(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058312
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】クリーニングヘッド
(51)【国際特許分類】
B08B 5/00 20060101AFI20161226BHJP
【FI】
B08B5/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-173538(P2012-173538)
(22)【出願日】2012年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-30806(P2014-30806A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】511254284
【氏名又は名称】ヒューグル開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】白根 智博
【審査官】
栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】
特許第4771419(JP,B2)
【文献】
特開2006−346515(JP,A)
【文献】
特開2004−009047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 5/00
B08B 5/02
B08B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア噴射口から除塵対象物の表面に清浄エアを噴射して前記表面に付着した塵埃を飛散させ、この塵埃を清浄エアと共にエア吸引口から吸引して排気するようにしたクリーニングヘッドにおいて、
外部から給気ダクトを介して清浄エアがエア噴射室に供給され、前記エア噴射口から清浄エアを噴射させる長尺の内部ダクトと、
前記内部ダクトのほぼ全長にわたり前記内部ダクトを包囲するように配置された下カバーと、
前記下カバーの上端部に連結され、かつ内部の空気溜まりが排気ダクトに連通する上カバーと、
前記上カバー及び下カバーを両カバーの長手方向に沿って相対的にスライドさせて両カバーを連結するためのガイド部材と、
を備え、
前記上カバーの下方に前記ガイド部材を介して連結された前記下カバーの内面と前記内部ダクトの外面との間に、前記エア吸引口に連通するエア吸引室を形成し、前記エア吸引室と前記空気溜まりとを、前記排気ダクトから遠ざかるほど開口面積が大きい排気口により連通させると共に、前記エア吸引室の内面に、空気抵抗を大きくするための突起を形成したことを特徴とするクリーニングヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載したクリーニングヘッドにおいて、
前記下カバー及び前記内部ダクトを両者の長手方向に沿って相対的にスライドさせて連結するためのガイド部材を更に備えたことを特徴とするクリーニングヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載したクリーニングヘッドにおいて、
前記エア噴射室の内面に空気抵抗を大きくするための突起を形成したことを特徴とするクリーニングヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板や金属製基板、樹脂製フィルム等の除塵対象物の表面に清浄エアを噴射し、前記表面に付着した塵埃を飛散させて吸引除去するためのクリーニングヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、この種のクリーニングヘッドの従来技術を示しており、
図3(a)はヘッド本体の平面図、
図3(b)は全体の正面図、
図3(c)は
図3(b)のB−B拡大断面図である。
これらの図において、20は角筒状のヘッド本体であり、その両端には給気ダクト10がそれぞれ取り付けられている。
図3(a)に示すように、ヘッド本体20の天板21には、長手方向に沿って各一対の排気口20bがほぼ等間隔に形成されている。
【0003】
図3(b),(c)において、31,32,33は、前記排気口20bに対応させて、ヘッド本体20の中央部の両側に対称的に取り付けられた排気ダクトであり、これらの排気ダクト31,32,33は排気口20b側が開口されていると共に、ホース41,42によって互いに連結されている。
個々の排気ダクト、例えば排気ダクト31は、
図3(c)に示す枠状の固定板31aがヘッド本体20の天板21にネジ35によって固定されている。なお、固定板31aと天板21との間には、気密性を保つためにシール材(図示せず)が設けられている。
【0004】
図3(c)に示すように、ヘッド本体20には内部ダクト24が設けられており、その内部空間は、エア噴射室25として前記給気ダクト10に連通している。また、ヘッド本体20の内面と内部ダクト24の外面とによって形成される空間は、エア吸引室26として前記排気口20bを介し排気ダクト31,32,33に連通している。
内部ダクト24の中央下端部には、給気ダクト10から供給された清浄エアを除塵対象物G方向に噴射させるエア噴射口22aが形成されている。また、ヘッド本体20の底板には、エア噴射口22aの両側に位置するように、噴射エアにより飛散した塵埃を吸引するためのエア吸引口20aが形成されている。
【0005】
この従来技術では、ブロア及びHEPAフィルタ等のエア源(図示せず)により給気ダクト10に供給された清浄エアが、エア噴射室25からエア噴射口22aを介して除塵対象物Gの表面に噴射される。
一方、排気ダクト31,32,33は端部の排気ダクト31側からエアを吸引して負圧に保たれているため、除塵対象物Gの表面から飛散した塵埃は、エア吸引口20aを介してエア吸引室26→排気口20b→排気ダクト31,32,33の経路で吸引、排気される。
これにより、除塵対象物Gの表面に付着した塵埃を吸引、除去することが可能である。
【0006】
なお、特許文献1には、
図3に示したものとほぼ同様に構成されたクリーニングヘッドが開示されており、これらのクリーニングヘッドは、排気ダクトの取付方向を180度、変更できる点が一つの特徴となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4771419号公報(段落[0037],[0038]、
図7等)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図3に示した従来技術には、以下のような問題がある。
まず、
図3では、ヘッド本体20の長手方向中央部に近い排気ダクト及びホースほど内径を小さくして、エア吸引時の圧力(負圧)が大きくなるようにしている。しかし、このような構造を採ったとしても、ヘッド本体20の長手方向中央部に近いほどエアの吸引力が弱くなるか、または吸引力にばらつきを生じてしまい、十分な除塵性能が得られない場合がある。これに加えて、排気ダクト31,32,33及びホース41,42の形状、構造が複数種類にわたると共に全体的な部品点数も多いため、製造コストが高くなるという問題があった。
また、排気ダクト31,32,33をヘッド本体20の天板21に固定しているネジ35が振動により緩んでしまい、最悪の場合には除塵対象物Gの上にネジ35が落下して除塵対象物Gを損傷または汚染してしまうおそれがあった。
更に、排気ダクト31,32,33やホース41,42等の部品の凹凸部分に塵埃が付着しやすく、これらの塵埃が除塵対象物Gの表面に落下する場合もある。
【0009】
そこで本発明の解決課題は、全体的な構造を簡略化し、部品の種類や点数を少なくして製造コストを低減すると共に、長手方向の全長にわたってほぼ均一な吸引力を得るようにしたクリーニングヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、エア噴射口から除塵対象物の表面に清浄エアを噴射して前記表面に付着した塵埃を飛散させ、この塵埃を清浄エアと共にエア吸引口から吸引して排気するようにしたクリーニングヘッドにおいて、
外部から給気ダクトを介して清浄エアがエア噴射室に供給され、前記エア噴射口から清浄エアを噴射させる長尺の内部ダクトと、
前記内部ダクトのほぼ全長にわたり
前記内部ダクトを包囲するように配置された下カバーと、
前記下カバーの上端部に連結され、かつ内部の空気溜まりが排気ダクトに連通する上カバーと、
前記上カバー及び下カバーを両カバーの長手方向に沿って相対的にスライドさせて両カバーを連結するためのガイド部材と、
を備え、
前記上カバー
の下方に前記ガイド部材を介して連結された前記下カバーの内面と前記内部ダクトの外面との間に、前記エア吸引口に連通するエア吸引室を形成し、前記エア吸引室と前記空気溜まりとを、前記排気ダクトから遠ざかるほど開口面積が大きい排気口により連通させ
ると共に、前記エア吸引室の内面に、空気抵抗を大きくするための突起を形成したものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載したクリーニングヘッドにおいて、前記下カバー及び前記内部ダクトを両者の長手方向に沿って相対的にスライドさせて連結するためのガイド部材を更に備えたものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載したクリーニングヘッドにおいて、前記エア噴射室の内面に空気抵抗を大きくするための突起を形成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上カバー、下カバー、内部ダクト等を長手方向に沿ってスライドさせて連結し、更に各1個の給気ダクト、排気ダクトを取り付けるだけで全体を組み立てることが可能である。このため、従来のように複数種類の排気ダクトを多数、ネジ止めして固定する必要がなく、全体的な構造の簡略化、部品の種類や点数の減少により製造コストを低減することができる。これにより、従来技術に比べて、ネジの緩みや落下、多数の部品の凹凸部分への塵埃の付着などの可能性を少なくすることができる。
また、下カバーに形成される排気口の開口面積を、排気ダクトからの距離に応じて変えることにより、クリーニングヘッドの長手方向の全長にわたってほぼ均一な吸引力が得られ、塵埃の吸引力にアンバランスが生じるのを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態のクリーニングヘッドを示す図であり、
図1(a)は下カバーの平面図、
図1(b)は全体の正面図である。
【
図3】従来のクリーニングヘッドを示す図であり、
図3(a)はヘッド本体の平面図、
図3(b)は全体の正面図、
図3(c)は
図3(b)のB−B拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、
図1,
図2は、本発明の実施形態のクリーニングヘッドを示す図であり、
図1(a)は下カバーの平面図、
図1(b)は全体の正面図、
図2は
図1(b)のA−A拡大断面図である。
図1(a),(b)において、110は角筒状の下カバー、210は下カバー110の上端部に取り付けられる上カバーであり、これらの下カバー110及び上カバー210は、
図1(b)の矢印X方向に相対的にスライドさせることによって連結可能となっている。なお、両カバー110,210をスライドさせるための構造については後述する。
また、下カバー110及び上カバー210を一体的に連結した状態において、長手方向の両端部には端部カバー310,320が取り付けられ、固定される。
【0017】
下カバー110の内部には、その長手方向のほぼ全長にわたり、後述の
図2に示す内部ダクト150が配置されており、
図1(b)の端部カバー310の外側には、内部ダクト150に連通する給気ダクト100が取り付けられている。また、給気ダクト100の上方には、上カバー210の内部に形成された空気溜まり220に連通する排気ダクト200が取り付けられている。
給気ダクト100及び排気ダクト200は、ブロアやHEPAフィルタからなる周知の構成のエア源(図示せず)に接続されており、清浄エアが給気ダクト100から内部ダクト150に供給され、除塵後のエアが塵埃と共に、空気溜まり220を介して排気ダクト200から排気されるようになっている。
【0018】
また、
図1(a)に示すように、下カバー110の天板120には、給気ダクト100及び排気ダクト200からの距離が遠いほど、開口面積が大きい(下カバー110の長手方向に沿った長さが長い)各一対の排気口121,122,123,124がそれぞれ設けられている。なお、これらの排気口の数や形状は、図示例に何ら限定されるものではない。
【0019】
次に、このクリーニングヘッドの内部構造を
図2に基づいて詳述する。
図2に示すように、下カバー110と上カバー210とは、下カバー110の上端部両側及び上カバー210の下端部両側にそれぞれ形成された凹凸構造からなるスライドガイド161により、紙面の表裏方向に相対的にスライド可能となっている。
なお、下カバー110の内部に配置された内部ダクト150も、上記同様の凹凸構造からなるスライドガイド162により、下カバー110に対して相対的にスライド可能である。
【0020】
内部ダクト150の内部空間はエア噴射室170を形成しており、このエア噴射室170は給気ダクト100に連通している。また、下カバー110の内面と内部ダクト150の外面とによって形成される空間は、エア吸引室180として前記排気口121を介し上カバー210の空気溜まり220に連通し、更に排気ダクト200に連通している。
内部ダクト150の下方中央部に配置されたノズル板153にはエア噴射口153aが形成されていると共に、内部ダクト150の底板154には、エア噴射口153aの両側に位置するようにエア吸引口154aが形成されている。
また、下カバー110の側板130の内面の適宜な位置には空気抵抗を大きくするための突起131が複数形成され、内部ダクト150の内外面の適宜な位置にも突起151,152が形成されている。これらの突起の数や形状は、図示例に何ら限定されるものではない。
【0021】
次に、この実施形態の動作を説明する。
内部ダクト150、下カバー110及び上カバー210を互いにスライドさせて連結すると共に端部カバー310,320を取り付け、更に給気ダクト100及び排気ダクト200を取り付けることにより、
図1(b)及び
図2に示すようにクリーニングヘッド全体が組み立てられる。
この状態で外部のエア源から給気ダクト100に供給された清浄エアは、内部ダクト150内のエア噴射室170からエア噴射口153aを介して除塵対象物Gの表面に噴射される。そして、清浄エアにより除塵対象物Gの表面から引きはがされ、飛散した塵埃は、清浄エアと共にエア吸引口154aを介してエア吸引室180→排気口121→空気溜まり220→排気ダクト200の経路で吸引、排気される。
【0022】
上述した一連の給気−排気工程において、清浄エアはエア噴射室170の狭窄した下端部により高圧エアとなってエア噴射口153aから除塵対象物G方向に噴射され、その表面に付着した塵埃を確実に引きはがして空中に飛散させる。このとき、内部ダクト150の内面に突出した突起152により空気抵抗の強弱が発生するので、エア噴射口154aから噴射されるエアに振動を与えることができ、塵埃の引きはがしをより効果的に行うことができる。
また、飛散した塵埃は清浄エアと共にエア吸引口154aを介してエア吸引室180に吸引されるが、その際、下カバー110の内面及び内部ダクト150の外面に突出した突起131,151,152により空気抵抗の強弱が発生するので、これらの突起付近において、エア吸引室180を通過するエアの負圧が部分的に大きくなり、エア吸引口154aからの清浄エアの吸引を一層強力に行うことができる。
【0023】
更に、下カバー110の天板120に形成された排気口121,122,123,124は、排気ダクト200からの距離が遠いほど(端部カバー320に近付くほど)開口面積が大きくなっているので、清浄エアの吸引圧が高い端部カバー310側のエア流量と、清浄エアの吸引圧が低い端部カバー320側のエア流量とをほぼ等しくすることができ、クリーニングヘッドの長手方向の全長にわたって、上カバー210の空気溜まり220に吸引されるエア流量をほぼ均一にすることが可能である。これにより、クリーニングヘッドの長手方向の全長にわたってほぼ均一な吸引力が得られ、除塵対象物Gの表面全域をムラなく除塵することができる。
また、上カバー210によって形成された大容量の空気溜まり220は、各排気口121,122,123,124から個別に取り込んだ吸引エアを一括して排気ダクト200方向に搬送する機能を有し、この空気溜まり220も、清浄エアの円滑な吸引に寄与するものである。
【0024】
この実施形態によれば、
図3に示したような複数種類の排気ダクトやホースを不要とし、比較的シンプルな形状、構造の上カバー210、下カバー110、内部ダクト150、給気ダクト100及び排気ダクト200等を主要部品としているので、部品点数も少なく、製造コストの低減が可能である。
また、
図3の如く複数種類の排気ダクトをネジ止めして固定する構造ではないため、振動によるネジの緩みや落下のおそれが少ないと共に、構成部品による外形上の凹凸部分も少なく、塵埃が付着する可能性も少ない。このため、クリーニングヘッドとしての除塵性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0025】
100:給気ダクト
110:下カバー
120:天板
121,122,123,124: 排気口
130:側板
131:突起
150:内部ダクト
151,152:突起
153:ノズル板
153a:エア噴射口
154:底板
154a:エア吸引口
161,162:スライドガイド
170:エア噴射室
180:エア吸引室
200:排気ダクト
210:上カバー
220:空気溜まり
310,320:端部カバー
G:除塵対象物