特許第6058113号(P6058113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058113
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】カチオン電着塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20161226BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20161226BHJP
   C09D 5/44 20060101ALI20161226BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20161226BHJP
   C08G 59/14 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   C09D163/00
   C09D7/12
   C09D5/44 A
   C09D175/04
   C08G59/14
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-248349(P2015-248349)
(22)【出願日】2015年12月21日
(65)【公開番号】特開2016-135848(P2016-135848A)
(43)【公開日】2016年7月28日
【審査請求日】2016年1月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-8969(P2015-8969)
(32)【優先日】2015年1月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛生
(72)【発明者】
【氏名】森 元秀
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌博
(72)【発明者】
【氏名】細野 宏
(72)【発明者】
【氏名】花谷 稔
(72)【発明者】
【氏名】脊戸土井 成貴
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−225095(JP,A)
【文献】 特開2013−241582(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/054549(WO,A1)
【文献】 特開2001−031739(JP,A)
【文献】 特開平06−136301(JP,A)
【文献】 特開2011−020085(JP,A)
【文献】 特開昭61−115974(JP,A)
【文献】 特開昭63−258274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 163/00
C08G 59/14
C09D 5/44
C09D 7/12
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A1)、ポリフェノール化合物(A2)、ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)、及びアミン化合物(A4)を反応させることにより得られるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B)、並びに顔料(C)を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
【請求項2】
ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)が、炭素数10〜150の直鎖状、分岐状、及び/又は環状の炭化水素基を有することを特徴とする請求項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項3】
ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)を、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)中に、固形分比率で、0.1〜50質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂とアミン化合物とを反応させて得られるアミン付加型の顔料分散樹脂(D)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を電着塗料浴として、これに金属被塗物を浸漬し、電着塗装することを特徴とする塗装方法。
【請求項6】
請求項5に記載の塗装方法により得られた塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つきまわり性、GAガスピン性及び防食性に優れるカチオン電着塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カチオン電着塗料は塗装作業性が優れ、形成した塗膜の防食性が良好なことから、これらの性能が要求される自動車ボディ、自動車部品、電気機器部品及びその他の工業用機器等に広く利用されている。このようなカチオン電着塗料において、内板部分は外板部分に対して塗料のつきまわり性が悪く、外板部40ミクロンに対して、内板部は10ミクロン程度の電着塗膜を形成させており、特に溶接部の防食性が十分ではなかった。このため従来から、つきまわり性及び防食性を満足する種々のカチオン電着塗料が提案されてきた。
例えば、特許文献1では、電着塗料にポリエステル樹脂を含有することでつきまわり性及び防食性を上げているが、長期の塗料貯蔵性が劣る事があった。また、特許文献2では、ダイマー酸を基体樹脂のエポキシ樹脂に変性することで防食性を上げているが、つきまわり性とGAガスピン性の両立が十分ではなかった。
【0003】
ここで、GAガスピンとは、電着塗装時に発生する水素ガスが放電し、その電気エネルギー(火花)で塗膜が一部硬化し、焼付け後に針穴状のピンホールとなって残るものであり、GAガスピンが発生すると更に塗膜の仕上がり性や防食性が劣ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-241582号公報
【特許文献2】特開2001-31739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、つきまわり性、GAガスピン性及び防食性に優れたカチオン電着塗料組成物、並びにこれらの諸塗膜性能に優れた塗装物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B)及び顔料(C)を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、以下のカチオン電着塗料組成物、及び該カチオン電着塗料組成物を被塗物に電着塗装した塗装物品を提供するものである。
項1.エポキシ樹脂(A1)、ポリフェノール化合物(A2)、ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)、及びアミン化合物(A4)を反応させることにより得られるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B)、並びに顔料(C)を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
項2.ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)が、炭素数10〜150の直鎖状、分岐状、及び/又は環状の炭化水素基を有することを特徴とする前記項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
項3.ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)を、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)中に、固形分比率で、0.1〜50質量%含有することを特徴とする前記項1又は2に記載のカチオン電着塗料組成物。
項4.エポキシ樹脂とアミン化合物とを反応させて得られるアミン付加型の顔料分散樹脂(D)を含有することを特徴とする前記項1〜3のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
項5.前記項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を電着塗料浴として、これに金属被塗物を浸漬し、電着塗装することを特徴とする塗装方法。
項6.前記項5に記載の塗装方法により得られた塗装物品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電着塗料組成物は、内板で20ミクロン以上の高つきまわり性とGAガスピン性の両立が達成でき、防食性を向上することができた。
具体的には、本発明品が塗装された自動車ボディ及び/又は自動車部品は、融雪塩が散布された環境下を長期間走行しても、腐食劣化が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】評価試験における4枚ボックス法つきまわり性試験の治具の概略図。
図2】評価試験におけるつきまわり性試験の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、特定のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)、ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B)及び顔料(C)を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物に関する。尚、上記カチオン電着塗料組成物は、上記成分(A)、(B)、及び(C)を含む水分散体を含有するカチオン電着塗料組成物と言い換えることもできる。以下、詳細に述べる。
【0011】
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)
本発明のカチオン電着塗料組成物で用いることができるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)としては、エポキシ樹脂(A1)、ポリフェノール化合物(A2)、ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)、及びアミン化合物(A4)を反応させることにより得られるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)である。
【0012】
エポキシ樹脂(A1)
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の原料として用いることができるエポキシ樹脂(A1)としては、1分子中にエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物である。エポキシ樹脂(A1)の分子量は特に限定されないが、例えば、少なくとも300、好ましくは400〜4,000、さらに好ましくは800〜2,500の範囲内の数平均分子量を有するものが好ましい。また、エポキシ樹脂(A1)のエポキシ当量も特に限定されないが、例えば、少なくとも160、好ましくは180〜2,500、さらに好ましくは400〜1,500の範囲内のエポキシ当量を有するものが適している。かかるエポキシ樹脂としては、例えば、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリン(例えば、エピクロルヒドリン等)との反応によって得られるものを使用することができる。
【0013】
上記エポキシ樹脂(A1)の形成のために用いられるポリフェノール化合物としては、後述するポリフェノール化合物(A2)と同じものを好適に用いることができる。
【0014】
また、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂(a)としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される下記式の樹脂が好適である。
【0015】
【化1】
【0016】
ここで、n=0〜8で示されるものが好適である。
【0017】
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、三菱化学(株)からjER828EL、jER1002、jER1004、jER1007なる商品名で販売されているものが挙げられる。
【0018】
ポリフェノール化合物(A2)
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の原料として用いることができるポリフェノール化合物(A2)としては、公知のものを制限なく用いることができる。具体的には、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の原料として用いることができるダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)としては、不飽和脂肪酸を二量化して得られるダイマー酸にグリシジル基を導入したものであり、炭素数10〜150の直鎖状、分岐状、及び/又は環状の炭化水素基を有することが好ましい。
【0020】
上記不飽和脂肪酸としては、公知のものを制限なく用いることができるが、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の柔軟性及び疎水性の観点から、炭素数11〜22の高級不飽和脂肪酸が好ましい。
【0021】
上記高級不飽和脂肪酸としては、公知のものを制限なく用いることができ、具体的には、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、ドコセン酸、分岐オクタデセン酸、分岐ヘキサデセン酸、ウンデシレン酸などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0022】
上記ダイマー酸の製造方法としては、特開2005−2085号公報に詳細な記載があり、環型ダイマー酸(単環型ダイマー酸、芳香環型ダイマー酸、多環型ダイマー酸)、非環型ダイマー酸などの種類がある。なかでも、防食性及び塗膜物性の観点から、環型ダイマー酸を用いることが好ましく、単環型ダイマー酸を用いることがより好ましい。
【0023】
【化2】
【0024】
また、上記ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)としては、エポキシ当量が200以上かつ500未満であることが好ましく、250以上かつ450未満であることが更に好ましい。
【0025】
本発明において、ダイマー酸ジグリシジルエステル又はその原料のダイマー酸が有する「直鎖状、分岐状、及び/又は環状の炭化水素基」の炭素数とは、1つにつながっている直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、及び/又は環状炭化水素基の合計炭素数を意味する。従って、例えば、上記に例示した「単環型」ダイマー酸が有する炭化水素基の炭素数は34であり、上記に例示した「芳香環型」ダイマー酸が有する炭化水素基の炭素数は34であり、上記に例示した「多環型」ダイマー酸が有する炭化水素基の炭素数は38であり、上記に例示した「非環型」ダイマー酸が有する炭化水素基の炭素数は34である。
【0026】
ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)の市販品としては、例えば、jER871(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、エポトートYD−171(東都化成株式会社製)などが挙げられる。
【0027】
ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)の含有量としては、アミノ基含有エポキシ樹脂(A)中に、固形分比率で、通常0.1〜50質量%、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは3〜30質量%含有することが好適である。含有量がこの範囲であると、組成物の硬化性と硬化物の柔軟性とのバランスに優れる。
【0028】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、上記ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)をアミノ基含有エポキシ樹脂(A)の原料として用いることで、柔軟性及び疎水性が得られ、内板で20ミクロン以上の高つきまわり性とGAガスピン性の両立が達成でき、防食性を向上することができた。
【0029】
アミン化合物(A4)
上記アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の原料として用いることができるアミン化合物(A4)としては、上記エポキシ樹脂(A1)との反応性を有するアミン化合物であれば特に限定されず、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノオクチルアミン、メチルブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−アルキルアミン又はジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N−ブチルエタノールアミン、ジプロパノールアミン、モノメチルアミノエタノール、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−tert−ブチルアミノ−1,2−プロパンジオール、N−メチルグルカミン、N−オクチルグルカミンなどのアルカノールアミン;ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4−アミノブチル)アミンなどのアルキレンポリアミン;メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジメチルアミノメチルベンゼンなどの芳香族又は脂環族ポリアミン;ピペラジン、1−メチルピペラジン、3−ピロリジノール、3−ピぺリジノール、4−ピロリジノールなどの複素環を有するポリアミン;上記ポリアミン1モルに対しエポキシ基含有化合物を1〜30モル付加させることによって得られるエポキシ付加ポリアミン;上記ポリアミンと芳香族酸無水物、環状脂肪族酸無水物、脂肪族酸無水物、ハロゲン化酸無水物及び/又はダイマー酸との縮合によって生成するポリアミド樹脂の分子中に1個以上の1級又は2級アミンを含有するポリアミドポリアミン;上記ポリアミン中の1個以上の1級又は2級アミンとケトン化合物とを反応せしめたケチミン化アミン;などを挙げることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
上記ケチミン化アミンを製造するためのケトン化合物としては、上記ポリアミンの1級又は2級アミンと反応してケチミン化合物となり、さらに水性塗料組成物中で加水分解するものであれば特に制限はなく使用でき、例えば、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、ジイソブチルケトン(DIBK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジエチルケトン(DEK)、エチルブチルケトン(EBK)、エチルプロピルケトン(EPK)、ジプロピルケトン(DPK)、メチルエチルケトン(MEK)などが挙げられる。これらのケトンは1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0031】
変性剤
本発明のカチオン電着塗料組成物で用いることができるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)は、必要に応じて、変性剤により変性をすることができる。このような変性剤は、例えば、キシレンホルムアルデヒド樹脂、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、脂肪酸、フェノール類、アルキレングリコール、一価アルコール、ポリアミドアミン、ポリカルボン酸、ポリイソシアネート化合物、ラクトン化合物、カテコール化合物、アクリルモノマー及びアクリルモノマーを重合反応させた化合物などが挙げられ、これらの変性剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0032】
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造方法
エポキシ樹脂(A1)、ポリフェノール化合物(A2)、ダイマー酸ジグリシジルエステル(A3)及びアミン化合物(A4)、さらに必要に応じて変性剤の反応は、公知の合成方法により、適当な溶媒中で、約80〜約170℃、好ましくは約90〜約150℃の温度で1〜6時間程度、好ましくは1〜5時間程度で行なうことができる。
【0033】
上記の溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール系化合物;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0034】
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の数平均分子量としては、仕上がり性、防食性などの観点から、通常1,000〜50,000の範囲内であり、さらに1,300〜20,000の範囲内であり、さらに特に1,600〜10,000の範囲内であることが好ましい。アミノ基含有エポキシ樹脂(A)のアミン価としては、樹脂固形分を基準として、通常50mgKOH/g以上であり、54〜200mgKOH/gの範囲内が好ましく、57〜150mgKOH/gの範囲内がより好ましい。
【0035】
尚、本明細書におけるアミン価は、JIS K 7237−1995に準じて測定する。全て樹脂固形分当たりのアミン価(mgKOH/g)である。
【0036】
また、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0037】
一般的にアミノ基含有エポキシ樹脂内にダイマー酸を変性する方法としては、下記の3種類の方法が考えられるが、本発明のアミノ基含有エポキシ樹脂(A)は方法3を用いることで顕著な効果を奏することができた。
方法1:エポキシ樹脂とダイマー酸とを反応させる。
方法2:ダイマー酸とビスフェノールAのジグリシジルエーテルを反応させ、次いで、該反応物と、エポキシ樹脂及び/又はポリフェノール化合物とを反応させる。
方法3:エポキシ樹脂とポリフェノール化合物とダイマー酸ジグリシジルエステルとを反応させる。
【0038】
尚、上記の方法1、方法2および方法3は、アミン化合物の付加反応を省略している。アミン化合物の付加反応としては、上記の反応と同時に又は反応の後から付加することができる。
【0039】
上記方法1および方法2では、ダイマー酸のカルボキシル基とグリシジル基が反応する際に、グリシジル基が開環して生じた水酸基と新たなグリシジル基が反応するため、カルボキシル基とグリシジル基の反応が1/1で進み難い。また、上記の水酸基とグリシジル基が反応すると3次元構造が形成され、塗膜の柔軟性が十分ではなくなる場合がある。
【0040】
さらに、反応触媒として3級アミン化合物を使用する場合は、極性の高い4級塩化が起こるため、つきまわり性や耐水性などが劣ることがあり、反応触媒に1級アミン化合物または2級アミン化合物を使用する場合は、グリシジル基と反応して触媒性能が低下してしまう。
【0041】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B)
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B)は、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤とのほぼ化学理論量での付加反応生成物である。ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B)で使用されるポリイソシアネート化合物としては、公知のものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体;又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0042】
特に、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDI等(好ましくはクルードMDI等)の芳香族ポリイソシアネート化合物が防食性の為により好ましい。
【0043】
一方、前記イソシアネートブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温において安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約100〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生することが望ましい。
【0044】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B)で使用されるブロック剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール系化合物;ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物等(好ましくは、アルコール系化合物等)が挙げられる。
【0045】
顔料(C)
本発明のカチオン電着塗料組成物で用いることができる顔料(C)としては、公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着色顔料;クレー、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料;主に防錆顔料としての機能を持つ金属化合物を用いることができる。
【0046】
また、塗膜硬化性の向上を目的として、ジブチル錫ジベンゾエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド等の有機錫化合物を用いることができる。
【0047】
これらの顔料の配合量は、樹脂の合計固形分100質量部あたり1〜100質量部、特に10〜50質量部の範囲内が好ましい。
【0048】
上記顔料(C)は、顔料分散ペーストとして塗料に混合することが好適であり、該顔料分散ペーストは、着色顔料、防錆顔料及び体質顔料などの顔料をあらかじめ微細粒子に分散したものであって、例えば、顔料分散用樹脂、中和剤及び顔料を配合し、ボールミル、サンドミル、ペブルミル等の分散混合機中で分散処理して、顔料分散ペーストを調製できる。
【0049】
上記顔料分散用樹脂としては、公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、水酸基及びカチオン性基を有するエポキシ樹脂やアクリル樹脂、界面活性剤等、3級アミン型エポキシ樹脂、4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂、3級スルホニウム塩型エポキシ樹脂、3級アミン型アクリル樹脂、4級アンモニウム塩型アクリル樹脂、3級スルホニウム塩型アクリル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂とアミン化合物とを反応させて得られるアミン付加型の顔料分散樹脂が好ましい。
【0050】
カチオン電着塗料組成物について
本発明のカチオン電着塗料組成物におけるアミノ基含有エポキシ樹脂(A)及びブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B)の配合割合としては、上記成分(A)及び(B)の樹脂固形分合計質量を基準にして、成分(A)を30〜90質量部、好ましくは40〜85質量部、成分(B)を10〜50質量部、好ましくは15〜45質量部の範囲内であることが、つきまわり性が良好で、GAガスピン性、防食性に優れた塗装物品を得る為にも好ましい。また、塗料中に含まれる樹脂全体のアミン価としては、樹脂固形分を基準として、アミン価が、通常10〜100mgKOH/gの範囲内であり、20〜90mgKOH/gの範囲内であることがより好ましい。
配合割合や樹脂全体のアミン価が上記範囲を外れると、上記の塗料特性及び塗膜性能のいずれかを損うことがあり好ましくない。
【0051】
本発明のカチオン電着塗料組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記樹脂(A)、硬化剤(B)、及び必要に応じて界面活性剤や表面調整剤等の各種添加剤を十分に混合して調合樹脂とした後、水分散化し、これに顔料分散ペースト、水や有機溶剤、中和剤などを十分に混合して得ることができる。上記中和剤としては、公知の有機酸を特に制限なく用いることができ、なかでもギ酸、乳酸、酢酸又はこれらの混合物が好適である。
【0052】
塗膜形成方法
本発明は、前述のカチオン電着塗料組成物からなる電着浴に被塗物を浸漬する工程、及び被塗物を陰極として通電する工程を含む、カチオン電着塗膜の形成方法を提供する。
【0053】
本発明のカチオン電着塗料組成物の被塗物としては、自動車ボディ、自動車部品、2輪車部品、家庭用機器、その他の機器等が挙げられ、金属であれば特に制限はない。
【0054】
被塗物としての金属鋼板としては、冷延鋼板、熱延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al素材、Mg素材など、並びにこれらの金属板を必要に応じてアルカリ脱脂等の表面を洗浄化した後、リン酸塩化成処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理を行ったものが挙げられる。
【0055】
カチオン電着塗料組成物は、カチオン電着塗装によって所望の被塗物基材表面に塗装することができる。カチオン電着方法は、一般的には、脱イオン水等で希釈して固形分濃度が約5〜40質量%とし、好ましくは10〜25質量%とし、さらにpHを4.0〜9.0、好ましくは5.5〜7.0の範囲内に調整したカチオン電着塗料組成物を浴として、通常、浴温15〜35℃に調整し、負荷電圧100〜400V好ましくは150〜350Vの条件で被塗物を陰極として通電することによって行う。電着塗装後、通常、被塗物に余分に付着したカチオン電着塗料を落とすために、限外濾過液(UF濾液)、逆浸透透過水(RO水)、工業用水、純水等で十分に水洗する。
【0056】
電着塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、一般的には、乾燥塗膜に基づいて5〜60μm、好ましくは20〜50μmの範囲内とすることができる。
また、塗膜の焼き付け乾燥は、電着塗膜を電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機などの乾燥設備を用いて、塗装物表面の温度で110〜200℃、好ましくは140〜180℃にて、時間としては10〜180分間、好ましくは20〜50分間、電着塗膜を加熱して行う。上記焼付け乾燥により硬化塗膜を得ることができる。
【0057】
本発明のカチオン電着塗料を電着塗装する時、袋構造内部(内板部)の膜厚を確保するために電着時の塗装電圧を上げて塗装するが、薄膜となる内板部でGAガスピンが発生しやすくなったり、外板部膜厚が厚くなり過ぎて塗料使用量が増えるなどの問題がある。そこで、内板部膜厚を20μm以上とするためには、内板膜厚(μm)/外板膜厚(μm)の割合(%)が、通常35%以上、好ましくは50%以上の高つきまわり性が求められている。
【0058】
そのため、通電開始から3分後の単位膜厚当たりの分極抵抗値が、通常、10〜45kΩ・cm/μmの範囲内であり、好ましくは、12〜40kΩ・cm/μmの範囲内であり、より好ましくは、15〜30kΩ・cm/μmの範囲内であることが好適である。
【0059】
通電開始から3分後の単位膜厚当りの分極抵抗値を10kΩ・cm/μm以上とすることによりつきまわり性が向上し、単位膜厚当りの分極抵抗値を45kΩ・cm/μm以下とすることにより所定の膜厚を得やすく、増膜性が向上することから、防食性、薄膜部の仕上がり性およびGAガスピン性が向上することがあるため好ましい。従って、単位膜厚当たりの分極抵抗値を10〜45kΩ・cm/μmの範囲内とすることで、GAガスピン性などの塗膜性能と内板部20μm以上の高つきまわり性との両立が達成できる。
【0060】
本発明の通電開始から3分後の単位膜厚当たりの分極抵抗値(kΩ・cm/μm)とは、電着塗装(例えば、浴温28℃ 、極比A/C=1/2、極間距離10cmの一定条件)において、適用電圧(例えば、250V)の3分間の電着塗装において、3分後の電流値(A)、適用電圧(V)、塗装面積(cm)を用いて、下記式(1)により計算される分極抵抗値(kΩ・cm)を、その乾燥膜厚(μm)で割ることによって求められる。
分極抵抗値(kΩ・cm)=電圧(V)×塗装面積(cm)/〔塗装3分後の電流値(A)×1000〕・・・式(1)
【実施例】
【0061】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0062】
アミノ基含有エポキシ樹脂(A)の製造
製造例1 アミノ基含有エポキシ樹脂A−1の製造
攪拌機、温度計、窒素導入管および還流冷却器を取りつけたフラスコに、jER828EL(注1)304部、jER871(注2)668部、ビスフェノールA 137部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量560になるまで反応させた。
次に、アミン化合物(モノメチルエタノールアミン68部、ジエタノールアミン95部)を加え、120℃で4時間反応させた後、エチレングリコールモノブチルエーテルで調整して固形分70%のアミノ基含有エポキシ樹脂A−1溶液を得た。アミノ基含有エポキシ樹脂A−1は、アミン価78mgKOH/gであった。
【0063】
製造例2〜8 アミノ基含有エポキシ樹脂A−2〜A−8の製造
下記表1で示される以外は製造例1と同様にして、固形分70%のアミノ基含有エポキシ樹脂A−2〜A−8を製造した。
【0064】
【表1】
【0065】
尚、表中の「エポキシ当量」は、アミン化合物を反応させた時点のエポキシ当量である。
(注1)jER828EL:商品名、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量190、数平均分子量350。
(注2)jER871:商品名、三菱化学社製、ダイマー酸ジグリシジルエステル(単環型)、エポキシ当量390〜470、炭化水素基の炭素数30〜40。
(注3)jER872:商品名、三菱化学社製、ダイマー酸ジグリシジルエステル(単環型)、エポキシ当量600〜700、炭化水素基の炭素数45〜60。
(注4)ツノダイム216:商品名、築野食品工業社製、ダイマー酸、酸価194mgKOH/g。
【0066】
ブロック化ポリイソシアネート硬化剤(B)の製造
製造例9 硬化剤の製造
反応容器中に、コスモネートM−200(商品名、三井化学社製、クルードMDI)270部及びメチルイソブチルケトン127部を加え70℃に昇温した。この中にエチレングリコールモノブチルエーテル236部を1時間かけて滴下して加え、その後、100℃に昇温し、この温度を保ちながら、経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分80%のブロック化ポリイソシアネート硬化剤を得た。
【0067】
顔料分散用樹脂(D)の製造
製造例10
撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取り付けたフラスコに、jER828EL(商品名、三菱化学株式会社製、エポキシ樹脂)1010部に、ビスフェノールAを390部、プラクセル212(商品名、ポリカプロラクトンジオール、ダイセル化学工業株式会社、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1090になるまで反応させた。次に、エチレングリコールモノブチルエーテル150部、ジエタノールアミン105部およびN−メチルエタノールアミン34部を加え、140℃でエポキシ基が消失するまで反応させた。次いで、エチレングリコールモノブチルエーテルを加えて固形分を調整し、固形分60%のアミン付加型の顔料分散用樹脂D−1を得た。
【0068】
製造例11
撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取り付けたフラスコに、jER828EL(商品名、三菱化学株式会社製、エポキシ樹脂)1010部に、ビスフェノールAを390部、プラクセル212(商品名、ポリカプロラクトンジオール、ダイセル化学工業株式会社、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1090になるまで反応させた。次に、エチレングリコールモノブチルエーテル200部、チオジグリコール122部、ジメチロールプロピオン酸200部及び脱イオン水100部を加え、75℃でエポキシ基が消失するまで反応させた。次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて固形分を調整し、固形分60%の3級スルホニウム塩基を含有する顔料分散用樹脂D−2を得た。
【0069】
顔料分散ペーストの製造
製造例12 顔料分散ペーストNo.1の製造
製造例10で得たアミン付加型の顔料分散用樹脂D−1溶液8.3部(固形分5部)、精製クレー13.5部、カーボンブラック2.5部、ジオクチル錫オキサイド1部及び脱イオン水18.7部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分50%の顔料分散ペーストNo.1を得た。
【0070】
製造例13 顔料分散ペーストNo.2の製造
製造例11で得た3級スルホニウム塩型の顔料分散用樹脂D−2溶液8.3部(固形分5部)、精製クレー13.5部、カーボンブラック2.5部、ジオクチル錫オキサイド1部及び脱イオン水18.7部を加え、ボールミルにて20時間分散し、固形分50%の顔料分散ペーストNo.2を得た。
【0071】
カチオン電着塗料の製造
実施例1 カチオン電着塗料X−1の製造
製造例1で得られたアミノ基含有エポキシ樹脂A−1溶液を100部(固形分70部)、製造例9で得られたブロック化ポリイソシアネート硬化剤溶液を37.5部(固形分30部)混合し、さらに10%酢酸13部を配合して均一に攪拌した後、強く攪拌しながら脱イオン水を徐々に滴下して固形分34%のエマルションを得た。続いて、該エマルション294部(固形分100部)及び製造例12で得た50%の顔料分散ペーストNo.1 44部(固形分22部)を混合し、脱イオン水で調整して固形分20%のカチオン電着塗料X−1を製造した。
また、上記カチオン電着塗料X−1を電着槽内に満たし、浴温28℃、陽極/陰極=1/2、極間距離10cm、電圧250Vの条件で電着塗装を行い、通電開始から3分後の単位膜厚当たりの分極抵抗値を測定したところ、20kΩ・cm/μmの値となった。
【0072】
実施例2〜6及び比較例1〜3 カチオン電着塗料X−2〜X−9
下記表2で示される以外は実施例1と同様にして、固形分20%のカチオン電着塗料X−2〜X−9を製造した。
【0073】
また、後述する方法で、つきまわり性、GAガスピン性、防食性の評価試験を行ったので、表中に結果を示す。3つの評価試験のうち、1つでも不合格「C」の評価結果が出た場合、その塗料は不合格となる。
【0074】
【表2】
【0075】
尚、表中の配合量は固形分の値である。
【0076】
評価試験
<つきまわり性>
4枚の鋼板に直径8mmの穴を空け、2cm間隔で設置した「4枚ボックス法つきまわり性試験の治具」(図1参照)を、図2のように配線した。図2の4枚の鋼板のうち、最も左側の鋼板に向かって左側の面を「A面」、向かって右側の面を「B面」とする。同様に、左から2番目の鋼板左右の面を、それぞれ、「C面」及び「D面」、左から3番目の鋼板左右の面を、それぞれ、「E面」及び「F面」、そして最も右側の鋼板左右の面が、それぞれ、「G面」と「H面」となる。この中で、A面が「外板」であり、G面が「内板」となる。
【0077】
図2の装置において、浴温28℃、A面と電極との極間距離10cm、通電時間3分間にて、外板(A面)乾燥膜厚50μmとなる電圧にて電着塗装した。つきまわり性は、内板(G面)乾燥膜厚で評価した。
評価は、A及びBが合格であり、Cが不合格である。
A:G面(膜厚)が25μm以上で、つきまわり性が非常に優れている。
B:G面(膜厚)が20μm以上でかつ25μm未満で、つきまわり性が良好である。
C:G面(膜厚)が20μm未満で、つきまわり性が劣る。
【0078】
<耐GAガスピン性>
浴温28℃、硬化塗膜の膜厚が40μmになるような負荷電圧で、リン酸塩化成処理を行ったGA鋼板(合金化溶融亜鉛めっき鋼板)に電着塗装し、水洗後、170℃で30分間加熱硬化した塗面100cmあたりのピンホ−ル発生個数を調べた。
評価は、A及びBが合格であり、Cが不合格である。
A:ピンホールの発生がない。
B:ピンホールが5〜10個発生している。
C:ピンホールが10個以上発生している。
【0079】
<防食性>
浴温28℃、硬化塗膜の膜厚が20μmになるような負荷電圧で、リン酸亜鉛処理を行った冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)に電着塗装し、170℃で20分間加熱硬化して試験板を得た。
続いて上記試験板の素地に達するように塗膜にカッターナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z−2371に準じて、35℃ソルトスプレー試験を840時間行い、カット部からの片側での錆、フクレ幅によって下記の評価基準に基づき評価を行った。
評価は、A及びBが合格であり、Cが不合格である。
A:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で2.0mm以下であり、防食性が非常に優れている。
B:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で2.0mmを超え、かつ3.0mm以下であり、防食性が良好である。
C:錆及びフクレの最大幅がカット部より片側で3.0mmを超えており、防食性が劣る。
図1
図2