(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058144
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20161226BHJP
H04B 1/38 20150101ALI20161226BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
G01S7/03 220
H04B1/38
H01Q1/40
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-532474(P2015-532474)
(86)(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公表番号】特表2015-537188(P2015-537188A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】EP2013070128
(87)【国際公開番号】WO2014049088
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2015年5月21日
(31)【優先権主張番号】61/705,646
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515080342
【氏名又は名称】オムニラーダー ベスローテン・ヴェンノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】OMNIRADAR BV
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ゼイル,ポーラス,トーマス,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ブラウワー,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ルンペン,ジャック,レオポルド,カタリーナ
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0033395(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0316126(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102009026475(DE,A1)
【文献】
特開2003−315438(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0154238(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0278400(US,A1)
【文献】
特開2000−068731(JP,A)
【文献】
特表2010−503357(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0063056(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0035370(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0201579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/03
H01Q 1/40
H04B 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の周波数帯域で電磁信号を送信すること、及び所望の周波数帯域で電磁信号を受信することの少なくとも1つを実行するように設けられた半導体集積回路(3)におけるアンテナアセンブリ(4)と、
信号グランドプレーン(8)を形成する導電層と、
前記アンテナアセンブリと前記信号グランドプレーンを形成する前記導電層との間の誘電体スペーシング(d1、d2)とを備え、
前記誘電体スペーシングは、
前記半導体集積回路の少なくとも1つの半導体層(d1)と、
前記半導体集積回路(3)が実装されたプリント基板(1)とを含み、
前記誘電体スペーシングは、前記アンテナアセンブリから前記信号グランドプレーンを形成する前記導電層を通過する所望の周波数帯域における電磁信号が60°〜120°の範囲に含まれる位相変位を受けるように設けられており、
前記信号グランドプレーンを形成する前記導電層(8)は、前記プリント基板(1)における前記半導体集積回路(3)が実装された側と反対側に設けられていることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】
前記誘電体スペーシング(d1、d2)は、下記数式で表される実効誘電体厚みd
tot/λを有し、
【数1】
(式中、d1は前記半導体集積回路(3)の前記少なくとも1つの半導体層の厚みを示し、
d2は前記プリント基板(1)の厚みを示し、
er1は前記少なくとも1つの半導体層の誘電率を示し、
er2は前記プリント基板の誘電率を示し、
λは前記所望の周波数帯域における周波数での自由空間波長を示す。)
前記厚みd1及び厚みd2は、前記実効誘電体厚みd
tot/λが0.22〜0.28の範囲に含まれる範囲にあることを特徴とする請求項
1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記プリント基板(1)は、エポキシ材料を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
前記エポキシ材料は、FR4、RO4003及びRO4350(RO4003及びRO4350はRogers Corporationの商標)のいずれか一つの型であることを特徴とする請求項3に記載の高周波モジュール。
【請求項5】
前記プリント基板(1)は、半導体集積回路(3)を、信号グランドプレーンを形成する導電層(8)に電気的に接続するために設けられた少なくとも1つの導電ビア(9)を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項6】
前記アンテナアセンブリ(4)に設けられた被覆層(2)をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項7】
前記被覆層(2)は、該被覆層が前記所望の周波数帯域における電磁信号のための電磁レンズを構成するような形状を有することを特徴とする請求項6に記載の高周波モジュール。
【請求項8】
前記被覆層(2)は、傾斜した縁部を含むことを特徴とする請求項7に記載の高周波モジュール。
【請求項9】
前記被覆層(2)は、エポキシ材料を含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項10】
前記半導体集積回路(3)は、レーダ探知を実行するために設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【請求項11】
プリント基板に表面実装するのに適合されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、高周波モジュールに関する。高周波モジュールは、例えばレーダ探知を実行するために配置され得る。高周波モジュールは、例えばプリント基板に表面実装するのに適合され得る。
【背景技術】
【0002】
高周波モジュールは、電磁信号を送信できる、電磁信号を受信できる、又はそれらの両方をできる半導体集積回路を含み得る。そのため、アンテナアセンブリが半導体集積回路に配置され得る。そのようなコンパクトな構造は、特に電磁信号がミリメーターの波長範囲にある場合に用いられ得る。
【0003】
米国特許出願公開2008/0278400A1号には、アンテナチップ及びパッケージを含む電子機器が記載されている。そのパッケージは、表面実装されたチップ及び封止材料を含む。アンテナチップは、基板、特にシリコン基板と、アンテナ構造を含む。穴が、アンテナ構造の近傍において、基板に設けられている。この穴は、エッチングにより形成される。アンテナ構造の近傍の基板における穴は、アンテナ放射特性を改善させる。
【0004】
米国特許出願公開2010/0033395A1号には、トランシーバ、アンテナ及びレシーバを統合する半導体チップが記載されている。トランシーバに接続されたアンテナは、基板の前側に配置された誘電体層に配置されている。反射板とアンテナとの分離は、約4分の1波長のミリメーター波であり、それは、アンテナの放射効率を増大する。基板貫通誘電性ビアのアレイは、アンテナと反射板との間の材料の実効誘電率を低減するために用いられ、それにより、ミリメーター波の波長を低減し、放射効率を増大する。
【発明の概要】
【0005】
比較的に低いコストで十分な性能を有する高周波モジュールが得られるようにするための方法が必要である。
【0006】
この必要性により良く応えるために、本発明の一態様では、
‐所望の周波数帯域で電磁信号を送信すること、及び所望の周波数帯域で電磁信号を受信することの少なくとも1つを実行するように設けられた半導体集積回路におけるアンテナアセンブリと、
‐信号グランドプレーンを形成する導電層と、
‐アンテナアセンブリと信号グランドプレーンを形成する導電層との間の誘電体スペーシングとを備え、誘電体スペーシングは、半導体集積回路の少なくとも1つの半導体層
と、半導体集積回路が実装されたプリント基板とを含み、信号グランドプレーンを形成する導電層は、プリント基板様の基板における半導体集積回路が実装された側と反対側に設けられており、
アンテナアセンブリから信号グランドプレーンを形成する導電層を通過する所望の周波数帯域における電磁信号が60°〜120°の範囲に含まれる位相変位を受けるように設けられて
いる高周波モジュールを提供する。
【0007】
そのような高周波モジュールにおいて、アンテナアセンブリにより放射された電磁信号は、半導体集積回路の半導体基板内に部分的に入るであろう。信号グランドプレーンは、この半導体基板に吸収された電磁信号の一部に対する反射体となる。信号グランドプレーンは、反射された電磁信号を提供する。誘電体スペーシングは、この反射された電磁信号が いわば、放射された電磁信号と強め合う干渉をすることを確実にする。すなわち、反射された電磁信号は、放射された電磁信号に加わり、従って、所望の方向に放射される電磁信号が増大する。半導体基板内に入る放射された電磁信号の一部は、従来のアンテナオンチップ装置のように失われずに、効率的な送信、受信又はそれらの両方に寄与できる。
【0008】
上述の高周波モジュールには、上述の特許出願公開のうち最初の出願公開により提示された電子機器に対していくつかの利点がある。特に、上記高周波モジュールにおいて、半導体集積回路は、上述の特許出願公開に記載されているような穴を設ける必要がない。その結果、この穴の形成のための追加のエッチングステップを必要としない。製造がより容易であり、従ってコストがより低くなる。また、上述の2つめの特許出願公開と比較しても製造をより容易にし、コストを低くできる。
【0009】
さらに、上述の最初の特許出願公開で提示されるような穴は、この穴を有する半導体集積回路を比較的に壊れやすくする。半導体集積回路に被覆層が設けられる場合、半導体集積回路がダメージを受けるリスクがある。半導体集積回路は、製造プロセスにおいてそのような点で壊れるおそれがある。これに対して、上記高周波モジュールの製造プロセスにおいて、半導体集積回路がダメージを受けるリスクはほとんどない。
【0010】
本発明の一実施形態は、別々の段落に記載された以下の1つ又はそれ以上の追加的特徴を有利に含む。これらの追加的特徴は、それぞれ、比較的に低いコストでの十分な性能に寄与する。
【0011】
誘電体スペーシングは、下記数式で表される実効誘電体厚みd
tot/λを有し、
【0013】
式中、d1は半導体集積回路の少なくとも1つの半導体層の厚みを示し、
d2は
プリント基板の厚みを示し、
er1は少なくとも1つの半導体層の誘電率を示し、
er2はプリント基板の誘電率を示し、
λは所望の周波数帯域における周波数での自由空間波長を示し、
厚みd1及び厚みd2は、実効誘電体厚みd
tot/λが0.22〜0.28の範囲に含まれるように決定される。
【0014】
プリント基板は、エポキシ材料を有利に含む。
【0015】
エポキシ材料は、FR4、RO4003及びRO4350のうちの一つの型が有利であり、RO4003及びRO4350はRogers Corporationの商標である。
【0016】
プリント基板は、半導体集積回路を、信号グランドプレーンを形成する導電層に電気的に接続するために設けられた少なくとも1つの導電ビアを有利に含む。
【0017】
高周波モジュールは、アンテナアセンブリに設けられた被覆層を有利に含む。
【0018】
被覆層は、被覆層が所望の周波数帯域における電磁信号のための電磁レンズを構成するような形状を有利に有する。
【0019】
被覆層は、エポキシ材料を有利に含む。
【0020】
半導体集積回路は、レーダ探知を実行するために設けられ得る。
【0021】
高周波モジュールは、
主要なプリント基板に表面実装するのに有利に適する。
【0022】
説明の目的のために、本発明のいくつかの実施形態の詳細な説明を添付の図面を参照して行う。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1はパッケージに組み込まれたレーダ集積回路を含むレーダモジュールを示す図である。
【
図2】
図2はレーダモジュールの断面を示す図である。
【
図3】
図3はレーダモジュールの有利な変形例の断面を示す図である。
【
図4】
図4は複数のレーダモジュールを含むレーダアセンブリを示す図である。
【
図5】
図5はレーダモジュールの効率的な製造のために用いられ得る成形型を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、パッケージに組み込まれたレーダ集積回路(IC)3を含むレーダモジュールを示す。レーダIC3は、例えば接着により基板1に実装される。基板1は、プリント基板(PCB)等であってもよく、以下便宜上PCB1と呼ぶ。PCB1は、標準FR4−エポキシ、又はRO4003若しくはRO4350等のより特別な材料等の材料であってもよく、RO4003及びRO4350はRogers Corporationの商標である。レーダIC3は、複数のボンディングワイヤ6によりPCB1の銅配線に電気的に接続される。しかしながら、他の実施形態において、電気的接続は、バンプ及びフリップチッピングを介してレーダIC3に提供され得る。
【0025】
レーダモジュールは、レーダIC3に設けられたアンテナアセンブリ4をさらに含む。
図1において、単純化のためにアンテナアセンブリ4を表す3つのアンテナが描かれる。しかしながら、アンテナアセンブリ4は、異なる数のアンテナを含んでもよい。これらのオンチップアンテナは、レーダIC3における能動回路構成に接続され得る。アンテナアセンブリ4の周囲領域には、以下に説明するように
PCB1の底層を除いて実質的に導電材料がないことが好ましい。この構造の利点は、レーダIC3とPCB1との間の低周波及びデジタル接続を提供するのに十分であることである。
【0026】
この例において、更なるIC5も
PCB1に実装される。この更なるIC5は、例えばマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、DSP、FPGA又は他の型の集積回路(DSPはDigital Signal Processorの頭文字であり、FPGAはFieldProgrammable Gate Arrayの頭文字である)であってもよい。更なるIC5は、ボンディングワイヤ6を介してPCBの銅配線に電気的に接続される。なお、他の実施形態において、複数のレーダICが単一の
PCBに実装されてもよく、マイクロプロセッサ等の1つ又はそれ以上の更なるICと通信してもよい。
【0027】
レーダIC3等の実装される種々の構成要素を有するPCB1は、被覆層2により被覆された構造を形成し、被覆層2はエポキシ材料であってもよい。この被覆層は、以後、便宜上エポキシ層2という。エポキシ層2は、レーダモジュールを完全に被覆してもよく、これによりシリコンに水分が到達することを防止し、製品寿命を増大する。住友ベークライト社のEME−G770H等のエポキシ材料は、エポキシ層2を形成するのに適する。
【0028】
レーダIC3は、高周波(RF)信号をアンテナアセンブリ4に適用すること、及びアンテナアセンブリ4から受信されたRF信号を処理することによりデータ探知を行うことができる。すなわち、レーダIC3は、アンテナアセンブリ4を介して電磁波を送信及び受信する。一実施形態において、これらのRF信号が例えば60GHzの周波数を有する場合、アンテナアセンブリ4はミリメーターのオーダーで小さくすることができる。レーダIC3は、低周波信号により更なるIC5と通信し得る。更なるIC5は、例えば物体までの距離、物体の速度及び物体の大きさを決定するために、レーダIC3からのデータを処理し得る。
【0029】
図1に示されたレーダモジュールの利点は、ユーザが複雑なRF挙動について懸念する必要がなく、低周波アナログ及び/又はデータ信号接続の提供のみをしなければならないということである。レーダモジュールは、ユーザがユーザの製品内に最小限のタイム-タイム-マーケットでこのモジュールを容易に設計できるように、十分に試験され、仕様を定められ得る。レーダモジュールは、最新の電子装置製造プロセスでピックアンドプレイスされ得る表面実装形態であってもよい。
【0030】
図2は、レーダモジュールの断面を示す。レーダIC3は、PCB1に接着され、エポキシ層2により被覆される。ボンディングワイヤ6は、電気的接続を提供する。ビア9は、ボンディングワイヤ6を、レーダIC3が実装されたPCBの上面からPCB
1の底面のパッド7までに電気的に接続し得る。レーダIC3の下の複数のビアは、レーダIC3の底面をPCB1の底面の更なるパッド8に接続するために提供され得る。これらの接続は、信号グランド接続を構成し、ヒートシンクとの熱的結合を提供し得る。更なるパッド8は、信号グランドプレーンを形成する導電層であってもよい。従って、このパッドは、以下、信号グランドプレーンという。
【0031】
パッド7及び信号グランドプレーン8、並びに更なるパッドは、例えばはんだ付けによりマザーボード上にレーダモジュールを実装するのに用いられ得る。代替的に、パッド7及び信号グランドプレーン8、並びに更なるパッドは、ピンを有してもよく、そのピンは、レーダモジュールが一部を形成するシステムとの電気的接続をおこなってもよい。これらの接続は、電源、グランド、データ及びプログラミングインターフェイス、並びにこのシステムとの他の接続のために用いられ得る。
【0032】
一般に、シリコン基板上のアンテナは、この基板内にも放射し得る。シリコン基板は通常、損失があるため、特定の量の放射エネルギーが損失されるであろう。さらに、
図1に示すようにアンテナを有するレーダICを導電基板に実装することは、この導電基板からアンテナに戻る反射を生じ得る。放射された信号の反射は、放射された信号の位相と反対の位相を有し、すなわち、反射は位相が180°異なり得る。この場合、放射された信号は、比較的に大きい度に減衰され得る。
【0033】
図2を参照して、この減衰の問題は、レーダIC3のシリコン基板とPCB1との間の導電層を除くことにより緩和され得る。例えば、レーダIC3のシリコン基板とPCB1との間に接着剤が設けられている場合、この接着剤は、非導電性であることが好ましい。すなわち、アンテナアセンブリ4の下の領域は、導電材料がないことが好ましい。
図2に示された高周波モジュールにおいて、PCB1のレーダIC3が実装された側の導電層に間隙20がある。アンテナアセンブリ4の下に位置するこの間隙20は、非導電性接着剤により満たされ得る。
【0034】
導電層は、反射の位相を規定するためにPCB1の底側に提供され得る。レーダモジュールは、アンテナに戻る反射された波がこのアンテナから放射された波と同じ位相になるように設計され得る。反射された波は、いわばアンテナから放射された波と強め合う干渉をする。このように、反射は、所望の方向に放射された波の強さを増大する。この方向から受信された信号も、強度が増大される。
【0035】
より具体的に、
図1及び
図2に示されたレーダモジュールにおいて、アンテナアセンブリ4は、レーダIC3内において金属層で形成され得る。この金属層は、レーダIC3のシリコン基板上にある。シリコン基板は、
図2に示すように、厚みd1を有する。PCB1は、
図2に示すように、厚みd2を有する。シリコン基板及びPCB1は、アンテナアセンブリ4と信号グランドプレーン8との間に誘電体スペーシングの部分を形成する。アンテナアセンブリ4により放射された、又はアンテナアセンブリ4により受信された電磁信号は、アンテナアセンブリ4から信号グランドプレーン8のこの誘電体スペーシングを通過する。
【0036】
総実効誘電体厚みd
tot/λは、以下の数式で定義され、
【0038】
式中、d1及びd2は、上述のとおりであり、
図2に示すとおりであり、er1はシリコン基板の誘電率を表し、er2はPCB1の誘電率を表し、λは所望の周波数帯域における周波数での自由空間波長を表す。所望の周波数帯域は、通常、レーダIC3が送信できる周波数範囲、及びレーダIC3がアンテナアセンブリ4を通るRF信号を受信できる周波数範囲をカバーする。
【0039】
総実効誘電体厚みd
tot/λが、例えば0.22〜0.28に含まれる範囲内の約0.25の範囲内である場合、十分な性能が得られ得る。信号グランドプレーン8は、アンテナアセンブリ4により放射された電磁信号に対する反射体となる。反射された電磁信号は、いわばこの放射された電磁信号と強め合う干渉をする。すなわち、反射された電磁信号は、放射された電磁信号に加わり、従って、エポキシ層2を通って所望の方向に放射された電磁エネルギーを増大する。
【0040】
これに関して、アンテナアセンブリ4により放射された電磁信号は、上方に方向付けられた成分と下方に方向付けられた成分とを有する。上方に方向付けられた成分は、エポキシ層2を通過し、その後に自由空間に到達し、その後に、あるならば所望の標的に到達する。下方に方向付けられた成分は、レーダIC3のシリコン基板内に放射され、誘電体スペーシングを通過する。アンテナアセンブリ4により放射された電磁信号の上方に方向付けられた成分は、反射された電磁信号の元となる下方に方向付けられた成分の位相と反対の位相を有する。上方に方向付けられた成分と下方に方向付けられた成分とで反対である位相は、総実効誘電体厚みd
tot/λが約0.25の範囲内である場合に得られ得る十分な性能を説明する。
【0041】
実際に、総実効誘電体厚みd
tot/λの算出は、レーダIC3が通常、異なる誘電率を有し得るいくつかの層を含む可能性があるため、より複雑となり得る。より正確な算出は、これを考慮に入れてもよく、種々の層の種々の条件を含んでもよく、層の条件は、層の厚み及び誘電率を含む。そのような正確な算出は、レーダIC3とPCB1との間に設けられ、特定の厚みを有する接着層をさらに考慮に入れてもよい。
【0042】
例えば、シリコン基板の厚みであるd1の標準値は0.1mmであり、PCB1の厚みであるd2の標準値は0.5mmである。シリコン基板の誘電率であるer1の標準値は11.9であり、PCB1の誘電率であるer2の標準値は3.66である。これらの標準値での総実効誘電体厚みd
tot/λは0.26であり、最適値の0.25に十分に近い。電磁シミュレータを用いたコンピュータに基づくシミュレーションは、総実効誘電体厚みd
tot/λが最適値の0.25により近い高周波モジュールを考えるのに用いられ得る。
【0043】
より具体的に、アンテナアセンブリから信号グランドプレーンまでの誘電体スペーシングを通過する所望の周波数帯域内の電磁信号が60°〜120°の範囲内に含まれる位相変位を受けるように、オンチップアンテナアセンブリから信号グランドプレーンまでの誘電体スペーシングが設けられている場合、十分な性能が得られ得る。より好ましくは、この位相変位は80°〜100°の範囲内に含まれる。
【0044】
図2を参照して、PCB1の厚みd2が臨界値を超える場合、表面波が発生され得る。表面波は損失を誘導するため、好適に避けられるべきである。PCB1の適切な厚みを見つけるための設計努力が必要となり得る。
【0045】
図3は、レーダモジュールの有利な変形例の断面を示す。その断面は、以下の特徴を除いて、
図2に示す断面と同様である。
図3において、エポキシ層2は、直角の縁部の代わりに傾斜した縁部を有する。これらの傾斜した縁部は、エポキシ層2における表面波の発生を無効にし、レーダIC3の基板層における表面波の発生をも無効にし得る。その縁部は丸みが付けられてもよい。
図3に示すものと異なる多くの形状が可能である。さらに、傾斜した縁部を有するエポキシ層2のこの特徴は、他の利点を提供する。これらの縁部は、アンテナアセンブリ4から放射されるエネルギーを適切に集中させる一種のレンズとして作用させ得る。
【0046】
図3に示す有利な変形例は、所望の周波数帯域における電磁信号のための電磁レンズを構成する被覆層の特徴を含む。なお、原理的に、この特徴は、アンテナアセンブリと該アンテナアセンブリ上に設けられた被覆層を有するいずれの高周波モジュールにも適用され得る。すなわち、この特徴は、本願明細書に記載のような信号グランドプレーンを形成する導電層や誘電体スペーシングの存在を必要とはしない。その上、この特徴は、半導体集積回路に設けられるアンテナアセンブリさえも必要とはしない。レンズ形成被覆層は、例えばプリント基板上にあるアンテナアセンブリ上に設けられ得る。
【0047】
図4は複数のレーダモジュールを含むレーダアセンブリを示し、ここで、レーダモジュールは、上述の
図1〜3に示すレーダモジュールと同様のものであってもよい。このアセンブリは、3×8=24のモジュールのマトリクスを有する例である。例えば60GHz等の高周波で動作するレーダモジュールは、例えばミリメーターからセンチメーターのオーダーといった比較的に小型であってもよい。そのような小型のレーダモジュールの操作及びアライメント等は、大量生産において困難となり得る。
図4に示すレーダモジュールのマトリクス又は100のレーダモジュールマトリクスの操作はより容易となる。
【0048】
生産プロセスは以下のようなものにすることができる。24個の装置の統合レイアウトを含むPCBが生産される。続いて、24個のレーダIC及び24個のマイクロプロセッサICは、PCBに接着され、PCBに対するボンドワイヤ接続が行われる。このアセンブリは、成形型に封入され、エポキシを用いて射出成形される。エポキシのキュアリングの後、アセンブリは切り取られ、24個のデバイスがそれぞれ輸送のために準備される。
【0049】
図5は、
図3に示すようなレーダモジュールの効率的な製造のために用いられ得る成形型の断面を示す。成形型は、エポキシ被覆層を含むレーダモジュールを得るために用いられる。成形型は、
図3に示す傾斜した縁部を形成するための凸部18を含む上面内壁が組み込まれている。この例において、成形型は、3つのレーダICを被覆する3つのエポキシ層を規定する3つの領域15、16、17を含む。成形型は、板チョコを生産するための成形型と同様の形状を有する。
【0050】
要約すると、それは、所望の周波数帯域で電磁信号を送信でき、所望の周波数帯域で電磁信号を受信でき、又はその両方ができる半導体集積回路(3)におけるアンテナアセンブリ(4)を含む高周波モジュールの実施形態である。高周波モジュールにおいて、導電層(8)は信号グランドプレーンを形成する。アンテナアセンブリ(4)と信号グランドプレーンを形成する導電層(8)との間には誘電体スペーシング(d1、d2)がある。半導体集積回路(3)の少なくとも1つの半導体層(d1)は、この誘電体スペーシング(d1、d2)の部分を形成する。誘電体スペーシング(d1、d2)は、アンテナアセンブリ(4)から信号グランドプレーンを形成する導電層(8)までの誘電体スペーシング(d1、d2)を通過する所望の周波数帯域における電磁信号が60°〜120°の範囲に含まれる位相変位を受けるように設けられている。
【0051】
(注釈)
上述の図面を参照した詳細な説明は、単に特許請求の範囲で定義した本発明及び追加の特徴の説明である。本発明は、多くの異なる方法で実施することができる。これを説明するために、いくつかの代替案を簡単に示す。
【0052】
本発明は、電磁信号の送信、受信又はそれらの両方に関する多くの型の製品又は方法に有利に適用され得る。レーダへの適用は単なる例である。他の例として、本発明はテレコミュニケーション装置に有利に適用され得る。
【0053】
「アンテナアセンブリ」の用語は、広義に理解されるべきである。その用語は、電磁信号を電気信号に変換できる装置、又はその逆ができる装置のいずれも含み得る。半導体集積回路におけるアンテナアセンブリは、半導体集積回路の製造プロセスの際に形成され得る。代替的に、アンテナアセンブリは、既に製造された半導体集積回路に設けられ得る。
【0054】
「誘電体スペーシング」の用語は、広義に理解されるべきである。その用語は、アンテナアセンブリと信号グランドプレーンとの間に存在する材料
の物理的構造
及び成分を
含む。
詳細な説明及び図面に記載の実施形態において、誘電体スペーシングは、
半導体層及びプリント基板を含
む。なお、「シリコン」の用語は、便宜上、詳細な説明で用いたものであり、他の半導体材料の使用を排除するものではない。
【0055】
一般に、本発明の実施の異なる方法は数多くあり、異なる実施は、異なるトポロジーを有し得る。所定のトポロジーにおいて、単一のモジュールは複数の作用を果たし、複数のモジュールは共同で単一の作用を果たし得る。これに関して、図面はよく表している。
【0056】
上記注釈は、図面を参照した詳細な説明が限定を目的とするものではなく、本発明の説明であるということを説明する。本発明は、添付した特許請求の範囲内にある多くの代替案で実施が可能である。特許請求の範囲が意図する範囲内、及び特許請求の範囲の均等の範囲内における全ての変更は、それらの範囲内に含まれる。特許請求の範囲におけるいずれの引用符号も特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきでない。「含む(comprising)」の用語は、特許請求の範囲に挙げられた要素又はステップ以外の存在を排除するものでない。要素又はステップの前の「一つの(a)」又は「一つの(an)」の用語は、複数のそのような要素又はステップの存在を排除するものではない。それぞれの従属請求項がそれぞれの追加の特徴を定義することは、特許請求の範囲に反映された追加の特徴以外の追加の特徴を組み合わせることを排除するものではない。