(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、金属製缶体10とマンドレル本体92で囲まれた空間Kを陰圧にすることによって、外部の空気が隙間95,96を通って空間Kに流れ込んで、空間Kの陰圧が低下するため、印刷用マンドレル91に対する金属製缶体10の保持性能が低下してしまうという問題があった。
【0010】
印刷用マンドレル91に対する金属製缶体10の保持性能が低下すると、マンドレル本体92の先端で所期する位置に嵌挿・保持されない缶体10が生じて、缶体10の保持位置が一定とならず、缶体10の印刷位置にばらつきが生じていた。
【0011】
また、外部の空気が、隙間95,96を通って空間Kに流れ込む際にベアリング941,942の隙間を通過することにより、ベアリング941,942に塗布された潤滑剤が流されてマンドレルエンドキャップ921に付着してしまうという問題があった。
【0012】
マンドレルエンドキャップ921に潤滑剤が付着していると、空間Kを陽圧にした際に、印刷機側から注入された空気に流されるなどして、缶体10の内面に汚れのある不良缶が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、金属製缶体のマンドレル本体への保持力を向上させるとともに、グリスの滲み出しを防止する印刷用マンドレルの提供を目的とする。
【0014】
即ち、本発明は下記[1]〜[10]に記載の構成を有する。
【0015】
[1] 底部と胴部が一体成形された金属製缶体が嵌挿されて保持される印刷用マンドレルであって、
先端に空気が吸引される空間が設けられ、前記空間が陰圧の状態で前記金属製缶体が先端側から嵌挿されるマンドレル本体と、
前記マンドレル本体の内部に設けられ、前記空間の空気が吸引される空気流路が形成されたマンドレル軸と、
を備え、
前記マンドレル本体の内面と前記マンドレル軸の外面とで形成された空隙が、外部から前記空隙に流入する空気量を制限する流入制限機構を有することを特徴とする印刷用マンドレル。
【0016】
[2] 前記流入制限機構は、前記マンドレル本体の内面と前記マンドレル軸の外面との間隔が、前記マンドレル本体が回転不良を起こさない最小限の間隔に設定された流入制限隙間であることを特徴とする前項1に記載の印刷用マンドレル。
【0017】
[3] 前記流入制限隙間の間隔は、0.4mm〜0.7mmの範囲に設定され、
前記流入制限隙間の長さは、90mm〜140mmに設定されることを特徴とする前項2に記載の印刷用マンドレル。
【0018】
[4] 前記マンドレル本体の内径、前記マンドレル軸の径、及び前記流入制限隙間の長さは、下記に示す関係式を満たすことを特徴とする前項2または3のいずれかに記載の印刷用マンドレル。
【0019】
0.2≦(I
2−R
2)/L≦0.5
I:マンドレル本体の内径
R:マンドレル軸の径
L:流入制限隙間の長さ
[5] 前記流入制限機構は、少なくとも前記空隙の1箇所に、シール部材を設けたものであることを特徴とする前項1に記載の印刷用マンドレル。
【0020】
[6] 前記シール部材は、ラビリンスシールであることを特徴とする前項5に記載の印刷用マンドレル。
【0021】
[7] 前記シール部材は、Oリングであることを特徴とする前項5に記載の印刷用マンドレル。
【0022】
[8] 前項1〜7のいずれかに記載の印刷用マンドレルを用いて印刷されることを特徴とする2ピース缶。
【0023】
[9] 前項1〜7のいずれかに記載の印刷用マンドレルを用いて印刷されることを特徴とする2ピース缶の製造方法。
【0024】
[10] 前項1〜7のいずれかに記載の印刷用マンドレルを用いて印刷されることを特徴とする印刷機。
【発明の効果】
【0025】
上記[1]に記載の発明によれば、先端に空気が吸引される空間が設けられ、前記空間が陰圧の状態で前記金属製缶体が先端側から嵌挿されるマンドレル本体と、前記マンドレル本体の内部に設けられて前記マンドレル本体を回転自在に支持し、前記空間の空気が吸引される空気流路が形成されたマンドレル軸と、を備え、前記マンドレル本体の内面と前記マンドレル軸の外面で形成された空隙が、外部から前記空隙に流入する空気量を制限する流入制限機構を有するので、流入制限機構によってマンドレル本体外部から空隙に流入する空気が減少し、空間及び嵌挿された金属製缶体内部に空気が流れ込み難くなるため従来よりも空間の陰圧が強くなり、金属製缶体のマンドレル本体への保持性能が向上する。
【0026】
金属製缶体のマンドレル本体への保持性能が向上することにより、金属製缶体がマンドレル本体の適切な位置に吸着保持されるので、缶体の長さ方向における印刷位置のばらつきが低減される。
【0027】
また、空気の流れによってベアリングに塗布された潤滑剤が、マンドレルの先端側に流されて缶体内面に付着する虞が低減され、潤滑剤の付着による不良缶の発生が低減する。
【0028】
上記[2]に記載の発明によれば、流入制限機構は、前記マンドレル本体の内面と前記マンドレル軸の外面との間隔が、前記マンドレル本体が回転不良を起こさない最小限の間隔に設定された流入制限隙間であるので、マンドレル本体外部から空隙に流入する空気が減少して金属製缶体内部の空間に空気が流れ込み難くなり、空間の陰圧を低下させることなく、所定の陰圧を維持することができるので、金属製缶体のマンドレル本体への保持性能が向上して、金属製缶体がマンドレル本体の適切な位置に吸着保持され、缶体の長さ方向における印刷位置のばらつきが低減される。
【0029】
上記[3]に記載の発明によれば、流入制限隙間の間隔が、0.4mm〜0.7mmの範囲に設定され、流入制限隙間の長さが、90mm〜140mmに設定されることにより、金属製缶体のマンドレル本体への保持性能がより向上して、金属製缶体がマンドレル本体の適切な位置に吸着保持されるので、缶体の長さ方向における印刷位置のばらつきが低減される。
【0030】
上記[4]に記載の発明によれば、前記マンドレル本体の内径、前記マンドレル軸の径、及び前記流入制限隙間の長さが、0.2≦(I
2−R
2)/L≦0.5の関係式を満たすように構成されるので、空隙に流入する空気量がより減少して、ベアリングに塗布された潤滑剤が流入した空気で流された場合であっても、空隙間で潤滑剤を付着させてマンドレル先端側に流される虞を低減させるので、缶体の内部汚れを低減させることができる。
【0031】
上記[5]に記載の発明によれば、前記流入制限機構は、少なくとも前記空隙の1箇所に、シール部材を設けたものであるので、シール部材を設けるだけの簡単な構造で金属製缶体をマンドレル本体の適切な位置に吸着保持させて、缶体の長さ方向における印刷位置のばらつきを低減させるとともに、缶体の内部汚れを低減させることができる。
【0032】
上記[6]に記載の発明によれば、前記シール部材には、ラビリンスシールが用いられるので、マンドレル本体外部からマンドレル本体内部に空気が流入した場合であっても、ラビリンスシールが取り付けられた箇所より先端側へ空気が流れ込み難くなり、簡単な構造で潤滑剤が金属製缶体内部の空間まで流される虞をより低減させることができる。
【0033】
ラビリンスシールの外輪と内輪が接触しない非接触シールであるため、マンドレル本体の回転に影響を与えることがない。また、ラビリンスシールは、発熱せず長寿命であるため、交換などのメンテナンスの手間がかからない。
【0034】
上記[7]に記載の発明によれば、前記シール部材には、Oリングが用いられるので、マンドレル本体外部からマンドレル本体内部に空気が流入した場合であっても、Oリングが取り付けられた箇所より先端側へ空気が流れ込み難くなり、簡単な構造で潤滑剤が金属製缶体内部の空間まで流される虞をより低減させることができ、安価に構成することができる。
【0035】
上記[8]に記載の発明によれば、前項1〜7のいずれかに記載の印刷用マンドレルを用いて印刷されるので、ばらつきなく缶体に印刷がなされ、空気に流された潤滑剤が缶体内面に付着することなく正常な缶体を製造することができる。
【0036】
上記[9]に記載の発明によれば、前項1〜7のいずれかに記載の印刷用マンドレルを用いて印刷されるので、ばらつきなく缶体に印刷がなされ、空気に流された潤滑剤が缶体内面に付着することなく正常な缶体を製造することができる。
【0037】
上記[10]に記載の発明によれば、前項1〜7のいずれかに記載の印刷用マンドレルを用いて印刷されるので、ばらつきなく缶体に印刷がなされ、空気に流された潤滑剤が缶体内面に付着することなく正常な缶体を印刷することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0040】
図1は、印刷用マンドレル1Aを説明するための概略図、
図2は、印刷用マンドレル1A(1)の空気の流れを説明するための概略図、
図3は、第2実施形態に係る印刷用マンドレル1B(1)を説明するための概略図、
図4は、第3実施形態に係る印刷用マンドレル1C(1)を説明するための概略図、
図5は、第4実施形態に係る印刷用マンドレル1D(1)を説明するための概略図、
図6は、従来の印刷用マンドレル91を説明するための説明図である。
【0041】
印刷用マンドレル1は、印刷機に複数設けられているものであり、底部と胴部が一体成形された金属製缶体10、所謂、2ピース缶が嵌挿されて保持されるものである。
【0042】
印刷用マンドレル1の先端部側に、開口部を有する金属製缶体10が嵌挿された状態で、印刷用マンドレル1が、金属製缶体10を回転させるように動作することにより、金属製缶体10の外周面の印刷が行われる。
【0043】
印刷用マンドレル1は、金属製缶体10が嵌挿されるマンドレル本体2、マンドレル本体2内部に設けられるマンドレル軸3、及びマンドレル軸3の先端部及び基端部に配置されるベアリング部4などを備え、印刷機に片持ち状に設けられている。
【0044】
以降、
図1,2に基づいて、印刷用マンドレル1(1A)について説明する。
【0045】
マンドレル本体2は、円筒形状に形成されており、内部が中空状に形成されている。
【0046】
マンドレル本体2の外径寸法は、金属製缶体10をマンドレル本体2の先端部側に被せて着脱可能な寸法であり、嵌挿された缶体10の内面がマンドレル本体2の外周面に密着するような寸法となっている。
【0047】
マンドレル本体2の外径は、缶体10の内径寸法よりもやや小径となっているが、その寸法差は、缶体10の着脱が可能となる程度の極僅かな差である。
【0048】
マンドレル本体2は、缶体10が嵌挿された状態で回転するように構成されており、そのため印刷機側に設けられたフランジ7との間に僅かな間隙6を有して設けられている。
【0049】
マンドレル本体2の先端は、開口しており、缶体10がマンドレル本体2の先端に嵌挿された際に、マンドレル本体2と缶体10の底部とで囲われる空間Kが設けられている。
【0050】
マンドレル軸3は、フランジ7を介して印刷機に取り付けられ、棒状体に形成されている。
【0051】
マンドレル軸3は、その軸径がマンドレル本体2の内径よりもやや小径となるように形成され、マンドレル軸3にマンドレル本体2の中空部が被せられ、マンドレル本体2の軸となるものである。
【0052】
マンドレル軸3及びマンドレル本体2は、缶体10の径サイズに応じたマンドレル本体2をマンドレル軸3に着脱可能に構成されている。
【0053】
マンドレル軸3の中心部には、マンドレル軸3の先端部側から基端部側にかけて軸方向に延びる空気流路31が設けられ、該空気流路31を利用して空気の流入及び流出などがなされる。尚、
図2で示す矢印は、空気の流れの一例を示している。
【0054】
例えば、印刷機に設けられた図示しない真空ポンプなどにより吸引された空間K及び缶体10内部の空気は、空気流路31を通って印刷機側に流入するように構成されている。
【0055】
また、印刷機側から送出された空気は、空気流路31を通って空間Kに流出するように構成されている。
【0056】
空気流路31は、先端部側から基端部側にかけてマンドレル軸3を貫通して設けられており、空気流路31に空気が流入及び流出することによって、金属製缶体10をマンドレル本体2に嵌装、或いはマンドレル本体2から離脱させる。
【0057】
マンドレル軸3の先端部側には、マンドレル軸3に嵌め込んだマンドレル本体2を固定するためのマンドレルエンドキャップ21が設けられている。
【0058】
マンドレルエンドキャップ21には、マンドレル軸3の空気流路31に形成された雌ねじ部に螺嵌される雄ねじ部が設けられ、当該雄ねじ部の軸方向には、マンドレル軸3の空気流路31の内径寸法と略同等、或いは空気流路31の内径寸法よりも小径に設定された孔が形成されている。
【0059】
空気流路31を流入及び流出する空気がマンドレルエンドキャップ21の孔を介して空間Kに通じている。
【0060】
マンドレル本体2の先端部及び後端部には、ベアリング部4が設けられ、ベアリング部4には、それぞれ種類の異なるベアリングが設けられている。尚、後端部とは、前述の基端部側と同じ側を示す。
【0061】
例えば、本実施形態では、マンドレル軸3の先端部にはボールベアリング41、マンドレル軸3の基端部にはニードルベアリング42が設けられており、マンドレル本体2は、各ベアリング41,42で回転自在に支持されている。
【0062】
マンドレル軸3の先端部のベアリング部4には、ベアリング部4の先端部側、且つマンドレル本体2の内周に溝が形成されており、当該溝には、ベアリング41の抜け止めとなる止め輪が設けられ、同様にして、後端部側のベアリング部4には、基端部側に形成された溝にベアリング42の止め輪が設けられている。
【0063】
当該両止め輪は、ベアリング41,42の回転動作を阻害しないよう、ベアリング41,42の外輪の側部にのみ当接するように設けられている。
【0064】
各ベアリングには、回転をスムーズにするために、グリスなどの潤滑剤が塗布されている。
【0065】
印刷用マンドレル1(1A)は、マンドレル軸3の外面にマンドレル本体2を被せた状態で、マンドレル軸3に対してマンドレル本体2を回転させるために、マンドレル本体2の内面とマンドレル軸3の外面とで形成された空隙5が設けられている。
【0066】
空隙5は、マンドレル本体2の外部から流入した空気、即ち、フランジ7とマンドレル本体2の間隙6から流入した空気の流路となっている。
【0067】
空隙5は、その後端部側がニードルベアリング42を介して間隙6に通じ、その先端部側がボールベアリング41を介してマンドレル本体2の先端側の空間Kに通じている。
【0068】
空隙5は、外部の空気が隙間5,6を通って空間Kに流入することによって空間Kの陰圧を低下させないように、空隙5に流入する空気量を制限する流入制限機構を有している。
【0069】
本実施形態において、空隙5は、その一部に、マンドレル本体2の内面とマンドレル軸3の外面とで一定の間隔が保たれた隙間である流入制限隙間51を有しており、この隙間51が、空隙5を通る空気量を制限する流入制限機構となる。
【0070】
例えば、
図1の軸方向断面図に示すように、ボールベアリング41の後端部側からニードルベアリング42の先端部側付近にかけて、マンドレル本体2とマンドレル軸3との間隔が一定となっている。
【0071】
流入制限隙間51の間隔Cは、マンドレル本体2の内径I及びマンドレル軸3の径Rを用いた、以下に示す式で表される。
I−R=C ・・・・(1)
I:マンドレル本体2の内径(mm)
R:マンドレル軸3の径(mm)
C:流入制限隙間51の間隔(mm)
流入制限隙間51の間隔Cは、狭く設定されるほど外部の空気が流入制限隙間51に流れ込み難くなるので好ましいが、流入制限隙間51の間隔Cが狭過ぎると、マンドレル本体2の回転性能が劣化する上、マンドレル本体2の着脱作業が困難になる。
【0072】
例えば、印刷機側から空間Kの空気が吸引などされることによって、特に缶体10を印刷する時にはマンドレル本体2には外側から力がかかるので、マンドレル本体2に凹みなどの僅かな変形が生じることがあり、流入制限隙間51の間隔Cが狭過ぎると、変形したマンドレル本体2の内面とマンドレル軸3の外面が接触してマンドレル本体2が回転不良を起こし、印刷不良となる場合がある。
【0073】
そこで、本実施形態における流入制限機構である流入制限隙間51は、マンドレル本体2の内面とマンドレル軸3の外面との間隔Cが、マンドレル本体2の着脱が容易で、マンドレル本体2が回転不良を起こさない最小限の間隔であって、且つ空隙5を通る空気量を制限することが可能である最小となる間隔に設定されている。
【0074】
マンドレル本体2とマンドレル軸3の間には、約0.4mm以上の最小限の間隔を設けるものとし、流入制限隙間51の間隔Cは、0.4mm〜0.7mmの範囲に設定されるものとした。
【0075】
更に、マンドレル本体2の内径I、マンドレル軸3の径R及び流入制限隙間51の長さLは、下記に示す関係式(2)を満たす範囲に設定した。
0.2mm≦(I
2−R
2)/L≦0.5mm ・・・・(2)
I:マンドレル本体の内径
R:マンドレル軸の径
L:流入制限隙間51の長さ(mm)
【0076】
流入制限隙間51の間隔Cの範囲設定と関係式(1)に基づいて、マンドレル本体2の内径Iは、25.4mm〜40.0mmの範囲、マンドレル軸3の径Rは、25.0mm〜39.6mmの範囲に設定した。
【0077】
また、流入制限隙間51の長さLは、関係式(2)を満たすよう90mm〜140mmの範囲に設定した。
【0078】
尚、流入制限隙間51の長さLとは、流入制限隙間51の軸方向長さであって、最小限の間隔が保たれている区間を意味している。
【0079】
(評価試験)
以下では、従来の印刷用マンドレル91を備えた印刷機によって印刷された金属製缶体10と、本願発明の印刷用マンドレル1A(1)を備えた印刷機によって印刷された金属製缶体10とを比較して、本願発明の印刷用マンドレル1Aについての評価を行った。
【0080】
本発明品を評価するため、印刷に用いられる缶種は、250ml用缶、350ml用缶及び500ml用缶とし、それぞれの缶種に対して本発明の印刷用マンドレル1Aを備えた印刷機及び従来の印刷用マンドレル91を備えた印刷機を用いて印刷が行われた。
【0081】
表1には、マンドレル本体2の内径I、マンドレル軸3の径R及び流入制限隙間51の長さLをそれぞれ上述の範囲に設定した本発明品(実施例1〜4)及び、空隙95に流入制限機構が設けられていない従来品(比較例)における各部位の設定値を示している。
【0082】
例えば、比較例の空隙95の間隔C´(マンドレル本体92の内面とマンドレル軸93の外面との間隔C´)は、実施例4の流入制限隙間51の間隔C(マンドレル本体2の内面とマンドレル軸3の外面との間隔C)の30倍以上の間隔に設定されている。
【0083】
尚、従来品における空隙95の長さL´とは、マンドレル本体92の内面とマンドレル軸93の外面との間隔が一定に保たれている区間を意味するものとする。
【0085】
上述した設定値の範囲に設定された本発明品である実施例1〜4の印刷用マンドレル1Aによって印刷された缶体10は、印刷ズレや缶体10内部に潤滑剤が殆ど付着することもなく、正常な金属製缶体10が得られた。
【0086】
一方、比較例における従来の印刷用マンドレル91を用いて印刷された缶体10では、保持位置がばらつくために印刷ズレが生じているものがあり、ベアリング41,42から流れ出た潤滑剤が、マンドレルエンドキャップ21の裏側まで広範囲に付着していた。
【0087】
上述した実施例1〜4の評価結果からわかるように、流入制限隙間51の間隔Cは、0.40mm〜0.70mmの設定範囲であることが好ましい。
【0088】
また、流入制限隙間51の長さLは、90.0mm〜140.0mmの設定範囲であることが好ましく、最も好ましい設定範囲は、97.0mm〜139.3mmである。
【0089】
更に、マンドレル本体2の内径Iは、約25.4mm〜40.0mmの設定範囲であることが好ましく、最も好ましい設定範囲は、約28.4mm〜37.0mmである。
【0090】
マンドレル軸3の径Rは、何れも約25.0mm〜39.6mmの設定範囲であることが好ましく、最も好ましい設定範囲は、約28.0mm〜36.6mmである。
【0091】
マンドレル本体2の内径I、マンドレル軸3の径R、及び流入制限隙間51の長さLでなる関係式は、0.2mm≦(I
2−R
2)/L≦0.5mmの範囲に設定されることが好ましく、最も好ましい設定範囲は0.24mm≦(I
2−R
2)/L≦0.41mmである。
【0092】
本発明品は、マンドレル本体2の内径I、マンドレル軸3の径R、及び流入制限隙間51の長さLが、0.2mm≦(I
2−R
2)/L≦0.5mmの関係式を満たすように構成されるので、空隙5に流入する空気量がより減少して、ベアリング41,42に塗布された潤滑剤が流入した空気で流された場合であっても、缶体10の内部汚れを低減させることができる。これは、空隙5間で潤滑剤を付着させて、潤滑剤がマンドレル先端側に流されてマンドレルエンドキャップ21に到達する虞が低減することによるものと考えられる。
【0093】
続いて、上述した実施例1〜4のうち何れかの成形条件を満たす本発明品、及び従来品を用いて金属製缶体10に印刷を施した際におけるそれぞれの陰圧を比較し、印刷後の金属製缶体10の状態を評価した。
【0094】
本発明品の評価のために用いられる缶種は、350ml用缶及び500ml用缶とし、350ml用缶を印刷するラインA及び500ml用缶を印刷するラインBそれぞれに対して、印刷用マンドレル1を備えた印刷機及び印刷用マンドレル91を備えた印刷機を用いて缶体10への印刷を行った。
【0095】
ラインAにおける従来品の印刷用マンドレル91には、表1で示した比較例の印刷用マンドレル91を用い、ラインBにおける従来品の印刷用マンドレル91も同様に、表1で示した比較例の印刷用マンドレル91が用いられた。
【0096】
尚、図示しないラインBにおける従来品の印刷用マンドレル91は、缶種が異なるラインAの印刷用マンドレル91と同寸法のものであるが、缶体10の高さ寸法、即ちマンドレル本体2に嵌挿された缶体10の開口部先端の位置に応じて、マンドレル本体2の略中央付近に設けられた溝の位置が若干異なっている。
【0097】
ラインAにおける本発明品の印刷用マンドレル1には、表1で示した実施例2の印刷用マンドレル1を用い、ラインBにおける本発明品の印刷用マンドレル1には、表1で示した実施例3の印刷用マンドレル1を用いた。
【0098】
表2には、上述した条件の本発明品及び従来品を用いて印刷を行った評価結果を示している。
【0100】
評価結果は、各ラインA,Bにおける従来の印刷用マンドレル91及び本願発明の印刷用マンドレル1に缶体10を嵌挿して印刷した後、各印刷用マンドレル1,91から缶体10を離脱させる一連の工程を複数の缶体10に対して所定時間継続して行うことによって、各印刷用マンドレル1,91内部で空気を流動させ、各印刷用マンドレル1,91に嵌挿された缶体10内部の陰圧測定結果及び印刷後の印刷用マンドレル1の先端側における潤滑剤の付着状況を目視検査した結果である。
【0101】
稼働開始から4時間後、バキュームゲージなどの測定器による缶体10内部の陰圧測定、及び各印刷機におけるマンドレルエンドキャップ21の潤滑剤汚れについて目視による確認を行った。
【0102】
陰圧測定結果は、空間Kにおける先端側及び後端側の陰圧について測定した結果であり、各ラインにおけるマンドレルエンドキャップ21近傍で測定された陰圧は、本願発明の印刷用マンドレル1・従来の印刷用マンドレル91に関わらず同一であったが、金属製缶体10の底部においては、従来品の陰圧が本願発明品の陰圧よりも大幅に低下していた。
【0103】
具体的には、ラインAにおいて、本願発明品に嵌挿された缶体10のマンドレルエンドキャップ21近傍の陰圧に対する缶体10底部の陰圧が32.6%の低下であったのに対し、従来品では76.09%低下しており、従来品の空間Kの先端側に対する後端側の陰圧は、本願発明品の空間Kの先端側に対する後端側の陰圧の低下率の約2.3倍の低下率となっていた。
【0104】
ラインBにおいては、本願発明品に嵌挿された缶体10底部の陰圧がマンドレルエンドキャップ21の陰圧と変化がなかったのに対し、従来品に嵌挿された缶体10のマンドレルエンドキャップ21の陰圧に対する缶体10底部の陰圧は、22.22%程度低下していた。
【0105】
本願発明品の印刷用マンドレル1では、マンドレル本体2の内径Iを従来品よりも小さくし、マンドレル本体2の内径Iとマンドレル軸3の径Rの差を小さくしてマンドレル本体2とマンドレル軸3との間隔C(流入制限隙間51の間隔C)を縮小させたことにより、空隙5を通って空間Kに流れ込む空気量を低減させることができ、従来品の印刷用マンドレル91と比較して缶体10底部の陰圧の低下を抑止することができる。
【0106】
また、マンドレル本体2とマンドレル軸3との間隔Cが、マンドレル本体2が回転不良を起こさない最小限の間隔に設定された本願発明品の印刷用マンドレル1Aを備えた印刷機では、空気の流入及び流出によってベアリング部4の潤滑剤がマンドレルエンドキャップ21に殆ど付着することはなかった。
【0107】
一方、流入制限隙間51を設けない従来品の印刷用マンドレル91を備えた印刷機では、空気の流入及び流出によってベアリング部94からはみ出した潤滑剤が、マンドレルエンドキャップ921の裏側まで広範囲に付着していた。
【0108】
また、上述した実施例1〜4のうち何れかの成形条件を満たす本発明品、及び従来品を用いて金属製缶体10に印刷を施し、各金属製缶体10外面の印刷状態を比較評価した。
【0109】
本評価に用いられる缶種は、本願発明品及び従来品の何れも350ml用缶とし、本願発明の印刷用マンドレル1を備えた印刷機及び従来の印刷用マンドレル91を備えた印刷機を用いて缶体10への印刷を行った。
【0110】
従来品の印刷用マンドレル91には、表1で示した比較例の印刷用マンドレル91を用い、本願発明品の印刷用マンドレル91には、表1で示した実施例2の印刷用マンドレル1を用いた。
【0112】
評価結果は、従来品の印刷用マンドレル91及び本願発明品の印刷用マンドレル1に複数の缶体10を嵌挿して印刷した後、各缶体10の外面になされた印刷高さ位置を測定した結果である。
【0113】
尚、印刷高さ位置とは、缶体10の開口部上端から印刷された位置までの距離を意味し、表に記載された最大印刷位置は、開口部上端から印刷位置までの距離が最大となった時の測定値、最小印刷位置は、開口部上端から印刷位置までの距離が最小となった時の測定値を示している。
【0114】
本測定結果から、従来品よりも本願発明品に嵌装された缶体10の方が、印刷位置のバラつきが小さいことがわかる。
【0115】
具体的には、従来品に嵌挿されて印刷された缶体10の最大印刷位置と最小印刷位置の差が0.7mmであるのに対し、本願発明品に嵌挿されて印刷された缶体10の最大印刷位置と最小印刷位置の差は0.3mmであった。
【0116】
以上の評価結果からわかるように、関係式(2)に基づいて、マンドレル本体2の内径I、マンドレル軸3の径R及び流入制限隙間51の長さLを設定することにより、空隙5を通って空間Kに流入する空気量を低減させることができる。
【0117】
空間Kに流入する空気量が低減することにより、空間Kの陰圧を低下させることなく所定の陰圧を維持することができるので、金属製缶体10のマンドレル本体2への保持性能が向上して、金属製缶体10をマンドレル本体2の適切な位置に吸着保持させることができ、印刷の高さ位置のバラつきが低減される。
【0118】
更に、例えば、間隙6から流入した空気がニードルベアリング42の隙間に流入した場合であっても、流入した空気が空隙5を通過し難くなるので、潤滑剤が流されてマンドレルエンドキャップ21に付着する虞が低減し、内面汚れのある不良缶の発生が低減する。
【0119】
上述したように、マンドレル本体2と前記マンドレル軸3との間隔Cが、0.4mm〜0.7mmの範囲で一定間隔に設定され、一定間隔に設定された前記流入制限隙間51の長さLは、90mm〜140mmに設定されることにより、金属製缶体10のマンドレル本体2への保持性能がより向上して、金属製缶体10がマンドレル本体2の適切な位置に吸着保持されるので、缶体10の長さ方向における印刷位置のばらつきが低減される。
【0120】
(嵌挿・離脱方法)
以下では、上述した本願発明の印刷用マンドレル1(1A)を一例として缶体10を嵌挿及び離脱する方法について説明する。
【0121】
金属製缶体10は、図示しない真空ポンプによって、空間Kの空気が空気流路31を介して印刷機側から吸引された状態で、マンドレル本体2の先端部側外周に被せるようにして嵌挿される。
【0122】
空気が印刷機側へ吸引されることで空間Kが陰圧になり、缶体10がマンドレル本体2の外面に吸着され、金属製缶体10をマンドレル本体2に嵌装させやすい。
【0123】
金属製缶体10がマンドレル本体2に完全に嵌挿された後も、空気流路31の吸引は続けられるため、金属製缶体10がマンドレル本体2に吸着保持され続ける。
【0124】
尚、空隙5には、流入制限機構が設けられているため、空間Kに流れ込む空気量は微量であり、空間Kの陰圧が極端に低下することはない。
【0125】
一方、金属製缶体10をマンドレル本体2から離脱させる場合には、缶体10を嵌挿させる場合とは逆に、印刷機から空気流路31に流入させた空気が、マンドレルエンドキャップ21の孔を通って空間Kに流れ、空間Kを陽圧にする。
【0126】
空間Kが陽圧となることで、金属製缶体10をマンドレル本体2から離脱させやすくなる。
【0127】
このように、本願発明の印刷用マンドレル1(1A)は、マンドレル1(1A)の内圧を制御することによって金属製缶体10を嵌挿及び離脱させ易い構成となっている。
【0128】
(第2実施形態)
上述では、マンドレル本体2が円筒形状に形成され、マンドレル軸3が棒状体に形成された印刷用マンドレル1A(1)として説明したが、この形状に限定されるものではない。
【0129】
例えば、
図3に示すように、マンドレル軸3の先端部側が先細りしたテーパー状に形成され、マンドレル本体2の内部の形状が、嵌挿される当該マンドレル軸3の外周に沿うように、先細りしたテーパー状の中空部を有する形状に形成されるのであってもよい。
【0130】
マンドレル本体2及びマンドレル軸3の形状はこれらに限定されるものではなく、マンドレル本体2の外周に金属製缶体10が挿嵌されるに適した形状に形成され、マンドレル軸3をマンドレル本体2に挿嵌可能、且つマンドレル本体2及びマンドレル軸3の間に上述した流入制限隙間51が設けられるような印刷用マンドレル1Bとして構成されていればよい。
【0131】
上述したように、第1実施形態及び第2実施形態における流入制限機構は、マンドレル本体2の内面とマンドレル軸3の外面との間隔Cが、マンドレル本体2が回転不良を起こさない最小限の間隔Cに設定された流入制限隙間51であるので、マンドレル本体2外部から空隙5に流入する空気が減少して金属製缶体10内部の空間Kに空気が流れ込み難くなり、空間Kの陰圧を低下させることなく、所定の陰圧を維持することができるので、金属製缶体10のマンドレル本体2への保持性能が向上して、金属製缶体10がマンドレル本体2の適切な位置に吸着保持され、缶体10の長さ方向における印刷位置のばらつきが低減される。
【0132】
尚、
図3において、第1実施形態と共通する部分には同符号を付して説明を省略した。また、以降の実施形態においても同様に、第1実施形態と共通する部分には同符号を付して説明を省略するものとする。
【0133】
(第3実施形態)
上述では、マンドレル本体2の内径I、前記マンドレル軸3の径R及び前記流入制限隙間51の長さLが、関係式(2) 0.2mm≦(I
2−R
2)/L≦0.5mmを満たすような値に設定して流入制限機構を構成するように説明したが、少なくとも空隙5の1箇所にシール部材を設けて流入制限機構を構成する印刷用マンドレル1Cであっても良い。
【0134】
例えば、マンドレル本体2の内面とマンドレル軸3の外面との間に、流入制限機構としてのラビリンスシール52を設ける。
【0135】
ラビリンスシール52は、先端部側のベアリング41から後端部側のベアリング42までの間で、マンドレル本体2の内面及びマンドレル軸3の外面に密着するよう取付固定される。
【0136】
ラビリンスシール52は、公知の非接触シール形部材であり、その詳細な説明は省略するが、外部の空気が間隙6及び空隙5を通って空間K側に流入するのをシールすると共に、ニードルベアリング42に塗布された潤滑剤が空隙5を通って空間K側へ侵入するのをシールする。
【0137】
図4に示すように、ラビリンスシール52は、マンドレル軸3の外側に取り付けられる。本実施形態では、ラビリンスシール52が、ベアリング41,42の中間よりも若干基端側寄り、即ち、ニードルベアリング42側寄りに設けられるように図示しているが、ベアリング41,42間に設けられるのであればどこでもよく、ラビリンスシール52の設置箇所は特に限定されるものではない。
【0138】
上述のように構成することにより、マンドレル本体2外部から間隙6を通ってマンドレル本体2内部に空気が流入した場合であっても、ラビリンスシール52が取り付けられた箇所より先端側へ空気が流れ込み難くなり、簡単な構造で潤滑剤が金属製缶体10内部の空間Kまで流される虞をより低減させることができる。
【0139】
ラビリンスシールの外輪と内輪が接触しない非接触シールであるため、マンドレル本体の回転に影響を与えることがない。また、ラビリンスシールは、発熱せず長寿命であるため、交換などのメンテナンスの手間がかからない。
【0140】
(第4実施形態)
また、
図5の印刷用マンドレル1Dに示すように、ラビリンスシール52以外のシール部材として、Oリング53を用いることもできる。
【0141】
Oリング53をマンドレル軸3に取り付ける場合も、先端部側のベアリング41から後端部側のベアリング42までの間で、マンドレル本体2の内面及びマンドレル軸3の外面に密着するよう取付固定される。
【0142】
シール部材にOリングが用いられることで、マンドレル本体2外部からマンドレル本体2内部に空気が流入した場合であっても、Oリング53が取り付けられた箇所より先端側へ空気が流れ込み難くなり、ラビリンスシール52を用いる場合と同様に、簡単な構造で潤滑剤が金属製缶体10内部の空間Kまで流される虞をより低減させることができ、安価に構成することができる。
【0143】
前述のラビリンスシール52及びOリング53は、何れも単体で用いられるのであってもよいし、複数に配列して用いられるのであってもよい。
【0144】
上述したように、少なくとも前記空隙5の1箇所に、シール部材を設けて流入制限機構とし、シール部材には、ラビリンスシール52を用いるのであってもよいし、Oリング53を用いるのであってもよく、シール部材52,53を設けるだけの簡単な構造で金属製缶体10をマンドレル本体2の適切な位置に吸着保持させて、缶体10の長さ方向における印刷位置のばらつきを低減させるとともに、缶体10の内部汚れを低減させることができる。
【0145】
尚、上述したラビリンスシール52及びOリング53だけでなく、その他のシール部材が用いられるのであってもよい。
【0146】
また、シール部材を設けた空隙5の間隔は、空隙5を通過するマンドレル本体2外部からの空気量が低減するように、シール部材によってシール可能な間隔に設定されているのであればよく、特に限定されるものではない。
【0147】
上述では、何れかの流入制限機構を設けることにより、潤滑剤が流されてマンドレルエンドキャップ21に付着しないようにしたが、流入制限機構と併用して、別途、潤滑剤がマンドレルエンドキャップ21に付着しないような工夫を施すのであってもよい。
【0148】
例えば、マンドレル本体2とマンドレル軸3の基端部側の隙間から流入した空気が、金属製缶体10内部の空間Kへ流入する間に、少なくとも一方のベアリング41,42、或いは両ベアリング41,42を迂回するように形成された通気流路をマンドレル軸3の先端部及び後端部に設けたベアリング部4に設ける。
【0149】
通気流路は、例えば、マンドレル本体2の軸心に対して平行方向に形成され、ベアリング部4とマンドレル本体2の間で局所的に複数設けられ、ベアリング部4に設けた少なくとも一方のベアリング41,42の外周に沿って均等な間隔(例えば、90度間隔)で設けられる。
【0150】
マンドレル本体2とマンドレル軸3の基端部側の隙間から流入した空気は、ベアリング41,42の隙間を通らずに、通気流路を通って空間Kに流入するようになるので、流入制限機構と併用して設けられることで、空気に流された潤滑剤がマンドレルエンドキャップ21に付着する虞がより低減されるので、潤滑剤が付着した不良缶の発生がより低減する。
【0151】
また、両方のベアリング部4に通気流路を設ける場合に、何れのベアリング部4にも同数の通気流路を設けるように説明したが、もちろん先端部側のベアリング部4と後端部側のベアリング部4で設けられた通気流路の個数が異なるように構成するのであってもよい。
【0152】
上述したような印刷機では、高精度の印刷を行うために基端部方向に強く缶体10が押し付けられて、片持ち状に設けられたマンドレルの基端部分に強い負荷がかかるため、マンドレルの基端側のベアリングには負荷容量の高いニードルベアリング42が設けられることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0153】
上述では、マンドレル軸3が、マンドレル本体2の軸方向長さと略同等の長さ寸法に設けられるように説明したが、マンドレル軸3の長さ寸法はこれに限定されるものではない。
【0154】
また、上述では、マンドレル軸3がマンドレル本体2内部に設けられるように説明したが、マンドレル本体2とマンドレル軸3が一体に形成されているのであってもよいし、缶体10の形状に合わせた様々な寸法のマンドレル本体2をマンドレル軸3に取り付けるように構成されているのであってもよい。
【0155】
以上説明したような印刷用マンドレル1(1A〜1D)を用いて2ピース缶の印刷及び製造がなされることによって、ばらつきなく缶体10の印刷がなされ、空気に流された潤滑剤が缶体10内面に付着することなく正常な缶体10を印刷することができる。
【0156】
以上説明したように、印刷用マンドレル1(1A〜1D)は、先端に空気が吸引される空間Kが設けられ、空間Kが陰圧の状態で金属製缶体10が先端側から挿嵌されるマンドレル本体2と、前記マンドレル本体2の内部に設けられ、前記金属製缶体10内部の空間Kの空気が吸引され空気流路31が形成されたマンドレル軸3と、を備え、前記マンドレル本体2の内面と前記マンドレル軸3の外面との間に形成された空隙5が、外部から空隙5に流入する空気量を制限する流入制限機構を有するように構成されるので、流入制限機構によってマンドレル本体2外部から空隙5に流入する空気が減少し、空間K及び嵌挿された金属製缶体10内部に空気が流れ込み難くなるため従来よりも空間Kの陰圧が強くなり、金属製缶体10のマンドレル本体2への保持性能が向上する。
【0157】
金属製缶体10のマンドレル本体2への保持性能が向上することにより、金属製缶体10がマンドレル本体2の適切な位置に吸着保持されるので、缶体10の長さ方向における印刷位置のばらつきが低減される。
【0158】
また、空気の流れによってベアリング41,42に塗布された潤滑剤が流され、マンドレルエンドキャップ21に付着することがなくなったので、潤滑剤の付着による缶体10の内面汚れの問題が改善される。
【0159】
以上説明した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において具体的構成などを適宜変更設計できることは言うまでもない。