特許第6057988号(P6057988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6057988ライニング損耗検出システムを備える電気的誘導炉
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6057988
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】ライニング損耗検出システムを備える電気的誘導炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 14/06 20060101AFI20161226BHJP
   F27B 14/20 20060101ALI20161226BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20161226BHJP
   H05B 6/24 20060101ALI20161226BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   F27B14/06
   F27B14/20
   F27D21/00 Q
   H05B6/24
   F27D1/00 V
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-512074(P2014-512074)
(86)(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公表番号】特表2014-522474(P2014-522474A)
(43)【公表日】2014年9月4日
(86)【国際出願番号】US2012039117
(87)【国際公開番号】WO2012162380
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月21日
(31)【優先権主張番号】61/488,866
(32)【優先日】2011年5月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/497,787
(32)【優先日】2011年6月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591029943
【氏名又は名称】インダクトサーム・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INDUCTOTHERM CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】サティエン・エヌ・プラブ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ダブリュー・ショーター
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−159667(JP,A)
【文献】 特開昭53−112205(JP,A)
【文献】 実開昭58−131398(JP,U)
【文献】 実開昭54−005136(JP,U)
【文献】 実公昭49−005295(JP,Y1)
【文献】 実開昭63−060891(JP,U)
【文献】 特開平05−180583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/00− 1/18
F27D 21/00−21/04
F27B 14/00−14/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライニング損耗検出システムを備える電気的誘導炉であって、
内側境界面及び外側境界面を有する交換式ライニングにして、内側境界面が電気的誘導炉の内容積部を形成する交換式ライニングと、
前記交換式ライニングの外側高さ部分を少なくとも部分的に包囲する誘導コイルと、
電気的誘導炉の内容積部に突出する接地プローブである第1回路端及び、電気的誘導炉外の電気的接地接続部位置で終端する第2回路端、を有する炉接地回路と、
前記交換式ライニングの壁の外側境界面と誘導コイルとの間に配置した不定形耐火物容積部に埋設した少なくとも1つの導電性メッシュにして、前記少なくとも1つの導電性メッシュを埋設した前記不定形耐火物容積部と前記交換式ライニングとの間における電気的不連続性の境界部を形成し、且つ、前記少なくとも1つの導電性メッシュの対向する側部間の短絡を防止する、あるいは前記側部間を相互に電気的に絶縁するように寸法付けされた断続部を有する導電性メッシュと、
前記少なくとも1つの導電性メッシュの1つに接続した正電位部、電気的接地接続部に接続した負電位部、前記正電位部と負電位部との間に形成したライニング損耗検出回路、を有する直流電圧源にして、前記交換式ライニング壁の消耗に従い、前記ライニング損耗検出回路における直流漏洩電流のレベルが変化する直流電圧源と、
を含む電気的誘導炉。
【請求項2】
直流漏洩電流レベルの変化を検出するための、少なくとも1つの導電性メッシュの各々用のライニング損耗検出回路に接続した少なくとも1つの検出器を更に含む請求項1に記載の電気的誘導炉。
【請求項3】
前記少なくとも1つの導電性メッシュが、交換式ライニングの高さ部分を包囲し、且つ、対向する垂直方向端部間に垂直方向間隙を有する、円筒状の導電性メッシュを含む請求項1又は2に記載の電気的誘導炉。
【請求項4】
前記少なくとも1つの導電性メッシュが、交換式ライニングの高さ部分を包囲し、且つ、電気絶縁体により分離された重畳する対向する垂直方向端部を有する、円筒状の導電性メッシュを含む請求項1又は2に記載の電気的誘導炉。
【請求項5】
前記少なくとも1つの導電性メッシュが、交換式ライニングの高さ部分を包囲する導電性メッシュの列を含み、前記列を成す各導電性メッシュが相互に電気的に絶縁される請求項1又は2に記載の電気的誘導炉。
【請求項6】
前記少なくとも1つの検出器が、少なくとも1つの導電性メッシュの各々用のライニング損耗検出回路全て用の単一の検出器を含み、ライニング損耗検出システムを備える前記電気的誘導炉が、全てのライニング損耗検出回路における単一の検出器に切替自在に接続する切替装置を更に含む請求項2に記載の電気的誘導炉。
【請求項7】
前記少なくとも1つの検出器が、少なくとも1つの導電性メッシュの各々用のライニング損耗検出回路の各々用の別個の検出器を含む請求項2に記載の電気的誘導炉。
【請求項8】
交換式ライニングの底部の外側境界面の下方に配置した底部の不定形耐火物容積部に埋設した少なくとも1つの導電性の底部メッシュにして、前記少なくとも1つの導電性の底部メッシュを埋設した前記底部の不定形耐火物容積部の下方における電気的不連続性境界部を形成する底部メッシュと
流電圧源にして、少なくとも1つの導電性の底部メッシュの1つに接続された正電位部及び、電気的接地接続部に接続した負電位部、前記少なくとも1つの導電性メッシュの1つに接続した正電位部と前記電気的接地接続部に接続した負電位部との間に形成した底部ライニング損耗検出回路、を含み、前記底部ライニング損耗検出回路における底部ライニング直流漏洩電流レベルが、前記交換式ライニングの底部の消耗に従い変化する直流電圧源と、
を更に含む請求項1に記載の電気的誘導炉。
【請求項9】
前記少なくとも1つの導電性メッシュの各々用の底部ライニング損耗検出回路に接続した少なくとも1つの底部ライニング損耗検出器にして、底部ライニング直流漏洩電流レベルにおける変化を検出する底部ライニング損耗検出器を更に含む請求項8に記載の電気的誘導炉。
【請求項10】
前記少なくとも1つの導電性の底部メッシュが、対向する半径方向角端部間に半径方向間隙を有する円形の導電性メッシュを含む請求項8又は9に記載の電気的誘導炉。
【請求項11】
前記少なくとも1つの導電性の底部メッシュが、底部メッシュの電気絶縁体により分離され重畳する半径方向端部を有する円筒状の導電性メッシュを含む請求項8又は9に記載の電気的誘導炉。
【請求項12】
前記少なくとも1つの導電性の底部メッシュが導電性の底部メッシュの列を含み、前記列を成す各導電性の底部メッシュが相互に電気的に絶縁される請求項8又は9に記載の電気的誘導炉。
【請求項13】
前記少なくとも1つの底部ライニング損耗検出器が、少なくとも1つの導電性底部メッシュの各々用の底部ライニング損耗検出回路全て用の単一の底部ライニング損耗検出器を含み、前記電気的誘導炉が、全ての底部ライニング損耗検出回路に単一の底部ライニング損耗検出器を切替自在に接続するための切替装置を更に含む請求項9に記載の電気的誘導炉。
【請求項14】
前記少なくとも1つの底部ライニング損耗検出器が、少なくとも1つの導電性底部メッシュの各々用の各底部ライニング損耗検出回路用の別個の底部ライニング損耗検出器を含む請求項9に記載の電気的誘導炉。
【請求項15】
ライニング損耗検出システムを備える電気的誘導炉の製造方法であって、
基礎上に誘導コイル巻体を位置付けるステップ、
誘導コイル巻体周囲に耐火物を取付けて耐火物埋設型誘導コイルを形成するステップ、 誘導コイル巻体内に流動性耐火物モールドを位置決めし、かくして前記流動性耐火物モールドの外壁と耐火物埋設型誘導コイルの内壁との間に、キャスト流動性耐火物容積部を提供するステップ
動性耐火物モールドの外壁周囲に、あるいは前記外壁周囲からオフセットして少なくとも1つの導電性メッシュを嵌装するステップにして、前記少なくとも1つの導電性メッシュが、その対向する側部間の短絡を防止する、あるいは前記側部間を相互に電気的に絶縁するように寸法付けされた断続部を有し、且つ、前記少なくとも1つの導電性メッシュを埋設した前記キャスト流動性耐火物容積部と交換式ライニングとの間に電気的不連続性の境界部を形成するステップ、
前記キャスト流動性耐火物容積部にキャスト流動性耐火物を注入して前記キャスト流動性耐火物内に少なくとも1つの導電性メッシュを埋設し、かくして前記少なくとも1つの導電性メッシュが前記キャスト流動性耐火物の固化後に然るべく維持されるメッシュ埋設型の注型性耐火物容積部を形成するステップ、
動性耐火物モールドを取り外すステップ、
メッシュ埋設型の注型性耐火物の容積部内に交換式ライニングモールドを位置決めし、かくして、交換式ライニングモールドの外壁とメッシュ埋設型注型性耐火物容積部の内壁との間に交換式ライニングの壁容積部を形成し、基礎上方には交換式ライニングの底部容積部を形成するステップ、
前記交換式ライニングモールドの壁容積部及び底部容積部内に交換式ライニング耐火物を送給するステップ、
交換式ライニングモールドを取り外すステップ、
を含む方法。
【請求項16】
キャスト流動性耐火物容積部に埋設した少なくとも1つの導電性の底部メッシュを、基礎上方及び交換式ライニングの底部容積部下方に嵌装するステップにして、前記少なくとも1つの導電性の底部メッシュが、前記少なくとも1つの導電性メッシュを埋設したキャスト流動性耐火物と前記交換式ライニングとの間に電気的不連続性の境界部を形成するステップを更に含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの導電性メッシュの各々から、炉の電気的接地接続部までのライニング損耗検出回路を取り付けるステップを更に含む請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ライニング損耗検出回路全て用の少なくとも1つの検出器を取り付けるステップを更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの導電性の底部のメッシュの各々から炉の電気的接地接続部までの底部ライニング損耗検出回路を取り付けるステップを更に含む請求項16に記載の方法。
【請求項20】
全ての底部ライニング損耗検出回路用の少なくとも1つの検出器を取り付けるステップを更に含む請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、何れもここに参照することによりその全てを本明細書の一部とする、2011年5月23日付で提出された米国仮出願特許第61/488,866号及び2011年6月16日付で提出された同第61/497,787号の利益を主張するものである。
本発明は電気的誘導炉に関し、詳しくは、誘導炉内のライニング損耗検出に関する。
【背景技術】
【0002】
図1には、代表的な電気的誘導炉(以下、誘導炉とも称する)における、交換式耐火物ライニング使用に関連する各部品が例示される。交換式ライニング12(図で点描された部分/以下、ライニングとも称する)は、炉内壁をライニングして炉の内側容積部14を形成する高融点物質から構成される。金属その他の導電性材料が内側容積部14内に配置され、電気的誘導(以下、誘導とも称する)により加熱及び溶融される。誘導コイル16が炉の外側高さ部分の少なくとも一部を包囲し、コイルを通して流れる交流が磁束を発生させ、発生した磁束が内側容積部14に配置した材料にカップリングすると材料が誘導加熱及び溶融される。炉の基礎18は耐火性の煉瓦あるいは鋳塊等の好適材料から形成する。誘導コイル16はこの誘導コイルを断熱及び保護するコテ塗り性耐火材(グラウト)20に埋設し得る。炉の代表的な地絡検出器システムは、ライニング12の底部を貫いてその端部22a’が内側容積部14内に突き出す状態で例示した如きプローブワイヤ22aを含む。プローブワイヤ22aは、炉の接地部(GND)に接続した電気的接地線22bに接続される。本明細書では、地絡検出器システムで使用するプローブワイヤ22aあるいはその他構成を一般に接地プローブと称する。
【0003】
炉の内側容積部14で溶融物取扱いを繰り返すことでライニング12が徐々に消耗する。ライニング12は、炉の実用寿命時点後に炉再ライニング処理により補充される。炉オペレータは、炉の安全運転に反し且つ耐火物のメーカー及び設置業者の推奨基準を無視することにはなるが、内側容積部14内の溶融金属と誘導コイル16との間のライニング12が炉の誘導コイル16の状態を劣化させ、及び又は、炉の基礎18が、その補修を要する程に損傷させるまでこの再ライニング処理を独断で遅らせることがある。それにより、炉のライニング処理に時間がかかるようになる。
【0004】
米国特許第7,090,801号には、少なくとも部分的に導電性表面を有する幾つかの導体セクションから構成した閉回路と、測定/表示装置とを含む、溶解炉用の監視装置が記載される。櫛状の第1導体セクションはオーム抵抗Rを介して第2導体セクションと直列接続される。櫛形の第1導体セクションは、第2導体セクションに隣接して、しかし第2導体セクションとは電気的に絶縁される状態下に耐火性ライニングに載置される。
【0005】
米国特許第6,148,018号には、炉床から炉への熱流れ検出に依存して炉壁内への金属侵入を検出する検知システムを含む誘導型溶解炉が記載される。誘導コイルと、耐火性ライニングに対する裏当てとして作用する滑り面材料との間に電極システムが介装される。電極システムは、電源からのテスト信号を受信する検出マットハウジング導体を含み、この検出マットハウジング導体は、ライニングを貫通する熱に応じて各検出マットハウジング導体間の導電率を変化させる感温性バインダを含んでいる。
【0006】
米国特許第5,319,671号には、炉ライニング上に電極を配置した装置が記載される。各電極は極性の異なる2つの群に分割され且つ相互に離間される。各電極群は、炉ライニングの温度依存性の電気抵抗を判定する装置に接続され得る。電極の少なくとも1つはセラミック箔上の第1側部上に電極網として配置される。セラミック箔の第1側部あるいはその反対側側部が炉ライニング上に配置される。前者、即ち、電極をセラミック箔の第1側部に配置する場合、セラミック箔の熱導伝性及び導電率は炉ライニングのセラミック材料のそれより小さく、後者、即ち、電極をセラミック箔の第1側部とは反対側側部に配置する場合、セラミック箔の熱導伝性及び導電率は炉ライニングのセラミック材料のそれとほぼ同一又はそれ以上である。
【0007】
米国特許第1,922,029号には、炉ライニングに装入され、制御回路の接点の1つを形成するシールドが記載される。シールドはシートメタル製であり、屈曲されてシリンダを形成する。炉内から外部に漏出した金属がシールドに接触すると信号回路が閉じる。
【0008】
米国特許第1,823,873号には、炉ライニング内に位置付けられ且つ誘導コイルから離間させた接地シールドが記載される。実質的に開放環状型の金属製の上方導管と、やはり同様に金属製の開放環状型の下方導管とが提供される。比較的小さい複数の金属パイプあるいは導管が比較的大きい2本の導管間に伸延され且つ流体密の様式下にそれら導管に固定される。保護用シールドに連結した接地部が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国仮出願特許第61/488,866号
【特許文献2】米国仮出願特許第61/497,787号
【特許文献3】米国特許第7,090,801号明細書
【特許文献4】米国特許第6,148,018号明細書
【特許文献5】米国特許第5,319,671号明細書
【特許文献6】米国特許第1,922,029号明細書
【特許文献7】米国特許第1,823,873号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする課題は、炉が正常に運転及び維持される場合のライニング損耗による炉のコイル及び又は底部基礎損傷を回避する上で役立ち得るライニング損耗検出システムを備える誘導炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1様相によれば、誘導炉用のライニング損耗検出システムを提供する装置及び方法が提供される。
本発明の他の様相によれば、ライニング損耗検出システムを備える誘導炉が提供される。交換式の炉ライニングが内外の境界面を有し、内側境界面は誘導加熱及び溶解用の導電性材料をその内部に堆積させ得る、誘導炉の内側容積部を形成する。少なくとも1つの誘導コイルが交換式のライニングの外側高さ部分を包囲する。炉の接地回路が、単数あるいは複数の接地プローブ位置の、誘導炉の内側容積部に突出した第1端部と、誘導炉外の電気的接地部の接続部位置の第2端部とを有する。少なくとも1つの導電性メッシュが、交換式のライニング壁の外側境界面と誘導コイルとの間に配置した、不定形耐火物に埋設される。各導電性メッシュは、埋設された不定形耐火物と交換式ライニングとの間に、電気的不連続性のメッシュ境界部を形成する。直流電圧源が、導電性メッシュに接続した正電位部と、電気的接地接続部に接続した負電位部とを有する。交換式ライニング壁が消耗するに従い、その内部の直流漏洩電流レベルが変化する、導電性メッシュに接続した正電位部から電気的接地接続部に接続した負電位部に至るライニング損耗検出回路が形成される。各導電性メッシュ用の各ライニング損耗検出回路には、直流漏洩電流レベルの変化を検出する検出器を接続し得、あるいは別様には、単一の検出器を多数のライニング損耗検出回路に切り替え自在に接続し得る。
【0012】
本発明の他の様相によれば、ライニング損耗検出システムを備える誘導炉の製造方法が提供される。誘導コイル巻体を基礎上方に位置付け、誘導コイル巻体の周囲に耐火物を取付けて耐火物埋設型誘導コイルを形成する。誘導コイル巻体内部にキャスト不定形あるいはキャスト流動性(以下、キャスト不定形)耐火物用モールドを位置決めし、かくして、キャスト不定形耐火物用モールドの外壁と、耐火物埋設型誘導コイル内壁との間にキャスト不定形耐火物用容積部を提供させる。キャスト不定形耐火物用モールドの外壁周囲に少なくとも1つの、導電性メッシュを嵌装する。キャスト不定形耐火物をキャスト不定形耐火物用容積部に注入して前記少なくとも1つの導電性メッシュをキャスト不定形耐火物に埋設させ、かくして、メッシュ埋設型キャスト不定形耐火物を形成する。キャスト不定形耐火物用モールドを取り外して交換式ライニングモールドをメッシュ埋設型キャスト不定形耐火物の容積部内に位置決めし、かくして、交換式ライニングモールド外壁とメッシュ埋設型キャスト不定形耐火物内壁との間に交換式ライニング壁容積部を、そして基礎上方には交換式ライニング底部容積部を確立する。
【0013】
本発明の更に他の様相によれば、炉が正常に運転及び維持される場合のライニング損耗による炉のコイル及び又は底部基礎損傷を検出し得るライニング損耗検出システムを備える誘導炉が提供される。
【発明の効果】
【0014】
炉が正常に運転及び維持される場合のライニング損耗による炉のコイル及び又は底部基礎損傷を回避する上で役立ち得るライニング損耗検出システムを備える誘導炉が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、誘導炉の1実施態様における略断面図である。
図2図2は、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉の1実施態様の横断面図である。
図3a図3aは、図2に示す誘導炉で使用する導電性メッシュ、ライニング損耗検出回路、制御及び又は表示用(検出器)回路、の1例を示す平面図である。
図3b図3bは、図3aに示す導電性メッシュの、図2に示す誘導炉の円周方向に沿って取付けた構成における平面図である。
図4図4は、導電性の底部メッシュを含む本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉の他の実施態様における断面図である。
図5図5は、本発明の1実施態様における底部ライニング損耗検出部用に使用する、導電性の底部メッシュ、底部ライニング損耗検出回路、制御及び又は表示(検出器)回路、の平面図である。
図6a図6aは、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉の1実施態様の製造工程の例示図である。
図6b図6bは、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉の1実施態様の製造工程の例示図である。
図6c図6cは、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉の1実施態様の製造工程の例示図である。
図6d図6dは、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉の1実施態様の製造工程の例示図である。
図6e図6eは、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉の1実施態様の製造工程の例示図である。
図6f図6fは、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉の1実施態様の製造工程の例示図である。
図7図7は、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉で使用するキャスト不定形耐火物に埋設した導電性メッシュの1実施態様の詳細図である。
図8図8は、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉の他の実施態様の断面図である。
図9a図9aは、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉で使用する、導電性メッシュ、損耗検出回路、検出器、の別態様の構成の各例示図である。
図9b図9bは、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉で使用する、導電性メッシュ、損耗検出回路、検出器、の別態様の構成の各例示図である。
図9c図9cは、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉で使用する、導電性メッシュ、損耗検出回路、検出器、の別態様の構成の各例示図である。
図9d図9dは、本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉で使用する、導電性メッシュ、損耗検出回路、検出器、の別態様の構成の各例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図2には本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉10の1実施態様が示される。誘導コイル16と交換式ライニング12との間にキャスト不定形耐火物24が配置される。本発明のこの実施態様において、導電性メッシュ26(例えばステンレス鋼メッシュ)が、キャスト不定形耐火物24の、交換式ライニング12の外側境界部に隣り合う内側境界部に埋設される。好適なメッシュの非限定例の1つは、メッシュサイズ4×4、ワイヤ径0.028〜0.032インチ(約0.07〜0.08cm)、開口幅0.222〜0.218インチ(約0.56〜0.55cm)の、タイプ304ステンレス鋼溶接ワイヤクロスである。図3a及び図3bに示すように、本発明のこの実施態様ではメッシュ26が、キャスト不定形耐火物24と、ライニング壁の外側境界部の上部(26TOP)から底部(26BOT)までの交換式ライニング12との間に、断続する円筒状のメッシュ境界部を形成する。メッシュ26の垂直方向側部26aは、炉接地部(GND)に接続した他端部を有する直流(DC)電圧源Vdc等の好適な電圧源により確立され得るところの正電位部に好適に接続される。ライニング損耗検出回路は、導電性のメッシュに接続した正電位部と、炉接地部に接続した負電位部との間に形成される。メッシュ26の垂直方向断続部26c(本例ではライニングの高さ方向に沿った)は、メッシュ26の対向する各垂直方向側部26a及び26b間の短絡を防止するよう寸法付けされる。あるいはメッシュは、それ自体から電気的に絶縁されるよう、例えば、メッシュにおける重畳する2つの各端部(本例では各側部26a及び26b)間に電気絶縁層を設ける様式下に作製され得る。図3aに示すように、電圧源回路は電流変換器等の好適な回路素子を介し、制御及び又は表示回路に接続され得る。制御及び又は表示回路は検出器と総称される。炉の実用寿命中に交換式ライニング12が徐々に消耗するに従い直流漏洩電流が増大し、生じた直流電流が制御及び又は表示回路で検出され得る。炉の特定化設計において、炉の正常運転及び維持に際してのライニング交換を表示する漏洩電流上昇レベル設定点が確立され得る。
【0017】
本発明のある実施態様において、図2に示す壁ライニング損耗検出システムに加え、底部ライニング損耗検出システムが例えば図4に示す如く提供され得る。図4では導電性の底部メッシュ30がキャスト不定形耐火物28内で、炉の底部位置の交換式ライニング12の下方境界部に隣り合って配置される。図5に示すように、本発明のこの実施態様では底部メッシュ30が底部のキャスト不定形耐火物28と交換式ライニング12の底部との間に、断続する円形のメッシュ境界部を形成する。底部メッシュ30の断続する1つの半径方向側部30aは、炉接地部(GND)にその他端を接続した好適な電圧源V’dcにより確立される正電位部に好適に接続される。底部ライニング損耗検出回路が、導電性の底部メッシュに接続した正電位部と、炉接地部に接続した負電位部との間に形成される。メッシュ30の半径方向断続部30cは、メッシュ30における対向する各半径方向側部30a及び30b間の短絡を防止するよう寸法付けされる。あるいは、メッシュは、それ自身から電気的に絶縁されるよう、例えば、メッシュの2つの重畳する各端部(本例では各側部30a及び30b)間に電気絶縁層を設ける様式下に作製され得る。図5に示すように、底部ライニング損耗検出回路は、検出器として集約的に参照される底部ライニング損耗制御及び又は表示回路に接続され得る。交換式ライニング12の底部が炉の実用寿命中に徐々に消耗されるに従い、直流漏洩電流が増大すると、その漏洩電流が底部ライニング損耗制御及び又は表示回路で検出され得る。炉の特定化設計において、炉の正常運転及び維持時における底部ライニング損耗に基づくライニング交換表示のための漏洩電流上昇レベル設定点が確立され得る。
【0018】
図示された断続する側壁及び底部の各メッシュの特定化構成は本発明の断続するメッシュ構成の1例である。断続は、炉の運転中に誘導コイル16が好適な交流電源に接続した場合に誘導コイルに交流電流が流れて発生する磁束にメッシュが誘導連結して渦電流加熱されるのを防止するためのものである。従って、メッシュ構成がそのようなメッシュ誘導加熱を防止する限りにおいて、その他の側壁及び底部メッシュの構成は本発明の範囲内のものとする。同様に、ライニング損耗検出回路、制御及び又は表示回路へのメッシュの単数あるいは複数の電気的接続構成は炉の特定化設計に応じて変化され得るものとする。
本発明のある実施態様において、耐火物に埋設した壁状のメッシュ26は交換式ライニング12の垂直方向高さ全体、即ち、炉のライニングの底部(12BOT)から炉ライニングの、例えば図8に示す如き特定化炉における設計上の公称溶融物ライン25の上方の上端部(12TOP)まで伸延され得る。
【0019】
他の実施例において、壁状のメッシュ26は交換式ライニング12の垂直方向高さ方向に沿って選択した1つ又は1つ超の別個の領域に提供され得る。例えば、図9a及び図9bには、相互に電気的に絶縁され且つ別個のライニング損耗検出回路に接続され、かくして炉のライニングの何れか一方の半分の側部におけるライニング損耗を診断し得る2つの、垂直方向の導電性メッシュ36a及び36bを含む。本実施態様は、2つのメッシュ36a及び36bの各垂直方向高さに沿った2つの電気的断続部38a(垂直方向側部37a及び37b間に形成した)及び38b(垂直方向側部37b及び37c間に形成した)を有する。交換式ライニング12の垂直方向高さに沿って任意の更に多数の、別個の、垂直方向の、電気的に絶縁された壁状のメッシュ部分を、その各々を別個のライニング損耗検出回路に接続する状態で設け、かくしてライニング損耗を壁状のメッシュ部分の1つに定位させ得る。あるいは、図9cに示す如く、多数の導電性メッシュ46a〜46dを、電気的に絶縁されたその各々を別個のライニング損耗検出回路及び制御及び又は表示回路(D)に接続する状態下に水平方向に配向させ、かくして、ライニング損耗を壁状のメッシュ部分の1つに特定化し得る。最も一般的には、図9dに示すように、導電性の多数のメッシュ56a〜56pを、その各々を別個のライニング損耗検出回路、及び制御及び又は表示回路(図示せず)に接続する状態下に交換式ライニング壁の高さ方向に沿って配置し、かくしてライニング損耗を、Xをライニングの円周方向に沿ったある位置を画定する座標とし、Yをライニングの高さ方向に沿ったある位置を画定する座標とする、交換式ライニング壁の円周方向に沿った2次元XY座標系により画定され得るところの1つの個別のメッシュ部分に特定化し得る。
【0020】
類似様式において、底部メッシュ30は、本発明のある例における交換式ライニング12を底部全体より狭い範囲で被覆し得、あるいは、電気的に絶縁した底部メッシュの各々を別個のライニング損耗検出回路に接続する状態下に、多数の、電気的に絶縁した底部メッシュを含み得、かくしてライニング損耗を1つの底部メッシュ部分に特定化し得る。
【0021】
その各々のライニング損耗検出回路と共に使用する別個の検出器(制御及び又は表示回路)に代えて、本発明の全実施態様における2つ又は2つ超の、電気的に絶縁されたメッシュに関連するライニング損耗検出回路に、単独の検出器を切り替え自在に接続させ得る。
【0022】
図では別個の壁及び底部ライニング損耗検出システムが例示されるが、本発明のある実施態様において、(1)単一のライニング損耗検出回路及び検出器を備える一体のキャスト不定形耐火物に埋設した連続的側部及び底部メッシュを提供すること、あるいは(2)共通のライニング損耗検出回路及び検出器を備えるキャスト不定形耐火物に埋設した別個の側部及び底部メッシュを提供すること、の何れかにより、組み合わせ型の壁及び底部ライニング損耗検出システムが提供され得る。
【0023】
図6a〜図6fには本発明のライニング損耗検出システムを備える誘導炉の製造方法の一例が例示される。誘導コイル16は好適な基礎18上で製造(代表的には巻き付け)及び位置決めされ得る。図6aに示すように、コテ塗り適正耐火材(グラウト)20を従来技術における如くコイル周囲に取付け得る。好適なコテ塗り適正耐火材20の商標名はINDUCTOCOAT35AF(ニュージャージー州ランコカスのインダクトサーム社から入手可能)である。底部ライニング損耗検出システムを使用する場合、底部メッシュ30を基礎18の上部位置に嵌装し、且つ、底部メッシュ30周囲にキャスト不定形耐火物28を注入及び固化させることで、図6bに示すように、このキャスト不定形耐火物中に底部メッシュ30を埋設させ得る。あるいは別のモールド内で底部メッシュをキャスト不定形耐火物内に注型し、固化したキャスト不定形耐火物に埋設された状態の底部メッシュを炉の底部に取付け得る。
【0024】
例えば、開放直立型シリンダ形状の、好適なキャスト不定形耐火物製の一時モールド90(あるいは、型枠を構成する複数のモールド)を、誘導コイル16及び耐火材20から構成した容積部内に位置決めし、図6cに示すように、耐火材20とモールドの外壁周囲部との間にキャスト不定形耐火物の環状容積部を形成する。一時モールド90の外周部に沿ってメッシュ26を嵌装し、前記キャスト不定形耐火物の環状容積部に前記INDUCTOCOAT35AF−FLOW(商標)等のキャスト不定形耐火物24を注入して固化させ、かくして図6dに示す如く、硬化されたキャスト不定形耐火物24を形成する。振動コンパクタを使用してキャスト不定形耐火物からトラップエア及び余剰水分を排出させ、固化以前に耐火物を型枠内に然るべく充填させ得る。メッシュ26は、キャスト不定形耐火物の環状容積部内にセットされた時点でキャスト不定形耐火物24中に少なくとも部分的に埋設される。本発明の他の実施態様ではメッシュ26はキャスト不定形耐火物24の厚さt内のどこかに埋設され得る。例えば図7に示す如く、メッシュ26はキャスト不定形耐火物24の内壁周囲部から距離t1オフセットされる。オフセット実施態様は、好適な隔離体を一時モールド90の外周に取付け、次いでキャスト不定形耐火物を注入する前に、これら隔離体の周囲にメッシュを嵌装させることで実現し得る。キャスト不定形耐火物にメッシュを“埋設”とは、本明細書で使用する如き広い意味ではメッシュが耐火物の表面境界部位置で耐火物中に固定される状態を言い、あるいは十分且つ不完全的意味において、固化した耐火物中でメッシュが然るべく維持されるよう、耐火物の表面境界部位置に埋設された状態を言うものとする。
【0025】
キャスト不定形耐火物24が固化した後、一時モールド90を取り外し、炉内側容積部14の境界壁及び底部に合致する形状の交換式ライニングモールド92を、固化したキャスト不定形耐火物24(埋設されたメッシュ26を含む)により形成される容積部内に位置決めし、かくして、図6eに示す如く、固化したキャスト不定形耐火物24と、ライニングモールド92の外壁周囲部との間に交換式ライニング用環状容積部を形成し得る。次いで、従来の手順に従い、従来の粉末耐火物を前記環状容積部に装填し得る。ライニングモールド92を導電性モールド材から形成する場合、ライニングモールド92を従来手順に従い然るべく加熱及び溶融させ、炉内側容積部14の境界部を形成するライニング耐火物層を焼結させる。あるいは、ライニングモールドを取り外し、ライニング耐火物層を直接加熱により焼結させ得る。
【0026】
代表的には粉末耐火物である交換式ライニング耐火物と、導電性のメッシュを埋設したキャスト不定形耐火物とは区別される。キャスト不定形耐火物は、その内部に導電性メッシュを埋設し得るよう使用される。本明細書ではキャスト不定形耐火物は流動性耐火物としても参照され得る。
【0027】
図6fには誘導炉が例示され、本発明のライニング損耗検出システムの一例を備え、炉の代表的な地絡検出器システム用プローブワイヤ22aと、炉接地部(GND)に接続した電気的接地線22bとが追加されている。
上述され且つ図6a〜図6fに示した如き製造方法は本発明の製造ステップ例の一例である。炉構造を完成させる上で従来通りの製造ステップの追加が必要となり得る。
本発明の他の実施態様では、コテ塗り適正耐火材(グラウト)を別個に用いるのではなくむしろ、キャスト不定形耐火物24を誘導コイル16及びその周囲に延伸させ得る。
【0028】
本発明の誘導炉は、大気圧下あるいは、不活性ガス又は真空等の制御環境下に作動する任意形式、例えば、底部注入、頂部傾斜注入、圧入、あるいは押し出し型、等の形式のものであり得る。図面に示された誘導炉は内側断面が円形であるが、本発明を四角等のその他断面形状の炉においても利用可能である。図面では本発明の誘導炉用の誘導コイルは1つであるが、本明細書において“誘導コイル”とは、各々が電気的接続部を有し、及び又は、相互に電気的に連結された複数の誘導コイルをも含むものとする。
本発明のライニング損耗検出システムは、複数の位置と、耐火物でライニングされた静止状態の桶の間で溶融金属を移送するために使用する耐火物でライニングした手持ち式取鍋においても利用され得る。
本発明の各実施態様には、特定化の電機部品への参照が含まれる。当業者においては、各部品を必ずしも同一形式ではないが本発明の所望の状況を創出し、あるいは、所望の結果を達成する部品に代替させることにより本発明を実施し得る。例えば、単一の各部品を多数の部品に、あるいはその逆において代替させ得る。
以上、本発明を実施例を参照して説明したが、本発明の内で種々の変更をなし得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0029】
10 誘導炉
12 (交換式)ライニング
14 炉内側容積部
16 誘導コイル
18 基礎
20 耐火材
22a (地絡検出器システム用)プローブワイヤ
22b 電気的接地線
24 キャスト不定形(流動性)耐火物
25 公称溶融物ライン
26 メッシュ
26a 垂直方向側部
26c 垂直方向断続部
28 キャスト不定形耐火物
30 底部メッシュ
30a 半径方向側部
30c 半径方向断続部
36a メッシュ
37a 垂直方向側部
37b 垂直方向側部
38a 電気的断続部
46a〜46d メッシュ
56a〜56p メッシュ
90 一時モールド
92 交換式ライニングモールド
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7
図8
図9b
図9c
図9d
図6f
図9a