【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る色素増感太陽電池は、金属酸化物の表面に多孔性薄膜が形成されたことを特徴とする。
本発明の一側面において、半導体電極、相対電極及び電解質を含む色素増感太陽電池において、前記半導体電極は、金属酸化物半導体を含む、色素の吸着した多孔性薄膜に高分子薄膜が形成されたことを特徴とする。
本発明の一側面において、金属酸化物半導体電極は、金属酸化物半導体微粒子を含む色素が吸着した多孔性薄膜に高分子薄膜が形成されたことを特徴とする。
本発明の一側面において、色素増感太陽電池の製造方法は、金属酸化物半導体微粒子を含む多孔質膜に多孔性薄膜を形成することを特徴とする。
本発明の一側面において、ヨウ素/ヨウ化物を酸化/還元対とする色素増感太陽電池において、半導体電極の表面に、三ヨウ化物イオンより小さい孔隙を有する多孔性薄膜が形成されたことを特徴とする。
【0012】
本発明において、前記多孔性薄膜は、理論的に限定されたものではないが、電解質に含まれた酸化/還元対の酸化種、例えば電子と再結合する陽イオン、例えば三ヨウ化物イオンに対する透過度が低く、例えば三ヨウ化物イオンより孔隙の大きさが小さいため、酸化種の酸化物半導体に対する接近を阻害して電子再結合による効率の低下を減少させる。
本発明において、前記多孔性薄膜は高分子多孔性薄膜であることが好ましく、前記高分子多孔性薄膜は金属酸化物に固定されて吸着した色素の脱着を防止する。
本発明において、前記多孔性高分子薄膜は、金属酸化物に色素と共に共吸着した物質によって金属酸化物に固定されることが好ましい。より好ましくは、色素分子を反応型共吸着剤と共に吸着させた後、単量体と架橋剤を用いて、色素の吸着した金属酸化物電極の表面で単量体と架橋剤を共重合することにより、多孔性高分子薄膜を形成する。
本発明において、多孔性高分子薄膜を単量体と架橋剤の混合物から製造する際に、二重結合のあるオレフィン系単量体を1種または2種以上使用することができ、架橋剤としては単量体として用いられる化合物が2種以上連結されている化合物を1種または2種以上使用することができる。
【0013】
本発明の実施において、前記多孔性高分子は、架橋されたアクリル系高分子を使用することが好ましく、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレートを架橋剤を用いて架橋した高分子であってもよい。
また、多孔性高分子薄膜を単量体と架橋剤の混合物から製造する際に、エポキシとアミンの開環反応による架橋反応が可能なエポキシとアミン化合物との混合物を使用することができる。
本発明において、多孔性高分子薄膜を単量体と架橋剤の混合物から製造する際に、二重結合のあるオレフィン系単量体を1種または2種以上使用し、単量体として用いられる化合物が2種以上連結されている化合物を1種または2種以上架橋剤として使用して共重合するとき、単量体及び架橋剤の特性に適するように、アゾ系化合物ペルオキシド系反応開始剤、光、または熱の中で選択的にまたは混合して共重合することができる。また、多孔性高分子薄膜を単量体と架橋剤の混合物から製造する際に、エポキシとアミンの開環反応による架橋反応が可能なエポキシとアミン化合物との混合物を使用するときに酸または塩基の触媒を使用することができる。
本発明において、反応型共吸着剤は、末端に架橋反応が可能な二重結合、エポキシ、アミンを含みながら、一側には半導体金属酸化物電極に吸着が可能なカルボキシル基、ハロゲン化アシル、アルコキシシリル、ハロゲン化シリル、リンを含む、下記一般式(1)〜(6)で表される化合物を1種または2種以上混合して使用することができる。
【0014】
【化1】
【0015】
ここで、R1は水素、または炭素原子1〜10のアルキル基であり、Aはカルボキシル基、ハロゲン化アシル、アルコキシシリル、ハロゲン化シリルまたはリンを含みながら、金属酸化物の表面に吸着が可能な反応基である。Bは炭素原子、窒素原子、酸素原子、シリコン原子、リン原子などである。nは自然数1〜40である。mは0または自然数1〜10である。Dは炭素原子、窒素原子、酸素原子、シリコン原子、リン原子、またはこれらの原子を含む連結子である。一般式(1)の例としては、ブト−3−エン酸、ペント−4−エン酸、ヘキス−4−エン酸、ヘプト−4−エン酸、ノン−9−エン酸などがある。一般式(2)の例としては、マロン酸モノビニルエステル、コハク酸モノビニルエステル、ヘプタン二酸モノビニルエステルなどがある。一般式(3)の例としては、4−オキソ−へキス−5−エン酸、アクリル酸カルボキシメチルエステル、メタクリロイル−4−アミノ酪酸、6−アクリロイルアミノ−ヘキサン酸、9−アクリロイルアミノ−ノナン酸、6−(2−メチル−アクリロイルアミノ)−ヘキサン酸、9−(2−メチル−アクリロイルアミノ)−ノナン酸、14−アクリロイルオキシ−テトラデカン酸、14−(2−メチル−アクリロイルオキシ−テトラデカン酸)などがある。一般式(4)の例としては、4−(4−ビニル−フェニル)酪酸、4−(4−ビニル−フェノキシ)−プロピオン酸、6−(4−ビニル−フェニル)ヘキシル酸、6−(4−ビニル−フェノキシ)−ヘキサン酸などがある。一般式(5)の例としては、6−アミノ−ヘキサン酸、8−アミノ−オクタン酸などがある。一般式(6)の例としては6−オキシレニル−ヘキサン酸、8−アミノ−オクタン酸などがある。一般式(6)の例としては6−オキシレニル−ヘキサン酸、8−オキシレニル−オクタン酸などがある。
【0016】
本発明において、反応型共吸着剤が二重結合のオレフィンである場合、架橋結合のために、下記の一般式(7)〜(10)で表される単量体を1種または2種以上使用することができる。また、反応型共吸着剤がエポキシである場合には、一般式(11)で表されるアミンを使用し、反応型共吸着剤がアミンである場合には、一般式(12)で表されるエポキシを使用することができる。
【0017】
【化2】
【0018】
ここで、R1は水素、または炭素原子1〜10のアルキル基であり、R2は水素、窒素、シリコン、リンまたは炭素を含む末端基である。Bは炭素原子、窒素原子、酸素原子、シリコン原子、リン原子などである。nは0または自然数1〜20である。mは0または自然数1〜10である。Dは炭素原子、窒素原子、酸素原子、シリコン原子、リン原子またはこれらの原子を含む連結子である。
【0019】
また、架橋剤としては、前記一般式(7)〜(12)で表される化合物においてR2によって1種または2種以上が連結された化合物を1種または2種以上使用することができる。
また、本発明において、前記金属酸化物電極を含む色素増感太陽電池は、伝導性の第1電極と、前記第1電極上に形成された金属酸化物半導体層と、前記金属酸化物半導体層上に色素分子が1種または2種以上吸着した半導体電極と、前記第2基板上に形成された金属層を含む相対電極とを含んでなる。
【0020】
本発明は、前記半導体電極と前記相対電極との間に、酸化−還元誘導体を含む電解液を注入し、或いは、前記半導体電極に、酸化−還元誘導体を含む高分子ゲル電解質組成物を塗布して高分子ゲル電解質を形成し、その上に第2電極を位置させて第2電極を接合する段階を含む、色素増感太陽電池の製造方法を提供する。
【0021】
図1は本発明の好適な実施例によって多孔性高分子薄膜が色素分子の吸着した金属酸化物半導体電極を用いて製作された色素増感太陽電池素子の断面図である。図示の如く、本発明の好適な実施例によって製作された色素増感太陽電池素子は、2つの透明基板である第1基板1001と第2基板1008との間にそれぞれ第1電極1002及び第2電極1007が互いに対向的に構成されており、前記第1電極1002と第2電極1007との間に無機酸化物層1003、色素及び反応型物質層1004、多孔性高分子薄膜層1005並びに電解質層1006が介在されている多層薄膜形態を持っている。
前記第1基板1001は、ガラスまたは例えばPET(polyethylene terephthalate)、PEN(polyethylene naphthalate)、PP(polypropylene)、PI(polyamide)、TAC(tri acetyl cellulose)などを含むプラスチックなどの透明物質で製造でき、好ましくはガラスで製造される。
前記第1電極1002は第1基板1001の一面に透明物質によって形成される電極である。第1電極1002はアノードとして機能する部分であって、第1電極1002としては、第2電極1007に比べて仕事関数(work function)が小さい物質であって、透明性及び導電性を有する任意の物質が使用できる。本発明において、前記第1電極1002はスパッタリング法またはスピンコート法を用いて第1基板1001の裏面に塗布し或いはフィルム状にコートできる。
【0022】
本発明と関連し、第1電極1002として使用できる物質は、ITO(indium−tin oxide)、FTO(Fluorine doped tin oxide)、ZO−(Ga
2O
3またはAl
2O
3)、及びSnO
2−Sb
2O
3などから任意に選択でき、特に好ましくはITOまたはFTOである。
前記無機酸化物層1003は、好ましくはナノ粒子状の遷移金属酸化物であって、例えば、チタニウム酸化物、スカンジウム酸化物、バナジウム酸化物、亜鉛酸化物、ガリウム酸化物、イットリウム酸化物、ジルコニウム酸化物、ニオブ酸化卯物、モリブデン酸化物、インジウム酸化物、スズ酸化物、ランタン族酸化物、タングステン酸化物、イリジウム酸化物などの遷移金属酸化物だけでなく、マグネシウム酸化物、ストロンチウム酸化物などのアルカリ土金属酸化物及びアルミニウム酸化物などを含む。本発明と関連して無機酸化物として使用できる物質は、特にナノ粒子状のチタニウム酸化物である。
本発明に係る前記無機酸化物層1003は、前記第1電極1002の一面にコート処理した後、熱処理によって第1電極1002に塗布されるが、一般にドクターブレード法またはスクリーンプリント法で、無機酸化物を含むペーストを約5〜30μm、好ましくは10〜15μmの厚さに第1電極1002の裏面にコート処理し、或いはスピンコート法、スプレー法、ウェットコート法を使用することができる。
【0023】
本発明の色素増感太陽電池素子を構成する前記無機酸化物層1003の上部には、幾つかの機能を有する機能層が導入されている。無機酸化物層1003上には、色素分子間の電子移動現象を最小化し、光電子と電解質にある酸化化学種または正孔伝達物質の正孔との再結合反応を遅延させるために、反応型物質に連結された多孔性高分子薄膜層1005を形成する。
一方、色素は、無機酸化物に電子を転移した後に酸化するが、電解質層1006へ伝達された電子を受けて元々の状態に還元される。これにより、電解質層1006は、第2電極1007から電子を受け、これを色素へ伝達する役割を果たす。
【0024】
本発明によって前記無機酸化物層1003に化学的に吸着する光増感色素は、紫外線及び可視光線領域の光を吸収することが可能な物質であって、ルテニウム複合体などの色素が使用できる。例えば、光増感色素としては、ルテニウム535色素、ルテニウム535ビス−TBA色素、ルテニウム620−1H3TBA色素などのルテニウム錯体からなる光増感色素を含み、好ましくはルテニウム535ビス−TBA色素を使用する。但し、無機酸化物層1003に化学吸着できる光増感色素は、電荷分離機能を有する任意の色素が使用できるが、ルテニウム系色素の他にも、キサンテン系色素、シアニン系色素、ポルフィリン系色素、アントラキノン系色素及び有機色素などが使用できる。
前記色素を無機酸化物層1003に吸着させるために通常の方法が使用できるが、好ましくは、前記色素をアルコール、ニトリル、ハロゲン化炭化水素、エーテル、アミド、エステル、ケトン、N−メチルピロリドンなどの溶媒に溶解させ、或いはアセトニトリルとt−ブタノールの共溶媒に溶解させた後、無機酸化物層1003の塗布された光電極を浸漬させる方法を用いる。
【0025】
前記電解質層1006に用いられる電解質は、I
2と金属ヨウ化物または有機ヨウ化物との組み合わせ(金属ヨウ化物または有機ヨウ化物/I
2)、またはBr
2と金属臭化物または有機臭化物との組み合わせ(金属臭化物または有機臭化物/Br
2)が酸化/還元対として使用できる。
本発明によって用いられる電解質において、金属ヨウ化物または金属臭化物の金属陽イオンとしては、Li、Na、K、Mg、Ca、Csなどが使用でき、有機ヨウ化物または有機臭化物の陽イオンとしては、イミダゾリウム(imidazolium)、テトラアルキルアンモニウム(tetra−alkyl ammonium)、ピリジニウム(pyridinium)、トリアゾリウム(triazolium)などのアンモニウム化合物が適するが、これに限定されるものではなく、このような化合物を2種以上混合して使用できる。特に好ましくは、LiIまたはイミダゾリウムヨードとI
2とを組み合わせた酸化/還元対が使用できる。本発明によって使用できる電解質のうち、イオン性液体として使用できる有機ハロゲン化物としては、n−メチルイミダゾリウムヨード、n−エチルイミダゾリウムヨード、1−ベンジル−2−メチルイミダゾリウムヨード、1−エチル3−メチルイミダゾリウムヨード、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨードなどを使用することができるが、特に好ましくは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨードであって、これらをヨウ素(I
2)と組み合わせて使用することができる。このようなイオン性液体、すなわち溶解塩を使用する場合、電解質組成物に溶媒を使用しない固体型電解質を構成することができる。
【0026】
一方、前記第2電極1007は、第2基板1008の裏面に塗布された電極であって、カソードとして機能する。スパッタリング法またはスピンコート法を用いて第2電極1007を第2基板1008の裏面に塗布またはコートすることができる。第2電極1007に使用できる物質は、第1電極1002に用いられた物質より仕事関数値が大きい物質であって、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、炭素(C)などが挙げられ、好ましくは白金である。前記第2基板1008は、第1基板1001と類似の透明物質であって、ガラス、またはPET、PEN、PP、PI、TACなどを含むプラスチックなどの透明物質で製造でき、好ましくはガラスで製造される。次に、本発明の好適な実施例によって製作される色素増感太陽電池素子の製作工程について考察する。
まず、第1電極物質が塗布されている第1基板上に、好ましくはコロイド状のチタニウム酸化物である無機酸化物を約5〜30μmの厚さに塗布またはキャストし、約450〜550℃の温度で焼成して(sintering)、有機物の除去された第1基板−第1電極−無機酸化物が順次塗布/積層された光電極を形成する。次いで、製作された無機酸化物層に色素を吸着させるために、予め準備したエタノール溶液に色素、例えばルテニウム系色素N719と前記一般式(1)〜(6)で表される反応型共吸着剤を添加して色素溶液を製造した後、この溶液に無機酸化物層の塗布された透明基板(例えば、FTOなどでコートされたガラス基板、光電極)を入れて色素と反応型共吸着剤を吸着させる。
色素と反応型共吸着剤が吸着した透明基板に、前記一般式(7)〜(12)で表される化合物においてR2によって連結された単量体と架橋剤のモル比が0.05〜50である混合溶液、または開始剤が溶解された前記混合溶液を塗布し、熱または光を加えて重合する。ガラス基板上に白金前駆体物質を焼成して製作した白金電極を多孔性高分子薄膜の塗布された半導体電極を接合し、電解液を注入することにより、本発明に係る色素増感太陽電池素子が製作される。