特許第6058009号(P6058009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6058009PI3K−およびMEK−阻害剤の相乗的な組合せ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058009
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】PI3K−およびMEK−阻害剤の相乗的な組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4439 20060101AFI20161226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161226BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20161226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   A61K31/4439ZMD
   A61P35/00
   A61K31/4184
   A61P43/00 111
   A61P43/00 121
【請求項の数】7
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-528568(P2014-528568)
(86)(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公表番号】特表2014-525454(P2014-525454A)
(43)【公表日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】US2012052955
(87)【国際公開番号】WO2013066483
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年8月28日
(31)【優先権主張番号】61/529,380
(32)【優先日】2011年8月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/542,463
(32)【優先日】2011年10月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】フリッチュ,クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】フアン,シーツォング
(72)【発明者】
【氏名】ベーム,マルカス
(72)【発明者】
【氏名】ディ トマソ,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】コサート,ジャン ジーシーイー
【審査官】 吉田 佳代子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/006225(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/029082(WO,A1)
【文献】 特表2008−545654(JP,A)
【文献】 特表2005−530709(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/054620(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
A61P 35/00
A61P 43/00
CAplus/WPIDS/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)またはその薬学的に許容される塩と、
意選択的に少なくとも1種の薬学的に許容される担体と
を含む
(a)前記PI3K阻害化合物またはその薬学的に許容される塩が、同時、個別または逐次投与のために(b)マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害化合物6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミドまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて用いられる、
BRAF変異、KRAS変異、PIK3CA変異又はそれらの組合せを有し、かつPTEN変異を有さない大腸がん;KRAS変異を保有する膵臓がん;KRAS変異を保有する非小細胞肺がん;およびPTEN変異を有さないメラノーマから選択される増殖性疾患の処置における使用のための医薬組成物
【請求項2】
(b)MEK阻害化合物6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミドまたはその薬学的に許容される塩と、
任意選択的に少なくとも1種の薬学的に許容される担体と
を含む、
(b)前記MEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩が、同時、個別または逐次投与のために(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて用いられる、
BRAF変異、KRAS変異、PIK3CA変異又はそれらの組合せを有し、かつPTEN変異を有さない大腸がん;KRAS変異を保有する膵臓がん;KRAS変異を保有する非小細胞肺がん;およびPTEN変異を有さないメラノーマから選択される増殖性疾患の処置における使用のための医薬組成物。
【請求項3】
BRAF変異、KRAS変異、PIK3CA変異又はそれらの組合せを有し、かつPTEN変異を有さない大腸がん;KRAS変異を保有する膵臓がん:KRAS変異を保有する非小細胞肺がん;およびPTEN変異を有さないメラノーマから選択される増殖性疾患の処置ための薬剤の製造のための、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)またはその薬学的に許容される塩の使用であって、
(a)前記PI3K阻害化合物またはその薬学的に許容される塩が、(b)MEK阻害化合物6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミドまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて用いられる、前記使用
【請求項4】
BRAF変異、KRAS変異、PIK3CA変異又はそれらの組合せを有し、かつPTEN変異を有さない大腸がん;KRAS変異を保有する膵臓がん:KRAS変異を保有する非小細胞肺がん;およびPTEN変異を有さないメラノーマから選択される増殖性疾患の処置のための薬剤の製造のための、(b)MEK阻害化合物6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミドまたはその薬学的に許容される塩の使用であって、
(b)前記MEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩が、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて用いられる、前記使用。
【請求項5】
(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)またはその薬学的に許容される塩の1つまたは複数の単位剤形、および(b)EK阻害化合物6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミドまたはその薬学的に許容される塩の1つまたは複数の単位剤形を含む
BRAF変異、KRAS変異、PIK3CA変異又はそれらの組合せを有し、かつPTEN変異を有さない大腸がん;KRAS変異を保有する膵臓がん:KRAS変異を保有する非小細胞肺がん;およびPTEN変異を有さないメラノーマから選択される増殖性疾患の処置における使用のための組合せ製剤。
【請求項6】
PI3K阻害剤およびMEK阻害剤が、増殖性疾患の処置のための相乗的有効量で提供される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
BRAF変異、KRAS変異、PIK3CA変異又はそれらの組合せを有し、かつPTEN変異を有さない大腸がん;KRAS変異を保有する膵臓がん:KRAS変異を保有する非小細胞肺がん;およびPTEN変異を有さないメラノーマから選択される増殖性疾患の進行の遅延または処置における使用のための、
治療剤として(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)またはその薬学的に許容される塩の1つまたは複数の単位剤形、および(b)MEK阻害化合物6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミドまたはその薬学的に許容される塩の1つまたは複数の単位剤形を、その同時、個別または逐次投与のための使用説明書と一緒に含む、市販用パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
(a)ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)またはその薬学的に許容される塩と、(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害化合物、またはその薬学的に許容される塩と、任意選択的に少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬的な組合せ;がんなどの増殖性疾患の処置または予防におけるこのような組合せの使用;および治療有効量のこのような組合せを投与することを含む、がんなどの増殖性疾患に罹患している対象を処置する方法。
【0002】
発明の背景
マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼおよびホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)/AKT経路を経るシグナル伝達は、細胞外刺激によって誘発され、様々な生物学的過程、例えば、増殖、分化および細胞死を調節する。両経路は、上流分子の変異または過剰発現によってがんの多くでしばしば活性化される。これらの経路は、互いに相互作用して腫瘍増殖を調節し、したがって、それらは、がんの処置における潜在的な標的である。
【0003】
ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)は、イノシトール脂質のD−3’位へのホスフェートの転移を触媒して、ホスホイノシトール−3−リン酸(PIP)、ホスホイノシトール−3,4−二リン酸(PIP2)およびホスホイノシトール−3,4,5−トリホスフェート(PIP3)を産生する脂質キナーゼのファミリーを含み、これらは、次に、プレクストリン相同性、FYVE、Phoxおよび他のリン脂質結合ドメインを含むタンパク質を、種々のシグナル伝達複合体中に、しばしば原形質膜に結合させることにより、シグナル伝達カスケードにおける二次メッセンジャーとして働く(Vanhaesebroeckら、Annu. Rev. Biochem 70:535頁(2001年);Katsoら、Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 17:615頁(2001年)。2つのクラス1 PI3Kの中で、クラス1A PI3Kは、p85α、p55α、P50α、p85βまたはp55γであり得る調節サブユニットと構成的に会合した触媒的p110サブユニット(α、β、δアイソフォーム)からなるヘテロ二量体である。クラス1Bサブクラスは、2つの調節サブユニットp101またはp84の一方と会合した触媒的p110γサブユニットからなるヘテロ二量体である、一つのファミリーメンバーを有する(Frumanら、Annu Rev. Biochem. 67:481頁(1998年); Suireら、Curr. Biol. 15:566頁(2005年))。p85/55/50サブユニットのモジュラードメインは、活性化受容体および細胞質チロシンキナーゼ上の特定の配列構成中のホスホチロシン残基に結合し、クラス1A PI3Kの活性化および局在化をもたらすSrc相同(SH2)ドメインを含む。クラス1B PI3Kは、多様なレパートリーのペプチドおよび非ペプチドリガンドに結合するGタンパク質共役受容体によって直接活性化される(Stephensら、Cell 89:105(1997年); Katsoら、Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 17:615〜675頁(2001年))。結果として、得られるクラス1 PI3Kのリン脂質産物は、上流受容体と、増殖、生存、走化性、細胞輸送、運動性、代謝、炎症性およびアレルギー性応答、転写ならびに翻訳を含む下流細胞活動と結びつける(Cantleyら、Cell 64:281頁(1991年); EscobedoおよびWilliams、Nature 335:85頁(1988年); Fantlら、Cell 69:413(1992年))。
【0004】
PIP2およびPIP3は、ウイルス腫瘍遺伝子v−Aktのヒトホモログの産物であるAktを原形質膜にしばしば動員し、そこで、増殖および生存に重要な多くの細胞内シグナル伝達経路の節点として働く(Fantlら、Cell 69:413〜423頁(1992年); Baderら、Nature Rev. Cancer 5:921頁(2005年); VivancoおよびSawyer、Nature Rev. Cancer 2:489頁(2002年))。PI3Kの異常調節は、しばしばAkt活性化を介して生存を高め、ヒトがんにおける最も一般的な事象の一つであり、多くのレベルで起こることが示されている。イノシトール環の3’位でホスホイノシチドを脱リン酸化し、その際にPI3K活性に拮抗する腫瘍抑制遺伝子PTENは、様々な腫瘍において機能的に欠失している。他の腫瘍において、p110α、アイソフォーム、PIK3CA、およびAktのための遺伝子は増幅され、それらの遺伝子産物のタンパク質発現の増加は、いくつかのヒトがんで実証されている。さらに、p85〜p110複合体を上流調節するように働くp85αの変異および転座が、ヒトがんにおいて記載されている。最後に、下流シグナル伝達経路を活性化するPIK3CAにおける体細胞ミスセンス変異が、多種多様なヒトがんにおいて相当な頻度で記載されている(Kangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102:802頁(2005年); Samuelsら、Science 304:554頁(2004年); Samuelsら、Cancer Cell 7:561〜573頁(2005年))。これらの観察は、ホスホイノシトール−3キナーゼおよびこのシグナル伝達経路の上流および下流要素の脱調節が、ヒトがんおよび増殖性疾患と関連する最も一般的な脱調節の一つであることを示す(Parsonsら、Nature 436:792頁(2005年); Hennesseyら、Nature Rev. Drug Disc. 4:988〜1004頁(2005年))。
【0005】
さらに、マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼカスケードの過剰活性化は、細胞増殖および分化において重要な役割を果たすことが知られている。この経路は、増殖因子がその受容体チロシンキナーゼに結合するときに活性化され得る。この相互作用は、RASとRAFとの会合を促進し、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)を介してERKへのリン酸化カスケードを開始する。MEKのリン酸化は、ATPに対するその親和性に加えて、ERKに対するその親和性およびその触媒活性を高めるようにみえる。
【0006】
MAPキナーゼ経路は、ヒトがんの約1/3で、異所性タンパク質活性化をもたらす変異をしばしば介して、脱調節される。この脱調節は、次に、限定されるものではないが、増殖の促進およびアポトーシスの回避を含めて、がん表現型の病因論および維持に不可欠である多様な細胞変化をもたらす(Dhillonら、Oncogene、2007年、26:3279〜3290頁)。この経路の阻害は、増殖性疾患において有益であることが知られている。MEKリン酸化のためのわずかに知られた基質が、MAPキナーゼ、ERK1およびERK2であるので、MEKは魅力的な治療標的である。MEKは、RASまたはRAF腫瘍遺伝子において変異を有する腫瘍で頻繁に活性化される。MEK/ERKの構成的活性化は、膵臓、結腸、肺、腎臓および卵巣の原発腫瘍試料に見出されている。
【0007】
MEKの阻害は、(a)腫瘍および白血病:腫瘍モデルにおける効力の証拠(Nature-Medicine 5(7):810〜816頁、1999年; Tracetら、AACR 4月6〜10日、2002年、ポスター番号5426; Tecle, H. IBC 2nd International Conferece of Protein Kinases、9月9〜10日、2002年、J. Clin. Invest. 108(6)、851〜859頁、2001年)、(b)疼痛:疼痛モデルにおける効力の証拠(J. Neurosci. 22:478頁、2002年; Acta Pharmaceutical Sin. 26:789頁 2005年; Expert Opin Ther Targets、9:699頁、2005年; Mol. Pain. 2:2頁、2006年)、(c)卒中:MEKの阻害による虚血性脳損傷に対する卒中モデルの有意な神経保護における効力の証拠(J. Pharmacol. Exp. Ther. 304:172頁、2003年; Brain Res. 996:55頁、2004年)、(d)糖尿病:糖尿病合併症における証拠(Am. J. Physiol. Renal. 286、F120 2004年)、(e)炎症:炎症モデルにおける効力の証拠(Biochem Biophy. Res. Com. 268:647頁、2000年)、ならびに(f)関節炎:実験的骨関節炎における効力の証拠(Arthritis & (J. Clin. Invest. 116:163頁、2006年)などのいくつかの研究で様々な疾患において潜在的な治療利益を有することが示されている。
【0008】
PI3K経路は、MAPK経路と広範囲に相互作用する。これらの経路は、共通の上流活性化物質を共有し、それらは両方とも、腫瘍形成性RASにより活性化され、一方または他方が阻害される場合、いくらかの代償的シグナル伝達を提供すると思われる。
【0009】
がんの患者にとっての多数の処置選択肢にもかかわらず、がんの有効な長期処置のために投与することができる有効で安全な治療剤に対する必要性および新規な組合せ治療に対する必要性が依然として残されている。
【0010】
驚くべきことに、本発明の、有効量のp110α−特異的ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−(4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル)−アミドと、有効量の少なくとも1種のMEK阻害化合物、特に6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミドまたは(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミドとの組合せが、増殖性疾患、特にがんの処置において予想外の改善をもたらすことが発見された。同時、逐次または個別に投与される場合、本発明のこの特異的なホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害化合物とMEK阻害化合物とが相乗的に相互作用して、細胞増殖を強力に抑制する。この予想外の相乗的反応は、それぞれの化合物に必要な用量の低減を可能にし、副作用の低減および処置における化合物の長期臨床の有効的増強をもたらす。
【0011】
発明の概要
本発明は、特に増殖性疾患の処置または予防のための、同時、個別または逐次投与のための、(a)ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤またはその薬学的に許容される塩と、任意選択的に少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬的な組合せに関する。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、組合せパートナーは、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩、および(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)もしくは(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)からなる群から選択される少なくとも1種のMEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩、である。
【0013】
本発明の別の好ましい実施形態において、組合せパートナーは、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩、および(b)少なくとも1種のMEK阻害化合物6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)またはその薬学的に許容される塩、である。
【0014】
本発明はさらに、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害剤またはその薬学的に許容される塩と、任意選択的に少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む組合せ製剤または医薬組成物に関する。一実施形態において、本発明は、(a)組合せパートナー(a)の1つまたは複数の単位剤形、および(b)組合せパートナー(b)の1つまたは複数の単位剤形を含む、組合せ製剤に関する。
【0015】
本発明は特に、増殖性疾患の処置または予防を必要とする対象における増殖性疾患の処置または予防に有用な、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害剤またはその薬学的に許容される塩と、任意選択的に少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬的な組合せに関する。
【0016】
本発明はまた、増殖性疾患の処置または予防を必要とする対象における増殖性疾患の処置または予防のための医薬組成物または薬剤の調製における使用のための、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害剤またはその薬学的に許容される塩と、任意選択的に少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬的な組合せに関する。
【0017】
本発明はさらに、増殖性疾患の処置または予防のための医薬組成物または薬剤の調製のための、6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害剤と組み合わせた、PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0018】
本発明は、増殖性疾患を有する対象を処置する方法であって、前記対象に、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害剤またはその薬学的に許容される塩と、任意選択的に少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む組合せを、増殖性疾患に対して共同で治療に有効である量で投与されることを含む方法に関する。
【0019】
本発明はさらに、増殖性疾患の進行の遅延または処置における使用のための、治療剤として(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害剤またはその薬学的に許容される塩とを含む組合せを、その同時、個別または逐次投与のための使用説明書と一緒に含む市販用パッケージを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、NCI−H2122非小細胞肺がん細胞株における、(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)と6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)との組合せについて50%阻害におけるアイソボログラム等高線を示す。
図2図2は、別の試験から得られた高分解能データについて、NCI−H2122非小細胞肺がん細胞株における、(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)と6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)との組合せについて50%阻害におけるアイソボログラム等高線を示す。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、特に増殖性疾患の処置または予防における使用のための、同時、個別または逐次投与のための、(a)ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(以下、「化合物A」と称される)またはその薬学的に許容される塩と、(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害化合物またはその薬学的に許容される塩と、任意選択的に少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬的な組合せに関する。
【0022】
本明細書で使用される一般用語は、明示的に断りのない限り、以下の意味によって定義される。
【0023】
「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語は、特に断りのない限り、それらの制限のない(open-ended)、かつ非限定的な意味において本明細書で使用される。
【0024】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」および「an」ならびに「the」という用語ならびに同様の言及は、本明細書で特に断りのないかまたは文脈により明らかに否定されない限り、単数および複数の両方に及ぶように解釈されるべきである。複数形が化合物、塩などについて使用される場合、これは、単一の化合物、塩なども意味するように解釈される。
【0025】
「組合せ」または「医薬的な組合せ」という用語は、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1種のMEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩が、同時、同じ時間に独立して、またはその組合せパートナーが協同的、例えば、相乗的効果を示すことを可能にする時間間隔内で個別に投与されてもよい、組合せ投与のための、1つの単位剤形での配合剤、非固定の組合せまたは要素のキットのいずれかを指すように本明細書で定義される。「配合剤」という用語は、活性成分、例えば、化合物Aと組合せパートナーの両方が、単一の実体または調剤(dosage)の形態で同時に患者に投与されることを意味する。「非固定の組合せ」という用語は、活性成分(例えば、本発明の化合物と組合せパートナー)の両方が、同時に、共にまたは特定の時間制限なしに逐次にのいずれかで個別の実体として患者に投与され、このような投与が、患者の体内で2種の化合物の治療有効レベルをもたらすことを意味する。後者はまた、カクテル治療、例えば、3種以上の活性成分の投与にも適用される。
【0026】
「ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ阻害剤」という用語は、PI3−キナーゼを標的とする、減少させるまたは阻害する化合物を指すように本明細書で定義される。PI3−キナーゼ活性は、インスリン、血小板由来増殖因子、インスリン様増殖因子、上皮細胞増殖因子、コロニー刺激因子、および肝細胞増殖因子を含めて、多くのホルモンおよび増殖因子の刺激に反応して増加することが示され、および細胞の増殖および形質転換に関連する過程に関与してきた。
【0027】
「MEK阻害剤」という用語は、MAPキナーゼ(MEK)のキナーゼ活性を標的とする、減少させるまたは阻害する化合物を指すように本明細書で定義される。MEK阻害剤の標的には、限定されるものではないが、ERKが含まれる。MEK阻害剤の間接的標的には、限定されるものではないが、サイクリンD1が含まれる。
【0028】
「医薬組成物」という用語は、哺乳動物に影響を与える特定の疾患または状態を予防または処置するために、対象(例えば、哺乳動物またはヒト)に投与される少なくとも1種の治療剤を含有する混合物または溶液を指すように本明細書で定義される。
【0029】
「薬学的に許容される」という用語は、妥当な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/危険比に対して過剰な毒性、刺激アレルギー反応および他の問題となる合併症なしに、対象(例えば、哺乳動物またはヒト)の組織と接触させるのに適した化合物、材料、組成物および/または剤形を指すように本明細書で定義される。
【0030】
本明細書で使用される場合の「共投与」または「組合せ投与」という用語は、単独の患者への選択した治療剤の投与を包含するように定義され、その薬剤が同一の投与経路によりまたは同時に、必ずしも投与されるとは限らない処置レジメンを含むことが意図される。
【0031】
本明細書で使用される場合の「処置する」または「処置」という用語は、対象における少なくとも1つの症状を軽減、減少もしくは緩和する、または疾患の進行の遅延に効果をもたらす処置を含む。例えば、処置は、がんなどの、障害の1つもしくはいくつかの症状の減退または障害の完全な根絶であり得る。本発明の意味の範囲内で、「処置する」という用語も、発症(すなわち、疾患の臨床症状前の期間)を停止する、遅延させるおよび/または疾患の進行もしくは悪化の危険を減少させることを意味する。「保護する」という用語は、必要に応じて、対象における疾患の進行または継続または憎悪を、予防する、遅延させるもしくは処置すること、またはすべてを意味するように本明細書で使用される。
【0032】
本明細書で使用される場合の「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」または「予防」という用語は、予防される状態、疾患または障害に伴うまたはそれらによって引き起こされる少なくとも1つの症状の予防を含む。
【0033】
本明細書で使用される場合の「共同して治療に活性の」または「共同の治療効果」という用語は、治療剤が、処置される温血動物、特にヒトが好み、なおかつ(好ましくは相乗的な)相互作用(共同の治療効果)を示す時間間隔で、個別に(時間的にずらされた仕方、特に順序によって異なる仕方で)与えられ得ることを意味する。これがその場合であるかどうかは、とりわけ、化合物が両方とも、少なくともある一定の時間間隔の間、処置されるヒトの血液中に存在することを示す血中濃度を追跡することによって決定され得る。
【0034】
治療剤の組合せの「治療有効量」または「臨床有効量」という用語は、その組合せで処置される障害の臨床的に観察可能な徴候および症状の基準を上回る、観察可能な改善をもたらすために十分な量である。
【0035】
本明細書で使用される場合の「相乗効果」という用語は、ある効果、例えば、それら自体で投与されるそれぞれの薬剤の効果の単なる相加より大きい、増殖性疾患、特にがん、またはその症状の症候性進行を遅延させる効果をもたらす、例えば、本発明の式(I)の化合物、例えば、化合物Aと、少なくとも1種のMEK阻害化合物となどの2つの治療剤の作用を指す。相乗効果は、適当な方法、例えば、Sigmoid-Emax方程式(Holford, N.H.G.およびScheiner,L.B.、Clin. Pharmacokinet. 6:429〜453頁(1981年))、Loewe additivity方程式(Loewe, S.およびMuischnek, H.、Arch. Exp. Pathol Pharmacol. 114:313〜326頁(1926年))およびmedian-effect方程式(Chou, T. C.およびTalalay, P.、Adv. Enzyme Regul. 22:27〜55頁(1984年))などの適切な方法を用いて計算され得る。上に言及された各方程式は、実験データに適用して、薬剤の組合せの効果の評価において助けとなる対応するグラフを生成し得る。上に言及された方程式に関連した対応するグラフは、濃度効果曲線、アイソボログラム曲線および組合せ指数曲線である。
【0036】
本明細書で使用される場合の「対象」または「患者」という用語は、がん、またはがんを直接または間接に含む任意の障害に罹患し得るまたは苦しめられ得る動物を含む。対象の例には、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ ラット、およびトランスジェニック非ヒト動物が含まれる。好ましい実施形態において、対象は、ヒト、例えば、がんに罹患している、がんに罹患するリスクがある、または潜在的にがんに罹患し得るヒトである。
【0037】
「約」または「およそ」という用語は、所与の値または範囲の10%以内、より好ましくは5%以内の意味を有するものとする。
【0038】
本発明の医薬的な組合せは、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ阻害剤(PI3K)化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(以下、(「化合物A」)と称される)を含む。化合物Aは、式I
【0039】
【化1】
のp110α−選択的ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害化合物である。化合物Aは、その遊離の塩基形態の合成が記載された国際公開第2010/029082号に最初に記載された。化合物Aの合成は、例えば、実施例15として国際公開第2010/029082号に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書によって組み込まれる。
【0040】
化合物Aに言及する場合、「塩(単数)」または「塩(複数)」という用語は、個々にまたは遊離の式(I)の化合物との混合物で存在することができ、好ましくは薬学的に許容される塩である、化合物Aの塩であることが理解される。このような塩は、例えば、塩基性窒素原子を有する式(I)の化合物、特にその薬学的に許容される塩から、好ましくは有機または無機酸によって、酸付加塩として形成される。好適な無機酸は、例えば、ハロゲン酸(例えば、塩酸)、硫酸、またはリン酸である。好適な有機酸は、例えば、カルボン酸またはスルホン酸、例えば、フマル酸またはメタンスルホン酸である。単離または精製目的のために、薬学的に許容されない塩、例えば、ピクリン酸塩または過塩素酸塩を使用することも可能である。治療用途の場合、薬学的に許容される塩または遊離の化合物だけが、用いられ(適用可能な場合、医薬製剤の形態で)、したがって、これらが好ましい。遊離形態のこの新規化合物と、それらの塩の形態(例えば、この新規化合物の精製または同定において中間体として使用され得る塩を含めて)のものとの間の密接な関係を考慮すると、以上および以下でのこの遊離化合物への言及はいずれも、必要および便宜に応じて、対応する塩にも言及すると理解されるべきである。化合物Aの塩は、好ましくは薬学的に許容される塩であり;好適な対イオン形成性の薬学的に許容される塩が、当技術分野で公知である。
【0041】
本発明の医薬的な組合せは、6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0042】
MEK阻害化合物6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)は、式(II)
【0043】
【化2】
の化合物である。MEK阻害化合物6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)は、PCT出願国際公開第03/077914号に記載されており、その調製方法は、例えば、その中の実施例18に記載されている。
【0044】
本明細書に開示される場合を除いて、本発明で使用される化合物は、1つまたは複数の不斉中心を有してもよく、PCT出願国際公開第03/077914号に記載されたとおりに個々の(R)−もしくは(S)−立体異性体としてまたはそれらの混合物として生成され得る。別に示される場合を除いて、本明細書および特許請求の範囲における特定の化合物の記述または命名は、それらの個々のエナンチオマーの両方、ジアステレオマー混合物、ラセミ化合物またはそうでないものを含むことが意図される。したがって、本発明は、本発明の化合物のジアステレオマー混合物および分割したエナンチオマーを含めて、このような異性体のすべても含む。ジアステレオマー混合物は、当業者に知られた方法、例えば、クロマトグラフィーまたは分別結晶によって、それらの物理化学的差異に基づいて、それらの個々のジアステレオマーに分離され得る。エナンチオマーは、適当な光学活性化合物(例えば、アルコール)と反応させることによってエナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に転換し、そのジアステレオマーを分離し、個々のジアステレオマーを対応する純粋エナンチオマーに転換する(例えば、加水分解する)ことによって分離され得る。立体化学の決定および立体異性体の分離のための方法は、当技術分野で周知である(「Advanced organic Chemistry」、第4版、J. March、John Wiley and Sons、New York、1992年の第4章における検討を参照されたい)。
【0045】
MEK阻害化合物(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)は、式(III)
【0046】
【化3】
の化合物である。MEK阻害化合物(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)は、PCT出願国際公開第2007/044084号の実施例25−BBに記載されており、その調製方法は、その中に記載されている。
【0047】
本発明の組合せで用いられてもよいさらなるMEK阻害剤には、限定されるものではないが、PD0325901(Pfizer)(PCT公開第02/06213号参照)、PD−184352(Pfizer)、RDEA119(Ardea Biosciences)、GSK1120212(GlaxoSmithKline)(PCT公開第05/121142号参照)、XL518(Exelexis)、AS−701255(Merck Serono)、AS−701173(Merck Serono)、AS703026(Merck Serono)、RDEA436(Ardea Biosciences、E6201(Eisai)(Gotoら,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,3331(2):485〜495頁(2009年)参照)、RO4987655(Hoffmann−La Roche)、JTP−74057、RG7167、および/またはRG7420が含まれる。
【0048】
好ましくは、本発明の組合せで用いられるMEK阻害化合物は、6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0049】
MEK阻害剤に関する場合、「塩(単数)」または「塩(複数)」という用語は、特に断りのない限り、本発明の化合物において存在してもよい酸性および塩基性基の塩を含む。事実上塩基性である本発明の化合物は、種々の無機および有機酸と多種多様な塩を形成することができる。本発明のこのような塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を調製するために用いられてもよい酸は、非毒性酸付加塩、すなわち、薬学的に許容されるアニオンを有する塩、例えば、酢酸塩、安息香酸塩、臭化物、塩化物、クエン酸塩、フマル酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、および酒石酸塩を形成するものである。本発明の単一化合物は2つ以上の酸性または塩基性部分を含んでいてもよいので、本発明の化合物は、単一化合物中にモノ、ジまたはトリ塩を含み得る。
【0050】
本発明の化合物における酸性部分の場合、塩は、本発明の化合物を、塩基性化合物、特に無機塩基で処理することによって形成されてもよい。好ましい無機塩は、アルカリおよびアルカリ土類金属、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、バリウムおよびカルシウムと形成されるものである。好ましい有機塩基塩には、例えば、アンモニウム、ジベンジルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、フェニルエチルベンジルアミン、ジベンジルエチレンジアミンなどの塩が含まれる。酸性部分の他の塩には、例えば、プロカイン、キニンおよびN−メチルグルソアミンと形成される塩に加えて、塩基性アミノ酸、例えば、グリシン、オルニチン、ヒスチジン、フェニルグリシン、リシンおよびアルギニンと形成される塩が含まれ得る。特に好ましい塩は、本発明の化合物のナトリウムまたはカリウム塩である。
【0051】
塩基性部分に関して、塩は、本発明の化合物を、酸性化合物、特に無機酸で処理することによって形成される。この種の好ましい無機塩には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの塩が含まれ得る。この種の好ましい有機塩には、例えば、酢酸、コハク酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、D−グルタミン酸、グリコール酸、安息香酸、桂皮酸などの有機酸と形成される塩が含まれ得る。この種の特に好ましい塩は、本発明の化合物Bの塩酸塩または硫酸塩の塩である。
【0052】
本発明に適した化合物Bおよび化合物Cのさらなる薬学的に許容される塩には、PCT出願国際公開第03/077914号およびPCT出願国際公開第2007/044084号に開示された塩が含まれ、これらは両方とも参照により本出願中に本明細書によって組み込まれる。
【0053】
特に断りがないか、または本文により明らかに示されない限り、本発明の医薬的な組合せに有用な治療剤への言及は、化合物の遊離塩基と、化合物の薬学的に許容される塩のすべての両方を含む。
【0054】
コード番号、一般名または商品名で同定される化合物の構造は、標準大要「The Merck Index」の現行版またはデータベース、例えば、Patents International(IMS World Publications)から採用されてもよい。その対応する内容は、参照により本明細書によって組み込まれる。
【0055】
特許出願の引用が上に示されるそれぞれの場合に、本化合物に関する主題は、参照により本出願中に本明細書によって組み込まれる。本発明の医薬的な組合せに治療剤として用いられる化合物は、それぞれ、引用された文書に記載されたとおりに調製および投与され得る。
【0056】
また本発明の範囲内に、上に示されたとおりの2つの個別の治療剤の組合せもあり、すなわち、本発明の範囲内の医薬的な組合せは、3つまたはそれを超える治療剤を含み得る。
【0057】
(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩と、任意選択的に少なくとも1種の薬学的に許容される担体と、を含む医薬的な組合せは、以下に、本発明の組合せと称される。
【0058】
本発明の好ましい実施形態において、組合せパートナーは、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩、および(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)もしくは(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)からなる群から選択される少なくとも1種のMEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩、である。
【0059】
本発明の別の好ましい実施形態において、組合せパートナーは、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩、および(b)少なくとも1種のMEK阻害化合物6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)またはその薬学的に許容される塩、である。
【0060】
本発明はまた、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害剤、またはその薬学的に許容される塩と、任意選択的に少なくとも1種の薬学的に許容される担体と、を含む組合せ製剤または医薬組成物に関する。
【0061】
一実施形態において、本発明は、(a)組合せパートナー(a)の1つまたは複数の単位剤形、および(b)組合せパートナー(b)の1つまたは複数の単位剤形を含む組合せ製剤に関する。
【0062】
本発明は特に、増殖性疾患の処置または予防を必要とする対象における増殖性疾患の処置または予防に有用な本発明の組合せに関する。本発明のこの実施形態において、本発明の組合せは、PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩、および6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を含む組合せ治療を対象に投与することを含む、増殖性疾患の処置または予防に使用される。好ましくは、MEK阻害化合物は、組み合わされる場合に有益な効果をもたらす治療有効用量で投与される。投与は、同時または逐次であってもよい。
【0063】
本発明の組合せで処置または予防される増殖性疾患は、主に腫瘍および/またはがんである。増殖性疾患の例には、メラノーマ、肺がん、大腸がん(CRC)、乳がん、腎がん、例えば、腎細胞癌(RCC)、肝がんまたは肝細胞癌、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺がん(NSCLC)、甲状腺がん、膵がん、食道、および神経線維腫症が含まれる。
【0064】
本発明の一実施形態において、増殖性疾患は固形腫瘍である。「固形腫瘍」という用語は特に、メラノーマ、甲状腺がん、乳がん、膵がん、卵巣がん、結腸および概してGI(胃腸)管のがん、子宮頚がん、腎がん、例えば、腎細胞癌(RCC)、肝がんまたは肝細胞癌、肺がん、特に小細胞肺がんおよび非小細胞肺がん、頭頚部がん、膀胱がん、前立腺のがん、食道、またはカポジ肉腫を意味する。本組合せは、固形腫瘍だけでなく、液性腫瘍の増殖も阻害する。さらに、腫瘍タイプおよび使用される特定の組合せに応じて、腫瘍体積が減少され得る。本明細書で開示される組合せは、腫瘍の転移拡大および微小転移の増殖または発症を予防するためにも適する。本明細書で開示される組合せは、予後不良患者、特に転移性メラノーマまたは膵がんを有するような予後不良患者の処置に特に適する。
【0065】
処置されるがんは、PI3Kアルファの過剰発現もしくは増幅、PIK3CAの変異、および/またはMAPシグナル伝達経路における遺伝子変化、例えば、HRAS、KRAS、NRASまたはBRAF変異もしくは遺伝子増幅などを有し得る。一実施形態において、処置されるがんは、KRAS変異を有し、例えば、KRAS変異の膵がん、結腸がん、肺がん(例えば、NSCLC)または白血病である。
【0066】
さらなる実施形態において、増殖性疾患は、膵がん、大腸がん、メラノーマ、食道、または肺がん、特に非小細胞肺がんである。
【0067】
本発明の組合せは、本発明に従って、単独で、増殖性疾患の処置に使用され得ることが理解される。
【0068】
PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩、および6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩、特に6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)もしくは(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)またはその薬学的に許容される塩、を含む組合せ治療は、単剤治療と比較して増殖性疾患の処置または予防における予想外の改善をもたらすことが見出された。同時、逐次または個別に投与される場合、PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)とMEK阻害剤とは相乗的に相互作用して、細胞増殖を阻害する。本発明の組合せは、標準的な全身治療に失敗した進行がんの患者の処置に特に適する。これは、単剤治療に耐性を示す、または本明細書で開示されるものと異なる組合せに耐性を示す腫瘍タイプを有する患者を含む。
【0069】
増殖性疾患の性質は、多因子性である。特定の状況下で、作用の異なる機構を有する薬剤が組み合わされてもよい。しかしながら、異なる作用様式を有する治療剤の任意の組合せを単に考慮することは、有利な効果を有する組合せを必ずしももたらすとは限らない。
【0070】
本発明の医薬的な組合せの投与は、本発明の組合せで使用される薬学的治療剤の一つだけを適用する単剤治療と比較して、例えば、症状の緩和、進行遅延または阻害に関して、有益な効果、例えば、相乗的な治療効果だけでなく、さらなる驚くべき有益な効果、例えば、より少ない副作用、生活の質の改善または疾病率の減少ももたらし得る。
【0071】
さらなる利益は、本発明の組合せの治療剤は比較的低い用量で使用され得る、例えば、必要用量は、しばしば比較的小さいだけでなく、より少ない頻度でも適用されるか、または組合せパートナーの一方のみで観察される副作用の発生率を減少させるために使用され得ることである。これは、処置される患者の要望および要求と一致している。
【0072】
それは、本発明の組合せが、先に記載した有益な効果をもたらすという確立された試験モデルで示すことができる。当業者は、このような有益な効果を立証するために関連する試験モデルを選択することが十分に可能である。本発明の組合せの薬理学的活性は、例えば、臨床試験においてまたは以下に実質的に記載されるとおりの試験手順において実証され得る。
【0073】
適切な臨床試験は、特に、例えば、増殖性疾患の患者における非盲検の用量漸増試験である。このような試験は、特に本発明の組合せの治療剤の相乗作用を立証する。増殖性疾患に対する有益な効果は、当業者にそのようなものとして知られているこれらの試験の結果によって直接決定され得る。このような試験は、特に、いずれかの治療剤を用いる単剤治療と本発明の組合せとの効果を比較するために適切であり得る。
【0074】
一実施形態において、PI3K阻害化合物Aの用量は、最大耐用量(Maximum Tolerated Dosage)に達するまで段階的に増加させ、本発明の少なくとも1種のMEK阻害化合物は、固定用量で投与される。代替として、PI3K阻害化合物Aは、固定用量で投与されてもよく、本発明の少なくともMEK阻害剤の用量は段階的に増加させてもよい。各患者は、PI3K阻害化合物Aおよび/または本発明の少なくとも1種のMEK阻害剤の用量を毎日または間欠的に受けてもよい。処置の効力は、このような試験において、例えば、12週、18週または24週後に、6週間毎の症状スコアの評価によって決定され得る。
【0075】
好ましい実施形態において、MEK阻害剤は、化合物Bもしくは化合物Cまたはその薬学的に許容される塩である。
【0076】
1つまたは複数の成分間の相乗的相互作用を決定するときに、効果についての最適範囲および効果についての各成分の絶対用量範囲は、異なるw/w比範囲および処置を必要とする患者への用量にわたって成分を投与することによって明確に測定され得る。ヒトの場合、患者に対して臨床試験を実施する複雑さおよび費用は、相乗効果の一次モデルとしてのこの試験形式の使用を非実用的にさせ得る。しかしながら、一つの種における相乗効果の観察は、他の種における効果を予測することができ、動物モデルは、本明細書で記載されるとおりに、相乗的効果を測定するために存在し、このような試験の結果は、薬物動態学的/薬力学的方法の適用によって他の種で必要とされる有効な用量および血漿濃度比範囲ならびに絶対的な用量および血漿濃度を予測するためにも使用され得る。腫瘍モデルとヒトで見られる効果との間の確立された相関は、動物における相乗効果が、例えば、
【0077】
以下の実施例に記載されるとおりの、BRAF変異:SW1417、COLO205、LS411N、HCT−29、およびRKO;KRAS変異:NCI−H23、NCI−H2122、NCI−H358、NCI−H460、HCT−15、SW480、SW620、SW837、COLO−678、LS123、NCI−H747、HCT−116、T84、LS180、SW948、およびGP2d;PIK3CA変異:NCI−H460、HCT−15、HCT−116、HCT−29、RKO、T84、SW48;ならびにTP53変異:C2BBeIのがん腫瘍モデル
において実証され得ることを示唆する。
【0078】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の組合せは、PI3Kアルファの過剰発現もしくは増幅、PIK3CA変異、および/またはHRAS、KRAS、NRASもしくはBRAF変異を含む、増殖性疾患、好ましくはがんの処置または予防における使用のために、PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、および/またはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩と、を含む。好ましくは、PI3Kアルファの過剰発現もしくは増幅、PIK3CA変異、および/またはHRAS、KRAS、NRASもしくはBRAF変異を含むがんは、メラノーマ、膵臓、大腸、食道、または肺である。
【0079】
一態様において、本発明は、相乗的相互作用を特定するために使用される、例えば、以下の実施例に記載されるとおりの腫瘍モデルで実測される範囲に対応する組合せ範囲(w/w)で、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、(b)本発明の少なくとも1種のMEK阻害化合物、好ましくは化合物B、またはその薬学的に許容される塩とを含む、ヒト投与のための相乗的組合せを提供する。適切には、ヒトにおける比の範囲は、50:1から1:50重量部、50:1から1:20、50:1から1:10、50:1から1:1、20:1から1:50、20:1から1:20、20:1から1:10、20:1から1:1、10:1から1:50、10:1から1:20、10:1から1:10、10:1から1:1、1:1から1:50、1:1から1:20および1:1から1:10から選択される非ヒトの範囲に対応する。より適切には、ヒト範囲は、10:1から1:1、5:1から1:1または2:1から1:1重量部のオーダーの非ヒトの範囲に対応する。
【0080】
別の態様において、本発明は、相乗的相互作用を特定するために使用される、例えば、以下の実施例に記載されるとおりの腫瘍モデルで実測される範囲に対応する組合せ範囲(w/w)で、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、(b)本発明の少なくとも1種のMEK阻害化合物、好ましくは化合物B、またはその薬学的に許容される塩とを含む、ヒト投与のための相乗的組合せを提供する。
【0081】
さらなる態様によれば、本発明は、主に相乗的相互作用を特定するために使用される、それぞれの成分の用量範囲が適切な腫瘍モデル、例えば、以下の実施例に記載される腫瘍モデルで実測される相乗的範囲に対応する、(a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、(b)本発明の少なくとも1種のMEK阻害化合物、好ましくは化合物B、またはその薬学的に許容される塩とを含む、ヒトへの投与のための相乗的組合せを提供する。
【0082】
本発明の1つの目的は、本発明の組合せを含み、増殖性疾患に対して共同で治療に有効である量を含む医薬組成物を提供することである。この組成物において、組合せパートナー(a)と(b)とは、任意の適切な経路によって、単一製剤もしくは単位剤形で投与される、同時だが個別に投与される、または逐次に投与される、のいずれかであり得る。単位剤形は、配合剤であってもよい。
【0083】
両方の組合せパートナーの個別投与のための、または配合剤での投与のための、すなわち、本発明の組合せを含む単一のガレヌス組成物(galenical composition)での投与のための医薬組成物は、それ自体既知の方法で調製されてもよく、治療有効量の少なくとも1種の薬理学的に活性な組合せパートナーを、例えば、上記に示されたとおりに、単独で、または特に経腸もしくは非経口適用に適した、1種もしくは複数の薬学的に許容される担体と組み合わせて含み、ヒトを含めて哺乳動物(温血動物)への経口または直腸などの経腸投与、および非経口投与に適したものである。
【0084】
この新規な医薬組成物は、約0.1%から約99.9%、好ましくは約1%から約60%の治療剤(単数または複数)を含有し得る。
【0085】
経腸または非経口投与のための組合せ治療のための適切な医薬組成物は、例えば、糖衣錠、錠剤、カプセル剤もしくは坐剤、またはアンプル剤などの単位剤形のものである。特に断りのない限り、これらは、それ自体既知の方法で、例えば、様々な従来の、混合、粉砕、直接圧縮、造粒、糖衣、溶解、凍結乾燥の工程、または当業者に容易に明らかな作製技術によって調製される。必要な有効量は、複数の投薬単位の投与によって達せられてもよいので、各剤形の個々の用量中に含有される組合せパートナーの単位含有量は、それ自体で有効量を構成する必要はないことが理解される。
【0086】
薬剤の組合せ、または薬剤の組合せの個々の薬剤を含有する単位剤形は、カプセル、例えば、ゼラチンカプセル内に封入されたマイクロ錠剤の形態であってもよい。この場合、医薬製剤に用いられるゼラチンカプセル、例えば、Pfizerから入手できる、CAPSUGELとして知られた硬質ゼラチンカプセルが用いられ得る。
【0087】
本発明の単位剤形は、任意選択的に、医薬品に用いられるさらなる従来の担体または賦形剤をさらに含んでもよい。このような担体の例には、限定されるものではないが、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、流動促進剤、安定剤、ならびに充填剤、希釈剤、着色剤、香味剤および保存剤が含まれる。当業者は、日常的実験によってかつ過度の負担がまったくなしに、剤形の特定の所望の特性に対して前述の担体の1種または複数を選択し得る。用いられる各担体の量は、当技術分野において従来の範囲内で変わり得る。すべて参照により本明細書によって組み込まれる以下の参考文献には、経口剤形を製剤化するために用いられる技術および賦形剤が開示されている。The Handbook of Pharmaceutical Excipients、第4版、Roweら編、American Pharmaceuticals Association(2003年); およびRemington: the Science and Practice of Pharmacy、第20版、Gennaro編、Lippincott Williams & Wilkins(2003年)を参照されたい。
【0088】
これらの任意選択のさらなる従来の担体は、1種もしくは複数の従来の担体を造粒前またはその間に初期混合物中に組み込むことによって、または1種もしくは複数の従来の担体を経口剤形中に薬剤の組合せ、もしくは薬剤の組合せの個々の薬剤を含む顆粒剤と一緒に混合することによってのいずれかで経口剤形中に組み込まれてもよい。後者の実施形態において、組合せ混合物は、例えば、V−ブレンダーによってさらにブレンドされ、その後に錠剤、例えば、モノリシック錠剤に圧縮または成形され、カプセルにより封入され、またはサシェに充填され得る。
【0089】
薬学的に許容される崩壊剤の例には、限定されるものではないが、デンプン;クレー;セルロース;アルギン酸塩;ガム;架橋ポリマー、例えば、架橋ポリビニルピロリドンまたはクロスポビドン、例えば、International Specialty Products(Wayne、NJ)からのPOLYPLASDONE XL;架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはクロスカルメロースナトリウム、例えば、FMCからのAC−DI−SOL;および架橋カルボキシメチルセルロースカルシウム;ダイズ多糖類;ならびにグアーガムが含まれる。崩壊剤は、組成物の約0重量%から約10重量%の量で存在し得る。一実施形態において、崩壊剤は、組成物の約0.1重量%から約5重量%の量で存在する。
【0090】
薬学的に許容される結合剤の例には、限定されるものではないが、デンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、微結晶性セルロース、例えば、FMC(Philadelphia、PA)からのAVICEL PH、ヒドロキシプロピルセルロースヒドロキシルエチルセルロースおよびDow Chemical Corp.(Midland、MI)からのヒドロキシルプロピルメチルセルロースMETHOCEL;スクロース;デキストロース;トウモロコシシロップ;多糖類;ならびにゼラチンが含まれる。結合剤は、組成物の約0重量%から約50重量%、例えば、2〜20重量%の量で存在し得る。
【0091】
薬学的に許容される滑沢剤および薬学的に許容される流動促進剤の例には、限定されるものではないが、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、デンプン、タルク、リン酸三カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール、粉末状セルロースおよび微結晶性セルロースが含まれる。滑沢剤は、組成物の約0重量%から約10重量%の量で存在し得る。一実施形態において、滑沢剤は、組成物の約0.1重量%から約1.5重量%の量で存在し得る。流動促進剤は、約0.1重量%から約10重量%の量で存在し得る。
【0092】
薬学的に許容される充填剤および薬学的に許容される希釈剤の例には、限定されるものではないが、粉砂糖、圧縮可能な糖、デキストレート類、デキストリン、デキストロース、ラクトース、マンニトール、微結晶性セルロース、粉末状セルロース、ソルビトール、スクロース、およびタルクが含まれる。充填剤および/または希釈剤は、例えば、組成物の約0重量%から約80重量%の量で存在し得る。
【0093】
一実施形態において、本発明はまた、それを必要とする患者における増殖性疾患の処置または予防のための医薬組成物または薬剤の調製における使用のための本発明の組合せに関する。
【0094】
さらなる実施形態において、本発明は、それを必要とする対象における増殖性疾患の処置または予防のための医薬組成物または薬剤の調製のための、PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(化合物A)またはその薬学的に許容される塩と、(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩との使用に関する。6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド(化合物B)、または(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド(化合物C)から選択されるMEK阻害剤が好ましい。
【0095】
本発明によれば、本発明の組合せの組合せパートナーのそれぞれの治療有効量は、同時、または逐次にかつ任意の順序で投与されてもよく、成分は、個別にまたは配合剤として投与されてもよい。例えば、本発明によって増殖性疾患を処置する方法は、共同で治療有効量で、好ましくは相乗的に有効量で、例えば、本明細書に記載される量に対応して毎日または間欠的用量で、同時、または任意の順序で逐次に、(i)遊離または薬学的に許容される塩の形態で第1の薬剤(a)を投与すること、および(ii)遊離または薬学的に許容される塩の形態で薬剤(b)を投与することを含み得る。本発明の組合せの個々の組合せパートナーは、治療の過程の間に異なる時間で個別に、または分割もしくは単一組合せ形態で同時に投与されてもよい。さらに、「投与する」という用語は、インビボでそのままで組合せパートナーに変換する、組合せパートナーのプロドラッグの使用も包含する。したがって、本発明は、このような同時または交互処置(alternating treatment)のレジメンのすべてを包含すると理解されるべきであり、「投与する」という用語は、それに応じて解釈されるべきである。
【0096】
本発明の組合せで用いられる組合せパートナーのそれぞれの有効用量は、用いられる特定の化合物または医薬組成物、投与の様式、処置される状態、および処置される状態の重症度に応じて変わり得る。したがって、本発明の組合せの投与レジメンは、投与の経路ならびに患者の腎および肝機能を含む様々な要因に従って選択される。通常の技術の臨床医または医師は、状態の進行を緩和する、それに対抗するまたはそれを停止させるために必要な単一治療剤の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0097】
毒性なしに効力をもたらす、本発明の組合せの組合せパートナー(a)および(b)の最適比、個々のおよび組み合せた用量、ならびに濃度は、部位を標的とする治療剤の利用能の動力学に基づいており、当業者に既知の方法を用いて決定される。
【0098】
組合せパートナーのそれぞれの有効用量は、組合せ中の化合物(単数または複数)の一方の、他方の化合物(単数または複数)と比較してより頻繁な投与を必要とし得る。したがって、適切な投与を可能にするために、包装された医薬製品は、化合物の組合せを含有する1つまたは複数の剤形、および化合物の組合せの一方を含有するが、組合せの他方の化合物(単数または複数)を含有しない1つまたは複数の剤形を含み得る。
【0099】
本発明の組合せで用いられる組合せパートナーが、単一の薬剤として市販されている形態で適用される場合、それらの用量および投与の様式は、本明細書で別に言及がない場合、それぞれの市販薬剤の添付文書で提供される情報に従うことができる。
【0100】
PI3K阻害化合物(化合物A)は、適切な患者に、単回または分割投与で1日当たり体重1kg当たり約0.05から約50mg、好ましくは約0.1〜25mg/kg/日、より好ましくは約0.5〜10mg/kg/日の範囲の有効用量で、単回または分割投与で毎日投与され得る。70kgのヒトの場合、これは、合計で1日当たり約35〜700mgの好ましい用量範囲になる。
【0101】
MEK阻害化合物(化合物B)は、適切な対象に、単回または分割投与で1日当たり体重1kg当たり約0.001から約100mg、好ましくは約1〜35mg/kg/日の範囲の有効用量で、単回または分割投与で毎日投与され得る。70kgのヒトの場合、これは、合計で約0.05から〜7g/日、好ましくは約0.05から約2.5g/日の好ましい用量範囲になる。
【0102】
MEK阻害化合物(化合物C)は、適切な対象に、単回または分割投与で1日当たり体重1kg当たり約0.001から約100mg、好ましくは約1mg/kg/日から約35mg/kg/日の範囲の有効用量で、単回または分割投与で毎日投与され得る。70kgのヒトの場合、これは、合計で約0.07から〜2.45g/日、好ましくは約0.05から約1.0g/日の好ましい用量範囲になる。
【0103】
増殖性疾患の処置のためのそれぞれの組合せパートナーの最適用量は、既知の方法を用いてそれぞれの個体について実験的に決定することができ、限定されるものではないが、疾患の進行度;個体の年齢、体重、一般健康状態、性別および食事;投与の時間および経路;個体が取っている他の医薬品を含めて、様々な要因に依存する。最適用量は、当技術分野で周知である日常的試験および手順を用いて確立され得る。
【0104】
単一剤形を作製するために担体材料と組み合わせてもよいそれぞれの組合せパートナーの量は、処置される個体および特定の投与の様式に依存して変わるであろう。一部の実施形態において、本明細書で記載されるとおりの薬剤の組合せを含有する単位剤形は、組合せのそれぞれの薬剤を、その薬剤が単独で投与される場合に通常投与される量で含有するであろう。
【0105】
投薬の頻度は、使用される化合物および処置または予防される特定の状態に依存して変わり得る。一般に、有効治療を提供するために十分である最小用量の使用が好ましい。患者は一般に、処置または予防される状態に適したアッセイを用いて、治療有効性についてモニターされ得、これは、当業者によく知られている。
【0106】
本発明は、増殖性疾患を有する対象を処置する方法であって、増殖性疾患に対して共同で治療に有効である量で、本発明の組合せを前記対象に投与されることを含む方法に関する。特に、本発明の組合せで処置される増殖性疾患は、メラノーマ、大腸がんまたは肺がん、特に非小細胞肺がんである。さらに、処置は、手術または放射線治療を含み得る。
【0107】
本発明はさらに、増殖性疾患、特にがんの処置における使用のための本発明の組合せに関する。
【0108】
本発明はさらに、それを必要とする対象における増殖性疾患の進行の遅延または処置における使用のための、治療剤として本発明の組合せを、その同時、個別または逐次投与のための使用説明書と一緒に含む、市販用パッケージを提供する。
【0109】
以下の実施例は、上に記載された本発明を例証するが;しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。本発明の医薬的な組合せの有益な効果は、当業者にそのようなものとして知られた他の試験モデルによっても決定することができる。
【実施例1】
【0110】
材料および方法
大腸がん細胞株SW1417、COLO205、LS411N、HT−29、RKO、OUMS−23、SW620、LoVo、SW480、SW837、COLO−678、LS123−NCI−H747、HCT−15、HCT116、DLD−1、T84、SW948、LS180、GP2d、HuTu80、CW−2、SW48、NCI−H716、C2Bbel、SNU−C1およびKM12は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から得て、供給者により指定されたとおりにそれぞれの培地に維持する。これらの大腸がん細胞株は、以下の変異状態を有する:
【0111】
【表1】
【0112】
変異(mut)および野性型(wt)は、既知の機能的に関連する変異を示す。Mut§は、分析から発現の欠如に基づく。Mutは、未知の機能的重要性を有する変異を示す。Ndは、データなしを示す。は、データが、中央値および平均値の計算から除かれた、試験の最後に行われた繰返し実験を示す。**は、いくらかの散乱を示す重複データ点および用量応答を示す。
【0113】
組合せ効果の評価のために、細胞を500個細胞/ウェルで384−ウェルプレート中に播種し、一晩インキュベートした。化合物マスタープレートの内容物を1:200(1μLの化合物溶液対200μLの、10%ウシ胎仔血清を含有する細胞RPMI−160培地)で前希釈し、その後、この前希釈液の5μLを20μLの細胞培地が入っている細胞プレートに移して、目標最終化合物濃度および0.09%のビヒクル(DMSO)濃度を得る。
【0114】
細胞生存率に対する単剤およびそれらのチェッカーボード状の組合せの効果は、試薬25μL/ウェルおよび1状態当たりn=2の複製プレートを用いて細胞ATPレベルの定量化(CellTiterGlo、Promega)によって、37℃/5%COでインキュベーション72時間後に評価する。化合物添加の時間における細胞の数/生存率を同様に評価し、特定の細胞株の個体群の倍加時間を推定するために用いた。単剤IC50を、標準4パラメータ曲線フィッティング(SLFit、モデル205)を用いて計算する。化合物の組合せ間の潜在的な相乗的相互作用は、Loewe相加性モデルに従う過剰阻害2次元マトリックス(Excess Inhibition 2D matrix)を用いて評価し、相乗効果スコアとして報告する。さらに、化合物の組合せは、50%阻害においてアイソボログラムグラフから誘導した組合せ指数分析によって評価し、アイソボログラムで最低値に対応する最良組合せ指数(CI)として報告する。相乗効果計算のすべては、CHALICEソフトウェア(Leharら、Nat Biotechnol.(2009年7月)、27(4):69:66)を用いて行う。組合せ指数および相乗効果スコアの値の解釈を、以下に提供する:
【0115】
【表2】
【0116】
結果グループの多重対比較は、一元配置ANOVA(Neuman-Keuls法)によりGraphPad Prism 5 (GraphPad Software Inc.)を用いて行われた。

結果
この試験について、大腸細胞株のすべてにおける主要結果の要約を以下のとおり示す:
【0117】
【表3】
【0118】
PI3K阻害化合物AとMEK阻害化合物Bとは、27の試験した大腸がん細胞株のうちから17で相乗的相互作用を示す。平均して、PIK3CA変異を有する細胞株における最高の相乗効果度。PTENに対して無効な細胞株を除いて、主要なMAPキナーゼ(BRAF/KRAS)またはPI3K(PIK3CA/PTEN)経路記録の変異状態は、実測された相乗効果スコアに対して統計的に有意な影響を示さなかった。要約すると、これらの結果は、化合物Aと化合物Bについての相乗的相互作用を、野性型またはBRAF、KRASおよびPIK3CAに対して変異した大腸細胞株において示唆するが、PTENに対して無効なものにおいては示唆しない。
【実施例2】
【0119】
材料および方法
この試験に用いた細胞株は、非小細胞肺がん細胞株NCI−H23およびNCI−H2122(これらは、KRASとLKB1変異の両方を保有する)、NCI−H358(これは、KRAS変異を保有する)、NCI−H460(これは、KRAS、LKB1およびPI3KCA変異を保有する)、および大腸がん細胞株SW480(これは、KRAS変異を保有する)、HCT−15(これは、KRAS PIK3CA変異を保有する)を含めて、アメリカンタイプセルコレクションから購入した。すべての細胞株を、37℃で5%COインキュベータ中、10%ウシ胎仔血清、2mmol/Lグルタミンおよび1%ピルビン酸ナトリウムで補充したRPMI 1640(ATCC#30−2001)培地で培養した。
【0120】
細胞増殖アッセイ:細胞生存率は、CellTiter−Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Progmega#G7573)を用いて、製造者のプロトコルに従って細胞ATP含量を測定することによって決定した。簡単には、500〜900個細胞/ウェルを、30μl/ウェル成長培地を有して四通りまたは二通りに透明底384−ウェル黒色プレート(Greiner#781091)上に播種し、細胞を一晩付着させ、続いて、様々な濃度の薬剤または薬剤組合せ(10μl/ウェル)で72時間インキュベートし、薬剤処理の最後に、各ウェルに30μl/ウェルのCellTiter−Glo試薬を添加し、細胞を溶解させ、発光シグナルをEnvisionプレートリーダーに記録した。
【0121】
組合せの効果を計算する方法:化合物Bと化合物Aの組合せ効果を先入観なしに評価し、すべての可能な濃度で相乗的効果を同定するために、組合せ試験を「用量マトリックス(dose matrix)」で行い、組合せは、すべての組合せアッセイにおいて、連続希釈した化合物Bおよび化合物Aの単剤用量のすべての可能な順列で試験し、化合物は同時に適用した。この「用量マトリックス」は、以下のとおりである:化合物Bを、11用量の2×連続希釈(最高用量は5μM、低い用量は約5nMである)下に置き、化合物Aを、9用量の2×連続希釈(高い用量は5μM、低い用量は約20nMである)下に置く。単剤の用量応答曲線、IC50、IC90、および相乗効果は、すべてChaliceソフトウェア(CombinatoRx、Cambridge MA)を用いて分析する。相乗効果は、薬剤それ自体の用量相加性基準モデル(drug-with-itself dose-additive reference model)に対して、組合せの応答をその単剤のものと比較することによって計算した。用量相加性からのずれは、アイソボログラム上で視覚的に、または組合せ指数によって数値的に評価することができる。相加効果と比べて超過する阻害を、全用量マトリックス図としてプロットし、どこで相乗効果が起こるかを記録することもできる。組合せ効果の全体強度を定量化するために、体積スコアVHSA=ΣX,YInfInf(Idata−IHSA)もデータと単剤最高表面の間で計算し、単剤の希釈係数f、fに対して正規化する。
【0122】
細胞増殖アッセイ結果:要約すると、相乗効果は、調べた6つの細胞株すべてに認められ、2.09から5.49の範囲の相乗効果スコアを生じ、相乗的領域は広く、典型的には化合物Aについて150nM超の用量で、および化合物Bについて80nM以上の用量で認められる。これらの結果は、KRAS変異を保有するCRCおよびNSCLC細胞株において、化合物Bと化合物Aについて潜在的な相乗的相互作用を示唆する。
【0123】
【表4】
【実施例3】
【0124】
材料および方法
細胞株試験:上に定義したとおりの、PI3K阻害化合物AとMEK阻害化合物Bの組合せを、3つの組織型から38個の細胞株にわたって試験した(膵臓7個、肺10個、およびメラノーマ21個)。各組合せを、以下のとおりに構築した部分的に満たした「用量マトリックス」において試験した:各単剤を最大濃度(化合物Aについて11μMまたは化合物Bについて2.7μM)で増殖培地中に分注し、3×で連続希釈して、濃度において729の因子に及ぶ7点シリーズを作製する。次いで、化合物を第2濃度乃至第6濃度のすべての対で組み合わせ、この用量マトリックスを最高および最低濃度を互いに組み合せることによっても拡張した。比較的高い分解能試験も、一部のNSCLC細胞株で実施し、化合物Aの9つの用量および化合物Bの11の用量を試験し、それぞれの場合に5μMで開始して2×希釈を用いた。細胞株のすべてを、37℃で5%COインキュベータ中、10%ウシ胎仔血清、2mmol/Lグルタミンおよび1%ピルビン酸ナトリウムで補充したRPMI 1640(American Type Cell Collection No.30−2001)培地で培養した。それぞれのこのような用量マトリックスを個別のアッセイプレート上で、三通りで試験した。細胞毒性処理を同定するために、本発明者らは、薬剤処理の開始時に「0日目」細胞個体群も決定した。
【0125】
組合せ効果の測定:各処理における細胞応答を、単純な阻害I=1−T/V(ここで、Tは、処理されたウェルの生応答であり、Vは、プレート上の同型ウェル間の未処置レベル中央値である)を用いて測定した。細胞毒性測定値は、「増殖阻害」GI=1−(T−V)/[T<V?V:(V−V)](ここで、Vは、1日目生レベル中央値であり、[C?A:B]という表記法は、条件Cが真である場合、Aを、それが偽である場合、Bを生じる)を用いて測定した。GI=0、1、および2は、それぞれ、有効でない、細胞増殖抑制性、および完全に細胞毒性の処理に相当する。Chalice分析ソフトウェア(CombinatoRx、Cambridge MA)を用いて、薬剤応答を用量でシグモイド関数に当てはめ、高用量での最大効果Amax、遷移的な濃度EC50、およびその遷移の急勾配性のヒル係数でパラメータ化し、IC50の点を横切る50%阻害に補間した。組合せ効果は、用量マトリックスにおける最大阻害およびGI値を用いて、および用量相加性Loeweモデルによって、組合せの応答を、その単剤のものに対して比較することによって表した。「相乗効果スコア」SLoewe=ΣX,YInfInfmax(0,Idata)max(0,Idata−ILoewe)を、組み合わせた濃度X、Yのすべてにわたって、データIdataと用量−相加性表面(dose-additive surface)ILoeweとの差から計算し、測定された阻害および単剤希釈係数f、fによって重み付けした。相乗効果に加えて、50%阻害における用量シフト(dose shifting)は、それぞれの化合物のIC50値と比較して、組合せ指数CI50=C/IC50X+C/IC50Y(ここで、C、Cは、組合せにおいて50%阻害をもたらす単剤の最低濃度である)を用いて決定した。
【0126】
細胞増殖アッセイ結果:試験細胞株にわたって得られた組合せ効果を、各細胞株についての系統および変異状態とともに、以下の表に示す(mut=既知のドライバー損傷(driver lesion)、mut?=未知の損傷、wt=野性型)。
【0127】
【表5】
【0128】
それらは、定義によりゼロの相乗効果を有すべきなので、薬剤それ自体の用量マトリックスのスコア(対照としての実験)は、実験誤差と一致するレベルを示す。薬剤それ自体の相乗効果スコアの標準偏差は、約0.4であったので、SLoewe>1を有する組合せは、有意に相乗的とみなすことができる。CI50=0.3の用量シフトを有する相乗的組合せは、(用量マトリックスが3×希釈を有するため)本発明のデータにおける微小な変動から容易に生じることができ、したがって、本発明者らは、CI50<0.3が有用な用量節約を示唆するように単に考えるだけである。最後に、有用な組合せは、組合せにおいて実質的な阻害を有することが必要であり、したがって、本発明者らは、Imax>0.8を必要とし、CImax>1.5が特に有望であると考える。
【0129】
膵臓細胞株:膵臓細胞株において、それらのほとんどすべては、KRAS変異であり、化合物A+化合物Bの組合せは、一様に相乗的であり、7例のうち4例で有用な用量シフトを示した。相乗効果の最良の例は、HPACであり、これは、組合せで5倍の用量減少を示し(CI50=0.2)、最高濃度において細胞分裂停止を大きく超える(GImax>1.5)強い相乗効果を示す(図1)。驚くべきことに、KRAS野性型株の一つであるBxPC−3において、相乗効果パターンは、HPACで見られるものと非常に類似している。最弱の相乗効果は、PANC−1に見出され、これは、用量マトリックス全体にわたって、決して50%を超えて阻害されない(図2)。
【0130】
NSCLC肺株:非小細胞肺がん株(これらのすべては、KRAS変異である)において、やはり相乗効果は一様に強く、十分な阻害レベルを有した例の大部分で、約5×用量シフト(CI50約0.2)であった。(図1参照)。最良の組合せ効果の多くは、NSCLC応答において実験の不自然な結果を示したので、個別の試験からの高分解能データも、分析に含め(図2参照)、これにより、すべての例で、相乗効果決定が確認および強化された。
【0131】
メラノーマ細胞株:メラノーマ細胞株は、それらの遺伝子的背景に依存して様々な相互作用様式を示した(図3)。相乗効果は概して、活性化NRAS変異を有するものについて、およびBAF変異について見出された。しかしながら、これらの背景は、単剤としての化合物Aに対して弱い応答を示し、相乗効果は、膵がんおよび肺がんのKRAS変異に見られたものよりも非常により低いレベルであり、通常は非常に高い組合せ薬剤濃度に限られた。強い相乗効果が、COLO792およびMeWo(両方ともRas、BRAF、およびPTENにおいて野生型である)に見られたが、それらの非常に異なる単剤感受性のために明確に異なる相互作用様式であった。いずれの単剤に対しても耐性であったPTEN変異について、相乗効果はまったく不在であった。最後に、相違する細胞株LOX IMVIは、他のBRAF変異に対して非常に異なる単剤応答を示し、まさに最高の組合せ濃度を除いて、相互作用は、よりPTEN変異組合せのようにみえる。
【0132】
全般的なこれらの結果は、それぞれの細胞株の遺伝子的背景に依存する様々な相互作用があることを示す。しかしながら、特に、NSCLCおよび膵臓株のKRAS変異は、化合物A+化合物Bの組合せに対する応答において有用な用量シフトおよび現れたいくつかの細胞毒性とともに良好な相乗効果を示す傾向がある。

本発明は以下の態様を包含し得る。
[1] 同時、個別または逐次投与のための、
(a)ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)またはその薬学的に許容される塩と、
(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害化合物またはその薬学的に許容される塩と、
任意選択的に少なくとも1種の薬学的に許容される担体と
を含む医薬的な組合せ。
[2] MEK阻害化合物が、6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩である、上記[1]に記載の医薬的な組合せ。
[3] それを必要とする患者における増殖性疾患の処置における使用のための、上記[1]に記載の医薬的な組合せ。
[4] 増殖性疾患の処置のための薬剤の調製における使用のための、上記[1]に記載の医薬的な組合せ。
[5] 前記増殖性疾患が、がんである、上記[3]または[4]に記載の医薬的な組合せ。
[6] 前記増殖性疾患が、メラノーマ、肺がん、大腸がん(CRC)、乳がん、腎がん、例えば、腎細胞癌(RCC)、肝がんまたは肝細胞癌、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺がん(NSCLC)、甲状腺がん、膵がん、食道がん、および神経線維腫症である、上記[3]または[4]に記載の医薬的な組合せ。
[7] (a)PI3K阻害化合物および(b)少なくとも1種のMEK阻害化合物が、増殖性疾患の処置のための相乗的有効量で提供される、上記[1]に記載の医薬的な組合せ。
[8] 増殖性疾患の処置のための薬剤の製造のための、上記[1]に記載の組合せの使用。
[9] MEK阻害化合物が、6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩である、上記[8]に記載の使用。
[10] 増殖性疾患を処置する方法であって、それを必要とする増殖性疾患を有する患者に、6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて、PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)またはその薬学的に許容される塩の治療有効量を、同時、個別または逐次投与することを含む、方法。
[11] 増殖性疾患が、メラノーマ、肺がん、大腸がん(CRC)、乳がん、腎がん、例えば、腎細胞癌(RCC)、肝がんまたは肝細胞癌、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、非小細胞肺がん(NSCLC)、甲状腺がん、膵がん、食道がん、および神経線維腫症である、上記[10]に記載の方法。
[12] MEK阻害化合物が、6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩である、上記[10]に記載の処置する方法。
[13] (a)PI3K阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)またはその薬学的に許容される塩の1つまたは複数の単位剤形、および(b)少なくとも1種のMEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩の1つまたは複数の単位剤形を含む組合せ製剤。
[14] 同時、個別または逐次投与のための、
(a)ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害化合物(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)またはその薬学的に許容される塩と、
(b)6−(4−ブロモ−2−フルオロフェニルアミノ)−7−フルオロ−3−メチル−3H−ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸(2−ヒドロキシエトキシ)−アミド、(S)−5−フルオロ−2−(2−フルオロ−4−(メチルチオ)フェニルアミノ)−N−(2−ヒドロキシプロポキシ)−1−メチル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボキサミド、PD0325901、PD−184352、RDEA119、GSK1120212、XL518、AS−701255、AS−701173、AS703026、RDEA436、E6201、RO4987655、JTP−74057、RG7167、もしくはRG7420を含む群から選択される少なくとも1種のMEK阻害化合物またはその薬学的に許容される塩と、
を含む医薬組成物。
[15] PI3K阻害剤およびMEK阻害剤が、増殖性疾患の処置のための相乗的有効量で提供される、上記[14]に記載の医薬組成物。
[16] 増殖性疾患の進行の遅延または処置における使用のための、治療剤として上記[1]または[2]に記載の医薬的な組合せを、その同時、個別または逐次投与のための使用説明書と一緒に含む、市販用パッケージ。
図1
図2