(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ワイパ制御装置の構成)
本発明の実施の形態に係るワイパ制御装置10は、オート制御モード及びマニュアル操作により車両1のワイパ5の制御を行なうワイパ制御部100と、車両1のフロントガラス3を撮像する前方監視カメラ50と、オート制御モード中にマニュアル操作が実行されたとき、前方監視カメラ50により撮像されたフロントガラス3の画像を画像処理し、この画像処理により得られた学習データを記憶する記憶部160と、を有し、ワイパ制御部100は、オート制御モードにおいて、記憶部160に蓄積された学習データを参照してオート制御モードを実行する構成とされている。
【0013】
ワイパ制御部100は、マイコン110による所定のフローチャートにしたがって、画像処理部120でフロントガラス3の画像を画像処理すると共に、記憶部160に学習データとして蓄積する。また、ワイパ制御部100は、オート制御モードを実行するにあたり、記憶部160に蓄積された学習データを参照して、マイコン110による所定のフローチャートにしたがって、オート制御モードを実行する。
【0014】
本発明の実施の形態に係るワイパ制御装置10は、運転者がフロントガラスを通して見る前方の視覚情報、すなわち、フロントガラス上の雨滴またはフロントガラス上の前方視界の障害に基づいて、オート制御モード設定時のマニュアル操作履歴を学習し、運転者の思いとワイパ動作のオート払拭のタイミングが一致するオート制御モードを実現するものである。
【0015】
(ワイパ制御装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態に係るワイパ制御装置を説明するために示す車両内部の全体斜視図である。車両1の車両ルーフ2の内側(車内)には、前方監視カメラ50が設置されている。
【0016】
前方監視カメラ50は、CCD、MOS等の撮像装置が使用でき、撮像した動画、静止画をワイパ制御部100にデータ出力する。なお、この前方監視カメラ50は、他の用途、例えば、前方車両との車間距離の計測、接近検出等に使用する車載カメラと兼用することも可能である。前方監視カメラ50は、フロントガラス3を撮像可能とされている。フロントガラス3の全体、または、その一部を撮像できるものであればよい。
【0017】
運転席4のステアリング60の付近には、ワイパ操作スイッチ70が設置されている。通常、右ハンドル車の場合は、ステアリング60の左側に、レバー式のワイパ操作スイッチ70が設置されている。ワイパ操作スイッチ70は、レバーの傾倒操作または回転ツマミスイッチの回転操作により、オート制御モード、マニュアル操作によるワイパ操作オンオフ、強弱操作、間欠操作等を実行できるものとされている。本実施の形態に係るワイパ制御装置10では、オート制御モードの設定時に、マニュアル操作によりワイパ操作オンオフ、強弱操作、間欠操作等によりワイパ5を操作できる。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態に係るワイパ制御装置の構成ブロック図である。ワイパ制御部100には、前方監視カメラ50、ワイパ操作スイッチ70、ワイパ駆動部150、記憶部160、及び、外部センサ200が接続されている。
【0019】
ワイパ制御部100は、マイコン110により所定のプログラムにより種々の判断、処理、制御等を行なうと共に、前方監視カメラ50からの画像データを画像処理するための画像処理部120を有しており、ワイパ制御ECU(Electronic Control Unit)として機能する。
【0020】
記憶部160は、ワイパ制御部100による画像処理で使用される数値データ、画像データが記憶され、後述するマニュアル操作時の学習データが随時蓄積される。これらのデータは、必要に応じてワイパ制御部100からライブラリとして参照される。なお、記憶部160は、ワイパ制御部100の中に設けられていてもよい。
【0021】
ワイパ操作スイッチ70は、通常、ステアリング60の脇に装着されている、レバー動作及び回転ツマミ動作によりワイパ5を駆動操作するものである。ワイパ操作スイッチ70は、オート制御モード(AUTO)に設定しておくことで、降雨時には自動的にワイパ5が駆動され、フロントガラス3のAUTO払拭を実行する。ワイパ操作スイッチ70は、このオート制御モード時において、レバーの傾倒操作または回転ツマミスイッチの回転操作により、ワイパ操作オン又はオフ、強弱操作、間欠操作等のマニュアル操作を実行できる。
【0022】
ワイパ駆動部150は、ワイパ制御部100からの制御により、ワイパ5を所定の制御モードで駆動する。
【0023】
外部センサ200は、その出力はワイパ5をオート制御モード(AUTO)で駆動するときのオート制御因子とされる。例えば、雨滴センサ、車速センサ、外気温度センサ等である。これらの外部センサ200のセンサ出力は、ワイパ制御部100に入力され、オート制御モード(AUTO)に設定されているときにどのようなオート制御を実行するかの判断パラメータとされる。
【0024】
(通常オート制御モード)
通常オート制御は、雨滴センサ、車速センサ、外気温度センサ等の外部センサ200の出力であるオート制御因子に基づいて、ワイパ制御部100が所定のアルゴリズムに基づき、ワイパ5の駆動オン、オフやワイパ駆動速度、駆動間隔等を判断してオート制御を実行するものである。
【0025】
(学習オート制御モード)
学習オート制御モードは、記憶部160に蓄積された学習データを参照してオート制御モードを実行するものである。すなわち、通常オート制御モードのオート制御因子に、記憶部160に蓄積された学習データとしてのフロントガラス上の雨滴に基づく因子、フロントガラス上の前方視界の障害に基づく因子等を判断パラメータとして付加し、これらの因子を判断パラメータとして、オート制御を実行するものである。
【0026】
(学習データの記憶部160への蓄積)
オート制御モード中にマニュアル操作が実行されたとき、前方監視カメラ50により撮像されたフロントガラス3の画像を画像処理し、この画像処理により得られた学習データを記憶部に記憶させて学習データとして蓄積する。
【0027】
(学習データとしてのフロントガラス上の雨滴に基づく因子)
学習データとしてのフロントガラス上の雨滴に基づく因子は、例えば、フロントガラス上の雨滴の量、雨滴の大小、滴下位置等が挙げられる。
【0028】
図3(a)は、フロントガラス上の雨滴に基づくものの例として、前方監視カメラによるフロントガラスの雨滴の分布画像、(b)は、画像処理を施す領域を示すトリミング画像、(c)は、画像処理後の2値化された処理画像である。
【0029】
図3(a)に示すように、降雨時にはフロントガラス3上に雨滴が付着する。オート制御モード中にマニュアル操作が実行されたときのフロントガラス3を前方監視カメラ50で撮像した画像が
図3(a)である。前方監視カメラ50はフロントガラス3の全域を撮像するが、画像処理して学習データとする画像は、全体領域の中のトリミング領域31とすることができる。このトリミング領域31は、フロントガラス3のほぼ全域、運転席(D席)4の前面部分、フロントガラス中央部分、助手席(P席)の前面部分等とすることができる。以下においては、
図3(a)に示すように、運転席(D席)4の前面部分のトリミング領域31を画像処理するものとして説明する。
【0030】
図3(b)は、トリミング領域31の画像であり、グレースケールで撮像された元画像である。雨滴300は、光の透過、反射により、透明部分、不透明部分が分布する。
【0031】
図3(c)は、トリミング領域31の元画像を、ワイパ制御部100の画像処理部120により、ある閾値で2値化して白黒画像32にしたものである。これにより、グレースケールの雨滴300の画像は、白黒2値の雨滴310に画像処理される。この白黒画像32により、領域内での黒部分の面積率を数値として算出して、記憶部160に学習データとして記憶することができる。これにより、所定の雨滴の量、雨滴の大小、あるいは、雨量に達したときに運転者がマニュアル操作でワイパ5の払拭動作を行なったことが学習できる。この学習データは、次のオート制御モード時に、ワイパ制御部100のマイコン110から記憶部160にライブラリとして参照可能となる。
【0032】
また、この白黒2値画像をパターンマッチングのテンプレート画像として記憶部に学習データとして記憶することができる。これにより、雨滴の分布を学習データとして記憶部160に記憶することができ、所定の雨滴の分布パターンに達したときに運転者がマニュアル操作でワイパ5の払拭動作を行なったことが学習できる。この学習データは、次のオート制御モード時に、ワイパ制御部100のマイコン110から記憶部160にライブラリとして参照可能となる。
【0033】
(学習データとしてのフロントガラス上の前方視界の障害に基づく因子)
学習データとしてのフロントガラス上の前方視界の障害に基づく因子は、例えば、油膜付着による夜間街灯反射ぎらつき量、ぎらつき部位、撥水加工による水滴の流れ量、その位置、対向車の泥はね、雨滴以外の付着等が挙げられる。
【0034】
図4(a)は、フロントガラス上の前方視界の障害に基づくものの例として、前方監視カメラによるフロントガラスの水滴の流れ画像、(b)は、画像処理を施す領域を示すトリミング画像、(c)は、画像処理後の2値化された処理画像である。
【0035】
図4(a)に示すように、降雨時にはフロントガラス3上に雨滴の流れが雨滴の流動軌跡330として付着する。オート制御モード中にマニュアル操作が実行されたときのフロントガラス3を前方監視カメラ50で撮像した画像が
図4(a)である。前方監視カメラ50はフロントガラス3の全域を撮像するが、画像処理して学習データとする画像は、全体領域の中のトリミング領域33とすることができる。このトリミング領域33は、フロントガラス3のほぼ全域、運転席(D席)4の前面部分、フロントガラス中央部分、助手席(P席)の前面部分等とすることができる。以下においては、
図4(a)に示すように、運転席(D席)4の前面部分のトリミング領域33を画像処理するものとして説明する。
【0036】
図4(b)は、トリミング領域33の画像であり、グレースケールで撮像された元画像である。雨滴の流動軌跡330は、光の透過、反射により、透明部分、不透明部分が分布する。
【0037】
図4(c)は、トリミング領域33の元画像を、ワイパ制御部100の画像処理部120により、ある閾値で2値化して白黒画像34にしたものである。これにより、グレースケールの雨滴の流動軌跡330の画像は、白黒2値の雨滴の流動軌跡340に画像処理される。この白黒画像34により、領域内での黒部分の面積率を算出して記憶部160に学習データとして記憶することができる。これにより、所定の雨滴の流れの量に達したとき、すなわち、所定のフロントガラス上の前方視界の障害時に運転者がマニュアル操作でワイパ5の払拭動作を行なったことが学習できる。この学習データは、次のオート制御モード時に、ワイパ制御部100のマイコン110から記憶部160にライブラリとして参照可能となる。
【0038】
また、この白黒2値画像をパターンマッチングのテンプレート画像として記憶部に学習データとして記憶することができる。これにより、雨滴の流動軌跡のパターンを学習データとして記憶部160に記憶することができ、所定の雨滴の流動軌跡のパターンに達したときに運転者がマニュアル操作でワイパ5の払拭動作を行なったことが学習できる。この学習データは、次のオート制御モード時に、ワイパ制御部100のマイコン110から記憶部160にライブラリとして参照可能となる。
【0039】
フロントガラス上の前方視界の障害は、上記示した雨滴の流れ以外に、例えば、油膜付着による夜間街灯反射ぎらつき量、ぎらつき部位、撥水加工による水滴の流れ量、その位置、対向車の泥はね、雨滴以外の付着等がある。これらの前方視界の障害も、上記と同様にして、数値、あるいはパターンマッチングのテンプレート画像として記憶部に学習データとして記憶することができる。これにより、種々のフロントガラス上の前方視界の障害に達したときに運転者がマニュアル操作でワイパ5の払拭動作を行なったことが学習できる。この学習データは、次のオート制御モード時に、ワイパ制御部100のマイコン110から記憶部160にライブラリとして参照可能となる。
【0040】
図5は、本発明の実施の形態に係るワイパ制御装置の学習オート制御モードの動作を示すフローチャートである。
【0041】
ワイパ制御部100は、マイコン110によりワイパ操作スイッチ70のスイッチ位置がAUTOモードかどうかを判断する(ステップ1、S1)。スイッチ位置がAUTOモードの場合はステップ2へ進み、スイッチ位置がAUTOモードでない場合は、繰り返してワイパ操作スイッチ70のスイッチ位置(AUTOモード)を監視、判断する。
【0042】
ワイパ操作スイッチ70がオートモードの位置に設定され、学習オート制御モードの動作がスタートし、ワイパのオート制御が実行される(ステップ2、S2)。学習オート制御モードは、記憶部160に蓄積された学習データを参照してオート制御モードを実行するものである。すなわち、通常オート制御モードのオート制御因子に、記憶部160に蓄積された学習データとしてのフロントガラス上の雨滴に基づく因子、フロントガラス上の前方視界の障害に基づく因子等を判断パラメータとして付加し、これらの因子を判断パラメータとして、オート制御を実行する。
【0043】
ワイパ制御部100は、マイコン110により、手動によりワイパ操作スイッチ70がマニュアル操作されたかどうかを判断する(ステップ3、S3)。手動によりワイパ操作スイッチ70がされたと判断された場合は、ステップ4へ進み、手動によりワイパ操作スイッチ70がされたと判断さ
れない場合は、ステップ2のワイパのオート制御に戻る。
【0044】
ワイパ制御部100は、マイコン110により所定のプログラム(アルゴリズム)により、前方監視カメラ50の画像を取り込み(ステップ4、S4)、画像処理部120により学習データとして利用できる態様に画像処理を施し(ステップ5、S5)、手動操作時のカメラ画像を記憶部160に学習データとして記憶させる(ステップ6、S6)。
【0045】
上記のワイパ制御部100により一連の学習動作の後、ステップ2のワイパのオート制御に戻る。ステップ2のワイパのオート制御は、上記のステップ4〜6の学習により蓄積された学習データを追加したデータに基づいてワイパのオート制御が実行される。
【0046】
上記の一連のフローは、割り込み信号による中止命令があるまで実行される。
【0047】
〔実施の形態の効果〕
本発明の実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
(1)オート制御モード中にワイパがマニュアル操作された時に、前方監視カメラ50によるフロントガラス3の画像を、フロントガラス上の雨滴に基づく因子、フロントガラス上の前方視界の障害に基づく因子の持つ特徴として学習し、それをオート制御モードのワイパ動作の条件として組み込むので、ドライバー(運転者)の思いに近いオート制御を行なうことが可能となる。
(2)オート制御モードで学習データが蓄積されるので、ドライバー(運転者)の思いに近いオート制御を行なう精度が向上していく。
(3)フロントガラス上の雨滴に基づく因子、フロントガラス上の前方視界の障害に基づく因子等を前方監視カメラ50によるフロントガラス3の画像として記憶するので、例えば、数値の比較、パターンマッチング等のワイパ制御部100における種々の判断が可能となる。
【0048】
以上、本発明のワイパ制御装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。