(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ロータリーポンプ(油回転ポンプ)と呼ばれる真空排気装置は、大別して、回転翼型ポンプと、カム型ポンプと、揺動ピストン型ポンプの三種類に分けることができるが、いずれの方式の真空排気装置でも、三相モータ(三相電動機)と、回転又は揺動するロータとを有している。
【0003】
三相モータには、インバータによって所望周波数の三相交流電圧に変換され、その三相交流電圧によって三相モータ内の回転子が回転され、駆動軸が回転されている。
回転軸に取り付けられたロータは駆動軸の回転によって、回転又は揺動されており、このロータの動作により、真空排気装置は吸気口から真空槽内の空気を吸引し、排出口から大気中に排出するようになっている
【0004】
三相モータの回転軸は、両端を金属製の軸受け装置(ベアリング装置)によって回転可能に軸受けされているが、回転軸の電位が上昇し、ベアリング内部で放電が発生する問題がある。
【0005】
この放電は、ベアリング電食と呼ばれ、種々の考察が行われており、例えば、非特許文献1には、「ベアリング電食は、IGBT に代表されるように、インバータに使用されるパワー素子の高速スイッチング化が進むに従って、産業用分野のインダクションモータのインバータ駆動にて深刻な問題になり、1990 年代後半より数多くの研究が行われている。ベアリング電食とは、ベアリングの内外輪間に軸電圧(または、ベアリング電圧)と呼ばれる電位差が生じ、軸電圧がベアリングの油膜の絶縁破壊電圧に達するとベアリング電流(放電電流)が流れる。この放電電流によって、ベアリングの金属表面に損傷を与え、ベアリングの音響性能が悪化し、さらにはベアリング寿命低下に至るという現象である。ベアリング電食の対策としてベアリング内部に電流を流さない方法、ベアリング電流の原因となる軸電圧を抑制するといった方法がある。ベアリングに電流を流さない方法は絶縁ベアリングおよびセラミックボールベアリング等にてベアリングを絶縁する方法、接地ブラシ等の設置にてベアリングの外部に電流を流す方法が提案されている。絶縁ベアリングまたはセラミックボールベアリングによる方法は、現行のベアリングの材料である鉄(軸受鋼)に対して非常に高価なセラミック材料を使用するため、ベアリングのコストが大幅にアップする。接地ブラシの設置による方法は、モータの外部に部品を必要とし、その部品代も必要となる。軸電圧を抑制する方法として、EMI フィルタの設置等にて軸電圧の発生原因であるコモンモード電圧を抑制する方法と、ステータとロータの間あるいは巻線のコイルエンドとロータ間に静電シールドを設け、軸電圧そのものを抑制する方法が提案されている。ステータとロータの間を静電シールドする方法、および巻線のコイルエンドとロータ間を静電シールドする方法はモータ内部の狭いスペースにシールド板の挿入が必要となるため、モータ構造が特殊となり、かつ、モータ形状を大きくする必要がある。EMIフィルタを設置する方法は、モータの外部に部品を必要とし、その部品代も必要となる。」、と記載されている。
【0006】
しかし、回転軸に導電性のブラシを接触させることで、回転軸を接地電位に接続し、軸受装置に発生する電圧を小さくし、放電の発生を防止するためには、高価なブラシを用いるために、コストアップになってしまう。
【0007】
他方、軸受装置と回転軸とを他の導電性の部材から絶縁させ、回転軸を電気的に浮遊させることで、軸受装置の放電が発生しないようにしても、インバータによって高周波の三相交流電圧が生成されると、三相モータ内部の寄生容量成分や寄生誘導成分などによって、回転軸の電位が上昇し、軸受電食が発生していた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<真空排気装置>
図1の符号10は、本発明の真空排気装置の一例のロータリーポンプを示し、
図2にはその内部が示されている。
【0015】
この真空排気装置10は、モータ部17と、ポンプ部18と、ベース板19(載置板)とを有している。
モータ部17は三相モータであり、電気導電性のモータケース20を有し
ている。モータケース20の内部には、モータ部17のうち、回転子21
1と固定子21
2等の部品を含み、駆動軸25を回転させるモータ本体21が配置されている。
モータケース20の外部には、電源装置28が配置されている。電源装置28の内部には、インバータが配置されており、電源装置28に入力された三相交流電圧はインバーターで所望の周波数に変換され、モータ本体21内部の固定子に供給される。固定子の内部には回転子が配置されており、周波数制御された交流電圧によって、回転子は所望速度で回転され、駆動軸25は、その回転子の回転によって、駆動軸25の中心軸線回りに回転される。
【0016】
ポンプ部18は、電気導電性のポンプケース30を有しており、ポンプケース30は床面上に配置されるベース板19に固定されている。ポンプケース30の内部には、ポンプ本体31が配置されている。ポンプ本体31は、回転軸26によって貫通されている。
【0017】
モータケース20には、互いに離間した位置に、第一、第二の取付装置32a、32bが配置され、モータケース20に固定されている。第一、第二の取付装置32a、32bは、第一、第二の取付リング33a、33bをそれぞれ有しており、第一の取付装置32aの第一の取付リング33aには、第一の軸受装置40aが装着され、第二の取付装置32bの第二の取付リング33bには、第二の軸受装置40bが装着されている。
【0018】
第一、第二の軸受装置40a、40bの平面図を
図3(a)に示し、そのA−A線截断断面図を同図(b)に示す。
第一、第二の軸受装置40a、40bには、一般的な構造のボールベアリング装置が用いられており、外形はリング状であり、リング状の外輪42と、外輪42よりも小径のリング状の内輪43との間の隙間である軌道44には、複数の転動体(ボール)45が配置されている。転動体45は、外輪42と内輪43との間に位置する状態で転がり移動が可能であり、その結果、外輪42又は内輪43のいずれか一方が静止した状態で、他方が回転することができる。なお、ボールベアリング装置に用いられる保持器(リテイナー)は省略してある。外輪42と、内輪43と、転動体45とは金属で構成されている。
【0019】
第一の軸受装置40aの内輪43の挿通孔47には、駆動軸25の一端が挿入され、第二の軸受装置40bの挿通孔47には、駆動軸25の他端が挿入されて駆動軸25は、第一、第二の軸受装置40a、40bの内輪43に固定されている。
【0020】
この状態では、駆動軸25は、第一、第二の軸受装置40a、40bに軸受けされており、即ち、転動体45が転がり移動することで、外輪42が静止した状態で内輪43と駆動軸25とが回転できるようになっている。
【0021】
回転子によって回転される駆動軸25は、電気導電性のモータケース20から外側に突き出され、カップリング装置36a、36bを介して回転軸26に接続されている。駆動軸25と回転軸26とを一本の軸で構成してもよい。但し、駆動軸25の部分と回転軸26の部分とは電気的に接続されないようにする。
【0022】
駆動軸25と回転軸26とは、駆動軸25の中心軸線と、回転軸26の中心軸線とが一致するように接続されており、駆動軸25が中心軸線回りに回転すると、回転軸26は、その中心軸線回りに内輪43と一緒に回転する。
【0023】
回転軸26のポンプ本体31の内部に位置する部分には、回転軸26の回転によって、回転又は揺動するようにロータが設けられている。
図11(a)、(b)、
図12(c)、(d)の符号27は、ロータを示している。
【0024】
ここで、
図11(a)、(b)、
図12(c)、(d)はポンプ本体31の真空排気動作を説明するための模式的な図面であり、この例では、ロータ27は、容器60に挿通された回転軸26の、容器60の内部空間61に位置する部分に固定されている。
【0025】
ロータ27には、第一、第二のベーン溝68
1、68
2が設けられており、第一、第二のベーン溝68
1、68
2の底面には、第一、第二のベーン28
1、28
2がバネ部材を介して設けられており、バネ部材の伸縮によって、第一、第二のベーン28
1、28
2は、第一、第二のベーン溝68
1、68
2を出入できるようにされている。
【0026】
バネ部材は、第一、第二のベーン28
1、28
2が第一、第二のベーン溝68
1、68
2の内部に入るときには圧縮され、伸張するときには、第一、第二のベーン28
1、28
2は第一、第二のベーン溝68
1、68
2の内部から出るものとする。
【0027】
<真空排気動作>
図11,
図12の(a)〜(d)上では、ロータ27は時計回りに回転しており、先ず、ロータ27は、第一のベーン28
1が容器60の内壁面に接触しながら、先ず、内部空間61のうち、吸気口34に接続された部分の容積が拡大する方向に回転移動する(
図11(a))。
【0028】
吸気口34には吸気管14(
図2)の一端が接続され、吸気管14の他端は、真空槽等の真空排気対象の真空排気口に接続されており、内部空間61のうち、吸気口34に接続された部分の容積が拡大すると、真空槽等の内部の気体が吸気口34から吸引される。符号66はポンプ本体31に吸引された気体を示しており、真空槽等は真空排気されたことになる。
【0029】
吸引した気体66は、ロータ27の回転移動によって第一、第二のベーン28
1、28
2で密封した状態にされ、ロータ27の回転移動に伴って容器60の内部を回転移動し(
図11(b))、次いで、更にロータ27を回転移動させると、第一のベーン28
1が排気口35が設けられた場所を通過すると、吸引した気体は、第二のベーン28
2と排気口35を閉塞する排気弁68とで閉塞され、ロータ27が更に回転移動すると、吸引した気体66は圧縮される(
図12(c))。
【0030】
圧縮された気体66の圧力が所定圧力よりも低い間は、排気弁68は閉塞した状態を維持するように構成されており、圧縮が強まり、圧縮された気体の圧力が所定圧力を超えると、排気弁68が開状態になる。
【0031】
排気口35は排気管15(
図2)に接続されており、排気口35が開けられると、内部空間61は排気口35を介して排気管15に接続される。吸気口34は、吸気管14に接続されており、圧縮された気体66は、排気口35から排気管15を通過して大気等に排気される(
図12(d))。
【0032】
このように、モータ部17に三相交流電圧が供給され、ロータ27が回転することで、ポンプ本体31では吸気と排気とが繰り返され、吸気口34に接続された真空槽等の気体が排気される。
【0033】
以上は、真空排気装置10のポンプ本体31がゲーデ型のロータリーポンプである場合について説明したが、本発明の真空排気装置10は、ゲーデ型のポンプ本体31に限定されるものではなく、回転軸26の回転によって吸気と排気とを繰り返し行うポンプ本体31と、その回転軸26を回転させる駆動軸25と、駆動軸25を回転させるモータ部17と、駆動軸25を軸受けする第一、第二の軸受装置40a,40bとを有する真空排気装置が含まれる。
【0034】
<軸受構造>
本発明の真空排気装置10の軸受けの構造を説明する。
図4(a)は、第一の軸受装置40aが取り付けられていない状態の第一の取付装置32aである。
【0035】
第一の取付装置32aの第一の取付リング33aには、第一の台座50aがそれぞれ固定されている。
第一の取付リング33aの中央には、貫通孔48が位置しており、第一の台座50aは、貫通孔48の内部に配置されて第一の取付リング33aにそれぞれ取り付けられている。
【0036】
その取付手順を説明すると、先ず、第一の台座50aは、着座部53と背板部55とをそれぞれ有している。第一の台座50aは金属製であり、着座部53と背板部55とは金属が一体に成形されている。
【0037】
着座部53と背板部55とは円形リング形状であり、外周と内周とは、それぞれ円形リング形状の中心軸線に対して平行になるように配置されている。
背板部55の内径は、着座部53の内径よりも大きく、着座部53の外径よりも小さい大きさであり、着座部53と背板部55とは、中心軸線を一致させて背板部55の下端が着座部53の上端に密着して位置するように配置されている。ここでは、着座部53の外径と、背板部55の外径とは等しい値である。
【0038】
貫通孔48内に第一の台座50aを配置するために、第一の台座50aの外径は、第一の取付リング33aの内径以下の大きさにされている。
背板部55は、第一の取付リング33aの内側に位置しており、第一の取付リング33aは背板部55を取り囲んでおり、背板部55は、背板部55の中央位置を含む空間を取り囲んでいる。
【0039】
背板部55が取り囲む空間を装着空間56と呼ぶと、背板部55の一端側には、装着空間56の下方位置に、装着空間56の中心軸線方向に向けて着座部53が突き出されており、装着空間56の他端側は、開放されている。
【0040】
第一の台座50aのうち、背板部55の外周が、第一の取付リング33aの内周に固定されている。
背板部55の内周側面を接着面54と呼ぶとすると、接着面54は、第一の取付装置32aが水平なときに鉛直となり、その鉛直な状態で貫通孔48内に露出されており、接着面54が取り囲む装着空間56の大きさは、背板部55の内径と等しくなる。
【0041】
第一の軸受装置40aの外径は、第一の台座50aの背板部55の内径以下の大きさにされている。従って、第一の軸受装置40aは、装着空間56の着座部53が位置する一端とは逆側の一端から装着空間56内に挿入することができる。
【0042】
着座部53は、装着空間56に露出された座面57を有している。座面57は、接着面54とは垂直に配置されており、装着空間56に挿入された第一の軸受装置40aは装着空間56内を着座部53に向けて移動し、座面57に当接できるようになっている。
【0043】
なお、第二の取付リング33b内に挿入された第二の軸受装置40bは、第一の台座50aに替え、スプリング71と第二の台座50bを有しており、第二の台座50bは、第二の軸受装置40bとモータケース20の壁面との間に配置されている。スプリング71の付勢力により、第二の軸受装置40bは、モータ本体21に押圧され、固定部材に固定されるようになっている。ここでは、モータケース20が固定部材となり、第二の軸受装置40bを固定しているが、固定部材はモータケース20に限定されるものではない。第二の軸受装置40bの他の構成は第一の軸受装置40aと同じであり、駆動軸25を軸支する。
【0044】
<第一の軸受装置40aの装着>
この真空排気装置10の第一、第二の軸受装置40a,40bのうち、モータ部17の出力軸側の第一の軸受装置40aは、接着剤を用いて第一の台座50aに取り付けられ、モータ部17の反対側の第二の軸受装置40bは接着剤とスプリング71とを用いて第二の台座50bに取り付けられるようになっている。
【0045】
他方、第一の取付装置32aに、第一の軸受装置40aを取り付ける手順を説明すると、先ず、第一の軸受装置40aの外周側面49(ここでは、外輪42の外周側面49)と、第一の台座50aの接着面54とに接着剤を塗布又は貼付して接着剤層を形成し、座面57が上方を向くように第一の取付装置32aを水平に配置する。
【0046】
図4(b)、(c)の一点鎖線が示す部材は駆動軸25である。
図4(b)を参照し、第一
の取付装置32aの装着空間56の上方には、駆動軸25が挿通された第一の軸受装置40aが配置された状態が示されており、符号37は、第一の軸受装置40aの外周側面49に設けられた軸受側接着剤層を示しており、符号38は、第一の台座50aの接着面54に設けられた台座側接着剤層を示している。
【0047】
図5は、
図4(b)の部分拡大図であり、第一の台座50aの一部と、第一の軸受装置40aの一部とが拡大して示されている。
図5〜10では、駆動軸25は省略する。
【0048】
第一の軸受装置40aの外径と、装着空間56の外径との差は、軸受側接着剤層37の厚みと、台座側接着剤層38の厚みを合計した厚みよりも小さくなっている。
第一の軸受装置40aと第一の台座50aとを互いに平行にした状態で、第一の軸受装置40aを第一の台座50aに対して相対的に近接させると、軸受側接着剤層37の下端は、台座側接着剤層38の上端に接触し、第一の軸受装置40aを更に第一の台座50aが位置する方向に移動させると、軸受側接着剤層37には上方を向く力が印加され、台座側接着剤層38には下方に向く力が印加され、その力により、台座側接着剤層38の表面部分が下方に移動する。
【0049】
着座部53の掘削により、着座部53には、座面57に開口58を有する収容孔51が形成されている。収容孔51の開口58は、接着面54に近い場所に配置されており、第一の軸受装置40aが装着空間56内を下方に向けて移動すると、その移動に伴って、台座側接着剤層38の表面部分は、接着面54に沿って下方に移動され、
図4(c)と、その一部の拡大図である
図6に示すように、移動された部分は、開口58から収容孔51の内部に入り、座面57上には接着剤は付着せず、第一の軸受装置40aは、座面57上に着座する。
【0050】
軸受側接着剤層37の接着剤や台座側接着剤層38の接着剤は、座面57と底面41との間には位置しておらず、第一の軸受装置40aの外輪42の底面41と第一の台座50aの着座部53の座面57とが接触し、外輪42と着座部53との間は電気的に接続される。
つまり外輪42と着座部53との間を、電気抵抗をゼロと担保する事ができる。
外輪42の底面41の縁は丸められ、曲面部46が形成されており、外輪42の外周側面49と底面41との間は、曲面部46によって接続されている。
【0051】
第一の軸受装置40aを第一の台座50aに着座させたときに、曲面部46は、座面57と接着面54とから離間し、曲面部46と、座面57と、接着面54とで囲まれた隙間59が形成される。収容孔51の開口58は、接着面54に沿う位置に配置され、その隙間59に露出されている。
従って、接着面54に沿って下方に移動した接着剤は、収容孔51からあふれた場合であっても座面57と底面41との間には侵入しないようになっている。
【0052】
他方、第一の軸受装置40aが座面57に着座した状態では、軸受側接着剤層37と台座側接着剤層38とは、密着して一体になっており、接着面54と外周側面49との間には、軸受側接着剤層37の接着剤の少なくとも一部と、台座側接着剤層38の接着剤の少なくとも一部とが存しており、外周側面49は、接着面54と外周側面49との間に存する接着剤によって接着面54に接着されている。符号39は、一体になった接着剤を示している。
【0053】
なお、収容孔51の容積を、軸受側接着剤層37と台座側接着剤層38との合計の体積よりも大きくしておくと、収容孔51に収容された部分の接着剤は、確実に、上部が座面57よりも下方に位置するようになるので好ましい。
【0054】
第一の軸受装置40aの底面41のうち、座面57と接触する部分は外輪42の底面41であり、駆動軸25の回転に伴って回転する内輪43の底面41は座面57には接触しないようになっている。
【0055】
モータケース20は金属で構成されており、着座部53は、モータケース20に電気的に接続されている。モータケース20は、ポンプケース30、ベース板19と電気的に接続されており、ベース板19は、接地電位に接続されている。
従って着座部53は、モータケース20と、ポンプケース30、ベース板19とを介して接地電位に接続されている。
【0056】
ポンプケース30とモータケース20とは、電気的に接続されており、モータ部17は、モータケース20と、ポンプケース30と、ベース板19とを介して接地されている。
着座部53は、ベース板19とモータケース20、ポンプケース30とを介して接地電位に接続されているので、着座部53から接地電位までの抵抗値が大きい場合があり得る。その場合は、着座部53の電位が上昇することもある。
【0057】
本例では、吸気管14を金属で構成させ、ポンプケース30と吸気管14とを電気的に接続し、吸気管14を接地電位に接続した。この場合、着座部53は、ポンプケース30と吸気管14とを介して接地電位に電気的に接続され、着座部53から接地電位までの抵抗値が減少するので、着座部53の電位は上昇しない。
着座部53を電線によって接地電位に接続してもよいし、ポンプケース30を電線によって接地電位に接続してもよい。
【0058】
ところで、内輪43は駆動軸25と接触しており、駆動軸25と電気的に接続されており、内輪43と外輪42との間は、内輪43と外輪42との間の容量成分を介して交流電気的に接続されている。
【0059】
モータ部17内のインバータによって生成された高周波の交流電圧は、モータ部17内に分布する寄生容量成分や寄生誘導成分によって、駆動軸25に印加されると、内輪43には、接地電位とは異なる軸電圧が発生する。
本発明では座面57と外輪42との間に接着剤層は形成されておらず、外輪42は、接地電位に接続された着座部53の座面57に接触し、外輪42は接地電位に接続される。
内輪43と外輪42との間は寄生容量成分によって交流的に接続されており、外輪42が接地電位に接続されているので、モータ部17の運転時の軸電圧によって、駆動軸25に軸電圧が印加されても、内輪43と外輪42との間に電流が流れる。従って、内輪43の電位が上昇せず、内輪43と外輪42との間には放電は発生しない。
【0060】
図9は、比較例の真空排気装置110の収容孔が形成されていない台座150に、第一の軸受装置40aを取り付けるときの状態を説明するための図面であり、
図9の真空排気装置110の部材には、台座150以外は、
図5の真空排気装置10の対応する部材と同じ符号を付して、部材の説明は省略する。
【0061】
この真空排気装置110では、台座150の接着面54が取り囲む装着空間56に第一の
軸受装置40aを挿入して座面57に着座させる間に、台座側接着剤層38の接着剤が下方に移動すると、収容孔が形成されていないので、接着剤は座面57上に乗ってしまう(
図10)。
底面41が座面57に接触する前に、接着剤は、底面41の真下の座面57まで侵入し、底面41は座面57に接触できなくなる。
【0062】
各接着剤層37,38に用いた接着剤は、信頼性や接着力の点から、絶縁性の有機化合物が用いられており、底面41と座面57との間に接着剤が位置していると、外輪42と着座部53とは接触されず、電気的に接続されないので、外輪42は浮遊電位に置かれてしまう。
【0063】
その場合は、駆動軸25の軸電圧は低下することができず、軸電圧が上昇すると、内輪43と外輪42との間の電位差が大きくなり、内輪43と外輪42との間で放電が発生する。即ち、第一の軸受装置40a内で電食が発生する。
本発明では、第一の軸受装置40aの軸電圧は上昇せず、第一の軸受装置40aの内部での電食は発生しない。
【0064】
<電食の写真>
図13(a)は、電食が発生した第一の軸受装置の内部を撮影した写真であり、同図(b)は、接地電位に接続されたブラシが接触された駆動軸25を軸受した第一の軸受装置の内部を撮影した写真であり、同図(c)は、本発明の第一の軸受装置40aの内部を撮影した写真である。
同図(a)の写真と、同図(b)、(c)の写真を比較すると、同図(b)、(c)では、電食が生じていないことが分かる。
【0065】
<シャフト電圧の測定結果>
次に、接地電位への電気的接続方法を変えて、駆動軸25の接地電位に対する電圧を測定した。測定結果を、下記表1の「シャフト電圧V」の欄に記載する。
【0067】
吸気管14をプラスチックス(PPS)で構成し、ベース板19を接地電位に接続しなかった場合でも、収容孔51を設ければ、シャフト電圧は17.12Vまで低下している(実施例1)。その実施例1の状態から更に、ベース板19を接地電位に接続すると、15.10Vに更に低下する(実施例2)。他方、実施例1の状態から吸気管14をメッキされた真鍮で構成して接地電位に接続すると、15.21Vに低下する(実施例3)。ベース板19と吸気管14とを接地電位に接続すると、14.37Vまで低下する(実施例4)。
吸気管14をSUS304で構成させた場合はメッキされた真鍮で構成した場合よりもシャフト電位が低下する(実施例5〜7)。
図14は、配線12によって、ポンプケース30をベース板19に電気的に接続した真空排気装置11を示しており、表1の実施例7の構成に相当する。
【0068】
比較例1,2と、実施例1〜7とのシャフト電圧の波形を、
図15(a)〜(e)、
図16(f)〜(i)に示す。表1に記載したシャフト電圧の欄の値は、各波形の最大値を読み取って記載している。
【0069】
<他の例>
図7の第一の台座50aの着座部53には、開口58が座面57に位置し、底面が、開口58の真下位置よりも外側の背板部55の下方に位置する収容孔52が形成されている。
【0070】
この第一の台座50aでも、第一の軸受装置40aを装着空間56に挿入する間に、下方に移動する接着剤は開口58から収容孔52の内部に入り、座面57と底面41との間には接着剤は位置せず、外輪42と第一の台座50aとは接触して電気的に接続され、第一の軸受装置40aは、接着面54と外周側面49とが、その間に位置する接着剤によって互いに固定されている(
図8)。
【0071】
また、上記例では、モータ本体21に近い第一の軸受装置40aを接着剤を用いて第一の台座50aに固定したが、第二の台座50bの着座部53に、収容孔を形成して、第二の軸受装置40bを座面57に着座させて固定する際に、下方に移動した接着剤が、収容孔の内部に入るようにされた真空排気装置も本発明に含まれる。
【0072】
なお、上記例では、収容孔51、52と、その開口58とはリング状であったが、リング状ではない開口58を有する収容孔51、52を、接着面54に沿って、一個乃至複数個を配置してもよい。
真空排気装置10の第一の台座50aの着座部53に収容孔51を設け、背板部55の接着面54に設けられた台座側接着剤層38から下方に移動した接着剤を、座面57に位置する開口58から収容孔51内に収容し、第一の軸受装置40aの外輪42と座面57との間に侵入しないようにする。外輪42と座面57とが接触し、外輪42と第一の台座50aとが電気的に接続されるので、外輪42は、第一の台座50aを介して、ポンプケース30に接続され、その結果接地される。内輪43と転動体45の電位は低下するので、第一の軸受装置40aの内部での電食が防止される。