化等化器「Pol.Demux Eq.」は、偏光逆多重化、PMD補償(PMDC)、信号の等化を同時に実施し、これには、たとえばフィルタリングからのスペクトル狭窄化の補償および適量の波長分散の補償が含まれる。搬送波位相推定器「Carrier Phase Est.」は、搬送波位相の推定を行う。シンボル識別/前方誤り訂正(FEC)「Symb. Ident. FEC」は、検出されたシンボルから受信ビットを識別し、FECを実施する。
【0019】
多段NLCの各段において、NLCがECDの後か、またはECDがNLCの後かのどちらかである。したがって、
図2は、各段においてNLCがECDの後である、従来技術による多段非線形性補償器を備えた代替の例示的受信機を図示する。
【0020】
これらの従来技術の多段NLCは、ファイバ非線形効果の補償において完全に効果的とはいえない。これらの従来技術の実施形態の1つの欠点は、多段NLCの各段が同じ、すなわち、非線形位相回転およびCDの大きさを調整するためのパラメータが各段で同一であることである。多段NLCを含む従来技術の受信機の実施形態のさらなる欠点は、多段NLCの前および/または後で電子分散の管理が全くなされないことである。
【0021】
図3は、例示的波長分割多重(WDM)光コヒーレント光伝送システム300の概略図である。複数の送信機TX
1、TX
2、・・・TX
k310は、それぞれ、マルチプレクサ320に供給されるチャネルを提供する。送信機のどの1つでも偏波分割多重(PDM)方式による位相偏移変調(PSK)やPDM直交振幅変調(QAM)などのさまざまな変調スキームのいずれかを利用することができる。
【0022】
多重化された信号は増幅器330によって増幅され、伝送リンク340に挿入される。オプションの光分散補償器(ODC)322は、光信号の伝送リンクへの挿入に先立って分散前置補償を施すことができる。伝送リンクは、M個のスパン340を有し、この場合Mは1よりも大きいまたは1に等しい整数である。各スパンは、ファイバスパン342、増幅器344、およびオプションでODC346を含む。ファイバは非線形媒体であり、したがって関連付けられた非線形係数を有する。したがって、伝送リンクは、インラインODCおよび光前置補償を備えた、分散が管理されたリンクのことがあり、または非補償型リンク(ODCを備えない)のことがある。一実施形態では、増幅器がエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)である。別の実施形態では、増幅器がラマンベースの増幅器である。さらに別の実施形態では、分散ラマン増幅が利用される。増幅スキームは、ファイバスパン(場合により複数)に沿った信号電力発生に影響を及ぼす。
【0023】
伝送リンク340を構成するM個のスパンを横断した後、光信号は波長逆多重化のためにデマルチプレクサ350に供給され、逆多重化された信号は、個々のチャネルの再生のために複数の受信機RX
1、RX
2、・・・RX
k360に供給される。伝送リンクは、概して、自己位相変調(SPM)、CD、PMDなどのファイバ非線形性を被る。一実施形態では、伝送システムはまた、伝送リンクを介して接続された1台の送信機と受信機を備える単一チャネルシステムのこともある。
【0024】
図示の伝送システムのためのCDは、次のようにモデル化することができる:各スパンにおける伝送ファイバ中のCDはCD
transである。分散が管理されたシステムでは、各スパン340に、CDがCD
odcである光分散補償器(ODC)346がある。分散が管理されたシステムにおける1スパン当たりの残留分散(RDPS)はCD
RDPS=CD
trans+CD
odcであり、ODCを備えないシステムではCD
RDPS=CD
transである。分散が管理されたシステムについては、光信号の伝送リンクへの挿入に先立ってODC322により供給される分散前置補償のためのCD
preがある場合もある。
【0025】
図4は、光信号を受信するための本発明による段階的電子NLCの実施形態を含む、本発明による例示的受信機の概略図である。A/D130からのデジタル形式は、チャネルによって搬送された光信号102中の変調搬送波によって搬送されたデータを再生するために、検出されたデジタル信号の処理のためのデジタル信号処理装置(DSP)440に供給される。一実施形態では、受信機は光コヒーレント受信機である。
【0026】
DSP440は、本明細書で説明するように、段階的NLC450を含む。段階的非線形性補償器450は、入力信号のデジタル形式を補償するための第1の電子CD補償モジュール(ECD
0)451を含む。ECD
0の出力は、直列補償のため、少なくとも1つの非線形性補償段452、462に供給される(
図4には段1、452および段N、462が図示されている)。その後、少なくとも1つの非線形性補償段の出力は、さらなるCD補償のために第2の電子CD補償モジュール(ECD
N+1)458に供給される。
【0027】
最初のECD(ECD
0)451は、ADCによって供給されるデジタル形式を補償する。段階的NLC中の各NLC段452、462は、次いで、そのデジタル形式を直列に補償する。たとえば、最初のECDの後のデジタル形式は、まず第1のNLC段452(すなわち、NLC
1454およびECD
1456)によって補償され、その補償されたデジタル形式は次に第2のNLC段(すなわちNLC
2およびECD
2)(図示せず)によって補償され、というように、順に、直列に補償されたデジタル形式が次にN番目のNLC段462(すなわちNLC
N464およびECD
N466)によって補償されるまで補償が行われる。したがって、一実施形態では、各NLC段がNLCおよびECDを含む。
【0028】
NLC段452、462によって非線形補償が施された後、N回補償されたデジタル形式は、さらなるCD補償のために第2のECDモジュール(ECD
N+1)458に供給される。このように補償された信号は、次いで、受信光信号の最終的な再生のために、偏光デマルチプレクサ160、搬送波位相推定器170、シンボル識別/前方誤り訂正(FEC)180モジュールに供給される。
【0029】
一実施形態では、段階的電子NLC450はN個の段452を有し、この場合、Nはスパン数M(
図3に示す)よりも大きくなく、各段は1つのNLC454および1つのECD456を有する。各段のECD(ECD
1からECD
N)は、−M/N・CD
RDPSのCDを供給し、この場合、CD
RDPSは、
図3に示すように伝送リンク中のRDPSである。ECDの機能は、CD補償を施すことであり、次の関数に従って実施される:
【0030】
【数1】
上式で、CDはECDが補償するCDの値であり、λは信号波長であり、cは真空中の光の速度であり、ωは角周波数である。
【0031】
図4にはECD
0451も図示されており、これは、第1のNLC段452の前に位置し、調整可能であり、また、電子前置補償とみなされ得る。さらに
図1にはECD
N+1が図示されており、これは、最後のNLC段の後に位置し、総CD(光CDと電子CDの合計)をゼロに近づけ、電子後置補償としての働きをするために利用される。ECD
N+1およびECD
Nを、ECD
NおよびECD
N+1によって必要とされる補償が単一のECDによって施される1つの電子分散補償器とみなせることに注意されたい。このような実施形態では、少なくとも1つの非線形性補償段(たとえば、最終段である段N)の少なくとも1つのための電子波長分散補償が、電子後置補償を施す同じECDによって施される。
【0032】
Nがスパン数Mよりも大きくない場合、各NLCは以下の非線形位相回転を実施する:
【0033】
【数2】
上式で、E
xおよびE
yはx偏光およびy偏光における入力電界(ファイバ中の光場に比例)であり、E’
xおよびE’
yは非線形性補償の出力における対応電界であり、χは非線形位相回転の大きさを調整するためのパラメータであり、各NLCで同一である。
【0034】
χは、システムのパフォーマンスを監視するいくつかのフィードバック信号で調整可能であり、もしくは、1つまたは複数のファイバスパンにおける電力発生および1つまたは複数のファイバスパンのファイバ非線形係数に関連する所与の総所要電子位相偏移
【0035】
【数3】
に対して以下の等式に従って設定可能である:
【0037】
【数5】
は時間平均である。たとえば、スパンの分散、スパンの非線形性、起動電力、スパン損失などの伝送リンクに関連付けられた1つまたは複数のパラメータのフィードバックをルックアップテーブルと併せて利用して、非線形位相回転の大きさを調整するために使用されるパラメータの適切な設定値を決定することができる。上記の等式に示すように、施される非線形性補償は、平均総電子位相偏移、非線形性補償段数、電気信号電力に基づいている。
【0038】
再び
図4を参照すると、本発明による段階的電子NLCの別の実施形態を含む、光信号を受信するための別の例示的受信機において、NLC段の数は、伝送リンク中のスパン数よりも大きい。すなわちN>Mである。受信光信号が多搬送波光信号の場合があることに注意されたい。本実施形態では、N段がMブロックに分割され、各ブロックはn段を有し、この場合、N=n×Mである。ここで、各スパンは1ブロックに対応し、MスパンとMブロックがある。各ブロックECD
1からECD
n−1は、−CD
trans/nのCDを施し、ECD
nは−(CD
trans/n+CD
odc)のCDを施す。各ブロックの各NLCは、次の非線形位相回転を実施する:
【0039】
【数6】
上式で、E
xおよびE
yはx偏光およびy偏光における入力電界であり、E’
xおよびE’
yは非線形性補償の出力における対応電界であり、χ
iは各ブロックのi番目の段における非線形位相回転の大きさを調整するためのパラメータであり、そのパラメータは各段で異なってもよい。
【0040】
χ
iは、システムのパフォーマンスを監視するフィードバック信号に従って調整可能であり、または、所与の総所要電子位相偏移のための以下の等式に従って設定可能である:
【0043】
【数9】
上式で、i=2,・・・,n、L
spanはスパン長、αはファイバ損失係数である。
【0044】
図示のように、ECD
0は第1の段の前にも施され、調整可能であり、電子前置補償とみなされ得る。ECD
N+1は、最後の段の後に施され、電子後置補償として働き、総CD(光CDと電子CDの合計)をゼロに近づける役目を果たす。ECD
N+1とECD
N(最後のブロックの最後の段のECD)が1つの電子分散補償器によって施されるとみなされ得ることに注意されたい。
【0045】
段階的NLC450によって非線形補償が施された後、そのように補償されたデジタル形式は、偏光デマルチプレクサ160、搬送波位相推定器170、シンボル識別/前方誤り訂正(FEC)のためのモジュール180に供給される。デジタル信号処理装置(DSP)は、光信号に対応する変調搬送波(場合により複数)によって搬送されたデータを再生するために、検出された出力信号のデジタル形式を処理する。
【0046】
一実施形態では、DSP440は、その他の伝送障害を補償するようにさらに構成される。それらの伝送障害には、PMDおよびフィルタリング効果が含まれ得る。したがって、DSPは、定モジュラスアルゴリズム(CMA)またはその他のアルゴリズムを使用する動的等化モジュール、搬送波分離モジュール、周波数推定/補償モジュール、位相推定/補償モジュール、復調モジュール、受信光信号を処理するためのデータ再生モジュールのうち少なくとも1つを含むことができる。名称を挙げたモジュールは、モジュールの記載名を実装するのに必要な処理を実施することに注意されたい。たとえば、データ再生モジュールは、変調搬送波などによって搬送されたデータを再生する。
【0047】
例示的方法に関して上記に説明したさまざまな機能は、たとえばソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアのプログラミングにおいて具現化される適切な命令のもとで動作する、専用または汎用のデジタル情報処理デバイスによって容易に実行される。たとえば、DSPおよびその他の論理回路の機能モジュールは、半導体技術で構築されるASIC(特定用途向け集積回路)として実装可能であり、また、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはその他のいかなるハードウェアブロックで実装してもよい。