【文献】
2万5千分1地形図の読み方・使い方:万年雪,国土地理院,2014年 6月 2日,アーカイブ確認日2009年1月15日,URL,http://web.archive.org/web/20090115213906/http://www.gsi.go.jp/KIDS/map-sign-tizukigou-h12-02-03mannenyuki.htm
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0014】
<構成>
図1は本発明の一実施形態にかかるシステムの構成例を示す図である。
【0015】
図1において、システムは、インターネット等のネットワーク1に、ユーザが操作するスマートフォン、携帯電話、PC(Personal Computer)等の端末装置2が複数接続されている。端末装置2は、一般的なブラウザ(Webブラウザ)21を備えている。ブラウザ21は、インターネットの標準プロトコルであるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)等に従い、HTML(Hyper Text Markup Language)等の言語で記述されたページデータの要求・取得・表示およびフォームデータの送信等を行う機能を有している。
【0016】
一方、ネットワーク1には、端末装置2からの要求に応じて当該端末装置2に対して地図情報を提供する地図情報提供装置3が接続されている。
【0017】
端末装置2および地図情報提供装置3は、一般的なコンピュータ装置のハードウェア構成を有している。
【0018】
地図情報提供装置3は、機能部として、初期色付けテーブル生成部301と色付けテーブル季節補正部302と色付けテーブル特定事象補正部303と地図配信要求受付部304と地図描画部305と地図配信部306とを備えている。
【0019】
これらの機能部は、地図情報提供装置3を構成するコンピュータ装置のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のハードウェア資源上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されるものである。これらの機能部は、単一のコンピュータ装置上に配置される必要はなく、必要に応じて分散される形態であってもよい。
【0020】
また、地図情報提供装置3が利用するデータとして、色付けテーブル311とベクトル地図データ312と地図デザインデータ313とが設けられている。これらは、地図情報提供装置3を構成するコンピュータ装置内のHDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体上の記憶領域に所定の形式で保持される。なお、色付けテーブル311とベクトル地図データ312と地図デザインデータ313は必ずしも地図情報提供装置3内に配置する必要はなく、他のコンピュータ装置上に配置してもよい。
【0021】
図2は色付けテーブル311のデータ構造例を示す図であり、「緯度」「標高」「色情報(RGB)」等の項目(フィールド)を有している。「緯度」は、地図上の所定の地点の緯度を示す情報である。「標高」は、当該地点の標高を示す情報である。「色情報(RGB)」は、当該緯度および当該標高の地図上に色付けする色を示す情報である。
【0022】
図1に戻り、ベクトル地図データ312は、地図の描画対象となるポイント(点)、ライン(線)、ポリゴン(面)および属性等を、階層化された地理的範囲に対応して保持したものである。地図デザインデータ313は、「図式」とも呼ばれ、道路の太さや色などの指定を保持したものである。
【0023】
初期色付けテーブル生成部301は、所定のタイミングで処理を行ない、初期状態の色付けテーブル311を生成する機能を有している。初期色付けテーブル生成部301での処理には、自動で行われる部分と、手動により補正が行われる部分とが含まれる。
【0024】
色付けテーブル季節補正部302は、初期状態もしくは既に補正が行われた色付けテーブル311に対して、季節に応じた補正、例えば、冬の地域については拡大した積雪部分についての色付けや、夏の地域については拡大した緑地部分についての色付け等のための補正を行なう機能を有している。色付けテーブル季節補正部302での処理には、自動で行われる部分と、手動により補正が行われる部分とが含まれる。季節に応じた補正を行わない場合、色付けテーブル季節補正部302は省略することができる。
【0025】
色付けテーブル特定事象補正部303は、初期状態もしくは既に補正が行われた色付けテーブル311に対して、特定の事象、例えば、桜の開花状態を示す色付けや、紅葉の状態を示す色付け等のための補正を行なう機能を有している。色付けテーブル特定事象補正部303での処理には、自動で行われる部分と、手動により補正が行われる部分とが含まれる。特定の事象に応じた補正を行わない場合、色付けテーブル特定事象補正部303は省略することができる。
【0026】
地図配信要求受付部304は、端末装置2のブラウザ21から地図表示のための配信要求を受け付ける機能を有している。
【0027】
地図描画部305は、ユーザにより指定された表示地域について、指定されたズームレベル(整数値)およびユーザ希望拡大率に従い、色付けテーブル311、ベクトル地図データ312および地図デザインデータ313から地図画像を描画(ラスタライズ)して生成する機能を有している。処理の詳細については後述する。ユーザ希望拡大率は、飛び飛びの値であるズームレベルの間(指定されたズームレベルと次のズームレベルの間)のユーザの希望する拡大率である。ズームレベルとユーザ希望拡大率の指定は、例えば、スライド可能なゲージを表示したユーザインタフェースにより行われる。
【0028】
地図配信部306は、地図描画部305により生成(描画)された地図画像をページにレイアウトし、要求元の端末装置2のブラウザ21に送信する機能を有している。
【0029】
<動作>
図3は初期色付けテーブル生成部301による初期色付けテーブル作成の処理例を示すフローチャートである。
【0030】
図3において、先ず、初期色付けテーブル生成部301は、緯度0°(赤道)における万年雪の下限の標高を取得する(ステップS101)。これは、予め式で計算した設定値を保持しておいて単に取得してもよいし、所定の式でその都度に算出してもよい。
【0031】
一般に、万年雪は気温が−10°C未満になっていることが条件とされており、赤道の海抜0mでの平均気温を仮に27°C(シンガポールは緯度1°、標高5mで年間平均気温が27.4°C)とすると、標高が100m上がると0.65°C気温が下がるという事実から、標高をhとすると、
−10 = 27 − 0.65 / 100 × h
をhについて解けばよく、
h = (27 + 10) / 0.65 × 100 ≒ 5692
となり、大雑把な値として、緯度0°(赤道)における万年雪の下限の標高は6000m程度となる。
【0032】
次いで、初期色付けテーブル生成部301は、緯度0°(赤道)における森林限界の標高を取得する(ステップS102)。これは、予め式で計算した設定値を保持しておいて単に取得してもよいし、所定の式でその都度に算出してもよい。
【0033】
一般に、森林限界は気温が5.5°C〜7.5°Cが条件とされており、間を取って6.5°Cとし、万年雪の場合と同様に、
6.5 = 27 − 0.65 / 100 × h
をhについて解くと、
h = (27 − 6.5) / 0.65 × 100 ≒ 3154
となり、大雑把な値として、緯度0°(赤道)における森林限界の標高は3500m程度となる。
【0034】
次いで、初期色付けテーブル生成部301は、緯度に対する相対日射量(緯度0°(赤道)における日射量に対する比率)を取得する(ステップS103)。これは、予め式で計算した設定値を保持しておいて単に取得してもよいし、所定の式でその都度に算出してもよい。
【0035】
図4は日射量の計算の説明図であり、赤道の近傍の帯状の領域の日射量を「1」とすると、緯度λの点Pの近傍の帯状の領域の日射量(相対日射量)は、
相対日射量 = cos
2 λ
となる。
【0036】
図5は緯度と相対日射量の関係を示す図であり、横軸は緯度、縦軸は相対日射量を示している。緯度が大きくなるにつれ、下降していく曲線となる。
【0037】
図3に戻り、初期色付けテーブル生成部301は、緯度0°(赤道)における万年雪の下限の標高に緯度毎の相対日射量を乗算し、緯度と標高の曲線式を生成する(ステップS104)。曲線式は直線式の組み合わせでもよい。
【0038】
次いで、初期色付けテーブル生成部301は、緯度0°(赤道)における森林限界の標高に緯度毎の相対日射量を乗算し、緯度と標高の曲線式を生成する(ステップS105)。曲線式は直線式の組み合わせでもよい。
【0039】
次いで、初期色付けテーブル生成部301は、実際の気象データ等を入力し、それに基づき、上記の曲線式(緯度に対する万年雪の下限と森林限界の標高)を修正する(ステップS106)。なお、色付けテーブル311の生成後に、所定のユーザインタフェースにより手動で修正してもよい。
【0040】
図6は緯度に対する万年雪の下限と森林限界の標高の例を示す図であり、横軸は緯度、縦軸は標高を示している。縦軸の切片は、万年雪の下限については約6000mであり、森林限界については約3500mである。
【0041】
図3に戻り、初期色付けテーブル生成部301は、修正後の曲線式から、色付けテーブル311を生成する(ステップS107)。すなわち、万年雪の下限を示す曲線と森林限界を示す曲線のそれぞれから、緯度と標高について所定間隔もしくは所定のルールに基づくピッチで代表的な点を抽出し、緯度と標高とを初期色付けテーブル生成部301に対応付けて設定する。なお、この時点では色情報は空欄である。
【0042】
次いで、初期色付けテーブル生成部301は、各緯度における万年雪の下限の標高よりも所定値以上大きい緯度における色情報は例えば積雪の状態を表わす白色、各緯度における森林限界の標高付近における色情報は例えば枯れた樹木を表わす黄色、各緯度における標高0付近における色情報は例えば生きた樹木を表わす緑色を設定する(ステップS108)。このような処理により、初期状態の色付けテーブル311の生成を完了する。
【0043】
図1に戻り、色付けテーブル季節補正部302は、季節に応じた補正を行う場合、緯度毎の気温変化等を考慮し、色付けテーブル311の色情報を補正する。補正は自動で行えない部分については、人手により行う。緯度と標高と色情報の組み合わせからなる色付けテーブル311のテーブル要素が不足する場合には、新たにテーブル要素を追加してもよい。
【0044】
また、色付けテーブル特定事象補正部303は、桜の開花状態や紅葉の状態といった特定事象に応じた補正を行う場合、緯度毎の気温変化や地域の特性等を考慮し、色付けテーブル311の色情報を補正する。補正は自動で行えない部分については、人手により行う。
【0045】
図7は桜の開花に応じた補正を行う例を示す図であり、緯度30°〜45°付近において桜の開花を示す点が付加されている。色付けテーブル311上では、桜の開花を示す点およびその周辺の点につき、緯度と標高と色情報(例えば、桜の開花をイメージさせるピンク)のテーブル要素が設定される。
【0046】
図8は紅葉に応じた補正を行う例を示す図であり、緯度35°〜45°付近において紅葉を示す点が付加されている。色付けテーブル311上では、紅葉を示す点およびその周辺の点につき、緯度と標高と色情報(例えば、紅葉をイメージさせる赤)のテーブル要素が設定される。
【0047】
図9は上記の実施形態における地図表示時の処理例を示すシーケンス図である。
【0048】
図9において、端末装置2のブラウザ21から地図トップページ表示リクエストを地図情報提供装置3に送信すると(ステップS201)、このリクエストを地図配信要求受付部304が受け付け、地図トップページのページデータを返送し(ステップS202)、端末装置2のブラウザ21は地図トップページを表示する(ステップS203)。
【0049】
次いで、地図トップページもしくはそこから遷移する他ページのユーザインタフェースを介して、端末装置2のブラウザ21から表示地域の指定を受け付ける(ステップS204)。表示地域の指定は、地名やランドマークの入力、地図上からの中心点の指定等により行われる。
【0050】
次いで、地図トップページもしくはそこから遷移する他ページのユーザインタフェースを介して、ズームレベル(整数値)の指定を受け付ける(ステップS205)。ズームレベルの指定は、例えば、スライド可能なゲージを表示したユーザインタフェースにより行われる。
【0051】
次いで、地図トップページもしくはそこから遷移する他ページのユーザインタフェースを介して、飛び飛びの値であるズームレベルの間(指定されたズームレベルと次のズームレベルの間)のユーザの希望する拡大率の指定を受け付ける(ステップS206)。ユーザ希望拡大率の指定は、例えば、スライド可能なゲージを表示したユーザインタフェースにより行われる。
【0052】
次いで、地図情報提供装置3の地図描画部305は、指定された表示地域について、指定されたズームレベルに従って、色付けテーブル311とベクトル地図データ312と地図デザインデータ313に基づいて地図画像を描画(ラスタライズ)する。
【0053】
すなわち、先ず、地図描画部305は、ベクトル地図データ312から表示領域に対応する必要な範囲のデータを読み込む(ステップS207)。
【0054】
次いで、地図描画部305は、地図デザインデータ313を読み込む(ステップS208)。
【0055】
次いで、地図描画部305は、ベクトル地図データ312に地図デザインデータ313を適用し、道路の太さなどのサイズ的な要素を決定する(ステップS209)。
【0056】
次いで、地図描画部305は、ベクトル地図データ312に地図デザインデータ313を適用して道路の色などを決定するとともに、描画する地点の緯度と標高から色付けテーブル311を参照して色情報を決定し、更に、描画する地点の周辺の複数の地点の標高から得られる地面の傾斜方向から陰の色情報を決定する(ステップS210)。
【0057】
ここで、色付けテーブル311による色情報の決定は、例えば、次の手順により行う。
・描画範囲の各地点の緯度と標高からなる2次元空間の点について、当該点を囲み、かつ緯度方向が平行な台形を設定し、その頂点に対応した4組のテーブル要素を色付けテーブル311から取得
・一方の等緯度の2組のテーブル要素の色情報を標高方向に対して線形補間
・もう一方の等緯度の2組のテーブル要素の色情報を標高方向に対して線形補間
・上記線形補間した2組の色情報を緯度方向に対して線形補間
【0058】
具体的に、ある特定の位置の描画色を計算するために、色の基準点4点を以下のルールで選択する。
A)描画位置以下で最大の緯度かつ描画位置以下で最高の標高
B)描画位置以下で最大の緯度かつ描画位置以上で最低の標高
C)描画位置以上で最小の緯度かつ描画位置以下で最高の標高
D)描画位置以上で最小の緯度かつ描画位置以上で最低の標高
【0059】
例えば、
図10(a)のようにP、Q、Rを描画色を計算する描画点とすると、基準点A)〜D)の該当点は
図10(b)のようになる。なお、点Qは台形B
1C
2C
3B
2で囲まないように、点Rは台形B
1C
1C
2B
2で囲まないように注意されたい。
【0060】
ここで、例えば、台形A
1B
1B
2A
2メッシュ内の点Pの色を計算すると、以下のようになる。
i. 点Pの標高hに対応する点A
1と点A
2の間の点A
12の描画色c
12を点A
1および点A
2の標高h
1、標高h
2と描画色c
1、c
2を用いて線型補間
c
12=(h-h
1)/(h
2-h
1)*(c
2-c
1)+c
1
ii. 点Pの標高hに対応する点B
1と点B
2の間の点B
12の描画色c
34を点B
1および点B
2の標高h
3、標高h
4と描画色c
3、c
4を用いて線型補間
c
34=(h-h
3)/(h
4-h
3)*(c
4-c
3)+c
3
iii. 点P(緯度l(エル))の描画色cを点A
12および点B
12の緯度l
1、l
2と描画色c
12、c
34を用いて線型補間
c=(l-l
1)/(l
2-l
1)*(c
34-c
12)+c
12
【0061】
また、陰の決定は、例えば、次の手順、
・周囲の複数の地点の標高から地面の傾斜方向(法線ベクトル)を算出
・日照の方向ベクトル(既定値)と法線ベクトルから陰の色情報を算出
により行う。
【0062】
色付けテーブル311から決定した色情報による色と、陰として決定した色とを加算した色がその地点の色付けに用いられる。
【0063】
次いで、地図描画部305は、指定された表示地域につき、指定されたズームレベルおよび決定された色情報に基づき、ベクトル地図データ312から描画領域(メモリ)上で描画(ラスタライズ)を行ない、ラスタ画像による地図画像を生成する(ステップS211)。
【0064】
次いで、地図配信部306は、地図描画部305により生成(描画)された地図画像をページにレイアウトし(ステップS212)、要求元の端末装置2のブラウザ21に地図ページのページデータを送信し(ステップS213)、端末装置2のブラウザ21により表示される(ステップS214)。
図11は表示される地図の例を示す図である。
【0065】
<総括>
以上説明したように、本実施形態によれば、ベクトル地図データを用いた地図画像の生成の仕組をベースに、気候を考慮した色付けの環境をほぼ自動的に構築することができる。
【0066】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。