(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種のヒンジとして、特許文献1に記載のものが知られている。
図16に示すように、このヒンジは、扉に取り付けられる第一のヒンジ本体101と、枠に取り付けられる第二のヒンジ本体102と、を備える。第一のヒンジ本体101と第二のヒンジ本体102との間には、第一のアーム103及び第二のアーム114が介在する。第一及び第二のヒンジ本体101,102には、枠に対する扉の上下、左右及び前後方向の微調整をするための位置調整部104a,104b,105a,105bが組み込まれる。
【0003】
第一のアーム103は、その基端部が第一のヒンジ本体101の位置調整部104a,104bに軸106a,106bを介して回転可能に支持され、その先端部が回転ブロック107a,107bを介して第二のヒンジ本体102の位置調整部105a,105bに回転可能にかつスライド可能に支持される。第二のアーム114も、その基端部が第二のヒンジ本体102の位置調整部105a,105bに軸108a,108bを介して回転可能に支持され、その先端部が回転ブロック109a,109bを介して第一のヒンジ本体101の位置調整部104a,104bに回転可能にかつスライド可能に支持される。
【0004】
第一のアーム103は、C字形に形成される。第二のアーム114はH字形に形成されて、水平方向に延在する本体部114aを有する。第一のアーム103と第二のアーム114とが互いに交差するように、第一のアーム103の開口部103aに第二のアーム114の本体部114aが挿入される。第一のアーム103と第二のアーム114とは円弧形のベアリング110a,110bを介して回転可能に連結される。なお、典型的なヒンジでは、円弧形のベアリング110a,110bの替わりに、第一のアーム103と第二のアーム114とを軸を介して回転可能に連結する(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
扉を開くとき、第一のアーム103が第一のヒンジ本体101及び第二のヒンジ本体102に対して回転し、第二のアーム114も第一のヒンジ本体101及び第二のヒンジ本体102に対して回転する。そして、第一及び第二のアーム103,114が相対的に回転する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明のヒンジの実施形態を詳細に説明する。本発明のヒンジには、スライドタイプのヒンジ(第一ないし第三の実施形態)と、リンクタイプのヒンジ(第四の実施形態)と、がある。まず、スライドタイプのヒンジを説明する。
【0017】
図1は、本発明の第一の実施形態のスライドタイプのヒンジ(以下、単にヒンジという)の斜視図を示し、
図2はヒンジの正面図を示す。ヒンジは扉を水平方向に開閉するのに用いられる。ヒンジは、扉及び枠の一方に取り付けられる第一のヒンジ本体1と、扉及び枠の他方に取り付けられる第二のヒンジ本体2と、を備える。第一のヒンジ本体1と第二のヒンジ本体2との間には、第一のアーム3と第二のアーム4とが介在する。
【0018】
図3(a)及び
図3(b)は、ヒンジの水平断面図を示す。
図3(b)は扉が閉じ位置にあるヒンジを示し、
図3(a)は扉が閉じ位置から開き位置に到る途中にあるときのヒンジを示す。
図3(b)に示すように、第一のヒンジ本体1は、扉dの側面の掘込みに埋め込まれる。第二のヒンジ本体2は、扉dの側面に対向する枠fの掘込みに埋め込まれる。扉dのデザインを損なわないように、扉dを閉じたとき、ヒンジは外からは見えない。
【0019】
以下の説明において、「上下方向」は、ヒンジを水平方向に開く扉dに使用したときの「上下方向」(
図1参照)であり、「左右方向」「前後方向」は、扉dを正面から見たときの「左右方向」「前後方向」(
図3(b)参照)である。
【0020】
図1に示すように、第一のヒンジ本体1及び第二のヒンジ本体2には、扉dの三次元的な位置を調整するための位置調整部5a〜5cが設けられる。位置調整部5a〜5cは、扉dの左右方向(
図3(b)参照)の位置を調整する機能を持つ左右位置調整部5aと、扉dの上下方向の位置を調整する機能を持つ上下位置調整部5bと、扉dの前後方向(
図3(b)参照)の位置を調整する機能を持つ前後位置調整部5cと、を備える。
【0021】
図3(b)に示すように、第一のアーム3は、その基端部3aが第一のヒンジ本体1に軸11を介して回転可能に支持され、その先端部3bが第二のヒンジ本体2に軸12を介してスライド可能にかつ回転可能に支持される。第二のヒンジ本体2には、軸12がスライドする溝21が形成される。第二のアーム4は、その基端部4aが第二のヒンジ本体2に軸13を介して回転可能に支持され、その先端部4bが第一のヒンジ本体1に軸14を介してスライド可能にかつ回転可能に支持される。第一のヒンジ本体1には、軸14がスライドする溝22が形成される。第一のアーム3と第二のアーム4とは、X字状に交差する。第一のアーム3と第二のアーム4とは、軸15で回転可能に連結される。このヒンジにおいては、五本の軸11〜15があり、そのうちの二本の軸12,14が第一及び第二のヒンジ本体1,2に対してスライドする。
【0022】
図4は、ヒンジの分解斜視図を示す。上記のように、ヒンジは、第一のヒンジ本体1、第二のヒンジ本体2、第一のアーム3、第二のアーム4を備える。以下、これらの構成要素を順番に説明する。
【0023】
第一のヒンジ本体1は、扉dに取り付けられるベースフレーム7と、ベースフレーム7に対して位置調整可能な左右位置調整部5aと、を備える。ベースフレーム7には、ベースフレーム7を扉dに取り付けるための取付けねじ(図示せず)が通る通し孔7a,7bが形成される。ベースフレーム7には、左右調整ねじ9a,9bが回転可能に軸方向に移動不可能に取付けられる(
図6(a)の断面図も参照)。左右調整ねじ9a,9bの先端部には、左右調整ねじ9a,9bの抜けを防止するワッシャ10a,10bが取り付けられる。左右調整ねじ9a,9bは、左右位置調整部5aに螺合する。左右調整ねじ9a,9bを回すと、左右位置調整部5aがベースフレーム7からせり上がり、又は左右位置調整部5aがベースフレーム7の中に入る。このため、扉dの左右方向の位置の調整が可能になる。なお、位置調整機能が必要なければ、左右位置調整部5aをベースフレーム7と一体にすることもできる。
【0024】
第二のヒンジ本体2は、枠fに取り付けられるベースフレーム8と、ベースフレーム8に対して上下方向に位置調整可能な上下位置調整部5bと、上下位置調整部5bに対して左右方向(
図3(b)の前後方向)に位置調整可能な前後位置調整部5cと、を備える。ベースフレーム8には、ベースフレーム8を枠fに取り付けるための取付けねじ(図示せず)が通る通し孔8a,8bが形成される。上下位置調整部5bには、上下方向に長い長孔5b1,5b2が形成される。長孔5b1,5b2には、上下位置調整部5bをベースフレーム8に取り付けるためのねじ23a,23bが通る。上下位置調整部5bは、長孔5b1,5b2の長さの範囲内で上下方向に位置調整可能である。前後位置調整部5cには、左右方向に細長い長孔5c1,5c2が形成される。長孔5c1,5c2には、前後位置調整部5cを上下位置調整部5bに取り付けるためのねじ24a,24bが通る。前後位置調整部5cは、長孔5c1,5c2の長さの範囲内で左右方向に位置調整可能である。前後位置調整部5cは、成形をし易くするために上下に二分割される。
【0025】
ベースフレーム7,8は金属製である。位置調整部5a〜5cは樹脂製又は金属製である。この実施形態の位置調整部5a〜5cであるが、ヒンジが大型化するときは金属製が望ましい。位置調整後、ベースフレーム7,8には、ねじカバー26a〜26dが被せられる。
【0026】
図5は、第一のアーム3、第二のアーム4、左右位置調整部5a、前後位置調整部5cの拡大図を示す。第一のアーム3は、湾曲した口形状に形成される。第一のアーム3は、開口部3gを有する。第一のアーム3は、開口部3gを囲むように閉じた一体の形状に形成される。すなわち、第一のアーム3は、開口部3gを囲む頂辺部3−1、側辺部3−2、底辺部3−3、側辺部3−4を備え、これらは継目なく連続している。なお、第一のアーム3は、閉じた一体の形状に形成される部分を備えれば、二部品から構成されてもよい。
【0027】
上記のように、第一のアーム3は、基端部3aが軸11を介して左右位置調整部5aに回転可能に支持され、その先端部3bが軸12を介して前後位置調整部5cに回転可能にかつスライド可能に支持される。第一のアーム3の基端部3aは、左右位置調整部5aの一対の案内面5a1,5a2に挟まれており、第一のアーム3の基端部3aは、上下の二点で左右位置調整部5aに接触する。第一のアーム3の先端部3bは、前後位置調整部5cの一対の案内面5c3,5c4に挟まれており、第一のアーム3の先端部3bは、上下の二点で前後位置調整部5cに接触する。このため、第一のアーム3は合計四点で安定して荷重を受ける。なお、第一のアーム3の基端部3a及び先端部3bには、軸11,12が挿入されていて、軸11,12も荷重を受けることができる。しかし、主には第一のアーム3と案内面5a1,5a2,5c3,5c4との接触点で荷重を受ける。
【0028】
第二のアーム4は、湾曲したT字の形に形成される。第二のアーム4は、第一のアーム3の開口部3gに挿入される本体部4cを有する。本体部4cは、水平方向に延在する。本体部4cは、開口部3gの上下方向の高さ以下の高さである。第一のアーム3の開口部3gに挿入された第二のアーム4は、軸15を介して第一のアーム3に回転可能に連結される。
【0029】
上記のように、第二のアーム4は、その基端部4aが軸13を介して前後位置調整部5cに回転可能に支持され、その先端部4bが軸14を介して左右位置調整部5aに回転可能にかつスライド可能に支持される。第二のアーム4の本体部4cの高さは、第一のアーム3の高さよりも低い。このため、第二のアーム4の本体部4cの上面と前後位置調整部5cの案内面5c3との間には隙間δ1(
図2参照)が空き、第二のアーム4の本体部4cの下面と前後位置調整部5cの案内面5c4との間には隙間δ2(
図2参照)が空く。同様に、第二のアーム4の本体部4cの上面と左右位置調整部5aの案内面5a1との間には隙間δ3(
図2参照)が空き、第二のアーム4の本体部4cの下面と左右位置調整部5aの案内面5a2との間には隙間δ4(
図2参照)が空く。
【0030】
隙間δ1〜δ4が存在すると、第二のアーム4が安定して荷重を受けられなくなる。
図5に示すように、隙間δ1を埋めるために第一の突起部31が設けられ、隙間δ2を埋めるために第二の突起部32が設けられる(第一及び第二の突起部31,32は、
図2のC−C断面図である
図6(c)、
図7のヒンジの背面側の斜視図も参照)。また、隙間δ3を埋めるために第三の突起部33が設けられ、隙間δ4を埋めるために第四の突起部34が設けられる(第三及び第四の突起部33,34は
図2、
図2のA−A断面図である
図6(a)も参照)。
【0031】
第一ないし第四の突起部31〜34は、第二のアーム4に配置することもできるし、左右位置調整部5a及び前後位置調整部5cに配置することもできる。この実施形態では、第一及び第二の突起部31,32を前後位置調整部5cに配置し、第三及び第四の突起部33,34を第二のアーム4に配置している。これにより、第一のアーム3の開口部3gに第二のアーム4を挿入するのが容易になり、また、第三及び第四の突起部33,34が第一のアーム3に干渉するのを防止することができる。
【0032】
なお、第二のアーム4の基端部4a及び先端部4bには、軸13,14が挿入されていて、軸13,14も荷重を受けることができる。しかし、主には第二のアーム4の基端部4aと第一及び第二の突起部31,32との接触点、並びに第二のアーム4の先端部4bの第三及び第四の突起部33,34と左右位置調整部5aの案内面5a1,5a2との接触点が荷重を受ける。また、厳密にいえば、第二のアーム4の本体部4cの大部分が第一のアーム3の開口部3gに挿入されるが、第二のアーム4の本体部4cの基部は開口部3gに挿入されない。この第二のアーム4の本体部4cの基部に第三及び第四の突起部33,34が配置される。
【0033】
図5に示すように、第一のアーム3及び第二のアーム4は共に金属製である。金属同士の接触を防止するために、第一のアーム3と第二のアーム4との間には樹脂製のスペーサ35が介在する。
【0034】
以下に左右位置調整部5a及び前後位置調整部5cの構造を説明する。
図5に示すように、左右位置調整部5aは、上下一対の略四角形の支持部36a,36bを備える。一対の支持部36a,36bは、互いに対向する平行な一対の案内面5a1,5a2を持つ。一対の案内面5a1,5a2には、第一のアーム3の基端部3a及び第二のアーム4の先端部4bが挟まれる。第一のアーム3の基端部3aの回転中心になる軸11は、一対の支持部36a,36b及び第一のアーム3を貫通する。第一のアーム3の基端部3aは、一対の案内面5a1,5a2に接触しながら軸11の回りを回転する。第二のアーム4の先端部4bには、第二のアーム4の回転の中心になる軸14が貫通する。一対の案内面5a1,5a2には、軸14の両端部が嵌まる溝22が形成される。第二のアーム4の先端部4bには、第三及び第四の突起部33,34が一体に形成される。これにより、部品点数が削減され、組立て性が向上する。第二のアーム4の先端部4bは、一対の案内面5a1,5a2に案内されながら軸14の回りを回転し、かつ溝22に沿ってスライドする。
【0035】
前後位置調整部5cも、上下一対の略四角形の支持部37a,37bを備える。一対の支持部37a,37bは、互いに対向する平行な一対の案内面5c3,5c4を持つ。一対の案内面5c3,5c4には、第一のアーム3の先端部3bが挟まれる。一対の案内面5c3,5c4からは第一及び第二の突起部31,32が突出する。第二のアーム4の基端部4aは、第一及び第二の突起部31,32に挟まれる。第二のアーム4の基端部4aの回転中心になる軸13は、第二のアーム4の基端部4aを貫通する。軸13の両端部は第一及び第二の突起部31,32の孔に挿入される。第二のアーム4の基端部4aは、第一及び第二の突起部31,32に接触しながら軸13の回りを回転する。第一及び第二の突起部31,32は、前後位置調整部5cと一体に形成される。これにより、部品点数が削減され、組立て性が向上する。第一のアーム3の先端部3bには、第一のアーム3の先端部3bの回転の中心になる軸12が貫通する。一対の案内面5c3,5c4には、軸12の両端部が嵌まる溝21が形成される。第一のアーム3の先端部3bは、一対の案内面5c3,5c4に案内されながら軸12の回りを回転し、かつ溝21に沿ってスライドする。
【0036】
なお、この実施形態では、前後位置調整部5cは上下に二分割されていて、第一の突起部31は上側の分割体に一体に形成され、第二の突起部32は下側の分割体に一体に形成されるが、このような場合も含めて、第一及び第二の突起部31,32は、前後位置調整部5cと一体に形成される、という。
【0037】
図8は、従来のヒンジの第一及び第二のアーム3´,4´の形状と本実施形態の第一及び第二のアーム3,4の形状を比較した模式図である。
図8(a)に示すように、従来のヒンジでは、第一のアーム3´が開口部3g´に第二のアーム4´を挿入できるようにC字形に形成される。このため、第一のアーム3´の強度を高くすることができない。第二のアーム4´を挿入した後、第一のアーム3´にスペーサ5´を嵌めても、スペーサ5´ががたつくので、第一のアーム3´の強度を高くできない。
【0038】
これに対して、
図8(b)に示すように、本実施形態のヒンジでは、第一のアーム3が開口部3gを囲む閉じた形状に形成されるので、第一のアーム3の強度を高くすることができる。第一のアーム3の開口部3gに挿入するために、第二のアーム4の本体部4cの上下方向の高さを低くする必要があるが、第二のヒンジ本体2には第一及び第二の突起部31,32が設けられるので、第二のアーム4の基端部4aと第二のヒンジ本体2との間の隙間を埋めることができる。また、第二のアーム4の先端部4bには、第三及び第四の突起部33,34が設けられるので、第二のアーム4の先端部4bと第一のヒンジ本体1との隙間も埋めることができる。
【0039】
図9は、本実施形態のヒンジの他の例を示す。この例のヒンジは、重量扉用のヒンジであり、左右位置調整部5a、前後位置調整部5cを金属製にしている。金属同士の接触を防止するために、第一のアーム3の基端部3aと左右位置調整部5aとの間にブッシュ(又はスペーサ)41a,41bを介在させ、第一のアーム3の先端部3bと前後位置調整部5cとの間に回転ブロック42a,42bを介在させている。そして、第二のアーム4の基端部4aと前後位置調整部5cとの間にブッシュ(又はスペーサ)43a,43bを介在させ、第二のアーム4の先端部4bと左右位置調整部5aとの間に回転ブロック44a,44bを介在させている。第一及び第二のアーム3,4、左右位置調整部5a、前後位置調整部5cの形状は、第一の実施形態のヒンジと略同一である。
【0040】
第一のアーム3の先端部3bの回転ブロック42a,42bは、第一のアーム3に対して回転可能であり、前後位置調整部5cの溝21(
図5参照)にスライド可能に嵌められる。第二のアーム4の先端部4bの回転ブロック44a,44bも、第二のアーム4に対して回転可能であり、左右位置調整部5aの溝22(
図5参照)にスライド可能に嵌められる。この例では、第一及び第二の突起部31,32は、前後位置調整部5cに一体の第一及び第二の突起本体45a,45bと、ブッシュ43a,43bと、から構成される。前後位置調整部5cには、第一の突起部31の一部(すなわち第一の突起本体45a)及び第二の突起部32の一部(すなわち第二の突起本体45b)の一部が一体に形成される。また、第三及び第四の突起部33,34は、第二のアーム4と一体の第三及び第四の突起本体46a,46bと、回転ブロック44a,44bと、から構成される。第二のアーム4には、第三の突起部33の一部(すなわち第三の突起本体46a)及び第四の突起部34の一部(すなわち第四の突起本体46b)が一体に形成される。
【0041】
図10は、本発明の第二の実施形態のヒンジの斜視図を示す。この実施形態のヒンジは、第二のアーム4が上下方向に分割された上側第二アーム4−1及び下側第二アーム4−2を備える点が、第一の実施形態のヒンジと異なる。第一のアーム3、第一のヒンジ本体1、第二のヒンジ本体2の構造は第一の実施形態のヒンジと略同一なので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0042】
図11は、本実施形態のヒンジの主要部の斜視図を示す。上記第一の実施形態では、第一及び第二の突起部31,32が前後位置調整部5cと一体に形成されるのに対し、本実施形態では、第一の突起部31が上側第二アーム4−1に一体に形成され、第二の突起部32が下側第二アーム4−2に一体に形成される。そして、第三の突起部33が上側第二アーム4−1に一体に形成され、第四の突起部34が下側第二アーム4−2に一体に形成される。上側第二アーム4−1の下面から第一及び第三の突起部31,33の上面までの高さは、第一のアーム3の開口部3gの上下方向の高さ以下である。下側第二アーム4−2の上面から第二及び第四の突起部32,34の下面までの高さは、第一のアーム3の開口部3gの上下方向の高さ以下である。
【0043】
なお、上側第二アーム4−1と第一のヒンジ本体1との間及び上側第二アーム4−1と第二のヒンジ本体2との間にスペーサを介在してもよく、この場合、第一の突起部31の少なくとも一部及び第三の突起部33の少なくとも一部が上側第二アーム4−1に一体に形成される。また、下側第二アーム4−2と第一のヒンジ本体1との間及び下側第二アーム4−2と第二のヒンジ本体2との間にスペーサを介在してもよく、この場合、第二の突起部32の少なくとも一部及び第四の突起部34の少なくとも一部が下側第二アーム4−2に一体に形成される。
【0044】
第一のアーム3の開口部3gに上側第二アーム4−1を挿入後、
図11中斜線で示す領域S1に上側第二アーム4−1を寄せておけば、後から下側第二アーム4−2を開口部3gの残りの領域S2に挿入することが可能になる。このように、第二のアーム4を上下方向に二分割することで、第二のアーム4を第一のアーム3の開口部3gに挿入することが可能になる。
【0045】
図12は、本発明の第三の実施形態のヒンジの模式図を示す。上記第一及び上記第二の実施形態のヒンジでは、第一のアーム3がロ形状に形成され、第二のアーム4がT字状に形成されているが、
図12に示すように、第一のアーム3がθ形状に形成され、第二のアーム4がπを横向きにした形状に形成されてもよい。この場合、第一及び第二の突起部31,32は、第二のヒンジ本体2に配置される。第三及び第四の突起部33,34は、第二のアーム4に配置される。第二のアーム4の基端部4aには、スペーサ4a´が挿入されるが、スペーサ4a´の高さは従来のヒンジのスペーサよりも低くできるので、第二のアーム4の強度は従来のヒンジほどは低下しない。
【0046】
図13ないし
図15は、本発明の第四の実施形態のヒンジを示す。
図13は正面図、
図14は
図13のXIV-XIV線断面図、
図15は分解斜視図である。この実施形態のヒンジは、リンクタイプのヒンジ(以下、単にヒンジという)であり、扉及び枠のいずれか一方に取り付け可能な第一のヒンジ本体51と、扉及び枠の他方に取り付け可能な第二のヒンジ本体52と、を備える。第一及び第二のヒンジ本体51,52には、扉の三次元的な位置を調整するための位置調整部53a〜53cが設けられる。位置調整部53a〜53cは、扉の左右方向の位置を調整する機能を持つ左右位置調整部53aと、扉の上下方向の位置を調整する機能を持つ上下位置調整部53bと、扉の前後方向の位置を調整する機能を持つ前後位置調整部53cと、を備える。
【0047】
図15に示すように、このヒンジでは、合計七本の軸61〜67があり、第一及び第二のヒンジ本体51,52、第一及び第二のアーム54,55、第一及び第二のリンク56,57が全て回り対偶で連結される。すなわち、第一のヒンジ本体51の前後位置調整部53cには、軸61を介して第一のアーム54の基端部54aが回転可能に支持される。第一のアーム54の先端部54bには、軸62を介して第一のリンク56の基端部56a1,56a2が回転可能に連結される。第一のリンク56の先端部56bは、軸63を介して第二のヒンジ本体52の左右位置調整部53aに回転可能に支持される。
【0048】
また、第二のヒンジ本体52の左右位置調整部53aには、軸64を介して第二のアーム55の基端部55aが回転可能に支持される。第二のアーム55の先端部55bには、軸65を介して第二のリンク57の基端部57a1,57a2が回転可能に連結される。第二のリンク57の先端部57bは、軸66を介して第一のヒンジ本体51の前後位置調整部53cに回転可能に支持される。この実施形態の第一及び第二のヒンジ本体51,52、第一及び第二のアーム54,55、第一及び第二のリンク56,57は金属製である。金属同士の接触を防止するために、これらの間には樹脂製のスペーサ60が介在する。
【0049】
第一のアーム54は、湾曲した口形状に形成される。第一のアーム54は、開口部54gを有する。第一のアーム54は、開口部54gを囲むように閉じた一体の形状に形成される。
【0050】
第一のリンク56は、二股に分かれて、第一のアーム54の先端部54bを上下方向に挟む第一の基端部56a1及び第二の基端部56a2を有する。第一のアーム54の先端部54bは、第一のリンク56の第一及び第二の基端部56a1,56a2に軸62を介して回転可能に連結される。
【0051】
第二のアーム55は、湾曲したT字の形に形成される。第二のアーム55は、第一のアーム54の開口部54gに挿入される本体部55cを有する。本体部55cは、水平方向に延在する。本体部55cは、開口部54gの上下方向の高さ以下の高さである。開口部54gに挿入された第二のアーム55は、軸67を介して第一のアーム54に回転可能に連結される。
【0052】
第二のリンク57は、二股に分かれて、第二のアーム55の本体部55cを上下方向に挟む第一の基端部57a1及び第二の基端部57a2を有する。第二のアーム55の先端部55bは、第二のリンク57の第一及び第二の基端部57a1,57a2に軸65を介して回転可能に連結される。
【0053】
第二のアーム55の本体部55cの高さは、第一のアーム54の高さよりも低い。このため、第二のアーム55の本体部55cの上面と第二のヒンジ本体52の左右位置調整部53aとの間には隙間δ1(
図13参照)が空き、第二のアーム55の本体部55cの下面と第二のヒンジ本体52の左右位置調整部53aとの間には隙間δ2(
図13参照)が空く。隙間δ1,δ2が存在すると、第二のアーム55が安定して荷重を受けられなくなる。
図15に示すように、隙間δ1を埋めるために第一の突起部71が設けられ、隙間δ2を埋めるために第二の突起部72が設けられる。第一及び第二の突起部71,72は、第二のアーム55と一体に形成される。
【0054】
なお、上記第一ないし第四の実施形態のヒンジの形状、構造は一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲で他の形状、構造を採用し得る。
【0055】
上記第一ないし第四の実施形態では、第一のアームと第二のアームとを軸を介して回転可能に連結しているが、円弧形のベアリングを介して回転可能に連結することもできる。
【0056】
本明細書は、2014年7月3日出願の特願2014−137697に基づく。この内容はすべてここに含めておく。