【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1から6に記載のX線検出器と、請求項13に記載の配置とにより、達成される。ここで、本発明によるX線検出器の有利な実施形態または配置は、各従属請求項から生じる。
【0010】
本発明は、まず、以下に概要が説明され、続いて、個々の実施形態を参照して詳細が説明される。ここで、個々の実施形態において、互いに組み合わされて示される個々の特徴及び/または個々のアセンブリは、本発明の枠内の実施形態で特に示される構造において実現される必要はなく、むしろ他の構造で実現されてもよい。示される構成要素及び/または特徴のそれぞれは、特に、他の構成要素及び/または特徴と異なる方法で組み合わされてもよく、省略されてもよい。一実施形態において示される個々の特徴それぞれは、特に、単独の特徴として、すなわち、示される対応実施形態の他の個々の特徴を備えることなく、実現されてもよく、それ自体が既知の従来技術に亘る利点をもたらしてもよい。
【0011】
以下において、本発明の枠内で、構成要素(例えばX線センサー)が他の構成要素(例えばセンサーキャリア)上に配置される、または、他の二つの構成要素の間に配置される(例えばX線センサーと基質との間のX線センサー)と記載されている場合、これは、他に記載がなければ、複数の構成要素が互いに強固に接続されていることを示している。しかしながら、このことは、この接続が、例えば、互いに並ぶ二つの構成要素が互いに直接隣接する必要がないように、二つの構成要素の間の薄い導電性接着層によって実現されることを排除するものではない。
【0012】
本発明による(第一の)X線検出器は、X線放射線を電荷キャリアに直接変換するX線センサーを含む(以降において、複数のX線センサーが存在する場合は、これらのX線センサーも第一のX線センサーと呼ぶ)。信号評価電子回路が、X線センサーから信号を得て、得られた信号を処理するために、この(第一の)X線センサーに、電気的に接続される。この信号評価電子回路は、特に、一つ以上の集積回路を含んでもよい(回路は、例えばASICとして形成可能である)。信号評価電子回路を防護するために、用いるX線スペクトルのX線光子(40から300keVの間の最大エネルギー)を容易に吸収するX線スペクトル材料が、さらに備えられる。この吸収体は、例えば、ZrO
2セラミック材料から(例えば、鉛からも)形成可能である。さらに、X線吸収体に対してX線センサーを配置可能なように形成され配置される、(少なくとも)一つのセンサーキャリアが、備えられる。
【0013】
本発明によれば、X線放射線の入射方向で見た場合、信号評価電子回路は、一方では、X線吸収体の後方で、このX線吸収体のX線放射線の影の中に配置される(ここで、X線放射線の影は、X線放射線の入射方向に垂直な平面におけるX線吸収体の最大断面積の平行投影により、X線放射線の入射方向において生じる空間領域である)。他方では、X線センサーは、X線センサーが、(X線放射線の入射方向で見た場合)少なくとも部分的にX線吸収体の後方に配置されるように、センサーキャリアにより、(例えばその上への配置により)配置される。しかしながら、信号評価電子回路とは異なり、X線センサーは、センサーキャリアを用いた適切な位置調整により、X線吸収体のX線放射線の影の外側に配置される。
【0014】
このX線検出器の有利な第一の実施形態(これは、以降に紹介される本発明のX線検出器のバリエーションにも適用される)では、(第一の)センサーキャリアは、X線放射線の入射方向で観て、X線吸収体と信号評価電子回路との間に配置可能である。しかしながら、この入射方向で見た場合、まずX線吸収体、続いて評価電子回路、最後にセンサーキャリア(X線センサーがこれにより支持される)を配置することも、一般に同様に考えられる。これは、この構成が、上述した一例のように、X線センサーを、信号評価電子回路に非常に近く配置可能とするためである。
【0015】
さらなる有利な実施形態のバリエーションでは、本発明の(第一の)X線検出器は、特に回路基板として形成される基板を有する。X線吸収体、(少なくとも一つの)センサーキャリア及び信号評価電子回路は、この基板の上に共に配置される。X線放射線の入射方向で見た場合、この配置は、X線吸収体、(一つ以上の)センサーキャリア、及び信号評価装置の順で行われることが好ましい。しかしながら、上述したように、信号評価装置、X線吸収体、少なくとも一つのセンサーキャリアの順で隣接してもよい。
【0016】
さらに、X線放射線の入射方向に垂直に、及び、基板平面に垂直に見た場合に、基板とX線センサーとの間に配置されるセンサーキャリアの材料は、一方では、基板の材料の熱膨張係数と、他方では、X線センサーの熱膨張係数との間にある熱膨張係数を有する(熱膨張係数は、基板の熱膨張係数と、X線センサーの熱膨張係数との丁度中間にあることが好ましい)。このようにして、X線センサーの熱膨張係数は、基板の熱膨張係数に適応可能であり、これは、特に、基板としてのセラミックキャリア上に配置されるX線センサーとしてのGaAs等の脆性材料に(その結果、異なる熱膨張係数を有する双方の材料に)有利である。これは、GaAsが、上述した熱適応のない説明構成おいて、X線検出器の動作で生じる温度変化により、ストレスクラックが生じ得る脆性材料であるためである。
【0017】
(第一の)センサーキャリアは、センサーキャリアがX線吸収体のX線放射線の影の中に適合する、すなわち、この影の中に完全に配置されるように、X線放射線の入射方向に垂直に、及び、基板平面に垂直に見た場合、X線吸収体と同じ熱膨張係数を有することが有利である。
【0018】
さらなる特に好ましいバリエーションでは、本発明による(第一の)X線検出器は、エネルギー選択的直接変換X線検出器(あるいは、以降において、X線直列センサーと呼ばれる)として形成される。この目的のために、検出器は、X線放射線を電荷キャリアに直接変換するとともに、信号取得及び信号評価のために、信号評価電子回路に電気的に接続される、さらなる、第二のX線センサーを含む。また、この第二のX線センサーを上述したX線吸収体に対して位置調整するために形成され配置される、さらなるセンサーキャリア(第二のセンサーキャリア)が備えられる。この第二のセンサーキャリアは、第一のセンサーキャリアに対して上述したように、その材料に熱膨張係数に関して、第二のX線センサーの熱膨張係数が基板の熱膨張係数に適応されるように、設けられることが好ましい。
【0019】
第二のX線センサーは、X線放射線の入射方向で観て、第一のX線センサーの後方に配置され、第二のセンサーキャリアにより(例えば、第二のセンサーキャリアが第二のX線センサーの下に配置される)、X線吸収体の後方で、そのX線放射線の影の外側に配置される。第一のセンサー及び第一のセンサーキャリアに対する完全に類似する方法で、第二のセンサーキャリアは、第二のセンサーキャリアが完全にX線吸収体のX線放射線の影の中に配置され、第二のセンサーキャリアにより支持される第二のX線センサーを完全にX線吸収体のX線放射線の影の外側に持ち上げるように、X線放射線の入射方向に垂直に、及び、基板平面に垂直に見た場合に、X線吸収体(及び随意で第一のX線センサー)と同じ熱膨張係数を有してもよい。
【0020】
さらなる有利なバリエーションでは、第一及び/または第二のセンサーキャリア(好ましくは双方のセンサーキャリア)は、導電性で、及び、第一の及び/または第二のX線センサーの選択的な電圧供給のために設けられる。例えば、セラミックの基板とGaAsのX線センサーとの間に配置されるセンサーキャリアは、導電性の構成要素を含むAl
2O
3を含んでもよい(しかしながら、電圧供給は、これに代わり、または、これと組み合わせて、センサーキャリアとX線センサーとの間に導入される、薄い導電性接着層を用いて実現されてもよい)。
【0021】
本発明による(第二の)X線検出器は、以下の構造を有する。このX線検出器は、基板、特に、回路基板と、基板の第一の面に配置される、第一及び第二のX線センサー(双方が、それぞれ、X線放射線を、電荷キャリアに直接変換する)と、(信号取得と信号評価のために)二つのX線センサーに電気的に接続され、好ましくは集積回路として設けられる、(基板の第一の面とは反対側に位置する第二の面に配置され、好ましくは二つのX線センサーの反対側に位置する領域に配置される)信号評価電子回路と、信号評価電子回路の防護のために形成され、X線放射線の入射方向で見た場合に、信号評価電子回路の前方において、基板の第二の面に配置される、X線吸収体と、を含む。このX線吸収体は、信号評価装置がこのX線吸収体のX線放射線の影の中に配置されるように、配置される。
【0022】
この(第二の)X線センサーの有利な実施形態のバリエーションは、少なくとも一つのX線センサーと、信号評価電子回路との間に、基板を通じて繋がる導電性経路に基づく、(センサー信号を信号評価電子回路に伝達するための)電気的接続を有する。
【0023】
本発明による第一または第二のX線検出器の有利な実施形態のバリエーションは、以下のように実現される。
【0024】
検出器の二つのX線センサーは、入射するX線放射線の異なるスペクトル部位を吸収するために設けることができる。ここで、(入射する放射線に対向する)第一のX線センサーは、低エネルギーの放射線部位を吸収するために設けられることが好ましい。このX線センサーは、この目的のために、シリコンから形成されてもよく、または、シリコンを含んでもよい。そして、(入射するX線放射線から離れ、随意でX線放射線の影の中に配置される)第二のX線センサーは、第一のX線センサーに比べてより高いエネルギーの入射X線放射線部位を吸収するために設けられることが好ましい。第二のX線センサーは、この目的のために、GaAsを含んでもよく、またはGaAsから成ってもよい。従って、二つのX線センサーの二つの半導体材料の原子数または平均原子数は、異なることが有利である。
【0025】
本発明による第一または第二のX線検出器のさらなる有利なバリエーションでは、好ましくはスリット形状の開口部が備えられる、さらなるビーム停止部が備えられる。このビーム停止部は、本発明によるX線検出器の構成要素を収容するために設けられる、ハウジングのハウジング部位であってもよい。ここで、このビーム停止部(または対応するハウジング部位)は、X線センサーがビーム停止部またはハウジングの(ビームを吸収する)壁のX線放射線の影の中には配置されずに、開口部の後方に配置されるように、X線放射線の入射方向において、第一の(または二つの)X線センサーの前方に、また好ましくはX線吸収体の前方に、配置および配向される。
【0026】
さらなる有利なバリエーションでは、上述した本発明によるX線検出器は、一次元ライン検出器として形成される。この目的のために、X線センサーは、X線放射線の入射方向に垂直な方向及び基板平面で見た場合に、X線放射線の空間分解検出のために設けられる、複数の個別のピクセルを有する。そして、個別のピクセルは、それらにより生じるセンサー信号の伝達及び評価のために、例えばボンドワイヤー及び/またはフリップフロップ接点を介して、それぞれ信号評価電子回路に接続される。
【0027】
そのようなラインセンサー構造の二つのX線センサーを備える(エネルギー選択的な)場合、X線放射線の入射方向で見た場合に、一方では、第一のX線センサーのピクセルと、他方では、第二のX線センサーのピクセルとが、以下のように配置されることが有利である。この入射方向に平行に投影される第一のX線センサーのピクセルの断面が、第二のX線センサーのピクセルの断面に正確に投影される。この場合、同一の空間情報が、二つのラインセンサーで取得可能である。そして、上述したこれらのラインセンサー構造は、二次元で空間解像を行うX線検出器の配置の形成に用いられてもよい。個々のラインセンサーは、基板平面が互いに平行となるように積み重ねられ、第一の、または、第一及び第二のX線センサーの個々のラインセンサー構造が、X線放射線の入射方向に垂直で見た場合の平面において、一つまたは二つの二次元エリアセンサー構造を形成する。
【0028】
(エネルギー選択的な)二つのX線センサーが実現される、さらなる有利な実施形態では、二つのX線センサーは、互いに完全に独立して、それぞれ必要な電圧が供給されてもよい。特に、センサー双方に異なる高電圧が必要な場合、電荷分離のための高電圧源を、各X線センサーに対して別々に設けることが有利である。さらに、単一の高電圧源、または二つの高電圧源は、生じ得る半導体の高電圧アバランシェ降伏をいち早く認識し、この場合、高電圧をいち早く切るために、精度の高い電流モニター機能を備えてもよい。
【0029】
本発明によれば、従って、X線センサーの下流に配置され、X線に敏感な電子回路の放射線防護が、直線形状のX線センサーで確実に成され得る。このことは、特に、信号評価電子回路に関係するが、X線吸収体の放射線の影に配置される、多数の他の受動的な(より放射線に敏感な)構成要素にも関連する。(一般にハウジングの一部を形成する、スリット形状の開口部を備える上述した開口部は、この目的には不十分である。ハウジングの最大重量等の設計制約に因り、開口部は、敏感な電子回路の放射線防護を単独で確実に成すように厚く設けることはできない。)
【0030】
X線センサーの後方のX線放射線が、熱膨張係数に関して適合された形状のセンサーキャリアと併せた、付加的なX線吸収体の有利な実現により、特に最小に低減可能である(従って、X線放射線からの敏感な構成要素の十分な防護が確実になされる)だけでなく、X線検出器の個々の構成要素、特に、X線センサーの、支持基板への最適な温度適応も、実現可能である。
【0031】
本発明によれば、X線光子がまず低吸収半導体を通過し、続いて高吸収半導体を通過するように、同じ厚みの、低吸収半導体X線センサー(例えば、Siから作られる)と、高吸収半導体X線センサー(例えば、GaAsから作られる)とが、基板または相互接続デバイス上に、互いに並べられる。
【0032】
ここで、二つのX線センサーは、ライン検出器または面検出器のどちらかを作ることができるように、ピクセル電極として機能する、幾何学的に同じ電極構造が備えられてもよい。ここで、隣り合って配置される二つのエネルギー選択的X線センサーのピクセル構造は、(例えば、信号評価電子回路の下流に接続されるコンピュータシステムでの画像処理に対して)同じ空間情報を取得するために、互いに平行に配置されてもよい。
【0033】
二つのエネルギー選択的X線センサーは、別々の構成要素として実現されてもよく、(例えば対応する成形材料により)同一の構成要素に一体化されてもよい。それらには、それぞれ、それ自体の高電圧源が備えられ、個々の半導体タイプに最適な電荷分離を達成する。X線センサー双方は、例えば相互接続デバイスに取り付けられる、ワイヤーボンディング、または、フリップフロップボンディング等の、電子回路の構造及び接続技術の従来のプロセスで、(別々の構成要素として、または、一つの構成要素に一体化されて)作られてもよい。
【0034】
X線センサー(または、二つのエネルギー選択的X線センサーそれぞれ)が、ラインセンサーまたはエリアセンサーとして設けられる場合、幾何学的配置は、複数の個々のピクセルが、最小の位置的誤差で、互いに隣り合って配置されるように行われてもよい。こうして、ピクセル数が多い、例えば、1ライン1024ピクセル、または、1エリア1024×1024ピクセルのラインまたはエリアセンサーが可能である。
【0035】
本発明は、複数の実施形態を参照して、以下に説明される。