特許第6058298号(P6058298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058298
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】コンクリート補強含浸用硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20161226BHJP
   E01D 19/12 20060101ALI20161226BHJP
   E01D 1/00 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   E01D22/00 B
   E01D19/12
   E01D1/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-143416(P2012-143416)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-5696(P2014-5696A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 明男
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−069288(JP,A)
【文献】 特開2008−057119(JP,A)
【文献】 特開2002−029867(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/133265(WO,A1)
【文献】 特開2004−002604(JP,A)
【文献】 特開2005−213844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00−24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均分子量が10000〜29000で分子量分布が1.6以下の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体(A)、および数平均分子量4500〜9000で分子量分布が1.6以下の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体(B)を含有し、(A)と(B)の合計100重量部に対し、さらに粘度が0.5〜5Pa・s/25℃の液状エポキシ樹脂(C)25〜100重量部、粘度が0.001〜0.06Pa・s/25℃のエポキシ基含有反応性希釈剤(D)1〜100重量部、および(E)エポキシ樹脂硬化剤0.1〜20重量部を含有し、粘度が1.5Pa・s/25℃以下であることを特徴とするコンクリート補強含浸用硬化性組成物。
【請求項2】
さらに(F)シランカップリング剤、および(G)縮合触媒を含有することを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート補強含浸用硬化性組成物。
【請求項3】
反応性希釈剤(D)がポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(Gly−O−(CHCH(CH)O)−O−Gly、n=1〜7、Gly:グリシジル基)であることを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート補強含浸用硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のコンクリート補強含浸用硬化性組成物で亀裂を補修してなる道路橋床版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含浸性と弾性とが改善された、コンクリート補強含浸用硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂系の硬化性組成物は、各種コーティング剤やコンクリート亀裂補修用の硬化性組成物等に使用されている(例えば特許文献1)。他方、現在わが国では多数の道路橋があり、適切な維持管理が重要な課題となっている。車両の重量が大型化されたことに加え、建設後20年以上経過する道路橋の数が多く、補修・補強を必要とするコンクリート床版が急増している。コンクリート床版の補強・補修方法としては、鋼板接着工法、上面又は下面での床版増厚工法、床版の打ち換え工法、縦桁増設工法等があり、鋼板で補強した空隙に注入材を注入したり、樹脂を含浸させた繊維で補給したりしているが(例えば特許文献2〜4)、エポキシ樹脂系の硬化性組成物は、その硬さゆえに、例えばコンクリート床版の場合には、車両が通行することによる振動等で、補強後に含浸部分から再び亀裂が発生する等の課題があった。また、その粘度の高さゆえに、樹脂を含浸させる際に高圧をかける必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許開2005−23278号公報
【特許文献2】特許第3950284号公報
【特許文献3】特開2004−116139号公報
【特許文献4】特許第2944024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、含浸性と弾性とが改善された、コンクリート補強含浸用硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決する為に鋭意検討した結果、特定の分子量を有する反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体と、特定の粘度を有する液状エポキシ樹脂、さらにはエポキシ基含有反応性希釈剤の組み合わせにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)数平均分子量が10000〜29000で分子量分布が1.6以下の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体(A)、および数平均分子量4500〜9000で分子量分布が1.6以下の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体(B)を含有し、(A)と(B)の合計100重量部に対し、さらに粘度が0.5〜5Pa・s/25℃の液状エポキシ樹脂(C)25〜100重量部、および粘度が0.001〜0.06Pa・s/25℃のエポキシ基含有反応性希釈剤(D)1〜100重量部を含有し、粘度が1.5Pa・s/25℃以下であることを特徴とするコンクリート補強含浸用硬化性組成物、
(2)さらに(E)エポキシ樹脂硬化剤、および(F)シランカップリング剤、および(G)縮合触媒を含有することを特徴とするコンクリート補強含浸用硬化性組成物、
(3)反応性希釈剤(D)がポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH2CH(CH3)O)n-O-Gly、n =1〜7、Gly:グリシジル基)であることを特徴とするコンクリート補強含浸用硬化性組成物、
(4)コンクリート補強含浸用硬化性組成物で亀裂を補修してなる道路橋床版、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、含浸性と弾性とが改善された、コンクリート補強含浸用硬化性組成物を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に使用される(A)成分および(B)成分の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体の反応性ケイ素基としては、特に限定されるものではないが、代表的なものを示すと一般式(1)で表わされる基が挙げられる。
−Si(R13-a)Xa (1)
(R1は炭素数1から20のアルキル基、炭素数6から20のアリール基または炭素数7から20のアラルキル基を示し、Xは水酸基または加水分解性基を示す。aは1、2または3を示す。)。
【0009】
上記Xの例としては水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられるが、加水分解性が穏やかで取り扱い易いという点からメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。
【0010】
この水酸基や加水分解性基は1個のケイ素原子に1〜3個結合することができ、反応性ケイ素基中に2個以上存在する場合には、それらは同一であっても異なっていても良い。
【0011】
上記一般式(1)におけるR1の具体例としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。R1としてはメチル基が特に好ましい。
【0012】
本発明に使用される(A)成分および(B)成分のポリオキシプロピレン系重合体の主鎖構造は、−CH(CH3)CH2−O−で示される構造を繰り返し単位として含む重合体であり、−CH(CH3)CH2−O−で示される構造を全繰り返し単位の50重量%以上含有することが好ましく、70重量%以上含有することがより好ましい。これ以外にも−CH2CH2−O−、−CH(C25)CH2−O−、−C(CH32CH2−O−、−CH2CH2CH2CH2−O−といった繰り返し単位を含んでいても構わない。更に、主鎖中に分岐構造を有していても良い。
【0013】
本発明は、数平均分子量で10000〜29000で分子量分布が1.6以下の重合体(A)および数平均分子量で4500〜9000で分子量分布が1.6以下の重合体(B)からなる必要がある。重合体(A)の分子量は10000〜20000がより好ましく。重合体(B)の分子量は5000〜7000がより好ましい。
【0014】
重合体(A)の分子量が10000より小さくなると得られる硬化性組成物の柔軟性が悪化する傾向にあり、29000より大きくなると粘度が高くなり、コンクリートの隙間や亀裂への含浸性が悪化する傾向にある。また、重合体(B)の分子量が4500より小さくなると得られる硬化性組成物の柔軟性が悪化する傾向にあり、9000より大きくなると粘度が高くなり、コンクリートの隙間や亀裂への含浸性が悪化する傾向にある。
【0015】
さらに重合体(A)および(B)ともに分子量分布が1.6より大きくなると得られる硬化性組成物の粘度が高くなり、コンクリートの隙間や亀裂への含浸性が悪化する傾向にある。
【0016】
重合体(A)と重合体(B)の割合は、重量比(重合体(B)/重合体(A))で5〜0.2からなることが好ましく、3〜0.33からなることがより好ましく、2〜0.5からなることが特に好ましい。重量比(重合体(B)/重合体(A))が5より大きくなると、得られる硬化性組成物の柔軟性が悪化する傾向にあり、0.2より小さくなると粘度が高くなる傾向にある。
【0017】
なお、本発明における数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法でのポリスチレン換算での値として定義する。
【0018】
(A)成分および(B)成分のポリオキシプロピレン系重合体の主鎖骨格は、例えば開始剤と触媒の存在下、モノエポキシドを開環重合することによって得られる。
【0019】
開始剤としては1価のアルコールや2価アルコール、多価アルコール、水酸基を有する各種のオリゴマー等が挙げられ、モノエポキシドとしては、プロピレンオキサイドを主成分として、エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類やブチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類;アリルグリシジルエーテル類;アリールグリシジルエーテル類等が挙げられる。また、触媒としてはKOH、NaOH等のアルカリ触媒、トリフルオロボラン−エーテラート等の酸性触媒、アルミノポルフィリン金属錯体やシアン化コバルト亜鉛−グライム錯体触媒等の複合金属シアン化物錯体触媒等が用いられる。特に、副反応が少ない点からは複合金属シアン化物錯体触媒が好ましいがそれ以外のものであってもよい。
【0020】
この他、ポリオキシプロピレン系重合体の主鎖骨格は、水酸基末端ポリオキシアルキレン重合体を塩基性化合物、例えばKOH、NaOH、KOCH3、NaOCH3等の存在下、2官能以上のハロゲン化アルキル、例えばCH2Cl2、CH2Br2等による鎖延長等によっても得ることができる。また、2官能や3官能のイソシアネート化合物によって水酸基末端ポリオキシアルキレン重合体を鎖延長する方法等も挙げられる。
【0021】
反応性ケイ素基をポリオキシプロピレン系重合体中に導入する方法としては、例えば、1分子中に一般式(2):
CH2=C(R3)−R2−O− (2)
(式中R2は炭素数1から20の2価の有機基、R3は水素原子または炭素数10以下の炭化水素基)で示される不飽和基を末端に有するポリオキシプロピレン系重合体と、一般式(3):
H−Si(R13-a)Xa (3)
(式中R1,X,aは前記に同じ。)で示される反応性ケイ素基含有化合物とを、VIII族遷移金属触媒の存在下で反応させる方法が好ましい。
【0022】
これ以外にも、水酸基末端ポリオキシプロピレン重合体と反応性ケイ素基含有イソシアネート化合物との反応や、イソシアネート基末端ポリオキシプロピレン重合体と反応性ケイ素基含有アミン化合物との反応、イソシアネート基末端ポリオキシプロピレン重合体と反応性ケイ素基含有メルカプタン化合物との反応等によっても得ることができる。
【0023】
末端に一般式(2)で示される不飽和基を有するポリオキシプロピレン系重合体の製造法としては、従来公知の方法を用いればよく、例えば水酸基末端ポリオキシプロピレン系重合体に不飽和結合を有する化合物を反応させて、エーテル結合、エステル結合、ウレタン結合、カーボネート結合等により結合させる方法等が挙げられる。例えばエーテル結合により不飽和基を導入する場合は、ポリオキシプロピレン重合体の水酸基末端のメタルオキシ化により−OM(MはNaまたはK等)を生成した後、一般式(4):
CH2=C(R3)−R2−X2 (4)
(式中R2,R3は前記に同じ。X2はハロゲン原子)で示される不飽和基含有化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0024】
一般式(4)で示される不飽和基含有化合物の具体例としては、CH2=CH−CH2−Cl、CH2=CH−CH2−Br、CH2=CH−C24−Cl、CH2=C(CH3)−CH2−Cl等が挙げられが、反応性の点よりCH2=CH−CH2−Cl、CH2=C(CH3)−CH2−Clが特に好ましい。
【0025】
不飽和基の導入方法としては、これ以外にCH2=CH−CH2−基やCH2=C(CH3)−CH2−基等を有するイソシアネート化合物、カルボン酸、エポキシ化合物を用いることもできる。
【0026】
VIII族遷移金属触媒としては、例えば、H2PtCl6・6H2O、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体、Ptメタル、RhCl(PPh33、RhCl3、Rh/Al23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2等が挙げられるが、ヒドロシリル化の反応性の点から、H2PtCl6・6H2O、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体のいずれかであることが特に好ましい。
この様な製造法は、例えば、特許第1396791号、特許第1727750号、特許第2135751号、特許第2995568号等の各公報に記載されている。
【0027】
<液状エポキシ樹脂(C)>
本発明の液状エポキシ樹脂(C)は、常温(15〜25℃の温度)で液状であり、粘度が0.5〜5Pa・s/25℃の範囲であるエポキシ樹脂であり、分子内に2個以上のエポキシ基を含むポリマーあるいはオリゴマー、およびそのエポキシ基の開環反応によって生成するポリマーあるいはオリゴマーが挙げられる。さらに、この液状エポキシ樹脂(C)は、エポキシ当量が、100〜2000(g/equiv)、好ましくは150〜1000(g/equiv)であることが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる液状エポキシ樹脂(C)からは、後述するエポキシ基含有反応性希釈剤(D)が除かれるものとする。
【0029】
このような液状エポキシ樹脂(C)を含むことにより、機械物性が優れることに加え、含浸性に優れ、さらに基材との付着性、耐水性、防食性に優れた硬化性組成物を形成することができるため好ましい。
【0030】
このような液状エポキシ樹脂(C)としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、さらにはビスフェノールAタイプ、Fタイプのエポキシ樹脂が好ましく、特にビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0031】
本発明においては、このような液状エポキシ樹脂(C)は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。このように2種以上の液状エポキシ樹脂を組み合わせて用いる場合には、液状エポキシ樹脂(C)の分子量、エポキシ当量(g/equiv)は、何れもその平均値で示す。
【0032】
このような液状エポキシ樹脂(C)のうちでは、いわゆるビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量150〜1000(g/equiv))が好ましい。
【0033】
特に好ましく用いられるビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂としては、前記例示も含めて、たとえばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリプロピレンオキシドジグリシジルエーテル、ビスフェノールAエチレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAプロピレンオキシドジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型ジグリシジルエーテルなどの縮重合物が挙げられる。
本発明においては、このような液状エポキシ樹脂(C)は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。このように2種以上の液状エポキシ樹脂(C)を組み合わせて用いる場合には、液状エポキシ樹脂(C)の分子量、エポキシ当量(g/equiv)は、何れもその平均値で示す。
【0034】
代表的な前記エポキシ樹脂としては、「エピコート828(商品名),一般名:ビスフェノールAジグリシジルエーテル」(シェル(株)製、重量平均分子量約360、エポキシ当量180〜190、粘度1.2〜1.5Pa・s/25℃)、「エポトートYDF−170(商品名)、一般名:ビスフェノールFジグリシジルエーテル」(東都化成(株)製、エポキシ当量160〜180、粘度2.0〜5.0Pa・s)、「フレップ50(商品名)」(東レチオコール(株)製、エポキシ当量約330、粘度約2.7Pa・s/25℃)、「フレップ60(商品名)」(東レチオコール(株)製、エポキシ当量約280、粘度約1.7Pa・s/25℃)などを挙げることができる。本発明においては、これらエポキシ樹脂を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0035】
本発明の液状エポキシ樹脂(C)は、(A)と(B)の合計100重量部に対し、25〜100重量部の範囲で配合することが好ましく、50〜75重量部の範囲で配合することがより好ましい。(A)と(B)の合計100重量部に対し、25重量部より少なくなると、得られる組成物の機械特性やコンクリートとの接着性が悪化する傾向にあり、100重量部より多くなると、得られる組成物が硬くなり弾性が損なわれる傾向にある。
【0036】
<エポキシ基含有反応性希釈剤(D)>
本発明で用いられるエポキシ基含有反応性希釈剤(D)は、粘度が0.001〜0.06Pa・s/25℃以下である。
【0037】
本発明に用いられるエポキシ基含有反応性希釈剤(D)からは、前述の液状エポキシ樹脂(C)が除かれるものとする。
【0038】
このようなエポキシ基含有反応性希釈剤(D)としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数1〜13)、バーサチック酸(Versatic acid)グリシジルエステル[R456C−COO−Gly、R4からR6炭素数の合計がC8〜C10であるアルキル基 、Gly:グリシジル基]、α-オレフィンエポキサイド(CH3-(CH2n-Gly、n =11〜13、Gly:グリシジル基)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH26-O-Gly、Gly:同上)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(Gly-O-CH2-C(CH32-CH2-O-Gly、Gly:同上)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(CH3-CH2-C(CH2-O-Gly)3、Gly:同上)、アルキルフェノールグリシジルエーテル[アルキル基の炭素数1〜10、好ましくは1〜5、例:メチルフェノールグリシジルエーテル、エチルフェノールグリシジルエーテル、プロピルフェノールグリシジルエーテル]、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH2CH2O)n-O-Gly、n =1〜7、Gly:同上)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH2CH(CH3)O)n-O-Gly、n =1〜7、Gly:同上)等が挙げられる。
【0039】
これらのエポキシ基含有反応性希釈剤(D)のうちでは、前記アルキルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数1〜13)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH26-O-Gly、Gly:同上)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH2CH(CH3)O)n-O-Gly、n =1〜7、Gly:同上)が低粘度であり、希釈効果を発揮できるため好ましく、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH2CH(CH3)O)n-O-Gly、n =1〜7、Gly:同上)が(A)成分および(B)成分のポリオキシプロピレン系重合体との相溶性が良く、得られる硬化性組成物の機械物性に優れることから更に好ましい。
【0040】
エポキシ基含有反応性希釈剤(D)の分子量としては50〜1500が好ましく、100〜1000以下がさらに好ましく、150〜500以下がさらにより好ましい。
これらエポキシ基含有反応性希釈剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
このようなエポキシ基含有反応性希釈剤としては、具体的には、「エポライト400P:ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH2CH(CH3)O)n-O-Gly、n =7、Gly:同上)」(共栄社化学(株)製、粘度0.04〜0.06Pa・s/25℃)、「エポライトM1230:アルキルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数12〜13)」(共栄社化学(株)製、粘度0.005〜0.015Pa・s/25℃)、「エポライト1600:1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH26-O-Gly、Gly:同上)」(共栄社化学(株)製、粘度0.015〜0.025Pa・s/25℃)などを挙げることができる。本発明においては、これらエポキシ樹脂を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0042】
このようなエポキシ基含有反応性希釈剤(D)は、低温での硬化促進作用の向上にも寄与でき、さらに、それ自体もエポキシ樹脂硬化剤(E)と反応するため、硬化後に可塑剤がコンクリート中に吸収されて硬化物が硬くなってしまうことを抑制することができる。
【0043】
本発明のエポキシ基含有反応性希釈剤(D)は、(A)と(B)の合計100重量部に対し、1〜100重量部の範囲で配合することが好ましく、1〜50重量部の範囲で配合することがより好ましい。(A)と(B)の合計100重量部に対し、1重量部より少なくなると、希釈剤として低粘度化する効果が得られなくなる傾向にあり、150重量部より多くなると、得られる組成物の機械特性が悪化する傾向にある。
【0044】
<(E)エポキシ樹脂硬化剤>
本発明の(E)成分であるエポキシ樹脂硬化剤としては、例えば脂肪族アミンや脂環族アミン、芳香族アミン、ポリアミノアミド、イミダゾール、ジシアンジアミド、エポキシ変性アミン、マンニッヒ変性アミン、マイケル付加変性アミン、ケチミン、酸無水物、アルコール類、フェノール類等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0045】
また、使用量は(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対し、通常0.1〜20重量部程度の範囲、好ましくは0.2〜10重量部程度の範囲が好ましい。0.1重量部未満では硬化性が悪化する傾向にあり、20重量部を超えると得られる組成物の機械特性が悪化する傾向にある。
【0046】
<(F)シランカップリング剤>
本発明の(F)成分であるシランカップリング剤としては、従来公知のものを広く使用することができる。例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β−カルボキシルエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(N−カルボキシルメチルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;アミノ基含有シラン類と各種ケトンとの脱水縮合により得られるケチミン化シラン類;アミノ基含有シラン類とエポキシ基含有シラン類との反応物;メルカプト基含有シラン類とエポキシ基含有シラン類との反応物;アミノ基含有シラン類とエポキシ樹脂との反応物;メルカプト基含有シラン類とエポキシ樹脂との反応物;テトラエトキシシラン、テトラエトキシシラン4量体、テトラエトキシシラン6量体等のエチルシリケート類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルシラン類;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシシラン類等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。また、使用量は(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対し、通常0.1〜20重量部程度の範囲、好ましくは0.2〜10重量部程度の範囲が好ましい。0.1重量部未満では接着性の低下や貯蔵安定性が悪化する傾向にあり、20重量部を超えると硬化阻害が起こる傾向にある。
【0047】
<(G)縮合触媒>
本発明の(G)成分である縮合触媒の具体例としては、反応性ケイ素基含有重合体の縮合に用いられる従来公知のものを広く使用でき、例えば、ジブチルスズジラウレート、ビス(ジブチルスズラウレート)オキサイド、ジブチルスズマレート、ジブチルスズジアセテート、2−エチルヘキサン酸スズ、ナフテン酸スズ、バーサチック酸スズ、ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチルスズオキサイドとマレイン酸エステルとの反応物、ジブチルスズオキサイドとエチルシリケートとの反応物、ジブチルスズビスアセチルアセトナート等の有機スズ化合物類;テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート);オクチル酸亜鉛;オクチルアミン、ラウリルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン化合物、あるいはこれらのカルボン酸塩;酸性リン酸エステル;酸性リン酸エステルとアミンの反応物;等のシラノール縮合触媒、更には他の酸性触媒、塩基性触媒等の公知のシラノール縮合触媒等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。これら縮合触媒の中では、硬化性や貯蔵安定性、物性バランスの点から、有機錫系化合物が好ましい。特に硬化速度や貯蔵安定性の点より、4価のスズ触媒が好ましい。使用量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対し、通常0.1〜10重量部程度の範囲、好ましくは0.2〜6重量部の範囲が好ましい。0.1重量部未満では硬化性が不十分となる傾向にあり、10重量部を超えると接着性の低下等が起こる傾向にある。
【0048】
本発明のコンクリート補強含浸用硬化性組成物には、必要に応じて種々の充填剤、可塑剤、溶剤やその他の添加剤等を添加することができる。
【0049】
充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、カーボンブラック等が挙げられる。これらの充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0050】
可塑剤の例としては、フタル酸エステル類や非芳香族2塩基酸エステル類、リン酸エステル等が挙げられ、比較的高分子量タイプの可塑剤としては、例えば2塩基酸と2価アルコールとのポリエステル類、ポリプロピレングリコールやその誘導体、ポリスチレン類等が挙げられる。これら可塑剤は単独もしくは混合して使用できる。
【0051】
溶剤には、炭化水素類、酢酸エステル類、アルコール類、エーテル類、ケトン類のごとき非反応性のものが挙げられ、このような溶剤であれば特に限定はない。
【0052】
その他の添加剤としては、例えば、水添ヒマシ油、有機ベントナイト、ステアリン酸カルシウム等のタレ防止剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、接着付与剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
本発明のコンクリート含浸用硬化性組成物の粘度は1.5Pa・s/25℃以下であること必要とする。粘度が1.5Pa・s/25℃より高くなると、コンクリートの隙間や亀裂への含浸性が不十分となり、十分な補修や補強効果を発揮しなくなるので好ましくない。
【0054】
本発明のコンクリート含浸用硬化性組成物の製造法は特に限定されず、各成分を配合し、ミキサー、ロール又はニーダー等を用いて混練りする方法、溶剤を用いて各成分を溶解させ混合する等の通常の方法が採用されうる。またこの組成物は1成分型あるいは2成分型いずれの組成物とすることも可能である。
【0055】
本発明のコンクリート含浸用硬化性組成物の用途は特に限定されるものではないが例えば、建築、土木のコンクリート保護や補強、補修用途などが挙げられる。その中でも特に補修や補強に加え、振動によるクラックを抑制できる観点から道路橋床版用途として好適に用いることができる。また、本発明のコンクリート含浸用硬化性組成物の塗工方法は特に限定されず、ロールコーターやダイコーター、ビード塗布、スプレーなど従来公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0056】
本発明のコンクリート含浸用硬化性組成物を実施例に基づいて説明する。
【0057】
以下合成例、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの合成例、実施例に限定されるものではない。
【0058】
以下に有機重合体(A)の合成例を示す。
【0059】
(合成例1)
分子量約2,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量が14,200(送液システムとして東ソー製HLC−8120GPCを用い、カラムは東ソー製TSK−GEL Hタイプを用い、溶媒はTHFを用いて測定したポリスチレン換算分子量)のポリオキシプロピレングリコールを得た。続いてこの水酸基末端ポリオキシプロピレングリコールの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに1.6倍当量の3−クロロ−1−プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。次に得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対して白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)36ppmを加え撹拌しながら、ジメトキシメチルシランをアリル基に対して0.9当量滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下留去することにより、末端がジメトキシメチルシリル基であり、1分子あたりのケイ素基が平均1.5個、数平均分子量が15,000、分子量分布が1.2(前述と同様の方法で換算)である直鎖状の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体(重合体P−1)を得た。
【0060】
(合成例2)
数平均分子量3,000のポリオキシプロピレンジオールを出発原料とし、ポリオキシプロピレンジオールの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去した後、0.67倍当量の塩化メチレンを添加して分子量ジャンプ反応を行った後、さらに1.6倍当量の3−クロロ−1−プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。次に得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対して白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)36ppmを加え撹拌しながら、ジメトキシメチルシランをアリル基に対して0.9当量滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下留去することにより、末端がジメトキシメチルシリル基であり、1分子あたりのケイ素基が平均1.5個、数平均分子量が14,000、分子量分布が2.1(合成例1と同様の方法で算出)である直鎖状の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体(重合体P−2)を得た。
【0061】
以下に有機重合体(B)の合成例を示す。
【0062】
(合成例3)
分子量約4,400(合成例1と同様の方法で算出)のポリオキシプロピレンジオールの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに1.6倍当量の3−クロロ−1−プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。次に得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対して白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)36ppmを加え撹拌しながら、ジメトキシメチルシランをアリル基に対して0.9当量滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下留去することにより、末端がジメトキシメチルシリル基であり、1分子あたりのケイ素基が平均1.5個、数平均分子量が4,500、分子量分布が1.3(前述と同様の方法で換算)である直鎖状の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体(重合体P−3)を得た。
【0063】
(合成例4)
数平均分子量2,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒を用いてプロピレンオキシドを重合することにより数平均分子量8,400(合成例1と同様の方法で算出)のポリオキシプロピレンジオールを得た。続いてこの水酸基末端ポリオキシプロピレングリコールの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、さらに1.6倍当量の3−クロロ−1−プロペンを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。次に得られたアリル基末端ポリオキシプロピレン重合体100重量部に対して白金ジビニルジシロキサン錯体(白金換算で3重量%のイソプロパノール溶液)36ppmを加え撹拌しながら、ジメトキシメチルシランをアリル基に対して0.9当量滴下した。その混合溶液を90℃で2時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下留去することにより、末端がジメトキシメチルシリル基であり、1分子あたりのケイ素基が平均1.5個、数平均分子量が8,900、分子量分布が1.3(前述と同様の方法で換算)である直鎖状の反応性ケイ素基含有ポリオキシプロピレン系重合体(重合体P−4)を得た。
【0064】
以下に実施例および比較例を示す(実施例1〜4、比較例1〜13)。
(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)成分を表1に示す割合で混合しコンクリート含浸用硬化性組成物を調整した。
ここで、828:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学(株)製)、エポライトM−1230:アルキルグリシジルエーテル(アルキル基の炭素数12〜13、共栄社化学(株)製)、エポライト200P:トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学(株)製)、エポライト1600:1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(共栄社化学(株)製)、TAP:2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチルフェノール)、A1120:N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、MSCAT−02:DINP変性錫系触媒(日本化学産業(株)製)を表す。
【0065】
得られたコンクリート含浸用硬化性組成物を用いて下記の評価を行った。
●粘度
B型粘度計(BM2、ローターNo.3)を用いて、回転数30rpmで(A)から(G)成分を含有した硬化性組成物の粘度を測定した。測定は硬化性組成物の配合直後に行った。
●引張物性
厚さ3mmの枠の中に硬化性組成物を流し込んだ後、23℃湿度50%で3日間、更に50℃オーブンで4日間養生してシートを作製した後、JIS3号ダンベルを打ち抜き、引張り速度200mm/minにおける機械特性をオートグラフで測定した。
●含浸性
高さ15cmのコンクリートブロック1対を幅0.1mmの隙間を開けて重ね合わせ上面以外の端部を透明なシール材で塞いだものを作製し、上面から本発明の硬化性組成物を流し込み、底まで浸透する時間を測定することで、コンクリートの隙間や亀裂の中に樹脂が自然浸透するかどうかを評価した。施工現場での施工性を考慮して30分以内に底まで浸透したものを○、45分以内に底まで浸透したものを△、それ以上のものを×として判定した。
●繰り返し疲労試験
JISA1439に準拠して耐久性試験を行った。モルタル板を被着体として、2枚のスペーサーを組み合わせて、12mm×12mm×50mmのスペースを作り、その中に前記のコンクリート含浸用硬化性組成物を充填し、23℃湿度50%で3日間、更に50℃オーブンで4日間養生して試験体を作製した。作製した試験体を、4〜6回/分の速度で、幅±0.5mmに24時間、拡大・縮小した。試験後にモルタルや組成物の破壊がなく、組成物のモルタルからの剥離がないものを○、モルタルや組成物の破壊や組成物の剥離が見られるものを×して判定した。
【0066】
得られた結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、実施例に記載のコンクリート含浸用硬化性組成物は1.5Pa・s/25℃以下の粘度で優れたコンクリートの隙間や亀裂への含浸性を示し、引張り試験で高伸びとなっており、繰り返し疲労試験にて剥離が観察されず、弾性に優れると言える。このことから、コンクリート含浸用硬化性組成物として好適に使用できることが分かる。