特許第6058186号(P6058186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058186
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】自動車用の圧力容器
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/067 20060101AFI20161226BHJP
   F17C 13/08 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   B60K15/067
   F17C13/08 301A
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-53690(P2016-53690)
(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公開番号】特開2016-172551(P2016-172551A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2016年3月17日
(31)【優先権主張番号】10 2015 204 831.4
(32)【優先日】2015年3月17日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】10 2015 206 825.0
(32)【優先日】2015年4月15日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】10 2015 206 826.9
(32)【優先日】2015年4月15日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592245937
【氏名又は名称】バイエリッシェ モトーレン ヴェルケ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayerische Motoren Werke Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ウルリヒ シュタール
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭52−001123(JP,B1)
【文献】 特開2011−226608(JP,A)
【文献】 特開2006−292031(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0001839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/067
F17C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の圧力容器(100)であって、
前記圧力容器(100)を前記自動車の車体(200)に結合するように形成された取付け装置(140,140′)を備え、
前記取付け装置(140,140′)は、
前記車体(200)又は前記圧力容器(100)に対して相対的に移動可能な少なくとも1つの結合ピン(141,142;141′,142′)と、
前記結合ピン(141,142;141′,142′)を時的に締結し、他の時点では緩解するように構成された少なくとも1つの固定機構(143,144;143′,144′)と、
を有することを特徴とする、自動車用の圧力容器。
【請求項2】
前記結合ピン(141,142;141′,142′)は、前記固定機構(143,144;143′,144′)内で案内されている、請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記固定機構(143,144;143′,144′)は、前記自動車が、第1の閾値を上回る運動要求下にあるとき、前記結合ピン(141,142;141′,142′)を締結するように形成されている、かつ/又は
前記固定機構(143,144;143′,144′)は、前記自動車が、第1の閾値を下回る運動要求下にあるとき、例えば前記自動車が停止しているとき、前記結合ピン(141,142;141′,142′)を締結しないように形成されている、
請求項1又は2に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記固定機構(143,144;143′,144′)は、前記圧力容器(100)に補給を行うとき、前記結合ピン(141,142;141′,142′)を締結しないように形成されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の圧力容器。
【請求項5】
前記固定機構(143,144;143′,144′)は、少なくとも1つのアクチュエータ、例えば圧電素子により作動される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の圧力容器。
【請求項6】
前記少なくとも1つの圧電素子及び前記固定機構(143,144;143′,144′)は、前記圧電素子に電圧が印加されていないとき、前記固定機構(143,144;143′,144′)が前記結合ピン(141,142;141′,142′)の移動を阻止するように形成されている、請求項5に記載の圧力容器。
【請求項7】
前記固定機構(143,144;143′,144′)は、電気機械式のアクチュエータとして形成されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の圧力容器。
【請求項8】
前記電気機械式のアクチュエータは、少なくとも1つの圧電素子により駆動される、請求項7に記載の圧力容器。
【請求項9】
前記電気機械式のアクチュエータは、インチワームモータである、請求項7又は8に記載の圧力容器。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の圧力容器(100)と、少なくとも1つの制御部とを備え、前記制御部は、前記固定機構の動作パラメータが動作パラメータ閾値を上回ると、前記少なくとも1つの結合ピン(141,142;141′,142′)を緩解するように形成されている自動車。
【請求項11】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の圧力容器(100)と、少なくとも1つの制御部とを備える自動車、又は請求項10に記載の自動車であって、前記制御部は、事故を認識すると、前記少なくとも1つの結合ピン(141,142;141′,142′)を緩解するように形成されている自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、特に自動車用の圧力容器に関する。圧力容器の例は、燃料を貯蔵する低温圧力容器又は高圧ガス容器である。
【背景技術】
【0002】
圧力容器は、圧力容器の内圧p又は温度T等の要因に応じて膨張する。この理由から、圧力容器は、固定側軸受−自由側軸受の原理で車体に連結される。従来技術においては、圧力容器の膨張を補償する機能を有する支持部が公知であり、公知の支持部では、半径方向R及び圧力容器長手方向軸線A−A方向の圧力容器の膨張を、独立した機構により補償するようになっている。このような構成は、比較的手間を要し、ひいては高コストである。その上、比較的大きなスペースを必要とする。加えて、このような構成は、すべての力及びモーメントを圧力容器の一端から圧力容器の他端に伝達することができない。例えば公知の解決手段は、圧力容器が自動車のセンタートンネル内に配置されている場合、力を走行方向xでクリアランス、つまり遊びなしに伝達することができない。さらに、車両横方向のy軸及び車両高さ方向のz軸周りのモーメントを遊びなしに伝達することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここに開示する技術の課題は、公知の解決手段の欠点を軽減又は解消することである。別の課題は、ここに開示する技術の有利な効果から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の課題は、請求項1に係る発明により解決される。従属請求項に係る発明は、好ましい態様を示している。
【0005】
ここに開示する技術は、自動車用の燃料を貯蔵する圧力容器に関する。このような圧力容器の例は、低温圧力容器又は高圧ガス容器である。圧力容器は、例えば圧縮天然ガス(一般にCNG(Compressed Natural Gas)と称呼)又は水素により運転される自動車(燃料電池車(FCEV:fuel cell electrical vehicle))において使用可能である。低温圧力容器は、燃料を好ましくは液体状態又は超臨界状態で貯蔵可能である。燃料は、例えば約30K〜360Kの温度で低温圧力容器内に貯蔵可能である。高圧ガス容器は、好ましくは燃料を持続的に約350bar(ゲージ)超、さらに好ましくは約500bar(ゲージ)超、特に好ましくは約700bar(ゲージ)超の圧力で貯蔵するように形成されている。
【0006】
圧力容器は、圧力容器を圧力容器の片側において自動車の車体に結合するように形成された取付け装置を備えている。この場合、自動車の、圧力容器の取付けが可能なあらゆる好適な構造を、車体の一部と見なすべきである。例えば自動車の少なくとも1つの圧力容器は、センタートンネル内に配置されていることができる。さらに圧力容器は、どこか違うところ、例えばリヤシートの下に格納されていてもよい。
【0007】
取付け装置は、圧力容器の片側あるいは一端に少なくとも2つの結合ピンを有していることができ、少なくとも2つの結合ピンは、それぞれ、圧力容器にそれぞれ1つの圧力容器接続領域において結合、特に剛に結合されていることができる。少なくとも2つの結合ピンは、圧力容器の外表面から離れる方向に延在していることができる。結合ピンは、結合ロッドあるいは結合ボルトと称呼してもよい。結合ピンは、好ましくは圧力容器又は車体に対して剛にあるいは不動に形成されている。
【0008】
少なくとも2つの取付けピンは、それぞれ1つの軸受内で案内あるいはそれぞれ1つの軸受内に収容されていることができる。特に好ましくは、軸受あるいはガイドは、取付けピンと軸受あるいはガイドとの間の相対移動を可能にするのに好適である。さらに好ましくは、軸受は、やはり本明細書に開示するような固定機構であってもよい。
【0009】
それぞれの結合ピンは、それぞれ1つの軸受にそれぞれ1つの結合点Vにおいて結合されていてもよい。
【0010】
さらに前述の態様に対して択一的に、取付け装置は、圧力容器の片側あるいは一端に少なくとも2つの軸受を有していてもよく、少なくとも2つの軸受は、それぞれ、圧力容器にそれぞれ1つの圧力容器接続領域において結合され、圧力容器の外表面から離れる方向に延在している。本態様は、先の態様を運動学的に反転させたものと云える。単数又は複数の軸受を車体側に配置する代わりに、単数又は複数の軸受を圧力容器側に配置することも可能である。この場合、少なくとも2つの結合ピンは、車体側に配置され、車体に結合される。組み合わせたもの(1つの軸受及び1つの結合ピン)を圧力容器に結合してもよい。
【0011】
圧力容器は、圧力容器接続領域においてそれぞれ膨張を示す、あるいは膨張方向Eで膨張する場合がある。
【0012】
結合ピン及び軸受は、結合点Vにおいて少なくとも部分的に、膨張Eが単一の並進自由度での軸受及び/又は結合ピンの運動により動的に案内されるように形成され、配置されていることができる。好ましくは、これにより圧力容器接続領域Bにおける膨張Eは、少なくとも部分的に補償される。換言すれば、膨張Eは、膨張する箇所に剛に接続された構成要素(軸受又は結合ピン)の運動を引き起こす。しかしながら、これらの構成要素は、膨張E自体によっては、付加的な力及び/又はモーメントが、結合点Vにおいて取付け装置の他方の構成要素(対応する結合ピン又は軸受)に伝達されないか、仮に伝達されても僅かにすぎないように、膨張Eの運動に従動できる形状を呈している。
【0013】
単一の並進自由度での軸受及び/又は結合ピンの運動とは、空間内での並進運動時に、運動の座標x、y、zが互いに関係し合っており、互いに無関係には変化し得ないことを意味している。単一の並進自由度は、直線軌道又は曲線軌道に沿った運動であることができる。軌道の具体的な延びは、容器幾何学形状、容器の膨張挙動及び軸受/結合ピンの配置から生じる。
【0014】
すべての他の自由度は、ここに開示する技術では制限されている。これにより、公知の解決手段と比較してより多くの力成分あるいはモーメント成分が、車両軸線に沿って遊びなしに伝達される。さらに、圧力容器のためのこのような懸架装置あるいは取付け装置は、容易に実現可能である。好ましくは4つの結合ピンが、圧力容器の各側に設けられている。
【0015】
特別な事例は、圧力容器接続領域Bの線形の又は真っ直ぐな膨張Eである。膨張Eが線形である特別な事例、つまり角度αがすべての膨張状態に関して一定である事例において、結合ピンは、少なくとも部分的に真っ直ぐであり、そして一定の膨張方向Eは、好ましくは少なくとも部分的に結合ピン及び/又は軸受の長手方向軸線に対して共線状、即ち一直線上にあることができる。膨張E、つまり例えば圧力容器内圧あるいは温度変化により引き起こされる膨張が、結合ピンの長手方向軸線に対して平行であることにより、結合点Vの懸架点毎に1つの直線運動が生じるだけである。これにより、特に単純に構成された構成要素が使用可能である。
【0016】
膨張Eは、結合ピンあるいは軸受の軸線と共線状に延びているか、又は軽微なずれを有している場合がある。結合ピンあるいは軸受の長手方向軸線が、膨張Eと比較してずれ、例えば外向きにオフセットを有して配置されていれば、このような構造を介して、場合によってはより良好に、場合によっては生じるモーメントが伝達される。以下では、主に、膨張Eと軸受/結合ピンの長手方向軸線とが平行に配置された特別な事例について説明する。しかし、開示する技術は、いわば、曲線軌道に沿った単一の自由度での並進運動にも適用可能である。
【0017】
少なくとも2つの結合ピン及び/又は少なくとも2つの軸受は、互いに角度をなして配置されていてもよい。結合ピン及び/又は少なくとも2つの軸受が、互いに角度をなして、つまり互いに非平行に配置されているとき、さらなる力及びモーメントを伝達することができる。結合ピン及び/又は軸受が平行に配置されていると、力を共線状の軸線(例えば圧力容器長手方向軸線)方向で遊びなしに伝達することはできない。
【0018】
少なくとも2つの結合ピン及び/又は少なくとも2つの軸受の長手方向軸線は、互いに2°〜178°、好ましくは5°〜90°、特に好ましくは10°〜50°の角度βをなして配置されていてもよい。圧力容器の構成次第で、圧力容器負荷から結果として生じる膨張Eは、この角度範囲内にある。事前に、結果として生じるであろう膨張Eは、既にシミュレーション及び試験により良好に予測される。
【0019】
少なくとも2つの取付けピン及び/又は少なくとも2つの軸受の長手方向軸線は、好ましくは圧力容器長手方向軸線A−Aに対して角度をなして、つまり非平行に配置されている。この場合、圧力容器長手方向軸線A−Aに沿った自由度はなくなる。少なくとも2つの取付けピン及び/又は少なくとも2つの軸受の長手方向軸線は、圧力容器の長手方向軸線A−Aに対して、2°〜178°、好ましくは5°〜90°、特に好ましくは10°〜50°である角度αをなして配置されていることができる。圧力容器が例えばセンタートンネル内に組み付けられている場合、こうして力は、車両長手方向で伝達可能である。この役割は、今日一般的な車両アーキテクチャではサイドメンバにより担われる。ここでタンクがこの役割の一部を担うようにすれば、車両質量は削減され、かつ/又は車両剛性は向上され得る。
【0020】
軸受は、玉継手として構成されていてもよい。特に軸受は、例えばトラクタのトップリンクの玉継手から公知のものに類似した、内部に取付けピンを移動自在に収容し、加えてそれぞれの取付けピンの回動を許容する玉継手として構成されていてもよい。これにより、軸受と結合ピンとから形成される支持部は、単一の並進自由度の他に、少なくとも1つの、好ましくは複数の回転自由度を有していることができる。
【0021】
圧力容器の各側に、ここに開示する取付け装置が設けられていてもよい。取付け装置は、好ましくは4つの結合ピン及び4つの軸受を有していることができ、4つの結合ピン及び4つの軸受は、好ましくは圧力容器の両端のボス周りに同心的に配置されている。これによりボス自体は、場合によっては存在する供給ラインのために良好にアクセス可能である。
【0022】
車体の剛性を圧力容器構造によりさらに改善したいあるいは能動的に変化させたいという要求が存在する。
【0023】
このことは、特に、圧力容器を自動車の車体に結合するように形成された取付け装置を備える自動車用の圧力容器により達成される。この場合、取付け装置は、車体又は圧力容器に対して相対的に移動可能な少なくとも1つの結合ピンを有していることができる。結合ピンは、例えば圧力容器又は車体に結合、好ましくは剛に結合されていることができる。特に結合ピンは、前述の少なくとも2つの結合ピンの1つであってもよい。
【0024】
さらに、ここに開示する技術は、車体又は圧力容器に結合されていることができる少なくとも1つの固定機構を有している(つまり、結合ピンとは正反対。すなわち固定機構が車体に結合されていれば、結合ピンは圧力容器に結合されており、反対に固定機構が圧力容器に結合されていれば、結合ピンは車体に結合されている。)。固定機構は、結合ピンを少なくとも一時的に締結し、他の時点では緩解するように構成することができる。つまり、固定機構は、解除可能な固定機構である。固定機構は、好ましくは車体又は圧力容器に剛にあるいは不動に結合されている。固定機構は、制御部が相応の制御信号を送信したとき、結合ピンを少なくとも一時的に締結するように構成されていてもよい。結合ピンあるいは軸受の長手方向軸線方向での残されていた自由度が同様に阻止されていると、車体の剛性は、付加的に高められる。同時に、この制御可能な固定機構により、例えば圧力容器の圧力変化あるいは温度変化によって生じる場合のある膨張を補償することが可能である。
【0025】
特に好ましくは、結合ピンは、固定機構内で案内されている。好ましくは、固定機構は、同時に結合ピンのためのガイドあるいは支持部である。換言すれば、固定機構は、好ましくは前述の軸受を形成することができる。固定機構は、好ましくは結合ピンに対して平行に配置されている。好ましくは、圧力容器の各側に、少なくとも2つ、特に好ましくは4つの固定機構あるいは軸受あるいはガイドが設けられている。
【0026】
固定機構は、自動車が、第1の閾値を上回る運動要求下にあるとき、結合ピンを締結するように形成されていてもよい。これにより、例えば、高い運動要求時に自動車の剛性を付加的に高めることが可能である。運動要求の上昇は、例えば路面性状及び車両運転者の走行スタイルの結果として生じる場合がある。運動要求は、例えばダイナミックスタビリティコントロール(DSC)の測定値から求められてもよい。このために、いずれにしても既に組み付けられているセンサ(ヨーレートセンサ、横加速度センサ等)が使用可能である。
【0027】
固定機構は、自動車が、第1の閾値を下回る運動要求下にあるとき、例えば自動車が停止しているとき、結合ピンを締結しないように形成されていてもよい。結合ピンがこの状態で締結されなければ、圧力容器の内圧又は温度の変化により誘起される場合のある内部応力は、再び解消可能である。このことは、停止状態において、付加的な移動用アクチュエータなしに実施可能である。その上、既知の動的影響は、調整に狂いを生じさせない。
【0028】
固定機構は、圧力容器に補給を行うとき、結合ピンを締結しないように形成されていてもよい。車両に補給を行うとき、容器の膨張は大きく変動する。固定機構が結合ピンを締結していると、望ましくない負荷、場合によってはそれどころか損傷を引き起こす負荷が車体に伝達されてしまう。
【0029】
特に好ましくは、固定機構は、少なくとも1つの圧電素子により固定される。特に、少なくとも1つの圧電素子及び固定機構は、圧電素子に電圧が印加されていないとき、固定機構が結合ピンの移動を阻止するように形成されていてもよい。このような素子は、特に迅速、高効率かつ精緻に、結合ピンの移動を阻止することができる。
【0030】
固定機構は、電気機械式又は液圧式のアクチュエータとして構成されていてもよい。特に固定機構は、制御信号により電気機械式又は液圧式のアクチュエータが結合ピンを少なくとも一時的に締結し、その他の時点では緩解することができるように構成されていてもよい。
【0031】
固定機構が移動を阻止するだけの構成に加え、結合ピンを能動的に調節あるいは移動させるアクチュエータが設けられていてもよい。これにより、車体の剛性あるいは内部応力は、能動的に制御される。この場合、車両運転者が選択した走行モードに応じて、車体は、より硬くなったり、より軟らかくなったりする。好ましくは、この電気機械式のアクチュエータは、少なくとも1つの圧電素子により駆動されてもよい。
【0032】
特に好ましい態様において、電気機械式のアクチュエータは、インチワームモータである。インチワームモータは、その内部においてシャフト、ここでは取付けピンをナノメートルオーダの精度で移動あるいは作動させ得る圧電式のアクチュエータである。このためにインチワームモータは、軸方向で圧電素子により互いに離間した2つの把持領域を有し、2つの把持領域は、取付けピンを交互にかつ短時間重複するように固く把持することができる。把持後、圧電素子はその長さを変化させ、これにより、取付けピンは移動される。このインチワームモータにより、高い力でも極めて精緻に、かつ連続的な力伝達経路をもって、結合ピンを作動させ得る。さらに機械的な応力も同時に測定可能である。つまり、これは、車両特性に肯定的な影響を及ぼし得るアクティブストラットである。インチワームモータの別の利点は、あらゆる時点で力伝達経路が存在し得ることにある。
【0033】
さらに、ここに開示する技術は、ここに示す圧力容器と、少なくとも1つの制御部とを備える自動車に関する。制御部は、固定機構の動作パラメータが動作パラメータ閾値を上回ると、少なくとも1つの結合ピンを緩解するように形成されていてもよい。例えば動作パラメータは、アクチュエータ(例えば圧電素子、インチワームモータ)の電圧であってもよい。この電圧は、圧力タンクあるいは圧力タンクの懸架装置が曝されている機械的な負荷を表すものである。つまり、この場合、機械的な負荷に基づいて、制御部は、少なくとも1つの結合ピンを緩解するか、又は締結するかを決定し得る。このような制御システムは、特に簡単かつ正確に実現される。
【0034】
さらに上述の制御部あるいはまた別の制御部は、事故を認識すると、少なくとも1つの結合ピンを緩解するように形成されていてもよい。事故は、例えば車両の別の検出システムを参照して認識可能である。このような検出システムは、公知であり、例えばエアバッグに使用される。少なくとも1つの結合ピンが、事故中、固定機構により締結されていなければ、事故最中に結合ピンにかかる機械的な負荷は、小さくなる。これにより圧力容器の損傷の程度は、少なくとも軽減され得る。
【0035】
以下に、ここに開示する技術について、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】ここに開示する技術の一態様を示す概略図である。
図2】ここに開示する技術の一態様を示す概略図である
図3】ここに開示する技術の一態様を示す概略図である
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、圧力容器100を示している。圧力容器100は、本実施の形態では、車両長手方向Xで車両内、例えばセンタートンネル内に組み付けられている。圧力容器100は、ライナ110と、繊維強化層120とを備えている。圧力容器100の両側あるいは両端、つまり極冠部には、取付け装置140,140′が設けられている。取付け装置140,140′は、圧力容器100を車体の適当な連結点、例えばフロント側のアクスルキャリア及びリヤ側のアクスルキャリアに隣接する適当なクロスメンバに結合する。取付け装置140は、車体に直接的に結合されていても、間接的に結合されていてもよい。図1には、各側にそれぞれ2つの取付け装置140を示してある。特に好ましくは4つの取付け装置140が、圧力容器100の各端に設けられている。取付け装置140は、本実施の形態では、結合ピン141,142;141′,142′と、軸受143,144;143′,144′とを有している。結合ピン141,142;141′,142′は、軸受143,144;143′,144′内で移動自在に案内されている。取付け装置140,140′の軸受143,144;143′,144′と結合ピン141,142;141′,142′は、本実施の形態では、共線状に配置されている、即ち一直線上に整列している。軸受143,144;143′,144′及び結合ピン141,142;141′,142′の両方は、圧力容器長手方向軸線A−Aに対して角度αをなして延びている。軸受143,144;143′,144′は、車体200に直接的又は間接的に堅固にあるいは剛に結合されている。結合ピン141,142;141′,142′は、本実施の形態では、圧力容器接続領域Bで圧力容器100に結合されている。本実施の形態では、結合ピン141,142;141′,142′は、繊維強化層120を貫いて内部に導入されている。しかし、結合ピン141,142;141′,142′を圧力容器100に取り付ける方法は、別の方法によるものであっても構わない。双方向矢印Eは、圧力容器接続領域Bにおける圧力容器膨張(収縮)を示している。この膨張あるいは膨張方向Eは、動作状態の変化、主として圧力容器100の内圧pの変化に対する圧力容器100の変位応答である。軸受143,144;143′,144′及び結合ピン141,142;141′,142′は、膨張方向Eに対して平行に配置されている。圧力容器100が内圧変化に基づいて膨張(又は収縮)する際に生じる運動は、共線状に配置された取付け装置140,140′により吸収可能である。取付け装置140,140′は、取付け装置140,140′の単一の自由度の構成及び配置に基づいて、結合ピン長手方向軸線に沿った移動を許容する。それゆえ、可動性は著しく制限されている。
【0038】
取付け装置140,140′の長手方向軸線は、角度βをおいてあるいは互いに角度をなして配置されている。両取付け装置140,140′が圧力容器100にやはり剛に結合されているという事実に基づいて、確かに圧力容器膨張の補償が提供されているものの、取付け装置140,140′の長手方向軸線に沿った圧力容器100全体の並進運動は、阻止されている。これにより、圧力容器100のすべての可動性は、取付け装置140,140′により阻止される。換言すれば、ここに開示する取付け装置140,140′を備える圧力容器100は、内圧により誘起される膨張を補償すると同時に、すべての方向の力及びモーメントを遊びなしあるいは略遊びなしに伝達することができる。これにより、ここに開示する取付け装置140,140′を備える圧力容器100は、つまり、力及びモーメントをフロントアクスル近傍の領域からリヤアクスル近傍の領域へ、あるいは反対方向にリヤアクスル近傍の領域からフロントアクスル近傍の領域へと伝達することができる。特に、ここに開示する取付け装置140,140′は、比較的単純かつ省スペースに構成されている。片側の取付け装置140,140′は、本実施の形態では、対称に配置されている。しかし、対称の配置は、必須ではない。例えば左側の両取付け装置140は、それぞれ異なる角度αを有していてもよい(図3参照)。好ましくは、取付け装置140,140′は、ボス(圧力容器の両端の突起)から軽微な間隔をおいて同心的に配置されている。
【0039】
図2は、図1の圧力容器100と実質同一の圧力容器100を示している。それゆえ、相違点についてのみ説明する。軸受143,144;143′,144′は、本実施の形態では、玉継手として形成されており、玉継手内には、結合ピン141,142;141′,142′が移動自在に配置されている。玉継手は、玉継手の中心周りの結合ピン141,142;141′,142′の回動性を実現する。これらの玉継手は、結合ピン141,142;141′,142′の移動可能性を改善する。しかし、結合ピン141,142;141′,142′は、他端において固定されているので、取付け装置140,140′は、先の実施の形態と同様に、力及びモーメントを(略)遊びなしに伝達することができる。
【0040】
図3は、図1及び図2の圧力容器100と実質同一の圧力容器100を示している。それゆえ、相違点についてのみ説明する。圧力容器100の左端に示すように、軸受143,144;143′,144′及び結合ピン141,142;141′,142′の配置関係を逆にしてもよい。すなわち、軸受143,144;143′,144′を圧力容器100に固定し、結合ピン141,142;141′,142′を車体200に結合してもよい。本態様でも玉継手を設けてもよい。もちろん、例えば図3で見て右端に示すように、圧力容器100の一端における取付け装置140,140′の構成要素143,144;143′,144′,141,142;141′,142′の配置関係をそれぞれ異なるものとした組み合わせも可能である。両端は、本実施の形態では、対称に形成されている。左端の幾つかの符号は、簡略化のために省略した。
【0041】
図1乃至図3は、軸受143,144;143′,144′が設けられていること及び/又は軸受143,144;143′,144′に加えて固定機構143,144;143′,144′も設けられていることを示している。好ましくは、固定機構143,144;143′,144′は、結合ピン141,142;141′,142′を案内している。固定機構143,144;143′,144′あるいは固定要素は、結合ピン141,142;141′,142′を少なくとも一時的に締結するように構成されている。取付け装置140,140′は、このために必ずしも互いに角度をなすように延在している必要はない。取付け装置140,140′は、互いに平行に延在していてもよい。つまり、ここに開示する技術のこの態様は、取付け装置140,140′の配置によらない。つまり、固定機構143,144;143′,144′は、少なくとも1自由度、特に取付け装置長手方向軸線に沿った移動可能性を選択的に解放したり、拘束したりすることができる。これにより、車体のスケーラブルな剛性、つまり適応性のある剛性が実現される。車体の剛性は、例えば動的要求に応じて適応可能である。車両運転者がスポーツモードに切り換えると、車両は、固定機構143,144;143′,144′により結合ピン141,142;141′,142′を固定することができる。その結果、力及びモーメントは、(より良好に)圧力容器100を介して伝達可能である。同時に、この選択的な固定は、車両内に望ましくない内部応力を発生させることなく、場合によっては起こり得る内圧に起因した圧力容器変形を補償することを可能にする。簡単な態様では、固定機構143,144;143′,144′は、結合ピン141,142;141′,142′を締めたり、緩めたりするだけでよい。
【0042】
別の態様において、結合ピン141,142;141′,142′は、電気機械式のアクチュエータにより能動的に移動される。このような態様では、車体剛性が、アクティブストラットとして使用される圧力容器100により常時正確に調整される。移動のための、場合によっては高い力を、要求される精度で働かせるには、特に圧電素子及びインチワームモータが好適である。
【0043】
取付け装置140,140′の軸受143,144;143′,144′及び結合ピン141,142;141′,142′は、図1乃至図3では、共線状にかつ真っ直ぐに形成されている。しかし、このことは必須ではない。結合ピン141,142;141′,142′が、軸受143,144;143′,144′と圧力容器接続領域Bとの間の領域でS字形に延在し、かつ結合ピン141,142;141′,142′の、軸受143,144;143′,144′内に収容されている部分が、膨張方向Eの軸線に対して平行に延在することも可能である。このようなオフセットは、場合によっては、より高いモーメントを車体から圧力容器に伝達するために有利な場合がある。膨張方向Eも、真っ直ぐではなく、曲がっている場合がある。この場合、結合ピン141,142;141′,142′及び/又は軸受143,144;143′,144′は、結合点Vにおいて、1自由度での並進運動によりこの曲がった膨張Eを案内するように形成されている。
【0044】
取付け装置の構成要素である結合ピン、軸受等が、本明細書において単数で記載されていても、それと同時に、構成要素が複数ある場合も合わせて開示したものとする。さらに、ここに開示する技術は、ここに開示する圧力容器の少なくとも1つと、圧力容器を制御、場合によっては固定機構を制御する制御部とを備える自動車も包含している。
【0045】
本発明についての上述の記載は、説明を目的とするにすぎず、発明の限定を目的とするものではない。本発明の範囲内で、発明の範囲及び均等の範囲を逸脱することなく、様々な変更及び改変が可能である。圧力タンク100に対する取付け装置140,140′の空間的配置に関する態様は、固定機構143,144;143′,144′に関する態様によらない。それゆえ両態様は、互いに独立して特許を請求することも可能である。しかし、両態様は、組み合わされて使用されるのが有利である。
【符号の説明】
【0046】
100 圧力容器、 110 ライナ、 120 繊維強化層、 140,140′ 取付け装置、 141,142;141′,142′ 結合ピン、 143,144;143′,144′ 軸受、固定機構、 200 車体、 A−A 圧力容器長手方向軸線、 B 圧力容器接続領域、 E 膨張、 O 外表面、 p 内圧、 V 結合点、 X 車両長手方向、 α,β 角度
図1
図2
図3