特許第6058319号(P6058319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシーの特許一覧

特許6058319磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル
<>
  • 特許6058319-磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル 図000002
  • 特許6058319-磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル 図000003
  • 特許6058319-磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル 図000004
  • 特許6058319-磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル 図000005
  • 特許6058319-磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル 図000006
  • 特許6058319-磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル 図000007
  • 特許6058319-磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル 図000008
  • 特許6058319-磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル 図000009
  • 特許6058319-磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル 図000010
  • 特許6058319-磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル 図000011
  • 特許6058319-磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6058319
(24)【登録日】2016年12月16日
(45)【発行日】2017年1月11日
(54)【発明の名称】磁気共鳴撮像装置用のヘリカル傾斜コイル
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20161226BHJP
   G01R 33/385 20060101ALI20161226BHJP
【FI】
   A61B5/05 340
   G01N24/06 510Y
【請求項の数】29
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-187109(P2012-187109)
(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-42685(P2014-42685A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・ジェームズ・ホリス
(72)【発明者】
【氏名】フェンシュン・タン
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−166893(JP,A)
【文献】 特開平05−308017(JP,A)
【文献】 特開平11−239569(JP,A)
【文献】 米国特許第06921042(US,B1)
【文献】 米国特許第05554929(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/055
G01R33/385
H01F7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状サブストレートの内側壁に沿って円筒状サブストレートの上側エッジと下側エッジのうちの一方から上側エッジと下側エッジのうちのもう一方まで第1のヘリカル方向で実質的に平行な軌道でスパイラルしている第1の複数ワイヤ周回から構成された第1のコイル層であって、該第1の複数ワイヤ周回はサブストレートを横断し次いで円筒状サブストレートの外側壁に沿って第2のヘリカル方向で上側エッジと下側エッジのうちの該一方までスパイラルしており、これにより第1の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回が円筒状サブストレートの側壁に沿ってサークルとなると共に内側壁に沿って巻かれた第1の部分及び外側壁に沿って巻かれた第2の部分を含むようにしている、第1のコイル層と、
円筒状サブストレートの内側壁に沿って円筒状サブストレートの上側エッジと下側エッジのうちの一方から上側エッジと下側エッジのうちのもう一方まで第2のヘリカル方向で実質的に平行な軌道でスパイラルしている第2の複数ワイヤ周回から構成された第2のコイル層であって、該第2の複数ワイヤ周回はサブストレートを横断し次いで円筒状サブストレートの外側壁に沿って第1のヘリカル方向で上側エッジと下側エッジのうちの該一方までスパイラルしており、これにより第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回が円筒状サブストレートの側壁に沿ってサークルとなると共に内側壁に沿って巻かれた第1の部分及び外側壁に沿って巻かれた第2の部分を含むようにしている、第2のコイル層と、
を備える傾斜コイル。
【請求項2】
第1の複数ワイヤ周回及び第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第1の部分によって傾斜コイルの主コイルが形成されており、かつ第1の複数ワイヤ周回及び第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第2の部分によって傾斜コイルの遮蔽コイルが形成されている、請求項1に記載の傾斜コイル。
【請求項3】
前記第1のヘリカル方向と第2のヘリカル方向は互いに反対である、請求項1または2に記載の傾斜コイル。
【請求項4】
第1の複数ワイヤ周回及び第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の前記第2の部分は、サブストレートを横断すると共に、次のワイヤ周回の第1の部分に接続されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項5】
第1のコイル層内の電流の方向が第2のコイル層内の電流の方向と同じである、請求項1乃至4のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項6】
前記第1の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第1の部分と第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第1の部分とがサブストレートの内側壁上でメッシュを形成するように重ね合わせられており、かつ第1の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第2の部分と第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第2の部分とがサブストレートの外側壁上でメッシュを形成するように重ね合わせられている、請求項1乃至5のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項7】
前記第1のコイル層及び第2のコイル層は、主コイルと遮蔽コイルがサブストレートの軸方向において実質的にゼロの電流成分を有するように構成されている、請求項2に記載の傾斜コイル。
【請求項8】
前記第1のコイル層及び第2のコイル層は、主コイルと遮蔽コイルがサブストレートの側壁の円周方向において、漏れ磁場を最小化する電流成分を有するように構成されている、請求項2に記載の傾斜コイル。
【請求項9】
X傾斜コイル、Y傾斜コイル及び/又は、Z傾斜コイルとした請求項1乃至8のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項10】
さらに、第1及び/または第2のコイル層と同一平面にあると共に第1及び/または第2のコイル層のワイヤに対して平行なスパイラル軌道で挿入されたパッシブシムを備える請求項1乃至9のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項11】
パッシブシム用のスロットが主コイルと遮蔽コイルのワイヤ間を通っている、請求項2に記載の傾斜コイル。
【請求項12】
前記傾斜コイルの端部上に低次のパッシブシムが配置されている、請求項1乃至11のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項13】
第1のコイル層と第2のコイル層の間で導体がクロスしている、あるいは第1のコイル層と第2のコイル層の間に電気接続が作成されている、請求項1乃至12のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項14】
サブストレートの端部までスロットを切り入れて傾斜コイルの幾つかのワイヤが該端部に達しないようにしている、請求項1乃至13のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項15】
患者の肩を収容するようにサブストレートの端部まで切り抜きが製作されている、請求項1乃至14のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項16】
前記傾斜コイルの幾つかのワイヤが、視野域のサイズ、形状または位置を変更するために前記ワイヤの極性を切替えまたは変更可能とするように選択されている、請求項1乃至15のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項17】
前記傾斜コイルの幾つかのワイヤが、前記ワイヤを並列に駆動可能とするように選択されている、請求項1乃至16のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項18】
前記サブストレートは、サブストレートの長さ方向で複数の傾斜コイルを直列に配列可能とするように細分されている、請求項1乃至17のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項19】
前記傾斜コイルのワイヤが、単一線状導体、多心線状導体、中空の導体あるいは金属プレートから機械加工されたものである、請求項1乃至18のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項20】
前記傾斜コイルのワイヤが高温または低温の超伝導材料から巻き付けられている、請求項1乃至19のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項21】
さらに、前記傾斜コイルのワイヤの間でスパイラル構成で巻き付けられた冷却チューブを備える請求項1乃至20のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項22】
第1の複数ワイヤ周回及び第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第1の部分により区画されるアジマス角はその第2の部分により区画されるアジマス角より大きい、請求項1乃至21のいずれかに記載の傾斜コイル。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれかに記載の傾斜コイルであるX傾斜コイルと、
請求項1乃至22のいずれかに記載の傾斜コイルであるY傾斜コイルと、
を備えるMR装置。
【請求項24】
前記Y傾斜コイルは前記X傾斜コイルと同じサブストレートを共有しており、かつ前記Y傾斜のワイヤは前記X傾斜コイルのワイヤと交互配置されている、請求項23に記載のMR装置。
【請求項25】
さらに、同じく請求項1乃至22のいずれかに記載の傾斜コイルであるZ傾斜コイルを備える請求項23または24に記載のMR装置。
【請求項26】
前記Z傾斜コイルはX及びY傾斜コイルの内部に封入または部分的に封入されている、請求項25に記載のMR装置。
【請求項27】
さらに、X及びY傾斜コイルの内部に封入または部分的に封入された室温シムコイルを備える請求項23乃至26のいずれかに記載のMR装置。
【請求項28】
前記X及びY傾斜コイルは、XY平面の周りで非対称な幾何学構成を有する、請求項23乃至27のいずれかに記載のMR装置。
【請求項29】
さらに、閉所恐怖症の軽減あるいはRFコイルまたは追加の撮像装置の据え付けを可能にするようにその中央部分が張り出しているボアを備え、
前記追加の撮像装置は、PETスキャナまたは集束式超音波デバイスを含む、請求項23乃至28のいずれかに記載のMR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的には磁気共鳴撮像の分野に関し、また具体的には磁気共鳴撮像装置用の傾斜コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像(MRI)装置の傾斜コイルは高速で変化する直線的な磁場傾斜を提供する。設計者は、ボアの直径及び開放性の最大化並びに長さの最小化を試みる一方でドライバの整合性及びコストの制約の域内で傾斜コイルの効率を向上させるための方法を常に探し求めている。
【0003】
傾斜コイルに作用するローレンツ力は、振動モードを励起させかつ大きな音響ノイズを生じさせることがあり、これが患者を不快にさせると共にスキャナの動作性能を制限している。
【0004】
ファラディの法則に従うと、時変動する磁場によって電場Eが誘導され、またこの電場が一方、導電性構造内に電流を誘導することになる。これによって、末梢神経刺激(PNS)や苦痛な心房細動(生命が危険となり得る)を生じることがある。
【0005】
従来技術において、動作性能の幾つかの面の改善または音響ノイズの低減に用い得る幾つかの傾斜コイル幾何学構成が存在しているが、こうした幾何学構成は製造がより困難となる可能性があり、あるいは動作性能の別の面を損なうことがある。
【0006】
米国特許第US5561371号は、前進弧状ワイヤの上に帰還弧状ワイヤを折り重ねることによってコイルの長さを短くしかつ横型(transverse)傾斜コイルの性能を向上させることが可能な折り重ね型の(folded)傾斜コイルについて記載している。しかしこうしたコイルは製造が困難であり、また主周回間に複数の接続を有する必要があり、また遮蔽用周回によって信頼度の懸念が生じる可能性もあり得る。さらに、このタイプのコイルを中空の導体によって構築するとなると極めて困難となる。
【0007】
米国特許第US5554929号は、サイズがコンパクトでありかつ音響ノイズが低い三日月形の傾斜コイルについて記載している。しかし、こうしたコイルは、主周回と遮蔽用周回が同じ数を有するという制約があり、これがこうしたコイルを本質的に過剰遮蔽にさせ、これによりマグネットとの無用な相互作用を生じさせる。
【0008】
Blaine A.Chronik、Andrew Alejski及びBrian K.Ruttによる「Design and Fabrication of a Three−Axis Edge ROU Head and Neck Gradient Coil」(MRM、44:955〜963(2000))には、非対称傾斜コイルが記載されている。非対称幾何学構成は視野域(FOV)を傾斜コイルの一方の端部にごく接近させることがあるが、対称性が無いことによって無用な電磁カプリングやコイルに作用するトルクを含む多くの問題点が惹起される。
【0009】
US06921042B1は、2重らせんマグネット並びに多極性の磁場を生成する可能性について記載している。完成傾斜導体のコア上への巻き付けによって共軸性に傾けた2重らせんマグネットを得ている。US0788904B2は、上のものについて導体幅を様々とした具体的な一実現形態について記載している。この構成で4極子磁場の生成が可能であるが、単一のコア上のこうした完成巻き線によると長さが長くかつインピーダンスが大きい幾何学構成が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5561371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、製造コストを上昇させることなく、中空の導体の利用を排除することなく、かつ他の面での動作性能を損なうことがないように、傾斜コイルの動作性能を向上させボアの直径及び/または開放性の増大を可能にし、音響ノイズを低減させ、かつPNSが生じる傾向を低減させることができる傾斜コイルの新規の幾何学構成が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の問題の1つまたは幾つかを解決するために、本発明が提供する傾斜コイルは、
円筒状サブストレートの内側壁に沿って円筒状サブストレートの上側エッジと下側エッジのうちの一方から上側エッジと下側エッジのうちのもう一方まで第1のヘリカル方向で実質的に平行な軌道でスパイラルしている第1の複数ワイヤ周回から構成された第1のコイル層であって、該第1の複数ワイヤ周回はサブストレートを横断し次いで円筒状サブストレートの外側壁に沿って第2のヘリカル方向で上側エッジと下側エッジのうちの該一方までスパイラルしており、これにより第1の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回が円筒状サブストレートの側壁に沿ってサークルとなると共に内側壁に沿って巻かれた第1の部分及び外側壁に沿って巻かれた第2の部分を含むようにしている、第1のコイル層と、
円筒状サブストレートの内側壁に沿って円筒状サブストレートの上側エッジと下側エッジのうちの一方から上側エッジと下側エッジのうちのもう一方まで第2のヘリカル方向で実質的に平行な軌道でスパイラルしている第2の複数ワイヤ周回から構成された第2のコイル層であって、該第2の複数ワイヤ周回はサブストレートを横断し次いで円筒状サブストレートの外側壁に沿って第1のヘリカル方向で上側エッジと下側エッジのうちの該一方までスパイラルしており、これにより第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回が円筒状サブストレートの側壁に沿ってサークルとなると共に内側壁に沿って巻かれた第1の部分及び外側壁に沿って巻かれた第2の部分を含むようにしており、第1の複数ワイヤ周回及び第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第1の部分により区画されるアジマス角はその第2の部分により区画されるアジマス角より大きい、第2のコイル層と、
を備える。
【0013】
本発明の一実施形態では、第1の複数ワイヤ周回及び第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第1の部分によって傾斜コイルの主コイルが形成されており、また第1の複数ワイヤ周回及び第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第2の部分によって傾斜コイルの遮蔽コイルが形成されている。
【0014】
本発明の一実施形態では、第1のヘリカル方向と第2のヘリカル方向は互いに反対である。
【0015】
本発明の一実施形態では、第1のヘリカル方向は左手方向でありかつ第2のヘリカル方向は右手方向である。
【0016】
本発明の一実施形態では、第1のヘリカル方向は右手方向でありかつ第2のヘリカル方向は左手方向である。
【0017】
本発明の一実施形態では、第1の複数ワイヤ周回及び第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第2の部分は、サブストレートを横断すると共に、次のワイヤ周回の第1の部分に接続されている。
【0018】
本発明の一実施形態では、第1のコイル層内の電流の方向は第2のコイル層内の電流の方向と同じである。
【0019】
本発明の一実施形態では、第1のコイル層内の電流の方向と第2のコイル層内の電流の方向の両方が逆時計方向である。
【0020】
本発明の一実施形態では、第1のコイル層内の電流の方向と第2のコイル層内の電流の方向の両方が時計方向である。
【0021】
本発明の一実施形態では、第1の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第1の部分と第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第1の部分とがサブストレートの内側壁上でメッシュを成すように織り合わせられており、かつ第1の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第2の部分と第2の複数ワイヤ周回内の各ワイヤ周回の第2の部分がサブストレートの外側壁上でメッシュを形成するように重ね合わせられている。
【0022】
本発明の一実施形態では、第1のコイル層及び第2のコイル層は、主コイルと遮蔽コイルがサブストレートの軸方向において実質的にゼロの電流成分を有するように構成されている。
【0023】
本発明の一実施形態では、第1のコイル層及び第2のコイル層は、主コイルと遮蔽コイルがサブストレートの側壁の円周方向において漏れ磁場を最小化する電流成分を有するように構成されている。
【0024】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルがX傾斜コイルである。
【0025】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルがY傾斜コイルである。
【0026】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルがZ傾斜コイルである。
【0027】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルはさらに、第1及び/または第2のコイル層と同一平面にあると共に第1及び/または第2のコイル層のワイヤに対して平行なスパイラル軌道で挿入されたパッシブシムを備える。
【0028】
本発明の一実施形態では、パッシブシム用のスロットが主コイルと遮蔽コイルのワイヤ間を通っている。
【0029】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルの端部上に低次の(low order)パッシブシムが配置されている。
【0030】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルは従来式Golay巻き線またはクレセントコイルと組み合わせられている。
【0031】
本発明の一実施形態では、第1のコイル層と第2のコイル層の間で導体がクロスしている、あるいは第1のコイル層と第2のコイル層の間に電気接続が作成されている。
【0032】
本発明の一実施形態では、サブストレートの端部までスロットを切り入れて傾斜コイルの幾つかのワイヤが該端部に達しないようにしている。
【0033】
本発明の一実施形態では、患者の肩を収容するようにサブストレートの端部まで切り抜き(cut−out)が製作される。
【0034】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルの幾つかのワイヤは、視野域のサイズ、形状または位置を変更するために前記ワイヤの極性を切替えまたは変更可能とするように選択されている。
【0035】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルの幾つかのワイヤは、前記ワイヤを並列に駆動可能とするように選択されている。
【0036】
本発明の一実施形態では、そのサブストレートは、サブストレートの長さ方向で複数の傾斜コイルを直列に配列可能とするように細分されている。
【0037】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルのワイヤは、中空の導体、多心線状導体あるいは金属プレートから機械加工されたものである。
【0038】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルのワイヤは、導電性材料から製造されている。
【0039】
本発明の一実施形態では、その導電性材料は、銅、アルミニウムあるいは銅またはアルミニウムを含んだ合金を含む。
【0040】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルのワイヤは高温または低温の超伝導材料から巻き付けられている。
【0041】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルはさらに、傾斜コイルのワイヤの間でスパイラル構成で巻き付けられた冷却チューブを備える。
【0042】
本発明の別の態様では、MR装置を提供しており、該MR装置は、
請求項1に記載の傾斜コイルであるX傾斜コイルと、
請求項1に記載の傾斜コイルであるY傾斜コイルと、を備えており、前記Y傾斜コイルは前記X傾斜コイルと同じサブストレートを共有しておりかつ前記Y傾斜のワイヤは前記X傾斜コイルのワイヤと交互配置されている。
【0043】
本発明の一実施形態では、そのMR装置はさらに、同じく請求項1に記載の傾斜コイルであるZ傾斜コイルを備える。
【0044】
本発明の一実施形態では、Z傾斜コイルはX及びY傾斜コイルの内部に封入または部分的に封入されている。
【0045】
本発明の一実施形態では、そのMR装置はさらに、X及びY傾斜コイルの内部に封入または部分的に封入された室温シムコイルを備える。
【0046】
本発明の一実施形態では、X及びY傾斜コイルはXY平面の周りで非対称な幾何学構成を有する。
【0047】
本発明の一実施形態では、そのMR装置はさらに、閉所恐怖症の軽減あるいはRFコイルまたは追加の撮像装置の据え付けを可能にするようにその中央部分が張り出しているボアを備える。
【0048】
本発明の一実施形態では、その追加の撮像装置はPETスキャナまたは集束式超音波(focused ultrasound)デバイスを含む。
【0049】
本発明の一実施形態では、そのボアは開放性を増大させるためにテーパ付きの入口を有する。
【0050】
本発明の一実施形態では、MR装置の患者ベッドの下で視野域のより近くに導体を持ってくるように、そのボアを楕円形とさせる、あるいはボアの底部を楕円形または平坦とさせている。
【0051】
本発明は、傾斜コイル及び2重層ヘリカルコイルに関してヘリカル幾何学構成を利用し、電流のZ成分(サブストレートの軸方向の電流成分)をこの2つの層間で相殺できるようにしている。本発明は、主コイルと遮蔽コイルの間で電流ベクトルのパイ(phi)成分(サブストレートの側壁の円周方向の電流成分)を変更することによって、漏れ磁場を最小化し、これにより傾斜コイルとマグネットの間の相互作用を低減することができる。これを容易にするために、主コイルの弧により区画されるアジマス角は通常、遮蔽コイルの弧により区画されるアジマス角より大きい。本発明は、実質的に長手方向の向きにして構造の剛性をかなり増大させた導体を備える。本発明の傾斜コイルは、サイズを低減させ、開放性を改善し、音響ノイズを低減させ、PNSの恐れを低減させており、また単一線状導体、多心線状導体または中空の導体による巻き付けを実用のものとしている。さらに本発明は、対称性またはほぼ対称性の頭部傾斜設計に適用されることがある。
【0052】
本開示の内容の理解をより完全にするためにここで、添付の図面と連携して記載している以下の説明を参照することにする。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の一実施形態による傾斜コイルの単一の周回ワイヤを表した概要図である。
図2】本発明の一実施形態による第1層の第1の複数周回の内側部分を表した概要図である。
図3】本発明の一実施形態による第1層の第1の複数ワイヤ周回の第1の半分の完成巻き線を表した概要図である。
図4】本発明の一実施形態による第1層の第1の複数ワイヤ周回の第2の半分の完成巻き線を表した概要図である。
図5】本発明の一実施形態による第1層の第1の複数ワイヤ周回の完成巻き線を表した概要図である。
図6】本発明の一実施形態による第1層及び第2層の断面を表した概要図である。
図7】本発明の一実施形態による第1層の第1の複数周回の第1の半分の内側部分と第2層の第2の複数周回の第1の半分の内側部分とを表した概要図である。
図8】本発明の一実施形態による第1層の第1の複数周回の第1の半分の完成巻き線と第2層の第2の複数周回の第1の半分の完成巻き線と、を表した概要図である。
図9】本発明の一実施形態による交互配置させたXコイルとYコイルの第1層の第1の複数周回の内側部分を表した概要図である。
図10】本発明によるテーパ付きのボア構成をヘリカル傾斜コイルと共に表した図である。
図11】クレセントコイルと組み合わせた本発明によるヘリカル傾斜コイルの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明の特定の実施形態について以下で詳細に説明することにするが、本発明はこれらの特定の実施形態に限定すべきものではない。
【0055】
図1は、本発明の一実施形態による傾斜コイルの単一の周回ワイヤの概要図を表している。図1に示したようにこの単一の周回ワイヤは、サブストレートの内側壁に沿って点Aを基準とした左手方向で傾斜コイルの円筒状サブストレートの上側エッジ上の点Aから下側エッジ上の点Bまでスパイラルしており、点Bにおいて内側壁から外側壁までサブストレートを横断しており、さらに外側壁に沿って点Aを基準とした右手方向で円筒状サブストレートの上側エッジ上の点Cまでスパイラルを続けている。図面内における矢印の向きは巻き付け方向を示している。このワイヤ巻き付け方向における点Aから点Cまでのアジマス角は約360度である。したがってこの単一周回ワイヤは円筒状サブストレートの側壁に沿ってサークルとなっている。図1に示したように、サブストレートの内側壁に沿ってワイヤ部分ABにより区画されるアジマス角はサブストレートの外側壁に沿ったワイヤ部分BCにより区画されるアジマス角より大きい。換言すると、ワイヤ部分BCにより区画されるアジマス角は180度未満である。上述した実施形態は、点Aを基準とした左手方向で巻き付けられたワイヤ部分ABと、点Aを基準とした右手方向で巻き付けられたワイヤ部分BCと、を単に一例として取り上げている。代替的な一実施形態では、ワイヤ部分ABが右手方向でまたワイヤ部分BCが左手方向で巻き付けられることがある。さらに、巻き付けが上側エッジ上の点から始まるように図示しているが、巻き付けは下側エッジ上の点から始まることもあり得ることを理解されたい。
【0056】
次のワイヤ周回では、ワイヤ部分BCの端部Cがサブストレートの側壁を横断し、サブストレートの内側壁上でかつ点Aの近傍(図1参照)にある下側エッジ上の点Dに達することになる。このワイヤは、サブストレートの側壁に沿って点Dから始まりワイヤABCと実質的に平行の軌道で巻き付けられ、これにより1つのワイヤ周回が形成されている。複数のワイヤ周回はサブストレートの側壁に沿って上述の方式で巻き付けられている。サブストレートの内側壁及び外側壁に沿って傾斜コイルの第1のコイル層を形成する複数のワイヤ周回の軌道は実質的に平行である。この複数のワイヤ周回の各々は、円筒状サブストレートの側壁に沿ってサークルとなっていると共に、内側壁に沿って巻き付けられた第1の部分と外側壁に沿って巻き付けられた第2の部分とを含んでおり、また該第1の部分により区画されるアジマス角は第2の部分により区画されるアジマス角より大きい。
【0057】
図2は、第1層及び第2層の内側部分を表している(ただし、明瞭とするためサブストレートを図示していない)。
【0058】
図3は、第1層の第1の半分の完成巻き線を表している(ただし、明瞭とするためサブストレートを図示していない)。図3に示したように、主コイルの第1層を構成する複数のワイヤ周回は逆時計方向でサブストレートの下側エッジから上側エッジまでスパイラルし、また遮蔽コイルの第1層を構成する複数のワイヤ周回は逆時計方向でサブストレートの下側エッジから上側エッジまでスパイラルを継続する。
【0059】
図4は、第1層の第2の半分の完成巻き線を表している(ただし、明瞭とするためサブストレートを図示していない)。図4に示したように、主コイルの第1層を構成する複数のワイヤ周回は逆時計方向でサブストレートの下側エッジから上側エッジまでスパイラルし、また遮蔽コイルの第1層を構成する複数のワイヤ周回は逆時計方向でサブストレートの下側エッジから上側エッジまでスパイラルを継続する。
【0060】
図5は、第1層の完成巻き線を表している(ただし、明瞭とするためサブストレートを図示していない)。
【0061】
上では、ヘリカルコイルの第1層に関連して説明を提示している。本発明では、2層式ヘリカルコイルを導入している。ヘリカルコイルの第2層もまた、その各々がサブストレートの側壁に沿って実質的に平行な軌道でサークルとなっている複数のワイヤ周回から構成されている。ヘリカルコイルの第1層と同様に、ヘリカルコイルの第2層の各ワイヤ周回もまた、サブストレートの内側壁に沿ってサブストレートの一方のエッジからもう一方のエッジまでスパイラルしている第1の部分と、サブストレートの外側壁に沿ってサブストレートの該もう一方のエッジから該一方のエッジまで続いている第2の部分と、を含んでおり、また第1の部分を区画するアジマス角は第2の部分を区画するアジマス角より大きい。ヘリカルコイルの第1層と異なり、サブストレートの内側壁に沿ってヘリカルコイルの第2層内の各ワイヤ周回の第1の部分が巻き付けられるヘリカル方向は、ヘリカルコイルの第1層内の各ワイヤ周回の第1の部分が巻き付けられるヘリカル方向と反対であり、またサブストレートの外側壁に沿ってヘリカルコイルの第2層内の各ワイヤ周回の第2の部分が巻き付けられるヘリカル方向もまたヘリカルコイルの第1層内の各ワイヤ周回の第2の部分が巻き付けられるヘリカル方向と反対であり、これによりヘリカルコイルの第1層内の各ワイヤ周回の第1の部分とヘリカルコイルの第2層内の各ワイヤ周回の第1の部分とがサブストレートの内側壁上でメッシュを形成するように重ね合わせられると共に、ヘリカルコイルの第1層内の各ワイヤ周回の第2の部分とヘリカルコイルの第2層内の各ワイヤ周回の第2の部分もまたサブストレートの外側壁上でメッシュを形成するように重ね合わせられている。例えば、ヘリカルコイルの第1層内の各ワイヤ周回の第1の部分が左手方向でかつその第2の部分が右手方向で巻き付けられている場合、ヘリカルコイルの第2層内の各ワイヤ周回の第1の部分は右手方向でかつその第2の部分は左手方向で巻き付けられる。
【0062】
図6は、ヘリカルコイルの第1層及び第2層の断面を表している(ただし、明瞭とするためサブストレートを図示していない)。ヘリカルコイルの第2層を構成する複数のワイヤ周回のうち、内側壁に沿って巻き付けられた第1の部分によって主コイルの第2層が形成され、また外側壁に沿って巻き付けられた第2の部分によって遮蔽コイルの第2層が形成されている。
【0063】
図7は、第1層の第1の複数周回の第1の半分の内側部分及び第2層の第2の複数周回の第1の半分の内側部分の概要図を表している(ただし、明瞭とするためサブストレートを図示していない)。図7から理解できるように、ヘリカルコイルの第1層とヘリカルコイルの第2層内の各ワイヤ周回の第1の部分のヘリカル方向が互いに反対であるため、主コイルの第1層内のワイヤの各々と主コイルの第2層内のワイヤの各々とがメッシュを形成するように重ね合わせられる。ヘリカルコイルの第1層とヘリカルコイルの第2層からの電流の方向が同じ場合(すなわち、両方が反時計方向であるか両方が時計方向である場合)、主コイルの第1層内のワイヤの各々と主コイルの第2層内のワイヤの各々とに関する電流ベクトルのZ方向(すなわち、サブストレートの軸方向)の成分は部分的にまたは完全に相殺することができる。各ワイヤの軌道方向及び/または電流量の調整によって、主コイルの第1層及び主コイルの第2層内のZ方向の電流成分をゼロに至らせることが可能である。さらに各ワイヤの軌道方向及び/または電流量の調整によって、主コイルの第1層及び主コイルの第2層内のアジマス方向(すなわち、サブストレートの側壁の円周方向)の電流成分は漏れ磁場を最小化するようにさらに調整される。
【0064】
図8は、第1層の第1の複数周回の第1の半分の完成巻き線と第2層の第2の複数周回の第1の半分の完成巻き線の概要図を表している(ただし、明瞭とするためサブストレートを図示していない)。主コイルの第1層及び第2層と同様に、ヘリカルコイルの第1層とヘリカルコイルの第2層内の各ワイヤ周回の第2の部分のヘリカル方向が互いに反対であるため、遮蔽コイルの第1層内のワイヤの各々と遮蔽コイルの第2層内のワイヤの各々とがメッシュを形成するように重ね合わせられる。同様に、各ワイヤの軌道方向及び/または電流量の調整によって、遮蔽コイルの第1層及び遮蔽コイルの第2層内のZ方向の電流成分をゼロに至らせることが可能であり、かつ漏れ磁場を最小化することが可能である。サブストレートの側壁の円周方向での遮蔽コイルの各ワイヤにより区画される角度が180度未満であるため、各ワイヤは主コイルの各ワイヤのものと比較して円周方向でより小さい電流成分を有しており、これにより優れた遮蔽性能の実現が可能となる。
【0065】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルはさらに、第1及び/または第2のコイル層と同一平面にあると共に第1及び/または第2のコイル層のワイヤに対して平行なスパイラル軌道で挿入されたパッシブシムを備えており、これにより傾斜コイルの端部上に低次のパッシブシムが配置されている。パッシブシム用のスロットは、内側すなわち主巻き線と帰還の外側すなわち遮蔽巻き線との間を通っている。
【0066】
本発明の一実施形態では、その傾斜コイルのサブストレートは、複数のヘリカル傾斜コイルをサブストレートの長さ方向で直列に配列可能とするように細分されており、このことはある種の用途において有利となる可能性がある。本発明の別の実施形態では、第1のコイル層と第2のコイル層の間で導体がクロスしている、あるいは第1のコイル層と第2のコイル層の間に電気接続が作成されている。
【0067】
一実施形態ではその傾斜コイルのワイヤは、単一線状導体、多心線状導体、中空の導体あるいは金属プレートから機械加工されたものである。別の実施形態ではその傾斜コイルのワイヤは、銅、アルミニウムあるいは銅またはアルミニウムを含んだ合金などの導電性材料から製造されている。別の実施形態ではその傾斜コイルのワイヤは、高温または低温の超伝導材料から巻き付けられている
本発明の一実施形態ではその傾斜コイルの幾つかのワイヤは、視野域のサイズ、形状または位置を変更するためにワイヤの極性を切替えまたは変更可能とするように選択することが可能である。別の実施形態ではその傾斜コイルの幾つかのワイヤは、ワイヤを並列に駆動可能とするように選択されている。
【0068】
本発明の一実施形態では、コイルの効率の上昇を可能とさせるように、その傾斜コイルの幾つかのワイヤをこれらがサブストレート端部に達する前に主から遮蔽に遷移可能としてサブストレートの端部までスロットを切り入れることが可能である。別の実施形態では、患者の肩を収容するようにサブストレートの端部まで切り抜きが製作される。
【0069】
本発明の一実施形態ではその傾斜コイルはさらに、傾斜コイルのワイヤの間でスパイラル構成で巻き付けられた冷却チューブを備える。
【0070】
上に記載したような傾斜コイルは、従来式Golay巻き線またはクレセントコイルと組み合わせることが可能である(図11参照)。
【0071】
本発明では、主コイルと遮蔽コイル内の各ワイヤ周回が1つのスパイラルの形で巻き付けられており、またこの2つのスパイラルを傾斜コイルの端部の位置で互いに結合させている。したがって、主コイル及び遮蔽コイル内の各ワイヤ周回の電流ベクトルはアジマス成分とZ成分を有する。2重層ヘリカルコイルを用いることにより、電流のZ成分を主コイルと遮蔽コイル層間で相殺することができる。電流ベクトルのアジマス成分を主コイルと遮蔽コイルの間で変更することによって、漏れ磁場を最小化することが可能である。重要なことは、主コイルの弧により区画されるアジマス角が遮蔽コイルの弧により区画されるアジマス角より大きいため、こうした設計は、動作性能をかなり改善させ、物理的サイズを低減させ、音響ノイズを低下させ、かつPNSが生じる傾向を低減させていることである。
【0072】
ヘリカルコイルによれば、物理的サイズがかなり低減され、動作性能が改善されることが予備研究によって示されており、また従来の傾斜と比較して振動及び音響ノイズの生成がより少ないと予測される。このヘリカル幾何学構成は、主コイルと遮蔽コイルが1本の連続長のワイヤで巻き付けられるワイヤ巻き付け製造技法と結びつき、これにより従来の折り重ね型の傾斜幾何学構成と比べてはんだ接続の箇所を著しく減らすことができ、したがって製造コストが低減されかつ信頼度が向上する。
【0073】
MR装置は典型的には、X、Y及びZ傾斜コイルを備える。本発明の一実施形態では、X及びY傾斜コイルのそれぞれのワイヤは上に記載したようなスパイラル構成で巻き付けられる。幾何学配置が90度だけ回転していることを除けばX傾斜コイルはY傾斜コイルと全く同じであり、図9で理解できるように、Y傾斜コイルのワイヤのギャップ内でX傾斜コイルのワイヤをネスト構造とし、両者に同じ半径方向空間を占有させることが可能である。これによって、X及びY傾斜コイル向けにそれぞれ2つのサブストレートを有する必要がなくなる。すなわち、Y傾斜コイルはX傾斜コイルと同じサブストレートを共有しており、この際にY傾斜のワイヤはX傾斜コイルのワイヤと交互配置されている。本発明の一実施形態では、X及びY傾斜コイルは、X軸及びY軸により規定されるXY平面の周りで非対称な幾何学構成を有する。第1及び第2のコイル層の交差するワイヤ間に形成される角度並びに電流の大きさの調整によって、X軸及びY軸で適当な磁場傾斜を得ることが可能である。図9は、上で言及したように同じサブストレート(図示せず)を共有するX及びY傾斜コイルの第1層の第1の複数周回の内側部分を表している。本発明の一実施形態では、そのMR装置のZ傾斜コイルも、上で記載したような傾斜コイルとなっている。別法として、そのZ傾斜コイルをX及びY傾斜コイルの内部に封入または部分的に封入することが可能であり、またX及びYコイルと同じサブストレートを共有させないこともあり得る。
【0074】
このコイル構成によって、閉所恐怖症の軽減あるいはRFコイルまたはPETスキャナや集束式超音波デバイスなどの追加の撮像装置の据え付けを可能にするように、MR装置のボアの中央部分を張り出し可能とさせることができる。
【0075】
本発明の一実施形態では、コイルの効率を上昇させるためにMR装置の患者ベッドの下で視野域のより近くに導体を持ってくるように、そのボアを楕円形など非円筒状とさせる、あるいはボアの底部を楕円形または平坦とさせている。
【0076】
本発明の一実施形態では、傾斜のボアは、開放性を増大させるために図10に示したようなテーパ付きの入口を有する。
【0077】
このMR装置は任意選択で、X及びY傾斜コイルの内部に封入または部分的に封入された室温シムコイルを備える。
【0078】
本発明の特定の実施形態について添付の図面を参照しながら上で説明してきたが、当業者であれば本開示の趣旨を逸脱することなくその様々な変形形態、修正形態及び等価変更形態が可能であることを理解されよう。これらの変形形態、修正形態及び等価変更形態は添付の特許請求の範囲に規定したような精神及び趣旨に域内に属するように意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11