(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る電力伝送装置の構成例を示す図である。
電力伝送装置は、商用交流が入力されて電力伝送を行って当該商用交流と同じ周波数の交流を出力するものである。なお、商用交流としては、国内外で使用されている標準の周波数(50Hz又は60Hz)の交流、工業用として使用されている周波数の交流等の、低周波数の交流が挙げられる。また以下では、電力伝送装置が無線電力伝送を行う場合を例に説明を行う。
【0011】
この電力伝送装置は、
図1に示すように、送信側AC/ACコンバータ(高周波電源)1、共振型送信アンテナ2a,2b、共振型受信アンテナ3a,3b及び受信側AC/ACコンバータ(高周波整流回路)4を備えている。なお、送信側AC/ACコンバータ1及び共振型送信アンテナ2a,2bは送信装置5を構成し、共振型受信アンテナ3a,3b及び受信側AC/ACコンバータ4は受信装置6を構成している。
【0012】
送信側AC/ACコンバータ1は、上記商用交流(
図1では50Hz)が入力され、当該商用交流を、当該商用交流の周波数で電圧振幅が変化し且つ180度の位相差を持って交互に出力される当該商用交流の周波数よりも高い周波数(
図1では6.78MHz)の2系統の電力に変換するものである。この送信側AC/ACコンバータ1は、入力回路11、インバータ12a,12b及び共振整合回路13a,13bを有している。
【0013】
入力回路11は、上記商用交流が入力され、当該商用交流を半波整流した電力、及び当該電力に対して180度の位相差を持つ電力を出力するものである。この入力回路11により得らえた2系統の電力のうち、一方の電力はインバータ12aに出力され、他方の電力はインバータ12bに出力される。
【0014】
インバータ12aは、入力回路11から出力された一方の電力を、上記高い周波数でスイッチングすることで、当該高い周波数の電力に変換するものである。このインバータ12aにより変換された電力は、共振整合回路13aを介して共振型送信アンテナ2aに出力される。
インバータ12bは、入力回路11から出力された他方の電力を、上記高い周波数でスイッチングすることで、当該高い周波数の電力に変換するものである。このインバータ12bにより変換された電力は、共振整合回路13bを介して共振型送信アンテナ2bに出力される。
なお、インバータ12a,12bは、スイッチング周波数が同一に設定されている。
【0015】
共振整合回路13aは、インバータ12aの出力インピーダンスと共振型送信アンテナ2aの入力インピーダンスとの整合を取る(共振型送信アンテナ2aとの間で共振条件を合わせる)ものである。なお、共振整合回路13aは、共振整合回路13aを構成する各素子の定数が固定である固定整合型、各素子の定数が可変である可変整合型、各素子の定数が自動で可変されて整合を取る自動整合型の何れであってもよい。
共振整合回路13bは、インバータ12bの出力インピーダンスと共振型送信アンテナ2bの入力インピーダンスとの整合を取る(共振型送信アンテナ2bとの間で共振条件を合わせる)ものである。なお、共振整合回路13bは、共振整合回路13bを構成する各素子の定数が固定である固定整合型、各素子の定数が可変である可変整合型、各素子の定数が自動で可変されて整合を取る自動整合型の何れであってもよい。
なお、インバータ12a,12b及び共振整合回路13a,13bは、回路のリターンライン14が共通化されている(
図2参照)。
【0016】
共振型送信アンテナ2aは、インバータ12aにより変換された電力を入力して共振動作を行い、非放射型の電磁界を近傍に発生させることで、共振型受信アンテナ3aに対して電力伝送を行う共振型の電力送信アンテナである。
共振型送信アンテナ2bは、インバータ12bにより変換された電力を入力して共振動作を行い、非放射型の電磁界を近傍に発生させることで、共振型受信アンテナ3bに対して電力伝送を行う共振型の電力送信アンテナである。
【0017】
共振型受信アンテナ3aは、共振型送信アンテナ2aからの非放射型の電磁界と共振結合動作を行うことで電力を受信する共振型の電力受信アンテナである。この共振型受信アンテナ3aにより受信された電力は、受信側AC/ACコンバータ4の後述する共振整合回路41aを介して全波整流回路42aに出力される。
共振型受信アンテナ3bは、共振型送信アンテナ2bからの非放射型の電磁界と共振結合動作を行うことで電力を受信する共振型の電力受信アンテナである。この共振型受信アンテナ3bにより受信された電力は、受信側AC/ACコンバータ4の後述する共振整合回路41bを介して全波整流回路42bに出力される。
【0018】
なお、共振型送信アンテナ2a,2bと共振型受信アンテナ3a,3bとの間の電力の無線伝送方式は特に限定されるものではなく、磁界共鳴による方式、電界共鳴による方式、電磁誘導による方式の何れであってもよい。
【0019】
受信側AC/ACコンバータ4は、各共振型受信アンテナ3a,3bにより受信された電力を、上記商用交流と同じ周波数(
図1では50Hz)の単一の交流に変換するものである。この受信側AC/ACコンバータ4は、共振整合回路41a,41b、全波整流回路42a,42b及び出力回路43を有している。
【0020】
共振整合回路41aは、共振型受信アンテナ3aの出力インピーダンスと全波整流回路42aの入力インピーダンスとの整合を取る(共振型受信アンテナ3aとの間で共振条件を合わせる)ものである。なお、共振整合回路41aは、共振整合回路41aを構成する各素子の定数が固定である固定整合型、各素子の定数が可変である可変整合型、各素子の定数が自動で可変されて整合を取る自動整合型の何れであってもよい。
共振整合回路41bは、共振型受信アンテナ3bの出力インピーダンスと全波整流回路42bの入力インピーダンスとの整合を取る(共振型受信アンテナ3bとの間で共振条件を合わせる)ものである。なお、共振整合回路41bは、共振整合回路41bを構成する各素子の定数が固定である固定整合型、各素子の定数が可変である可変整合型、各素子の定数が自動で可変されて整合を取る自動整合型の何れであってもよい。
【0021】
全波整流回路42aは、共振型受信アンテナ3aにより受信された電力を全波整流するものである。この全波整流回路42aにより全波整流された電力は、出力回路43に出力される。
全波整流回路42bは、共振型受信アンテナ3bにより受信された電力を全波整流するものである。この全波整流回路42bにより全波整流された電力は、出力回路43に出力される。
【0022】
出力回路43は、全波整流回路42a,42bにより全波整流された電力を、一方の電力の極性を反転した上で合成するものである。これにより、上記商用交流と同じ周波数の交流を得ることができる。この出力回路43により得られた電力は、負荷(不図示)に出力される。
【0023】
次に、送信装置5の具体的な回路構成例について、
図2を参照しながら説明する。
図2はこの発明の実施の形態1における送信装置5の回路構成例を示す図である。なお
図2では、送信装置5の入力端に、商用交流を出力する商用交流源7が接続された場合を示している。また
図2では、インバータ12a,12bとしてE級型のインバータを用いた場合を示している。
【0024】
まず、送信側AC/ACコンバータ1の回路構成例について説明する。
図2では、送信側AC/ACコンバータ1の入力回路11は、ダイオードD11,D12,D21,D22、コンデンサC11,C21により構成されている。
【0025】
ダイオードD11は、カソードが商用交流源7の一端(プラス端子)に接続され、アノードがダイオードD21のアノードに接続されている。また、ダイオードD12は、アノードが商用交流源7の一端に接続されている。また、コンデンサC11は、一端がダイオードD12のカソードに接続され、他端がダイオードD11のアノードに接続されている。
同様に、ダイオードD21は、カソードが商用交流源7の他端(マイナス端子)に接続され、アノードがダイオードD11のアノードに接続されている。また、ダイオードD22は、アノードが商用交流源7の他端に接続されている。また、コンデンサC21は、一端がダイオードD22のカソードに接続され、他端がダイオード21のアノードに接続されている。
【0026】
また、送信側AC/ACコンバータ1のインバータ12aは、インダクタL11、共振回路素子(コンデンサC12,C13及びインダクタL12)及びスイッチング素子Q11により構成されている。
【0027】
インダクタL11は、入力回路11から入力された電力を、スイッチング素子Q11の動作毎に一時的に保持する働きをするものである。このインダクタL11は、一端がダイオードD12のカソード及びコンデンサC11の一端に接続されている。
【0028】
共振回路素子(コンデンサC12,C13及びインダクタL12)は、スイッチング素子Q11のスイッチング動作を共振スイッチング動作とさせるものである。すなわち、この共振回路素子により、スイッチング素子Q11のスイッチング動作が、Ids電流とVds電圧積によるスイッチング損失が最も小さくなるように、ZVS(ゼロボルテージスイッチング)が成立するように、スイッチング条件が設定されている。
【0029】
コンデンサC12は、一端がインダクタL11の他端に接続され、他端がダイオードD11のアノードに接続されている。また、インダクタL12は、一端がインダクタL11の他端に接続されている。また、コンデンサC13は、一端がインダクタL12の他端に接続されている。
【0030】
スイッチング素子Q11は、上記高い周波数でスイッチング動作を行うものである。このスイッチング素子Q11は、ドレイン端子がインダクタL11の他端に接続され、ソース端子がダイオードD11のアノードに接続されている。
【0031】
また、送信側AC/ACコンバータ1のインバータ12bは、インダクタL21、共振回路素子(コンデンサC22,C23及びインダクタL22)及びスイッチング素子Q21により構成されている。
【0032】
インダクタL21は、入力回路11から入力された電力を、スイッチング素子Q21の動作毎に一時的に保持する働きをするものである。このインダクタL21は、一端がダイオードD22のカソード及びコンデンサC21の一端に接続されている。
【0033】
共振回路素子(コンデンサC22,C23及びインダクタL22)は、スイッチング素子Q21のスイッチング動作を共振スイッチング動作とさせるものである。すなわち、この共振回路素子により、スイッチング素子Q21のスイッチング動作が、Ids電流とVds電圧積によるスイッチング損失が最も小さくなるように、ZVS(ゼロボルテージスイッチング)が成立するように、スイッチング条件が設定されている。
【0034】
コンデンサC22は、一端がインダクタL21の他端に接続され、他端がダイオードD21のアノードに接続されている。また、インダクタL22は、一端がインダクタL21の他端に接続されている。また、コンデンサC23は、一端がインダクタL22の他端に接続されている。
【0035】
スイッチング素子Q21は、上記高い周波数でスイッチング動作を行うものである。このスイッチング素子Q21は、ドレイン端子がインダクタL21の他端に接続され、ソース端子がダイオードD21のアノードに接続されている。
【0036】
また、送信側AC/ACコンバータ1の共振整合回路13aは、コンデンサC14,C15及びインダクタL13により構成されている。
コンデンサC14は、一端がコンデンサC13の他端に接続され、他端がダイオードD11のアノードに接続されている。また、インダクタL13は、一端がコンデンサC13の他端に接続されている。また、コンデンサC15は、一端がインダクタL13の他端に接続され、他端がダイオードD11のアノードに接続されている。
【0037】
また、送信側AC/ACコンバータ1の共振整合回路13bは、コンデンサC24,C25及びインダクタL23により構成されている。
コンデンサC24は、一端がコンデンサC23の他端に接続され、他端がダイオードD21のアノードに接続されている。また、インダクタL23は、一端がコンデンサC23の他端に接続されている。また、コンデンサC25は、一端がインダクタL23の他端に接続され、他端がダイオードD21のアノードに接続されている。
【0038】
次に、共振型送信アンテナ2a,2bの回路構成例について説明する。
図2では、共振型送信アンテナ2aは、コンデンサC16,C17及びインダクタL14により構成されている。このコンデンサC16,C17及びインダクタL14は共振型送信アンテナ2aの共振条件を設定するものである。なお、インダクタL14は、共振型送信アンテナ2aの共振条件を設定する機能の他、アンテナとしても兼用されている。
【0039】
コンデンサC16は、一端がインダクタL13の他端に接続されている。また、コンデンサC17は、一端がダイオードD11のアノードに接続されている。また、インダクタL14は、一端がコンデンサC16の他端に接続され、他端がコンデンサC17の他端に接続されている。
【0040】
また、共振型送信アンテナ2bは、コンデンサC26,C27及びインダクタL24により構成されている。このコンデンサC26,C27及びインダクタL24は共振型送信アンテナ2bの共振条件を設定するものである。なお、インダクタL24は、共振型送信アンテナ2bの共振条件を設定する機能の他、アンテナとしても兼用されている。
【0041】
コンデンサC26は、一端がインダクタL23の他端に接続されている。また、コンデンサC27は、一端がダイオードD21のアノードに接続されている。また、インダクタL24は、一端がコンデンサC26の他端に接続され、他端がコンデンサC27の他端に接続されている。
【0042】
次に、受信装置6の具体的な回路構成例について、
図3を参照しながら説明する。
図3はこの発明の実施の形態1における受信装置6の回路構成例を示す図である。なお
図3では、全波整流回路42a,42bとしてブリッジ整流回路を用いた場合を示している。
【0043】
まず、共振型受信アンテナ3a,3bの回路構成例について説明する。
図3では、共振型受信アンテナ3aは、インダクタL31及びコンデンサC31,C32により構成されている。このインダクタL31及びコンデンサC31,C32は共振型受信アンテナ3aの共振条件を設定するものである。なお、インダクタL31は、共振型受信アンテナ3aの共振条件を設定する機能の他、アンテナとしても兼用されている。
インダクタL31は、一端にコンデンサC31が接続され、他端にコンデンサC32が接続されている。
【0044】
また、共振型受信アンテナ3bは、インダクタL41及びコンデンサC41,C42により構成されている。このインダクタL41及びコンデンサC41,C42は共振型受信アンテナ3bの共振条件を設定するものである。なお、インダクタL41は、共振型受信アンテナ3bの共振条件を設定する機能の他、アンテナとしても兼用されている。
インダクタL41は、一端にコンデンサC41が接続され、他端にコンデンサC42が接続されている。
【0045】
次に、受信側AC/ACコンバータ4の回路構成例について説明する。
図3では、受信側AC/ACコンバータ4の共振整合回路41aは、インダクタL32及びコンデンサC33により構成されている。
インダクタL32は、一端がコンデンサC31の他端に接続されている。また、コンデンサC33は、一端がインダクタL32の他端に接続され、他端がコンデンサC32の他端に接続されている。
【0046】
また、受信側AC/ACコンバータ4の共振整合回路41bは、インダクタL42及びコンデンサC43により構成されている。
インダクタL42は、一端がコンデンサC41の他端に接続されている。また、コンデンサC43は、一端がインダクタL42の他端に接続され、他端がコンデンサC42の他端に接続されている。
【0047】
また、受信側AC/ACコンバータ4の全波整流回路42aは、整流ダイオードD31〜D34及びコンデンサC34により構成されている。
【0048】
整流ダイオードD31〜D34は、ブリッジ接続され、共振型受信アンテナ3aから入力された電力を全波整流するものである。
整流ダイオードD31〜D34は、整流ダイオードD31のカソード及び整流ダイオードD33のアノードがインダクタL32の他端に接続され、整流ダイオードD32のカソード及び整流ダイオードD34のアノードがコンデンサC32の他端に接続されている。
【0049】
コンデンサC34は、整流ダイオードD31〜D34により全波整流された電力を、交流成分(
図5Bの上段に示す波形)を残しつつ平滑するものである。すなわち、コンデンサC34の容量は、出力波形に交流成分(図の例は商用交流と同じ50Hz)が残る程度の小さな値に設定されている。このコンデンサC34は、一端が整流ダイオードD33のカソード及び整流ダイオードD34のカソードに接続され、他端が整流ダイオードD31のアノード及び整流ダイオードD32のアノードに接続されている。
【0050】
また、受信側AC/ACコンバータ4の全波整流回路42bは、整流ダイオードD41〜D44及びコンデンサC44により構成されている。
【0051】
整流ダイオードD41〜D44は、ブリッジ接続され、共振型受信アンテナ3bから入力された電力を全波整流するものである。
整流ダイオードD41〜D44は、整流ダイオードD41のカソード及び整流ダイオードD43のアノードがインダクタL42の他端に接続され、整流ダイオードD42のカソード及び整流ダイオードD44のアノードがコンデンサC42の他端に接続されている。
【0052】
コンデンサC44は、整流ダイオードD41〜D44により全波整流された電力を、交流成分(
図5Bの下段に示す波形)を残しつつ平滑するものである。すなわち、コンデンサC44の容量は、出力波形に交流成分(図の例は商用交流と同じ50Hz)が残る程度の小さな値に設定されている。このコンデンサC44は、一端が整流ダイオードD43のカソード及び整流ダイオードD44のカソードに接続され、他端が整流ダイオードD41のアノード及び整流ダイオードD42のアノードに接続されている。
【0053】
また、受信側AC/ACコンバータ4の出力回路43は、スイッチング素子Q31,Q41により構成されている。
ここで、スイッチング素子Q31は、ドレイン端子が整流ダイオードD33のカソード及び整流ダイオードD34のカソードに接続され、ソース端子が整流ダイオードD31のアノード及び整流ダイオードD32のアノードに接続されている。同様に、スイッチング素子Q41は、ドレイン端子が整流ダイオードD43のカソード及び整流ダイオードD44のカソードに接続され、ソース端子が整流ダイオードD41のアノード及び整流ダイオードD42のアノードに接続されている。また、スイッチング素子Q31のソース端子は、スイッチング素子Q41のソース端子にも接続されている。
【0054】
なお、受信側AC/ACコンバータ4の一対の出力端子のうち、HOT端子はスイッチング素子Q31のドレイン端子に接続され、RTN端子はスイッチング素子Q41のドレイン端子に接続されている。
【0055】
次に、上記のように構成された電力伝送装置の動作例について、
図1〜5を参照しながら説明する。なお以下では、電力伝送装置に入力される上記商用交流の周波数を50Hzとし、電力伝送装置で用いる上記高い周波数を6.78MHzとした場合を例に説明を行う。
まず、送信装置5では、送信側AC/ACコンバータ1の入力回路11は、商用交流源7から50Hzの商用交流Vin(AC)が入力されると(
図4A)、当該商用交流を2系統の電力(当該商用交流を半波整流した電力、及び当該電力に対して180度の位相差を持つ電力)に変換して出力する。
【0056】
そして、インバータ12aは、入力回路11からの一方の電力を6.78MHzの電力に変換する(
図4Bの上段)。ここで、スイッチング素子Q11により6.78MHzでスイッチングされたドレイン−ソース間電圧Vds(Q11)のピークは、50Hzのサイン波の半波状に変化する。同様に、インバータ12bは、入力回路11からの他方の電力を6.78MHzの電力に変換する(
図4Bの下段)。ここで、スイッチング素子Q21により6.78MHzでスイッチングされたドレイン−ソース間電圧Vds(Q21)のピークは、50Hzのサイン波の半波状に変化する。なお、
図4において、実線で示す波形(ハッチングされた部分に含まれる波形)は、インバータ12a,12bにより変換された電力(6.78MHz)の波形を示し、破線で示す波形は、当該電力のピークの軌跡(50Hz)を示している。
【0057】
そして、共振型送信アンテナ2a,2bは、50Hzで電圧振幅が変化し且つ180度の位相差を持って交互に出力される6.78MHzの2系統の電力(伝送波)を、伝送する(
図4C)。なお、
図4Cにおいて、実線で示す波形(ハッチングされた部分に含まれる波形)は、共振型送信アンテナ2a,2bにより伝送される電力(6.78MHz)の波形を示し、破線で示す波形は、当該電力のピークの軌跡(50Hz)を示している。
【0058】
一方、受信装置6では、共振型受信アンテナ3a,3bは、共振型送信アンテナ2a,2bにより伝送された、50Hzで電圧振幅が変化し且つ180度の位相差を持って交互に出力される6.78MHzの2系統の電力(伝送波)を、受信する(
図5A)。なお
図5Aに示す波形は、
図4Cに示す波形と同一である。
【0059】
そして、受信側AC/ACコンバータ4の全波整流回路42aは、共振型受信アンテナ3aにより受信された電力を全波整流する(
図5Bの上段)。同様に、全波整流回路42bは、共振型受信アンテナ3bにより受信された電力を全波整流する(
図5Bの下段)。これにより、コンデンサC34の電圧V(C34)とコンデンサC44の電圧V(C44)は、50Hzのサイン波の半波状に整流された電力が180度の位相差を持って交互に出力される値となる。
【0060】
そして、出力回路43は、全波整流回路42a,42bにより全波整流された電力を、一方の電力の極性を反転した上で合成する。この際、コンデンサC44の電圧V(C44)がHighのときにスイッチング素子Q31のドレイン−ソース間をオンさせ、コンデンサC34の電圧V(C34)がHighのときにスイッチング素子Q41のドレイン−ソース間をオンさせる。これにより、受信装置6の出力は、電力伝送装置に入力された商用電力の周波数である50Hzと同じ周波数のサイン波となる(
図5C)。
【0061】
次に、実施の形態1に係る電力伝送装置の適用例について、
図6を参照しながら説明する。なお
図6では、固定部51が道路面の場合を示し、送信装置5のうちの共振型送信アンテナ2a,2b及び受信装置6のうちの共振型受信アンテナ3a,3bのみを図示している。
実施の形態1に係る電力伝送装置の適用例としては、共振型送信アンテナ2a,2bを道路面や駐車場等の固定部51に設置し、共振型受信アンテナ3a,3bを、停止した際又は移動中に固定部51と対向する車両等の移動体52に設置することが可能である。なお、
図6に示すように、固定部51が道路面である場合には、共振型送信アンテナ2a,2bは、移動体52の走行方向に沿って複数設けられる。これにより、移動体52が固定部51に対向して停止又は移動している際に共振型送信アンテナ2a,2bから共振型受信アンテナ3a,3bに電力伝送を行うことができ、移動体52に電力を供給することができる。
【0062】
なお上記では、共振型送信アンテナ2aを単一のコイルから構成し、共振型送信アンテナ2bを単一のコイルから構成した場合について示した。しかしながら、これに限るものではなく、共振型送信アンテナ2a,2bを、それぞれ2個以上のコイルで構成してもよく、例えばそれぞれ給電用コイル及び共鳴用コイルから構成してもよい。
同様に、上記では、共振型受信アンテナ3aを単一のコイルから構成し、共振型受信アンテナ3bを単一のコイルから構成した場合について示した。しかしながら、これに限るものではなく、共振型受信アンテナ3a,3bを、それぞれ2個以上のコイルで構成してもよく、例えばそれぞれ給電用コイル及び共鳴用コイルから構成してもよい。
【0063】
また上記では、共振型送信アンテナ2a,2bと共振型受信アンテナ3a,3bとの間の電力の伝送方式が無線伝送方式であるとして説明を行った。しかしながら、これに限るものではなく、例えば
図7に示すように、共振型送信アンテナ2aと共振型受信アンテナ3aとを等価的に1点接続となるよう導線8aで接続し、共振型送信アンテナ2bと共振型受信アンテナ3bとを等価的に1点接続となるよう導線8bで接続した接触型の共振結合伝送としてもよい。なお
図7では、送信装置5のうちの共振型送信アンテナ2a,2b及び受信装置6のうちの共振型受信アンテナ3a,3bのみを図示している。
【0064】
また上記では、インバータ12a,12bとしてE級型のインバータを用いた場合を示した。しかしながら、これに限るものではなく、入力された電力を、上記高い周波数でスイッチングすることで、当該高い周波数の電力に変換するインバータであればよい。例えば、インバータ12a,12bとして、ブリッジ型のインバータ、D級型のインバータ、DE級型のインバータを用いてもよい。
【0065】
また上記では、全波整流回路42a,42bとしてダイオード型のブリッジ整流回路を用いた場合を示した。しかしながら、これに限るものではなく、入力された電力を全波整流する回路であればよい。例えば、整流ダイオードD31〜D34,D41〜D44に代えて電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)を用いて全波整流回路42a,42bを構成してもよい。
【0066】
また上記では、インバータ12aの外部に共振整合回路13aを設け、インバータ12bの外部に共振整合回路13bを設けた場合を示した。しかしながら、これに限るものではなく、インバータ12aに共振整合回路13aを内蔵し、インバータ12bに共振整合回路13bを内蔵してもよい。例えば、共振整合回路13a,13bが固定整合型の場合にはインバータ12a,12bに内蔵し、可変整合型又は自動整合型の場合にはインバータ12a,12bの外部回路として設けてもよい。
また上記では、全波整流回路42aの外部に共振整合回路41aを設け、全波整流回路42bの外部に共振整合回路41bを設けた場合を示した。しかしながら、これに限るものではなく、全波整流回路42aに共振整合回路41aを内蔵し、全波整流回路42bに共振整合回路41bを内蔵してもよい。例えば、共振整合回路41a,41bが固定整合型の場合には全波整流回路42a,42bに内蔵し、可変整合型又は自動整合型の場合には全波整流回路42a,42bの外部回路として設けてもよい。
【0067】
以上のように、この実施の形態1によれば、商用交流が入力され、当該商用交流を半波整流した電力及び当該電力に対して180度の位相差を持つ電力を出力する入力回路11、及び入力回路11からの対応する電力を上記商用交流の周波数よりも高い周波数の電力に変換するインバータ12a,12bを有する送信側AC/ACコンバータ1と、対応するインバータ12a,12bにより変換された電力を伝送する共振型送信アンテナ2a,2bと、対応する共振型送信アンテナ2a,2bにより伝送された電力を受信する共振型受信アンテナ3a,3bと、対応する共振型受信アンテナ3a,3bにより受信された電力を全波整流する全波整流回路42a,42b、及び全波整流回路42a,42bにより全波整流された電力を、一方の電力の極性を反転した上で合成する出力回路43を有する受信側AC/ACコンバータ4とを備えたので、AC/DCコンバータ101及びDC/ACインバータ106を用いずに、商用交流が入力されて電力伝送を行って当該商用交流と同じ周波数の交流を出力することができる。その結果、従来構成に対して装置全体を小型化、軽量化、低コスト化することができる。
【0068】
また、従来構成では送信側で電力の変換を2度(直流への変換及び周波数変換)行い、受信側で電力の変換を2度(直流への変換及び周波数変換)行っている。それに対し、実施の形態1に係る電力伝送装置では、送信側で、入力された商用交流のうち、正の電力に対して電力の変換を1度(周波数変換)行い、負の電力に対して電力の変換を1度(周波数変換)行っている。そのため、送信側では、全体として1度の電力変換となる。また、受信側についても同様に全体として1度の電力変換(整流)となる。よって、従来構成に対して変換効率は高くなり、装置全体における入出力の電力伝送効率を高めることができる。このように、実施の形態1に係る電力伝送装置では、従来構成に対して、装置全体における入出力の電力伝送効率を高めることができ、発熱量が小さくなるため、その放熱のためのヒートシンク構造を小型化できる。これによっても、従来構成に対して装置全体を小型化、軽量化、低コスト化することができる。
なお、実施の形態1に係る電力伝送装置は、電力伝送効率が高いため、大電力型の伝送装置への適用がより有効である。
【0069】
また、このように、装置全体の小型化、軽量化、低コスト化を図りつつ、商用交流の無線電力伝送が可能となるため、既存の商用交流で動作する機器(負荷)に対して、非接触電力伝送システムを容易に構成することができる。よって、非接触電力伝送用の受電機能を内蔵した機器の登場を待たずに非接触電力伝送の実用化と普及に効果がある。
【0070】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
商用交流が入力され、当該商用交流を半波整流した電力及び当該電力に対して180度の位相差を持つ電力を出力する入力回路(11)、及び入力回路(11)からの対応する電力を上記商用交流の周波数よりも高い周波数の電力に変換するインバータ(12a,12b)を有する送信側AC/ACコンバータ(1)と、対応するインバータ(12a,12b)により変換された電力を伝送する共振型送信アンテナ(2a,2b)と、対応する共振型送信アンテナ(2a,2b)により伝送された電力を受信する共振型受信アンテナ(3a,3b)と、対応する共振型受信アンテナ(3a,3b)により受信された電力を全波整流する全波整流回路(42a,42b)、及び各全波整流回路(42a,42b)により全波整流された電力を、一方の電力の極性を反転した上で合成する出力回路(43)を有する受信側AC/ACコンバータ(4)とを備えた。